秘境篇
戦前の作品を探す。
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Part7に「次回は2月中にアップできる」うんぬんと書いておいたのに、やぼ用その他で、丸1か月遅れてしまいました。今回は、どどっと戦前の作品群です。 前回同様、書影のないものは、ワタクシ自身所有していないもの。ほとんどが、図書館などで読める作品です。どうぞお探しください。 さすがに戦前のものは、まあ悲しいほど手に入れにくい状況で、唯一、本屋によく流通しているものといえば、井伏鱒二氏「ジョン万次郎漂流記」ぐらい。新潮文庫の棚に、当然のごとく入っている筈です。 本屋でひんぱんに見かけるほどではないけれども、一応、新刊書として流通している本は、だいたい上に挙げた3つ。版元に直接注文すれば手に入るかも、といった感じです。 で、木々高太郎氏『人生の阿呆』、鷲尾雨工氏『吉野朝太平記』、川口松太郎氏『鶴八鶴次郎』は、それぞれ古本屋から買ったもの。そんなに数多く市場に出回っているとも思えないので、根気よく探すしかありません。 下に挙げた書影なしの本は、図書館で探せば、行き当たるものです。ぎょうせいの『ふるさと文学館』はなかなかのスグレモノで、こういった戦前の受賞作という、埋もれてしまった作品も何作か収めてあるし、候補作についても、結構な数、収録されています。感謝です。 もう一つ、講談社の『大衆文学大系』は、神崎武雄氏『寛容』、木村荘十氏『雲南守備兵』、河内仙介氏『軍事郵便』と、これもまた他ではそうそうお目にかかれない受賞作が収めてあって、嬉しいんですが、『ふるさと文学館』ほど多くの図書館にないらしいのが難点。ワタクシ自身は、都立図書館でようやく見つけました。 直木賞読破も、戦前の領域は、ほとんどマニアの世界と言っていいかもしれません。とくに第10回から第20回の5年間は、日本全体が戦局に突入してゆく時期であって、やや乱暴な言い方をすれば、直木賞史上、最も不作の時期、とも言えたりします(さらに山本周五郎氏の受賞辞退なんていう追い打ちもあるし)。 しかし、読めないとなると、読みたくなるのが、人間のサガ。戦前の直木賞受賞(候補)作品に光が当てられる日はくるのでしょうか。難しいところです。 ●
ちなみに、左の17作品のうち、サイト管理者(P.L.B.)が独断と偏見で、お勧めを選ぶとするなら、橘外男氏「ナリン殿下への回想」。お話の筋そのものに新鮮味がないにしても、まあ、この文体にはヤラれます。自由奔放というか、畳みかけるがごとくの形容、比喩、表現、そしてベランメエ口調。読んでいて楽しくなる、しかも文章の力で……という作品です。 Part9は、補逸篇「読み落としを探す」です。 [H13]2001/5/2にUploadしました。 Part9へ |