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第128回
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平成14年/2002年下半期
(平成15年/2003年1月16日決定発表/『オール讀物』平成15年/2003年3月号選評掲載)
選考委員  井上ひさし
男68歳
黒岩重吾
男78歳
宮城谷昌光
男57歳
北方謙三
男55歳
渡辺淳一
男69歳
林真理子
女48歳
阿刀田高
男68歳
田辺聖子
女74歳
津本陽
男73歳
平岩弓枝
女70歳
五木寛之
男70歳
選評総行数  158 78 98 94 93 92 101 78 70 128 84
候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数
石田衣良 『骨音』
561
男42歳
28 0 16 10 4 4 11 4 4 8 0
奥田英朗 『マドンナ』
447
男43歳
24 11 13 12 18 30 13 19 7 5 0
角田光代 『空中庭園』
421
女35歳
25 35 14 15 12 21 28 35 7 5 3
京極夏彦 『覘き小平次』
706
男39歳
24 0 23 24 19 7 21 18 6 18 51
松井今朝子 『似せ者』
472
女49歳
22 21 9 6 8 5 10 5 7 80 4
横山秀夫 『半落ち』
567
男45歳
28 11 7 22 35 23 11 15 7 5 10
                     
年齢/枚数の説明   見方・注意点

このページの選評出典:『オール讀物』平成15年/2003年3月号
1行当たりの文字数:13字


選考委員
井上ひさし男68歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
会社家庭小説の発明 総行数158 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
石田衣良
男42歳
28 「池袋を書くのが楽しく仕方がないという作者の喜びが行間に跳ねていて、気持がいい。主人公がときおり洩らす自己批判の、自嘲の独白がまたおもしろく、やはり好ましい才能である。」
奥田英朗
男43歳
24 「この作者の場合、文章はつねに幾分かの諧謔味を含む。今回の作品も、一見平凡な会社小説のように見えて、そのじつは会社家庭小説という新形式であり、つねに頬笑む文章はその新冒険を柔らかく包んで、読む者をあきさせない。」「評者は、つねに頬笑む文章と会社家庭小説という発明が好みに合ったので、最後まで『マドンナ』を推した。」
角田光代
女35歳
25 「語り手が変わっても語り口があまり変わらないところ、つまり語りの位相に変化のないところに欠損があるが、ここに描き出された現代風景はおそろしい。こんな毎日を送るために人間はこの世に生まれてきたのだろうか。読む者をそう落ち込まさずにおかないが、そんな気にさせられるのも作品に力があるからにちがいない。」
京極夏彦
男39歳
24 「作者の創りだす人物たちはみな、この世とあの世、いわば明と暗の狭間に危うく立ちながらも、揃ってすさまじい生き方をする。」「言葉の、その強圧的な押しつけにたじろぐ読者がいるかもしれないが、とにかく言葉がすべてという作者の気迫には打たれた。」
松井今朝子
女49歳
22 「作者の、歌舞伎についての知見の広さと、芝居という「生きもの」についての洞察の深さに感服した。」「主として心理の綾で描く手法は、多少めりはりに欠けるものの、肌理こまやかな作風の確立には役立っている。収められた四篇のうち、とくに「心残して」が佳作である。」
横山秀夫
男45歳
28 「疑問とすべき箇所も多いが、作者の新工夫は、ここでも光っている。すなわち事件を警察の内部から、たとえば言えば、総務課から描こうとする作者の発明がここでは一段と強調されている。また、呆れるほど頻繁な行替えや体言止めの多用など、これまでの小説技法では禁じられていたものを逆用して、文体を読みやすくした工夫もさらに徹底されている。」
  「粒選りの作品が集まると、あとは自分の好みで決めるしかない。」
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他の選考委員
黒岩重吾
宮城谷昌光
北方謙三
渡辺淳一
林真理子
阿刀田高
田辺聖子
津本陽
平岩弓枝
五木寛之
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選考委員
黒岩重吾男78歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
角田氏を推す 総行数78 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
石田衣良
男42歳
0  
奥田英朗
男43歳
11 「良質の短篇集である。」「人間のペーソスが滲み出ており好感が持てた。ただ本作品集を受賞作とするにはためらいがある。」
角田光代
女35歳
35 「最も面白かった。」「見事だった。私は次々と家族たちを剥いでゆくペン捌きに魅了され、時には解剖の生々しさに息苦しくなった。だが息抜きの場もペンを乱すことなく描かれている。」「確かに唐突な描写や、放り投げたような面がないでもないが、この作品が持つ新鮮な吸引力は直木賞にふさわしい、と感じて推した。」
京極夏彦
男39歳
0  
松井今朝子
女49歳
21 「作者が懸命になっているのは分るが、読後に感動が伝わらない。登場人物の殆どが役者のせいか、狭い範囲での作り事と感じてしまう。ラストの「心残して」は優れている。川端の妾宅に長雨の水が溢れそうになる描写は素晴らしい。」
横山秀夫
男45歳
11 「緊迫感を伴い読者を引っ張ってゆく手腕は申し分がない。ただ何時も感じることだが、これだけ活躍しているにも拘らず、登場人物に汗の臭いが感じられない。一歩踏み出し推すのをためらう理由である。」
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宮城谷昌光
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選考委員
宮城谷昌光男57歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
虚構の振幅 総行数98 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
石田衣良
男42歳
16 「「骨音」を読むと、玉石混淆ということばが浮かんでくる。それは氏を軽視していることばではない。」「氏の才能の問題ではなく、自身にたいする愛情にかかわることで、氏はまだ自身を本気に愛してはいない。つつしみに似た照れというようなものが、まだどこかにある証左である。」
奥田英朗
男43歳
13 「こういう平凡なテーマを、こういう気どらない筆致で書いたのは、作者がいかに挑戦的であったかということである。虚構の振幅のほどのよさは、絶妙とさえいえる。読者はそれにおどろかねばならぬ。それにもかかわらずこの作品に賞という冠が置かれなかった事実をどう解したらよいのか。」
角田光代
女35歳
14 「欠点とおもわれるものが主題を補成するとき、それを読者に開示するのが作者と作品の誠実さというものであろう。この小説ではそれがなされていたとは私にはおもわれない。」
京極夏彦
男39歳
23 「この小説のおもしろさは、登場する人物がそれぞれ実名と仮名をもっていて、おなじ人でありながらふたつの名をもつことによる現在と過去の微妙なずれが、一寸五分の隙間であり、そこから読者は物語の真実を覘くというしかけになっているのであろう。陰惨な描写があっても、どういうわけか私は澄明なものを感じた。それがこの作者の長所であり短所であるのかもしれない。」
松井今朝子
女49歳
9 「読んだあとに感じたことは、作者の立つ位置の悪さである。「耳塵集」にあるようなことを、正面に立って、本気になって書いてくれたほうが私は愉しい。」
横山秀夫
男45歳
7 「目くばりの悪さがある。みなければならぬものをみる速度が、小説の豊かさを殺いでいる。小説の筋をふくめてきれいでありすぎることは、魅力に欠けるということでもある。」
  「すべての候補作品を読み終えたあと、まだ一、二の作品を読んでいないような、ものたりなさをおぼえたのであるが、それはおそらくどの作品も読む側の感覚を刺激する圭角をもっていなかったことによるのではないかとおもっている。」
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選考委員
北方謙三男55歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
結果はこうだった 総行数94 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
石田衣良
男42歳
10 「シリーズを通読すれば、痛快に読める作品で、これからの展開も期待できるが、これ一作での候補というのは気の毒だった。」
奥田英朗
男43歳
12 「筆者の抜きん出た筆力を認めた上で言うのだが、人物を並列する書き方に、どうしても馴染めなかった。」「連作短篇で主人公を統一すれば、同じ場所で足踏みという感じはなくなったというのは、私の勝手な思いこみだろうか。」
角田光代
女35歳
15 「現実に準拠したものではないが、小説的リアリティはある。微妙なところをうまく書いたと思った。」「最後に『マドンナ』と争った時は、こちらに固執した。」
京極夏彦
男39歳
24 「私は丸をつけた。物語の厚味、漂う妖しさに魅かれたのである。」「間違いなく、小説の持つ本質のひとつがここにある、と思った。毒に満ちてはいても、結局は情愛の小説として私は読んだ。受賞作として推したいと考えていたが、孤立無援であった。」
松井今朝子
女49歳
6 「作者得意の世界であるが、それゆえに素人である私には、その深さが伝わってこない、というところがあった。小説の題材の難しさを、痛感する一冊であった。」
横山秀夫
男45歳
22 「関係の団体に問い合わせて見解を得、主人公の警部の動きには現実性がないことを、選考の途中で報告することになった。(引用者中略)最終的には議論はそこまでには到らなかった。妻を殺しながら人を助けようとする、主人公の生命に対する考えに抵抗が多かったのだという気がする。細かいところで私はいくつかひっかかっていたが、そこは物語の流れの中で読み過し、正直、意表を衝かれた。」
  「今回の候補作の質が、いつもより劣ると私は思わなかった。むしろ粒が揃っているのではないか、という印象すら持っていた。」
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選考委員
渡辺淳一男69歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
人間を描いているか否か 総行数93 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
石田衣良
男42歳
4 「前回の候補作のひりひりするような繊細さが失われて、荒削りなだけの作品に堕してしまった。」
奥田英朗
男43歳
18 「(引用者注:最後に残った「マドンナ」と「空中庭園」のうち)わたしは、「マドンナ」のほうを推した。」「ごく平凡な中年男の心情をユーモアをまじえて過不足なく描いて説得力がある。前回より迫力に欠けるという評もあったが、こういう作品を的確に書けることはプロの作家の必要条件で、今回は見送りとなったが、なかなかの小説巧者だけに、次回を期待する。」
角田光代
女35歳
12 「いま流行の家庭小説だが、各章とも同じように見えて、せっかくの構成が生きていない。部分的に面白い発言や視点もあるが、それが奇をてらいすぎて、あざとさのほうが目立つのも不満であった。」
京極夏彦
男39歳
19 「今回の候補作の中では最も特異で印象に残った。」「さまざまな人物が登場する章立てがこうるさく、その分だけ人物への突っ込みが薄くなっているのが残念であった。しかし作者独特の表現や漢字の表記をまじえて、一種の妖しの世界を描く迫力は相当なもので、これはこれで一家を成している風格がある。」
松井今朝子
女49歳
8 「各編が同工異曲で、登場人物の世界に入りかけようとすると、作者の芝居に関する知識が生硬なまま羅列されて興醒めする。」
横山秀夫
男45歳
35 「期待して読んだが、いささか失望した。その最大の弱点は、中心人物ともいうべき、妻殺しの警官が、つくられた人形のように存在感がなく、魅力に欠けることである。」「結末はいかにもきれいごとすぎてリアリティに欠ける。」「すべてがお話づくりのためのお話で、人間の本質を探り描こうとする姿勢が見られず、いわゆる推理小説の軽さだけが目立つ。」
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黒岩重吾
宮城谷昌光
北方謙三
林真理子
阿刀田高
田辺聖子
津本陽
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選考委員
林真理子女48歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
小粒な印象 総行数92 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
石田衣良
男42歳
4 「エンターテイメントとして水準が高いが、シリーズもののためわかりにくい。」
奥田英朗
男43歳
30 「私が期待していた奥田英朗さんが、へんに行儀よくなってしまったのが気にかかる。」「達者は達者であるが、以前の奥田ワールドを知っている者にとっては、かなり物足りない。」「こうした小品もうまい、ということをアピールしたかったかもしれないが、奥田さんはもっと奥田さんらしいもので、受賞していただきたいと思う。」
角田光代
女35歳
21 「いちばんよくまとまっているという感想を持った。」「構成力もあり、家族というもののいかがわしさ、不合理さというものを、家族の独白によって表現している。特にいちばん傍役と思っていた人物の、最後の章が秀逸であったが、やはり強く推そう、という気にはなれない作品である。」
京極夏彦
男39歳
7 「読みづらいといえば京極さんの「覘き小平次」の読みづらさといったらない。京極さんはファン以外の、自分の王国への立ち入りを許していない。そんな気がするのである。」
松井今朝子
女49歳
5 「短篇ですっきりまとまっていると思いきや、へんなくどさが凝縮され、実に読みづらかった。」
横山秀夫
男45歳
23 「今、ベストセラーを驀進のこの作品を、私はどうも評価出来ない。」「途中から結末が見えてしまう。」「席上、「犯人が歌舞伎町に行くことがそんなに悪いか。それほど大事件か」という声があがったが、私も同意見である。しかもこの作品は落ちに欠陥があることが他の委員の指摘でわかった。」「一般読者と実作家とは、こだわるポイントが違うのだろうかと考えさせられた一冊だ。」
  「今回の直木賞候補作は、正直申し上げて小粒の印象を持った。」
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井上ひさし
黒岩重吾
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北方謙三
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田辺聖子
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選考委員
阿刀田高男68歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
プリミティブな疑問 総行数101 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
石田衣良
男42歳
11 「連作集の第三部が候補になったこと自体、作者にとって不運であったろう。」「文章のみずみずしさ、音楽への感性など、すばらしい才能を感じながらも今回の作品にはなじめなかった。」
奥田英朗
男43歳
13 「わるくない。月々の雑誌にこのレベルの作品が載っていたら、読者は充分に楽しんでくれるだろう。」「挑戦的なところが少ない。凄味がない。賞の対象として強くは推せなかった理由である。」
角田光代
女35歳
28 「小説を評価する方法の一つに、――私には書けない――というものさしがある。(引用者中略)〈空中庭園〉は、それに近かった。弱点のない作品ではないけれど、読んでおもしろく、読み進むうちに奇妙な展開が次々にあって小説の深さを感じさせてくれる。」「発想が非凡であり、よおくはわからないながら可能性だけを感じた。」
京極夏彦
男39歳
21 「作者と私は根本的な小説観において差異があるようだ。」「依怙地を避け、すなおに読むことを心がけたが、違和感は拭えなかった。」「自分の小説観に相当な揺さぶりを受けたのも本当だが、究極のところ、この文章にはどうしても親しめないのである。特異な小説であることはまちがいない。」
松井今朝子
女49歳
10 「楽しく読んだ。」「〈狛犬〉と〈心残して〉に感動を覚えた。とくに後者は、この作家の一つの方向を示しているのではなかろうか。――あともう少し――学識豊かなこの作家が大輪の花を咲かせる日が遠くないことを信じている。」
横山秀夫
男45歳
11 「推理小説としては謎が浅い。」「ヒューマニズムを訴える点では盛りあがりに欠け、加えて現実には不可能な設定があるとなると、リアリティーに欠け困ってしまう。最後に主人公の梶聡一郎の章が必要だったのではないか。」
  「困難な選考会であった。選考会のあとも、――よい小説とは何だろう――プリミティブな疑問が湧き、しばらくは余波に悩まされそうだ。」
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黒岩重吾
宮城谷昌光
北方謙三
渡辺淳一
林真理子
田辺聖子
津本陽
平岩弓枝
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選考委員
田辺聖子女74歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
異例の選考会 総行数78 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
石田衣良
男42歳
4 「風俗が主人公、という作品のたたずまいが、新鮮で面白い作品だった。」
奥田英朗
男43歳
19 「私個人としては、右二作(引用者注:「空中庭園」と「マドンナ」)とも受賞圏内(ことに奥田氏は前候補作品『イン・ザ・プール』の印象が好意的に強く、今回の作品の、よき光背となった感がある)と思われたが、二つの作品の優劣を双方の支持者が論じているうち、応酬が白熱し、双方相討ちの様相を呈してしまった。」
角田光代
女35歳
35 「私が興趣をかきたてられた魅力作である。新しい才能に遭遇したときの戦慄的な快感をおぼえ、楽しませてもらった。」「新人らしい才能のきらめきがページにこぼれ、珍重に価すると感じた。」「かなり票の入った作品だが、『マドンナ』(奥田英朗氏)と票を食い合って、烈しい競りあいとなり、ついに共倒れとなってしまったのは残念。」
京極夏彦
男39歳
18 「舌に残る面妖なあと味は、作者独特のもので、装画装幀の凝りかたといい、内容にマッチして愛蔵すべき本となっている。」「読み手がかなり入れこんで、共同作業として小説に寄り添わないといけないものの如く思われる。手のかかる本である。」
松井今朝子
女49歳
5 「「狛犬」と「心残して」がいい。文章のくどさがかなりうすれて読みやすくなった。」
横山秀夫
男45歳
15 「今回、私は『半落ち』(横山秀夫氏)ときめて臨んだ。」「今回の作品も期待を裏切られない緻密な構成だ。」「すべてが解明されたあとの納得のあと味も爽快感あり。ただ設定上の疑問点を指摘する声もあり、魅力ある作品だが、ついに見送られて私としてはいたく残念であった。」
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津本陽
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選考委員
津本陽男73歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
時代のにおい 総行数70 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
石田衣良
男42歳
4 「都会に生きる者の、無機質のような内部に、暗い色彩の光りをあて、それなりの効果をだしている。」
奥田英朗
男43歳
7 「作者の触覚は、するどさを失っていないが、まえに読んだ作品群より軽くなった。読み手をひきつける力はつよいが、おや、と考えさせるような問題は出していない。」
角田光代
女35歳
7 「現代の存在感の稀薄な家庭を描いて巧妙であるが、登場してくる婆さんも娘も息子も、三十代の主婦とおなじようなしゃべりかたをしているのが、気になってならなかった。」
京極夏彦
男39歳
6 「ほめる声が、けっこう多かった。たしかに迫力はある。濃密な色彩の文章が眼をひくのである。」
松井今朝子
女49歳
7 「あまりに成長しているのでびっくりした。「狛犬」と「心残して」は、見過ごせない佳作である。私はこの連作に心を残した。」
横山秀夫
男45歳
7 「私が推そうと思った作品であった。ちょっと行儀がよすぎるようにも思えたが、悪くない。しかし、手続上の問題で疑義があるとのことであったので、つぎの作品を待つことにした。」
  「(引用者注:ここ数年の小説は)技巧がすぐれてきた。話はおもしろい。パソコンを使うので饒舌になりすぎるきらいはあるが、読者を牽引する技術は繊細になり、発達してきた。」「だがいろいろの形の菓子パンのなかに、握り飯が一個ころがっているような、存在感のある作品を、見てみたい。」
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選考委員
平岩弓枝女70歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
いま一つの何か 総行数128 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
石田衣良
男42歳
8 「何を書いても明るい感じがするのは、この作者の持ち味だろう。逆にその分、リアルではないという苦言が呈されたけれども、この持ち味は失わないでもらいたい。貴重な財産である。」
奥田英朗
男43歳
5 「前回の『イン・ザ・プール』の毒が抜けてしまって大人しくなったのがもの足りない。」
角田光代
女35歳
5 「才筆だが推敲が足りない。その分、軽く読まれてしまうのは、この作者にとって不満だろうと思う。」
京極夏彦
男39歳
18 「実によく出来た作品で、直木賞の候補作品でこんなに苦労なしに面白く読まされてしまったというのは久しぶりのことであった。」「文句をいう筋ではないけれども、巧緻を極めた舞台装置と技巧を凝らした筋書が少々、暑苦しく感じられたのは私の好みの故であろう。」
松井今朝子
女49歳
80 「最後の「心残して」のような作品がもう一つでも含まれていたら、自信を持って受賞作に推したと思う。何故、「心残して」がよいのかといえば、主人公こそ芝居の三味線弾きになっているが、他にいわゆる芝居者が殆んど出て来ない故である。」「かつて私の恩師である長谷川伸先生は、小説を書く上での心得として、調べるのは百パーセント、書く時はその八十パーセントを捨ててかかるように。また、自分の得意の分野、専門的な知識を十二分に持っている世界を書く時にはその九十パーセントを捨てないと良い作品は出来ないといわれた。」
横山秀夫
男45歳
5 「作者はもう直木賞を受賞してよい実力者なのに、今回の作品には大事な部分に問題点が指摘されたのは惜しかった。」
  「個々の候補作は各々に魅力があるのに受賞作なしとなったのは、いま一つの何かという感触のせいではないか。その何かがわかればもの書きに苦労はないのだろうが。」
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黒岩重吾
宮城谷昌光
北方謙三
渡辺淳一
林真理子
阿刀田高
田辺聖子
津本陽
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選考委員
五木寛之男70歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
京極夏彦の栄光 総行数84 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
石田衣良
男42歳
0  
奥田英朗
男43歳
0  
角田光代
女35歳
3 「魅力のある作品だった。」
京極夏彦
男39歳
51 「好き嫌いや、文芸観の相違をこえて、その存在を誰もが無視することができない作家である。」「京極夏彦という小説家の世界は、直木賞の次元を突き抜けている。」「票が集ればそれもよし、もし支持が少ければ、受賞者なしに終るだろうと予想したのだが、結果はその通りになった。」「直木賞になじまない、さりとて芥川賞の枠にも入らない、というところが京極夏彦という作家の栄光と言えるのではあるまいか。」
松井今朝子
女49歳
4 「若干の欠点はあるにせよ私はとても興味をおぼえた。」
横山秀夫
男45歳
10 「前半三分の一まで引き込まれて読んだが、後半の予定調和的な結果には、大いに失望した。組織と人間の悪を描くことに徹すれば、この作家は大きな存在になるかもしれない。」
  「たぶん、受賞作なしの結果に終るのではないか、しかし、それは避けたい、と考えながら選考の席にのぞんだ。」
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他の選考委員
井上ひさし
黒岩重吾
宮城谷昌光
北方謙三
渡辺淳一
林真理子
阿刀田高
田辺聖子
津本陽
平岩弓枝
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候補者・作品
石田衣良男42歳×各選考委員 
『骨音』
連作4篇 561
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
井上ひさし
男68歳
28 「池袋を書くのが楽しく仕方がないという作者の喜びが行間に跳ねていて、気持がいい。主人公がときおり洩らす自己批判の、自嘲の独白がまたおもしろく、やはり好ましい才能である。」
黒岩重吾
男78歳
0  
宮城谷昌光
男57歳
16 「「骨音」を読むと、玉石混淆ということばが浮かんでくる。それは氏を軽視していることばではない。」「氏の才能の問題ではなく、自身にたいする愛情にかかわることで、氏はまだ自身を本気に愛してはいない。つつしみに似た照れというようなものが、まだどこかにある証左である。」
北方謙三
男55歳
10 「シリーズを通読すれば、痛快に読める作品で、これからの展開も期待できるが、これ一作での候補というのは気の毒だった。」
渡辺淳一
男69歳
4 「前回の候補作のひりひりするような繊細さが失われて、荒削りなだけの作品に堕してしまった。」
林真理子
女48歳
4 「エンターテイメントとして水準が高いが、シリーズもののためわかりにくい。」
阿刀田高
男68歳
11 「連作集の第三部が候補になったこと自体、作者にとって不運であったろう。」「文章のみずみずしさ、音楽への感性など、すばらしい才能を感じながらも今回の作品にはなじめなかった。」
田辺聖子
女74歳
4 「風俗が主人公、という作品のたたずまいが、新鮮で面白い作品だった。」
津本陽
男73歳
4 「都会に生きる者の、無機質のような内部に、暗い色彩の光りをあて、それなりの効果をだしている。」
平岩弓枝
女70歳
8 「何を書いても明るい感じがするのは、この作者の持ち味だろう。逆にその分、リアルではないという苦言が呈されたけれども、この持ち味は失わないでもらいたい。貴重な財産である。」
五木寛之
男70歳
0  
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他の候補作
奥田英朗
『マドンナ』
角田光代
『空中庭園』
京極夏彦
『覘き小平次』
松井今朝子
『似せ者』
横山秀夫
『半落ち』
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候補者・作品
奥田英朗男43歳×各選考委員 
『マドンナ』
短篇集5篇 447
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
井上ひさし
男68歳
24 「この作者の場合、文章はつねに幾分かの諧謔味を含む。今回の作品も、一見平凡な会社小説のように見えて、そのじつは会社家庭小説という新形式であり、つねに頬笑む文章はその新冒険を柔らかく包んで、読む者をあきさせない。」「評者は、つねに頬笑む文章と会社家庭小説という発明が好みに合ったので、最後まで『マドンナ』を推した。」
黒岩重吾
男78歳
11 「良質の短篇集である。」「人間のペーソスが滲み出ており好感が持てた。ただ本作品集を受賞作とするにはためらいがある。」
宮城谷昌光
男57歳
13 「こういう平凡なテーマを、こういう気どらない筆致で書いたのは、作者がいかに挑戦的であったかということである。虚構の振幅のほどのよさは、絶妙とさえいえる。読者はそれにおどろかねばならぬ。それにもかかわらずこの作品に賞という冠が置かれなかった事実をどう解したらよいのか。」
北方謙三
男55歳
12 「筆者の抜きん出た筆力を認めた上で言うのだが、人物を並列する書き方に、どうしても馴染めなかった。」「連作短篇で主人公を統一すれば、同じ場所で足踏みという感じはなくなったというのは、私の勝手な思いこみだろうか。」
渡辺淳一
男69歳
18 「(引用者注:最後に残った「マドンナ」と「空中庭園」のうち)わたしは、「マドンナ」のほうを推した。」「ごく平凡な中年男の心情をユーモアをまじえて過不足なく描いて説得力がある。前回より迫力に欠けるという評もあったが、こういう作品を的確に書けることはプロの作家の必要条件で、今回は見送りとなったが、なかなかの小説巧者だけに、次回を期待する。」
林真理子
女48歳
30 「私が期待していた奥田英朗さんが、へんに行儀よくなってしまったのが気にかかる。」「達者は達者であるが、以前の奥田ワールドを知っている者にとっては、かなり物足りない。」「こうした小品もうまい、ということをアピールしたかったかもしれないが、奥田さんはもっと奥田さんらしいもので、受賞していただきたいと思う。」
阿刀田高
男68歳
13 「わるくない。月々の雑誌にこのレベルの作品が載っていたら、読者は充分に楽しんでくれるだろう。」「挑戦的なところが少ない。凄味がない。賞の対象として強くは推せなかった理由である。」
田辺聖子
女74歳
19 「私個人としては、右二作(引用者注:「空中庭園」と「マドンナ」)とも受賞圏内(ことに奥田氏は前候補作品『イン・ザ・プール』の印象が好意的に強く、今回の作品の、よき光背となった感がある)と思われたが、二つの作品の優劣を双方の支持者が論じているうち、応酬が白熱し、双方相討ちの様相を呈してしまった。」
津本陽
男73歳
7 「作者の触覚は、するどさを失っていないが、まえに読んだ作品群より軽くなった。読み手をひきつける力はつよいが、おや、と考えさせるような問題は出していない。」
平岩弓枝
女70歳
5 「前回の『イン・ザ・プール』の毒が抜けてしまって大人しくなったのがもの足りない。」
五木寛之
男70歳
0  
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他の候補作
石田衣良
『骨音』
角田光代
『空中庭園』
京極夏彦
『覘き小平次』
松井今朝子
『似せ者』
横山秀夫
『半落ち』
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候補者・作品
角田光代女35歳×各選考委員 
『空中庭園』
連作6篇 421
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
井上ひさし
男68歳
25 「語り手が変わっても語り口があまり変わらないところ、つまり語りの位相に変化のないところに欠損があるが、ここに描き出された現代風景はおそろしい。こんな毎日を送るために人間はこの世に生まれてきたのだろうか。読む者をそう落ち込まさずにおかないが、そんな気にさせられるのも作品に力があるからにちがいない。」
黒岩重吾
男78歳
35 「最も面白かった。」「見事だった。私は次々と家族たちを剥いでゆくペン捌きに魅了され、時には解剖の生々しさに息苦しくなった。だが息抜きの場もペンを乱すことなく描かれている。」「確かに唐突な描写や、放り投げたような面がないでもないが、この作品が持つ新鮮な吸引力は直木賞にふさわしい、と感じて推した。」
宮城谷昌光
男57歳
14 「欠点とおもわれるものが主題を補成するとき、それを読者に開示するのが作者と作品の誠実さというものであろう。この小説ではそれがなされていたとは私にはおもわれない。」
北方謙三
男55歳
15 「現実に準拠したものではないが、小説的リアリティはある。微妙なところをうまく書いたと思った。」「最後に『マドンナ』と争った時は、こちらに固執した。」
渡辺淳一
男69歳
12 「いま流行の家庭小説だが、各章とも同じように見えて、せっかくの構成が生きていない。部分的に面白い発言や視点もあるが、それが奇をてらいすぎて、あざとさのほうが目立つのも不満であった。」
林真理子
女48歳
21 「いちばんよくまとまっているという感想を持った。」「構成力もあり、家族というもののいかがわしさ、不合理さというものを、家族の独白によって表現している。特にいちばん傍役と思っていた人物の、最後の章が秀逸であったが、やはり強く推そう、という気にはなれない作品である。」
阿刀田高
男68歳
28 「小説を評価する方法の一つに、――私には書けない――というものさしがある。(引用者中略)〈空中庭園〉は、それに近かった。弱点のない作品ではないけれど、読んでおもしろく、読み進むうちに奇妙な展開が次々にあって小説の深さを感じさせてくれる。」「発想が非凡であり、よおくはわからないながら可能性だけを感じた。」
田辺聖子
女74歳
35 「私が興趣をかきたてられた魅力作である。新しい才能に遭遇したときの戦慄的な快感をおぼえ、楽しませてもらった。」「新人らしい才能のきらめきがページにこぼれ、珍重に価すると感じた。」「かなり票の入った作品だが、『マドンナ』(奥田英朗氏)と票を食い合って、烈しい競りあいとなり、ついに共倒れとなってしまったのは残念。」
津本陽
男73歳
7 「現代の存在感の稀薄な家庭を描いて巧妙であるが、登場してくる婆さんも娘も息子も、三十代の主婦とおなじようなしゃべりかたをしているのが、気になってならなかった。」
平岩弓枝
女70歳
5 「才筆だが推敲が足りない。その分、軽く読まれてしまうのは、この作者にとって不満だろうと思う。」
五木寛之
男70歳
3 「魅力のある作品だった。」
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他の候補作
石田衣良
『骨音』
奥田英朗
『マドンナ』
京極夏彦
『覘き小平次』
松井今朝子
『似せ者』
横山秀夫
『半落ち』
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候補者・作品
京極夏彦男39歳×各選考委員 
『覘き小平次』
長篇 706
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
井上ひさし
男68歳
24 「作者の創りだす人物たちはみな、この世とあの世、いわば明と暗の狭間に危うく立ちながらも、揃ってすさまじい生き方をする。」「言葉の、その強圧的な押しつけにたじろぐ読者がいるかもしれないが、とにかく言葉がすべてという作者の気迫には打たれた。」
黒岩重吾
男78歳
0  
宮城谷昌光
男57歳
23 「この小説のおもしろさは、登場する人物がそれぞれ実名と仮名をもっていて、おなじ人でありながらふたつの名をもつことによる現在と過去の微妙なずれが、一寸五分の隙間であり、そこから読者は物語の真実を覘くというしかけになっているのであろう。陰惨な描写があっても、どういうわけか私は澄明なものを感じた。それがこの作者の長所であり短所であるのかもしれない。」
北方謙三
男55歳
24 「私は丸をつけた。物語の厚味、漂う妖しさに魅かれたのである。」「間違いなく、小説の持つ本質のひとつがここにある、と思った。毒に満ちてはいても、結局は情愛の小説として私は読んだ。受賞作として推したいと考えていたが、孤立無援であった。」
渡辺淳一
男69歳
19 「今回の候補作の中では最も特異で印象に残った。」「さまざまな人物が登場する章立てがこうるさく、その分だけ人物への突っ込みが薄くなっているのが残念であった。しかし作者独特の表現や漢字の表記をまじえて、一種の妖しの世界を描く迫力は相当なもので、これはこれで一家を成している風格がある。」
林真理子
女48歳
7 「読みづらいといえば京極さんの「覘き小平次」の読みづらさといったらない。京極さんはファン以外の、自分の王国への立ち入りを許していない。そんな気がするのである。」
阿刀田高
男68歳
21 「作者と私は根本的な小説観において差異があるようだ。」「依怙地を避け、すなおに読むことを心がけたが、違和感は拭えなかった。」「自分の小説観に相当な揺さぶりを受けたのも本当だが、究極のところ、この文章にはどうしても親しめないのである。特異な小説であることはまちがいない。」
田辺聖子
女74歳
18 「舌に残る面妖なあと味は、作者独特のもので、装画装幀の凝りかたといい、内容にマッチして愛蔵すべき本となっている。」「読み手がかなり入れこんで、共同作業として小説に寄り添わないといけないものの如く思われる。手のかかる本である。」
津本陽
男73歳
6 「ほめる声が、けっこう多かった。たしかに迫力はある。濃密な色彩の文章が眼をひくのである。」
平岩弓枝
女70歳
18 「実によく出来た作品で、直木賞の候補作品でこんなに苦労なしに面白く読まされてしまったというのは久しぶりのことであった。」「文句をいう筋ではないけれども、巧緻を極めた舞台装置と技巧を凝らした筋書が少々、暑苦しく感じられたのは私の好みの故であろう。」
五木寛之
男70歳
51 「好き嫌いや、文芸観の相違をこえて、その存在を誰もが無視することができない作家である。」「京極夏彦という小説家の世界は、直木賞の次元を突き抜けている。」「票が集ればそれもよし、もし支持が少ければ、受賞者なしに終るだろうと予想したのだが、結果はその通りになった。」「直木賞になじまない、さりとて芥川賞の枠にも入らない、というところが京極夏彦という作家の栄光と言えるのではあるまいか。」
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他の候補作
石田衣良
『骨音』
奥田英朗
『マドンナ』
角田光代
『空中庭園』
松井今朝子
『似せ者』
横山秀夫
『半落ち』
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候補者・作品
松井今朝子女49歳×各選考委員 
『似せ者』
短篇集4篇 472
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
井上ひさし
男68歳
22 「作者の、歌舞伎についての知見の広さと、芝居という「生きもの」についての洞察の深さに感服した。」「主として心理の綾で描く手法は、多少めりはりに欠けるものの、肌理こまやかな作風の確立には役立っている。収められた四篇のうち、とくに「心残して」が佳作である。」
黒岩重吾
男78歳
21 「作者が懸命になっているのは分るが、読後に感動が伝わらない。登場人物の殆どが役者のせいか、狭い範囲での作り事と感じてしまう。ラストの「心残して」は優れている。川端の妾宅に長雨の水が溢れそうになる描写は素晴らしい。」
宮城谷昌光
男57歳
9 「読んだあとに感じたことは、作者の立つ位置の悪さである。「耳塵集」にあるようなことを、正面に立って、本気になって書いてくれたほうが私は愉しい。」
北方謙三
男55歳
6 「作者得意の世界であるが、それゆえに素人である私には、その深さが伝わってこない、というところがあった。小説の題材の難しさを、痛感する一冊であった。」
渡辺淳一
男69歳
8 「各編が同工異曲で、登場人物の世界に入りかけようとすると、作者の芝居に関する知識が生硬なまま羅列されて興醒めする。」
林真理子
女48歳
5 「短篇ですっきりまとまっていると思いきや、へんなくどさが凝縮され、実に読みづらかった。」
阿刀田高
男68歳
10 「楽しく読んだ。」「〈狛犬〉と〈心残して〉に感動を覚えた。とくに後者は、この作家の一つの方向を示しているのではなかろうか。――あともう少し――学識豊かなこの作家が大輪の花を咲かせる日が遠くないことを信じている。」
田辺聖子
女74歳
5 「「狛犬」と「心残して」がいい。文章のくどさがかなりうすれて読みやすくなった。」
津本陽
男73歳
7 「あまりに成長しているのでびっくりした。「狛犬」と「心残して」は、見過ごせない佳作である。私はこの連作に心を残した。」
平岩弓枝
女70歳
80 「最後の「心残して」のような作品がもう一つでも含まれていたら、自信を持って受賞作に推したと思う。何故、「心残して」がよいのかといえば、主人公こそ芝居の三味線弾きになっているが、他にいわゆる芝居者が殆んど出て来ない故である。」「かつて私の恩師である長谷川伸先生は、小説を書く上での心得として、調べるのは百パーセント、書く時はその八十パーセントを捨ててかかるように。また、自分の得意の分野、専門的な知識を十二分に持っている世界を書く時にはその九十パーセントを捨てないと良い作品は出来ないといわれた。」
五木寛之
男70歳
4 「若干の欠点はあるにせよ私はとても興味をおぼえた。」
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他の候補作
石田衣良
『骨音』
奥田英朗
『マドンナ』
角田光代
『空中庭園』
京極夏彦
『覘き小平次』
横山秀夫
『半落ち』
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候補者・作品
横山秀夫男45歳×各選考委員 
『半落ち』
長篇 567
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
井上ひさし
男68歳
28 「疑問とすべき箇所も多いが、作者の新工夫は、ここでも光っている。すなわち事件を警察の内部から、たとえば言えば、総務課から描こうとする作者の発明がここでは一段と強調されている。また、呆れるほど頻繁な行替えや体言止めの多用など、これまでの小説技法では禁じられていたものを逆用して、文体を読みやすくした工夫もさらに徹底されている。」
黒岩重吾
男78歳
11 「緊迫感を伴い読者を引っ張ってゆく手腕は申し分がない。ただ何時も感じることだが、これだけ活躍しているにも拘らず、登場人物に汗の臭いが感じられない。一歩踏み出し推すのをためらう理由である。」
宮城谷昌光
男57歳
7 「目くばりの悪さがある。みなければならぬものをみる速度が、小説の豊かさを殺いでいる。小説の筋をふくめてきれいでありすぎることは、魅力に欠けるということでもある。」
北方謙三
男55歳
22 「関係の団体に問い合わせて見解を得、主人公の警部の動きには現実性がないことを、選考の途中で報告することになった。(引用者中略)最終的には議論はそこまでには到らなかった。妻を殺しながら人を助けようとする、主人公の生命に対する考えに抵抗が多かったのだという気がする。細かいところで私はいくつかひっかかっていたが、そこは物語の流れの中で読み過し、正直、意表を衝かれた。」
渡辺淳一
男69歳
35 「期待して読んだが、いささか失望した。その最大の弱点は、中心人物ともいうべき、妻殺しの警官が、つくられた人形のように存在感がなく、魅力に欠けることである。」「結末はいかにもきれいごとすぎてリアリティに欠ける。」「すべてがお話づくりのためのお話で、人間の本質を探り描こうとする姿勢が見られず、いわゆる推理小説の軽さだけが目立つ。」
林真理子
女48歳
23 「今、ベストセラーを驀進のこの作品を、私はどうも評価出来ない。」「途中から結末が見えてしまう。」「席上、「犯人が歌舞伎町に行くことがそんなに悪いか。それほど大事件か」という声があがったが、私も同意見である。しかもこの作品は落ちに欠陥があることが他の委員の指摘でわかった。」「一般読者と実作家とは、こだわるポイントが違うのだろうかと考えさせられた一冊だ。」
阿刀田高
男68歳
11 「推理小説としては謎が浅い。」「ヒューマニズムを訴える点では盛りあがりに欠け、加えて現実には不可能な設定があるとなると、リアリティーに欠け困ってしまう。最後に主人公の梶聡一郎の章が必要だったのではないか。」
田辺聖子
女74歳
15 「今回、私は『半落ち』(横山秀夫氏)ときめて臨んだ。」「今回の作品も期待を裏切られない緻密な構成だ。」「すべてが解明されたあとの納得のあと味も爽快感あり。ただ設定上の疑問点を指摘する声もあり、魅力ある作品だが、ついに見送られて私としてはいたく残念であった。」
津本陽
男73歳
7 「私が推そうと思った作品であった。ちょっと行儀がよすぎるようにも思えたが、悪くない。しかし、手続上の問題で疑義があるとのことであったので、つぎの作品を待つことにした。」
平岩弓枝
女70歳
5 「作者はもう直木賞を受賞してよい実力者なのに、今回の作品には大事な部分に問題点が指摘されたのは惜しかった。」
五木寛之
男70歳
10 「前半三分の一まで引き込まれて読んだが、後半の予定調和的な結果には、大いに失望した。組織と人間の悪を描くことに徹すれば、この作家は大きな存在になるかもしれない。」
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他の候補作
石田衣良
『骨音』
奥田英朗
『マドンナ』
角田光代
『空中庭園』
京極夏彦
『覘き小平次』
松井今朝子
『似せ者』
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