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平成13年/2001年下半期
(平成14年/2002年1月16日決定発表/『オール讀物』平成14年/2002年3月号選評掲載)
選考委員  平岩弓枝
女69歳
井上ひさし
男67歳
林真理子
女47歳
北方謙三
男54歳
津本陽
男72歳
宮城谷昌光
男56歳
阿刀田高
男67歳
渡辺淳一
男68歳
田辺聖子
女73歳
五木寛之
男69歳
黒岩重吾
男77歳
選評総行数  98 176 87 92 68 100 102 72 94 62 89
候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数
山本一力 『あかね空』
696
男53歳
28 29 18 14 16 20 15 8 14 6 14
唯川恵 『肩ごしの恋人』
561
女46歳
13 35 39 15 13 19 11 12 19 27 27
石田衣良 『娼年』
337
男41歳
0 19 7 20 9 6 14 9 8 9 10
乙川優三郎 『かずら野』
459
男48歳
22 23 9 17 12 29 29 9 16 0 12
黒川博行 『国境』
1155
男52歳
0 34 9 22 12 12 9 7 24 28 10
諸田玲子 『あくじゃれ瓢六』
551
女47歳
17 36 5 8 6 16 27 16 13 0 9
                欠席
書面回答
   
年齢/枚数の説明   見方・注意点

このページの選評出典:『オール讀物』平成14年/2002年3月号
1行当たりの文字数:13字


選考委員
平岩弓枝女69歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
「あかね空」を推す 総行数98 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
山本一力
男53歳
28 「宝暦十二年八月と、登場人物の生きた年代をはっきり決めている姿勢にこの作者の時代小説への意気込みを感じた。」「第一部と第二部に分ける構成ミスということもいわれたが、山本さんの自作に対する姿勢は、すみやかにそうした点をクリアしてしまうと思う。この作品に出会えたことは、今回の収穫だった。」
唯川恵
女46歳
13 「才能を強く感じさせる作家であることには異論はない。ただ、この作品は如何にも軽い。」
石田衣良
男41歳
0  
乙川優三郎
男48歳
22 「どうしても気になったのは女主人公の菊子の富治に対する心である。」「菊子が富治のどこに惹かれて長年の流浪生活に耐えるのか、富治の菊子への想いはいつ始まったのか、すれちがいでもいいから、男女の心の通わせようが明らかでないと、ただ運命に流されて行く二人のきずながわからない。」「まことに残念であった。」
黒川博行
男52歳
0  
諸田玲子
女47歳
17 「着想は面白いが、この着想は連作には向かない。」「映画やテレビドラマの虚構はともかく、小伝馬町の牢が、どういうものだったか、実態をしっかり把握した上で上手な嘘をついてもらいたい。」「この作者の責任ではないが作品が未完であることも候補作としてはマイナスになったと思う。」
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他の選考委員
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林真理子
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五木寛之
黒岩重吾
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選考委員
井上ひさし男67歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
二つの家族小説 総行数176 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
山本一力
男53歳
29 「江戸深川とそこで生きる人びとをひたと見据える気合い、それが全編に漲っていて、その劇しい気合いがいくつかの欠点(時代考証の勘違い、都合のよすぎる筋立て、凹凸のある描写)をきれいに消してしまってもいる。」「家族間の愛情の微妙なもつれを、第二部でいちいち訂正して行く構成がとても知的だ。」「とにかくすてきに気分のいい小説である。」
唯川恵
女46歳
35 「作者は、切れ味のいい対話や愉快な会話、女性に対する辛辣きわまりない批評、そしてラ・ロシュフコー張りの箴言を駆使しながら、軽快に物語を展開して行く。」「結末で、読者にこころの底から、「三人とも頑張って」と願わせてしまう力量はただものではない。軽さの中に骨太の主題を隠した快作である。」
石田衣良
男41歳
19 「全編に埋め込んだ多彩な性描写は、どれを取って見ても扇情的でありながら清潔、具体的でありながらも豊かな詩情に溢れ、ほとんど完璧、輝くような才能である。そこで逆に、結末の、HIVがらみの因果物めいた俗っぽさが気になりもする。」「この結末を除けば、これは永く記憶にのこる名作なのだが。」
乙川優三郎
男48歳
23 「女主人公の心理を風景描写とからめて美しく、しかし的確に歌い上げる文章が、ほとんど完成を見ている。」「(引用者注:小説の大きな筋の)折り目が、ばかに作者に都合がいいように作られていて、その分だけ作品から読者が離れてしまった。」
黒川博行
男52歳
34 「(引用者注:主人公の)二人の軽口、悪態口の叩き合いは活溌に弾んで、作中の各所で文学的漫才が成立している。」「ここまで詳細に北朝鮮を書いたものはこれまで存在しなかった。その意味でも値打ちがあるが、しかし、その北朝鮮がすべて書割りじみているのが惜しまれる。」「『国境』と題を打ったからには、もっと〈国境〉そのものに心中立てする気概が要る。」
諸田玲子
女47歳
36 「定型化した捕物帳にぴかぴかの新機軸をいくつも打ち出そうとした野心作である。」「ただし、扱われている事件そのものは、いずれも輪郭がはっきりせず、したがってあまりおもしろくない。」「さらに人物の造型も文章もよほど悪達者で、そこも減点せざるをえなかった。」
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林真理子
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宮城谷昌光
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渡辺淳一
田辺聖子
五木寛之
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選考委員
林真理子女47歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
時代の風 総行数87 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
山本一力
男53歳
18 「若い職人が、その才覚と気働きで、やがて店を盛り立てていくというストーリーは、読み手にある種のカタルシスを与えてくれる。よって二部は不要であると私は思う。」「しかしこの小説の清々しい読後感はそう損なわれることはなく、山本さんは大変な力量を身につけられたようだ。」
唯川恵
女46歳
39 「感服した。いきいきと現代の女性が動き、呼吸しているのである。特に恋愛についての、いささか醒めた意地の悪さがとても面白かった。」「よく出来た女性のための小説というのは、男性も、あらゆる年齢の人も共感する。ひとりひとりのリアリティ、構成力も素晴らしい。」
石田衣良
男41歳
7 「性の描写が非常に美しく巧みである。」「けれども他の文章がやや凡庸で、この性のシーンを支えきれなかったのが残念だ。」
乙川優三郎
男48歳
9 「シチュエーションに無理がある。どう読もうと、私はこの女主人公が相手の男を愛しているとはどうしても思えない。」
黒川博行
男52歳
9 「非常に面白く読んだ。けれどもシリーズ化されたものということが裏目に出た。途中から読者は、主人公のヤクザが生きて帰ってくることがわかってしまう。それによってやや白けた気分になってしまうのである。」
諸田玲子
女47歳
5 「達者な書きぶりであるが、上手なエンターテイメントの枠に入ったままのような気がする。」
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選考委員
北方謙三男54歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
多彩な候補作 総行数92 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
山本一力
男53歳
14 「懸命に、江戸という時代を自分の作品世界に生かそうとしていて、誠実さが胸を打った。」「好感の持てる作風で、小説の芯のようなものもしっかり感じられた。」「決戦投票で、私は『国境』と『あかね空』に入れた。」
唯川恵
女46歳
15 「女のたくましさ、切なさが、日常にすっと入りこんできた非日常を通して巧みに描かれ、都会的な風俗小説の佳品であった。二人の女の眼から見た男たちの姿が、どうも表層的である印象を拭いきれず、恋愛小説として読むにはわずかにそこが不満であった。」
石田衣良
男41歳
20 「感性のみずみずしさ、文体の透明感は、私を魅了した。」「アズマとひと夜過ごすところで、この作者はなにかを間違えたと思う。」「ぼくとアズマは、あくまで照射し合う関係でいるべきで、それを書き通す力を惜しんだという気がしてならない。」
乙川優三郎
男48歳
17 「業の深い男女の愛憎の行き着く果てを、見事に描きあげ、緩みのない小説に仕あがっていると感じた。」「ただ選考の論議の中で、時代小説のどういうところを、この賞は評価すべきかということを考えさせられ、私は支持の意見を変えた。この作品には、隙がないようで隙があり、指摘されると、それが緊密さの欠如という印象につながったのだった。」
黒川博行
男52歳
22 「冒険小説として出色の出来であると感じた。国境が、やくざにとって追いこみのために突破すべき、強大な障壁だというところがよかった。」「この作品にある面白さは、小説本来の物語の面白さであった、と私は思う。」「決戦投票で、私は『国境』と『あかね空』に入れた。」
諸田玲子
女47歳
8 「実際にあり得るかどうかは別として、ドラマ性は確かに感じる。ただ、候補作は単体として読む。シリーズもので、大きな問題点が解決されていない作品での候補は、気の毒であった。」
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選考委員
津本陽男72歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
運というもの 総行数68 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
山本一力
男53歳
16 「はじめの語りくちがきわめて達者であるが、なかほどでゆるんでくる。またもちなおして、いい出来栄えになったが、何事にも運というものがある。」「この強運を生かして飛躍することだ。」
唯川恵
女46歳
13 「読者を飽きさせない引きをこころえている点では、熟達している。」「これだけつよいフェロモンをそなえた作品は、多くの読者を楽しませる。今後の活躍はいうまでもないだろう。」
石田衣良
男41歳
9 「実に達者な筆はこびであるが、結末に至るまで水に潜ったきりでいるような息苦しさを拭いとることが必要ではないかと思った。」「色と金についての話は、菓子のようにおいしいが、食べ飽きないように工夫しなければならない。」
乙川優三郎
男48歳
12 「途中から筆が渋ってくるところ、というか、テンポが落ちてくるところがあるが、話は最後まで乱れず、余韻も残した。」「いい出来栄えである。ディケンズの作品のような、荒削りな力で展開していってほしい。」
黒川博行
男52歳
12 「二千枚という作品を六時間あまりかけて一気に読んだ。」「非常におもしろかったので、茫然としたほどだが、ふりかえってみると、ところどころに、話のはこびだけに力をかけすぎた箇所があった。」
諸田玲子
女47歳
6 「達者な筆はこびで楽しませてくれるのだが、構成が大胆すぎて嘘っぽい感じになってきてしまった。」
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選考委員
宮城谷昌光男56歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
軽みについて 総行数100 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
山本一力
男53歳
20 「山本一力氏には、内なる力があり、その力がおのずと求めた小説様式が、素直に展開されたことで、読むほうも素直になれたという事実がある。私は氏の作品を読みすすむにつれて、良い人情噺が書ける作者があらわれたな、という実感を強くした。作品が人の胸を打つということは、そこに真実がある、ということにほかならない。」
唯川恵
女46歳
19 「謬舛の多い私の読解の目には、その軽みに文学的な非凡さや時代的な個性が映らなかった。すなわち受賞作品は氏の最大限の表現に到達したものであったのか、疑問が残る。」
石田衣良
男41歳
6 「美質は今回であきらかになった。ことばの居ずまいの良さは、受賞作品をもしのいでいる。近い将来、飛躍して、名作を書けるのは、この人であろう。」
乙川優三郎
男48歳
29 「いつ受賞してもふしぎではない筆力をもっている人である。」「運命の力の大きさと人の力の小ささとが対蹠的に描かれているのであるが、残念ながら遠近感が精密に作品に反映されていない。そこに作品として雑駁さがあり、分力が作品の最後に合力となりえないので、作品の総合力が読み手を圧倒することができない。」
黒川博行
男52歳
12 「小説家としての努力の痕跡があり、その賢明さに感心させられた。作品は賞に手がとどいていたと私は感じたが、その手は賞をつかむことができなかった。が、握力の差をあまり深く考えないほうがよい。」
諸田玲子
女47歳
16 「時代小説にも新風が必要であり、氏の工夫がひとつの旋風になってもらいたい。今回の作品はおもしろく読んだ。今後は、おもしろさの質を向上させ、正確な情報量をふやせばよく、たとえ細部にこだわったところで、氏は迷路にはいりこむような人ではなさそうなので、次作に期待したい。」
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他の選考委員
平岩弓枝
井上ひさし
林真理子
北方謙三
津本陽
阿刀田高
渡辺淳一
田辺聖子
五木寛之
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選考委員
阿刀田高男67歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
いずれも小差 総行数102 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
山本一力
男53歳
15 「重厚である。丹念に、きっかりと描いている。」「優等生の模範答案のようで、花の乏しい恨みがあるけれど、模範答案を否定するのは酷だろう。小差ながら「かずら野」より、――よいかな――と思った。」
唯川恵
女46歳
11 「現代に生きる女性たちをさりげなく描いているが、したたかな隠し味が随所に散っている。登場人物はみんなそれぞれの方法で必死に生きている。それでいながら飛んでいる。そこが快い。」
石田衣良
男41歳
14 「端倪すべからざる作品である。」「抑制のきいた、クールな文体。確かな観察と巧みな描写。きわどい性の世界を描きながら少しも卑しくない。」「そんな長所を感じながら、――もう一作、見たい――というのが率直な印象だった。」
乙川優三郎
男48歳
29 「重厚である。丹念に、きっかりと描いている。」「主人公たち二人の逃亡のきっかけとなる殺人事件が唐突であり、曖昧に感じられた。」「――ひどい男だが、結局のところ、女は惚れているんだ――という気配が、どこかにしっとりと漂っていないと、この作品の屋台骨が持たないのではなかろうか。」
黒川博行
男52歳
9 「もっともおもしろく読んだ。テンポがよく、ユーモアが冴えている。」「情報の厚みを備えたエンターテインメントとして魅力的だ。ほかの作品との競合の中で敗れたが、残念。あと一息だった。」
諸田玲子
女47歳
27 「登場人物のキャラクターがおもしろい。しかし、――江戸時代にこんなことありえたかなあ――という視点に立つと疵は多い。」「一番の弱点はそうまでして捕物帳を綴りながら核心となる事件が冴えないことだろう。未完の連作集のような気配もあって強くは推せなかった。」
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他の選考委員
平岩弓枝
井上ひさし
林真理子
北方謙三
津本陽
宮城谷昌光
渡辺淳一
田辺聖子
五木寛之
黒岩重吾
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選考委員
渡辺淳一男68歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
二作受賞だが 総行数72 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
山本一力
男53歳
8 「作者の生真面目さがよくでた、誠実な作品である。時代考証もしっかりしていて、一つの家の流れを克明に追って好感を持てるが、欲をいえば、もう少し華が欲しかった。」
唯川恵
女46歳
12 「性格も生き方も違う、二人の女性の対比がユニークで楽しめた。」「全体に、軽いという批判もあったが、その軽みが、むしろこの作者の才能で、わたしには新鮮であった。」
石田衣良
男41歳
9 「娼夫という視点が新鮮だが、最後の盛り上りに欠けた。しかし、女の性癖を多彩に描いたところも面白く、そのくせ嫌味がないのは、文章が洗練されているからだろう。」
乙川優三郎
男48歳
9 「手堅い作品ではあるが、主人公の菊子という女性がつくられすぎて魅力がない。女はこんな単純なものではないと思うが、そのあたりも含めて、もう少し、意外性のあるものを読んでみたいと思うのだが。」
黒川博行
男52歳
7 「北朝鮮を舞台にした力作のようで、実際はドタバタ小説に近い。氏の力量からいって、この作品が候補になったのは、むしろ不運といったほうが、当たっているのではないか。」
諸田玲子
女47歳
16 「この作品の魅力はなによりも主人公で、ふるいつきたいほどハンサムで、そのくせ悪で、反骨精神にあふれているところが洒落ている。」「惜しむらくは、瓢六が挑む謎解きがつまらなく、牢を出たり入ったりのご都合主義が、史実的な点から批判されて大きく後退した。」
  「今回はいままで馴染みのない人が候補になって、新鮮な印象を受けたが、正直いって、圧倒的に強いものもないように思った。」「そういうなかで、二作受賞ということははたして喜ばしいことなのか、もう少し慎重でもよかったのではないか、というのが、わたしの意見である。」
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他の選考委員
平岩弓枝
井上ひさし
林真理子
北方謙三
津本陽
宮城谷昌光
阿刀田高
田辺聖子
五木寛之
黒岩重吾
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選考委員
田辺聖子女73歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
蛮勇引力 総行数94 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
山本一力
男53歳
14 「若夫婦の新世帯をほほえましく描いて山本周五郎風世界――と思っていたら、現代風家庭悲劇が展開される。それを時代小説で読めるのはたのしかった。」「読後感が清新だった。」
唯川恵
女46歳
19 「何だか「するする」と運んでゆかれて、ストン、と落されたような書物だ。この感じは若い人としゃべったときに持たされる感情である。自分の縄張りや結界の内だけの感性と反射神経で生き、波長の合う人にだけわかればいい、――という。」「しかし文学には異質の分子も続々生れるべきだろう。」
石田衣良
男41歳
8 「文章がきれいで熟成しているので、内容とつりあいがとれ、全体がよく消化れていた。このお行儀のよさを『肩ごし……』の蛮風に比べると、〈蛮勇引力〉にぶちかまされてしまう感もあった。」
乙川優三郎
男48歳
16 「小説は読み手と書き手が息を合せて物語世界を作ってゆくところがあるが、乙川氏はそこから逸れたところへ、逸れたところへ、ペンをすすめようとされる作風であるらしい。そこに野心が見られて面白いのだが、――読み手と書き手のめでたい交歓の上に、ぱっと〈華〉が開く、という境地を堪能したいのも、読み手の欲の深さか。」
黒川博行
男52歳
24 「どれに軍配をあげるかとなると、私はやっぱり『国境』の暴れん坊ぶりである。」「(引用者注:北朝鮮の)国境を突破して潜入するというだけでなく、(そのこと自体、冒険だが)国内で活劇や大立廻りを演じてしまう。主人公らのご愛嬌にみちた性格には、冒険小説を読みすれ(原文傍点)ている読者でも失笑させられてしまう。ラストのあと味もいい。」
諸田玲子
女47歳
13 「奇想天外なアイデアが面白かった。」「時代小説好きの私、時代小説の中で女性が(好ましいのも、好かんたらしい(原文傍点)のも)うんと活躍してほしいもの、と思う」「弥左衛門の姉・政江が面白かった。」
  「今回私には×がなく、いずれも水準を抜く面白い作品が揃ったように思う。」
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他の選考委員
平岩弓枝
井上ひさし
林真理子
北方謙三
津本陽
宮城谷昌光
阿刀田高
渡辺淳一
五木寛之
黒岩重吾
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選考委員
五木寛之男69歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
軽さの重さ 総行数62 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
山本一力
男53歳
6 「今回はめずらしく時代小説が三本勢揃いしたが、そのなかでは山本一力さんの『あかね空』が、安定した作家的力量を感じさせて、一馬身ぬきんでていたと思う。」
唯川恵
女46歳
27 「選者の立場を忘れて私が、興味ぶかく読みふけった」「端倪すべからざる書き手が登場した感があった。」「軽さに徹すれば重さに変る表現のおもしろさに惹かれて、私は唯川さんの作品に一票を投じた。」「新しい才能を確かに感じさせたことで、推すことに迷いはなかった。」
石田衣良
男41歳
9 「選者の立場を忘れて私が、興味ぶかく読みふけった」「端倪すべからざる書き手が登場した感があった。」
乙川優三郎
男48歳
0  
黒川博行
男52歳
28 「小説の舞台となる土地には、なんらかのかたちで作者の思い入れがなくてはならない。」「『国境』に描かれるピョンヤンには、なぜかそれが感じられなかった。」「テロ枢軸国家よばわりされている国の首都のリアルな空気が描かれていたら、『国境』はそれだけでも堂々たる受賞作になっただろうと残念な気がした。」
諸田玲子
女47歳
0  
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平岩弓枝
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林真理子
北方謙三
津本陽
宮城谷昌光
阿刀田高
渡辺淳一
田辺聖子
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選考委員
黒岩重吾男77歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
針の眼の面白さ 総行数89 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
山本一力
男53歳
14 「家族をはじめ登場人物の多くが地味に描かれていて、破綻がない。」「気になったのは主人公に力を貸す人々が、都合よく現われることだった。ただ受賞後、この作者は大きく化ける可能性を秘めているように思えた。」
唯川恵
女46歳
27 「最も面白かった。」「この種の作品は底が浅いと厭きるのも早い。一気に読ませたのは、底を見せない作者の筆力のせいである。」「二人の女性の波がぶつかり合い、様々な飛沫をあげるが、どきっとするほど色鮮やかで、虹の波間に誘い込み読者を酔わせる。それは飛沫の到るところに人間を貫く針の眼が隠されているからである。読者は酔うが作者は酔っていない。」
石田衣良
男41歳
10 「表現力が豊かである。」「小説にはタブーがなく親子のセックスをテーマにしても良い。だがそのためには神と対決するぐらいの葛藤が必要であろう。」
乙川優三郎
男48歳
12 「菊子を犯した主人が息子に殺される場面まで、傑作になるのではないか、と期待しながら読んだ。彼は菊子に邸内における父親の獣性への憎悪を告げるが、読者としては納得できない。殺すほど憎いのなら、当然、父親と争っている筈だが、この瞬間までその気配すら描かれていない。」
黒川博行
男52歳
10 「氏は北朝鮮を舞台にした。そのせいか、やくざの桑原の喚き声だけが耳に響き、後半は疲れてしまった。コンビの二宮の存在も霞んでいる。」
諸田玲子
女47歳
9 「才筆である。瓢六が囚人であるにも拘らず牢から出て活躍する発想は、もう一捻りしたなら一層面白くなる。ただ短篇集として読むと、瓢六と弥左衛門の二人が主人公になり、読み手はとまどってしまう。」
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他の選考委員
平岩弓枝
井上ひさし
林真理子
北方謙三
津本陽
宮城谷昌光
阿刀田高
渡辺淳一
田辺聖子
五木寛之
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受賞者・作品
山本一力男53歳×各選考委員 
『あかね空』
長篇 696
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
平岩弓枝
女69歳
28 「宝暦十二年八月と、登場人物の生きた年代をはっきり決めている姿勢にこの作者の時代小説への意気込みを感じた。」「第一部と第二部に分ける構成ミスということもいわれたが、山本さんの自作に対する姿勢は、すみやかにそうした点をクリアしてしまうと思う。この作品に出会えたことは、今回の収穫だった。」
井上ひさし
男67歳
29 「江戸深川とそこで生きる人びとをひたと見据える気合い、それが全編に漲っていて、その劇しい気合いがいくつかの欠点(時代考証の勘違い、都合のよすぎる筋立て、凹凸のある描写)をきれいに消してしまってもいる。」「家族間の愛情の微妙なもつれを、第二部でいちいち訂正して行く構成がとても知的だ。」「とにかくすてきに気分のいい小説である。」
林真理子
女47歳
18 「若い職人が、その才覚と気働きで、やがて店を盛り立てていくというストーリーは、読み手にある種のカタルシスを与えてくれる。よって二部は不要であると私は思う。」「しかしこの小説の清々しい読後感はそう損なわれることはなく、山本さんは大変な力量を身につけられたようだ。」
北方謙三
男54歳
14 「懸命に、江戸という時代を自分の作品世界に生かそうとしていて、誠実さが胸を打った。」「好感の持てる作風で、小説の芯のようなものもしっかり感じられた。」「決戦投票で、私は『国境』と『あかね空』に入れた。」
津本陽
男72歳
16 「はじめの語りくちがきわめて達者であるが、なかほどでゆるんでくる。またもちなおして、いい出来栄えになったが、何事にも運というものがある。」「この強運を生かして飛躍することだ。」
宮城谷昌光
男56歳
20 「山本一力氏には、内なる力があり、その力がおのずと求めた小説様式が、素直に展開されたことで、読むほうも素直になれたという事実がある。私は氏の作品を読みすすむにつれて、良い人情噺が書ける作者があらわれたな、という実感を強くした。作品が人の胸を打つということは、そこに真実がある、ということにほかならない。」
阿刀田高
男67歳
15 「重厚である。丹念に、きっかりと描いている。」「優等生の模範答案のようで、花の乏しい恨みがあるけれど、模範答案を否定するのは酷だろう。小差ながら「かずら野」より、――よいかな――と思った。」
渡辺淳一
男68歳
8 「作者の生真面目さがよくでた、誠実な作品である。時代考証もしっかりしていて、一つの家の流れを克明に追って好感を持てるが、欲をいえば、もう少し華が欲しかった。」
田辺聖子
女73歳
14 「若夫婦の新世帯をほほえましく描いて山本周五郎風世界――と思っていたら、現代風家庭悲劇が展開される。それを時代小説で読めるのはたのしかった。」「読後感が清新だった。」
五木寛之
男69歳
6 「今回はめずらしく時代小説が三本勢揃いしたが、そのなかでは山本一力さんの『あかね空』が、安定した作家的力量を感じさせて、一馬身ぬきんでていたと思う。」
黒岩重吾
男77歳
14 「家族をはじめ登場人物の多くが地味に描かれていて、破綻がない。」「気になったのは主人公に力を貸す人々が、都合よく現われることだった。ただ受賞後、この作者は大きく化ける可能性を秘めているように思えた。」
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他の候補作
唯川恵
『肩ごしの恋人』
石田衣良
『娼年』
乙川優三郎
『かずら野』
黒川博行
『国境』
諸田玲子
『あくじゃれ瓢六』
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受賞者・作品
唯川恵女46歳×各選考委員 
『肩ごしの恋人』
長篇 561
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
平岩弓枝
女69歳
13 「才能を強く感じさせる作家であることには異論はない。ただ、この作品は如何にも軽い。」
井上ひさし
男67歳
35 「作者は、切れ味のいい対話や愉快な会話、女性に対する辛辣きわまりない批評、そしてラ・ロシュフコー張りの箴言を駆使しながら、軽快に物語を展開して行く。」「結末で、読者にこころの底から、「三人とも頑張って」と願わせてしまう力量はただものではない。軽さの中に骨太の主題を隠した快作である。」
林真理子
女47歳
39 「感服した。いきいきと現代の女性が動き、呼吸しているのである。特に恋愛についての、いささか醒めた意地の悪さがとても面白かった。」「よく出来た女性のための小説というのは、男性も、あらゆる年齢の人も共感する。ひとりひとりのリアリティ、構成力も素晴らしい。」
北方謙三
男54歳
15 「女のたくましさ、切なさが、日常にすっと入りこんできた非日常を通して巧みに描かれ、都会的な風俗小説の佳品であった。二人の女の眼から見た男たちの姿が、どうも表層的である印象を拭いきれず、恋愛小説として読むにはわずかにそこが不満であった。」
津本陽
男72歳
13 「読者を飽きさせない引きをこころえている点では、熟達している。」「これだけつよいフェロモンをそなえた作品は、多くの読者を楽しませる。今後の活躍はいうまでもないだろう。」
宮城谷昌光
男56歳
19 「謬舛の多い私の読解の目には、その軽みに文学的な非凡さや時代的な個性が映らなかった。すなわち受賞作品は氏の最大限の表現に到達したものであったのか、疑問が残る。」
阿刀田高
男67歳
11 「現代に生きる女性たちをさりげなく描いているが、したたかな隠し味が随所に散っている。登場人物はみんなそれぞれの方法で必死に生きている。それでいながら飛んでいる。そこが快い。」
渡辺淳一
男68歳
12 「性格も生き方も違う、二人の女性の対比がユニークで楽しめた。」「全体に、軽いという批判もあったが、その軽みが、むしろこの作者の才能で、わたしには新鮮であった。」
田辺聖子
女73歳
19 「何だか「するする」と運んでゆかれて、ストン、と落されたような書物だ。この感じは若い人としゃべったときに持たされる感情である。自分の縄張りや結界の内だけの感性と反射神経で生き、波長の合う人にだけわかればいい、――という。」「しかし文学には異質の分子も続々生れるべきだろう。」
五木寛之
男69歳
27 「選者の立場を忘れて私が、興味ぶかく読みふけった」「端倪すべからざる書き手が登場した感があった。」「軽さに徹すれば重さに変る表現のおもしろさに惹かれて、私は唯川さんの作品に一票を投じた。」「新しい才能を確かに感じさせたことで、推すことに迷いはなかった。」
黒岩重吾
男77歳
27 「最も面白かった。」「この種の作品は底が浅いと厭きるのも早い。一気に読ませたのは、底を見せない作者の筆力のせいである。」「二人の女性の波がぶつかり合い、様々な飛沫をあげるが、どきっとするほど色鮮やかで、虹の波間に誘い込み読者を酔わせる。それは飛沫の到るところに人間を貫く針の眼が隠されているからである。読者は酔うが作者は酔っていない。」
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他の候補作
山本一力
『あかね空』
石田衣良
『娼年』
乙川優三郎
『かずら野』
黒川博行
『国境』
諸田玲子
『あくじゃれ瓢六』
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候補者・作品
石田衣良男41歳×各選考委員 
『娼年』
長篇 337
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
平岩弓枝
女69歳
0  
井上ひさし
男67歳
19 「全編に埋め込んだ多彩な性描写は、どれを取って見ても扇情的でありながら清潔、具体的でありながらも豊かな詩情に溢れ、ほとんど完璧、輝くような才能である。そこで逆に、結末の、HIVがらみの因果物めいた俗っぽさが気になりもする。」「この結末を除けば、これは永く記憶にのこる名作なのだが。」
林真理子
女47歳
7 「性の描写が非常に美しく巧みである。」「けれども他の文章がやや凡庸で、この性のシーンを支えきれなかったのが残念だ。」
北方謙三
男54歳
20 「感性のみずみずしさ、文体の透明感は、私を魅了した。」「アズマとひと夜過ごすところで、この作者はなにかを間違えたと思う。」「ぼくとアズマは、あくまで照射し合う関係でいるべきで、それを書き通す力を惜しんだという気がしてならない。」
津本陽
男72歳
9 「実に達者な筆はこびであるが、結末に至るまで水に潜ったきりでいるような息苦しさを拭いとることが必要ではないかと思った。」「色と金についての話は、菓子のようにおいしいが、食べ飽きないように工夫しなければならない。」
宮城谷昌光
男56歳
6 「美質は今回であきらかになった。ことばの居ずまいの良さは、受賞作品をもしのいでいる。近い将来、飛躍して、名作を書けるのは、この人であろう。」
阿刀田高
男67歳
14 「端倪すべからざる作品である。」「抑制のきいた、クールな文体。確かな観察と巧みな描写。きわどい性の世界を描きながら少しも卑しくない。」「そんな長所を感じながら、――もう一作、見たい――というのが率直な印象だった。」
渡辺淳一
男68歳
9 「娼夫という視点が新鮮だが、最後の盛り上りに欠けた。しかし、女の性癖を多彩に描いたところも面白く、そのくせ嫌味がないのは、文章が洗練されているからだろう。」
田辺聖子
女73歳
8 「文章がきれいで熟成しているので、内容とつりあいがとれ、全体がよく消化れていた。このお行儀のよさを『肩ごし……』の蛮風に比べると、〈蛮勇引力〉にぶちかまされてしまう感もあった。」
五木寛之
男69歳
9 「選者の立場を忘れて私が、興味ぶかく読みふけった」「端倪すべからざる書き手が登場した感があった。」
黒岩重吾
男77歳
10 「表現力が豊かである。」「小説にはタブーがなく親子のセックスをテーマにしても良い。だがそのためには神と対決するぐらいの葛藤が必要であろう。」
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他の候補作
山本一力
『あかね空』
唯川恵
『肩ごしの恋人』
乙川優三郎
『かずら野』
黒川博行
『国境』
諸田玲子
『あくじゃれ瓢六』
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候補者・作品
乙川優三郎男48歳×各選考委員 
『かずら野』
長篇 459
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
平岩弓枝
女69歳
22 「どうしても気になったのは女主人公の菊子の富治に対する心である。」「菊子が富治のどこに惹かれて長年の流浪生活に耐えるのか、富治の菊子への想いはいつ始まったのか、すれちがいでもいいから、男女の心の通わせようが明らかでないと、ただ運命に流されて行く二人のきずながわからない。」「まことに残念であった。」
井上ひさし
男67歳
23 「女主人公の心理を風景描写とからめて美しく、しかし的確に歌い上げる文章が、ほとんど完成を見ている。」「(引用者注:小説の大きな筋の)折り目が、ばかに作者に都合がいいように作られていて、その分だけ作品から読者が離れてしまった。」
林真理子
女47歳
9 「シチュエーションに無理がある。どう読もうと、私はこの女主人公が相手の男を愛しているとはどうしても思えない。」
北方謙三
男54歳
17 「業の深い男女の愛憎の行き着く果てを、見事に描きあげ、緩みのない小説に仕あがっていると感じた。」「ただ選考の論議の中で、時代小説のどういうところを、この賞は評価すべきかということを考えさせられ、私は支持の意見を変えた。この作品には、隙がないようで隙があり、指摘されると、それが緊密さの欠如という印象につながったのだった。」
津本陽
男72歳
12 「途中から筆が渋ってくるところ、というか、テンポが落ちてくるところがあるが、話は最後まで乱れず、余韻も残した。」「いい出来栄えである。ディケンズの作品のような、荒削りな力で展開していってほしい。」
宮城谷昌光
男56歳
29 「いつ受賞してもふしぎではない筆力をもっている人である。」「運命の力の大きさと人の力の小ささとが対蹠的に描かれているのであるが、残念ながら遠近感が精密に作品に反映されていない。そこに作品として雑駁さがあり、分力が作品の最後に合力となりえないので、作品の総合力が読み手を圧倒することができない。」
阿刀田高
男67歳
29 「重厚である。丹念に、きっかりと描いている。」「主人公たち二人の逃亡のきっかけとなる殺人事件が唐突であり、曖昧に感じられた。」「――ひどい男だが、結局のところ、女は惚れているんだ――という気配が、どこかにしっとりと漂っていないと、この作品の屋台骨が持たないのではなかろうか。」
渡辺淳一
男68歳
9 「手堅い作品ではあるが、主人公の菊子という女性がつくられすぎて魅力がない。女はこんな単純なものではないと思うが、そのあたりも含めて、もう少し、意外性のあるものを読んでみたいと思うのだが。」
田辺聖子
女73歳
16 「小説は読み手と書き手が息を合せて物語世界を作ってゆくところがあるが、乙川氏はそこから逸れたところへ、逸れたところへ、ペンをすすめようとされる作風であるらしい。そこに野心が見られて面白いのだが、――読み手と書き手のめでたい交歓の上に、ぱっと〈華〉が開く、という境地を堪能したいのも、読み手の欲の深さか。」
五木寛之
男69歳
0  
黒岩重吾
男77歳
12 「菊子を犯した主人が息子に殺される場面まで、傑作になるのではないか、と期待しながら読んだ。彼は菊子に邸内における父親の獣性への憎悪を告げるが、読者としては納得できない。殺すほど憎いのなら、当然、父親と争っている筈だが、この瞬間までその気配すら描かれていない。」
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他の候補作
山本一力
『あかね空』
唯川恵
『肩ごしの恋人』
石田衣良
『娼年』
黒川博行
『国境』
諸田玲子
『あくじゃれ瓢六』
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候補者・作品
黒川博行男52歳×各選考委員 
『国境』
長篇 1155
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
平岩弓枝
女69歳
0  
井上ひさし
男67歳
34 「(引用者注:主人公の)二人の軽口、悪態口の叩き合いは活溌に弾んで、作中の各所で文学的漫才が成立している。」「ここまで詳細に北朝鮮を書いたものはこれまで存在しなかった。その意味でも値打ちがあるが、しかし、その北朝鮮がすべて書割りじみているのが惜しまれる。」「『国境』と題を打ったからには、もっと〈国境〉そのものに心中立てする気概が要る。」
林真理子
女47歳
9 「非常に面白く読んだ。けれどもシリーズ化されたものということが裏目に出た。途中から読者は、主人公のヤクザが生きて帰ってくることがわかってしまう。それによってやや白けた気分になってしまうのである。」
北方謙三
男54歳
22 「冒険小説として出色の出来であると感じた。国境が、やくざにとって追いこみのために突破すべき、強大な障壁だというところがよかった。」「この作品にある面白さは、小説本来の物語の面白さであった、と私は思う。」「決戦投票で、私は『国境』と『あかね空』に入れた。」
津本陽
男72歳
12 「二千枚という作品を六時間あまりかけて一気に読んだ。」「非常におもしろかったので、茫然としたほどだが、ふりかえってみると、ところどころに、話のはこびだけに力をかけすぎた箇所があった。」
宮城谷昌光
男56歳
12 「小説家としての努力の痕跡があり、その賢明さに感心させられた。作品は賞に手がとどいていたと私は感じたが、その手は賞をつかむことができなかった。が、握力の差をあまり深く考えないほうがよい。」
阿刀田高
男67歳
9 「もっともおもしろく読んだ。テンポがよく、ユーモアが冴えている。」「情報の厚みを備えたエンターテインメントとして魅力的だ。ほかの作品との競合の中で敗れたが、残念。あと一息だった。」
渡辺淳一
男68歳
7 「北朝鮮を舞台にした力作のようで、実際はドタバタ小説に近い。氏の力量からいって、この作品が候補になったのは、むしろ不運といったほうが、当たっているのではないか。」
田辺聖子
女73歳
24 「どれに軍配をあげるかとなると、私はやっぱり『国境』の暴れん坊ぶりである。」「(引用者注:北朝鮮の)国境を突破して潜入するというだけでなく、(そのこと自体、冒険だが)国内で活劇や大立廻りを演じてしまう。主人公らのご愛嬌にみちた性格には、冒険小説を読みすれ(原文傍点)ている読者でも失笑させられてしまう。ラストのあと味もいい。」
五木寛之
男69歳
28 「小説の舞台となる土地には、なんらかのかたちで作者の思い入れがなくてはならない。」「『国境』に描かれるピョンヤンには、なぜかそれが感じられなかった。」「テロ枢軸国家よばわりされている国の首都のリアルな空気が描かれていたら、『国境』はそれだけでも堂々たる受賞作になっただろうと残念な気がした。」
黒岩重吾
男77歳
10 「氏は北朝鮮を舞台にした。そのせいか、やくざの桑原の喚き声だけが耳に響き、後半は疲れてしまった。コンビの二宮の存在も霞んでいる。」
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他の候補作
山本一力
『あかね空』
唯川恵
『肩ごしの恋人』
石田衣良
『娼年』
乙川優三郎
『かずら野』
諸田玲子
『あくじゃれ瓢六』
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候補者・作品
諸田玲子女47歳×各選考委員 
『あくじゃれ瓢六』
連作6篇 551
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
平岩弓枝
女69歳
17 「着想は面白いが、この着想は連作には向かない。」「映画やテレビドラマの虚構はともかく、小伝馬町の牢が、どういうものだったか、実態をしっかり把握した上で上手な嘘をついてもらいたい。」「この作者の責任ではないが作品が未完であることも候補作としてはマイナスになったと思う。」
井上ひさし
男67歳
36 「定型化した捕物帳にぴかぴかの新機軸をいくつも打ち出そうとした野心作である。」「ただし、扱われている事件そのものは、いずれも輪郭がはっきりせず、したがってあまりおもしろくない。」「さらに人物の造型も文章もよほど悪達者で、そこも減点せざるをえなかった。」
林真理子
女47歳
5 「達者な書きぶりであるが、上手なエンターテイメントの枠に入ったままのような気がする。」
北方謙三
男54歳
8 「実際にあり得るかどうかは別として、ドラマ性は確かに感じる。ただ、候補作は単体として読む。シリーズもので、大きな問題点が解決されていない作品での候補は、気の毒であった。」
津本陽
男72歳
6 「達者な筆はこびで楽しませてくれるのだが、構成が大胆すぎて嘘っぽい感じになってきてしまった。」
宮城谷昌光
男56歳
16 「時代小説にも新風が必要であり、氏の工夫がひとつの旋風になってもらいたい。今回の作品はおもしろく読んだ。今後は、おもしろさの質を向上させ、正確な情報量をふやせばよく、たとえ細部にこだわったところで、氏は迷路にはいりこむような人ではなさそうなので、次作に期待したい。」
阿刀田高
男67歳
27 「登場人物のキャラクターがおもしろい。しかし、――江戸時代にこんなことありえたかなあ――という視点に立つと疵は多い。」「一番の弱点はそうまでして捕物帳を綴りながら核心となる事件が冴えないことだろう。未完の連作集のような気配もあって強くは推せなかった。」
渡辺淳一
男68歳
16 「この作品の魅力はなによりも主人公で、ふるいつきたいほどハンサムで、そのくせ悪で、反骨精神にあふれているところが洒落ている。」「惜しむらくは、瓢六が挑む謎解きがつまらなく、牢を出たり入ったりのご都合主義が、史実的な点から批判されて大きく後退した。」
田辺聖子
女73歳
13 「奇想天外なアイデアが面白かった。」「時代小説好きの私、時代小説の中で女性が(好ましいのも、好かんたらしい(原文傍点)のも)うんと活躍してほしいもの、と思う」「弥左衛門の姉・政江が面白かった。」
五木寛之
男69歳
0  
黒岩重吾
男77歳
9 「才筆である。瓢六が囚人であるにも拘らず牢から出て活躍する発想は、もう一捻りしたなら一層面白くなる。ただ短篇集として読むと、瓢六と弥左衛門の二人が主人公になり、読み手はとまどってしまう。」
          - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
他の候補作
山本一力
『あかね空』
唯川恵
『肩ごしの恋人』
石田衣良
『娼年』
乙川優三郎
『かずら野』
黒川博行
『国境』
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