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第114回
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平成7年/1995年下半期
(平成8年/1996年1月11日決定発表/『オール讀物』平成8年/1996年3月号選評掲載)
選考委員  阿刀田高
男60歳
黒岩重吾
男71歳
井上ひさし
男61歳
田辺聖子
女67歳
平岩弓枝
女63歳
渡辺淳一
男62歳
津本陽
男66歳
五木寛之
男63歳
藤沢周平
男68歳
選評総行数  156 119 164 153 146 83 72 98  
選評なし
候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数
小池真理子 『恋』
760
女43歳
18 31 35 36 32 53 44 36    
藤原伊織 『テロリストのパラソル』
604
男47歳
23 29 45 64 38 15 41 38    
藤田宜永 『巴里からの遺言』
524
男45歳
19 27 20 27 23 0 0 7    
服部真澄 『龍の契り』
1079
女34歳
41 13 18 18 23 0 0 4    
北村薫 『スキップ』
874
男46歳
22 8 25 0 7 0 0 7    
高橋直樹 「異形の寵児」
234
男35歳
31 5 22 0 25 0 0 4    
                欠席
年齢/枚数の説明   見方・注意点

このページの選評出典:『オール讀物』平成8年/1996年3月号
1行当たりの文字数:13字


選考委員
阿刀田高男60歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
文章の力 総行数156 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
小池真理子
女43歳
18 「化けましたね。まことに、まことに、舌を巻く巧みさだ。深い意味での文章の力を痛感した。」「――これが小説だな――と、わけもなく納得した。」「今後の活躍については太鼓判を押してもよい、と私は信じている。」
藤原伊織
男47歳
23 「推理小説としては、いくつもの欠陥が指摘できるだろう。」「しかし、人物の描写力がただごとではない。」「よい点はいくつもあるが、とりわけ文章の中にそこはかとなく漂うユーモア感覚、これは、なかなか得がたい特色だ。」「この筆力ならば、きっと今後もよい作品を書いてくれるだろう、と私はこのギャンブル好きの作家に賭けてみたくなった。」
藤田宜永
男45歳
19 「にぎやかで、エピソードも多く、時代も交錯し、登場する人名も多彩である。」「軽いと思えば、また重い。しかし、どれもみな中途半端で、その中途半端は作者の意図したものであったろうが、一流の技にまで達していない、と私には思えてしまった。」
服部真澄
女34歳
41 「処女作という話だが、ならばものすごい腕力だ。」「ただ弱点もある。人物の描写が際立たず、魅力的な人格が見えてこない。」「香港の返還をめぐるイギリスと中国の密約、これを受け皿として発見したところが、この作家の第一の手柄だろう。が、それを評価しながらも、その一方で、――それを除けば、なにが残るのか――という不安も感じた。」
北村薫
男46歳
22 「――これだけの設定を設けたわりには、最後に用意されているもののインパクトが薄いのではないか――という思いが拭いきれなかった。」「印象は、ただの学園小説でしかない。作者がモチーフとした“時と人”の問題が、うまく響いて来なかった。」
高橋直樹
男35歳
31 「新人賞受賞の頃に比べれば、確実にプロの手に変っている。」「タイトルで明白に表明しているわりには、そのモチーフがぼやけており、なによりも、それが現代人にとってなんなのか、感動が響いて来ないのである。」
  「力作揃いのため厳しい選考会となった。」
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他の選考委員
黒岩重吾
井上ひさし
田辺聖子
平岩弓枝
渡辺淳一
津本陽
五木寛之
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選考委員
黒岩重吾男71歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
毒に痺れる 総行数119 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
小池真理子
女43歳
31 「信太郎助教授と雛子夫人の人物描写には虚を感じさせない存在感がある。二人の会話や動作が織りなす物語は、夢幻的な絨毯の一角獣にも似ている。このような絨毯に私ほどの年齢の読者を安心して寝転がせる作者の才能は尋常ではない。」「信太郎と雛子が異母兄妹であったとするくだりで、手品の種明かしめいたものを感じたが、作品の酔いを醒ますほどではなかった。」
藤原伊織
男47歳
29 「私が感心したのは、主人公の観察眼には無数の針があって次々と人間を抉ってゆくにも拘らず、針が真綿でくるまれ文章に溶けていることである。」「ラストの部分で纏めて事件を説明しなければならなくなる。案の定そうなり、軽い失望感を覚えた。だがこれは推理小説の宿命かもしれないし、作者の才能は間違いなく、受賞に賛成した。」
藤田宜永
男45歳
27 「祖父・忠次の存在が作品を束縛し、作者はストーリーを作ることに筆の自由を押えられた感じがする。」「私は第一話の「大無頼漢通りの大男」を比較的買った。」「第二話以下はストーリーを追い過ぎ余韻が消えてしまった。」
服部真澄
女34歳
13 「直木賞が求めている小説ではないような気がする。」「植民地時代の完了を告げる香港返還は、中国の新しい生命のひとつである。一片の密約書の存在など、朽ちた落葉よりも無意味であろう。日本の外交官がやたらに動き廻るのも滑稽である。」
北村薫
男46歳
8 「余り抵抗なく読めたが、読後感は薄い。主人公は十七歳の高校生に戻っている。当然、四十代の夫に対する感情はより複雑な筈である。それが描けていないところに本小説の弱さがある。」
高橋直樹
男35歳
5 「筆が走り過ぎ、文章もところどころ講談調になっている。達者さと小説の感動は別である。」
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他の選考委員
阿刀田高
井上ひさし
田辺聖子
平岩弓枝
渡辺淳一
津本陽
五木寛之
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選考委員
井上ひさし男61歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
文章を思案すると 総行数164 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
小池真理子
女43歳
35 「文章力において(引用者中略)最高の達成をみている」「死者が語るという工夫は巧者なものであった。」「読み終わったとき、読者に『恋』という題名が、ちがった意味に見えてくる。凝縮度の高い華麗な文体で語られた不思議な恋の始まりと行く末、読んだかいがあった。」
藤原伊織
男47歳
45 「文章力において(引用者中略)最高の達成をみている」「活発な精神の往復運動が独特の、得難いヒューモアを生み出している。話は深刻なのに、作品はどこを切り取っても質のいい諧謔で満たされているのだ。」「結尾の、関係者一同が寄り合ってすべてが解決するというご都合主義も、「謎解き」がこの作品の題目の一つであることを思えば、読者は喜んでこれを許すにちがいない。」
藤田宜永
男45歳
20 「一話一話の出来栄えはよろしく、文章も平明であり、目立たぬやり方で言葉の巧緻を尽くしてもいる。にもかかわらず、読後の印象はどんよりと澱んでいる。展開の軸になっている影の主人公、祖父の在りよう生きようが少し弱いからだ。」
服部真澄
女34歳
18 「物語作家としての膂力は十分だ。しかし文章力は、正直に云って、まだ不十分である。」「出来の悪い文章が、せっかく築き上げた出来のいい話の腰を折ってしまった。」
北村薫
男46歳
25 「おもしろい設定だが、かつての家族にたいしてヒロインがまるで冷淡で、彼女がしたことといえば、生家のあったところへ訪ねて行くだけである。」「読者は、作者から大事なたのしみの一つを与えられずに終わってしまったのである。文体の凝縮度も、もう一つ足りないように感じる。」
高橋直樹
男35歳
22 「まことに力のこもった作品である。」「しかし文章までいささか力んでしまったような気味合いがある。」「古典主義を背骨にした文体はいい。いや、近頃、推奨に価いする態度であると感嘆の念さえ覚える。しかし、いい意味での俗臭がもっとうんとあってもよいのではないだろうか。」
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他の選考委員
阿刀田高
黒岩重吾
田辺聖子
平岩弓枝
渡辺淳一
津本陽
五木寛之
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選考委員
田辺聖子女67歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
力作ぞろいの幸せ 総行数153 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
小池真理子
女43歳
36 「推理小説的な構成をとっていることも成功の一つだろうし、軽井沢の描写も、ラストのマルメロの扱いも効果的だ。――軽井沢の風のようにすぎてゆく人生の一瞬を見る思いのする佳篇であった。作者の体温と脈搏が感じられた。」
藤原伊織
男47歳
64 「全共闘の〈疾風怒涛時代〉(引用者中略)が人の運命にどんな力を及ぼしたかを、推理小説に仕立ててあるのが秀抜の魅力である。」「何より魅力的なのは文章の快いリズムで、会話におけるいささかのケレン味もいやみではなくよく消化れ、淡々たる味だが水とはちがう。」「逝った青春への鎮魂歌といえようか。すぐれた一級のエンターテインメントだと思う。」
藤田宜永
男45歳
27 「(引用者注:受賞作の)二作についで票をあつめた」「凝ったしかけで、今世紀初頭のパリという都の魅力をも伝える。たしかに趣向に一点投じたい面白さがあるが、そのぶん、しかけが少々あざとくなる恐れがないでもない。」「かなりの才筆だと思った。」
服部真澄
女34歳
18 「かなりの長篇だが一気に読ませる巧妙な設定と話法に脱帽。」「この作品は文章をたのしむ性質のものでも、作者の体温と脈搏を感じるものでもない。冒険活劇だけれども志のあるチャンバラだ。」
北村薫
男46歳
0  
高橋直樹
男35歳
0  
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他の選考委員
阿刀田高
黒岩重吾
井上ひさし
平岩弓枝
渡辺淳一
津本陽
五木寛之
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選考委員
平岩弓枝女63歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
時代が求めるもの 総行数146 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
小池真理子
女43歳
32 「委員の殆んどが指摘したように、主人公の男女が兄妹である必要は全くないと私も思った。(引用者中略)少くとも、この小説では不要というか、マイナスであった。」「けれども、それでも、この作品を受賞からはずせなかったのは、感嘆するほどの作者の筆力、文章力で、結局、私もなんのかのといいながら、その魅力に溺れてしまった。」
藤原伊織
男47歳
38 「主犯の桑野という男が最後にひたすらせりふでその生涯を説明するせいもあって、どうも龍頭蛇尾の人間にしかみえない」「小説の醍醐味を心得すぎるほど心得た作品であり、切れ味が実に見事となると、やっぱり、瑕瑾にこだわる必要はないと判断してしまう。受賞する所以であろう。」
藤田宜永
男45歳
23 「一番、小説らしいと思えた」「穏やかで安定感があり、しかも粋である。」「六話の中では、とりわけ「凱旋門のかぐや姫」が心に残ったし、好きである。」「この作品を最後まで支持出来なかったのは多数決のせいでもあるが、もう一つ、現代の小説の上を流れているエネルギッシュで奇妙なほどの迫力を持った何かがその作品に集結していると、少々の欠点なんぞをはねとばしてしまって読者の心をわしづかみにする。そういった傾向に抗し得なかったようにも思う。」
服部真澄
女34歳
23 「なんという欲ばりすぎの小説かと微苦笑気分になってしまった。これだけ登場人物が多いとよくよく文章の上で一人一人がしっかり描き分けられていないと読者は混乱する。」
北村薫
男46歳
7 「楽しい小説だが、高校生活の部分が長すぎてだれてしまった。こうした才智のある作品は読者をするりと自分の流れにのせたら、絶対にテンポを落さないことがこつではないかと思った。」
高橋直樹
男35歳
25 「時代小説を書く場合に、どうすみやかに、自然にその時代を読者に理解してもらい、その時代に気持をとけ込ませるかが難かしい。」「作者は作中のどの人物に心惹かれて書こうとしたのか。作者が真に心を惹かれて書かなければ、読者はその作品に心惹かれるとは思わない。」
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他の選考委員
阿刀田高
黒岩重吾
井上ひさし
田辺聖子
渡辺淳一
津本陽
五木寛之
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選考委員
渡辺淳一男62歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
小池氏をかう 総行数83 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
小池真理子
女43歳
53 「久しぶりに大人の男女の小説をわくわくしながら読む楽しみを味わった。」「軽井沢のシーンまでの瑞々しさはなかなかのもので、この作家の並々ならぬ力量を示している。最後に謎解きを見せてからは、やたらに理に落ちてつまらなくなったが、それは作者が推理小説を書いてきたせいかと、一種の情状酌量のような気持から、受賞に賛成した。」
藤原伊織
男47歳
15 「文章の質がよく、テンポも快適で、要所要所も巧みに描かれているが、秀才が書いた小説といった印象を拭えない。とくに最後の爆発事件の背景や殺意の謎解きになると、動機が浅く、一人よがりで説得力に欠ける。」
藤田宜永
男45歳
0  
服部真澄
女34歳
0  
北村薫
男46歳
0  
高橋直樹
男35歳
0  
  「推理は小説を読ませる手法ではあっても、それだけが主目的では困る。むろんその種の小説が存在することはたしかだし、そういう小説を好む読者がいることもたしかだが、それは自ずから、直木賞の対象とは別のものだと、わたしは考えている。」
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他の選考委員
阿刀田高
黒岩重吾
井上ひさし
田辺聖子
平岩弓枝
津本陽
五木寛之
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選考委員
津本陽男66歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
百花のいろどり 総行数72 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
小池真理子
女43歳
44 「作品の基調に破滅を暗示する重い韻律が流れており、それを軽井沢の夏の風景を繊細にえがくことによって、こころよいリリシズムの色調にまとめてゆく手際は、隙がない。」「隙があるとすれば、このようなおおかたの人々にとっては異質であろう男女の関係を、文句なしに読者に納得させ、小説世界へひきずりこむほどの熱がさほど感知できなかったことである。」
藤原伊織
男47歳
41 「ことごとしい筋立てというのを、私はきらいである。」「だが派手な筋の運びにもかかわらず、全体を通してみると、性能のいい自動車のように、各部品が必要な場所に的確に配置されている。つまり、細部に力がある。」「多少、筋立てにややこしい点があるが、我慢して読みおえると、充実感を得た。」
藤田宜永
男45歳
0  
服部真澄
女34歳
0  
北村薫
男46歳
0  
高橋直樹
男35歳
0  
  「こんどの候補作品のなかには、筋立ての巧緻によって、目をひくものが幾つかあった。」
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他の選考委員
阿刀田高
黒岩重吾
井上ひさし
田辺聖子
平岩弓枝
渡辺淳一
五木寛之
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選考委員
五木寛之男63歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
ヴィンテージの予感 総行数98 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
小池真理子
女43歳
36 「ほとんど満票と言っていい支持を受けてのダブル受賞である。」「なにかを言いたい作家の息遣いが感じられるという点で、(引用者中略)際立っていたと思う。」「文体とか、文章とかいったものを新しい意匠として意識せずに、ひとつの機能としてぐいぐい駆使してゆく逞しさに才能があるのではあるまいか。」
藤原伊織
男47歳
38 「ほとんど満票と言っていい支持を受けてのダブル受賞である。」「なにかを言いたい作家の息遣いが感じられるという点で、(引用者中略)際立っていたと思う。」「なによりの美点は、読者に対してフェアであることだ。」「フィクションをフィクションとして読者の前に提出しようといういさぎよさは、たしかに一つの才能である。」
藤田宜永
男45歳
7 「独特の才能を感じさせるところがあったが、(引用者中略)受賞作二作の強さには及ばなかったと思う。」
服部真澄
女34歳
4 「私は非常におもしろく読んだが、選考の席では意外に不評だった。」
北村薫
男46歳
7 「独特の才能を感じさせるところがあったが、(引用者中略)受賞作二作の強さには及ばなかったと思う。」
高橋直樹
男35歳
4 「受賞作二作の強さには及ばなかったと思う。」
  「直木賞の周辺には、どことなく波のうねりのような周期的なリズムがあるらしい。ある時期、しばらく候補作がひどく低調に感じられるときが続くと、こんどは急に迫力のある作品が一斉に押しよせてくる何年かがやってくる、という具合いなのだ。」
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他の選考委員
阿刀田高
黒岩重吾
井上ひさし
田辺聖子
平岩弓枝
渡辺淳一
津本陽
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受賞者・作品
小池真理子女43歳×各選考委員 
『恋』
長篇 760
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
阿刀田高
男60歳
18 「化けましたね。まことに、まことに、舌を巻く巧みさだ。深い意味での文章の力を痛感した。」「――これが小説だな――と、わけもなく納得した。」「今後の活躍については太鼓判を押してもよい、と私は信じている。」
黒岩重吾
男71歳
31 「信太郎助教授と雛子夫人の人物描写には虚を感じさせない存在感がある。二人の会話や動作が織りなす物語は、夢幻的な絨毯の一角獣にも似ている。このような絨毯に私ほどの年齢の読者を安心して寝転がせる作者の才能は尋常ではない。」「信太郎と雛子が異母兄妹であったとするくだりで、手品の種明かしめいたものを感じたが、作品の酔いを醒ますほどではなかった。」
井上ひさし
男61歳
35 「文章力において(引用者中略)最高の達成をみている」「死者が語るという工夫は巧者なものであった。」「読み終わったとき、読者に『恋』という題名が、ちがった意味に見えてくる。凝縮度の高い華麗な文体で語られた不思議な恋の始まりと行く末、読んだかいがあった。」
田辺聖子
女67歳
36 「推理小説的な構成をとっていることも成功の一つだろうし、軽井沢の描写も、ラストのマルメロの扱いも効果的だ。――軽井沢の風のようにすぎてゆく人生の一瞬を見る思いのする佳篇であった。作者の体温と脈搏が感じられた。」
平岩弓枝
女63歳
32 「委員の殆んどが指摘したように、主人公の男女が兄妹である必要は全くないと私も思った。(引用者中略)少くとも、この小説では不要というか、マイナスであった。」「けれども、それでも、この作品を受賞からはずせなかったのは、感嘆するほどの作者の筆力、文章力で、結局、私もなんのかのといいながら、その魅力に溺れてしまった。」
渡辺淳一
男62歳
53 「久しぶりに大人の男女の小説をわくわくしながら読む楽しみを味わった。」「軽井沢のシーンまでの瑞々しさはなかなかのもので、この作家の並々ならぬ力量を示している。最後に謎解きを見せてからは、やたらに理に落ちてつまらなくなったが、それは作者が推理小説を書いてきたせいかと、一種の情状酌量のような気持から、受賞に賛成した。」
津本陽
男66歳
44 「作品の基調に破滅を暗示する重い韻律が流れており、それを軽井沢の夏の風景を繊細にえがくことによって、こころよいリリシズムの色調にまとめてゆく手際は、隙がない。」「隙があるとすれば、このようなおおかたの人々にとっては異質であろう男女の関係を、文句なしに読者に納得させ、小説世界へひきずりこむほどの熱がさほど感知できなかったことである。」
五木寛之
男63歳
36 「ほとんど満票と言っていい支持を受けてのダブル受賞である。」「なにかを言いたい作家の息遣いが感じられるという点で、(引用者中略)際立っていたと思う。」「文体とか、文章とかいったものを新しい意匠として意識せずに、ひとつの機能としてぐいぐい駆使してゆく逞しさに才能があるのではあるまいか。」
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他の候補作
藤原伊織
『テロリストのパラソル』
藤田宜永
『巴里からの遺言』
服部真澄
『龍の契り』
北村薫
『スキップ』
高橋直樹
「異形の寵児」
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受賞者・作品
藤原伊織男47歳×各選考委員 
『テロリストのパラソル』
長篇 604
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
阿刀田高
男60歳
23 「推理小説としては、いくつもの欠陥が指摘できるだろう。」「しかし、人物の描写力がただごとではない。」「よい点はいくつもあるが、とりわけ文章の中にそこはかとなく漂うユーモア感覚、これは、なかなか得がたい特色だ。」「この筆力ならば、きっと今後もよい作品を書いてくれるだろう、と私はこのギャンブル好きの作家に賭けてみたくなった。」
黒岩重吾
男71歳
29 「私が感心したのは、主人公の観察眼には無数の針があって次々と人間を抉ってゆくにも拘らず、針が真綿でくるまれ文章に溶けていることである。」「ラストの部分で纏めて事件を説明しなければならなくなる。案の定そうなり、軽い失望感を覚えた。だがこれは推理小説の宿命かもしれないし、作者の才能は間違いなく、受賞に賛成した。」
井上ひさし
男61歳
45 「文章力において(引用者中略)最高の達成をみている」「活発な精神の往復運動が独特の、得難いヒューモアを生み出している。話は深刻なのに、作品はどこを切り取っても質のいい諧謔で満たされているのだ。」「結尾の、関係者一同が寄り合ってすべてが解決するというご都合主義も、「謎解き」がこの作品の題目の一つであることを思えば、読者は喜んでこれを許すにちがいない。」
田辺聖子
女67歳
64 「全共闘の〈疾風怒涛時代〉(引用者中略)が人の運命にどんな力を及ぼしたかを、推理小説に仕立ててあるのが秀抜の魅力である。」「何より魅力的なのは文章の快いリズムで、会話におけるいささかのケレン味もいやみではなくよく消化れ、淡々たる味だが水とはちがう。」「逝った青春への鎮魂歌といえようか。すぐれた一級のエンターテインメントだと思う。」
平岩弓枝
女63歳
38 「主犯の桑野という男が最後にひたすらせりふでその生涯を説明するせいもあって、どうも龍頭蛇尾の人間にしかみえない」「小説の醍醐味を心得すぎるほど心得た作品であり、切れ味が実に見事となると、やっぱり、瑕瑾にこだわる必要はないと判断してしまう。受賞する所以であろう。」
渡辺淳一
男62歳
15 「文章の質がよく、テンポも快適で、要所要所も巧みに描かれているが、秀才が書いた小説といった印象を拭えない。とくに最後の爆発事件の背景や殺意の謎解きになると、動機が浅く、一人よがりで説得力に欠ける。」
津本陽
男66歳
41 「ことごとしい筋立てというのを、私はきらいである。」「だが派手な筋の運びにもかかわらず、全体を通してみると、性能のいい自動車のように、各部品が必要な場所に的確に配置されている。つまり、細部に力がある。」「多少、筋立てにややこしい点があるが、我慢して読みおえると、充実感を得た。」
五木寛之
男63歳
38 「ほとんど満票と言っていい支持を受けてのダブル受賞である。」「なにかを言いたい作家の息遣いが感じられるという点で、(引用者中略)際立っていたと思う。」「なによりの美点は、読者に対してフェアであることだ。」「フィクションをフィクションとして読者の前に提出しようといういさぎよさは、たしかに一つの才能である。」
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他の候補作
小池真理子
『恋』
藤田宜永
『巴里からの遺言』
服部真澄
『龍の契り』
北村薫
『スキップ』
高橋直樹
「異形の寵児」
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候補者・作品
藤田宜永男45歳×各選考委員 
『巴里からの遺言』
連作6篇 524
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
阿刀田高
男60歳
19 「にぎやかで、エピソードも多く、時代も交錯し、登場する人名も多彩である。」「軽いと思えば、また重い。しかし、どれもみな中途半端で、その中途半端は作者の意図したものであったろうが、一流の技にまで達していない、と私には思えてしまった。」
黒岩重吾
男71歳
27 「祖父・忠次の存在が作品を束縛し、作者はストーリーを作ることに筆の自由を押えられた感じがする。」「私は第一話の「大無頼漢通りの大男」を比較的買った。」「第二話以下はストーリーを追い過ぎ余韻が消えてしまった。」
井上ひさし
男61歳
20 「一話一話の出来栄えはよろしく、文章も平明であり、目立たぬやり方で言葉の巧緻を尽くしてもいる。にもかかわらず、読後の印象はどんよりと澱んでいる。展開の軸になっている影の主人公、祖父の在りよう生きようが少し弱いからだ。」
田辺聖子
女67歳
27 「(引用者注:受賞作の)二作についで票をあつめた」「凝ったしかけで、今世紀初頭のパリという都の魅力をも伝える。たしかに趣向に一点投じたい面白さがあるが、そのぶん、しかけが少々あざとくなる恐れがないでもない。」「かなりの才筆だと思った。」
平岩弓枝
女63歳
23 「一番、小説らしいと思えた」「穏やかで安定感があり、しかも粋である。」「六話の中では、とりわけ「凱旋門のかぐや姫」が心に残ったし、好きである。」「この作品を最後まで支持出来なかったのは多数決のせいでもあるが、もう一つ、現代の小説の上を流れているエネルギッシュで奇妙なほどの迫力を持った何かがその作品に集結していると、少々の欠点なんぞをはねとばしてしまって読者の心をわしづかみにする。そういった傾向に抗し得なかったようにも思う。」
渡辺淳一
男62歳
0  
津本陽
男66歳
0  
五木寛之
男63歳
7 「独特の才能を感じさせるところがあったが、(引用者中略)受賞作二作の強さには及ばなかったと思う。」
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他の候補作
小池真理子
『恋』
藤原伊織
『テロリストのパラソル』
服部真澄
『龍の契り』
北村薫
『スキップ』
高橋直樹
「異形の寵児」
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候補者・作品
服部真澄女34歳×各選考委員 
『龍の契り』
長篇 1079
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
阿刀田高
男60歳
41 「処女作という話だが、ならばものすごい腕力だ。」「ただ弱点もある。人物の描写が際立たず、魅力的な人格が見えてこない。」「香港の返還をめぐるイギリスと中国の密約、これを受け皿として発見したところが、この作家の第一の手柄だろう。が、それを評価しながらも、その一方で、――それを除けば、なにが残るのか――という不安も感じた。」
黒岩重吾
男71歳
13 「直木賞が求めている小説ではないような気がする。」「植民地時代の完了を告げる香港返還は、中国の新しい生命のひとつである。一片の密約書の存在など、朽ちた落葉よりも無意味であろう。日本の外交官がやたらに動き廻るのも滑稽である。」
井上ひさし
男61歳
18 「物語作家としての膂力は十分だ。しかし文章力は、正直に云って、まだ不十分である。」「出来の悪い文章が、せっかく築き上げた出来のいい話の腰を折ってしまった。」
田辺聖子
女67歳
18 「かなりの長篇だが一気に読ませる巧妙な設定と話法に脱帽。」「この作品は文章をたのしむ性質のものでも、作者の体温と脈搏を感じるものでもない。冒険活劇だけれども志のあるチャンバラだ。」
平岩弓枝
女63歳
23 「なんという欲ばりすぎの小説かと微苦笑気分になってしまった。これだけ登場人物が多いとよくよく文章の上で一人一人がしっかり描き分けられていないと読者は混乱する。」
渡辺淳一
男62歳
0  
津本陽
男66歳
0  
五木寛之
男63歳
4 「私は非常におもしろく読んだが、選考の席では意外に不評だった。」
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他の候補作
小池真理子
『恋』
藤原伊織
『テロリストのパラソル』
藤田宜永
『巴里からの遺言』
北村薫
『スキップ』
高橋直樹
「異形の寵児」
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候補者・作品
北村薫男46歳×各選考委員 
『スキップ』
長篇 874
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
阿刀田高
男60歳
22 「――これだけの設定を設けたわりには、最後に用意されているもののインパクトが薄いのではないか――という思いが拭いきれなかった。」「印象は、ただの学園小説でしかない。作者がモチーフとした“時と人”の問題が、うまく響いて来なかった。」
黒岩重吾
男71歳
8 「余り抵抗なく読めたが、読後感は薄い。主人公は十七歳の高校生に戻っている。当然、四十代の夫に対する感情はより複雑な筈である。それが描けていないところに本小説の弱さがある。」
井上ひさし
男61歳
25 「おもしろい設定だが、かつての家族にたいしてヒロインがまるで冷淡で、彼女がしたことといえば、生家のあったところへ訪ねて行くだけである。」「読者は、作者から大事なたのしみの一つを与えられずに終わってしまったのである。文体の凝縮度も、もう一つ足りないように感じる。」
田辺聖子
女67歳
0  
平岩弓枝
女63歳
7 「楽しい小説だが、高校生活の部分が長すぎてだれてしまった。こうした才智のある作品は読者をするりと自分の流れにのせたら、絶対にテンポを落さないことがこつではないかと思った。」
渡辺淳一
男62歳
0  
津本陽
男66歳
0  
五木寛之
男63歳
7 「独特の才能を感じさせるところがあったが、(引用者中略)受賞作二作の強さには及ばなかったと思う。」
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他の候補作
小池真理子
『恋』
藤原伊織
『テロリストのパラソル』
藤田宜永
『巴里からの遺言』
服部真澄
『龍の契り』
高橋直樹
「異形の寵児」
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候補者・作品
高橋直樹男35歳×各選考委員 
「異形の寵児」
中篇 234
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
阿刀田高
男60歳
31 「新人賞受賞の頃に比べれば、確実にプロの手に変っている。」「タイトルで明白に表明しているわりには、そのモチーフがぼやけており、なによりも、それが現代人にとってなんなのか、感動が響いて来ないのである。」
黒岩重吾
男71歳
5 「筆が走り過ぎ、文章もところどころ講談調になっている。達者さと小説の感動は別である。」
井上ひさし
男61歳
22 「まことに力のこもった作品である。」「しかし文章までいささか力んでしまったような気味合いがある。」「古典主義を背骨にした文体はいい。いや、近頃、推奨に価いする態度であると感嘆の念さえ覚える。しかし、いい意味での俗臭がもっとうんとあってもよいのではないだろうか。」
田辺聖子
女67歳
0  
平岩弓枝
女63歳
25 「時代小説を書く場合に、どうすみやかに、自然にその時代を読者に理解してもらい、その時代に気持をとけ込ませるかが難かしい。」「作者は作中のどの人物に心惹かれて書こうとしたのか。作者が真に心を惹かれて書かなければ、読者はその作品に心惹かれるとは思わない。」
渡辺淳一
男62歳
0  
津本陽
男66歳
0  
五木寛之
男63歳
4 「受賞作二作の強さには及ばなかったと思う。」
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他の候補作
小池真理子
『恋』
藤原伊織
『テロリストのパラソル』
藤田宜永
『巴里からの遺言』
服部真澄
『龍の契り』
北村薫
『スキップ』
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