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第116回
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平成8年/1996年下半期
(平成9年/1997年1月16日決定発表/『オール讀物』平成9年/1997年3月号選評掲載)
選考委員  渡辺淳一
男63歳
阿刀田高
男62歳
津本陽
男67歳
田辺聖子
女68歳
黒岩重吾
男72歳
平岩弓枝
女64歳
井上ひさし
男62歳
五木寛之
男64歳
選評総行数  81 106 72 116 90 109 121 83
候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数
坂東眞砂子 『山妣』
1253
女38歳
32 15 27 25 52 48 32 20
馳星周 『不夜城』
812
男31歳
14 14 8 8 25 20 12 37
宮部みゆき 『蒲生邸事件』
1112
女36歳
13 21 8 21 0 14 11 0
篠田節子 『ゴサインタン』
1016
女41歳
18 34 23 58 13 15 8 20
黒川博行 『カウント・プラン』
419
男47歳
4 15 6 11 0 12 11 0
               
年齢/枚数の説明   見方・注意点

このページの選評出典:『オール讀物』平成9年/1997年3月号
1行当たりの文字数:13字


選考委員
渡辺淳一男63歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
重い球筋 総行数81 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
坂東眞砂子
女38歳
32 「今回は一読して、坂東さんの「山妣」を推そうと思った。」「この作品には大きな難点がある。(引用者中略)三部にいたって、その緊張感が急速に崩れ、予定調和的な収束になっている。」「それを承知でなお推したのは、前作の「桃色浄土」を読んだときから、この作者の資質に惹かれていたからである。野球でいえば、球質が重いとでもいうのだろうか。」
馳星周
男31歳
14 「話のテンポもよく、迫力もある。しかし面白く読み終えて、「はて、この人は何を書きたかったのか」という、小説への根源的な問いかけをしたとき、急速に興味が薄れて、しらけてくる。」
宮部みゆき
女36歳
13 「どこといって悪いところはない。アイデアも文章も、それなりのレベルではあるが、圧倒的魅力に欠ける。」「小説として書くときは、もう少しモチーフを熟成させてから、とりかかるべきだろう。」
篠田節子
女41歳
18 「前作の「カノン」以来、自らのツボを得て、一段と成長した人で、今回もなかなかの力作であった。」「ラストの、男が女の生地へ入っていくところも、魅力的で美しいが、いささかつくりすぎた嫌いがある。とくに女が予言者的な能力をもちすぎるところは問題で、今回は著者の意図するところが、ややあからさまに見えすぎたようである。」
黒川博行
男47歳
4 「(引用者注:「蒲生邸事件」より)さらに軽い小説で、単なる思いつきの域を出ていない。」
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他の選考委員
阿刀田高
津本陽
田辺聖子
黒岩重吾
平岩弓枝
井上ひさし
五木寛之
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選考委員
阿刀田高男62歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
弱点なきにしも非ず 総行数106 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
坂東眞砂子
女38歳
15 「描写力には舌をまいた。個々のエピソードは実におもしろい。」「が、これだけ長いページを使って、なにを訴えようとしたのか。着地点がはっきりしないのは小説にとって致命的である。そのあたりに不満を覚えたが、他の委員の意見を聞くうちに“これは山妣を通して女の一生を語るものだ”と知って、作品のモチーフが見えて来た。」
馳星周
男31歳
14 「筆力にも、おもしろさにも、不足がない。だが、読み終って、――この作者は、小説に託して、なにを語ろうとしているのか――志と言っては少し大袈裟だが、モチーフが見えて来ない。」
宮部みゆき
女36歳
21 「みごとに構築された作品である。」「サービスがよすぎて、と言っては語弊があろうが、平仄が合い過ぎて、作品の印象がどこか幼くなってしまい、せっかくのモチーフが強く訴えてくれない。」「薄闇の中から読後に昂然と、歴史の生命力が現われるような作品であってくれれば、と、この力作を惜しんだ。」
篠田節子
女41歳
34 「あと一歩が足りなかった。」「私は、この作者の超現実の扱い方にはいつも違和感を覚えてしまう。(引用者中略)厳重な金庫が手を触れただけでポンと本当に開いてしまっては説明のつけようがない。」「とはいえ、この作者の力量は今回の候補作で充分に納得できた。」
黒川博行
男47歳
15 「“楽しく読めれば、それでよい”という考えに私はけっして反対ではないけれど、この種のミステリーとしては構造的に弱いところがある。トリックの根まわしと受け皿、真犯人のプレゼンテーションなど、私には脆さが感じられた。」
  「今回は力作揃いでありながら、どの作品にも弱点があり、――受賞作なし、もありうる――と危ぶんで選考会に出席したが、結果については、もとより全く異存はない。」
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他の選考委員
渡辺淳一
津本陽
田辺聖子
黒岩重吾
平岩弓枝
井上ひさし
五木寛之
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選考委員
津本陽男67歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
重い手ごたえ 総行数72 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
坂東眞砂子
女38歳
27 「じつに重い手ごたえの小説を読んだと思った。」「一章と二章は、よくできていると思った。惜しむらくは、三章の結末がドタバタとなって抑えがきかなかったことである。」「だが、熱気のこもった作品であることに、変りはない。」
馳星周
男31歳
8 「全体が精密に組みあげられた、隙のない作品である。疵といえば結末を急いだところであろう。小蓮という女性もふしぎな精彩を放っているが、読み通してみると、テレビ・ゲームのような乾いた印象が残る。」
宮部みゆき
女36歳
8 「説得力に乏しい。推理小説では強みになっている作者の明快な文章が、この作品では軽みになったように思う。」
篠田節子
女41歳
23 「私は、作者の前期候補作の、心の内部へひそやかに下りてゆくような叙述がいいと思っていたが、今回の作品はどうにも納得できなかった。現実感が乏しい。」「話の後味は薄い。」
黒川博行
男47歳
6 「簡潔な表現で、読み手を引きよせる力のある短篇集である。整然とした筋立てで、どの作品もよくまとまっている。」
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他の選考委員
渡辺淳一
阿刀田高
田辺聖子
黒岩重吾
平岩弓枝
井上ひさし
五木寛之
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選考委員
田辺聖子女68歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
力作ぞろいの五篇みな好き 総行数116 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
坂東眞砂子
女38歳
25 「力ずくの作品でその腕力に圧倒される感じ、日常と非日常が目もあやに交錯して一・二章は息もつがせないが、三章で破綻する。」「ラストで古典的均斉美を欠くのが惜しいが、しかし一・二章の妖美に作者の力量は充分溢れており、この作品もまた坂東氏のお作、今までのうちでの最高であろう。」
馳星周
男31歳
8 「ハードボイルド小説も古くなったのかしら、ここで書かれている世界はあんまり非情で、夢がない。ただこの作者の筆力と構成力が読んでいて快い。力ある新人だ。」
宮部みゆき
女36歳
21 「時間旅行者を二・二六事件に結んだ奇想にまず脱帽。着地はむつかしかったろうと思われるが、みごとにきまった。」「私はこんな冒険をみとめてあげるべきだと思う。」「ことにキメ手というべきは〈黒井〉の出しかただった。」「読後感がさわやかでいい。」
篠田節子
女41歳
58 「最も感銘を受けた」「一種のホラー小説とも読めるが、ラストはもろもろの思念が吹き払われて限りなくやさしくすがすがしい。」「リアリティある構成と、緊迫感にみちたたるみのない簡潔な文章がまことにみごとだ。」「篠田氏のお作品の中では一ばんのものと思った。」
黒川博行
男47歳
11 「材料といい、あしらいかたといい、都会風洗練と一抹の清新な野趣が新鮮だった。やや強引なまとめかたの作品もあるが、推理短篇ではそれも必要で、読者は意表をつかれる面白さにむさぼり読むのだ。」「推理小説はたのしい。――と思わせる一冊。」
  「今回の五篇を、私はどれも面白く読み、力作ぞろいと感じた。」
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他の選考委員
渡辺淳一
阿刀田高
津本陽
黒岩重吾
平岩弓枝
井上ひさし
五木寛之
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選考委員
黒岩重吾男72歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
山妣の魅力と不満 総行数90 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
坂東眞砂子
女38歳
52 「疵を筆力でカバーした」「第一章と第二章の筆力は、私を唸らせるものがあった。」「だが第三章で氏は、折角作りあげてきた小説世界を、自分の手で打ち壊してしまった。」「私は氏の前作「桃色浄土」の筆力を買っていたし、今回の第一章第二章の肉厚な迫力は第三章の疵を覆うものがあると判断し、受賞に賛成した」
馳星周
男31歳
25 「日本人女性を母に持つ主人公の健一も、何処かにペーソスがあり好感を持てた。登場人物の中で印象に残るのは夏美である。」「ただ、舞台が特殊なせいか、描き分けられてきた大勢の登場人物が、後半から同一人物に思えてきたのが気になった。熱気だけが渦を巻き、登場人物がそれに呑まれたせいかもしれない。」
宮部みゆき
女36歳
0  
篠田節子
女41歳
13 「アイデアの作品といえよう。読み易く前作より優れているが、この作品が持つ面白さはストーリーに頼っており、深みがない。」「彼女(引用者注:ネパールの女性)が神力を得て、夫を驚かせたり、信者を治したりするくだりは、小説としての密度が薄れてしまっている。」
黒川博行
男47歳
0  
  「今回は、最後まで夢中になって読み切った作品はなかった。どれにも積極的に推せない疵があった。」
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他の選考委員
渡辺淳一
阿刀田高
津本陽
田辺聖子
平岩弓枝
井上ひさし
五木寛之
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選考委員
平岩弓枝女64歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
選評 総行数109 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
坂東眞砂子
女38歳
48 「鄙びた浄瑠璃をうっとりと聞いているような気分にさせられるのが、坂東さんの語り口の魅力でもあり、同時に小説としての限界があるとすれば、そうした部分でもあろうかと思う。」「芝居でいえば、一幕、二幕と静かに重く語り進んで来たものが、三幕になって前の二つの幕と長さや重さのバランスを取るために突如、大道具の仕掛で多くの登場人物に片をつけて幕を下ろす結果になってしまったような感じを受けた。」
馳星周
男31歳
20 「よくいえば大胆不敵、自由自在に話が進んで痛快だが、しばしば過去に逆戻りしながら説明して行くことや、伏線もなしに新しい人物が次々と登場するのは構成に問題がありはしないか。」「やはり、主人公と楊偉民の対決を電話で片付けず、しっかり書き切るべきだと思う。」
宮部みゆき
女36歳
14 「才筆だが、主人公とタイムスリップして出会う人々との間に本質的な接点がないのが如何にも弱い。」「宮部さんの才能とエネルギーを、こうした形で使われてしまうことが、とても心配である。」「一人の作家にとって大事な時というのは、そう何度も廻って来ない。」
篠田節子
女41歳
15 「着想が奇抜で、力の入った作品と思う。ただ、ネパールの奥地からやって来たらしいヒロインが生き神様になるくだりは余分ではないかと感じた。」
黒川博行
男47歳
12 「今回の候補作品の中では(引用者中略)一番楽しかった。どの短篇にも現代人の病んでいる部分が鮮やかな背景になっていて、面白く読ませておいて、ぞっとさせる。」
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他の選考委員
渡辺淳一
阿刀田高
津本陽
田辺聖子
黒岩重吾
井上ひさし
五木寛之
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選考委員
井上ひさし男62歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
てるという妖しい女 総行数121 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
坂東眞砂子
女38歳
32 「御都合主義が目につく第三部と大きな欠点があるのに読了後、思わず物語の余韻に耳を澄ませてしまうのは、厚塗りの文章に導かれながら悲痛この上ない人間たちの営みをたしかに見たからにちがいない。とりわけ鍵蔵の妻てる(じつは山妣の娘)に感心した。」
馳星周
男31歳
12 「新宿歌舞伎町の最新事情を兄妹心中という古い物語祖型の上に載せ、そこへさらにハードボイルドものの非情を合わせて、生き生きとした小説」「受賞するにふさわしい内容をそなえていると考えたが、やはりてる(引用者注:「山妣」の登場人物)の妖しさに惜しくも半歩、及ばなかった。」
宮部みゆき
女36歳
11 「なんといっても結末の、時空を超えた大きな恋物語の締め括り方が手が込んでいてすばらしく、そういえばこの作家はいつも結末が立派だと感嘆した」「受賞するにふさわしい内容をそなえていると考えたが、やはりてる(引用者注:「山妣」の登場人物)の妖しさに惜しくも半歩、及ばなかった。」
篠田節子
女41歳
8 「新しい宗教集団が成立するまで、つまり前半は大傑作である。だが、その集団の核となる女主人公の失踪の理由がやや不分明であり、それを境に物語の質も文章の質も粗くなってしまったようだ。」
黒川博行
男47歳
11 「きびきびと速度感のある、諧謔味を含んだ文体が魅力的である。しかし事件を、犯人側と、それを追う警察側の両面から交互に描くという語り口(物語を産み出す手続き)が常に一定で、ときには読む側を懈怠の渕に誘い込む作用をしたのは残念である。」
  「なによりもまず評者は、最近の新鋭たちの奔馬空を行くが如き旺盛な筆力に、満腔の敬意を表するものである。」
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他の選考委員
渡辺淳一
阿刀田高
津本陽
田辺聖子
黒岩重吾
平岩弓枝
五木寛之
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選考委員
五木寛之男64歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
三作品に注目 総行数83 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
坂東眞砂子
女38歳
20 「直木賞近来の収穫と言っていい長篇、と脱帽しておこう。」「この作品の場合は、後半三分の一あたりから詠み進むために努力を必要としたあたりに問題がありそうだ。前半の見事な物語づくりに舌を巻かされただけに惜しまれる。」
馳星周
男31歳
37 「ド派手さにおいてきわだっている。」「胃もたれのする読者には苦手かもしれないが、ニラ、ネギ、ニンニクが好物という向きにはこたえられない御馳走だろう。」「馳氏は九〇年代の歌舞伎町を描いた作家というよりも、歌舞伎町という街に選ばれた書き手かもしれない。」「馳氏が受賞を逸したのは、現実のほうがさらに巨大な深淵をひめているのではないか、と、読後ふと思ったりする点にあったと思う。」
宮部みゆき
女36歳
0  
篠田節子
女41歳
20 「前回の候補作『カノン』とくらべると、『ゴサインタン』ははるかに大きな可能性を感じさせる小説で、私に一票を投じさせる魅力があった。」
黒川博行
男47歳
0  
  「今回はどの候補作が受賞しても、それなりに納得できるような気持ちで選考の席にのぞんだ。」
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他の選考委員
渡辺淳一
阿刀田高
津本陽
田辺聖子
黒岩重吾
平岩弓枝
井上ひさし
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受賞者・作品
坂東眞砂子女38歳×各選考委員 
『山妣』
長篇 1253
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
渡辺淳一
男63歳
32 「今回は一読して、坂東さんの「山妣」を推そうと思った。」「この作品には大きな難点がある。(引用者中略)三部にいたって、その緊張感が急速に崩れ、予定調和的な収束になっている。」「それを承知でなお推したのは、前作の「桃色浄土」を読んだときから、この作者の資質に惹かれていたからである。野球でいえば、球質が重いとでもいうのだろうか。」
阿刀田高
男62歳
15 「描写力には舌をまいた。個々のエピソードは実におもしろい。」「が、これだけ長いページを使って、なにを訴えようとしたのか。着地点がはっきりしないのは小説にとって致命的である。そのあたりに不満を覚えたが、他の委員の意見を聞くうちに“これは山妣を通して女の一生を語るものだ”と知って、作品のモチーフが見えて来た。」
津本陽
男67歳
27 「じつに重い手ごたえの小説を読んだと思った。」「一章と二章は、よくできていると思った。惜しむらくは、三章の結末がドタバタとなって抑えがきかなかったことである。」「だが、熱気のこもった作品であることに、変りはない。」
田辺聖子
女68歳
25 「力ずくの作品でその腕力に圧倒される感じ、日常と非日常が目もあやに交錯して一・二章は息もつがせないが、三章で破綻する。」「ラストで古典的均斉美を欠くのが惜しいが、しかし一・二章の妖美に作者の力量は充分溢れており、この作品もまた坂東氏のお作、今までのうちでの最高であろう。」
黒岩重吾
男72歳
52 「疵を筆力でカバーした」「第一章と第二章の筆力は、私を唸らせるものがあった。」「だが第三章で氏は、折角作りあげてきた小説世界を、自分の手で打ち壊してしまった。」「私は氏の前作「桃色浄土」の筆力を買っていたし、今回の第一章第二章の肉厚な迫力は第三章の疵を覆うものがあると判断し、受賞に賛成した」
平岩弓枝
女64歳
48 「鄙びた浄瑠璃をうっとりと聞いているような気分にさせられるのが、坂東さんの語り口の魅力でもあり、同時に小説としての限界があるとすれば、そうした部分でもあろうかと思う。」「芝居でいえば、一幕、二幕と静かに重く語り進んで来たものが、三幕になって前の二つの幕と長さや重さのバランスを取るために突如、大道具の仕掛で多くの登場人物に片をつけて幕を下ろす結果になってしまったような感じを受けた。」
井上ひさし
男62歳
32 「御都合主義が目につく第三部と大きな欠点があるのに読了後、思わず物語の余韻に耳を澄ませてしまうのは、厚塗りの文章に導かれながら悲痛この上ない人間たちの営みをたしかに見たからにちがいない。とりわけ鍵蔵の妻てる(じつは山妣の娘)に感心した。」
五木寛之
男64歳
20 「直木賞近来の収穫と言っていい長篇、と脱帽しておこう。」「この作品の場合は、後半三分の一あたりから詠み進むために努力を必要としたあたりに問題がありそうだ。前半の見事な物語づくりに舌を巻かされただけに惜しまれる。」
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他の候補作
馳星周
『不夜城』
宮部みゆき
『蒲生邸事件』
篠田節子
『ゴサインタン』
黒川博行
『カウント・プラン』
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候補者・作品
馳星周男31歳×各選考委員 
『不夜城』
長篇 812
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
渡辺淳一
男63歳
14 「話のテンポもよく、迫力もある。しかし面白く読み終えて、「はて、この人は何を書きたかったのか」という、小説への根源的な問いかけをしたとき、急速に興味が薄れて、しらけてくる。」
阿刀田高
男62歳
14 「筆力にも、おもしろさにも、不足がない。だが、読み終って、――この作者は、小説に託して、なにを語ろうとしているのか――志と言っては少し大袈裟だが、モチーフが見えて来ない。」
津本陽
男67歳
8 「全体が精密に組みあげられた、隙のない作品である。疵といえば結末を急いだところであろう。小蓮という女性もふしぎな精彩を放っているが、読み通してみると、テレビ・ゲームのような乾いた印象が残る。」
田辺聖子
女68歳
8 「ハードボイルド小説も古くなったのかしら、ここで書かれている世界はあんまり非情で、夢がない。ただこの作者の筆力と構成力が読んでいて快い。力ある新人だ。」
黒岩重吾
男72歳
25 「日本人女性を母に持つ主人公の健一も、何処かにペーソスがあり好感を持てた。登場人物の中で印象に残るのは夏美である。」「ただ、舞台が特殊なせいか、描き分けられてきた大勢の登場人物が、後半から同一人物に思えてきたのが気になった。熱気だけが渦を巻き、登場人物がそれに呑まれたせいかもしれない。」
平岩弓枝
女64歳
20 「よくいえば大胆不敵、自由自在に話が進んで痛快だが、しばしば過去に逆戻りしながら説明して行くことや、伏線もなしに新しい人物が次々と登場するのは構成に問題がありはしないか。」「やはり、主人公と楊偉民の対決を電話で片付けず、しっかり書き切るべきだと思う。」
井上ひさし
男62歳
12 「新宿歌舞伎町の最新事情を兄妹心中という古い物語祖型の上に載せ、そこへさらにハードボイルドものの非情を合わせて、生き生きとした小説」「受賞するにふさわしい内容をそなえていると考えたが、やはりてる(引用者注:「山妣」の登場人物)の妖しさに惜しくも半歩、及ばなかった。」
五木寛之
男64歳
37 「ド派手さにおいてきわだっている。」「胃もたれのする読者には苦手かもしれないが、ニラ、ネギ、ニンニクが好物という向きにはこたえられない御馳走だろう。」「馳氏は九〇年代の歌舞伎町を描いた作家というよりも、歌舞伎町という街に選ばれた書き手かもしれない。」「馳氏が受賞を逸したのは、現実のほうがさらに巨大な深淵をひめているのではないか、と、読後ふと思ったりする点にあったと思う。」
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他の候補作
坂東眞砂子
『山妣』
宮部みゆき
『蒲生邸事件』
篠田節子
『ゴサインタン』
黒川博行
『カウント・プラン』
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候補者・作品
宮部みゆき女36歳×各選考委員 
『蒲生邸事件』
長篇 1112
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
渡辺淳一
男63歳
13 「どこといって悪いところはない。アイデアも文章も、それなりのレベルではあるが、圧倒的魅力に欠ける。」「小説として書くときは、もう少しモチーフを熟成させてから、とりかかるべきだろう。」
阿刀田高
男62歳
21 「みごとに構築された作品である。」「サービスがよすぎて、と言っては語弊があろうが、平仄が合い過ぎて、作品の印象がどこか幼くなってしまい、せっかくのモチーフが強く訴えてくれない。」「薄闇の中から読後に昂然と、歴史の生命力が現われるような作品であってくれれば、と、この力作を惜しんだ。」
津本陽
男67歳
8 「説得力に乏しい。推理小説では強みになっている作者の明快な文章が、この作品では軽みになったように思う。」
田辺聖子
女68歳
21 「時間旅行者を二・二六事件に結んだ奇想にまず脱帽。着地はむつかしかったろうと思われるが、みごとにきまった。」「私はこんな冒険をみとめてあげるべきだと思う。」「ことにキメ手というべきは〈黒井〉の出しかただった。」「読後感がさわやかでいい。」
黒岩重吾
男72歳
0  
平岩弓枝
女64歳
14 「才筆だが、主人公とタイムスリップして出会う人々との間に本質的な接点がないのが如何にも弱い。」「宮部さんの才能とエネルギーを、こうした形で使われてしまうことが、とても心配である。」「一人の作家にとって大事な時というのは、そう何度も廻って来ない。」
井上ひさし
男62歳
11 「なんといっても結末の、時空を超えた大きな恋物語の締め括り方が手が込んでいてすばらしく、そういえばこの作家はいつも結末が立派だと感嘆した」「受賞するにふさわしい内容をそなえていると考えたが、やはりてる(引用者注:「山妣」の登場人物)の妖しさに惜しくも半歩、及ばなかった。」
五木寛之
男64歳
0  
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他の候補作
坂東眞砂子
『山妣』
馳星周
『不夜城』
篠田節子
『ゴサインタン』
黒川博行
『カウント・プラン』
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候補者・作品
篠田節子女41歳×各選考委員 
『ゴサインタン』
長篇 1016
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
渡辺淳一
男63歳
18 「前作の「カノン」以来、自らのツボを得て、一段と成長した人で、今回もなかなかの力作であった。」「ラストの、男が女の生地へ入っていくところも、魅力的で美しいが、いささかつくりすぎた嫌いがある。とくに女が予言者的な能力をもちすぎるところは問題で、今回は著者の意図するところが、ややあからさまに見えすぎたようである。」
阿刀田高
男62歳
34 「あと一歩が足りなかった。」「私は、この作者の超現実の扱い方にはいつも違和感を覚えてしまう。(引用者中略)厳重な金庫が手を触れただけでポンと本当に開いてしまっては説明のつけようがない。」「とはいえ、この作者の力量は今回の候補作で充分に納得できた。」
津本陽
男67歳
23 「私は、作者の前期候補作の、心の内部へひそやかに下りてゆくような叙述がいいと思っていたが、今回の作品はどうにも納得できなかった。現実感が乏しい。」「話の後味は薄い。」
田辺聖子
女68歳
58 「最も感銘を受けた」「一種のホラー小説とも読めるが、ラストはもろもろの思念が吹き払われて限りなくやさしくすがすがしい。」「リアリティある構成と、緊迫感にみちたたるみのない簡潔な文章がまことにみごとだ。」「篠田氏のお作品の中では一ばんのものと思った。」
黒岩重吾
男72歳
13 「アイデアの作品といえよう。読み易く前作より優れているが、この作品が持つ面白さはストーリーに頼っており、深みがない。」「彼女(引用者注:ネパールの女性)が神力を得て、夫を驚かせたり、信者を治したりするくだりは、小説としての密度が薄れてしまっている。」
平岩弓枝
女64歳
15 「着想が奇抜で、力の入った作品と思う。ただ、ネパールの奥地からやって来たらしいヒロインが生き神様になるくだりは余分ではないかと感じた。」
井上ひさし
男62歳
8 「新しい宗教集団が成立するまで、つまり前半は大傑作である。だが、その集団の核となる女主人公の失踪の理由がやや不分明であり、それを境に物語の質も文章の質も粗くなってしまったようだ。」
五木寛之
男64歳
20 「前回の候補作『カノン』とくらべると、『ゴサインタン』ははるかに大きな可能性を感じさせる小説で、私に一票を投じさせる魅力があった。」
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他の候補作
坂東眞砂子
『山妣』
馳星周
『不夜城』
宮部みゆき
『蒲生邸事件』
黒川博行
『カウント・プラン』
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候補者・作品
黒川博行男47歳×各選考委員 
『カウント・プラン』
短篇集5篇 419
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
渡辺淳一
男63歳
4 「(引用者注:「蒲生邸事件」より)さらに軽い小説で、単なる思いつきの域を出ていない。」
阿刀田高
男62歳
15 「“楽しく読めれば、それでよい”という考えに私はけっして反対ではないけれど、この種のミステリーとしては構造的に弱いところがある。トリックの根まわしと受け皿、真犯人のプレゼンテーションなど、私には脆さが感じられた。」
津本陽
男67歳
6 「簡潔な表現で、読み手を引きよせる力のある短篇集である。整然とした筋立てで、どの作品もよくまとまっている。」
田辺聖子
女68歳
11 「材料といい、あしらいかたといい、都会風洗練と一抹の清新な野趣が新鮮だった。やや強引なまとめかたの作品もあるが、推理短篇ではそれも必要で、読者は意表をつかれる面白さにむさぼり読むのだ。」「推理小説はたのしい。――と思わせる一冊。」
黒岩重吾
男72歳
0  
平岩弓枝
女64歳
12 「今回の候補作品の中では(引用者中略)一番楽しかった。どの短篇にも現代人の病んでいる部分が鮮やかな背景になっていて、面白く読ませておいて、ぞっとさせる。」
井上ひさし
男62歳
11 「きびきびと速度感のある、諧謔味を含んだ文体が魅力的である。しかし事件を、犯人側と、それを追う警察側の両面から交互に描くという語り口(物語を産み出す手続き)が常に一定で、ときには読む側を懈怠の渕に誘い込む作用をしたのは残念である。」
五木寛之
男64歳
0  
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他の候補作
坂東眞砂子
『山妣』
馳星周
『不夜城』
宮部みゆき
『蒲生邸事件』
篠田節子
『ゴサインタン』
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