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第140回
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平成20年/2008年下半期
(平成21年/2009年1月15日決定発表/『オール讀物』平成21年/2009年3月号選評掲載)
選考委員  阿刀田高
男74歳
五木寛之
男76歳
平岩弓枝
女76歳
宮部みゆき
女48歳
北方謙三
男61歳
林真理子
女54歳
井上ひさし
男74歳
浅田次郎
男57歳
宮城谷昌光
男63歳
渡辺淳一
男75歳
選評総行数  100 99 101 160 102 95 146 98 126 80
候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数
天童荒太 『悼む人』
765
男48歳
34 25 54 55 15 25 29 26 22 39
山本兼一 『利休にたずねよ』
820
男52歳
27 28 47 56 21 22 22 42 17 34
恩田陸 『きのうの世界』
943
女44歳
9 8 0 31 17 16 26 10 6 0
北重人 『汐のなごり』
516
男61歳
7 9 0 10 15 10 24 16 15 0
葉室麟 『いのちなりけり』
470
男57歳
19 7 0 10 12 8 32 6 14 0
道尾秀介 『カラスの親指』
776
男33歳
4 10 0 24 15 14 19 14 38 19
                   
年齢/枚数の説明   見方・注意点

このページの選評出典:『オール讀物』平成21年/2009年3月号
1行当たりの文字数:12字


選考委員
阿刀田高男74歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
志と技と 総行数100 (1行=12字)
候補 評価 行数 評言
天童荒太
男48歳
34 「弱点はたくさんある。楽しめる小説ではない。しかし、この(引用者注:死とは何かという)テーマを執拗に追い、それを語るにふさわしい構造を実現したことだけでも高く評価されてよいだろう。志の深さに敬意を表したい。」
山本兼一
男52歳
27 「これが正しい利休像かどうかはともかく(李朝の女など完全なフィクションだろう)捕らえにくい人格を、それらしく読者に訴え、なによりも小説として深い楽しさを提示してくれる。前回の候補作『千両花嫁』とあいまって小説家としての技と力量を感じた。」
恩田陸
女44歳
9 「謎を複雑に仕かけ過ぎ、本当の謎はなんなのか、一編の小説として楽しむべきところがぼやけてしまった。」
北重人
男61歳
7 「第二話、第三話など味わい深い作品があるものの全体として一頭地を抜くものがなかった。」
葉室麟
男57歳
19 「――この抒情性はいいな――と思ったが、読み進むうちに途中から剣豪の活躍する読み物となり(これはこれで痛快なのだが)登場人物もむやみに増えて印象が散漫になってしまった。充分に楽しくは読めたのだが、受賞作として強く推すことはできなかった。」
道尾秀介
男33歳
4 「ちりばめられた趣向が、もう一つ鋭く創られ、垢抜けてくれれば、と願った。」
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他の選考委員
五木寛之
平岩弓枝
宮部みゆき
北方謙三
林真理子
井上ひさし
浅田次郎
宮城谷昌光
渡辺淳一
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選考委員
五木寛之男76歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
作家と作品と 総行数99 (1行=12字)
候補 評価 行数 評言
天童荒太
男48歳
25 「いまの時代に書かれるべくして書かれた作品、という気がした。」「人の死を数字や統計として見るのではなく、個人としての生き方を思うことが「悼む」ということだ。私たちの時代にむけて、この小説が何かを語りかけようとする試みに注目しないわけにはいかない。」「『利休にたずねよ』は作家への、そして『悼む人』は作品への評価といった感じの今回の授賞だろうか。」
山本兼一
男52歳
28 「これらの(引用者注:受賞作以外の候補)作品とならべてみると、さすがに(引用者中略)安定感が際立ってくるのだ。」「私個人としては、利休の出自や、隠された彼の生業などについて、もっと掘りさげてほしい気持ちはあったが、そこは作者の趣向を尊重して楽しく読ませてもらうことにしよう。」「『利休にたずねよ』は作家への、そして『悼む人』は作品への評価といった感じの今回の授賞だろうか。」
恩田陸
女44歳
8 「直木賞という枠からはみだした感じの作品」「独自の小説世界を構築する作家的腕力には、選考という場から引き離して「うーむ」と唸らせられるところがあった。」
北重人
男61歳
9 「すがすがしい物語で、荒涼とした今のような時代には、こういった筆致の作品を愛読する読者も少くないことだろう。しかし、受賞作として挙げるには、いささかスケールに欠けるような気がする。」
葉室麟
男57歳
7 「好感のもてる作品である。あれこれ脇見をすることなく、自分の作風を確立していけば、個性のある書き手として一家をなす人かもしれない。」
道尾秀介
男33歳
10 「軽やかなタッチは、ほっと一息つけるところがあって好ましかったが、残念ながら読む側の意表をつく意外性に欠けるような読後感をおぼえた。この作品をつよく推す選者もいたことだし、次作を期待したいと思う。」
  「今回の候補作六篇は、それぞれずしりとヴォリュームのある単行本ぞろいで、私が受賞した一九六〇年代とくらべると、最近、雑誌掲載の中短篇がほとんど対象になっていないのが不思議な気がした。」
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他の選考委員
阿刀田高
平岩弓枝
宮部みゆき
北方謙三
林真理子
井上ひさし
浅田次郎
宮城谷昌光
渡辺淳一
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選考委員
平岩弓枝女76歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
二作品の力量 総行数101 (1行=12字)
候補 評価 行数 評言
天童荒太
男48歳
54 「作者は主人公を通して現代、及び現代人と向き合い、書こうとされたように思った。当然、全体のバランスを取るのは不可能に近いし、冗漫にもなる。それを無視してこの作品をここまでにまとめ上げたのは、作者の熱と力によるもので、読者はそれに、ひき込まれたり、はじきとばされたりする。やはり、凄い小説という他はない。」
山本兼一
男52歳
47 「総体に品よく、そつなく仕上っていて山本さんの力倆が高く評価される。ただ、諸刃の剣となるのは、主要な小道具となっている緑釉の小壺で、(引用者中略)この小壺の持ち主、高麗の女と若き日の利休とのかかわり合いと死に関しては叙情に流されず、心の深い部分を突込んだ摘示が欲しい気がする。」「もう一つ、(引用者中略)宗恩が後世、茶人として高い評価を受けている人物であることを勘案すると、その人が茶道具を叩き割るのは、なんともそぐわない気持になる。」「山本さんが今、もっとも充実した時代小説の書き手の一人であると認識している故の欲ばりな注文である。」
恩田陸
女44歳
0  
北重人
男61歳
0  
葉室麟
男57歳
0  
道尾秀介
男33歳
0  
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他の選考委員
阿刀田高
五木寛之
宮部みゆき
北方謙三
林真理子
井上ひさし
浅田次郎
宮城谷昌光
渡辺淳一
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選考委員
宮部みゆき女48歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
二人の求道者 総行数160 (1行=12字)
候補 評価 行数 評言
天童荒太
男48歳
55 「『悼む人』と『利休にたずねよ』にマルをつけて(引用者注:選考会に)臨みました」「厳しいテーマに真正面から向き合い、一本気に書ききった誠意と情熱に感服いたしました。」「一読者としての私は、作者から投げかけられるテーマを真摯に受け止め、深く考えることは読書の大きな意義だと思います。が、それと同時に、作品を通して作者と共に手を打って笑い、輪になって踊りたいと思うときもあるのです。(引用者中略)天童さんには、御受賞を機会に、そういう方向にも今いちど目を向けていただけると、さらに嬉しい。」
山本兼一
男52歳
56 「『悼む人』と『利休にたずねよ』にマルをつけて(引用者注:選考会に)臨みました」「山本さんは死が〈解〉となる利休の人生を再構成しなければならなかったわけですが、この際に、〈時間遡行〉という手法を用いました。(引用者中略)これが大成功につながりました。」「大胆な発想と、それを支え得る筆力が揃って、初めて生まれた秀作だと思います。」
恩田陸
女44歳
31 「〈個人と共同体と記憶との関係〉〈主人公の日常からの逸脱〉という二つのキーポイントで、実は『悼む人』に通じる部分があります。求道者・坂築静人の前で、隠遁者・市川吾郎はやや存在感が薄れてしまいました。物語の三分の一までは〈あなた〉と呼びかけられ、読み手と一体化していた楡田栄子が、いよいよ〈解〉が現れる前に死んでしまったことも悲しい。」
北重人
男61歳
10 「(引用者注:「いのちなりけり」と共に)作者の持ち味の出た作品でした」「一篇ずつ完成度が高く、貫禄さえ漂う筆致ですが、折々、ふっと既視感を覚えるのが辛いところでした。」
葉室麟
男57歳
10 「(引用者注:「汐のなごり」と共に)作者の持ち味の出た作品でしたが、」「数々の有名な史実と大勢の登場人物を繋ぐ糸が自重で切れないうちにエンディングまで行こうと、中盤からいささか書き急ぎの感がありました。」
道尾秀介
男33歳
24 「読者が作者と共に手を打って笑い、踊って(いるつもりで踊らされて)大いに楽しむという点では、(引用者中略)ピカ一でした。本来、これこそ直木賞にふさわしい作品ではないかという意見も出ました。今回は受賞に届きませんでしたが、道尾さん、カッコいい初登場でした。」
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他の選考委員
阿刀田高
五木寛之
平岩弓枝
北方謙三
林真理子
井上ひさし
浅田次郎
宮城谷昌光
渡辺淳一
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選考委員
北方謙三男61歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
愚直な志の声 総行数102 (1行=12字)
候補 評価 行数 評言
天童荒太
男48歳
15 「愚直で、不器用で、テーマ性の強い作品だった。その志というべきものは、いま小説には必要なのだ、と私は思う。」「面白さは、あるとは言えない。しかしなお、読む側の死生観に触れてきて、共振を起こしてしまう作品であったと思う。」「私は『悼む人』一本に絞った」
山本兼一
男52歳
21 「力作感充分だった。時制を遡る発想も効果的で、相当の工夫の中で利休を描こうとした試みだったと思う。ただ、利休がこだわっている美は、言葉による表現を拒絶しているところがあり、そこには踏みこめず、茶というものの周辺を駈け回ったという印象もある。また縦糸の女性の存在が、最後に具体的に描写されているところが、私には不用だと思えた。」
恩田陸
女44歳
17 「実に大仕掛けの作品で、その発想には眼を奪われた。ただ、視点がめまぐるしくて気になり、塔が象徴性を持つところまで、私の内部で昇華されてこない、というきらいはあった。」「恩田氏の最良の作品だったのか、独得の豊饒な才気に小説的抑制があったのか、読後にはそういう疑問が浮かんで消えなかった。」
北重人
男61歳
15 「落ち着いていて好感が持てるが、どの作品の印象も浅い。」「人肉食を扱った作品もあったが、私には大上段の構えと感じられた。日常から離れてしまうと、作為が見えてしまうのが、残念だった。」
葉室麟
男57歳
12 「国家規模の情況設定が必要だったのか。密やかなるものを積み重ねた方が、世界は深くなったのではないか、という気がする。はじめから葉隠的な精神世界を狙ったという感じもあり、うまく入りこめなかった。」
道尾秀介
男33歳
15 「伏線の解決もほとんどがなされ、その実力に疑問の余地はないと思う。ただ、意表を衝く面白さの創出に作者の視線がむき、そこに力が注がれた作品だという気がした。その仕掛けゆえに、私にとっては再読に耐えないものになったのは、小説観の相違と言うほかはないのだろうか。」
  「時代小説が三本入っていて、今回は候補構成が新鮮で刺激的でもあった。」
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他の選考委員
阿刀田高
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林真理子
井上ひさし
浅田次郎
宮城谷昌光
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選考委員
林真理子女54歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
向き合い方 総行数95 (1行=12字)
候補 評価 行数 評言
天童荒太
男48歳
25 「この人の小説との向き合い方は、作家のそれではないような気がする。丁寧で誠実な小説であるが、それが内へ内へとひたすら向かっているのだ。結果「いい小説ではあるが息苦しい」ということになる。」「いくら正しくても隙のない小説は読んでいて疲れる。私などはいちばん看取ってもらいたい人に、会うことも出来ずに死んでいく母親に同情していくことで、やっとひと息ついたのである。」
山本兼一
男52歳
22 「直木賞にふさわしい端整で深い作品である。」「こういう一種の“芸道小説”を書く場合は、著者による新しい美意識を出現させることが肝心であるが、山本さんはこれにも成功した。資料を咀嚼し、自分のものにすることでは定評のある著者であるが、またもや実力のほどを見せてくれたようである。」
恩田陸
女44歳
16 「恩田ワールドにどっぷり浸りたい人は別にして、読者にはなはだ不親切な小説である。」「「コンペに適していない作家」という意見が出たがそのとおりだと思う。特定のファン以外は、やすやすと近づけない恩田ワールドである。」
北重人
男61歳
10 「「海羽山」が秀逸だ。噂どおりの力を見せていただいた気がする。が、短篇集の中のレベルが不揃いなのが残念であった。」
葉室麟
男57歳
8 「少々小説が散漫過ぎた。主人公に感情移入しようとすると、すぐにサイドストーリーが始まってしまうのである。おかげでラストシーンの美しさが生きてこない。」
道尾秀介
男33歳
14 「読み返すとつじつまの合わぬところはいくらでも出てくるが、最後にどんでん返しがあり、読者をほろりとさせる。こんな世の中だからこそ、こんな風にエンターテイメントに徹した一作は貴重だ。」
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他の選考委員
阿刀田高
五木寛之
平岩弓枝
宮部みゆき
北方謙三
井上ひさし
浅田次郎
宮城谷昌光
渡辺淳一
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選考委員
井上ひさし男74歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
意中の三作 総行数146 (1行=12字)
候補 評価 行数 評言
天童荒太
男48歳
29 「前半はすばらしい。しかし後半はやや落ちるかもしれない。(引用者中略)みんないい人になって、構造(ルビ:つくり)に微かなひびが入った。」「いずれにもせよ、作者は、名もなき死者を悼む人を設定して、人生と死と愛という人間の三大難問に正面から挑戦した。」「ドストエフスキーも顔負けの、この度胸のある文学的冒険に脱帽しよう。」
山本兼一
男52歳
22 「臨済禅が利休に与えた影響について書かれていないことを(大徳寺は出てくるけれども)不満に思ったが、しかし、時間を巧妙に逆行させながらなにもかも、高麗からの流浪の麗人と、彼女の持っていた緑釉の香合に、焦点を絞ってみせた、作者の力業に喝采を送る。」「おしまいの、利休の妻が香合を石灯籠に叩きつけて砕くところは、この長編を締めくくるにふさわしい名場面だった。」
恩田陸
女44歳
26 「すでに一家を立てた書き手である。」「したがって、いまさら不備を論じても仕方がないが、なによりも、舞台になっているM町が浮島の上に築かれていたという世界的なニュースが、後半ではただの地方ニュースに成り下がってしまったように見えて、これは風呂敷の広げすぎのようだ。」
北重人
男61歳
24 「よく調べられており、誠実で丹精な筆の運びも好ましく、とりわけ、(引用者中略)「海羽山」は、佳品である。しかしながら、各篇とも、物語の原動力がすべて〈回想〉なので、話の仕立てがよく似ている。そのせいか、読み手側の感銘の度合いも次第に月並みなものに落ちて行き、やや厚塗りの自然描写もやがて読み手の足手まといになって行く。」
葉室麟
男57歳
32 「始まりから固有名詞群と脇筋群が一気に出しゃばってくるので、主筋がたえず横滑りを起こし、時の前後さえ判別しがたくなる。とても読みにくい。」
道尾秀介
男33歳
19 「一に人物造型のたしかさ面白さ、二に伏線の仕込み方の誠実さ、三に物語の運びの精密さと意外さ、四に社会の機能を抉りだすときの鋭さ、五に質のいい笑いを創り出すときの冴えにおいて、出色の小説だった。評者も、すっかり騙された口の一人である。」
  「評者は推すべき作品を以下の(引用者注:「利休にたずねよ」「悼む人」「カラスの親指」の)三作品に定めた。」
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他の選考委員
阿刀田高
五木寛之
平岩弓枝
宮部みゆき
北方謙三
林真理子
浅田次郎
宮城谷昌光
渡辺淳一
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選考委員
浅田次郎男57歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
深読みか 総行数98 (1行=12字)
候補 評価 行数 評言
天童荒太
男48歳
26 「いささか苦言を呈した。たしかに苦悩なき世に苦悩する作家的姿勢は貴重だが、作家自身がここまで苦悩に呑みこまれてよいものか、という疑問である。仮にその切実感によって多くの読者の共感を得たとしても、小説本来の効能たる娯楽性をたがいに放棄してしまうのなら、ノンフィクションのほうが理に適っている。つまりあえて物語に仕立てる理由を、見出すことができなかった。」
山本兼一
男52歳
42 「美は権力に庇護されるべきか超然として独立するべきかという争点をめぐって、多くの証人が証言台に立つ法廷小説のように私は読んだ。中世美学裁判である。したがって判決は利休の死ではなく、彼を最もよく知る人物によって香合が割られる決着となる。少々深読みが過ぎるであろうか。」「(引用者注:北重人とともに)このさき時代小説の両翼となるのではなかろうか。」
恩田陸
女44歳
10 「著者の作品の中ではとりたてて上出来とは思えなかった。」「(引用者注:道尾秀介とともに)稀有の想像力を持っているのだが、その天才に構築力と表現力がどこまでついて行けるか、という点に作品の出来映えがかかっている。」
北重人
男61歳
16 「いったいに風景と人物の描写がすぐれており、その特性が一城下を舞台とした連作短篇という設えの中で有効に機能した。」「(引用者注:山本兼一とともに)このさき時代小説の両翼となるのではなかろうか。」
葉室麟
男57歳
6 「外形に執心して物語がなおざりとなる憾みがあった。」
道尾秀介
男33歳
14 「複雑な結構のわりに作者の余裕を感じなかった。氏の作品をいくつも読んでいると、こちらにも愕く準備ができてしまっているという本質的欠嵌はいかんともしがたい。」「(引用者注:恩田陸とともに)稀有の想像力を持っているのだが、その天才に構築力と表現力がどこまでついて行けるか、という点に作品の出来映えがかかっている。」
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他の選考委員
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五木寛之
平岩弓枝
宮部みゆき
北方謙三
林真理子
井上ひさし
宮城谷昌光
渡辺淳一
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選考委員
宮城谷昌光男63歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
ひとつの非凡 総行数126 (1行=12字)
候補 評価 行数 評言
天童荒太
男48歳
22 「現代の陰の事象をことごとく直視してゆく勇気をもったものである。が、多少説明的であり、近視眼的である。今あるいは現代がもっている負の要素にこだわりすぎている。」「残念ながら、この小説には夾雑物が大きすぎる。」
山本兼一
男52歳
17 「建てられた物、作られた物に、作り手あるいは所有者の精神を視る目を、作者がそなえているにせよ、こと小説に関しては、この作者は人を内から建てていないことに手法上の欠陥がある。」
恩田陸
女44歳
6 「作品そのものが読者を択ぶ。私は択ばれない読者であろう。」
北重人
男61歳
15 「藤沢周平を想わせる筆致で、全体に明るい落ち着きがある。時代小説に新しい試みをもちこんだとはいえないが、読後感はかなり良い。」「欠点は、各章における回想の量が大きく、それが爽快さを殺いでいることである。」
葉室麟
男57歳
14 「時代小説を書くことに、すでに習熟がみられる。ただし小説がもつ力を分散させたことが成功したとはみえず、収斂のしかたにもうひとつの工夫が要る。」
道尾秀介
男33歳
38 「最初から読んでも、最後から読んでも、意味はかわらないという仕掛けは、小説内の瑣末な描写にだけあったわけではなく、全体の構成にかくされていたのである。こういう知的な作業がなされた小説はめったにあらわれるものではない。非凡である、とあえていっておく。」
  「直木賞の選考会にもっとも近い日まで読んでいた候補作品が、もっとも印象が強くなるので、なるべく早く全作品を読み終えて、すくなくとも選考会まで二日のゆとりが欲しい、とつねにおもい、実際にそうしてきた。」「不公平さを自分のなかで匡す時間が要るのである。」
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他の選考委員
阿刀田高
五木寛之
平岩弓枝
宮部みゆき
北方謙三
林真理子
井上ひさし
浅田次郎
渡辺淳一
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選考委員
渡辺淳一男75歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
受賞の二作 総行数80 (1行=12字)
候補 評価 行数 評言
天童荒太
男48歳
39 「主人公のような人物を想定し、書き上げようとした意企を評価するにやぶさかでない。しかし本作品が小説としてよく機能し、適切に表現されているかとなると疑問である。」「とくに後半。同行する女性と、その夫の亡霊との会話、さらにラスト、死と出産を対比するところなど、いかにも安易でご都合主義である。」「(引用者注:「利休をたずねよ」とともに)各々、評価する部分と不満な部分と、両方兼ね合わせる形で二作受賞に同意した、というのが正直な感想である。」
山本兼一
男52歳
34 「今回の候補作のなかでは文章がたしかで、もっとも安心して読めた。しかし細かく章を分けて利休をめぐるいろいろな人間、さまざまな年代から描いていくやり方が、必ずしも成功しているとはいい難い。さらに秀吉と利休の対立の原因が、表面的にはともかく、より内面的な意味で、高麗の女性を懐想させるだけでは、いささか軽いというか説得力に欠ける。」「(引用者注:「悼む人」とともに)各々、評価する部分と不満な部分と、両方兼ね合わせる形で二作受賞に同意した、というのが正直な感想である。」
恩田陸
女44歳
0  
北重人
男61歳
0  
葉室麟
男57歳
0  
道尾秀介
男33歳
19 「馴染みのない詐欺師の世界を描いて面白いといえば面白い。だが面白さを追い求めてドラマチックにすればするほど、リアリティーが薄れてつまらなくなる。」「むろんこうした作品を好む人も多いかもしれないが、文学賞の対象になる作品とは言い難い。」
  「今回、最終候補として残ったのは、「カラスの親指」「悼む人」「利休にたずねよ」の三作であった。」
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他の選考委員
阿刀田高
五木寛之
平岩弓枝
宮部みゆき
北方謙三
林真理子
井上ひさし
浅田次郎
宮城谷昌光
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受賞者・作品
天童荒太男48歳×各選考委員 
『悼む人』
長篇 765
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
阿刀田高
男74歳
34 「弱点はたくさんある。楽しめる小説ではない。しかし、この(引用者注:死とは何かという)テーマを執拗に追い、それを語るにふさわしい構造を実現したことだけでも高く評価されてよいだろう。志の深さに敬意を表したい。」
五木寛之
男76歳
25 「いまの時代に書かれるべくして書かれた作品、という気がした。」「人の死を数字や統計として見るのではなく、個人としての生き方を思うことが「悼む」ということだ。私たちの時代にむけて、この小説が何かを語りかけようとする試みに注目しないわけにはいかない。」「『利休にたずねよ』は作家への、そして『悼む人』は作品への評価といった感じの今回の授賞だろうか。」
平岩弓枝
女76歳
54 「作者は主人公を通して現代、及び現代人と向き合い、書こうとされたように思った。当然、全体のバランスを取るのは不可能に近いし、冗漫にもなる。それを無視してこの作品をここまでにまとめ上げたのは、作者の熱と力によるもので、読者はそれに、ひき込まれたり、はじきとばされたりする。やはり、凄い小説という他はない。」
宮部みゆき
女48歳
55 「『悼む人』と『利休にたずねよ』にマルをつけて(引用者注:選考会に)臨みました」「厳しいテーマに真正面から向き合い、一本気に書ききった誠意と情熱に感服いたしました。」「一読者としての私は、作者から投げかけられるテーマを真摯に受け止め、深く考えることは読書の大きな意義だと思います。が、それと同時に、作品を通して作者と共に手を打って笑い、輪になって踊りたいと思うときもあるのです。(引用者中略)天童さんには、御受賞を機会に、そういう方向にも今いちど目を向けていただけると、さらに嬉しい。」
北方謙三
男61歳
15 「愚直で、不器用で、テーマ性の強い作品だった。その志というべきものは、いま小説には必要なのだ、と私は思う。」「面白さは、あるとは言えない。しかしなお、読む側の死生観に触れてきて、共振を起こしてしまう作品であったと思う。」「私は『悼む人』一本に絞った」
林真理子
女54歳
25 「この人の小説との向き合い方は、作家のそれではないような気がする。丁寧で誠実な小説であるが、それが内へ内へとひたすら向かっているのだ。結果「いい小説ではあるが息苦しい」ということになる。」「いくら正しくても隙のない小説は読んでいて疲れる。私などはいちばん看取ってもらいたい人に、会うことも出来ずに死んでいく母親に同情していくことで、やっとひと息ついたのである。」
井上ひさし
男74歳
29 「前半はすばらしい。しかし後半はやや落ちるかもしれない。(引用者中略)みんないい人になって、構造(ルビ:つくり)に微かなひびが入った。」「いずれにもせよ、作者は、名もなき死者を悼む人を設定して、人生と死と愛という人間の三大難問に正面から挑戦した。」「ドストエフスキーも顔負けの、この度胸のある文学的冒険に脱帽しよう。」
浅田次郎
男57歳
26 「いささか苦言を呈した。たしかに苦悩なき世に苦悩する作家的姿勢は貴重だが、作家自身がここまで苦悩に呑みこまれてよいものか、という疑問である。仮にその切実感によって多くの読者の共感を得たとしても、小説本来の効能たる娯楽性をたがいに放棄してしまうのなら、ノンフィクションのほうが理に適っている。つまりあえて物語に仕立てる理由を、見出すことができなかった。」
宮城谷昌光
男63歳
22 「現代の陰の事象をことごとく直視してゆく勇気をもったものである。が、多少説明的であり、近視眼的である。今あるいは現代がもっている負の要素にこだわりすぎている。」「残念ながら、この小説には夾雑物が大きすぎる。」
渡辺淳一
男75歳
39 「主人公のような人物を想定し、書き上げようとした意企を評価するにやぶさかでない。しかし本作品が小説としてよく機能し、適切に表現されているかとなると疑問である。」「とくに後半。同行する女性と、その夫の亡霊との会話、さらにラスト、死と出産を対比するところなど、いかにも安易でご都合主義である。」「(引用者注:「利休をたずねよ」とともに)各々、評価する部分と不満な部分と、両方兼ね合わせる形で二作受賞に同意した、というのが正直な感想である。」
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他の候補作
山本兼一
『利休にたずねよ』
恩田陸
『きのうの世界』
北重人
『汐のなごり』
葉室麟
『いのちなりけり』
道尾秀介
『カラスの親指』
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受賞者・作品
山本兼一男52歳×各選考委員 
『利休にたずねよ』
長篇 820
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
阿刀田高
男74歳
27 「これが正しい利休像かどうかはともかく(李朝の女など完全なフィクションだろう)捕らえにくい人格を、それらしく読者に訴え、なによりも小説として深い楽しさを提示してくれる。前回の候補作『千両花嫁』とあいまって小説家としての技と力量を感じた。」
五木寛之
男76歳
28 「これらの(引用者注:受賞作以外の候補)作品とならべてみると、さすがに(引用者中略)安定感が際立ってくるのだ。」「私個人としては、利休の出自や、隠された彼の生業などについて、もっと掘りさげてほしい気持ちはあったが、そこは作者の趣向を尊重して楽しく読ませてもらうことにしよう。」「『利休にたずねよ』は作家への、そして『悼む人』は作品への評価といった感じの今回の授賞だろうか。」
平岩弓枝
女76歳
47 「総体に品よく、そつなく仕上っていて山本さんの力倆が高く評価される。ただ、諸刃の剣となるのは、主要な小道具となっている緑釉の小壺で、(引用者中略)この小壺の持ち主、高麗の女と若き日の利休とのかかわり合いと死に関しては叙情に流されず、心の深い部分を突込んだ摘示が欲しい気がする。」「もう一つ、(引用者中略)宗恩が後世、茶人として高い評価を受けている人物であることを勘案すると、その人が茶道具を叩き割るのは、なんともそぐわない気持になる。」「山本さんが今、もっとも充実した時代小説の書き手の一人であると認識している故の欲ばりな注文である。」
宮部みゆき
女48歳
56 「『悼む人』と『利休にたずねよ』にマルをつけて(引用者注:選考会に)臨みました」「山本さんは死が〈解〉となる利休の人生を再構成しなければならなかったわけですが、この際に、〈時間遡行〉という手法を用いました。(引用者中略)これが大成功につながりました。」「大胆な発想と、それを支え得る筆力が揃って、初めて生まれた秀作だと思います。」
北方謙三
男61歳
21 「力作感充分だった。時制を遡る発想も効果的で、相当の工夫の中で利休を描こうとした試みだったと思う。ただ、利休がこだわっている美は、言葉による表現を拒絶しているところがあり、そこには踏みこめず、茶というものの周辺を駈け回ったという印象もある。また縦糸の女性の存在が、最後に具体的に描写されているところが、私には不用だと思えた。」
林真理子
女54歳
22 「直木賞にふさわしい端整で深い作品である。」「こういう一種の“芸道小説”を書く場合は、著者による新しい美意識を出現させることが肝心であるが、山本さんはこれにも成功した。資料を咀嚼し、自分のものにすることでは定評のある著者であるが、またもや実力のほどを見せてくれたようである。」
井上ひさし
男74歳
22 「臨済禅が利休に与えた影響について書かれていないことを(大徳寺は出てくるけれども)不満に思ったが、しかし、時間を巧妙に逆行させながらなにもかも、高麗からの流浪の麗人と、彼女の持っていた緑釉の香合に、焦点を絞ってみせた、作者の力業に喝采を送る。」「おしまいの、利休の妻が香合を石灯籠に叩きつけて砕くところは、この長編を締めくくるにふさわしい名場面だった。」
浅田次郎
男57歳
42 「美は権力に庇護されるべきか超然として独立するべきかという争点をめぐって、多くの証人が証言台に立つ法廷小説のように私は読んだ。中世美学裁判である。したがって判決は利休の死ではなく、彼を最もよく知る人物によって香合が割られる決着となる。少々深読みが過ぎるであろうか。」「(引用者注:北重人とともに)このさき時代小説の両翼となるのではなかろうか。」
宮城谷昌光
男63歳
17 「建てられた物、作られた物に、作り手あるいは所有者の精神を視る目を、作者がそなえているにせよ、こと小説に関しては、この作者は人を内から建てていないことに手法上の欠陥がある。」
渡辺淳一
男75歳
34 「今回の候補作のなかでは文章がたしかで、もっとも安心して読めた。しかし細かく章を分けて利休をめぐるいろいろな人間、さまざまな年代から描いていくやり方が、必ずしも成功しているとはいい難い。さらに秀吉と利休の対立の原因が、表面的にはともかく、より内面的な意味で、高麗の女性を懐想させるだけでは、いささか軽いというか説得力に欠ける。」「(引用者注:「悼む人」とともに)各々、評価する部分と不満な部分と、両方兼ね合わせる形で二作受賞に同意した、というのが正直な感想である。」
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他の候補作
天童荒太
『悼む人』
恩田陸
『きのうの世界』
北重人
『汐のなごり』
葉室麟
『いのちなりけり』
道尾秀介
『カラスの親指』
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候補者・作品
恩田陸女44歳×各選考委員 
『きのうの世界』
長篇 943
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
阿刀田高
男74歳
9 「謎を複雑に仕かけ過ぎ、本当の謎はなんなのか、一編の小説として楽しむべきところがぼやけてしまった。」
五木寛之
男76歳
8 「直木賞という枠からはみだした感じの作品」「独自の小説世界を構築する作家的腕力には、選考という場から引き離して「うーむ」と唸らせられるところがあった。」
平岩弓枝
女76歳
0  
宮部みゆき
女48歳
31 「〈個人と共同体と記憶との関係〉〈主人公の日常からの逸脱〉という二つのキーポイントで、実は『悼む人』に通じる部分があります。求道者・坂築静人の前で、隠遁者・市川吾郎はやや存在感が薄れてしまいました。物語の三分の一までは〈あなた〉と呼びかけられ、読み手と一体化していた楡田栄子が、いよいよ〈解〉が現れる前に死んでしまったことも悲しい。」
北方謙三
男61歳
17 「実に大仕掛けの作品で、その発想には眼を奪われた。ただ、視点がめまぐるしくて気になり、塔が象徴性を持つところまで、私の内部で昇華されてこない、というきらいはあった。」「恩田氏の最良の作品だったのか、独得の豊饒な才気に小説的抑制があったのか、読後にはそういう疑問が浮かんで消えなかった。」
林真理子
女54歳
16 「恩田ワールドにどっぷり浸りたい人は別にして、読者にはなはだ不親切な小説である。」「「コンペに適していない作家」という意見が出たがそのとおりだと思う。特定のファン以外は、やすやすと近づけない恩田ワールドである。」
井上ひさし
男74歳
26 「すでに一家を立てた書き手である。」「したがって、いまさら不備を論じても仕方がないが、なによりも、舞台になっているM町が浮島の上に築かれていたという世界的なニュースが、後半ではただの地方ニュースに成り下がってしまったように見えて、これは風呂敷の広げすぎのようだ。」
浅田次郎
男57歳
10 「著者の作品の中ではとりたてて上出来とは思えなかった。」「(引用者注:道尾秀介とともに)稀有の想像力を持っているのだが、その天才に構築力と表現力がどこまでついて行けるか、という点に作品の出来映えがかかっている。」
宮城谷昌光
男63歳
6 「作品そのものが読者を択ぶ。私は択ばれない読者であろう。」
渡辺淳一
男75歳
0  
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他の候補作
天童荒太
『悼む人』
山本兼一
『利休にたずねよ』
北重人
『汐のなごり』
葉室麟
『いのちなりけり』
道尾秀介
『カラスの親指』
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候補者・作品
北重人男61歳×各選考委員 
『汐のなごり』
短篇集6篇 516
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
阿刀田高
男74歳
7 「第二話、第三話など味わい深い作品があるものの全体として一頭地を抜くものがなかった。」
五木寛之
男76歳
9 「すがすがしい物語で、荒涼とした今のような時代には、こういった筆致の作品を愛読する読者も少くないことだろう。しかし、受賞作として挙げるには、いささかスケールに欠けるような気がする。」
平岩弓枝
女76歳
0  
宮部みゆき
女48歳
10 「(引用者注:「いのちなりけり」と共に)作者の持ち味の出た作品でした」「一篇ずつ完成度が高く、貫禄さえ漂う筆致ですが、折々、ふっと既視感を覚えるのが辛いところでした。」
北方謙三
男61歳
15 「落ち着いていて好感が持てるが、どの作品の印象も浅い。」「人肉食を扱った作品もあったが、私には大上段の構えと感じられた。日常から離れてしまうと、作為が見えてしまうのが、残念だった。」
林真理子
女54歳
10 「「海羽山」が秀逸だ。噂どおりの力を見せていただいた気がする。が、短篇集の中のレベルが不揃いなのが残念であった。」
井上ひさし
男74歳
24 「よく調べられており、誠実で丹精な筆の運びも好ましく、とりわけ、(引用者中略)「海羽山」は、佳品である。しかしながら、各篇とも、物語の原動力がすべて〈回想〉なので、話の仕立てがよく似ている。そのせいか、読み手側の感銘の度合いも次第に月並みなものに落ちて行き、やや厚塗りの自然描写もやがて読み手の足手まといになって行く。」
浅田次郎
男57歳
16 「いったいに風景と人物の描写がすぐれており、その特性が一城下を舞台とした連作短篇という設えの中で有効に機能した。」「(引用者注:山本兼一とともに)このさき時代小説の両翼となるのではなかろうか。」
宮城谷昌光
男63歳
15 「藤沢周平を想わせる筆致で、全体に明るい落ち着きがある。時代小説に新しい試みをもちこんだとはいえないが、読後感はかなり良い。」「欠点は、各章における回想の量が大きく、それが爽快さを殺いでいることである。」
渡辺淳一
男75歳
0  
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他の候補作
天童荒太
『悼む人』
山本兼一
『利休にたずねよ』
恩田陸
『きのうの世界』
葉室麟
『いのちなりけり』
道尾秀介
『カラスの親指』
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候補者・作品
葉室麟男57歳×各選考委員 
『いのちなりけり』
長篇 470
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
阿刀田高
男74歳
19 「――この抒情性はいいな――と思ったが、読み進むうちに途中から剣豪の活躍する読み物となり(これはこれで痛快なのだが)登場人物もむやみに増えて印象が散漫になってしまった。充分に楽しくは読めたのだが、受賞作として強く推すことはできなかった。」
五木寛之
男76歳
7 「好感のもてる作品である。あれこれ脇見をすることなく、自分の作風を確立していけば、個性のある書き手として一家をなす人かもしれない。」
平岩弓枝
女76歳
0  
宮部みゆき
女48歳
10 「(引用者注:「汐のなごり」と共に)作者の持ち味の出た作品でしたが、」「数々の有名な史実と大勢の登場人物を繋ぐ糸が自重で切れないうちにエンディングまで行こうと、中盤からいささか書き急ぎの感がありました。」
北方謙三
男61歳
12 「国家規模の情況設定が必要だったのか。密やかなるものを積み重ねた方が、世界は深くなったのではないか、という気がする。はじめから葉隠的な精神世界を狙ったという感じもあり、うまく入りこめなかった。」
林真理子
女54歳
8 「少々小説が散漫過ぎた。主人公に感情移入しようとすると、すぐにサイドストーリーが始まってしまうのである。おかげでラストシーンの美しさが生きてこない。」
井上ひさし
男74歳
32 「始まりから固有名詞群と脇筋群が一気に出しゃばってくるので、主筋がたえず横滑りを起こし、時の前後さえ判別しがたくなる。とても読みにくい。」
浅田次郎
男57歳
6 「外形に執心して物語がなおざりとなる憾みがあった。」
宮城谷昌光
男63歳
14 「時代小説を書くことに、すでに習熟がみられる。ただし小説がもつ力を分散させたことが成功したとはみえず、収斂のしかたにもうひとつの工夫が要る。」
渡辺淳一
男75歳
0  
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他の候補作
天童荒太
『悼む人』
山本兼一
『利休にたずねよ』
恩田陸
『きのうの世界』
北重人
『汐のなごり』
道尾秀介
『カラスの親指』
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候補者・作品
道尾秀介男33歳×各選考委員 
『カラスの親指』
長篇 776
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
阿刀田高
男74歳
4 「ちりばめられた趣向が、もう一つ鋭く創られ、垢抜けてくれれば、と願った。」
五木寛之
男76歳
10 「軽やかなタッチは、ほっと一息つけるところがあって好ましかったが、残念ながら読む側の意表をつく意外性に欠けるような読後感をおぼえた。この作品をつよく推す選者もいたことだし、次作を期待したいと思う。」
平岩弓枝
女76歳
0  
宮部みゆき
女48歳
24 「読者が作者と共に手を打って笑い、踊って(いるつもりで踊らされて)大いに楽しむという点では、(引用者中略)ピカ一でした。本来、これこそ直木賞にふさわしい作品ではないかという意見も出ました。今回は受賞に届きませんでしたが、道尾さん、カッコいい初登場でした。」
北方謙三
男61歳
15 「伏線の解決もほとんどがなされ、その実力に疑問の余地はないと思う。ただ、意表を衝く面白さの創出に作者の視線がむき、そこに力が注がれた作品だという気がした。その仕掛けゆえに、私にとっては再読に耐えないものになったのは、小説観の相違と言うほかはないのだろうか。」
林真理子
女54歳
14 「読み返すとつじつまの合わぬところはいくらでも出てくるが、最後にどんでん返しがあり、読者をほろりとさせる。こんな世の中だからこそ、こんな風にエンターテイメントに徹した一作は貴重だ。」
井上ひさし
男74歳
19 「一に人物造型のたしかさ面白さ、二に伏線の仕込み方の誠実さ、三に物語の運びの精密さと意外さ、四に社会の機能を抉りだすときの鋭さ、五に質のいい笑いを創り出すときの冴えにおいて、出色の小説だった。評者も、すっかり騙された口の一人である。」
浅田次郎
男57歳
14 「複雑な結構のわりに作者の余裕を感じなかった。氏の作品をいくつも読んでいると、こちらにも愕く準備ができてしまっているという本質的欠嵌はいかんともしがたい。」「(引用者注:恩田陸とともに)稀有の想像力を持っているのだが、その天才に構築力と表現力がどこまでついて行けるか、という点に作品の出来映えがかかっている。」
宮城谷昌光
男63歳
38 「最初から読んでも、最後から読んでも、意味はかわらないという仕掛けは、小説内の瑣末な描写にだけあったわけではなく、全体の構成にかくされていたのである。こういう知的な作業がなされた小説はめったにあらわれるものではない。非凡である、とあえていっておく。」
渡辺淳一
男75歳
19 「馴染みのない詐欺師の世界を描いて面白いといえば面白い。だが面白さを追い求めてドラマチックにすればするほど、リアリティーが薄れてつまらなくなる。」「むろんこうした作品を好む人も多いかもしれないが、文学賞の対象になる作品とは言い難い。」
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他の候補作
天童荒太
『悼む人』
山本兼一
『利休にたずねよ』
恩田陸
『きのうの世界』
北重人
『汐のなごり』
葉室麟
『いのちなりけり』
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