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平成7年/1995年上半期
(平成7年/1995年7月18日決定発表/『オール讀物』平成7年/1995年9月号選評掲載)
選考委員  山口瞳
男68歳
渡辺淳一
男61歳
平岩弓枝
女63歳
津本陽
男66歳
田辺聖子
女67歳
黒岩重吾
男71歳
阿刀田高
男60歳
井上ひさし
男60歳
五木寛之
男62歳
藤沢周平
男67歳
選評総行数  65 118 130 95 137 95 154 144 99  
選評なし
候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数
赤瀬川隼 『白球残映』
417
男63歳
31 24 18 10 41 24 14 28 31    
東郷隆 「そは何者」
72
男43歳
0 10 26 11 36 4 27 18 14    
篠田節子 『夏の災厄』
961
女39歳
8 16 20 7 17 8 29 20 14    
梁石日 『夜を賭けて』
792
男58歳
16 35 16 29 16 17 21 25 37    
池宮彰一郎 「千里の馬」
96
男72歳
0 12 26 25 9 4 19 29 0    
内海隆一郎 『百面相』
574
男58歳
10 26 26 13 16 16 24 24 0    
                  欠席
年齢/枚数の説明   見方・注意点

このページの選評出典:『オール讀物』平成7年/1995年9月号
1行当たりの文字数:13字


選考委員
山口瞳男68歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
思いが深ければ 総行数65 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
赤瀬川隼
男63歳
31 「「思いが深ければ誰にでも良い文章が書けるはずです」と言ったのは向田邦子さんである。(引用者中略)この発言を実証してくれた小説(文章)が短篇集『白球残映』のなかの「陽炎球場」であるような気がして仕方がない。」「私は「陽炎球場」があるので『白球残映』の赤瀬川さんだけを強く推した。」
東郷隆
男43歳
0  
篠田節子
女39歳
8 「私は小説は男女のことを書くものだと思っている。もっとセクシーでなければ話にならない。キッチリ書き込んであるのにドラマ性に乏しい。」
梁石日
男58歳
16 「大変な労作であり教えられるところも多かったが、あまりに面白すぎてかえって平板になるところがあった。」「私はどこという指摘ができないが、この小説には「小説以前」という感じがあって、どこかに隙間がある。」
池宮彰一郎
男72歳
0  
内海隆一郎
男58歳
10 「叮嚀に書きこんである(特に女主人公の久江、小料理屋の内幕)ので好感が持てるが、そのぶん百面相の波多野栄一の話と割れてしまったのが惜しまれる。また底辺で稼ぐ芸人のもつイヤラシサにもっと触れてもらいたかった。」
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他の選考委員
渡辺淳一
平岩弓枝
津本陽
田辺聖子
黒岩重吾
阿刀田高
井上ひさし
五木寛之
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選考委員
渡辺淳一男61歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
三作が残ったが 総行数118 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
赤瀬川隼
男63歳
24 「「夜行列車」と「陽炎球場」がそれなりの出来で、文章も繊細だが、全体に負の人物に甘えすぎて、感傷に流れすぎる傾向がある。むろんそれをよしとする人はいるだろうが、そうしたつくりの裏側が見えてくると、興醒めすることもある。作中、最も新しい作品といわれる「消えたエース」が最も見劣りしたのも、気にかかるところであった。」
東郷隆
男43歳
10 「用意周到に準備して書かれた作品のようだが、その用意したところがいささかこうるさくて、一本の線に収斂してこないもどかしさがある。才もあり力もある作家だが、このところいささか難しい陥穽に落ちこんでいるようである。」
篠田節子
女39歳
16 「よく勉強して書き上げられた小説のようだが、初めに事件というか推理ありきで、それに人物が添えものになっている。」「この種の小説があっていいし、好きな人がいることもわかるが、文学賞の対象となるものではないだろう。」
梁石日
男58歳
35 「候補作中でただ一つ、作者が熱く訴えたいものをもっていて、その気迫に惹きこまれた。しかし欠点も多く、まず文章が荒いが、その荒さが重層的に連ねられると別の効果が生じ、前半の冗長さと後半の駆け足の構成の乱れも、初めて知らされる事実の前には、さほどの傷とも思えない。」「ドキュメンタリーやレポート的な面白さで、そこを咀嚼した上でのものかとなると、いささか疑問が生じてくる。」
池宮彰一郎
男72歳
12 「前の高杉晋作のときのような、骨格だけのやせた小説といった印象は薄れ、大分、肉づきがよくなったが、人間を簡単に動かしすぎる安易さは消えていない。」「浅野内匠頭や大石内蔵助とのいきさつなどは、いかにもつくりものじみて興を殺ぐ。」
内海隆一郎
男58歳
26 「文章が安定し、登場人物のデッサンも適格で、もっとも安心して読めた。」「今回は実在のやや癖のある人物を主人公にしたせいか、かなり引き締まったようである。それでもなお不満の声があったが、そこから先は作家の資質的なもので、そこまで責めるのは少し酷かもしれない。」
  「この上位三作(引用者注:「百面相」「夜を賭けて」「白球残映」)から受賞作を選ぶとなると、それぞれに問題があり、受賞作なし、が妥当なところかと思ったが、それでは二期続けてないことになり、このあたりが気になったことはたしかである。」
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他の選考委員
山口瞳
平岩弓枝
津本陽
田辺聖子
黒岩重吾
阿刀田高
井上ひさし
五木寛之
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選考委員
平岩弓枝女63歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
「白球残映」と「百面相」 総行数130 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
赤瀬川隼
男63歳
18 「(引用者注:「百面相」と「白球残映」を)推した。」「第九十回の直木賞候補作品であった「潮もかなひぬ」が長いこと心に残っていた。」「ただし、私自身は野球に知識がなく、この作品の芯にある狂的な野球に対する熱情が実感出来なかったのは口惜しかった。」
東郷隆
男43歳
26 「題名に凝りすぎて失敗しているように思う。作品を読み終った者は、そこで作者から宿題を押しつけられた気分で感じがよくない。」「著名な人物を、こういう形で作品の中に登場させるには、充分の配慮をお願いしたい。」
篠田節子
女39歳
20 「読み進む中にどんどん怖しくなって眠れなくなる。」「たまたまオウム事件などというものとぶつかったせいで、変にリアリティのある身近な話のように感じられて、楽しみたくても楽しめない結果になったのは、この作品にとって不運であった。」
梁石日
男58歳
16 「前大半のアパッチ族事件と大村収容所の部分、更に最後の作者らしい人物が登場する現代の部分とが、ばらばらになっていて、一本の作品として熟成されていないのが難になった。」「しかし、力強さと人間の厚みを描いた点では今回の候補作の中でとび抜けている。」
池宮彰一郎
男72歳
26 「あまりにも書き尽されている素材なので、作者の独自な歴史観とか、或いは新資料の発見がないと、なかなか魅力的な小説にはなりにくい。」「気になったのは、この時代の主従関係が、現代の中小企業の社長と部下のような気易さで書かれている点で、身分意識の強い武家社会では、殿様と家来は、こんなに気易く話も出来ないし、してはならない。」
内海隆一郎
男58歳
26 「(引用者注:「百面相」と「白球残映」を)推した。」「登場人物に生彩がある。」「小料理屋を開業しての悪戦苦闘ぶりに多く筆を費しているが、これも読みごたえがあった。強いて難をいえば、(引用者中略)人間の奥にあるどろどろした毒の部分に触れない点ではないかと思う。とはいえ、それは作者の一つの持味であろうし、私自身はこういう作品が好きである。」
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他の選考委員
山口瞳
渡辺淳一
津本陽
田辺聖子
黒岩重吾
阿刀田高
井上ひさし
五木寛之
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選考委員
津本陽男66歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
含羞の酸味 総行数95 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
赤瀬川隼
男63歳
10 「五つの短篇のうち「陽炎球場」「夜行列車」などが好きな作品である。酸っぱい含羞の味わいをたたえた作者の感情が、音をたて流露する。読んでいる私の内部に、喚起されるいくつもの記憶がある。人生の諸相のひとつにつながるひろがりがみちびきだす酸味であろう。」
東郷隆
男43歳
11 「作者が日頃手なれた題材ではないが、巧みな展開に隙がない。」「結末が射程をとりちがえたような感じで、この作品によって何を語ろうとしたのか、たしかに受けとれないままに終った。」
篠田節子
女39歳
7 「想像力を刺戟されるほどの、緊迫感がないままに終ってしまった。描写は巧みであるが、さほどおどろかなかった。」
梁石日
男58歳
29 「細部に実感があり、あがったり、さがったりをくりかえす内容を、むさぼるように味わった。」「だが美味を楽しんだのは、アパッチ族の終末までであった。そのあとは、どうも別の話になっているような印象をうけた。」「導入部から中盤へかけてのいきおいを終末へ一気になだれこみ、余韻をひくような仕上がりにできないものであろうか。」
池宮彰一郎
男72歳
25 「いろいろと細工をこらすべき山場が、読者をひきこむ技をあらわすことなく終ってしまう。かたい感じの熟語で感興の動きをプツンと切るような場面がいくつもある。」「流露するところがいかにもすくないので、大名と家来との応酬などの現実感の薄さが目立ってしまう。」
内海隆一郎
男58歳
13 「実に手のこんだ作品である。老いた芸人夫婦と娘夫婦の生活を、低い声音で語りつづけ、飽きさせることがない。」「あまりに欠点なくできあがっているので、どこか実感がうすい。日々の軌道を踏みはずす人物が、ひとりでも出てくれば、いきおいがちがってきたのではないか。」
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他の選考委員
山口瞳
渡辺淳一
平岩弓枝
田辺聖子
黒岩重吾
阿刀田高
井上ひさし
五木寛之
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選考委員
田辺聖子女67歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
佳篇多し 総行数137 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
赤瀬川隼
男63歳
41 「「ほとほと……」「夜行列車」は好短篇と思い、更に「陽炎球場」は野球オンチの心なき身にも共感できる味わいがある。」「「消えたエース」は作為が目立ち、味噌の味噌くさきに似て、小説的工夫のひねりがちょっと過ぎたかんじ、やや、あざとい。」「私は文学賞の選考委員資格に性差はないと思っているが、ただ、こと野球に関してはどうかな、と思ってしまった。」
東郷隆
男43歳
36 「兎まんじゅうやトロイメライの小道具もよく効き、私には酩酊度のつよい、たのしい、馥郁たる小説であった。ただこの手の作品は読み手を択ぶ。」「こういう小説に、〈なんのためにこれを書いたのか〉と詰問してもはじまらない。」「文学の層の厚み、というのはこういう酩酊小説をも包含することにあるので、賞は逸しられたけれども、秀作とよんでいいと思う。」
篠田節子
女39歳
17 「新機軸をうち出した点、また、感染源探索の推理も面白かったのだが、やはり人間的魅力を具えた主人公の登場をまって、はじめて小説の要が出来、作品が引き緊まるのではないか。将来性ある作者なので期待できる。」
梁石日
男58歳
16 「生々たる膂力、庶民の発動する生命力から生れる哄笑。元気のいい、面白い小説だった。」「荒削りだが、私はそこを愛する。しかし作品自体が賞を寄せつけないような、不羈奔放なところがあり、賞と相性が悪いとしか、いいようがない。」
池宮彰一郎
男72歳
9 「前半、私は面白く読み進んだのだが、後段になるに従い主人公がよくみえない。ことに彼の得意技にはちょっと困惑してしまう。」
内海隆一郎
男58歳
16 「善人ばかり出すぎる、という批評もあるが、善人の毒、というものもある。百面相の老芸人が人が好すぎるため周囲ははらはらする、これも人生の毒である。文学性ある良質のエンターテインメントを提供する、というのが本賞の目的であれば、この作品など妥当な線ではないかと思われたが、いま一息票が伸びず残念だった。」
  「今回は私にとって好もしい作品が多いという気がした。」
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他の選考委員
山口瞳
渡辺淳一
平岩弓枝
津本陽
黒岩重吾
阿刀田高
井上ひさし
五木寛之
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選考委員
黒岩重吾男71歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
陽炎球場の魅力 総行数95 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
赤瀬川隼
男63歳
24 「とくに惹かれたのは「陽炎球場」だった。この一篇が存在したことは、私にとって救いといって良い。(引用者中略)秀作である。」「他の作品は標準作だが、「消えたエース」は話を都合良く作り過ぎている。」「本にするために安易な作品を書くことは避けるべきであろう。」
東郷隆
男43歳
4 「味があるが、作者が何を訴えたいかが伝わって来ない。」
篠田節子
女39歳
8 「まだ作者が小説をよく理解していないような気がする。パニックに襲われた人間がやたらに動き廻るだけでは、小説とはいえない。」
梁石日
男58歳
17 「人間の熱気が溢れている。」「本作品に賭けた作者の意気込みは理解出来るが、読後の感動は薄かった。作者は溢れる思いを小説に叩きつけたのだが抑制力がない。故に熱気と熱気がぶつかり合っても炎にならずにお互いを消してしまった。残念である。」
池宮彰一郎
男72歳
4 「味があるが、作者が何を訴えたいかが伝わって来ない。」
内海隆一郎
男58歳
16 「旨い小説である。ただその旨さは人生に傷を受けていない優等生的な旨さであって、ところどころ頷きながらも作品に酔えない。」「綺麗事で済ませた方が確かにストーリー作りは楽だが、読者はついて行けない。何故氏は人間臭さを避けているのだろうか。」
  「今回も前回と同様に感銘を受ける作品が少なかった。」「一寸した風で浮き上がるような人間が増えてくると、余韻のある小説が生まれ難くなるのも仕方のないことなのか。」
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他の選考委員
山口瞳
渡辺淳一
平岩弓枝
津本陽
田辺聖子
阿刀田高
井上ひさし
五木寛之
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選考委員
阿刀田高男60歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
初めての選考 総行数154 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
赤瀬川隼
男63歳
14 「なによりも行間に含みのある精緻な文章を評価したいと思った。」「「ほとほと……」は万葉集の歌と、稚拙な恋とがうまく呼応して味わいが深い。」「「陽炎球場」は、ベースボールがどれほど美しいドリームであったか、あらためて懐しさを覚えさせてくれた。」
東郷隆
男43歳
27 「二度、三度と読んでみると、この種の短篇に望ましい“舌をまくような冴え”が私には感じられなかった。うまいけれど、幻想小説として、よくあるパターンなのである。」「泉鏡花のような作家が人間界と魔界の仲介役を演じている、という設定は、許容されるかどうかという意見はともかく、それが狙いであるならば、もう一工夫、技が必要だったのではなかろうか。」
篠田節子
女39歳
29 「精力的な取材を背後に感じ、また的確な表現力にも感心したが、小説として楽しむことができなかった。」「パニックだけが目立ち、人間が立って迫って来ない。」「新しいものへの挑戦をこころよく感じながらも、この作品を強く推すことができなかった。」
梁石日
男58歳
21 「あらっぽい作りの作品である。」「小説を描く視点にも不適当が見られる。が、もう一度読み返し、さらに他の作品と比べてみると、骨太の魅力がある。」「――この作家は、明確に訴えたいものを持っている――」「その情熱に拍手を送りたくなった。」「受賞に至らなかったのは、作品として、もう一つ、仕上げの丁寧さを欠いていたからだろう。」
池宮彰一郎
男72歳
19 「賞の対象として眺めると、あまりにも型通りであり、講談などによくあるように“都合よく”事が運ばれ過ぎている。」「この作品には手だれの軽いさばきといった印象が拭いきれなかった。」
内海隆一郎
男58歳
24 「欠点を見つけるのがむつかしい。百面相を演ずる芸人とその家族がサラリと味よく、巧みに描かれている。が、インパクトが足りない。」「ばからしい芸を、当人もそれを充分に承知していながら演じ続ける執念を、ありきたりのパターンではなく、もう少し鮮明に見せてくれたら、と惜しんだ。心残りの作品である。」
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他の選考委員
山口瞳
渡辺淳一
平岩弓枝
津本陽
田辺聖子
黒岩重吾
井上ひさし
五木寛之
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選考委員
井上ひさし男60歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
野球小説の白眉 総行数144 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
赤瀬川隼
男63歳
28 「氏のすぐれた資質がよくあらわれている。すなわち、行儀よく均整のとれた物語をつくる技量、それを支える良質の文章。中でも「陽炎球場」は、氏のもう一つの長所である無垢で軽やかな幻想性を散りばめながらひときわまぶしく光っている。(引用者中略)これは名作だ。」
東郷隆
男43歳
18 「鏡花を怪し者たちの同類にしたのは、この種の物語の規則から外れているのではないか。規則にこだわる必要はないが、しかしこれでは鏡花その人が怪し者になってしまう。少し乱暴な規則違反だ。」
篠田節子
女39歳
20 「登場人物全員にそれぞれとぼけた味があり、中でも市の保健センターの永井係長は秀逸で、人間くさくてじつにいい。もっとも話の先行きはたやすく読める。しかも読んだ通りに事件が進展する。これは物語に一つも二つも「ひねり」が欠けているせいだ。」
梁石日
男58歳
25 「大村収容所送りになる金を命がけで待つ女、初子がすばらしい。」「読者は、漢語を数多く駆使した独特の文体に最初のうちはてこずるが、先へ進むにつれて、そのごつごつした文体が金と初子の運命を描くのに最適であったことを理解する。」「『白球残映』とともに受賞に値すると考えて選考の席に臨んだ」
池宮彰一郎
男72歳
29 「枚数が足りないせいか、あるいはそれが氏の文章の癖なのか、いつも文章の後ろに張り扇の音が聞こえていて、やや興を殺がれる。」「家来が主君に向かって、ここに描かれているような接し方をすれば、即座に切腹ということになるはず。」
内海隆一郎
男58歳
24 「物語にも文章にも破綻はなく、読者は安心して作者の創り出す物語世界に寄りかかっていることができる。けれどもやがて話があまりにも都合よく運びすぎてはいないかという不安が襲ってくる。」「血の噴き出すようなエピソードを挿み込んで、この予定調和的世界を一旦は突き崩すという作家的戦略が必要なのではないだろうか。」
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他の選考委員
山口瞳
渡辺淳一
平岩弓枝
津本陽
田辺聖子
黒岩重吾
阿刀田高
五木寛之
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選考委員
五木寛之男62歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
こころ残り 総行数99 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
赤瀬川隼
男63歳
31 「私は後半三つの野球小説よりも、学生時代を描いた前半二作品につよく惹かれるところがあった。ことに『夜行列車』の背景をなしている時代相の描写に、胸をしめつけられるような感慨をおぼえたものだ。」
東郷隆
男43歳
14 「鏡花の時代を描いて魅力的な作品だった。」「しかし、村松定孝氏の『あぢさゐ供養頌――わが泉鏡花――』のような名作を読んでしまうと、『そは何者』の奥行きがやや弱く見えてくるのも事実である。」
篠田節子
女39歳
14 「デビュー作の『絹の変容』以来、小説を作って(原文傍点)いこうという強い志向が篠田氏の作風にはある。この国の小説風土のなかに新しい世界をもたらす可能性を感じるといえば好意的すぎるだろうか。」
梁石日
男58歳
37 「異色の候補作だった。こういう作品が受賞すれば、直木賞のイメージも大きく変るかもしれないと思って一票を投じたのだ。この長篇には、何かを書かずにはいられないという、つよい衝動がみなぎっている。その粗削りなエネルギーこそ最近の小説に欠けている大事なものだろう。」
池宮彰一郎
男72歳
0  
内海隆一郎
男58歳
0  
  「(引用者注:「夜を賭けて」と「白球残映」の)二作授賞という考えもないではなかったが、どちらか一つにしようという気配が大勢を占めて、投票ということになった。」
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他の選考委員
山口瞳
渡辺淳一
平岩弓枝
津本陽
田辺聖子
黒岩重吾
阿刀田高
井上ひさし
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受賞者・作品
赤瀬川隼男63歳×各選考委員 
『白球残映』
短篇集5篇 417
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
山口瞳
男68歳
31 「「思いが深ければ誰にでも良い文章が書けるはずです」と言ったのは向田邦子さんである。(引用者中略)この発言を実証してくれた小説(文章)が短篇集『白球残映』のなかの「陽炎球場」であるような気がして仕方がない。」「私は「陽炎球場」があるので『白球残映』の赤瀬川さんだけを強く推した。」
渡辺淳一
男61歳
24 「「夜行列車」と「陽炎球場」がそれなりの出来で、文章も繊細だが、全体に負の人物に甘えすぎて、感傷に流れすぎる傾向がある。むろんそれをよしとする人はいるだろうが、そうしたつくりの裏側が見えてくると、興醒めすることもある。作中、最も新しい作品といわれる「消えたエース」が最も見劣りしたのも、気にかかるところであった。」
平岩弓枝
女63歳
18 「(引用者注:「百面相」と「白球残映」を)推した。」「第九十回の直木賞候補作品であった「潮もかなひぬ」が長いこと心に残っていた。」「ただし、私自身は野球に知識がなく、この作品の芯にある狂的な野球に対する熱情が実感出来なかったのは口惜しかった。」
津本陽
男66歳
10 「五つの短篇のうち「陽炎球場」「夜行列車」などが好きな作品である。酸っぱい含羞の味わいをたたえた作者の感情が、音をたて流露する。読んでいる私の内部に、喚起されるいくつもの記憶がある。人生の諸相のひとつにつながるひろがりがみちびきだす酸味であろう。」
田辺聖子
女67歳
41 「「ほとほと……」「夜行列車」は好短篇と思い、更に「陽炎球場」は野球オンチの心なき身にも共感できる味わいがある。」「「消えたエース」は作為が目立ち、味噌の味噌くさきに似て、小説的工夫のひねりがちょっと過ぎたかんじ、やや、あざとい。」「私は文学賞の選考委員資格に性差はないと思っているが、ただ、こと野球に関してはどうかな、と思ってしまった。」
黒岩重吾
男71歳
24 「とくに惹かれたのは「陽炎球場」だった。この一篇が存在したことは、私にとって救いといって良い。(引用者中略)秀作である。」「他の作品は標準作だが、「消えたエース」は話を都合良く作り過ぎている。」「本にするために安易な作品を書くことは避けるべきであろう。」
阿刀田高
男60歳
14 「なによりも行間に含みのある精緻な文章を評価したいと思った。」「「ほとほと……」は万葉集の歌と、稚拙な恋とがうまく呼応して味わいが深い。」「「陽炎球場」は、ベースボールがどれほど美しいドリームであったか、あらためて懐しさを覚えさせてくれた。」
井上ひさし
男60歳
28 「氏のすぐれた資質がよくあらわれている。すなわち、行儀よく均整のとれた物語をつくる技量、それを支える良質の文章。中でも「陽炎球場」は、氏のもう一つの長所である無垢で軽やかな幻想性を散りばめながらひときわまぶしく光っている。(引用者中略)これは名作だ。」
五木寛之
男62歳
31 「私は後半三つの野球小説よりも、学生時代を描いた前半二作品につよく惹かれるところがあった。ことに『夜行列車』の背景をなしている時代相の描写に、胸をしめつけられるような感慨をおぼえたものだ。」
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他の候補作
東郷隆
「そは何者」
篠田節子
『夏の災厄』
梁石日
『夜を賭けて』
池宮彰一郎
「千里の馬」
内海隆一郎
『百面相』
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候補者・作品
東郷隆男43歳×各選考委員 
「そは何者」
短篇 72
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
山口瞳
男68歳
0  
渡辺淳一
男61歳
10 「用意周到に準備して書かれた作品のようだが、その用意したところがいささかこうるさくて、一本の線に収斂してこないもどかしさがある。才もあり力もある作家だが、このところいささか難しい陥穽に落ちこんでいるようである。」
平岩弓枝
女63歳
26 「題名に凝りすぎて失敗しているように思う。作品を読み終った者は、そこで作者から宿題を押しつけられた気分で感じがよくない。」「著名な人物を、こういう形で作品の中に登場させるには、充分の配慮をお願いしたい。」
津本陽
男66歳
11 「作者が日頃手なれた題材ではないが、巧みな展開に隙がない。」「結末が射程をとりちがえたような感じで、この作品によって何を語ろうとしたのか、たしかに受けとれないままに終った。」
田辺聖子
女67歳
36 「兎まんじゅうやトロイメライの小道具もよく効き、私には酩酊度のつよい、たのしい、馥郁たる小説であった。ただこの手の作品は読み手を択ぶ。」「こういう小説に、〈なんのためにこれを書いたのか〉と詰問してもはじまらない。」「文学の層の厚み、というのはこういう酩酊小説をも包含することにあるので、賞は逸しられたけれども、秀作とよんでいいと思う。」
黒岩重吾
男71歳
4 「味があるが、作者が何を訴えたいかが伝わって来ない。」
阿刀田高
男60歳
27 「二度、三度と読んでみると、この種の短篇に望ましい“舌をまくような冴え”が私には感じられなかった。うまいけれど、幻想小説として、よくあるパターンなのである。」「泉鏡花のような作家が人間界と魔界の仲介役を演じている、という設定は、許容されるかどうかという意見はともかく、それが狙いであるならば、もう一工夫、技が必要だったのではなかろうか。」
井上ひさし
男60歳
18 「鏡花を怪し者たちの同類にしたのは、この種の物語の規則から外れているのではないか。規則にこだわる必要はないが、しかしこれでは鏡花その人が怪し者になってしまう。少し乱暴な規則違反だ。」
五木寛之
男62歳
14 「鏡花の時代を描いて魅力的な作品だった。」「しかし、村松定孝氏の『あぢさゐ供養頌――わが泉鏡花――』のような名作を読んでしまうと、『そは何者』の奥行きがやや弱く見えてくるのも事実である。」
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他の候補作
赤瀬川隼
『白球残映』
篠田節子
『夏の災厄』
梁石日
『夜を賭けて』
池宮彰一郎
「千里の馬」
内海隆一郎
『百面相』
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候補者・作品
篠田節子女39歳×各選考委員 
『夏の災厄』
長篇 961
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
山口瞳
男68歳
8 「私は小説は男女のことを書くものだと思っている。もっとセクシーでなければ話にならない。キッチリ書き込んであるのにドラマ性に乏しい。」
渡辺淳一
男61歳
16 「よく勉強して書き上げられた小説のようだが、初めに事件というか推理ありきで、それに人物が添えものになっている。」「この種の小説があっていいし、好きな人がいることもわかるが、文学賞の対象となるものではないだろう。」
平岩弓枝
女63歳
20 「読み進む中にどんどん怖しくなって眠れなくなる。」「たまたまオウム事件などというものとぶつかったせいで、変にリアリティのある身近な話のように感じられて、楽しみたくても楽しめない結果になったのは、この作品にとって不運であった。」
津本陽
男66歳
7 「想像力を刺戟されるほどの、緊迫感がないままに終ってしまった。描写は巧みであるが、さほどおどろかなかった。」
田辺聖子
女67歳
17 「新機軸をうち出した点、また、感染源探索の推理も面白かったのだが、やはり人間的魅力を具えた主人公の登場をまって、はじめて小説の要が出来、作品が引き緊まるのではないか。将来性ある作者なので期待できる。」
黒岩重吾
男71歳
8 「まだ作者が小説をよく理解していないような気がする。パニックに襲われた人間がやたらに動き廻るだけでは、小説とはいえない。」
阿刀田高
男60歳
29 「精力的な取材を背後に感じ、また的確な表現力にも感心したが、小説として楽しむことができなかった。」「パニックだけが目立ち、人間が立って迫って来ない。」「新しいものへの挑戦をこころよく感じながらも、この作品を強く推すことができなかった。」
井上ひさし
男60歳
20 「登場人物全員にそれぞれとぼけた味があり、中でも市の保健センターの永井係長は秀逸で、人間くさくてじつにいい。もっとも話の先行きはたやすく読める。しかも読んだ通りに事件が進展する。これは物語に一つも二つも「ひねり」が欠けているせいだ。」
五木寛之
男62歳
14 「デビュー作の『絹の変容』以来、小説を作って(原文傍点)いこうという強い志向が篠田氏の作風にはある。この国の小説風土のなかに新しい世界をもたらす可能性を感じるといえば好意的すぎるだろうか。」
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他の候補作
赤瀬川隼
『白球残映』
東郷隆
「そは何者」
梁石日
『夜を賭けて』
池宮彰一郎
「千里の馬」
内海隆一郎
『百面相』
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候補者・作品
梁石日男58歳×各選考委員 
『夜を賭けて』
長篇 792
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
山口瞳
男68歳
16 「大変な労作であり教えられるところも多かったが、あまりに面白すぎてかえって平板になるところがあった。」「私はどこという指摘ができないが、この小説には「小説以前」という感じがあって、どこかに隙間がある。」
渡辺淳一
男61歳
35 「候補作中でただ一つ、作者が熱く訴えたいものをもっていて、その気迫に惹きこまれた。しかし欠点も多く、まず文章が荒いが、その荒さが重層的に連ねられると別の効果が生じ、前半の冗長さと後半の駆け足の構成の乱れも、初めて知らされる事実の前には、さほどの傷とも思えない。」「ドキュメンタリーやレポート的な面白さで、そこを咀嚼した上でのものかとなると、いささか疑問が生じてくる。」
平岩弓枝
女63歳
16 「前大半のアパッチ族事件と大村収容所の部分、更に最後の作者らしい人物が登場する現代の部分とが、ばらばらになっていて、一本の作品として熟成されていないのが難になった。」「しかし、力強さと人間の厚みを描いた点では今回の候補作の中でとび抜けている。」
津本陽
男66歳
29 「細部に実感があり、あがったり、さがったりをくりかえす内容を、むさぼるように味わった。」「だが美味を楽しんだのは、アパッチ族の終末までであった。そのあとは、どうも別の話になっているような印象をうけた。」「導入部から中盤へかけてのいきおいを終末へ一気になだれこみ、余韻をひくような仕上がりにできないものであろうか。」
田辺聖子
女67歳
16 「生々たる膂力、庶民の発動する生命力から生れる哄笑。元気のいい、面白い小説だった。」「荒削りだが、私はそこを愛する。しかし作品自体が賞を寄せつけないような、不羈奔放なところがあり、賞と相性が悪いとしか、いいようがない。」
黒岩重吾
男71歳
17 「人間の熱気が溢れている。」「本作品に賭けた作者の意気込みは理解出来るが、読後の感動は薄かった。作者は溢れる思いを小説に叩きつけたのだが抑制力がない。故に熱気と熱気がぶつかり合っても炎にならずにお互いを消してしまった。残念である。」
阿刀田高
男60歳
21 「あらっぽい作りの作品である。」「小説を描く視点にも不適当が見られる。が、もう一度読み返し、さらに他の作品と比べてみると、骨太の魅力がある。」「――この作家は、明確に訴えたいものを持っている――」「その情熱に拍手を送りたくなった。」「受賞に至らなかったのは、作品として、もう一つ、仕上げの丁寧さを欠いていたからだろう。」
井上ひさし
男60歳
25 「大村収容所送りになる金を命がけで待つ女、初子がすばらしい。」「読者は、漢語を数多く駆使した独特の文体に最初のうちはてこずるが、先へ進むにつれて、そのごつごつした文体が金と初子の運命を描くのに最適であったことを理解する。」「『白球残映』とともに受賞に値すると考えて選考の席に臨んだ」
五木寛之
男62歳
37 「異色の候補作だった。こういう作品が受賞すれば、直木賞のイメージも大きく変るかもしれないと思って一票を投じたのだ。この長篇には、何かを書かずにはいられないという、つよい衝動がみなぎっている。その粗削りなエネルギーこそ最近の小説に欠けている大事なものだろう。」
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他の候補作
赤瀬川隼
『白球残映』
東郷隆
「そは何者」
篠田節子
『夏の災厄』
池宮彰一郎
「千里の馬」
内海隆一郎
『百面相』
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候補者・作品
池宮彰一郎男72歳×各選考委員 
「千里の馬」
短篇 96
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
山口瞳
男68歳
0  
渡辺淳一
男61歳
12 「前の高杉晋作のときのような、骨格だけのやせた小説といった印象は薄れ、大分、肉づきがよくなったが、人間を簡単に動かしすぎる安易さは消えていない。」「浅野内匠頭や大石内蔵助とのいきさつなどは、いかにもつくりものじみて興を殺ぐ。」
平岩弓枝
女63歳
26 「あまりにも書き尽されている素材なので、作者の独自な歴史観とか、或いは新資料の発見がないと、なかなか魅力的な小説にはなりにくい。」「気になったのは、この時代の主従関係が、現代の中小企業の社長と部下のような気易さで書かれている点で、身分意識の強い武家社会では、殿様と家来は、こんなに気易く話も出来ないし、してはならない。」
津本陽
男66歳
25 「いろいろと細工をこらすべき山場が、読者をひきこむ技をあらわすことなく終ってしまう。かたい感じの熟語で感興の動きをプツンと切るような場面がいくつもある。」「流露するところがいかにもすくないので、大名と家来との応酬などの現実感の薄さが目立ってしまう。」
田辺聖子
女67歳
9 「前半、私は面白く読み進んだのだが、後段になるに従い主人公がよくみえない。ことに彼の得意技にはちょっと困惑してしまう。」
黒岩重吾
男71歳
4 「味があるが、作者が何を訴えたいかが伝わって来ない。」
阿刀田高
男60歳
19 「賞の対象として眺めると、あまりにも型通りであり、講談などによくあるように“都合よく”事が運ばれ過ぎている。」「この作品には手だれの軽いさばきといった印象が拭いきれなかった。」
井上ひさし
男60歳
29 「枚数が足りないせいか、あるいはそれが氏の文章の癖なのか、いつも文章の後ろに張り扇の音が聞こえていて、やや興を殺がれる。」「家来が主君に向かって、ここに描かれているような接し方をすれば、即座に切腹ということになるはず。」
五木寛之
男62歳
0  
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他の候補作
赤瀬川隼
『白球残映』
東郷隆
「そは何者」
篠田節子
『夏の災厄』
梁石日
『夜を賭けて』
内海隆一郎
『百面相』
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候補者・作品
内海隆一郎男58歳×各選考委員 
『百面相』
長篇 574
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
山口瞳
男68歳
10 「叮嚀に書きこんである(特に女主人公の久江、小料理屋の内幕)ので好感が持てるが、そのぶん百面相の波多野栄一の話と割れてしまったのが惜しまれる。また底辺で稼ぐ芸人のもつイヤラシサにもっと触れてもらいたかった。」
渡辺淳一
男61歳
26 「文章が安定し、登場人物のデッサンも適格で、もっとも安心して読めた。」「今回は実在のやや癖のある人物を主人公にしたせいか、かなり引き締まったようである。それでもなお不満の声があったが、そこから先は作家の資質的なもので、そこまで責めるのは少し酷かもしれない。」
平岩弓枝
女63歳
26 「(引用者注:「百面相」と「白球残映」を)推した。」「登場人物に生彩がある。」「小料理屋を開業しての悪戦苦闘ぶりに多く筆を費しているが、これも読みごたえがあった。強いて難をいえば、(引用者中略)人間の奥にあるどろどろした毒の部分に触れない点ではないかと思う。とはいえ、それは作者の一つの持味であろうし、私自身はこういう作品が好きである。」
津本陽
男66歳
13 「実に手のこんだ作品である。老いた芸人夫婦と娘夫婦の生活を、低い声音で語りつづけ、飽きさせることがない。」「あまりに欠点なくできあがっているので、どこか実感がうすい。日々の軌道を踏みはずす人物が、ひとりでも出てくれば、いきおいがちがってきたのではないか。」
田辺聖子
女67歳
16 「善人ばかり出すぎる、という批評もあるが、善人の毒、というものもある。百面相の老芸人が人が好すぎるため周囲ははらはらする、これも人生の毒である。文学性ある良質のエンターテインメントを提供する、というのが本賞の目的であれば、この作品など妥当な線ではないかと思われたが、いま一息票が伸びず残念だった。」
黒岩重吾
男71歳
16 「旨い小説である。ただその旨さは人生に傷を受けていない優等生的な旨さであって、ところどころ頷きながらも作品に酔えない。」「綺麗事で済ませた方が確かにストーリー作りは楽だが、読者はついて行けない。何故氏は人間臭さを避けているのだろうか。」
阿刀田高
男60歳
24 「欠点を見つけるのがむつかしい。百面相を演ずる芸人とその家族がサラリと味よく、巧みに描かれている。が、インパクトが足りない。」「ばからしい芸を、当人もそれを充分に承知していながら演じ続ける執念を、ありきたりのパターンではなく、もう少し鮮明に見せてくれたら、と惜しんだ。心残りの作品である。」
井上ひさし
男60歳
24 「物語にも文章にも破綻はなく、読者は安心して作者の創り出す物語世界に寄りかかっていることができる。けれどもやがて話があまりにも都合よく運びすぎてはいないかという不安が襲ってくる。」「血の噴き出すようなエピソードを挿み込んで、この予定調和的世界を一旦は突き崩すという作家的戦略が必要なのではないだろうか。」
五木寛之
男62歳
0  
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他の候補作
赤瀬川隼
『白球残映』
東郷隆
「そは何者」
篠田節子
『夏の災厄』
梁石日
『夜を賭けて』
池宮彰一郎
「千里の馬」
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