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平成15年/2003年上半期
(平成15年/2003年7月17日決定発表/『オール讀物』平成15年/2003年9月号選評掲載)
選考委員  平岩弓枝
女71歳
津本陽
男74歳
井上ひさし
男68歳
田辺聖子
女75歳
渡辺淳一
男69歳
阿刀田高
男68歳
宮城谷昌光
男58歳
北方謙三
男55歳
林真理子
女49歳
五木寛之
男70歳
選評総行数  93 65 194 80 98 100 101 93 88 79
候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数
石田衣良 『4TEEN フォーティーン』
436
男43歳
28 12 37 26 23 31 43 13 19 21
村山由佳 『星々の舟』
677
女39歳
21 17 32 22 16 19 17 15 23 17
伊坂幸太郎 『重力ピエロ』
698
男32歳
10 5 32 0 17 19 0 8 8 23
宇江佐真理 『神田堀八つ下がり』
496
女53歳
14 11 25 19 9 17 10 8 22 12
真保裕一 『繋がれた明日』
783
男42歳
13 11 37 0 15 22 36 28 9 9
東野圭吾 『手紙』
660
男45歳
14 12 38 0 18 18 0 32 11 9
                   
年齢/枚数の説明   見方・注意点

このページの選評出典:『オール讀物』平成15年/2003年9月号
1行当たりの文字数:13字


選考委員
平岩弓枝女71歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
二作品を推す 総行数93 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
石田衣良
男43歳
28 「(引用者注:「星々の舟」に次いで)推したいと思った。」「前回、候補になった『骨音』と同じく明るく軽快な文章がそのまま作品の芯になっていて、それが実に快い。」「ここに登場する十四歳の少年達が実にいい。或る時は大人、また子供という弥次郎兵衛みたいな不安定の上で、絶妙なバランス感覚と行動力を発揮する痛快さはこの作家の真骨頂であろう。」
村山由佳
女39歳
21 「今回は、まず村山由佳さんの『星々の舟』を(引用者中略)推したいと思った。」「凄いところは一人の人物を描くことから、まるでつながっている糸をひき出すように一つの家族の人々が各々、主人公となって浮び上って来る構成力の巧みさと適確な人間像の描写力だろうと思う。小説というものの魅力と怖しさを久しぶりに堪能させられた。」
伊坂幸太郎
男32歳
10 「作者の意気込みは悪くないが、遺伝子に作品がふり廻されているような読後感を持った。知識は必要欠くべからざるものだが、小説は知識そのものを書いては失敗するということを、おそらく、この作品で気がつかれただろう。」
宇江佐真理
女53歳
14 「この作品が候補になったことが不運としか申し上げようがない。」「時代小説はまず登場人物が生きた社会の仕組みをよく知るのが、その時代を背景に人間を描く大きな助けになるというのを理解して欲しい。」
真保裕一
男42歳
13 「重く、ねばり強い作風が魅力である反面、読みにくいというもろ刃の剣になっている。構成に少々念を入れれば解決出来るのではないかと思う。」
東野圭吾
男45歳
14 「読みやすく、ストレートにテーマを展開させる手腕は見事だが、手紙を書き続ける人間の性格描写が今一つ、弱い。底抜けの好人物なのか、頭の働きに欠陥があるのか、後者に見えてしまうと感動が薄められる危険がありはしないか。」
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選考委員
津本陽男74歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
喚起力 総行数65 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
石田衣良
男43歳
12 「架空の情景を、身に迫るなまなましさで読者の脳裡に喚起する力は、才能によってことなる。」「作者の文章は、つよい喚起力を持っており、六篇の候補作のなかでは、きわだっていた。」
村山由佳
女39歳
17 「作者の力量に見るべきものがあるが、いろいろと複雑に内容を組みあわせており、そうなるとまだ筆の若さがめだってきて、簡単に引きこまれるというわけにはゆかなくなった。たとえていえば、果物籠に果物を盛りすぎたような不安定感があった。」
伊坂幸太郎
男32歳
5 「全体に乾いた感じである。話のはこびかたはうまいのだが、読者にその場の情景を見させる喚起力に乏しいと思った。」
宇江佐真理
女53歳
11 「まえよりもあきらかに巧妙な手際を見せるようになっていて、感心した。情緒も見すごしがたいものがあった。この作者については、時代考証に数々の難点があるようだが、史料にあたり、歴史家に教示を乞えば、解決する問題だろう。」
真保裕一
男42歳
11 「熟練者で、読者をひきこむ力は充分にある。」「なにか軽みを感じる。主題にもたれているところが、弱点となったのであろうか。」
東野圭吾
男45歳
12 「熟練者で、読者をひきこむ力は充分にある。」「水の流れるような運びで、感心した。」「なにか軽みを感じる。主題にもたれているところが、弱点となったのであろうか。」
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選考委員
井上ひさし男68歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
傑作二作 総行数194 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
石田衣良
男43歳
37 「滑走感が快い。活字がさわやかな風となって読者へ吹き込んでくるかのようだ。」「なによりもすばらしかったのは、(引用者中略)風俗の泡の中に呑み込まれているかに見える少年たちが、じつは真っ当な、古典的ともいえる友情にもとづいて行動していることだった。」
村山由佳
女39歳
32 「〈限りなく一人称に近い三人称による多視点〉という語りをさりげなく駆使しながら、家族という運命共同体の罪深さ、その懐かしさを、明確でしなやかで滋味にあふれた文章でみごとに書き切った。」「物語の起点ですでに亡く、不在であるはずの母親が、構成員たちの話が進むにつれて次第に姿を現して来、ついには圧倒的な存在感を示す。」
伊坂幸太郎
男32歳
32 「作者は、この深刻な物語を読者へ、できるだけ軽やかに陽気に伝えようと試みる。これが若き作者の健気な実験である。」「知的処理が文章と話の運びを冗漫にしたことはたしかだが、しかしこれはおもしろい企みだ。」
宇江佐真理
女53歳
25 「いつも口惜しく思うのは、江戸を大きく捉まえようとするときの作者の無頓着な癖。」「せっかく丹精して作り上げられた作者の江戸がにわかに信じられなくなるのは、じつにこのようなときである。」
真保裕一
男42歳
37 「主人公の困難な贖罪の旅を記録する文章に力みなぎり、彼を支える保護司がよく描かれてもいて、これは作者渾身の力作である。」「「殺す気はなかったのだが」と、主人公に代わって作者が言い訳をしているうちに、物語の流れがしばしば緩んで澱んで滞り、そのたびに作品はふくらみを欠いて、重く平べったくなった。」
東野圭吾
男45歳
38 「少しのびのびしすぎて中盤では安手な挿話もあらわれるが、しかし結尾近く、兄に代わって被害者家族と対面するあたりから俄然引き締まり、作品はぐんと深みを増す。」「だが、残念なのは、作品の鍵ともいうべき兄の手紙が、なんだかいつもへんにノンキなことだ。」
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津本陽
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渡辺淳一
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宮城谷昌光
北方謙三
林真理子
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選考委員
田辺聖子女75歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
小説の愉しさ 総行数80 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
石田衣良
男43歳
26 「ページを繰るたび、新鮮な〈愉しさ(原文傍点〉がピチピチ跳ねているというのは、珍重に価する。」「少年たちの個性を書き分ける筆は、練達の冴えを見せているが常套的ではなく、透明感があって現代の匂いにみちている。」「脂ののった手だれの巧者、のゆとりあり。」
村山由佳
女39歳
22 「人物の一人一人の存在感が重層的に影を落し、得もいえぬハーモニイを生む。」「ラストの戦争時代の記憶は、あまりに重すぎて少し不協和音ではないかと案じたが、全篇、読み通してみると、色合いのちがいが、かえって一篇を引きしめる持味になっているようにも思えた。」
伊坂幸太郎
男32歳
0  
宇江佐真理
女53歳
19 「中では「浮かれ節」が情感があって佳作。ただ情感といえば、――各所の河岸の匂い(原文傍点)がもう一つ、薄い気もする。」「ともあれ、女性の時代小説作家として、宇江佐氏に私は期待を寄せている。」
真保裕一
男42歳
0  
東野圭吾
男45歳
0  
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選考委員
渡辺淳一男69歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
小説とは 総行数98 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
石田衣良
男43歳
23 「順調に才能を伸ばして受賞したのは、ごく自然のなりゆきであった。」「この作品には気負いとか、ことさらな努力といった気配がほとんど見当らない。いや、実際はあるのかもしれないが、ほとんど目立たず、それでもある年代の人々や街の雰囲気を鮮やかに描きだし、好ましい小説空間をつくりだしている。」
村山由佳
女39歳
16 「部分的には、一部、文章の不自然さや、冗長になりがちなところなど、やや問題はあるが、ともかくこれだけのものを書ききった、努力と力強さに感服した。この作家がこの一作で、大きな壁を突き破ったことは、間違いないだろう。」
伊坂幸太郎
男32歳
17 「一見、当世風の洒落た作品のようだが、読みすすむうちに底の浅さが見えてくる。」「初めに、少し驚ろかすようなお話ありき、で書きすすめるのは、知的駄洒落ではあっても、心に迫る小説にはほど遠い。」
宇江佐真理
女53歳
9 「小説のテーマが甘いというかゆるすぎて、雑駁な読後感で終ってしまう。この傾向は以前からあったが、さらに時代考証の点で多くの批判が出ては、見送らざるをえなかった。」
真保裕一
男42歳
15 「前回まで、圧倒的な迫力で走っていた新鋭車が、今回の作品で完熟、一旦、停止した感じだが、その原因は、少し頭でつくりすぎるところにあるのかもしれない。その顕著な例がラストの平板さにでてしまった。」
東野圭吾
男45歳
18 「それなりに上手な作家である。だが今回も、その巧みさがわざわいしてか、ほどほどに読ませはするが、とくに抜きんでない作品で終ってしまった。なによりも不満だったのは、「手紙」というタイトルをつけながら、殺人を犯した兄からの手紙が、ほのぼのとしすぎて実感に欠けることである。」
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選考委員
阿刀田高男68歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
ふくよかな小説 総行数100 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
石田衣良
男43歳
31 「小説というものは“人が歩き、花が咲き、車が走る”ただこれだけのことを書いても文章に味わいがあり、充分にチャーミングであることが望ましい。一番大切な条件かもしれない、とさえ思う。〈フォーティーン〉には、それが感じられた。ごく普通の少年たちの生活を描きながら小説がふくよかで、魅力的に映るのは、このせいだろう。」
村山由佳
女39歳
19 「描かれている一族はありふれた庶民であり、特別な設定はなにもない。大げさな言いかたが許されるならば、エミール・ゾラの〈ルーゴン・マツカール〉を髣髴するものがあった。小さな傷がないでもないが、現代小説の典型として絶大な拍手を送りたい。」
伊坂幸太郎
男32歳
19 「数ページを読んで、きらめく才気を感じた。おもしろさも覚えた。だが、なかばを過ぎるあたりから小説が躍動してくれない。」「――独特の小説観によって創られている世界らしいぞ――と考えたが、やはりもう少し先をながめさせていただきたい、と思った。」
宇江佐真理
女53歳
17 「評価はけっして低くはなかったが、なにかしら不足するものが感じられ、受賞作に一歩譲る結果となってしまった。」「ストーリーの設定にも、時代の描きかたにも、納得のいかないところがあった。」
真保裕一
男42歳
22 「評価はけっして低くはなかったが、なにかしら不足するものが感じられ、受賞作に一歩譲る結果となってしまった。」「筆致ものびやかで、なんの抵抗感もなくスムースに読むことができたけれど、読後の感動はテーマが深いわりには乏しかった。」
東野圭吾
男45歳
18 「評価はけっして低くはなかったが、なにかしら不足するものが感じられ、受賞作に一歩譲る結果となってしまった。」「小説としての構造が巧みである。技法が冴えている。が、人物への感情移入にむつかしいところがあった。」
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平岩弓枝
津本陽
井上ひさし
田辺聖子
渡辺淳一
宮城谷昌光
北方謙三
林真理子
五木寛之
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選考委員
宮城谷昌光男58歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
ことばと物 総行数101 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
石田衣良
男43歳
43 「その実績が認められ(引用者中略)ての受賞である、と私は理解した。」「過去の候補作品の上にこの作品が積まれて峻竦した観がある。この作家にはもともと純気があり、風俗を描いてもけがれるおそれのない人ではあるが、それだけに淡白さがあることに私は不満をおぼえていた。この作品からは淡白さを感じず、都会の情緒を感じた。」
村山由佳
女39歳
17 「その成長が賛嘆されての受賞である、と私は理解した。」「それは多くの選考委員が村山氏の旧作を丹念に読んでいる証左であり、それは村山氏の幸運でもあろうが、作家としての徳というものでもあろう。」
伊坂幸太郎
男32歳
0  
宇江佐真理
女53歳
10 「呼吸の良さがある。私はそれを作者の成長とみたが、選考でくりかえしいわれることは、江戸(時代)への審察の不在であり、作者はそれを踰えなければならない。」
真保裕一
男42歳
36 「創作の基盤に感動がすえられていたのが真保裕一氏の「繋がれた明日」であることは瞭然としている。」「むろん小説の良否は修辞に大きくかかわり、主題の堅牢さは修辞のまずさによって湮没させられてしまう。しかし真保氏の創作の姿勢と手順は正しい。ところどころ虚構の素肌が露呈しているが、そんなことを嗤われても、まったく気にする必要はない。この小説には真実があると私はみた。」
東野圭吾
男45歳
0  
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他の選考委員
平岩弓枝
津本陽
井上ひさし
田辺聖子
渡辺淳一
阿刀田高
北方謙三
林真理子
五木寛之
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選考委員
北方謙三男55歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
さまざまな小説観 総行数93 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
石田衣良
男43歳
13 「現代と都会を舞台にした、ハックルベリー・フィンを読んでいるような印象であった。各作品の連環がやや欠けるということ以外、文句のつけようがない。」「石田、村山、真保の三氏に丸をつけて、私は選考会に臨んだ。」
村山由佳
女39歳
15 「ごく普通の、人としての営為にすぎないが、生きることの意味を読者に問いかけるところにまで昇華されている、と私は感じた。誠実な筆遣いも、選考委員の心を動かしたと思う。」「石田、村山、真保の三氏に丸をつけて、私は選考会に臨んだ。」
伊坂幸太郎
男32歳
8 「才気に溢れた作品で、若い読者の支持も頷ける。ストーリーの運びをゲーム性に頼りすぎているところが気になったが、深刻なことをできるだけ軽く書く、という感性は私には新鮮だった。」
宇江佐真理
女53歳
8 「手馴れた筆であり、この作者が安定期に入ったことを感じさせた。ただ、読後に心にしみこむようなものが、いささか希薄だった。」
真保裕一
男42歳
28 「今回は、私は(引用者注:「手紙」よりも)真保氏の方を評価した。」「(引用者注:主人公の設定と生き方の)愚直さが、社会にとって、家族にとって、人間にとって、犯罪とはなんなのかと問いかける力になったと思う。テーマ性が強すぎるという意見もあるだろうが、犯罪とはなにかを問いかけるために書かれた小説があってもいい、と私は思った。」「石田、村山、真保の三氏に丸をつけて、私は選考会に臨んだ。」
東野圭吾
男45歳
32 「いつもながら、細部にわたるまでの技巧には感心させられる。受刑者の弟の人生という今回の着眼が、やや技巧を目立たせることになったかもしれない。」「常に読者に面白い物語を提供していこうという作家の姿勢は、賞とは関係ない次元にある志で、貴重なものだと私は感じる。賞は必ず追いかけてくる、とこの作者に関しては、私は半ば確信している。」
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他の選考委員
平岩弓枝
津本陽
井上ひさし
田辺聖子
渡辺淳一
阿刀田高
宮城谷昌光
林真理子
五木寛之
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選考委員
林真理子女49歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
子どものリアリティ、大人の苦さ 総行数88 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
石田衣良
男43歳
19 「本当にいい小説であった。大人が子どもの世界を書くのはむずかしい。」「皆から好かれていないクラスメイトを話をする時、友人と思われないように、立つ階段の段をずらす、などという描写が本当にうまい。小説の舞台に月島という場所を選んだところも、成功の要素であった。」
村山由佳
女39歳
23 「この方の初期のものから読んでいるが、いつのまにかこれほど大人の作家としての技倆を身につけられ、堂々とした大作だ。」「きちんと人間をひとりひとり書き分け、大人の過去と苦さを与えている。」「けれども最後の章は、いかにも勉強しました、という意気込みだけで、かなり気持ちをそがれてしまった。」
伊坂幸太郎
男32歳
8 「なみなみならぬ才能を感じた。けれどもこういう「おしゃれな」小説は、時として空まわりする時がある。空まわりが進んで、ドタバタに近くなったのは残念だ。」
宇江佐真理
女53歳
22 「今回は受賞されるのではないかと思ったのだが、残念な結末となった。」「私のような時代小説の「ニュー読者」からすると、宇江佐さんの描く江戸の風景は充分に魅力的だ。」「宇江佐さん、本当にもう少し、もう少しですよ。これだけのものをお書きになれるのですから、もう少しプロの作家としての緻密さを身につけてください。」
真保裕一
男42歳
9 「(引用者注:「手紙」と)非常に似た設定だったため、どちらにとってもかなり不利だったのではないか。」「主人公から刑務所帰りの体臭がまるで伝わってこない。お行儀がよい小説という感じがした。」
東野圭吾
男45歳
11 「(引用者注:「繋がれた明日」と)非常に似た設定だったため、どちらにとってもかなり不利だったのではないか。」「歌手デビューのチャンスや、令嬢に恋される話など、著者の人物を動かす意図が見え過ぎる。」
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選考委員
五木寛之男70歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
才気と熱気 総行数79 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
石田衣良
男43歳
21 「ホームランではないが、走者一掃の二塁打といった感じのライナー性のヒットである。風俗が新鮮で人情が古風、そこがおもしろい。」「私は学生時代に月島で新聞配達をして働いていたことがあるので、ふと感傷をそそられるものがあった。採点が少し甘くなったのは、そのせいだろう。」
村山由佳
女39歳
17 「大きな破綻のある小説である。しかし、小器用にまとまった熱気のない作品など、読んだところで仕方がないではないか。書き手が全体の構成を崩してでも書かずにいられない何かに、私は胸を打たれるのだ。『星々の舟』には、それがあった。」
伊坂幸太郎
男32歳
23 「私自身は、こういう作品は苦手である。しかし異色の才能という点では、一目おかざるをえない。むしろ直木賞など受けないほうが、伊坂さんの栄光というものだろう。」
宇江佐真理
女53歳
12 「かねてから私の愛読する作家の一人である。今回も都々逸坊扇歌の出てくる作品など、夢中になって読んだ。しかし、いかんせんお話を綺麗につくりすぎるところが、物足りない感じがする。」
真保裕一
男42歳
9 「すでに一家をなしている書き手である。新人として眺めることをしなかったせいか、どこか物足りない印象があった。」「もっと迫力のある個性的な作品を書くことができる作家だと信じている。」
東野圭吾
男45歳
9 「すでに一家をなしている書き手である。新人として眺めることをしなかったせいか、どこか物足りない印象があった。」「もっと迫力のある個性的な作品を書くことができる作家だと信じている。」
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渡辺淳一
阿刀田高
宮城谷昌光
北方謙三
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受賞者・作品
石田衣良男43歳×各選考委員 
『4TEEN フォーティーン』
連作8篇 436
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
平岩弓枝
女71歳
28 「(引用者注:「星々の舟」に次いで)推したいと思った。」「前回、候補になった『骨音』と同じく明るく軽快な文章がそのまま作品の芯になっていて、それが実に快い。」「ここに登場する十四歳の少年達が実にいい。或る時は大人、また子供という弥次郎兵衛みたいな不安定の上で、絶妙なバランス感覚と行動力を発揮する痛快さはこの作家の真骨頂であろう。」
津本陽
男74歳
12 「架空の情景を、身に迫るなまなましさで読者の脳裡に喚起する力は、才能によってことなる。」「作者の文章は、つよい喚起力を持っており、六篇の候補作のなかでは、きわだっていた。」
井上ひさし
男68歳
37 「滑走感が快い。活字がさわやかな風となって読者へ吹き込んでくるかのようだ。」「なによりもすばらしかったのは、(引用者中略)風俗の泡の中に呑み込まれているかに見える少年たちが、じつは真っ当な、古典的ともいえる友情にもとづいて行動していることだった。」
田辺聖子
女75歳
26 「ページを繰るたび、新鮮な〈愉しさ(原文傍点〉がピチピチ跳ねているというのは、珍重に価する。」「少年たちの個性を書き分ける筆は、練達の冴えを見せているが常套的ではなく、透明感があって現代の匂いにみちている。」「脂ののった手だれの巧者、のゆとりあり。」
渡辺淳一
男69歳
23 「順調に才能を伸ばして受賞したのは、ごく自然のなりゆきであった。」「この作品には気負いとか、ことさらな努力といった気配がほとんど見当らない。いや、実際はあるのかもしれないが、ほとんど目立たず、それでもある年代の人々や街の雰囲気を鮮やかに描きだし、好ましい小説空間をつくりだしている。」
阿刀田高
男68歳
31 「小説というものは“人が歩き、花が咲き、車が走る”ただこれだけのことを書いても文章に味わいがあり、充分にチャーミングであることが望ましい。一番大切な条件かもしれない、とさえ思う。〈フォーティーン〉には、それが感じられた。ごく普通の少年たちの生活を描きながら小説がふくよかで、魅力的に映るのは、このせいだろう。」
宮城谷昌光
男58歳
43 「その実績が認められ(引用者中略)ての受賞である、と私は理解した。」「過去の候補作品の上にこの作品が積まれて峻竦した観がある。この作家にはもともと純気があり、風俗を描いてもけがれるおそれのない人ではあるが、それだけに淡白さがあることに私は不満をおぼえていた。この作品からは淡白さを感じず、都会の情緒を感じた。」
北方謙三
男55歳
13 「現代と都会を舞台にした、ハックルベリー・フィンを読んでいるような印象であった。各作品の連環がやや欠けるということ以外、文句のつけようがない。」「石田、村山、真保の三氏に丸をつけて、私は選考会に臨んだ。」
林真理子
女49歳
19 「本当にいい小説であった。大人が子どもの世界を書くのはむずかしい。」「皆から好かれていないクラスメイトを話をする時、友人と思われないように、立つ階段の段をずらす、などという描写が本当にうまい。小説の舞台に月島という場所を選んだところも、成功の要素であった。」
五木寛之
男70歳
21 「ホームランではないが、走者一掃の二塁打といった感じのライナー性のヒットである。風俗が新鮮で人情が古風、そこがおもしろい。」「私は学生時代に月島で新聞配達をして働いていたことがあるので、ふと感傷をそそられるものがあった。採点が少し甘くなったのは、そのせいだろう。」
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他の候補作
村山由佳
『星々の舟』
伊坂幸太郎
『重力ピエロ』
宇江佐真理
『神田堀八つ下がり』
真保裕一
『繋がれた明日』
東野圭吾
『手紙』
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受賞者・作品
村山由佳女39歳×各選考委員 
『星々の舟』
連作6篇 677
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
平岩弓枝
女71歳
21 「今回は、まず村山由佳さんの『星々の舟』を(引用者中略)推したいと思った。」「凄いところは一人の人物を描くことから、まるでつながっている糸をひき出すように一つの家族の人々が各々、主人公となって浮び上って来る構成力の巧みさと適確な人間像の描写力だろうと思う。小説というものの魅力と怖しさを久しぶりに堪能させられた。」
津本陽
男74歳
17 「作者の力量に見るべきものがあるが、いろいろと複雑に内容を組みあわせており、そうなるとまだ筆の若さがめだってきて、簡単に引きこまれるというわけにはゆかなくなった。たとえていえば、果物籠に果物を盛りすぎたような不安定感があった。」
井上ひさし
男68歳
32 「〈限りなく一人称に近い三人称による多視点〉という語りをさりげなく駆使しながら、家族という運命共同体の罪深さ、その懐かしさを、明確でしなやかで滋味にあふれた文章でみごとに書き切った。」「物語の起点ですでに亡く、不在であるはずの母親が、構成員たちの話が進むにつれて次第に姿を現して来、ついには圧倒的な存在感を示す。」
田辺聖子
女75歳
22 「人物の一人一人の存在感が重層的に影を落し、得もいえぬハーモニイを生む。」「ラストの戦争時代の記憶は、あまりに重すぎて少し不協和音ではないかと案じたが、全篇、読み通してみると、色合いのちがいが、かえって一篇を引きしめる持味になっているようにも思えた。」
渡辺淳一
男69歳
16 「部分的には、一部、文章の不自然さや、冗長になりがちなところなど、やや問題はあるが、ともかくこれだけのものを書ききった、努力と力強さに感服した。この作家がこの一作で、大きな壁を突き破ったことは、間違いないだろう。」
阿刀田高
男68歳
19 「描かれている一族はありふれた庶民であり、特別な設定はなにもない。大げさな言いかたが許されるならば、エミール・ゾラの〈ルーゴン・マツカール〉を髣髴するものがあった。小さな傷がないでもないが、現代小説の典型として絶大な拍手を送りたい。」
宮城谷昌光
男58歳
17 「その成長が賛嘆されての受賞である、と私は理解した。」「それは多くの選考委員が村山氏の旧作を丹念に読んでいる証左であり、それは村山氏の幸運でもあろうが、作家としての徳というものでもあろう。」
北方謙三
男55歳
15 「ごく普通の、人としての営為にすぎないが、生きることの意味を読者に問いかけるところにまで昇華されている、と私は感じた。誠実な筆遣いも、選考委員の心を動かしたと思う。」「石田、村山、真保の三氏に丸をつけて、私は選考会に臨んだ。」
林真理子
女49歳
23 「この方の初期のものから読んでいるが、いつのまにかこれほど大人の作家としての技倆を身につけられ、堂々とした大作だ。」「きちんと人間をひとりひとり書き分け、大人の過去と苦さを与えている。」「けれども最後の章は、いかにも勉強しました、という意気込みだけで、かなり気持ちをそがれてしまった。」
五木寛之
男70歳
17 「大きな破綻のある小説である。しかし、小器用にまとまった熱気のない作品など、読んだところで仕方がないではないか。書き手が全体の構成を崩してでも書かずにいられない何かに、私は胸を打たれるのだ。『星々の舟』には、それがあった。」
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他の候補作
石田衣良
『4TEEN フォーティーン』
伊坂幸太郎
『重力ピエロ』
宇江佐真理
『神田堀八つ下がり』
真保裕一
『繋がれた明日』
東野圭吾
『手紙』
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候補者・作品
伊坂幸太郎男32歳×各選考委員 
『重力ピエロ』
長篇 698
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
平岩弓枝
女71歳
10 「作者の意気込みは悪くないが、遺伝子に作品がふり廻されているような読後感を持った。知識は必要欠くべからざるものだが、小説は知識そのものを書いては失敗するということを、おそらく、この作品で気がつかれただろう。」
津本陽
男74歳
5 「全体に乾いた感じである。話のはこびかたはうまいのだが、読者にその場の情景を見させる喚起力に乏しいと思った。」
井上ひさし
男68歳
32 「作者は、この深刻な物語を読者へ、できるだけ軽やかに陽気に伝えようと試みる。これが若き作者の健気な実験である。」「知的処理が文章と話の運びを冗漫にしたことはたしかだが、しかしこれはおもしろい企みだ。」
田辺聖子
女75歳
0  
渡辺淳一
男69歳
17 「一見、当世風の洒落た作品のようだが、読みすすむうちに底の浅さが見えてくる。」「初めに、少し驚ろかすようなお話ありき、で書きすすめるのは、知的駄洒落ではあっても、心に迫る小説にはほど遠い。」
阿刀田高
男68歳
19 「数ページを読んで、きらめく才気を感じた。おもしろさも覚えた。だが、なかばを過ぎるあたりから小説が躍動してくれない。」「――独特の小説観によって創られている世界らしいぞ――と考えたが、やはりもう少し先をながめさせていただきたい、と思った。」
宮城谷昌光
男58歳
0  
北方謙三
男55歳
8 「才気に溢れた作品で、若い読者の支持も頷ける。ストーリーの運びをゲーム性に頼りすぎているところが気になったが、深刻なことをできるだけ軽く書く、という感性は私には新鮮だった。」
林真理子
女49歳
8 「なみなみならぬ才能を感じた。けれどもこういう「おしゃれな」小説は、時として空まわりする時がある。空まわりが進んで、ドタバタに近くなったのは残念だ。」
五木寛之
男70歳
23 「私自身は、こういう作品は苦手である。しかし異色の才能という点では、一目おかざるをえない。むしろ直木賞など受けないほうが、伊坂さんの栄光というものだろう。」
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他の候補作
石田衣良
『4TEEN フォーティーン』
村山由佳
『星々の舟』
宇江佐真理
『神田堀八つ下がり』
真保裕一
『繋がれた明日』
東野圭吾
『手紙』
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候補者・作品
宇江佐真理女53歳×各選考委員 
『神田堀八つ下がり』
短篇集6篇 496
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
平岩弓枝
女71歳
14 「この作品が候補になったことが不運としか申し上げようがない。」「時代小説はまず登場人物が生きた社会の仕組みをよく知るのが、その時代を背景に人間を描く大きな助けになるというのを理解して欲しい。」
津本陽
男74歳
11 「まえよりもあきらかに巧妙な手際を見せるようになっていて、感心した。情緒も見すごしがたいものがあった。この作者については、時代考証に数々の難点があるようだが、史料にあたり、歴史家に教示を乞えば、解決する問題だろう。」
井上ひさし
男68歳
25 「いつも口惜しく思うのは、江戸を大きく捉まえようとするときの作者の無頓着な癖。」「せっかく丹精して作り上げられた作者の江戸がにわかに信じられなくなるのは、じつにこのようなときである。」
田辺聖子
女75歳
19 「中では「浮かれ節」が情感があって佳作。ただ情感といえば、――各所の河岸の匂い(原文傍点)がもう一つ、薄い気もする。」「ともあれ、女性の時代小説作家として、宇江佐氏に私は期待を寄せている。」
渡辺淳一
男69歳
9 「小説のテーマが甘いというかゆるすぎて、雑駁な読後感で終ってしまう。この傾向は以前からあったが、さらに時代考証の点で多くの批判が出ては、見送らざるをえなかった。」
阿刀田高
男68歳
17 「評価はけっして低くはなかったが、なにかしら不足するものが感じられ、受賞作に一歩譲る結果となってしまった。」「ストーリーの設定にも、時代の描きかたにも、納得のいかないところがあった。」
宮城谷昌光
男58歳
10 「呼吸の良さがある。私はそれを作者の成長とみたが、選考でくりかえしいわれることは、江戸(時代)への審察の不在であり、作者はそれを踰えなければならない。」
北方謙三
男55歳
8 「手馴れた筆であり、この作者が安定期に入ったことを感じさせた。ただ、読後に心にしみこむようなものが、いささか希薄だった。」
林真理子
女49歳
22 「今回は受賞されるのではないかと思ったのだが、残念な結末となった。」「私のような時代小説の「ニュー読者」からすると、宇江佐さんの描く江戸の風景は充分に魅力的だ。」「宇江佐さん、本当にもう少し、もう少しですよ。これだけのものをお書きになれるのですから、もう少しプロの作家としての緻密さを身につけてください。」
五木寛之
男70歳
12 「かねてから私の愛読する作家の一人である。今回も都々逸坊扇歌の出てくる作品など、夢中になって読んだ。しかし、いかんせんお話を綺麗につくりすぎるところが、物足りない感じがする。」
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他の候補作
石田衣良
『4TEEN フォーティーン』
村山由佳
『星々の舟』
伊坂幸太郎
『重力ピエロ』
真保裕一
『繋がれた明日』
東野圭吾
『手紙』
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候補者・作品
真保裕一男42歳×各選考委員 
『繋がれた明日』
長篇 783
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
平岩弓枝
女71歳
13 「重く、ねばり強い作風が魅力である反面、読みにくいというもろ刃の剣になっている。構成に少々念を入れれば解決出来るのではないかと思う。」
津本陽
男74歳
11 「熟練者で、読者をひきこむ力は充分にある。」「なにか軽みを感じる。主題にもたれているところが、弱点となったのであろうか。」
井上ひさし
男68歳
37 「主人公の困難な贖罪の旅を記録する文章に力みなぎり、彼を支える保護司がよく描かれてもいて、これは作者渾身の力作である。」「「殺す気はなかったのだが」と、主人公に代わって作者が言い訳をしているうちに、物語の流れがしばしば緩んで澱んで滞り、そのたびに作品はふくらみを欠いて、重く平べったくなった。」
田辺聖子
女75歳
0  
渡辺淳一
男69歳
15 「前回まで、圧倒的な迫力で走っていた新鋭車が、今回の作品で完熟、一旦、停止した感じだが、その原因は、少し頭でつくりすぎるところにあるのかもしれない。その顕著な例がラストの平板さにでてしまった。」
阿刀田高
男68歳
22 「評価はけっして低くはなかったが、なにかしら不足するものが感じられ、受賞作に一歩譲る結果となってしまった。」「筆致ものびやかで、なんの抵抗感もなくスムースに読むことができたけれど、読後の感動はテーマが深いわりには乏しかった。」
宮城谷昌光
男58歳
36 「創作の基盤に感動がすえられていたのが真保裕一氏の「繋がれた明日」であることは瞭然としている。」「むろん小説の良否は修辞に大きくかかわり、主題の堅牢さは修辞のまずさによって湮没させられてしまう。しかし真保氏の創作の姿勢と手順は正しい。ところどころ虚構の素肌が露呈しているが、そんなことを嗤われても、まったく気にする必要はない。この小説には真実があると私はみた。」
北方謙三
男55歳
28 「今回は、私は(引用者注:「手紙」よりも)真保氏の方を評価した。」「(引用者注:主人公の設定と生き方の)愚直さが、社会にとって、家族にとって、人間にとって、犯罪とはなんなのかと問いかける力になったと思う。テーマ性が強すぎるという意見もあるだろうが、犯罪とはなにかを問いかけるために書かれた小説があってもいい、と私は思った。」「石田、村山、真保の三氏に丸をつけて、私は選考会に臨んだ。」
林真理子
女49歳
9 「(引用者注:「手紙」と)非常に似た設定だったため、どちらにとってもかなり不利だったのではないか。」「主人公から刑務所帰りの体臭がまるで伝わってこない。お行儀がよい小説という感じがした。」
五木寛之
男70歳
9 「すでに一家をなしている書き手である。新人として眺めることをしなかったせいか、どこか物足りない印象があった。」「もっと迫力のある個性的な作品を書くことができる作家だと信じている。」
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他の候補作
石田衣良
『4TEEN フォーティーン』
村山由佳
『星々の舟』
伊坂幸太郎
『重力ピエロ』
宇江佐真理
『神田堀八つ下がり』
東野圭吾
『手紙』
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候補者・作品
東野圭吾男45歳×各選考委員 
『手紙』
長篇 660
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
平岩弓枝
女71歳
14 「読みやすく、ストレートにテーマを展開させる手腕は見事だが、手紙を書き続ける人間の性格描写が今一つ、弱い。底抜けの好人物なのか、頭の働きに欠陥があるのか、後者に見えてしまうと感動が薄められる危険がありはしないか。」
津本陽
男74歳
12 「熟練者で、読者をひきこむ力は充分にある。」「水の流れるような運びで、感心した。」「なにか軽みを感じる。主題にもたれているところが、弱点となったのであろうか。」
井上ひさし
男68歳
38 「少しのびのびしすぎて中盤では安手な挿話もあらわれるが、しかし結尾近く、兄に代わって被害者家族と対面するあたりから俄然引き締まり、作品はぐんと深みを増す。」「だが、残念なのは、作品の鍵ともいうべき兄の手紙が、なんだかいつもへんにノンキなことだ。」
田辺聖子
女75歳
0  
渡辺淳一
男69歳
18 「それなりに上手な作家である。だが今回も、その巧みさがわざわいしてか、ほどほどに読ませはするが、とくに抜きんでない作品で終ってしまった。なによりも不満だったのは、「手紙」というタイトルをつけながら、殺人を犯した兄からの手紙が、ほのぼのとしすぎて実感に欠けることである。」
阿刀田高
男68歳
18 「評価はけっして低くはなかったが、なにかしら不足するものが感じられ、受賞作に一歩譲る結果となってしまった。」「小説としての構造が巧みである。技法が冴えている。が、人物への感情移入にむつかしいところがあった。」
宮城谷昌光
男58歳
0  
北方謙三
男55歳
32 「いつもながら、細部にわたるまでの技巧には感心させられる。受刑者の弟の人生という今回の着眼が、やや技巧を目立たせることになったかもしれない。」「常に読者に面白い物語を提供していこうという作家の姿勢は、賞とは関係ない次元にある志で、貴重なものだと私は感じる。賞は必ず追いかけてくる、とこの作者に関しては、私は半ば確信している。」
林真理子
女49歳
11 「(引用者注:「繋がれた明日」と)非常に似た設定だったため、どちらにとってもかなり不利だったのではないか。」「歌手デビューのチャンスや、令嬢に恋される話など、著者の人物を動かす意図が見え過ぎる。」
五木寛之
男70歳
9 「すでに一家をなしている書き手である。新人として眺めることをしなかったせいか、どこか物足りない印象があった。」「もっと迫力のある個性的な作品を書くことができる作家だと信じている。」
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他の候補作
石田衣良
『4TEEN フォーティーン』
村山由佳
『星々の舟』
伊坂幸太郎
『重力ピエロ』
宇江佐真理
『神田堀八つ下がり』
真保裕一
『繋がれた明日』
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