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第145回
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平成23年/2011年上半期
(平成23年/2011年7月14日決定発表/『オール讀物』平成23年/2011年9月号選評掲載)
選考委員  伊集院静
男61歳
桐野夏生
女59歳
宮城谷昌光
男66歳
北方謙三
男63歳
阿刀田高
男76歳
渡辺淳一
男77歳
林真理子
女57歳
浅田次郎
男59歳
宮部みゆき
女50歳
選評総行数  110 99 116 101 94 80 98 85 171
候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数
池井戸潤 『下町ロケット』
745
男48歳
31 31 28 25 27 11 24 20 38
島本理生 『アンダスタンド・メイビー』
1223
女28歳
21 20 21 35 21 24 20 16 40
高野和明 『ジェノサイド』
1251
男46歳
31 24 12 17 24 13 28 11 31
辻村深月 『オーダーメイド殺人クラブ』
718
女31歳
14 13 9 7 5 13 13 12 44
葉室麟 『恋しぐれ』
416
男60歳
13 11 46 9 11 15 13 15 29
                 
年齢/枚数の説明   見方・注意点

このページの選評出典:『オール讀物』平成23年/2011年9月号
1行当たりの文字数:12字


選考委員
伊集院静男61歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
作品の潔さ 総行数110 (1行=12字)
候補 評価 行数 評言
池井戸潤
男48歳
31 「下町のエンジン部品メーカーの社長が仰ぎ見ている夢に周囲の人々が、自分たちもかつて抱いていた夢を託しはじめる。夢、望みは希望である。この希望が物語の力となっている。人々の希望を繋ぐ爽快な作品だ。」「直木賞の受賞作にふさわしい作品であると同時に、さまざまな事情を抱えた今夏の日本に活力を与える小説である。」
島本理生
女28歳
21 「候補作の中でもっとも好きな作品だった。読んでいて、センスの良い小説だと感心した。このセンスが才気としたら、“タレント”より“ギフト”ではないかと思った。小説家の大切な資質だ。北関東の小都市の街の風土、湿っぽさ、人の肌合い。そこで苦悩する一人の少女が女性へと変わる姿が島本さんにしか生み出せない世界で描かれている。」「私は本作品を推したが受賞におよばなかった。」
高野和明
男46歳
31 「候補作の中でどの作品より興奮して読んだ。」「この作品のすぐれた所は散りばめたすべての事象をひとつの点にむかって邁進させた点である。群像を描いた一枚の絵がよくよく個々の表情、姿を眺めるとひとつの点に透視図のように集約されるのに似ている。そのことが或る意味、この作品が、絵画、映像的と指摘された由縁だろう。」
辻村深月
女31歳
14 「殺人、自死願望をここまで丁寧に描いてあっただけに、殺人をあきらめた章で肩すかしをくった気がした。殺人願望の対極にあるものが前半部で書かれてしかるべきだったのではなかろうか。」
葉室麟
男60歳
13 「私は推した。これまでのキャリアも十分に思えたし、蕪村という題材も氏の作品の幅のひろがりに思えた。選考で俳句の扱いに関して安易ではないかと指摘され、佳い導入俳句もある点を強調したが他委員の賛同を得られなかった。」
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他の選考委員
桐野夏生
宮城谷昌光
北方謙三
阿刀田高
渡辺淳一
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浅田次郎
宮部みゆき
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選考委員
桐野夏生女59歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
選評 総行数99 (1行=12字)
候補 評価 行数 評言
池井戸潤
男48歳
31 「池井戸さんは、安定した達者な書き手だ。すでに「池井戸ブランド」を確立しておられるし、何も言うことはない。」「面白かったのは、社内の不満が噴き出すあたりだろうか。「夢とプライド」は個人の価値観に過ぎず、会社は、個々の「夢とプライド」を束ねることはできない、ということだ。」「個人的には、主人公と妻の何がどうぶつかって、破局に至ったのかを知りたかった。また、震災後の日本の姿を、是非、池井戸さんに書いて頂きたいと願う。」
島本理生
女28歳
20 「もしかすると、この作品を冗漫だと感じる方も多いかもしれない。トーンが一定していない、と不満に思う人もいるだろう。だが、青春というものはこういう姿をしているのではなかったか、と何度も思った。」「おそらく、大勢の若い女性がこの物語によって救われることだろう。よい小説を読んだ。」
高野和明
男46歳
24 「力作である。テーマもディテールも面白かった。」「手に汗握って読んでいるうちに、物語の収束点が見え過ぎてスリルが失われる。新薬は生まれ、新種の生物は助かるだろう、と。彼らがどんな生物なのか、また日本にいる生物はどうなのか、もっと知りたかった。」
辻村深月
女31歳
13 「初潮の来ない「少女」のうちに死にたい、美しい死体になりたい。この主人公の気持ちに沿うことができなかった。」「友人グループ内での軋轢など、面白く感じたところもあったが、殺人依頼をする飛躍も呑み込めなかった。」
葉室麟
男60歳
11 「淡泊な恋の物語で、「ちょっといい話」の連なりである。色気が感じられないのは、女たちがおとなしく、男たちの弱みを炙り出すまでにいかないせいか。」「品はいいが、引き気味である。」
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他の選考委員
伊集院静
宮城谷昌光
北方謙三
阿刀田高
渡辺淳一
林真理子
浅田次郎
宮部みゆき
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選考委員
宮城谷昌光男66歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
作品の底辺 総行数116 (1行=12字)
候補 評価 行数 評言
池井戸潤
男48歳
28 「人や組織がもちうる力には、大、中、小がある。ところが中以下の力しかもたないものが、大の力にまさる、あるいは比肩するためには、量ではなく質において、こころみるしかない。氏の『下町ロケット』の主題は、そこにあるとおもう。それはじつは日本国内の人と企業の力関係に限定する話ではなく、世界における日本の現状を想うべきであろう。氏の作品はそれを教えている。私は、この作品が受賞してよい、という考えをもって選考会に臨んだことをつけくわえておく。」
島本理生
女28歳
21 「やや冗長である。すっきりした輪郭をみせてくれれば、質は上昇したであろうに、小説の体形が良くない。」「ただし氏にはユーモアがあり、そのユーモアは対象との知的な距離のとりかたを示唆している。それをもっと活かすべきである。氏にたいして少々わかりにくいことをいえば、小説のなかに傾斜を作ることを考えてもらいたい。その上に人と物を載せれば、押さなくても、すべっていってくれるのである。」
高野和明
男46歳
12 「読了したあと、本を読み終えたというより、アメリカ映画を見終えたという感じに襲われた。」「ことばの存在意義が映像に転位されるのが速すぎる。それによって登場する人と物の一面しか読者は知りえないことになる。」
辻村深月
女31歳
9 「社会的なひろがりを遮断したのであれば、その狭義の小説世界がそうとうな深度をもたなければならないが、そこまではいっていないと感じられた。」
葉室麟
男60歳
46 「底辺に蕪村の俳句が敷かれている。だが、氏の小説における習熟度が高まったせいか、かつてのように、俳句にかこつけて書いた、という感じがうすれている。」「端的にいえば、ひとりよがりではなくなった。べつないいかたをすれば、愛情が社会性をもつようになった。」「そのように氏の進歩を認めることはできても、ほかの作者の作品とくらべてどうか、というところにむずかしさがある。とにかく私は今回の氏の作品に好意をそえたことはたしかである。」
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伊集院静
桐野夏生
北方謙三
阿刀田高
渡辺淳一
林真理子
浅田次郎
宮部みゆき
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選考委員
北方謙三男63歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
努力の結実 総行数101 (1行=12字)
候補 評価 行数 評言
池井戸潤
男48歳
25 「エンターテインメントの王道は、一歩間違えれば通俗に落ちかねず、また企業小説ふうなところが、いかにもこの作者の類型と見なされる危険にもあえて挑み、見事に危惧をクリアして、さわやかな世界を築きあげている。」「十数年にわたる努力の積み重ねが、このような普遍性を獲得させ、いま花開きはじめたと言っていいであろう。」「私は迷った末、『下町ロケット』と『アンダスタンド・メイビー』に丸をつけて臨んだ。」
島本理生
女28歳
35 「トラウマの中に、人間の存在に対するひたむきな問いかけがあり、それが観念ではなく描写という段階の表現に達しているところに、この作家の非凡さを感じた。」「ただ主人公の自殺未遂のあとの病院の描写や、宗教についての書きようなど、どこか安直さがあった。」「これを直木賞としてどう評価するかについては、私は最後まで迷った。」「私は迷った末、『下町ロケット』と『アンダスタンド・メイビー』に丸をつけて臨んだ。」
高野和明
男46歳
17 「力作にして労作だった。」「スピーディなストーリー展開だけでなく、その中に人の心がしばしば垣間見えるのにも、心を動かされた。ただ、人知を超える存在を小説の核に据えることが、最終的には私には受け入れられず、強く推すに到らなかった。」
辻村深月
女31歳
7 「事象としてのいじめが連綿として、カタルシスに達しない苛立ちがある。思春期の心情に、普遍性を与えきれなかった、惜しさもあった。」
葉室麟
男60歳
9 「悠然と書いているように思えるが、作家年齢を考えれば、もっと大胆な試みに挑んで欲しいという気もした。」「核がどこかぼやけているという気がしてならなかった。」
  「直木賞がなにを求めるのかと、考えさせられる選考会だった。小説という意味では、およそ制限がないほど対象は広いと私は思うが、ある種の文学性が弱く作用してしまうことが、ないとは言えないという気もする。すぐれた小説を選びたい、と痛切に思う。小説においてすぐれたものについて、私は今後も考え続けていこうと思う。」
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他の選考委員
伊集院静
桐野夏生
宮城谷昌光
阿刀田高
渡辺淳一
林真理子
浅田次郎
宮部みゆき
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選考委員
阿刀田高男76歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
企業社会を描いて 総行数94 (1行=12字)
候補 評価 行数 評言
池井戸潤
男48歳
27 「痛快で、楽しめる作品だ。」「受賞後の談話で“心の苦しみより、お金で苦悩する人を書いた”と語っていたが(なにほどかの韜晦はあるにせよ)端的に言えば、そういう内容だ。もちろん主人公たちの心も苦しんでいる。けれど、その苦しさのよって来たるところが、まあ、経済のこと、お金のこと、これはほとんどの大人たちの日常である。それをしっかりと捕らえた文学は充分に評価しうるものと考えた。」
島本理生
女28歳
21 「若い作家だが、筆致にも技巧にも小説家らしさが漲っていて、そこに不足はない。ただ楽しめる小説かどうかと問えば(楽しみの種類はいろいろあるにせよ)評価はむつかしい。」「結局“受賞作は一作としたい”という(つねには守られていない)願いが私の心を強く占めた。」
高野和明
男46歳
24 「前半は胸躍る展開だが、後半は(ひどく複雑なのはストーリーの性質から考えて仕方ないとしても)筋運びが、よくあるパターンへと傾き、――小説というより映画の台本かな――と感じないでもなかった。それにしても詳細で、豊富な情報量を含む作品だ。作者の努力と知識をおおいに称えたい。」
辻村深月
女31歳
5 「若いヒロインの心理と行動に私の理解が届かず、感情移入のむつかしい作品のように思われた。」
葉室麟
男60歳
11 「読者としては俳句の味わいに関心が赴き、小説として……つまり人間を描く作品として少し不足を感じてしまう。それが弱点のように思われた。」
  「迷いの多い選考会であった。」「一般論として言うのだが、成熟した大人を描く小説を多く私は読みたいと願う。」
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伊集院静
桐野夏生
宮城谷昌光
北方謙三
渡辺淳一
林真理子
浅田次郎
宮部みゆき
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選考委員
渡辺淳一男77歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
少数意見として 総行数80 (1行=12字)
候補 評価 行数 評言
池井戸潤
男48歳
11 「わたしはここまで読みものに堕したものは採らない。直木賞は当然、文学賞であり、そこにそれなりの文学性とともに人間追求の姿勢も欠かすべきではない。」
島本理生
女28歳
24 「高校を中退して通信教育を受け、写真家のアシスタントになる過程が比較的テンポよく書かれているが、そこから今一歩、踏み込んだ青春の苦渋や迷いにまでは達していない。」「「窓辺の席で頬杖をついて左右に揺れながら、うっすらと目を細めると、かすかな眠気と空腹が立ち上がってきた」とは、なんたる駄文。かつてこんな文章を平気で書く作家もいなかったが、また、これを平然とのせる編集者もいなかった。」
高野和明
男46歳
13 「所詮はストーリーだけに頼るアメリカ映画の二流の脚本止まり。直木賞の巾を広げたい、という一部の人の気持ちもわからぬわけではないが、若者好みのお話だけ。当たり前のことだが、小説は事件ではなく、心の内面を描くものである。」
辻村深月
女31歳
13 「なぜこれほど殺人や死の世界にこだわるのか。特殊な異常なものを書かなければ小説にならない、と思い込んでいるとしたら、大きな過ちである。」
葉室麟
男60歳
15 「(引用者注:候補の)五作中、もっとも小説的な雰囲気というか、赴きを備えているが、蕪村という大物俳人をストレートに描こうとしたところが、誤りの発端だった。」「俳人は風景を見て、それをそのまま句に表現するわけでなく、そこから数々の省略や推敲を重ねて、練り直す。この基本を抜かしたところが、作品を軽くご都合主義的なものにしてしまった。」
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他の選考委員
伊集院静
桐野夏生
宮城谷昌光
北方謙三
阿刀田高
林真理子
浅田次郎
宮部みゆき
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選考委員
林真理子女57歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
文学性のひよわさ 総行数98 (1行=12字)
候補 評価 行数 評言
池井戸潤
男48歳
24 「全員から「ぼんやりとした」好感と賛同を持って迎えられたのが、受賞作の「下町ロケット」ではなかっただろうか。私としては登場人物のすべてがステレオタイプなのが気にかかった。」「とはいうものの、この作品の持っている健全さは捨てがたい魅力がある。」「時代と小説とが決して無関係でないとしたら、やはり今の世にふさわしい受賞作だ。」
島本理生
女28歳
20 「私はどうしても評価出来なかった。」「幼女の性的虐待、レイプ、新興宗教と、小道具が次から次へと出てくる。主人公のキャラクターを設定するのに、これほどたくさんのものが必要であったろうか。愚かさや不幸にこれだけの理由がいるのか、おおいに疑問で、物語世界に入っていけなかった。」
高野和明
男46歳
28 「映像出身の作家が陥りがちな、ノベライズめいた粗雑さがなく、視覚的なのである。これほど面白い小説に久しぶりに出会った。よく言われる「頭の体力がある」を通り越して、「頭のアスリート」のようなこの小説こそ直木賞にふさわしいと選考会に臨んだのであるが、文学性が低いということで受賞には至らなかった。」「面白いだけの小説に直木賞はふさわしくないが、この小説は面白いだけでなく実もある。この実こそ文学性というものではなかろうか。」
辻村深月
女31歳
13 「幼さが目立つ。この小説は死体になりたいと願う主人公に読者が共感しなければ成立しない。が、最後まで私はそれを持つことが出来なかった。」「文章の隅々にセンスが光るが、この作品では受賞に至らないであろう。」
葉室麟
男60歳
13 「この作家の中では決してレベルの高いものと思えないだけに、残念な結果となってしまった。」「唐突に俳句が出てきて、それと物語とを無理に接着させた感があった。出てくる人々が、みな生気がないように思われて仕方ない。」
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桐野夏生
宮城谷昌光
北方謙三
阿刀田高
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選考委員
浅田次郎男59歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
善意 総行数85 (1行=12字)
候補 評価 行数 評言
池井戸潤
男48歳
20 「これまでの(引用者注:作者自身の)作品に較べて、明らかにすぐれているのである。こうした考え方には異論もあろうが、少くとも自己の小説世界を着実に積み上げて、その精華というべきこの作品を獲得したという事実は、創作者が範とするべきであり、賞讃に価すると思った。」
島本理生
女28歳
16 「作品としての完成度には疑問を抱いたが、この作者のうちには「小説とはこういうもの」という法律があるようで、その無意識の心構えが、たとえば礼節を弁えた良家の子女のような居ずまいたたずまいのよさを感じさせた。」「おそらく受賞は力に変わると信じて推奨した。」
高野和明
男46歳
11 「文章表現における真のダイナミズムとは、視覚的効果や華やかなストーリーに求めるものではなく、登場人物の心のうちに展開しなければならないはずである。」
辻村深月
女31歳
12 「残念なことにこちらは自身の前作や前々作を凌駕しているとは言い難い。思春期の通過儀礼である、生と死にまつわる懐疑と憧憬というテーマの重みに、ストーリーが完敗している。」
葉室麟
男60歳
15 「もともとこの作家の資質は短篇において発揮されるだろうと考えていたのだが、なるほど連作短篇の形式を採った本作品は、まことに鮮かであった。しかし、のっぴきならぬ恋愛劇のわりには、愛憎が不足しているように思えた。」
  「今回は強く推すべき作品が見当らぬまま選考会に臨んだ。」「総じて今回の候補作が、過去の選考会なみの水準に達していたとは思えない。」
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伊集院静
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北方謙三
阿刀田高
渡辺淳一
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選考委員
宮部みゆき女50歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
「頑固」の力 総行数171 (1行=12字)
候補 評価 行数 評言
池井戸潤
男48歳
38 「文学には様々な方法があっていいはずですし、小説の文体には、作者が書きたいと思う素材やテーマに合った無数の発展型があるはずです。」「池井戸さんはご自分の信念を曲げず、切り捨てる部分は潔く切り捨てて、池井戸さんの文体を見つけました。勇気ある全力の頑固には、いつか壁をぶち破る力があります。『下町ロケット』はそれを証明してくれました。」
島本理生
女28歳
40 「真摯に丁寧に描かれているからこそ、ヒロイン・黒江たどる道筋は、創作というより、現実の酷い事象の物語化に留まってしまった感がありました」「この作品で図抜けて凄い創作は、むしろ黒江のお母さんの人間像の方ではないでしょうか。」「主人公の選択を誤ったのではないかという残念な思いが残りました。」
高野和明
男46歳
31 「敢闘賞を差し上げたい。完璧な徹夜本でしたし、こんな豪快な大ボラを楽しんだのは、本当に久しぶりのことです。」「この作品のもっとも素晴らしいところは、インターネットによって一瞬に世界と繋がることができるようになった現代社会でも、真に人間同士を結びつけるのは情報ではなく、人と人とが血の通った手を取り合わなくてはいけないのだというメッセージを放っていることです。」
辻村深月
女31歳
44 「ティーンエイジャー視点の青春小説は、辻村さんにとっては既に自家薬籠中のもので、力量のほどは私も充分存じ上げていますので、今回は(申し訳ないですが)最初から少しハードルを上げて選考に臨んだので、一席に推すことができませんでした。個人的には大好きな作品で、忘れがたい場面が多々あります。」
葉室麟
男60歳
29 「葉室さんの筆力と歴史小説の教養を存じ上げているからこそ、惜しまれる作品だったと思います。」「私は読み始めてすぐに、蕪村や応挙や上田秋成が個々の短編でバトンを受け渡しながら主役を務めることで、彼らが互いに互いの生き方や芸術性をどう思っているのかということが立体的に浮き彫りになってゆく、いわば江戸文人の双方向の交友録を描くことで江戸文化の核に迫ろうという仕掛けの短編集だと思ってしまったのです。」
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伊集院静
桐野夏生
宮城谷昌光
北方謙三
阿刀田高
渡辺淳一
林真理子
浅田次郎
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受賞者・作品
池井戸潤男48歳×各選考委員 
『下町ロケット』
長篇 745
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
伊集院静
男61歳
31 「下町のエンジン部品メーカーの社長が仰ぎ見ている夢に周囲の人々が、自分たちもかつて抱いていた夢を託しはじめる。夢、望みは希望である。この希望が物語の力となっている。人々の希望を繋ぐ爽快な作品だ。」「直木賞の受賞作にふさわしい作品であると同時に、さまざまな事情を抱えた今夏の日本に活力を与える小説である。」
桐野夏生
女59歳
31 「池井戸さんは、安定した達者な書き手だ。すでに「池井戸ブランド」を確立しておられるし、何も言うことはない。」「面白かったのは、社内の不満が噴き出すあたりだろうか。「夢とプライド」は個人の価値観に過ぎず、会社は、個々の「夢とプライド」を束ねることはできない、ということだ。」「個人的には、主人公と妻の何がどうぶつかって、破局に至ったのかを知りたかった。また、震災後の日本の姿を、是非、池井戸さんに書いて頂きたいと願う。」
宮城谷昌光
男66歳
28 「人や組織がもちうる力には、大、中、小がある。ところが中以下の力しかもたないものが、大の力にまさる、あるいは比肩するためには、量ではなく質において、こころみるしかない。氏の『下町ロケット』の主題は、そこにあるとおもう。それはじつは日本国内の人と企業の力関係に限定する話ではなく、世界における日本の現状を想うべきであろう。氏の作品はそれを教えている。私は、この作品が受賞してよい、という考えをもって選考会に臨んだことをつけくわえておく。」
北方謙三
男63歳
25 「エンターテインメントの王道は、一歩間違えれば通俗に落ちかねず、また企業小説ふうなところが、いかにもこの作者の類型と見なされる危険にもあえて挑み、見事に危惧をクリアして、さわやかな世界を築きあげている。」「十数年にわたる努力の積み重ねが、このような普遍性を獲得させ、いま花開きはじめたと言っていいであろう。」「私は迷った末、『下町ロケット』と『アンダスタンド・メイビー』に丸をつけて臨んだ。」
阿刀田高
男76歳
27 「痛快で、楽しめる作品だ。」「受賞後の談話で“心の苦しみより、お金で苦悩する人を書いた”と語っていたが(なにほどかの韜晦はあるにせよ)端的に言えば、そういう内容だ。もちろん主人公たちの心も苦しんでいる。けれど、その苦しさのよって来たるところが、まあ、経済のこと、お金のこと、これはほとんどの大人たちの日常である。それをしっかりと捕らえた文学は充分に評価しうるものと考えた。」
渡辺淳一
男77歳
11 「わたしはここまで読みものに堕したものは採らない。直木賞は当然、文学賞であり、そこにそれなりの文学性とともに人間追求の姿勢も欠かすべきではない。」
林真理子
女57歳
24 「全員から「ぼんやりとした」好感と賛同を持って迎えられたのが、受賞作の「下町ロケット」ではなかっただろうか。私としては登場人物のすべてがステレオタイプなのが気にかかった。」「とはいうものの、この作品の持っている健全さは捨てがたい魅力がある。」「時代と小説とが決して無関係でないとしたら、やはり今の世にふさわしい受賞作だ。」
浅田次郎
男59歳
20 「これまでの(引用者注:作者自身の)作品に較べて、明らかにすぐれているのである。こうした考え方には異論もあろうが、少くとも自己の小説世界を着実に積み上げて、その精華というべきこの作品を獲得したという事実は、創作者が範とするべきであり、賞讃に価すると思った。」
宮部みゆき
女50歳
38 「文学には様々な方法があっていいはずですし、小説の文体には、作者が書きたいと思う素材やテーマに合った無数の発展型があるはずです。」「池井戸さんはご自分の信念を曲げず、切り捨てる部分は潔く切り捨てて、池井戸さんの文体を見つけました。勇気ある全力の頑固には、いつか壁をぶち破る力があります。『下町ロケット』はそれを証明してくれました。」
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他の候補作
島本理生
『アンダスタンド・メイビー』
高野和明
『ジェノサイド』
辻村深月
『オーダーメイド殺人クラブ』
葉室麟
『恋しぐれ』
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候補者・作品
島本理生女28歳×各選考委員 
『アンダスタンド・メイビー』
長篇 1223
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
伊集院静
男61歳
21 「候補作の中でもっとも好きな作品だった。読んでいて、センスの良い小説だと感心した。このセンスが才気としたら、“タレント”より“ギフト”ではないかと思った。小説家の大切な資質だ。北関東の小都市の街の風土、湿っぽさ、人の肌合い。そこで苦悩する一人の少女が女性へと変わる姿が島本さんにしか生み出せない世界で描かれている。」「私は本作品を推したが受賞におよばなかった。」
桐野夏生
女59歳
20 「もしかすると、この作品を冗漫だと感じる方も多いかもしれない。トーンが一定していない、と不満に思う人もいるだろう。だが、青春というものはこういう姿をしているのではなかったか、と何度も思った。」「おそらく、大勢の若い女性がこの物語によって救われることだろう。よい小説を読んだ。」
宮城谷昌光
男66歳
21 「やや冗長である。すっきりした輪郭をみせてくれれば、質は上昇したであろうに、小説の体形が良くない。」「ただし氏にはユーモアがあり、そのユーモアは対象との知的な距離のとりかたを示唆している。それをもっと活かすべきである。氏にたいして少々わかりにくいことをいえば、小説のなかに傾斜を作ることを考えてもらいたい。その上に人と物を載せれば、押さなくても、すべっていってくれるのである。」
北方謙三
男63歳
35 「トラウマの中に、人間の存在に対するひたむきな問いかけがあり、それが観念ではなく描写という段階の表現に達しているところに、この作家の非凡さを感じた。」「ただ主人公の自殺未遂のあとの病院の描写や、宗教についての書きようなど、どこか安直さがあった。」「これを直木賞としてどう評価するかについては、私は最後まで迷った。」「私は迷った末、『下町ロケット』と『アンダスタンド・メイビー』に丸をつけて臨んだ。」
阿刀田高
男76歳
21 「若い作家だが、筆致にも技巧にも小説家らしさが漲っていて、そこに不足はない。ただ楽しめる小説かどうかと問えば(楽しみの種類はいろいろあるにせよ)評価はむつかしい。」「結局“受賞作は一作としたい”という(つねには守られていない)願いが私の心を強く占めた。」
渡辺淳一
男77歳
24 「高校を中退して通信教育を受け、写真家のアシスタントになる過程が比較的テンポよく書かれているが、そこから今一歩、踏み込んだ青春の苦渋や迷いにまでは達していない。」「「窓辺の席で頬杖をついて左右に揺れながら、うっすらと目を細めると、かすかな眠気と空腹が立ち上がってきた」とは、なんたる駄文。かつてこんな文章を平気で書く作家もいなかったが、また、これを平然とのせる編集者もいなかった。」
林真理子
女57歳
20 「私はどうしても評価出来なかった。」「幼女の性的虐待、レイプ、新興宗教と、小道具が次から次へと出てくる。主人公のキャラクターを設定するのに、これほどたくさんのものが必要であったろうか。愚かさや不幸にこれだけの理由がいるのか、おおいに疑問で、物語世界に入っていけなかった。」
浅田次郎
男59歳
16 「作品としての完成度には疑問を抱いたが、この作者のうちには「小説とはこういうもの」という法律があるようで、その無意識の心構えが、たとえば礼節を弁えた良家の子女のような居ずまいたたずまいのよさを感じさせた。」「おそらく受賞は力に変わると信じて推奨した。」
宮部みゆき
女50歳
40 「真摯に丁寧に描かれているからこそ、ヒロイン・黒江たどる道筋は、創作というより、現実の酷い事象の物語化に留まってしまった感がありました」「この作品で図抜けて凄い創作は、むしろ黒江のお母さんの人間像の方ではないでしょうか。」「主人公の選択を誤ったのではないかという残念な思いが残りました。」
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他の候補作
池井戸潤
『下町ロケット』
高野和明
『ジェノサイド』
辻村深月
『オーダーメイド殺人クラブ』
葉室麟
『恋しぐれ』
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候補者・作品
高野和明男46歳×各選考委員 
『ジェノサイド』
長篇 1251
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
伊集院静
男61歳
31 「候補作の中でどの作品より興奮して読んだ。」「この作品のすぐれた所は散りばめたすべての事象をひとつの点にむかって邁進させた点である。群像を描いた一枚の絵がよくよく個々の表情、姿を眺めるとひとつの点に透視図のように集約されるのに似ている。そのことが或る意味、この作品が、絵画、映像的と指摘された由縁だろう。」
桐野夏生
女59歳
24 「力作である。テーマもディテールも面白かった。」「手に汗握って読んでいるうちに、物語の収束点が見え過ぎてスリルが失われる。新薬は生まれ、新種の生物は助かるだろう、と。彼らがどんな生物なのか、また日本にいる生物はどうなのか、もっと知りたかった。」
宮城谷昌光
男66歳
12 「読了したあと、本を読み終えたというより、アメリカ映画を見終えたという感じに襲われた。」「ことばの存在意義が映像に転位されるのが速すぎる。それによって登場する人と物の一面しか読者は知りえないことになる。」
北方謙三
男63歳
17 「力作にして労作だった。」「スピーディなストーリー展開だけでなく、その中に人の心がしばしば垣間見えるのにも、心を動かされた。ただ、人知を超える存在を小説の核に据えることが、最終的には私には受け入れられず、強く推すに到らなかった。」
阿刀田高
男76歳
24 「前半は胸躍る展開だが、後半は(ひどく複雑なのはストーリーの性質から考えて仕方ないとしても)筋運びが、よくあるパターンへと傾き、――小説というより映画の台本かな――と感じないでもなかった。それにしても詳細で、豊富な情報量を含む作品だ。作者の努力と知識をおおいに称えたい。」
渡辺淳一
男77歳
13 「所詮はストーリーだけに頼るアメリカ映画の二流の脚本止まり。直木賞の巾を広げたい、という一部の人の気持ちもわからぬわけではないが、若者好みのお話だけ。当たり前のことだが、小説は事件ではなく、心の内面を描くものである。」
林真理子
女57歳
28 「映像出身の作家が陥りがちな、ノベライズめいた粗雑さがなく、視覚的なのである。これほど面白い小説に久しぶりに出会った。よく言われる「頭の体力がある」を通り越して、「頭のアスリート」のようなこの小説こそ直木賞にふさわしいと選考会に臨んだのであるが、文学性が低いということで受賞には至らなかった。」「面白いだけの小説に直木賞はふさわしくないが、この小説は面白いだけでなく実もある。この実こそ文学性というものではなかろうか。」
浅田次郎
男59歳
11 「文章表現における真のダイナミズムとは、視覚的効果や華やかなストーリーに求めるものではなく、登場人物の心のうちに展開しなければならないはずである。」
宮部みゆき
女50歳
31 「敢闘賞を差し上げたい。完璧な徹夜本でしたし、こんな豪快な大ボラを楽しんだのは、本当に久しぶりのことです。」「この作品のもっとも素晴らしいところは、インターネットによって一瞬に世界と繋がることができるようになった現代社会でも、真に人間同士を結びつけるのは情報ではなく、人と人とが血の通った手を取り合わなくてはいけないのだというメッセージを放っていることです。」
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他の候補作
池井戸潤
『下町ロケット』
島本理生
『アンダスタンド・メイビー』
辻村深月
『オーダーメイド殺人クラブ』
葉室麟
『恋しぐれ』
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候補者・作品
辻村深月女31歳×各選考委員 
『オーダーメイド殺人クラブ』
長篇 718
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
伊集院静
男61歳
14 「殺人、自死願望をここまで丁寧に描いてあっただけに、殺人をあきらめた章で肩すかしをくった気がした。殺人願望の対極にあるものが前半部で書かれてしかるべきだったのではなかろうか。」
桐野夏生
女59歳
13 「初潮の来ない「少女」のうちに死にたい、美しい死体になりたい。この主人公の気持ちに沿うことができなかった。」「友人グループ内での軋轢など、面白く感じたところもあったが、殺人依頼をする飛躍も呑み込めなかった。」
宮城谷昌光
男66歳
9 「社会的なひろがりを遮断したのであれば、その狭義の小説世界がそうとうな深度をもたなければならないが、そこまではいっていないと感じられた。」
北方謙三
男63歳
7 「事象としてのいじめが連綿として、カタルシスに達しない苛立ちがある。思春期の心情に、普遍性を与えきれなかった、惜しさもあった。」
阿刀田高
男76歳
5 「若いヒロインの心理と行動に私の理解が届かず、感情移入のむつかしい作品のように思われた。」
渡辺淳一
男77歳
13 「なぜこれほど殺人や死の世界にこだわるのか。特殊な異常なものを書かなければ小説にならない、と思い込んでいるとしたら、大きな過ちである。」
林真理子
女57歳
13 「幼さが目立つ。この小説は死体になりたいと願う主人公に読者が共感しなければ成立しない。が、最後まで私はそれを持つことが出来なかった。」「文章の隅々にセンスが光るが、この作品では受賞に至らないであろう。」
浅田次郎
男59歳
12 「残念なことにこちらは自身の前作や前々作を凌駕しているとは言い難い。思春期の通過儀礼である、生と死にまつわる懐疑と憧憬というテーマの重みに、ストーリーが完敗している。」
宮部みゆき
女50歳
44 「ティーンエイジャー視点の青春小説は、辻村さんにとっては既に自家薬籠中のもので、力量のほどは私も充分存じ上げていますので、今回は(申し訳ないですが)最初から少しハードルを上げて選考に臨んだので、一席に推すことができませんでした。個人的には大好きな作品で、忘れがたい場面が多々あります。」
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他の候補作
池井戸潤
『下町ロケット』
島本理生
『アンダスタンド・メイビー』
高野和明
『ジェノサイド』
葉室麟
『恋しぐれ』
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候補者・作品
葉室麟男60歳×各選考委員 
『恋しぐれ』
連作7篇 416
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
伊集院静
男61歳
13 「私は推した。これまでのキャリアも十分に思えたし、蕪村という題材も氏の作品の幅のひろがりに思えた。選考で俳句の扱いに関して安易ではないかと指摘され、佳い導入俳句もある点を強調したが他委員の賛同を得られなかった。」
桐野夏生
女59歳
11 「淡泊な恋の物語で、「ちょっといい話」の連なりである。色気が感じられないのは、女たちがおとなしく、男たちの弱みを炙り出すまでにいかないせいか。」「品はいいが、引き気味である。」
宮城谷昌光
男66歳
46 「底辺に蕪村の俳句が敷かれている。だが、氏の小説における習熟度が高まったせいか、かつてのように、俳句にかこつけて書いた、という感じがうすれている。」「端的にいえば、ひとりよがりではなくなった。べつないいかたをすれば、愛情が社会性をもつようになった。」「そのように氏の進歩を認めることはできても、ほかの作者の作品とくらべてどうか、というところにむずかしさがある。とにかく私は今回の氏の作品に好意をそえたことはたしかである。」
北方謙三
男63歳
9 「悠然と書いているように思えるが、作家年齢を考えれば、もっと大胆な試みに挑んで欲しいという気もした。」「核がどこかぼやけているという気がしてならなかった。」
阿刀田高
男76歳
11 「読者としては俳句の味わいに関心が赴き、小説として……つまり人間を描く作品として少し不足を感じてしまう。それが弱点のように思われた。」
渡辺淳一
男77歳
15 「(引用者注:候補の)五作中、もっとも小説的な雰囲気というか、赴きを備えているが、蕪村という大物俳人をストレートに描こうとしたところが、誤りの発端だった。」「俳人は風景を見て、それをそのまま句に表現するわけでなく、そこから数々の省略や推敲を重ねて、練り直す。この基本を抜かしたところが、作品を軽くご都合主義的なものにしてしまった。」
林真理子
女57歳
13 「この作家の中では決してレベルの高いものと思えないだけに、残念な結果となってしまった。」「唐突に俳句が出てきて、それと物語とを無理に接着させた感があった。出てくる人々が、みな生気がないように思われて仕方ない。」
浅田次郎
男59歳
15 「もともとこの作家の資質は短篇において発揮されるだろうと考えていたのだが、なるほど連作短篇の形式を採った本作品は、まことに鮮かであった。しかし、のっぴきならぬ恋愛劇のわりには、愛憎が不足しているように思えた。」
宮部みゆき
女50歳
29 「葉室さんの筆力と歴史小説の教養を存じ上げているからこそ、惜しまれる作品だったと思います。」「私は読み始めてすぐに、蕪村や応挙や上田秋成が個々の短編でバトンを受け渡しながら主役を務めることで、彼らが互いに互いの生き方や芸術性をどう思っているのかということが立体的に浮き彫りになってゆく、いわば江戸文人の双方向の交友録を描くことで江戸文化の核に迫ろうという仕掛けの短編集だと思ってしまったのです。」
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他の候補作
池井戸潤
『下町ロケット』
島本理生
『アンダスタンド・メイビー』
高野和明
『ジェノサイド』
辻村深月
『オーダーメイド殺人クラブ』
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