補逸篇
読み落としを探す。
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全作読破への道も、あとわずか。お疲れさまでございます。で、今回は、これまで事情により取り上げられなかった作品について、です。 『香具師の旅』は、つい先日、古本屋で購入しました。それまでは、「浪曲師朝日丸の話」を『現代の小説』で、「ミミのこと」を『昭和文学全集』で、別々に読んでいました。 他の同時期の受賞作に比べて、なぜか『香具師の旅』は手に入りにくい本です。新刊を扱う書店で見つけるのは、まず絶望的。コミさんが亡くなったとき、追悼フェアを開いた書店もありましたが、無論、直木賞受賞作のこの作品が並ぶことはありませんでした。どうも、隔靴掻痒の感が否めませんでした。 文庫化されていないがゆえに手に入りにくい、という事情で言えば、『はぐれ念仏』も同様。単行本は直木賞お膝元の文藝春秋から出ているものの、時代が古いからか、文庫にはなっていません。どうか版元さん、ご一考のほどを。 藤原審爾氏の「罪な女」は、数年前、講談社大衆文学館でも再刊されたし、ちょっと探せば、まあ読むことができるでしょう。本来、藤原審爾氏ぐらいの作家なら、文庫がもっとたくさん残っていて、書店に並んでいればいいんですが、なにしろ文庫本は商品寿命が短すぎて……。 ●
ちなみに、左の3作品のうち、サイト管理者(P.L.B.)が独断と偏見で、お勧めを選ぶとするなら、寺内大吉氏「はぐれ念仏」。主人公である名僧・元禄寺さんの、あまりの変化ぶりは、俗人にはほとんど理解不能ですけど、俗っぽい仏教界の顛末が、俗っ気たんまりに描かれているだけに、元禄寺さんが逆説的に一本気に見えてしまう、という構図が面白いです。 Part10は最終回、超難関篇「雑誌を探して読む」です。 [H13]2001/6/3にUploadしました。 Part10へ |