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平成28年/2016年下半期
(平成29年/2017年1月19日決定発表/『オール讀物』平成29年/2017年3月号選評掲載)
選考委員  浅田次郎
男65歳
宮城谷昌光
男71歳
宮部みゆき
女56歳
北方謙三
男69歳
高村薫
女63歳
林真理子
女62歳
東野圭吾
男58歳
桐野夏生
女65歳
伊集院静
男66歳
選評総行数  96 114 157 100 103 92 142 95 118
候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数
恩田陸 『蜜蜂と遠雷』
1142
女52歳
28 35 23 20 32 43 30 24 22
冲方丁 『十二人の死にたい子どもたち』
721
男39歳
10 29 30 12 11 9 32 16 13
垣根涼介 『室町無頼』
1015
男50歳
14 19 44 22 14 15 37 20 42
須賀しのぶ 『また、桜の国で』
974
女44歳
24 14 31 27 24 15 20 22 26
森見登美彦 『夜行』
426
男38歳
20 17 25 15 10 10 23 13 19
                 
年齢/枚数の説明   見方・注意点

このページの選評出典:『オール讀物』平成29年/2017年3月号
1行当たりの文字数:12字


選考委員
浅田次郎男65歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
比類なき想像力、あるいは恩田陸の正しい読み方 総行数96 (1行=12字)
候補 評価 行数 評言
恩田陸
女52歳
28 「作者ならではの想像力が遺憾なく発揮された大作であった。この作家の作品には一読者として長く親しんでいるが、読み方には少々コツが要る。」「(引用者注:この作家は)作品の出来栄えも、溢れ出る想像力を物語として包みこめるかどうか、制御できるかどうかという、作者自身の精神力にかかっていると思われる。いわば才能のコントロールとでもいうべき、困難な作業である。すなわち作者は本作において、非凡の才ゆえに強いられる困難を克服した。」
冲方丁
男39歳
10 「そもそも小説のデザインに無理があったように思えた。作品以上の実力を持つ作者には、おそらく別の意図があったはずなのだが、だとすると本作が候補に上ったこと自体が果報とは言えなかったのではあるまいか。」
垣根涼介
男50歳
14 「遊女と無頼漢たちとの描写に感心した。」「人間が虚栄の衣を脱ぎ捨てて生身になればなるほど、物語の運びも文章も垢抜けてくる。そのあたりを作品の主題に据えれば、今すぐにでも傑作が生まれるような気がする。」
須賀しのぶ
女44歳
24 「まさに瞠目する作品であった。」「少しでも感情に流されれば必ず破綻する内容であるにもかかわらず、常に冷静であるのは歴史を知悉しているからである。」「しかしながら、こうした深い造詣は小説家にとって両刃の剣で、史実と虚構の均衡を保つことが難しい。たいそう高等な課題ではあるが、受賞に至らなかった最大の理由はそれであろう。」
森見登美彦
男38歳
20 「シンプルで正確な文章を駆使して、一種の古典的な小説世界の構築に成功していた。」「しかるに、小説家は常住不断の肉体労働者であるから、本作はいかにも膂力に欠くるの観を否めぬ。しいて言うならば、豊かな海が岬の向こうに豁けているにもかかわらず、目の前の入江を海だと信じている。小舟を漕ぎ出すわずかな勇気さえあればよいのである。」
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他の選考委員
宮城谷昌光
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桐野夏生
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選考委員
宮城谷昌光男71歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
作品の力 総行数114 (1行=12字)
候補 評価 行数 評言
恩田陸
女52歳
35 「(引用者注:これまで)氏の候補作品が手もとにとどけられるたびに、他の候補作品とはちがう俎を用意しなければならなかった。おなじ俎上に乗らないわけは、作品そのものが比較されることを拒絶していたからである。」「ところが今回の『蜜蜂と遠雷』を読みはじめるとすぐに、ようやくおなじ俎上に乗った、と安心した。これは氏の許容量が大きくなったあかしであろう。」「氏の作曲家論や音楽作品論について、読書中に、異論をとなえたり反駁したりしたが、あとで考えてみれば、そういうことばを誘発させるほど作品に力があったということであろう。」
冲方丁
男39歳
29 「問題作である。特別な空間を設定しておいて、社会的夾雑物を排除してしまおうとする手法は、わからぬでもないが、整理がよすぎると小説が冷えるという弊害が生ずる。」「ほとんどの読者には、そこが非現実の空間であることが、わかりすぎるほどわかってしまうのではないか。そういう認識をもって作者は、シェイクスピアのように、詩的にあるいは哲学的に遊んでしまったほうがよかったのではないか。」
垣根涼介
男50歳
19 「じつのところ、主人公とおもわれる若い才蔵とともに感情を併走させてゆくうちは、快適な読書であったが、遊女の芳王子についての記述が濃厚になると、主題を見失った感じになり、快適さも失われた。あらたな主題さがしと物語の整合性を求めるのがめんどうになったのは、私だけであろうか。」
須賀しのぶ
女44歳
14 「最初の設定がいかにも都合のよすぎる点が、ひっかかったが、いちおうリアリティをもたせることに成功している。ただし、歴史が重く、人物は軽い。知識の豊富な人の瑕瑾である。」
森見登美彦
男38歳
17 「最後に、陰画が陽画に変わるようなしかけがほどこされている。だが、それは小細工にすぎないであろう。私は氏の作品を読みながら、この人は奇をてらわずに正攻法で読み手を圧倒するものが書けるはずだとおもった。小手先にこだわっていると、歳月はおどろくべき速さですぎてゆくので、才能の浪費になりかねない。」
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浅田次郎
宮部みゆき
北方謙三
高村薫
林真理子
東野圭吾
桐野夏生
伊集院静
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選考委員
宮部みゆき女56歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
力作揃い 総行数157 (1行=12字)
候補 評価 行数 評言
恩田陸
女52歳
23 「実は、私は「インターミッション」まで読んだところでインフルエンザで寝込んでしまいました。何とか体調が戻ってまた読み始めた際、そこまでの話の流れや登場人物たちのキャラクターが細部まで心に焼きついていたので、まったく中断の影響を感じませんでした。その時点で、この作品の受賞を確信しました。」
冲方丁
男39歳
30 「謎解きミステリの部分をなくし、ティーンエイジャーたちの「命をめぐる討論小説」に徹した方が、冲方丁さんが彼らの言葉を通して語りたかった想いがくっきりしたのではないでしょうか。加えて、彼らに固有の名前は必要なかったのではないかとも思います。」「ちょっと深読みし、読み違いもしているかもしれませんが、私には触発されるところの多い作品でした。」
垣根涼介
男50歳
44 「本作は、「土一揆」という史実を土台としています。でも、物語の主人公たちは傭兵と武芸者にほぼ限られています。本来はここに「土」の視点、「土」の生きざま、「土」の希望と命が描かれるべきではなかったか。」「「戦ったのも敗れたのも武芸者ではない。土に生き土に死んでゆく者たちなのだ」というコードが鳴り響くべきではなかったのか。せっかく「土一揆」を素材して選んだ以上、そのコードを聴きたかったから私はもやもやしたのだ、と覚りました。」
須賀しのぶ
女44歳
31 「(引用者注:主人公の)棚倉慎は正義と平和を希求する素晴らしい人物ですが、でも生身の人間なのですから、どこかに自己保身の欲求や怯懦もあったはずで、「清く正しく美しい」主人公であるためにそうした弱さを排除されてしまったことが、かえって彼の物語的リアリティを削いでしまった気がします。とはいえ須賀しのぶさんの筆力と、付け焼き刃ではない歴史的知識には敬服するしかありません。」
森見登美彦
男38歳
25 「基本的にこぢんまりした「お話の会」の器に、SF的に大きなパラレルワールドを押し込み、一話ごとに不吉で鮮烈な幻想場面を惜しげなく盛り込んだことで、具が多すぎる鍋物みたいに生煮えの部分が出てきてしまいました。私は選評でよくこの表現を使いますが、「もったいない!」。」「それと、この上品な幻想小説にこの装丁は合わないと感じました。」
  「今回の候補作は、それぞれの著者の個性と「この作品で何を書きたいか」という意思が明確に表れている力作揃いでした。」
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北方謙三
高村薫
林真理子
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選考委員
北方謙三男69歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
言葉は小説の命か 総行数100 (1行=12字)
候補 評価 行数 評言
恩田陸
女52歳
20 「意味を把握する暇もないほど、言葉が畳みかけられてくる。音楽を小説の中で表現するのは至難であろうが、言葉の洪水の中でそれがなし得ているというのは、新鮮な驚きでもあった。」「愚直なほどに、ピアノコンクールのことだけが書き連ねられているのだと、改めて思い返し、小説は事件を書けばいいものではない、と強く自戒した。」
冲方丁
男39歳
12 「頭で考え、会話で進行させた作品だろう。十二人がほんとうに死にたがっているのかどうかも、途中で曖昧になる。ミステリー仕立ての鍵になる、すでに死んでいる十三人目が、実は生きていたりして、私は戸惑った。」
垣根涼介
男50歳
22 「比較的自由がある民衆叛乱の土一揆は、人の姿が際立つはずで、私はそれを読みたかった。」「才蔵という青年の造形がどこか生硬で、作者の意図からはみ出すほど破天荒ではなく、窮屈な感じがしてもの足りなかった。しかし、力強い小説であった。民衆の側から、国の乱れを照射しようという志が感じられ、それも嬉しかった。」
須賀しのぶ
女44歳
27 「鮮やかなものが間違いなく浮かびあがってくる、力作であった。ただ、大使館に集まる情報であるがゆえに、俯瞰性と客観性を持ち、逆に劇的要素が薄くなった、という気もした。」「特権をふり捨てての実戦への参加は、ロマンティシズムであり、そのあたりから、小説の迫真力はさらに薄くなった、と私は思った。」
森見登美彦
男38歳
15 「表と裏、光と影があって、世界が二重になっているという設定だったが、私にはうまく入ってこなかった。」「最後に、裏から表に出て、また裏に帰るあたりで、いくらか心が騒いだが、それだけだった。」
  「候補作を読む順番をどうするか迷い、結局は積みあげられた通りに手にとった。毎回のことである。」
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他の選考委員
浅田次郎
宮城谷昌光
宮部みゆき
高村薫
林真理子
東野圭吾
桐野夏生
伊集院静
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選考委員
高村薫女63歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
選評 総行数103 (1行=12字)
候補 評価 行数 評言
恩田陸
女52歳
32 「登場人物に人間の深みがない点で不満が残った。」「(引用者注:天才とは)十分に言語化できないということであり、だからこそ天才の姿を描くのは困難なのだが、作者はそのことに悩んだ形跡がない。」「また、数十曲もの楽曲とその演奏を言語化する困難にも、作者は力業で挑んでいるが、どんなに大量の比喩が重ねられても、そこから音楽は立ち上がってこなかった。これは端的に、言葉の連なりが音楽の響きをもってくるような文章には仕上がっていないということだろう。」
冲方丁
男39歳
11 「新本格の謎解きゲームなので、子どもたちの死にたい理由や行動原理にはリアリティがなくてもよいが、死者が実は生きていたことなど、肝心の仕掛けに無理があり、緩すぎる。」
垣根涼介
男50歳
14 「歴史小説というより一種の剣豪小説として面白く読んだ。もっとも、兵法者の活劇は文句なしに活き活きしているが、主人公の若者があまりに屈託がなさすぎて、凄惨な殺し合いに生きる人間が立ち上がってこない。」
須賀しのぶ
女44歳
24 「時代背景についての作者の造詣がうまく小説に結実していると思う。しかしながら、ロシア人との混血である主人公の獲得した祖国日本のアイデンティティが「武士道」「礼節」「桜」では、さすがに興ざめする。」「歴史上の出来事に登場人物を適宜当てはめてゆくのではなく、逆に個々の人間を通してある時代の姿が見えてくるように書くのが、小説というものではないかと思う。」
森見登美彦
男38歳
10 「怪奇小説なので、人間の手触りなどは求めないが、怪談は怪談なりに仕掛けの整合性が欠かせない。思いつきで繰り出した異界の仕掛けがあちこちで放置されたままになっており、描きかけの習作を見せられているようだった。」
  「小説には、人間を描くものと、そうではないものがある。前者は恋愛小説、歴史小説、警察小説、冒険小説など幅広いが、素材が何であれ、最終的に人間が立ち上がってきて初めて小説になる。一方、後者は新本格、幻想・怪奇小説などだが、人間はチェスの駒でよい代りに、仕掛けの成否が問われる。」
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他の選考委員
浅田次郎
宮城谷昌光
宮部みゆき
北方謙三
林真理子
東野圭吾
桐野夏生
伊集院静
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選考委員
林真理子女62歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
堂々たる具象 総行数92 (1行=12字)
候補 評価 行数 評言
恩田陸
女52歳
43 「今回の受賞作は文句なしに「蜜蜂と遠雷」だなと思いつつ審査にのぞんだ。」「今回は堂々たる具象画である。よくこれだけ描き切ったと感嘆してしまう。ピアノのコンテストが主題であるから、複数のピアニストがそれぞれ複数の曲を弾く。しかし同じ描写がまるでないのである。これは本当にすごいことだ。」「これだけの人気作家にとっての何回かの候補は、不本意に感じたこともあったかもしれない。しかし今回このような傑作で直木賞をおとりになったのだ。「つらいから」という理由で、数回めの候補を降りる若い作家は、ぜひ恩田さんを見習ってほしい。」
冲方丁
男39歳
9 「最初から結末がわかるというのがつらいところであろう。後半の推理は退屈であった。」
垣根涼介
男50歳
15 「現代的な会話もリズミカルでぐいぐいひき込まれるのであるが、残念なのは修業のシーンがハイライトであるということだ。これに比べると後半がぐっと弱くなってくる。」「ヒロインの遊女、芳王子がとても魅力的である。」
須賀しのぶ
女44歳
15 「きっちり書き込んで読者を飽きさせない筆力は素晴らしいものがあるが、日本人がどうして最後までポーランドと運命を共にするかが心にしみてこない。彼は日本の外務省に勤める立場なのだ。しかし、よい小説を読んだという手ごたえはずっと残った。」
森見登美彦
男38歳
10 「読者は読んでいるうちに時々迷路にはまってしまう。それが狙いかもしれないが、このはかなさ、ふわふわとした感触は、他の候補作の力強さに負けてしまう。やはり抽象画の世界なのである。」
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他の選考委員
浅田次郎
宮城谷昌光
宮部みゆき
北方謙三
高村薫
東野圭吾
桐野夏生
伊集院静
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選考委員
東野圭吾男58歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
選評 総行数142 (1行=12字)
候補 評価 行数 評言
恩田陸
女52歳
30 「△をつけた。」「最も不満だったのは、誰ひとり壁にぶちあたることもなければ挫折もしない点だ。」「総じてあまりにも仕掛けが乏しく、ストーリーに山も谷もない印象だ。」「しかし私は本作を強く推した。音楽を文章で表現するのは難しいが、作者はありとあらゆる手を使い、いたるところから言葉をかき集め、その素晴らしさを伝えようとしている。それがこの小説の読みどころであり、作者の挑戦だと解釈した。」
冲方丁
男39歳
32 「(引用者注:登場人物たちの)話し合いのテーマは、期待したほど深遠なものでも、デリケートなものでもなかった。子供たちが面白いことをいっていないわけではない。たとえば、「癌もヘルペスも病気には変わりない。何が違うのか」というテーマでもいいし、「母親はどこまで子供を自分のものとして扱っていいか」でもいい。せっかくの設定を生かしていないと感じた。」「リアリティを損なう瑕瑾もあった。この施設に常駐している者が一人もいないというのはあり得ないだろう。「ゼロ番」の少年に関しても、医学的におかしい。」
垣根涼介
男50歳
37 「今回、私の○は『室町無頼』だった。才蔵なる若者が無茶な修行を強いられる場面までは抜群に面白かった。蓮田とのやりとりは『スター・ウォーズ』のジェダイと弟子のようだし、棒術の師匠はまさにヨーダで、和製『スター・ウォーズ』を狙ったのではないかと本気で考えた。」「ただしそこから先の展開は、やや生真面目すぎた感がある。」「もしも最初の投票で本作が多くの支持を集めたなら、『蜜蜂と遠雷』との二作授賞を主張しようと考えていた。だが残念ながらそうはならなかったので、強く推すのをやめた。恩田さんと同時受賞となれば、きっと垣根さんが割を食うと思ったからだ。」
須賀しのぶ
女44歳
20 「前半は、教育番組のように登場人物たちが歴史や国についての説明を延々と交わすので辛かった。」「主人公は歴史を語るために配されたルポライターで、不自然な行動のいくつかは、作者の都合によるもののように感じた。主人公の行為が、さほど大きなことでも崇高なことでもないように思え、部外者がこれほどまでに存在感を発揮できるだろうか、という疑問も残った。」
森見登美彦
男38歳
23 「私の苦手なジャンルの小説だ。」「おそらく合理性を求めるのは野暮で、作者の描く風景が好きか嫌いかという問題だろうが、私は最後まで疑問がいくつも頭に残ったままになる読書は、あまり好きではない。しかし文学性という点でほかの委員が高評価をつけるなら、反対はしないつもりだった。」
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選考委員
桐野夏生女65歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
選評 総行数95 (1行=12字)
候補 評価 行数 評言
恩田陸
女52歳
24 「長尺にも拘らず、一気に読めるのは作者の筆力故であろう。特に興味深かったのは、嵯峨三枝子とシルヴァーバーグら、コンクールの審査員側の関係と心理である。」「なぜに、最終審査があの順位になるのか、選ぶ側の思惑をもっと知りたかった。でなければ、天才とは何か、またコンクールとは何のためにやるのか、はたまた人間にとって音楽とは何か、という大きな謎に迫れない。」
冲方丁
男39歳
16 「全員の意見が一致しないと集団自殺できない、というシチュエーションが呑み込めないと、何のために何度も決を採るのかが伝わらない。また、子供たちそれぞれの「死にたい」動機が弱く、書き分けも今ひとつだ。」
垣根涼介
男50歳
20 「痛快な物語として、楽しく読んだ。特に、才蔵が六尺棒の訓練を受けるディテールに冴えがある。」「しかし、男性登場人物に陰影が足りないように思う。そのため、室町時代の「無明」さが読者に伝わらず、後半の一揆場面でも盛り上がらない。」
須賀しのぶ
女44歳
22 「日本の大使館員がポーランドのために闘うという設定にリアリティがあるのかと問われれば、おそらくないに違いない。」「ヤン、パーカーらの人物描写がうまくいってるとは言い難いし、政治状況もざっくりしたダイジェスト版に感じられる。とはいえ、人間の本当の居場所は国家とは関係がないということが、真摯に伝わる。力作だ。」
森見登美彦
男38歳
13 「十年前の女性の失踪という始まりに期待を持ったが、悪い夢のとりとめのなさが、やや単調に感じられる。特に、重要なアイテムとなっている岸田の銅版画の描写が、それぞれを夜の世界に閉じ込めるほど魅力的には書かれていない。」
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選考委員
伊集院静男66歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
小説の切り札 総行数118 (1行=12字)
候補 評価 行数 評言
恩田陸
女52歳
22 「私にはこれが、たとえ登場人物の大半が若者、子供のような年齢であれ、人間が描かれているのだろうかと感じた。そうだ、こんな感情もあり得るな、と人物設定の枠からはみ出して行く、小説本来の面白味に疑問を抱いた。予定調和の物語を読んでいるようで、氏の持つ小説世界とは別のものに感じられた。しかし十分に読みごたえもあるし、受賞にかなうものだった。」
冲方丁
男39歳
13 「私には作者が何を書き、読み手がこの作品のどこに興味を抱き、小説の力を感じてよいのか、正直、混乱してしまった。」「作者が意図するものに重きを置き過ぎたのではないかと思えた。」
垣根涼介
男50歳
42 「今回の候補作の中でもっとも読みごたえのあった作品」「文章も安定していたし、テンポのある文体はエンタティメントの必須条件にかなっていた。」「何より登場人物に魅力があり、主人公の才蔵をはじめ、道賢、兵衛、芳王子等がまことによく描き分けられて、氏が以前より、その力量を上げられているのと、元々持ち合わせていた才能が本作品で花開いたと思えた。」「強く推したが支持して下さる委員の数がわずかに足らなかった。」
須賀しのぶ
女44歳
26 「第二次大戦以前からあった日本とポーランドの繋りに注目して、ひとつの作品世界を書き上げた作者の目の良さにまず好感を抱いた。」「息切れすることもなくラストシーンまで突っ走った意欲には爽快感さえ感じられた。その速度のせいもあるのだろうが、小説の構成として作者が何を一番伝えたかったのかがはっきりとしなかった。」
森見登美彦
男38歳
19 「私には幻想世界とは別に、このシーンは好きだなと思える文節がいくつかあって、その才能に感心した。しかし小説全体を通して、いかなるものを自分がこの作品から見つけられたか、出逢えたのか、を読後に思い起こそうとしたが、私には見つけることができなかった。」
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宮城谷昌光
宮部みゆき
北方謙三
高村薫
林真理子
東野圭吾
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受賞者・作品
恩田陸女52歳×各選考委員 
『蜜蜂と遠雷』
長篇 1142
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
浅田次郎
男65歳
28 「作者ならではの想像力が遺憾なく発揮された大作であった。この作家の作品には一読者として長く親しんでいるが、読み方には少々コツが要る。」「(引用者注:この作家は)作品の出来栄えも、溢れ出る想像力を物語として包みこめるかどうか、制御できるかどうかという、作者自身の精神力にかかっていると思われる。いわば才能のコントロールとでもいうべき、困難な作業である。すなわち作者は本作において、非凡の才ゆえに強いられる困難を克服した。」
宮城谷昌光
男71歳
35 「(引用者注:これまで)氏の候補作品が手もとにとどけられるたびに、他の候補作品とはちがう俎を用意しなければならなかった。おなじ俎上に乗らないわけは、作品そのものが比較されることを拒絶していたからである。」「ところが今回の『蜜蜂と遠雷』を読みはじめるとすぐに、ようやくおなじ俎上に乗った、と安心した。これは氏の許容量が大きくなったあかしであろう。」「氏の作曲家論や音楽作品論について、読書中に、異論をとなえたり反駁したりしたが、あとで考えてみれば、そういうことばを誘発させるほど作品に力があったということであろう。」
宮部みゆき
女56歳
23 「実は、私は「インターミッション」まで読んだところでインフルエンザで寝込んでしまいました。何とか体調が戻ってまた読み始めた際、そこまでの話の流れや登場人物たちのキャラクターが細部まで心に焼きついていたので、まったく中断の影響を感じませんでした。その時点で、この作品の受賞を確信しました。」
北方謙三
男69歳
20 「意味を把握する暇もないほど、言葉が畳みかけられてくる。音楽を小説の中で表現するのは至難であろうが、言葉の洪水の中でそれがなし得ているというのは、新鮮な驚きでもあった。」「愚直なほどに、ピアノコンクールのことだけが書き連ねられているのだと、改めて思い返し、小説は事件を書けばいいものではない、と強く自戒した。」
高村薫
女63歳
32 「登場人物に人間の深みがない点で不満が残った。」「(引用者注:天才とは)十分に言語化できないということであり、だからこそ天才の姿を描くのは困難なのだが、作者はそのことに悩んだ形跡がない。」「また、数十曲もの楽曲とその演奏を言語化する困難にも、作者は力業で挑んでいるが、どんなに大量の比喩が重ねられても、そこから音楽は立ち上がってこなかった。これは端的に、言葉の連なりが音楽の響きをもってくるような文章には仕上がっていないということだろう。」
林真理子
女62歳
43 「今回の受賞作は文句なしに「蜜蜂と遠雷」だなと思いつつ審査にのぞんだ。」「今回は堂々たる具象画である。よくこれだけ描き切ったと感嘆してしまう。ピアノのコンテストが主題であるから、複数のピアニストがそれぞれ複数の曲を弾く。しかし同じ描写がまるでないのである。これは本当にすごいことだ。」「これだけの人気作家にとっての何回かの候補は、不本意に感じたこともあったかもしれない。しかし今回このような傑作で直木賞をおとりになったのだ。「つらいから」という理由で、数回めの候補を降りる若い作家は、ぜひ恩田さんを見習ってほしい。」
東野圭吾
男58歳
30 「△をつけた。」「最も不満だったのは、誰ひとり壁にぶちあたることもなければ挫折もしない点だ。」「総じてあまりにも仕掛けが乏しく、ストーリーに山も谷もない印象だ。」「しかし私は本作を強く推した。音楽を文章で表現するのは難しいが、作者はありとあらゆる手を使い、いたるところから言葉をかき集め、その素晴らしさを伝えようとしている。それがこの小説の読みどころであり、作者の挑戦だと解釈した。」
桐野夏生
女65歳
24 「長尺にも拘らず、一気に読めるのは作者の筆力故であろう。特に興味深かったのは、嵯峨三枝子とシルヴァーバーグら、コンクールの審査員側の関係と心理である。」「なぜに、最終審査があの順位になるのか、選ぶ側の思惑をもっと知りたかった。でなければ、天才とは何か、またコンクールとは何のためにやるのか、はたまた人間にとって音楽とは何か、という大きな謎に迫れない。」
伊集院静
男66歳
22 「私にはこれが、たとえ登場人物の大半が若者、子供のような年齢であれ、人間が描かれているのだろうかと感じた。そうだ、こんな感情もあり得るな、と人物設定の枠からはみ出して行く、小説本来の面白味に疑問を抱いた。予定調和の物語を読んでいるようで、氏の持つ小説世界とは別のものに感じられた。しかし十分に読みごたえもあるし、受賞にかなうものだった。」
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他の候補作
冲方丁
『十二人の死にたい子どもたち』
垣根涼介
『室町無頼』
須賀しのぶ
『また、桜の国で』
森見登美彦
『夜行』
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候補者・作品
冲方丁男39歳×各選考委員 
『十二人の死にたい子どもたち』
長篇 721
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
浅田次郎
男65歳
10 「そもそも小説のデザインに無理があったように思えた。作品以上の実力を持つ作者には、おそらく別の意図があったはずなのだが、だとすると本作が候補に上ったこと自体が果報とは言えなかったのではあるまいか。」
宮城谷昌光
男71歳
29 「問題作である。特別な空間を設定しておいて、社会的夾雑物を排除してしまおうとする手法は、わからぬでもないが、整理がよすぎると小説が冷えるという弊害が生ずる。」「ほとんどの読者には、そこが非現実の空間であることが、わかりすぎるほどわかってしまうのではないか。そういう認識をもって作者は、シェイクスピアのように、詩的にあるいは哲学的に遊んでしまったほうがよかったのではないか。」
宮部みゆき
女56歳
30 「謎解きミステリの部分をなくし、ティーンエイジャーたちの「命をめぐる討論小説」に徹した方が、冲方丁さんが彼らの言葉を通して語りたかった想いがくっきりしたのではないでしょうか。加えて、彼らに固有の名前は必要なかったのではないかとも思います。」「ちょっと深読みし、読み違いもしているかもしれませんが、私には触発されるところの多い作品でした。」
北方謙三
男69歳
12 「頭で考え、会話で進行させた作品だろう。十二人がほんとうに死にたがっているのかどうかも、途中で曖昧になる。ミステリー仕立ての鍵になる、すでに死んでいる十三人目が、実は生きていたりして、私は戸惑った。」
高村薫
女63歳
11 「新本格の謎解きゲームなので、子どもたちの死にたい理由や行動原理にはリアリティがなくてもよいが、死者が実は生きていたことなど、肝心の仕掛けに無理があり、緩すぎる。」
林真理子
女62歳
9 「最初から結末がわかるというのがつらいところであろう。後半の推理は退屈であった。」
東野圭吾
男58歳
32 「(引用者注:登場人物たちの)話し合いのテーマは、期待したほど深遠なものでも、デリケートなものでもなかった。子供たちが面白いことをいっていないわけではない。たとえば、「癌もヘルペスも病気には変わりない。何が違うのか」というテーマでもいいし、「母親はどこまで子供を自分のものとして扱っていいか」でもいい。せっかくの設定を生かしていないと感じた。」「リアリティを損なう瑕瑾もあった。この施設に常駐している者が一人もいないというのはあり得ないだろう。「ゼロ番」の少年に関しても、医学的におかしい。」
桐野夏生
女65歳
16 「全員の意見が一致しないと集団自殺できない、というシチュエーションが呑み込めないと、何のために何度も決を採るのかが伝わらない。また、子供たちそれぞれの「死にたい」動機が弱く、書き分けも今ひとつだ。」
伊集院静
男66歳
13 「私には作者が何を書き、読み手がこの作品のどこに興味を抱き、小説の力を感じてよいのか、正直、混乱してしまった。」「作者が意図するものに重きを置き過ぎたのではないかと思えた。」
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他の候補作
恩田陸
『蜜蜂と遠雷』
垣根涼介
『室町無頼』
須賀しのぶ
『また、桜の国で』
森見登美彦
『夜行』
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候補者・作品
垣根涼介男50歳×各選考委員 
『室町無頼』
長篇 1015
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
浅田次郎
男65歳
14 「遊女と無頼漢たちとの描写に感心した。」「人間が虚栄の衣を脱ぎ捨てて生身になればなるほど、物語の運びも文章も垢抜けてくる。そのあたりを作品の主題に据えれば、今すぐにでも傑作が生まれるような気がする。」
宮城谷昌光
男71歳
19 「じつのところ、主人公とおもわれる若い才蔵とともに感情を併走させてゆくうちは、快適な読書であったが、遊女の芳王子についての記述が濃厚になると、主題を見失った感じになり、快適さも失われた。あらたな主題さがしと物語の整合性を求めるのがめんどうになったのは、私だけであろうか。」
宮部みゆき
女56歳
44 「本作は、「土一揆」という史実を土台としています。でも、物語の主人公たちは傭兵と武芸者にほぼ限られています。本来はここに「土」の視点、「土」の生きざま、「土」の希望と命が描かれるべきではなかったか。」「「戦ったのも敗れたのも武芸者ではない。土に生き土に死んでゆく者たちなのだ」というコードが鳴り響くべきではなかったのか。せっかく「土一揆」を素材して選んだ以上、そのコードを聴きたかったから私はもやもやしたのだ、と覚りました。」
北方謙三
男69歳
22 「比較的自由がある民衆叛乱の土一揆は、人の姿が際立つはずで、私はそれを読みたかった。」「才蔵という青年の造形がどこか生硬で、作者の意図からはみ出すほど破天荒ではなく、窮屈な感じがしてもの足りなかった。しかし、力強い小説であった。民衆の側から、国の乱れを照射しようという志が感じられ、それも嬉しかった。」
高村薫
女63歳
14 「歴史小説というより一種の剣豪小説として面白く読んだ。もっとも、兵法者の活劇は文句なしに活き活きしているが、主人公の若者があまりに屈託がなさすぎて、凄惨な殺し合いに生きる人間が立ち上がってこない。」
林真理子
女62歳
15 「現代的な会話もリズミカルでぐいぐいひき込まれるのであるが、残念なのは修業のシーンがハイライトであるということだ。これに比べると後半がぐっと弱くなってくる。」「ヒロインの遊女、芳王子がとても魅力的である。」
東野圭吾
男58歳
37 「今回、私の○は『室町無頼』だった。才蔵なる若者が無茶な修行を強いられる場面までは抜群に面白かった。蓮田とのやりとりは『スター・ウォーズ』のジェダイと弟子のようだし、棒術の師匠はまさにヨーダで、和製『スター・ウォーズ』を狙ったのではないかと本気で考えた。」「ただしそこから先の展開は、やや生真面目すぎた感がある。」「もしも最初の投票で本作が多くの支持を集めたなら、『蜜蜂と遠雷』との二作授賞を主張しようと考えていた。だが残念ながらそうはならなかったので、強く推すのをやめた。恩田さんと同時受賞となれば、きっと垣根さんが割を食うと思ったからだ。」
桐野夏生
女65歳
20 「痛快な物語として、楽しく読んだ。特に、才蔵が六尺棒の訓練を受けるディテールに冴えがある。」「しかし、男性登場人物に陰影が足りないように思う。そのため、室町時代の「無明」さが読者に伝わらず、後半の一揆場面でも盛り上がらない。」
伊集院静
男66歳
42 「今回の候補作の中でもっとも読みごたえのあった作品」「文章も安定していたし、テンポのある文体はエンタティメントの必須条件にかなっていた。」「何より登場人物に魅力があり、主人公の才蔵をはじめ、道賢、兵衛、芳王子等がまことによく描き分けられて、氏が以前より、その力量を上げられているのと、元々持ち合わせていた才能が本作品で花開いたと思えた。」「強く推したが支持して下さる委員の数がわずかに足らなかった。」
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他の候補作
恩田陸
『蜜蜂と遠雷』
冲方丁
『十二人の死にたい子どもたち』
須賀しのぶ
『また、桜の国で』
森見登美彦
『夜行』
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候補者・作品
須賀しのぶ女44歳×各選考委員 
『また、桜の国で』
長篇 974
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
浅田次郎
男65歳
24 「まさに瞠目する作品であった。」「少しでも感情に流されれば必ず破綻する内容であるにもかかわらず、常に冷静であるのは歴史を知悉しているからである。」「しかしながら、こうした深い造詣は小説家にとって両刃の剣で、史実と虚構の均衡を保つことが難しい。たいそう高等な課題ではあるが、受賞に至らなかった最大の理由はそれであろう。」
宮城谷昌光
男71歳
14 「最初の設定がいかにも都合のよすぎる点が、ひっかかったが、いちおうリアリティをもたせることに成功している。ただし、歴史が重く、人物は軽い。知識の豊富な人の瑕瑾である。」
宮部みゆき
女56歳
31 「(引用者注:主人公の)棚倉慎は正義と平和を希求する素晴らしい人物ですが、でも生身の人間なのですから、どこかに自己保身の欲求や怯懦もあったはずで、「清く正しく美しい」主人公であるためにそうした弱さを排除されてしまったことが、かえって彼の物語的リアリティを削いでしまった気がします。とはいえ須賀しのぶさんの筆力と、付け焼き刃ではない歴史的知識には敬服するしかありません。」
北方謙三
男69歳
27 「鮮やかなものが間違いなく浮かびあがってくる、力作であった。ただ、大使館に集まる情報であるがゆえに、俯瞰性と客観性を持ち、逆に劇的要素が薄くなった、という気もした。」「特権をふり捨てての実戦への参加は、ロマンティシズムであり、そのあたりから、小説の迫真力はさらに薄くなった、と私は思った。」
高村薫
女63歳
24 「時代背景についての作者の造詣がうまく小説に結実していると思う。しかしながら、ロシア人との混血である主人公の獲得した祖国日本のアイデンティティが「武士道」「礼節」「桜」では、さすがに興ざめする。」「歴史上の出来事に登場人物を適宜当てはめてゆくのではなく、逆に個々の人間を通してある時代の姿が見えてくるように書くのが、小説というものではないかと思う。」
林真理子
女62歳
15 「きっちり書き込んで読者を飽きさせない筆力は素晴らしいものがあるが、日本人がどうして最後までポーランドと運命を共にするかが心にしみてこない。彼は日本の外務省に勤める立場なのだ。しかし、よい小説を読んだという手ごたえはずっと残った。」
東野圭吾
男58歳
20 「前半は、教育番組のように登場人物たちが歴史や国についての説明を延々と交わすので辛かった。」「主人公は歴史を語るために配されたルポライターで、不自然な行動のいくつかは、作者の都合によるもののように感じた。主人公の行為が、さほど大きなことでも崇高なことでもないように思え、部外者がこれほどまでに存在感を発揮できるだろうか、という疑問も残った。」
桐野夏生
女65歳
22 「日本の大使館員がポーランドのために闘うという設定にリアリティがあるのかと問われれば、おそらくないに違いない。」「ヤン、パーカーらの人物描写がうまくいってるとは言い難いし、政治状況もざっくりしたダイジェスト版に感じられる。とはいえ、人間の本当の居場所は国家とは関係がないということが、真摯に伝わる。力作だ。」
伊集院静
男66歳
26 「第二次大戦以前からあった日本とポーランドの繋りに注目して、ひとつの作品世界を書き上げた作者の目の良さにまず好感を抱いた。」「息切れすることもなくラストシーンまで突っ走った意欲には爽快感さえ感じられた。その速度のせいもあるのだろうが、小説の構成として作者が何を一番伝えたかったのかがはっきりとしなかった。」
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他の候補作
恩田陸
『蜜蜂と遠雷』
冲方丁
『十二人の死にたい子どもたち』
垣根涼介
『室町無頼』
森見登美彦
『夜行』
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候補者・作品
森見登美彦男38歳×各選考委員 
『夜行』
連作長篇 426
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
浅田次郎
男65歳
20 「シンプルで正確な文章を駆使して、一種の古典的な小説世界の構築に成功していた。」「しかるに、小説家は常住不断の肉体労働者であるから、本作はいかにも膂力に欠くるの観を否めぬ。しいて言うならば、豊かな海が岬の向こうに豁けているにもかかわらず、目の前の入江を海だと信じている。小舟を漕ぎ出すわずかな勇気さえあればよいのである。」
宮城谷昌光
男71歳
17 「最後に、陰画が陽画に変わるようなしかけがほどこされている。だが、それは小細工にすぎないであろう。私は氏の作品を読みながら、この人は奇をてらわずに正攻法で読み手を圧倒するものが書けるはずだとおもった。小手先にこだわっていると、歳月はおどろくべき速さですぎてゆくので、才能の浪費になりかねない。」
宮部みゆき
女56歳
25 「基本的にこぢんまりした「お話の会」の器に、SF的に大きなパラレルワールドを押し込み、一話ごとに不吉で鮮烈な幻想場面を惜しげなく盛り込んだことで、具が多すぎる鍋物みたいに生煮えの部分が出てきてしまいました。私は選評でよくこの表現を使いますが、「もったいない!」。」「それと、この上品な幻想小説にこの装丁は合わないと感じました。」
北方謙三
男69歳
15 「表と裏、光と影があって、世界が二重になっているという設定だったが、私にはうまく入ってこなかった。」「最後に、裏から表に出て、また裏に帰るあたりで、いくらか心が騒いだが、それだけだった。」
高村薫
女63歳
10 「怪奇小説なので、人間の手触りなどは求めないが、怪談は怪談なりに仕掛けの整合性が欠かせない。思いつきで繰り出した異界の仕掛けがあちこちで放置されたままになっており、描きかけの習作を見せられているようだった。」
林真理子
女62歳
10 「読者は読んでいるうちに時々迷路にはまってしまう。それが狙いかもしれないが、このはかなさ、ふわふわとした感触は、他の候補作の力強さに負けてしまう。やはり抽象画の世界なのである。」
東野圭吾
男58歳
23 「私の苦手なジャンルの小説だ。」「おそらく合理性を求めるのは野暮で、作者の描く風景が好きか嫌いかという問題だろうが、私は最後まで疑問がいくつも頭に残ったままになる読書は、あまり好きではない。しかし文学性という点でほかの委員が高評価をつけるなら、反対はしないつもりだった。」
桐野夏生
女65歳
13 「十年前の女性の失踪という始まりに期待を持ったが、悪い夢のとりとめのなさが、やや単調に感じられる。特に、重要なアイテムとなっている岸田の銅版画の描写が、それぞれを夜の世界に閉じ込めるほど魅力的には書かれていない。」
伊集院静
男66歳
19 「私には幻想世界とは別に、このシーンは好きだなと思える文節がいくつかあって、その才能に感心した。しかし小説全体を通して、いかなるものを自分がこの作品から見つけられたか、出逢えたのか、を読後に思い起こそうとしたが、私には見つけることができなかった。」
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他の候補作
恩田陸
『蜜蜂と遠雷』
冲方丁
『十二人の死にたい子どもたち』
垣根涼介
『室町無頼』
須賀しのぶ
『また、桜の国で』
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