彩瀬まる（あやせまる）-直木賞候補作家

第158回

＝受賞者＝
門井慶喜

＝候補者＝
彩瀬まる
伊吹有喜
澤田瞳子
藤崎彩織

Last Update●[R7]2025/6/27

	Ayase Maru
	生没年月日【注】	昭和61年/1986年☆月☆日～
	経歴	千葉県千葉市生まれ。上智大学文学部卒。小売会社勤務を経て、平成22年/2010年に、女による女のためのR-18文学賞の読者賞を受賞して、作家デビュー。
	受賞歴・候補歴	\|候補\| 第6回女による女のためのR-18文学賞（平成19年/2007年）「かたばみ荘の猫たち」 \|候補\| 第7回女による女のためのR-18文学賞（平成20年/2008年）「たままゆ」第9回女による女のためのR-18文学賞［読者賞］（平成22年/2010年）「花に眩む」 \|候補\| 第38回野間文芸新人賞（平成28年/2016年）『やがて海へと届く』 \|候補\| 第158回直木賞（平成29年/2017年下期）『くちなし』第5回高校生直木賞（平成29年/2017年度）『くちなし』 \|候補\| 第36回織田作之助賞（令和1年/2019年）『森があふれる』 \|候補\| 第166回直木賞（令和3年/2021年下期）『新しい星』
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第158回候補

『くちなし』（平成29年/2017年10月・文藝春秋刊）

媒体・作品情報

印刷/発行年月日	発行平成29年/2017年10月25日（第1刷）
発行者等	発行者大川繁樹　印刷所萩原印刷　製本所加藤製本
発行所	株式会社文藝春秋（東京都）			形態	四六判　上製
装幀/装画等	装画及川聡子　装丁大久保明子
総ページ数	215	表記上の枚数	―	基本の文字組（1ページ当り）	41字 ×16行 ×1段
本文ページ	5～215 （計211頁）	測定枚数	294枚

書誌

令和2年/2020年4月・文藝春秋／文春文庫『くちなし』

収録作品の書誌

くちなし

初出『別冊文藝春秋』平成28年/2016年5月号

花虫

初出『別冊文藝春秋』平成28年/2016年1月号

愛のスカート

初出『別冊文藝春秋』平成28年/2016年9月号

けだものたち

初出『別冊文藝春秋』平成27年/2015年7月号

薄布

初出『別冊文藝春秋』平成29年/2017年7月号

茄子とゴーヤ

書下ろし

山の同窓会

初出『別冊文藝春秋』平成29年/2017年1月号

平成30年/2018年6月・東京創元社／創元SF文庫『年刊日本SF傑作選　プロジェクト:シャーロック』所収

選評の概要

この回の全概要　見方・注意点

候補者　彩瀬まる　31歳
選考委員		評価	行数	評言
桐野夏生	66歳	■	18	「文章の端々に才能の煌めきを感じるものの、今回は短編集の弱みが出てしまったように思われる。似通った話が目に付くことによって、気になるところが露わになった。」「官能性を排除しているようでいて、実は、自分の中にある強い衝動や欲望と呼ばれるものに、きちんと向き合っていないように感じられる」
北方謙三	70歳	■	15	「描写力を感じた。シンボリックなものを書く上で、それは重要な要素であろう。ひとつ言えば、なぜこういう書き方をしたのか、書かざるを得なかったのか、理解できて肚に落ちてくるものがなかった。」
林真理子	63歳	■	9	「こういう幻想小説は、文章がうまくないと白けるものであるが、突然の変身もすんなり心に入ってくる。しかしこれが直木賞かと言われると困惑してしまう。」
東野圭吾	59歳	◎	26	「すべての候補作を読み終えて振り返った時、最も印象に残っているのが本作だった。」「誰しもが持っている説明不能な心の揺らぎや人間の不条理さを、奇想をこらすことで描き出す筆力は、たぶんイミテーション・ゴールドではない。発展途上だし、おそらく他の委員の同意は得られないだろうと思いつつ、今回はこの作品を推すことにした。」
伊集院静	67歳	■	13	「“茄子とゴーヤ”“薄布”の二作が大変に佳い作品でした。」「（引用者注：二作以外の）他作品が作家の意図と、小説の情緒があまりに乖離していて、作者の本当に描きたかったものが何なのかが見えませんでした。」
宮部みゆき	57歳	■	15	「〈ファントムとエロス〉という面白い組み合わせをテーマにした短編集です。」「私はやっぱりそこにもう一つ〈ストーリー〉が加わらないと読めないヒトでして、正直この作品の世界についていけませんでした。」
浅田次郎	66歳	●	11	「ずいぶん古典的な小説だなと思いつつ読んだ。百年前のシュルリアリスムである。作者の意図するところは不明だが、どのような理由があれ過去の名作との相似は許されまい。」
高村薫	64歳	△	14	「小説が小説になる秘密があることを知っている書き手の作品だと思うが、作者が好んで使う奇想は、その秘密への技法的アプローチの可能性を狭め、広がりや深化を妨げて作品の行き止まり感につながっている。」
宮城谷昌光	72歳	■	11	「特徴は、きわめてやさしい筆致である。それを活かすだけで独特な世界を築けるのに、幻想小説のようなよけいなことをやっているという印象をもった。」
選評出典：『オール讀物』平成30年/2018年3月号

第158回推薦候補

大衆選考会での推薦

推薦者	推薦日	推薦文
あぱ	平成29年/2017年12月27日	決して面白い小説ではない。むしろ、芥川賞のほうが相応しいのではないかとさえ感じる。しかし、表現はキラリとひかるものが随所に散りばめられ、初期の千早茜を彷彿とさせられた。応援票として一票❗

文量

短篇集〔7篇〕

くちなし
章立て
なし
時代設定	場所設定
ある時代	ある街
登場人物
●私（語り手、ユマ） ●アツタ（照明器具メーカーの社長） ●妻（アツタの妻）

花虫
章立て
なし
時代設定	場所設定
ある時代	ある街
登場人物
●私（語り手、ナナ） ●ユージン（小説家、私の夫） ●ハルト（私の弟、大学で医学を専攻）

愛のスカート
章立て
なし
時代設定	場所設定
ある時代	ある街～鎌倉
登場人物
●私（語り手、ミネオカ、美容師） ●トキワ（私の高校時代の同級生、アパレルブランドtuneの社長） ●チリコ（tuneの広報担当） ●マチヤ（トキワが住む古民家の大家、子持ちの人妻）

けだものたち
章立て
なし
時代設定	場所設定
ある時代	ある街
登場人物
●私（語り手、夫と娘二人の四人暮らし） ●夫（私と見合結婚した夫） ●スグリ（私の職場仲間、白蛇に変化する女）

薄布
章立て
なし
時代設定	場所設定
ある時代	ある街
登場人物
●私（語り手、アザミ、ボランティア講師） ●シナモン（私の人形遊びの相手、〈北の子〉） ●夫（私の夫、軍に勤務）

茄子とゴーヤ
章立て
なし
時代設定	場所設定
ある時代	ある街
登場人物
●私（語り手、ツグミ、夫を事故で亡くしたのちに離婚） ●オウミ（理容室の主人、熟年離婚して一人）

山の同窓会
章立て
なし
時代設定	場所設定
ある時代	ある街
登場人物
●私（語り手、ニウラ、町役場勤務） ●コト（私と仲のよかったクラスメイト） ●ニワ（私のかつてのクラスメイト、海獣に変容）

『不在(ふざい)』（平成30年/2018年6月・KADOKAWA刊）

書誌

令和3年/2021年4月・KADOKAWA／角川文庫『不在』

第160回推薦候補

大衆選考会での推薦

推薦者	推薦日	推薦文
金盥綱子	平成30年/2018年12月9日	彩瀬さんがイチオシ、森見さんが二押し（同時推薦=>須賀しのぶ、森見登美彦）

第166回候補

『新(あたら)しい星(ほし)』（令和3年/2021年11月・文藝春秋刊）

媒体・作品情報

作品名別表記	奥付ルビ有り「あたら」「ほし」
印刷/発行年月日	発行令和3年/2021年11月25日（第1刷）
発行者等	発行者大川繁樹　印刷所凸版印刷　製本所大口製本　組版萩原印刷
発行所	株式会社文藝春秋（東京都）			形態	四六判　上製
装幀/装画等	写真『夏は幻　Iska 作品集』より　装丁大久保明子
総ページ数	229	表記上の枚数	―	基本の文字組（1ページ当り）	41字 ×16行 ×1段
本文ページ	7～229 （計223頁）	測定枚数	317枚

書誌

令和7年/2025年3月・文藝春秋／文春文庫『新しい星』

収録作品の書誌

新しい星

初出『別冊文藝春秋』令和1年/2019年9月号

海のかけら

初出『別冊文藝春秋』令和2年/2020年1月号

蝶々ふわり

初出『別冊文藝春秋』令和2年/2020年5月号

温まるロボット

初出『別冊文藝春秋』令和2年/2020年9月号

サタデイ・ドライブ

初出『別冊文藝春秋』令和3年/2021年1月号

月がふたつ

初出『別冊文藝春秋』令和3年/2021年5月号

ひとやすみ

初出『別冊文藝春秋』令和3年/2021年9月号「私たちの星」を改題

ぼくの銀河

初出『別冊文藝春秋』令和3年/2021年11月号

選評の概要

この回の全概要　見方・注意点

候補者　彩瀬まる　35歳
選考委員		評価	行数	評言
浅田次郎	70歳	■	13	「理解が及ばなかったのは、三十代から四十代の男女の心性である。苦悩を分かち合うことが友情だと規定しているわりには、すこぶる情熱に乏しい、淡白な関係に思えた。」
桐野夏生	70歳	■	17	「産んだばかりの子を亡くし、新しい子を望むことができなくなった夫婦は、どうやって互いを思い遣るのだろうか。そこが案外、最初の「肝」だったようにも思うのだが、物語は淡々と過ぎていってしまう。全編、好感を持って読んだが、読者の知りたい欲求を満たさず、潮が引いてゆくように消えてしまう感じは少々物足りない。」
宮部みゆき	61歳	△	23	「選考会で、（引用者注：第158回で候補になった）『くちなし』の方が彩瀬さんらしい作風だというご意見を聞き、そうすると『新しい星』はまさに作者自身にとっても新しい惑星開拓の始まりなのだと気づきました。死や別離を扱いながら、登場人物たちに愁嘆場を演じさせない節度ある書き方に、私は大いに共感しました。」
林真理子	67歳	■	9	「ふつうのことをふつうに書くのはとても難しいことだ。しかし最後の乱れはどうしたのだろう。肝心なところなのに残念だ。」
角田光代	54歳	■	12	「みなさまざまに難問を背負い、それに気づいたもの同士が非常にさりげなく相手を気遣う、ささやかでやさしい世界がここには在るが、この小説がこの作者によって書かれなければならない理由、つまるところ作家の個性と強みが感じられなかった。」
三浦しをん	45歳	■	12	「文章、比喩、情景描写が素晴らしく、深刻な事態のなかにもユーモアがちりばめられていてバランスがいい。」「ただ、連作形式で各人の人生を描く展開が、目新しさという点で今回はやや不利に働いたと思う。」
北方謙三	74歳	△	15	「言葉を切りつめ、きちんと行間を持ち、短篇小説の醍醐味を感じさせてくれた。」「最後にいくらか曖昧な思いが残った。文章は切りつめても、一冊として切りつめきれているのか。最終章が、この一冊の中で無駄だ、と私は思った。」
伊集院静	71歳	●	14	「奇妙なタイトル、比喩表現、キャラクター作りから出て来たものは、私にとって魅力的なものが何一つ、誰一人、どの文節にもなかった。」
高村薫	68歳	●	14	「ハッとさせられるような起伏や仕掛けは最後まで出てこない。４人の人間像もとくに深みはなく、みな似たり寄ったりの手触りである。この平板さにあと少し何かを足さなければ、本賞が求める読みごたえにはならない。」
選評出典：『オール讀物』令和4年/2022年3・4月合併号

第166回推薦候補

大衆選考会での推薦

推薦者	推薦日	推薦文
講	令和4年/2022年1月10日	シンプル・イズ・ベスト。逢坂さんと今村さんの作品は若さが見えたかな、と。柚月さんと米澤さんの作品はちょっと作りこみすぎかな、と。『新しい星』は本屋大賞でも上位に来そうとちょっと思ったんですが、どうでしょうか。SNS疲れ、コロナ疲れに癒しを与えてくれる作品だと思い激賞します。
ABC	令和4年/2022年1月19日	10年分の経緯がうかがえる。

文量
連作短篇集〔8篇〕
時代設定	場所設定
同時代	東京～神奈川～埼玉
登場人物
●森崎青子（学習塾の英語講師） ●大橋茅乃（青子の友人、旧姓・日野原、乳癌患者） ●安堂玄也（青子の友人、ソフトウェア開発会社を退職後実家暮らし） ●花田卓馬（青子の友人、税理士）

新しい星

章立て

なし

海のかけら

章立て

なし

蝶々ふわり

章立て

なし

温まるロボット

章立て

なし

サタデイ・ドライブ

章立て

なし

月がふたつ

章立て

なし

ひとやすみ

章立て

なし

ぼくの銀河

章立て

なし