生没年月日【注】 | 昭和33年/1958年2月4日~ | |
在任期間 | 第150回~第161回(通算6年・12回) | |
在任年齢 | 55歳10ヶ月~61歳4ヶ月 | |
経歴 | 大阪府大阪市生まれ。大阪府立大学工学部電気工学科卒。日本電装(現デンソー)に入社。勤務の傍らに書いた「放課後」で江戸川乱歩賞受賞。 | |
受賞歴・候補歴 |
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処女作 | 『放課後』(昭和60年/1985年9月・講談社刊) | |
直木賞候補歴 | 第120回候補 『秘密』(平成10年/1998年9月・文藝春秋刊) 第122回候補 『白夜行』(平成11年/1999年8月・集英社刊) 第125回候補 『片想い』(平成13年/2001年3月・文藝春秋刊) 第129回候補 『手紙』(平成15年/2003年3月・毎日新聞社刊) 第131回候補 『幻夜』(平成16年/2004年1月・集英社刊) 第134回受賞 『容疑者Xの献身』(平成17年/2005年8月・文藝春秋刊) |
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下記の選評の概要には、評価として◎か○をつけたもの(見方・注意点を参照)、または受賞作に対するもののみ抜粋しました。さらにくわしい情報は、各回の「この回の全概要」をクリックしてご覧ください。
選考委員 東野圭吾 56歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
木下昌輝 | 40歳 |
◎ | 28 | 「私の○」「面白いという点では候補作中随一だった。時系列や視点人物を交錯させた構成が成功している。」「この掘り出し物に、一体どのようなケチがつけられるのだろうと思い選考会に臨んだが、致命的な欠陥を指摘する声はなかった。」「ただ、デビュー作だという点を心配する声が多かった。私は仮に一発屋で終わったっていいじゃないかと思うのだが、やはりそれではまずいようだ。」 |
37歳 |
□ | 60 | 「私は、でかい×をつけた。」「夫への手紙の差出人を知った時点で妻が激怒するのは、結末で明かされる真相から考えると、全く矛盾している。(引用者中略)問題の不整合は、他の部分の辻褄合わせのために発生したものだと私は睨んだ。」「本作を強く推す意見を聞き、整合性の不備を打ち消すだけのものがあるのだなと感じた。」「私だって、お祭り騒ぎは大好きだ。受賞者を祝うシャンパンを気持ちよく飲みたくて、最後は躊躇いなく○をつけたのであった。」 | |
「この選考に関わって三回目、個人的にはこれまでで一番楽しかった。」 | ||||
選評出典:『オール讀物』平成27年/2015年3月号 |
選考委員 東野圭吾 58歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
門井慶喜 | 44歳 |
◎ | 35 | 「私が推したのは、『家康、江戸を建てる』だった。」「河川工事、貨幣政策、水道事業といった大事業の成された様子が、大胆な筆致で描かれており、スケールの大きさとスピード感に圧倒された。」「もし難点を挙げるなら、これは小説と呼べるのかという点だなと思い、選考会に臨んだ。そしてやっぱり、その点が指摘された。いいじゃん小説じゃなくたってと抵抗したが、いやそれはまずいでしょ、家康を描いてないし、という感じで賛同を得られなかった。」 |
原田マハ | 54歳 |
○ | 25 | 「今回の△」「ピカソとゲルニカ、こんなものを小説の題材に選べる資質が羨ましい。ダイナミックかつ、劇的な展開を大いに楽しめた。しかしピカソへの愛、ゲルニカへの熱い思いを、あまりに何度も繰り返し読まされるうち、飽きてきたのも事実だ。」「最大のマイナスはテロリストの登場。リアリティのなさを指摘されたら、弁護はできなかった。」 |
60歳 |
□ | 17 | 「ゲルニカ(引用者注:「暗幕のゲルニカ」)とどっちを△にするかで迷った」「プロ作家の仕事として、何の問題もない。」「△にしなかったのは、『家康、江戸を建てる』と接戦に持ち込みたい、という戦略上の理由からだ。最終的に○をつけたのはいうまでもない。」 | |
「候補作には実力者の作品が並んだ。いずれも良き読書体験となった。その点をまず作者たちに感謝したい。」 | ||||
選評出典:『オール讀物』平成28年/2016年9月号 |
選考委員 東野圭吾 59歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
宮内悠介 | 38歳 |
○ | 28 | 「政治改革でも国際紛争でもいいから、破天荒に物語をかき回してくれたら文句なしだったのだが、大統領代行や国防相の主な仕事が芝居の稽古というのではがっかりしてしまう。」「しかし作者の博識ぶりと想像力の豊かさには感心した。」「悩んだ末、新しい才能の台頭を祝福する気持ちを込め、宮内さんの作品に○をつけた。」 |
61歳 |
□ | 30 | 「超常現象に直面した人々の反応に疑問が残った。」「生まれ変わった本人の戸惑いが描かれていない点にも不満が残る。」「また、最後の章は不要だったのではないか、と思っている。とはいえ、それ以外の場面では登場人物一人一人のドラマにリアリティと味わいがあった。もっとも楽しんで読めたのは本作である。」「もちろん佐藤正午さんの受賞を祝うことに些かの躊躇いもない。」 | |
「候補作をすべて読み終えた後、ずいぶんと悩んだ。いずれの作品にも大きな欠点があるように思ったからだ。もしかすると受賞作なしを提案する委員もいるかもしれないな、と危惧した。」 | ||||
選評出典:『オール讀物』平成29年/2017年9月号 |
選考委員 東野圭吾 59歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
彩瀬まる | 31歳 |
◎ | 26 | 「すべての候補作を読み終えて振り返った時、最も印象に残っているのが本作だった。」「誰しもが持っている説明不能な心の揺らぎや人間の不条理さを、奇想をこらすことで描き出す筆力は、たぶんイミテーション・ゴールドではない。発展途上だし、おそらく他の委員の同意は得られないだろうと思いつつ、今回はこの作品を推すことにした。」 |
46歳 |
■ | 26 | 「主人公は自分で描く理想の父になろうと懸命で、うまくいかない時には焦り、うまくいっている時には褒めてもらいたがったりする。その俗物な描き方が面白かった。」「この作家はミステリ出身でありながら、視点に対するこだわりが全くないのだが、それも独特の味になっている。受賞は予想通りだが、○にしなかったのは、オリジナリティがどこにあるのか、私にはわからなかったからだ。」 | |
選評出典:『オール讀物』平成30年/2018年3月号 |
選考委員 東野圭吾 60歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
今村翔吾 | 34歳 |
◎ | 23 | 「読んでいる最中、頭に浮かんだのは『アベンチャーズ』であり、『ジャスティス・リーグ』だった。特殊な能力を持った登場人物たちが平安京を跋扈するヒーローものだと解釈した」「暗い歴史を仄めかす伝承は、どこの国にもある。こういう形で光を当てると同時に、自分自身も楽しもうとしている作家の姿勢を評価したい。今回は本作を○とした。」 |
41歳 |
○ | 23 | 「私は瑞々しくも荒々しい青春小説として読んだ。」「主要登場人物以外の一瞬しか登場しない人物にも魅力があり、沖縄の苦難を吹き飛ばすユーモアもあった。肝心の英雄の偉大さを語る具体的なエピソードが少なかったのが残念だが、上質のエンタテイメント作品だと思う。△にしたが、ニアリーイコール○である。」 | |
選評出典:『オール讀物』平成31年/2019年3・4月合併号 |
選考委員 東野圭吾 61歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
窪美澄 | 53歳 |
○ | 27 | 「とにかく登場する女性たちの生き様がかっこよかった。男子の流行をリードしていた男性雑誌を、男女差別に耐えながら女性たちが支えていたという裏話も面白い。」「(引用者注:「渦」「平場の月」「トリニティ」の3つのなかで)結局、どれが受賞すれば華やかか、直木賞がお祭りになりそうか、という文学性とは全く関係のない尺度で、『トリニティ』に○を(引用者中略)付けた。」 |
56歳 |
△ | 31 | 「物語を紡ぐ者として同意できる部分が多々あり、楽しめた。」「瞠目したのは大阪弁の達者さで、読んでいて全く違和感がなかった。」「扱っている題材が一般の人には馴染みのない世界だという理由と、自分が大阪出身だから読みやすかったのではないかという疑念から、(引用者注:「渦」「平場の月」「トリニティ」の3つのなかで)三番手とした。」 | |
「今回はレベルが高かった。どれが受賞してもおかしくなかった。」「この委員に任期はないらしいのだが、思うところがあり、今回で退任させてもらうことになった。(引用者中略)明らかに自分よりも実力があると思える方々の作品を評価するのは、難しく、気恥ずかしいことでもあった。」 | ||||
選評出典:『オール讀物』令和1年/2019年9・10月合併号 |