直木賞のすべて
第91回
直木賞-選評の概要 トップページ
直木賞・芥川賞受賞作一覧
受賞作・候補作一覧
受賞作家の群像
候補作家の群像
選考委員の群像
小研究
大衆選考会
リンク集
マップ

ページの最後へ
Last Update[H26]2014/6/20

91   一覧へ 90前の回へ 後の回へ92
昭和59年/1984年上半期
(昭和59年/1984年7月16日決定発表/『オール讀物』昭和59年/1984年10月号選評掲載)
選考委員  山口瞳
男57歳
池波正太郎
男61歳
水上勉
男65歳
源氏鶏太
男72歳
井上ひさし
男49歳
渡辺淳一
男50歳
五木寛之
男51歳
黒岩重吾
男60歳
村上元三
男74歳
選評総行数  64 41 61 51 73 52 55 59 52
候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数
連城三紀彦 『恋文』
343
男36歳
14 10 18 11 11 16 28 16 7
難波利三 『てんのじ村』
454
男47歳
10 11 21 13 15 10 15 18 9
落合恵子 『夏草の女たち』
240
女39歳
0 8 0 4 5 0 0 0 4
今井泉 「溟い海峡」
95
男49歳
0 0 0 0 10 0 0 9 6
小林久三 「傾いた橋」
581
男48歳
0 0 0 4 6 0 0 0 6
白石一郎 「海賊たちの城」
139
男52歳
0 7 0 3 10 0 0 0 12
林真理子 「星影のステラ」
110
女30歳
31 0 5 8 4 14 6 6 6
山口洋子 「弥次郎兵衛」
105
女47歳
0 6 16 8 12 12 0 10 5
            欠席
書面回答
   
年齢/枚数の説明   見方・注意点

このページの選評出典:『オール讀物』昭和59年/1984年10月号
1行当たりの文字数:14字


選考委員
山口瞳男57歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
林真理子さん 総行数64 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
連城三紀彦
男36歳
14 「こんどの短篇集には殺人がなく、はたして、格段に良くなったことを喜びたい。」「しかし、依然として、小説づくりに律儀でありすぎて、説明過多になるのが難。「無理に小説(原文傍点)にしようと思わないほうがいい」と老婆心ながらアドバイスする。」
難波利三
男47歳
10 「さっぱりとしていて、笑いも涙もある好感の持てる作品だが、そのぶん、全体として印象が薄い。てんのじ村の芸人が善人ばかりというのが納得できない。底辺に生きる芸人の卑しさが書けていないので起伏に乏しいのである。」
落合恵子
女39歳
0  
今井泉
男49歳
0  
小林久三
男48歳
0  
白石一郎
男52歳
0  
林真理子
女30歳
31 「感性と素質という点で抜群に秀れている。」「ムリヤリに小説を書かされて、知らないうちに候補作にされて、こんなことを言われるのは不本意だろうが、しかし、これは、残念ながら、非常によく出来た少女小説というほかはない。」「直木賞はプロ作家の通行手形であって、その候補に擬せられた以上は覚悟をきめてもらいたい。その感性を評価する者としてあえて言う。林真理子さん、顔を洗って出直していらっしゃい。」
山口洋子
女47歳
0  
  「低調が続いている。打開の方法として、「選考会は年一回、賞金は倍額(百万円)」を提案する。」
          - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
他の選考委員
池波正太郎
水上勉
源氏鶏太
井上ひさし
渡辺淳一
五木寛之
黒岩重吾
村上元三
  ページの先頭へ

選考委員
池波正太郎男61歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
二人の女流への期待 総行数41 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
連城三紀彦
男36歳
10 「私は、連城三紀彦〔恋文〕一本にしぼって、選考にのぞんだ。」「前回の候補作の甘さが消え、巧妙なテクニックの中に独自の世界が無理なく展開された短篇集である。」
難波利三
男47歳
11 「次点は〔てんのじ村〕だった」「大阪の特殊な芸人の世界をうまく描いてはいるが、なんとしても、主人公の花田シゲルのキャラクターが平凡であるがために、従来の芸道物から一歩も出ていない。〔恋文〕と同列にしなかったのは、そのことだ。」
落合恵子
女39歳
8 「前回の候補作にくらべると、文章の粗さも消えて落ちつき、素直に、好感のもてる短篇集となった。」「精進の結果であろう。」
今井泉
男49歳
0  
小林久三
男48歳
0  
白石一郎
男52歳
7 「このテーマでは、これからの時代小説として読者に共感を得られない。まことに残念だった。」
林真理子
女30歳
0  
山口洋子
女47歳
6 「素材的に平凡だった。ほかに、もっとよい作品がなかったのだろうか……。この人は近来、頓に力量をそなえてきているから、次回を期待したい。」
  「今回の候補作は、相当に水準が高かったようにおもう。」
          - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
他の選考委員
山口瞳
水上勉
源氏鶏太
井上ひさし
渡辺淳一
五木寛之
黒岩重吾
村上元三
  ページの先頭へ

選考委員
水上勉男65歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
感想 総行数61 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
連城三紀彦
男36歳
18 「「恋文」「十三年目の子守唄」に感心した。小説づくりの巧みさでは定評があり、独得の世界である。」「推理をはなれて、人間を描くところにこの人の世界はもっともっとひらけるだろう。」「私はこの人の妖しい感性に関心をもっているのだ。」
難波利三
男47歳
21 「登場人物も多いのだが、よく書けているようでも、どこか同じ型の人間にみえてくる。だが、読ませた。最後にきて、テレビ会社から、ホテルをあてがわれ、ツインベッドで寝る老コンビの会話はうつくしい。」「一人くらい悪人が出てきても、と某委員の注文に、悪人のいないのがてんのじ村のこの人たちの世界だと黒岩さんがいった。(引用者中略)そこで、負けた。二作授賞ならこれ以外にない、と思った。」
落合恵子
女39歳
0  
今井泉
男49歳
0  
小林久三
男48歳
0  
白石一郎
男52歳
0  
林真理子
女30歳
5 「不思議な、根なし草のようなイモねえちゃんたちのくらしのうちかたに興味をもった。それにしても弱い。」
山口洋子
女47歳
16 「女ふたりの中でゆれる男の心理説明が、過不足ない。山口流の云いまわしもいい。」「書きながしているという意見もあった。そういえばもう少しひっかかる針がある方がいい。」「小説の本道をめざしている山口さんに、じっくりした重いもの(原文傍点)を求めたい。」
          - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
他の選考委員
山口瞳
池波正太郎
源氏鶏太
井上ひさし
渡辺淳一
五木寛之
黒岩重吾
村上元三
  ページの先頭へ

選考委員
源氏鶏太男72歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
殆んど満票 総行数51 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
連城三紀彦
男36歳
11 「新境地を見事に切りひらいた感じである。」「どの作品にも男の優しさがにじみ出ていて、この人生の機微をよく描き出している。私の好みからいうと、最も好評だった「恋文」にやや無理が感じられて、「私の叔父さん」が殊に秀逸だった。文句のない授賞であろう。」
難波利三
男47歳
13 「読み始めて、何んともヘソのない小説のような気がしていたのだが、読み進むにつれて、ヘソが見えて来ただけでなしに、読み終って、爽やかな感動をおぼえた。ついでに書いておけば、この土地のことに詳しい黒岩重吾氏の強力な発言が授賞に役立っていた。」
落合恵子
女39歳
4 「大変な才筆であると思った。しかし、この才筆は、この題材にはそぐわない。」
今井泉
男49歳
0  
小林久三
男48歳
4 「(引用者注:受賞二作の)次に面白かったのは、小林久三氏の「傾いた橋」であるが、残念ながら他の委員の賛同を得ることが出来なかった。」
白石一郎
男52歳
3 「構成的に根本的な無理がある。」
林真理子
女30歳
8 「私には何んとも理解出来なかった。これは自分の老齢のせいだろうかと反省してみたのだが、こんな魅力のない女に主人公がどうしてこんなに惹かれたのか、やっぱりわからなかった。」
山口洋子
女47歳
8 「相変らずうまいのだが、このうまさが却って邪魔になっているようだ。山口さんは、小説について、もう一度じっくりと考え直した方がいいのでなかろうか。」
          - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
他の選考委員
山口瞳
池波正太郎
水上勉
井上ひさし
渡辺淳一
五木寛之
黒岩重吾
村上元三
  ページの先頭へ

選考委員
井上ひさし男49歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
達意の文章を 総行数73 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
連城三紀彦
男36歳
11 「まさにそのような文章(引用者注:伝達力があって、表現そのものとしても魅力がある文章)で書かれています。しかも物語は、人間心理への深い洞察に支えられていて、新鮮です。」
難波利三
男47歳
15 「素朴すぎるほど素朴な文章で、癖のないのが癖、とでもいったような不思議な味わいがあります。」「どうしてその芸が観客の拍手を得ることができたのか、小説の読者にはよくわからないところに強い不満をおぼえました。けれどもいくつかの感動的な人生断片が最後にその不満を退けてしまいました。」
落合恵子
女39歳
5 「「女性の幸不幸は、待つ時間の長短に比例する」というテーマの発見は素敵ですが、文章がやや紋切型で惜しい。」
今井泉
男49歳
10 「はっとして思わず引き込まれてしまうような表現が少いのです。」
小林久三
男48歳
6 「文章意識がきわめて過剰です。こけおどかしの、力み返った文章が、かえって読者を物語から遠ざけてしまいました。」
白石一郎
男52歳
10 「はっとして思わず引き込まれてしまうような表現が少いのです。」
林真理子
女30歳
4 「物語の設定に才気を感じさせてくれますが、文章そのものに魅力が乏しい。」
山口洋子
女47歳
12 「伝達と表現という二つの文章条件を満足させています。」「作者の目が神の目に近づきすぎ、すべてが綺麗に割り切れすぎているところにかすかな異和感をおぼえました。しかし作者は頭抜けて巧者です。」
          - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
他の選考委員
山口瞳
池波正太郎
水上勉
源氏鶏太
渡辺淳一
五木寛之
黒岩重吾
村上元三
  ページの先頭へ

選考委員
渡辺淳一男50歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
二作を推す 総行数52 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
連城三紀彦
男36歳
16 「一段抜きんでていた」「安定した文章とともに、小道具の出し入れも巧みで、なかなかの小説巧者である。」「強いて難点をあげれば、巧みさのあまり小説をつくりすぎる点で、子供に手紙を投書させるあたりは勇み足であろう。しかし読後、上質の蒸溜酒を飲んだようなまろみがある。」
難波利三
男47歳
10 「書き下し長篇にしてはいささか平板で、世に出ぬ芸能人を描きながら、それらしい屈折や臭みが感じられない。」「よく調べられた力作で、作者がてんのじ村にかけた意欲を、感じることができる。」
落合恵子
女39歳
0  
今井泉
男49歳
0  
小林久三
男48歳
0  
白石一郎
男52歳
0  
林真理子
女30歳
14 「注目した。選考会では、「どうしてこんなくだらないものを書くのか」という酷評もあったが、このあたりは、いままで書かれなかったところであり、単なる少女趣味とはまったく違う。ステラは実在してもしなくてもいい、いわば若い女性が抱く夢で、それなりのリアリティがある。」
山口洋子
女47歳
12 「よくできていた。」「山口氏は男を書いてほとんど異和感を与えない。今回の作品は二人の女のあいだで揺れる男をよく追いこんでいるが、最後で書き流してしまったのが惜しまれる。」
          - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
他の選考委員
山口瞳
池波正太郎
水上勉
源氏鶏太
井上ひさし
五木寛之
黒岩重吾
村上元三
  ページの先頭へ

選考委員
五木寛之男51歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
薄暮の時代を映す二作 総行数55 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
連城三紀彦
男36歳
28 「まず誰が見ても異存のないところだろう。」「造花の美が時には現実の花よりリアリティを感じさせることがあるという、小説ならではのたのしみ(原文傍点)を充分にあじあわせてくれた佳作となった。」
難波利三
男47歳
15 「ノスタルジーの時代に浮上する必然性をもった小説だろう。」「特色は、作者の視点がここに描かれた作中人物たちのそれと、ほとんど重なっている所にある。美也子という若い娘の登場する場面が、ことに印象が鮮かに感じられた。」
落合恵子
女39歳
0  
今井泉
男49歳
0  
小林久三
男48歳
0  
白石一郎
男52歳
0  
林真理子
女30歳
6 「注目した。「中産階級の時代」の林芙美子、という見方もできるだろう。この作家も、まごうかたなき時代の子なのだ。」
山口洋子
女47歳
0  
  「今回は病気のため選考の席につらなることができなかった。」
          - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
他の選考委員
山口瞳
池波正太郎
水上勉
源氏鶏太
井上ひさし
渡辺淳一
黒岩重吾
村上元三
  ページの先頭へ

選考委員
黒岩重吾男60歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
優れた二作品 総行数59 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
連城三紀彦
男36歳
16 「透明な感性が感じられた。」「氏はロマン豊かな男女の人間模様を、たくみに計算し尽した色彩で描いて行く。」「気になったのは子供を道具として使っていることだ。これだけ心豊かで知性的な母親なら、子供についてもっと悩む筈である。」「だが、私はこの新しい感性の小説を優れた授賞作として推した。」
難波利三
男47歳
18 「主人公を始め、他の芸人達の生き様にもリアリティがあり、作者はこの作品に溺れていない。ことに主人公が老いてからの描写は光っている。」「ただ残念なのはてんのじ村の長屋が描かれていないことである。そのため芸人達の体臭が稀薄になった。」「他にも欠点はあるが、授賞に価する作品なので、二作授賞を主張した。」
落合恵子
女39歳
0  
今井泉
男49歳
9 「心理的なサスペンス小説として面白く読めた。だがベテランで慎重な船長が、沈む筈のないボートが沈んだことに対して、船長としての憤りを燃やしていない。(引用者中略)この小説の致命的な欠点である。」
小林久三
男48歳
0  
白石一郎
男52歳
0  
林真理子
女30歳
6 「こういう女性も居るだろう、と微笑しながら読んだ。だがこの作品は小説になっていない。この作者が小説に開眼すれば良い作品が生まれるだろう。」
山口洋子
女47歳
10 「男女の関係の描写力は驚くほど達者である。良い作品だが授賞するためには氏独得の濃度が必要であろう。深く酩酊するような作品を期待してやまない。」
          - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
他の選考委員
山口瞳
池波正太郎
水上勉
源氏鶏太
井上ひさし
渡辺淳一
五木寛之
村上元三
  ページの先頭へ

選考委員
村上元三男74歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
群を抜いた面白さ 総行数52 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
連城三紀彦
男36歳
7 「群を抜いていたし、二作(引用者注:「恋文」と「てんのじ村」)を推す気で選考会場へ行った。」「前回候補作よりも読みやすいし、選の対象になった四篇とも、それぞれ才気がひらめいていて面白かった。」
難波利三
男47歳
9 「群を抜いていたし、二作(引用者注:「恋文」と「てんのじ村」)を推す気で選考会場へ行った。」「面白いという点では、今回の候補作のうち第一であった。底流にいる芸人が年をとって、泥鰌すくいの中に自分の芸を見出す姿が、ほほ笑ましく、哀れでもある。」
落合恵子
女39歳
4 「「くちづけ」が面白かったが、なんとしても三篇とも弱々しいし、候補になるだけでとどまった。」
今井泉
男49歳
6 「小説としては欠点が多い。冒頭で、話の中味がわかってしまう。」
小林久三
男48歳
6 「橋がテーマなのに、その橋が作者のねらったほどは生きていない。これだけの題材を、こんなに長い枚数で書く必要があったろうか。しかも、読みにくい。」
白石一郎
男52歳
12 「主人公の通嘉の性格が曖昧で、幕府に無断で城を作ったらどんなことになるか、それも考えないのでは大名の資格がない。」
林真理子
女30歳
6 「へんに、と言っては失礼だが、へんに面白かった。わたしなどの会ったこともない女性が、それなりの世界で生きている姿が新鮮だった。今後を期待したい。」
山口洋子
女47歳
5 「うまくなった、という読後感が強かった。器用にまとめるよりも、破綻があってもいいから、もっと材料に取り組んで汗を流してほしい。」
          - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
他の選考委員
山口瞳
池波正太郎
水上勉
源氏鶏太
井上ひさし
渡辺淳一
五木寛之
黒岩重吾
  ページの先頭へ


受賞者・作品
連城三紀彦男36歳×各選考委員 
『恋文』
短篇集5篇 343
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
山口瞳
男57歳
14 「こんどの短篇集には殺人がなく、はたして、格段に良くなったことを喜びたい。」「しかし、依然として、小説づくりに律儀でありすぎて、説明過多になるのが難。「無理に小説(原文傍点)にしようと思わないほうがいい」と老婆心ながらアドバイスする。」
池波正太郎
男61歳
10 「私は、連城三紀彦〔恋文〕一本にしぼって、選考にのぞんだ。」「前回の候補作の甘さが消え、巧妙なテクニックの中に独自の世界が無理なく展開された短篇集である。」
水上勉
男65歳
18 「「恋文」「十三年目の子守唄」に感心した。小説づくりの巧みさでは定評があり、独得の世界である。」「推理をはなれて、人間を描くところにこの人の世界はもっともっとひらけるだろう。」「私はこの人の妖しい感性に関心をもっているのだ。」
源氏鶏太
男72歳
11 「新境地を見事に切りひらいた感じである。」「どの作品にも男の優しさがにじみ出ていて、この人生の機微をよく描き出している。私の好みからいうと、最も好評だった「恋文」にやや無理が感じられて、「私の叔父さん」が殊に秀逸だった。文句のない授賞であろう。」
井上ひさし
男49歳
11 「まさにそのような文章(引用者注:伝達力があって、表現そのものとしても魅力がある文章)で書かれています。しかも物語は、人間心理への深い洞察に支えられていて、新鮮です。」
渡辺淳一
男50歳
16 「一段抜きんでていた」「安定した文章とともに、小道具の出し入れも巧みで、なかなかの小説巧者である。」「強いて難点をあげれば、巧みさのあまり小説をつくりすぎる点で、子供に手紙を投書させるあたりは勇み足であろう。しかし読後、上質の蒸溜酒を飲んだようなまろみがある。」
五木寛之
男51歳
28 「まず誰が見ても異存のないところだろう。」「造花の美が時には現実の花よりリアリティを感じさせることがあるという、小説ならではのたのしみ(原文傍点)を充分にあじあわせてくれた佳作となった。」
黒岩重吾
男60歳
16 「透明な感性が感じられた。」「氏はロマン豊かな男女の人間模様を、たくみに計算し尽した色彩で描いて行く。」「気になったのは子供を道具として使っていることだ。これだけ心豊かで知性的な母親なら、子供についてもっと悩む筈である。」「だが、私はこの新しい感性の小説を優れた授賞作として推した。」
村上元三
男74歳
7 「群を抜いていたし、二作(引用者注:「恋文」と「てんのじ村」)を推す気で選考会場へ行った。」「前回候補作よりも読みやすいし、選の対象になった四篇とも、それぞれ才気がひらめいていて面白かった。」
          - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
他の候補作
難波利三
『てんのじ村』
落合恵子
『夏草の女たち』
今井泉
「溟い海峡」
小林久三
「傾いた橋」
白石一郎
「海賊たちの城」
林真理子
「星影のステラ」
山口洋子
「弥次郎兵衛」
  ページの先頭へ

受賞者・作品
難波利三男47歳×各選考委員 
『てんのじ村』
長篇 454
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
山口瞳
男57歳
10 「さっぱりとしていて、笑いも涙もある好感の持てる作品だが、そのぶん、全体として印象が薄い。てんのじ村の芸人が善人ばかりというのが納得できない。底辺に生きる芸人の卑しさが書けていないので起伏に乏しいのである。」
池波正太郎
男61歳
11 「次点は〔てんのじ村〕だった」「大阪の特殊な芸人の世界をうまく描いてはいるが、なんとしても、主人公の花田シゲルのキャラクターが平凡であるがために、従来の芸道物から一歩も出ていない。〔恋文〕と同列にしなかったのは、そのことだ。」
水上勉
男65歳
21 「登場人物も多いのだが、よく書けているようでも、どこか同じ型の人間にみえてくる。だが、読ませた。最後にきて、テレビ会社から、ホテルをあてがわれ、ツインベッドで寝る老コンビの会話はうつくしい。」「一人くらい悪人が出てきても、と某委員の注文に、悪人のいないのがてんのじ村のこの人たちの世界だと黒岩さんがいった。(引用者中略)そこで、負けた。二作授賞ならこれ以外にない、と思った。」
源氏鶏太
男72歳
13 「読み始めて、何んともヘソのない小説のような気がしていたのだが、読み進むにつれて、ヘソが見えて来ただけでなしに、読み終って、爽やかな感動をおぼえた。ついでに書いておけば、この土地のことに詳しい黒岩重吾氏の強力な発言が授賞に役立っていた。」
井上ひさし
男49歳
15 「素朴すぎるほど素朴な文章で、癖のないのが癖、とでもいったような不思議な味わいがあります。」「どうしてその芸が観客の拍手を得ることができたのか、小説の読者にはよくわからないところに強い不満をおぼえました。けれどもいくつかの感動的な人生断片が最後にその不満を退けてしまいました。」
渡辺淳一
男50歳
10 「書き下し長篇にしてはいささか平板で、世に出ぬ芸能人を描きながら、それらしい屈折や臭みが感じられない。」「よく調べられた力作で、作者がてんのじ村にかけた意欲を、感じることができる。」
五木寛之
男51歳
15 「ノスタルジーの時代に浮上する必然性をもった小説だろう。」「特色は、作者の視点がここに描かれた作中人物たちのそれと、ほとんど重なっている所にある。美也子という若い娘の登場する場面が、ことに印象が鮮かに感じられた。」
黒岩重吾
男60歳
18 「主人公を始め、他の芸人達の生き様にもリアリティがあり、作者はこの作品に溺れていない。ことに主人公が老いてからの描写は光っている。」「ただ残念なのはてんのじ村の長屋が描かれていないことである。そのため芸人達の体臭が稀薄になった。」「他にも欠点はあるが、授賞に価する作品なので、二作授賞を主張した。」
村上元三
男74歳
9 「群を抜いていたし、二作(引用者注:「恋文」と「てんのじ村」)を推す気で選考会場へ行った。」「面白いという点では、今回の候補作のうち第一であった。底流にいる芸人が年をとって、泥鰌すくいの中に自分の芸を見出す姿が、ほほ笑ましく、哀れでもある。」
          - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
他の候補作
連城三紀彦
『恋文』
落合恵子
『夏草の女たち』
今井泉
「溟い海峡」
小林久三
「傾いた橋」
白石一郎
「海賊たちの城」
林真理子
「星影のステラ」
山口洋子
「弥次郎兵衛」
  ページの先頭へ

候補者・作品
落合恵子女39歳×各選考委員 
『夏草の女たち』
短篇集3篇 240
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
山口瞳
男57歳
0  
池波正太郎
男61歳
8 「前回の候補作にくらべると、文章の粗さも消えて落ちつき、素直に、好感のもてる短篇集となった。」「精進の結果であろう。」
水上勉
男65歳
0  
源氏鶏太
男72歳
4 「大変な才筆であると思った。しかし、この才筆は、この題材にはそぐわない。」
井上ひさし
男49歳
5 「「女性の幸不幸は、待つ時間の長短に比例する」というテーマの発見は素敵ですが、文章がやや紋切型で惜しい。」
渡辺淳一
男50歳
0  
五木寛之
男51歳
0  
黒岩重吾
男60歳
0  
村上元三
男74歳
4 「「くちづけ」が面白かったが、なんとしても三篇とも弱々しいし、候補になるだけでとどまった。」
          - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
他の候補作
連城三紀彦
『恋文』
難波利三
『てんのじ村』
今井泉
「溟い海峡」
小林久三
「傾いた橋」
白石一郎
「海賊たちの城」
林真理子
「星影のステラ」
山口洋子
「弥次郎兵衛」
  ページの先頭へ

候補者・作品
今井泉男49歳×各選考委員 
「溟い海峡」
短篇 95
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
山口瞳
男57歳
0  
池波正太郎
男61歳
0  
水上勉
男65歳
0  
源氏鶏太
男72歳
0  
井上ひさし
男49歳
10 「はっとして思わず引き込まれてしまうような表現が少いのです。」
渡辺淳一
男50歳
0  
五木寛之
男51歳
0  
黒岩重吾
男60歳
9 「心理的なサスペンス小説として面白く読めた。だがベテランで慎重な船長が、沈む筈のないボートが沈んだことに対して、船長としての憤りを燃やしていない。(引用者中略)この小説の致命的な欠点である。」
村上元三
男74歳
6 「小説としては欠点が多い。冒頭で、話の中味がわかってしまう。」
          - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
他の候補作
連城三紀彦
『恋文』
難波利三
『てんのじ村』
落合恵子
『夏草の女たち』
小林久三
「傾いた橋」
白石一郎
「海賊たちの城」
林真理子
「星影のステラ」
山口洋子
「弥次郎兵衛」
  ページの先頭へ

候補者・作品
小林久三男48歳×各選考委員 
「傾いた橋」
長篇 581
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
山口瞳
男57歳
0  
池波正太郎
男61歳
0  
水上勉
男65歳
0  
源氏鶏太
男72歳
4 「(引用者注:受賞二作の)次に面白かったのは、小林久三氏の「傾いた橋」であるが、残念ながら他の委員の賛同を得ることが出来なかった。」
井上ひさし
男49歳
6 「文章意識がきわめて過剰です。こけおどかしの、力み返った文章が、かえって読者を物語から遠ざけてしまいました。」
渡辺淳一
男50歳
0  
五木寛之
男51歳
0  
黒岩重吾
男60歳
0  
村上元三
男74歳
6 「橋がテーマなのに、その橋が作者のねらったほどは生きていない。これだけの題材を、こんなに長い枚数で書く必要があったろうか。しかも、読みにくい。」
          - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
他の候補作
連城三紀彦
『恋文』
難波利三
『てんのじ村』
落合恵子
『夏草の女たち』
今井泉
「溟い海峡」
白石一郎
「海賊たちの城」
林真理子
「星影のステラ」
山口洋子
「弥次郎兵衛」
  ページの先頭へ

候補者・作品
白石一郎男52歳×各選考委員 
「海賊たちの城」
短篇 139
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
山口瞳
男57歳
0  
池波正太郎
男61歳
7 「このテーマでは、これからの時代小説として読者に共感を得られない。まことに残念だった。」
水上勉
男65歳
0  
源氏鶏太
男72歳
3 「構成的に根本的な無理がある。」
井上ひさし
男49歳
10 「はっとして思わず引き込まれてしまうような表現が少いのです。」
渡辺淳一
男50歳
0  
五木寛之
男51歳
0  
黒岩重吾
男60歳
0  
村上元三
男74歳
12 「主人公の通嘉の性格が曖昧で、幕府に無断で城を作ったらどんなことになるか、それも考えないのでは大名の資格がない。」
          - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
他の候補作
連城三紀彦
『恋文』
難波利三
『てんのじ村』
落合恵子
『夏草の女たち』
今井泉
「溟い海峡」
小林久三
「傾いた橋」
林真理子
「星影のステラ」
山口洋子
「弥次郎兵衛」
  ページの先頭へ

候補者・作品
林真理子女30歳×各選考委員 
「星影のステラ」
短篇 110
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
山口瞳
男57歳
31 「感性と素質という点で抜群に秀れている。」「ムリヤリに小説を書かされて、知らないうちに候補作にされて、こんなことを言われるのは不本意だろうが、しかし、これは、残念ながら、非常によく出来た少女小説というほかはない。」「直木賞はプロ作家の通行手形であって、その候補に擬せられた以上は覚悟をきめてもらいたい。その感性を評価する者としてあえて言う。林真理子さん、顔を洗って出直していらっしゃい。」
池波正太郎
男61歳
0  
水上勉
男65歳
5 「不思議な、根なし草のようなイモねえちゃんたちのくらしのうちかたに興味をもった。それにしても弱い。」
源氏鶏太
男72歳
8 「私には何んとも理解出来なかった。これは自分の老齢のせいだろうかと反省してみたのだが、こんな魅力のない女に主人公がどうしてこんなに惹かれたのか、やっぱりわからなかった。」
井上ひさし
男49歳
4 「物語の設定に才気を感じさせてくれますが、文章そのものに魅力が乏しい。」
渡辺淳一
男50歳
14 「注目した。選考会では、「どうしてこんなくだらないものを書くのか」という酷評もあったが、このあたりは、いままで書かれなかったところであり、単なる少女趣味とはまったく違う。ステラは実在してもしなくてもいい、いわば若い女性が抱く夢で、それなりのリアリティがある。」
五木寛之
男51歳
6 「注目した。「中産階級の時代」の林芙美子、という見方もできるだろう。この作家も、まごうかたなき時代の子なのだ。」
黒岩重吾
男60歳
6 「こういう女性も居るだろう、と微笑しながら読んだ。だがこの作品は小説になっていない。この作者が小説に開眼すれば良い作品が生まれるだろう。」
村上元三
男74歳
6 「へんに、と言っては失礼だが、へんに面白かった。わたしなどの会ったこともない女性が、それなりの世界で生きている姿が新鮮だった。今後を期待したい。」
          - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
他の候補作
連城三紀彦
『恋文』
難波利三
『てんのじ村』
落合恵子
『夏草の女たち』
今井泉
「溟い海峡」
小林久三
「傾いた橋」
白石一郎
「海賊たちの城」
山口洋子
「弥次郎兵衛」
  ページの先頭へ

候補者・作品
山口洋子女47歳×各選考委員 
「弥次郎兵衛」
短篇 105
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
山口瞳
男57歳
0  
池波正太郎
男61歳
6 「素材的に平凡だった。ほかに、もっとよい作品がなかったのだろうか……。この人は近来、頓に力量をそなえてきているから、次回を期待したい。」
水上勉
男65歳
16 「女ふたりの中でゆれる男の心理説明が、過不足ない。山口流の云いまわしもいい。」「書きながしているという意見もあった。そういえばもう少しひっかかる針がある方がいい。」「小説の本道をめざしている山口さんに、じっくりした重いもの(原文傍点)を求めたい。」
源氏鶏太
男72歳
8 「相変らずうまいのだが、このうまさが却って邪魔になっているようだ。山口さんは、小説について、もう一度じっくりと考え直した方がいいのでなかろうか。」
井上ひさし
男49歳
12 「伝達と表現という二つの文章条件を満足させています。」「作者の目が神の目に近づきすぎ、すべてが綺麗に割り切れすぎているところにかすかな異和感をおぼえました。しかし作者は頭抜けて巧者です。」
渡辺淳一
男50歳
12 「よくできていた。」「山口氏は男を書いてほとんど異和感を与えない。今回の作品は二人の女のあいだで揺れる男をよく追いこんでいるが、最後で書き流してしまったのが惜しまれる。」
五木寛之
男51歳
0  
黒岩重吾
男60歳
10 「男女の関係の描写力は驚くほど達者である。良い作品だが授賞するためには氏独得の濃度が必要であろう。深く酩酊するような作品を期待してやまない。」
村上元三
男74歳
5 「うまくなった、という読後感が強かった。器用にまとめるよりも、破綻があってもいいから、もっと材料に取り組んで汗を流してほしい。」
          - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
他の候補作
連城三紀彦
『恋文』
難波利三
『てんのじ村』
落合恵子
『夏草の女たち』
今井泉
「溟い海峡」
小林久三
「傾いた橋」
白石一郎
「海賊たちの城」
林真理子
「星影のステラ」
  ページの先頭へ



ページの先頭へ

トップページ直木賞・芥川賞受賞作一覧受賞作・候補作一覧受賞作家の群像候補作家の群像
選考委員の群像小研究大衆選考会リンク集マップ