選評の概要
144. 145.146. 147. 148. 149. 150.
151. 152. 153. 154. 155.
156. 157. 158. 159. 160.
161. 162. 163. 164. 165.
166. 167. 168. 169.
生没年月日【注】 | 昭和25年/1950年2月9日~令和5年/2023年11月24日 | |
在任期間 | 第144回~第169回(通算13年・26回) | |
在任年齢 | 60歳10ヶ月~73歳4ヶ月 | |
経歴 | 本名=西山忠来(ニシヤマ・タダキ)。山口県生まれ。立教大学文学部卒。 | |
受賞歴・候補歴 |
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処女作 | エッセイ『あの子のカーネーション』(平成1年/1989年7月・文藝春秋刊) | |
直木賞候補歴 | 第107回受賞 『受け月』(平成4年/1992年5月・文藝春秋刊) |
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サイト内リンク | ▼直木賞受賞作全作読破への道Part2 |
下記の選評の概要には、評価として◎か○をつけたもの(見方・注意点を参照)、または受賞作に対するもののみ抜粋しました。さらにくわしい情報は、各回の「この回の全概要」をクリックしてご覧ください。
選考委員 伊集院静 61歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
島本理生 | 28歳 |
◎ | 21 | 「候補作の中でもっとも好きな作品だった。読んでいて、センスの良い小説だと感心した。このセンスが才気としたら、“タレント”より“ギフト”ではないかと思った。小説家の大切な資質だ。北関東の小都市の街の風土、湿っぽさ、人の肌合い。そこで苦悩する一人の少女が女性へと変わる姿が島本さんにしか生み出せない世界で描かれている。」「私は本作品を推したが受賞におよばなかった。」 |
葉室麟 | 60歳 |
◎ | 13 | 「私は推した。これまでのキャリアも十分に思えたし、蕪村という題材も氏の作品の幅のひろがりに思えた。選考で俳句の扱いに関して安易ではないかと指摘され、佳い導入俳句もある点を強調したが他委員の賛同を得られなかった。」 |
48歳 |
□ | 31 | 「下町のエンジン部品メーカーの社長が仰ぎ見ている夢に周囲の人々が、自分たちもかつて抱いていた夢を託しはじめる。夢、望みは希望である。この希望が物語の力となっている。人々の希望を繋ぐ爽快な作品だ。」「直木賞の受賞作にふさわしい作品であると同時に、さまざまな事情を抱えた今夏の日本に活力を与える小説である。」 | |
選評出典:『オール讀物』平成23年/2011年9月号 |
選考委員 伊集院静 61歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
60歳 |
◎ | 37 | 「冒頭の数頁にこの物語に不可欠な人物、時代背景、風土、臨場といったものがすべて出揃っている。それが何の気負いもなく語られている。若い作家ではこうはいかない。」「葉室氏の作品を読んでいると静かな水のほとりに立っているような錯覚にとらわれる時がある。その水面に、遠い昔の日本人が立ち動いている。かすかな気配とともに風音がし、やがてさざなみたつように物語が立ち上がってくる。修練を積んだ作家の技と言ってよかろう。」 | |
桜木紫乃 | 46歳 |
○ | 22 | 「小説を読んでいるというより情話をせつせつと聞かされている快楽のようなものがあった。」「読んでいて作中人物の生涯を描きながらも作家の祈りのようなものにふれていた気がした。」 |
選評出典:『オール讀物』平成24年/2012年3月号 |
選考委員 伊集院静 63歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
宮内悠介 | 34歳 |
◎ | 33 | 「小説の可能性という点で(引用者中略)推した。」「テーマへの挑戦がまず大前提にあり、民族衝突、人種差別、テロリズム、格差社会といったテーマと日本人、日本という国家がどう関っているのかを近未来という設定で挑んだ点を私は評価した。」「全体は行きつ戻りつ手探りの感はあるが、私たちが安易に目指している社会が壊れるという予兆は描けていると思った。」 |
48歳 |
□ | 49 | 「桜木紫乃さんの作品を初めて読んだのは十一、二年前の某小説誌の新人応募の中の一篇だった。」「新人賞は取れたが、問題は作品に通底する“暗さ”だった。」「桜木作品の鉛色の街は彼女の原風景のように思えて果して雲を突き破って光を手に入れられるのだろうかと思った。」「今回『ホテルローヤル』と題した映画で言えば“グランドホテル形式”の洒落た作品を一読し、私は思わず唸りそうになった。これが苦悩の創作の時間が与える“きらめき”かと思い、頭が下がった。」 | |
「直木賞は或る程度の実績を持つ新しい作家を対象にしているが、小説の可能性を一気に高めてくれ、つまらぬ既成概念を打ち破ってくれる人ならまったくの無名の作家でもかまわぬと思う。それほど現代社会は新しい小説を待ち望んでいるのだ。何か新しい、ときめくものが作品から強く伝わる。それが新しい作品、作家だ。」 | ||||
選評出典:『オール讀物』平成25年/2013年9月号 |
選考委員 伊集院静 65歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
深緑野分 | 32歳 |
◎ | 35 | 「(引用者注:「羊と鋼の森」と共に)私が推した作品」「選考委員から、日本人の若い作家が、なぜ第二次大戦のアメリカ兵士を描いたのかと日本人の戦争観に話がおよんだ。若い人に限らず人の戦争観の論議は、私にはナンセンスに思えた。よく見た戦争映画を下に書き上げたのではという評もあったが、これからの若い作家が映像を見て感動し、それが作品の想起になるのは自然なことで、映像を見ての感情が、作品の軸になった方が斬新なものを生むのではないか。」 |
宮下奈都 | 49歳 |
◎ | 25 | 「(引用者注:「戦場のコックたち」と共に)私が推した作品」「私は常日頃から、みずみずしい文章の作品を書きたいと思っているが、なかなかそういう文章は書けない。宮下さんの小説には、そのみずみずしさが失せることがなかった。」「他選考委員から作品の世界がやや小振りだという評が出たが、そんなことはない。こんなに悠久を感じる作品はない。」 |
67歳 |
△ | 27 | 「文章も安定感があるし、短篇集として上出来である。」「たしかに各短篇にはそれぞれ個性があり、一言で言うと、上手い、のである。」「上手い、名手などという評価は、小説の本質とはまったく違う場所での言葉で、むしろ邪魔になる。あらためて読んでみると、そのことがやはり気になった。」 | |
「今回は候補に上がった作品は、作家の名前を含めて、初めて読むものが多かった。そのせいか、どの作品にもみずみずしさを感じた。」 | ||||
選評出典:『オール讀物』平成28年/2016年3月号 |
選考委員 伊集院静 66歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
垣根涼介 | 50歳 |
◎ | 42 | 「今回の候補作の中でもっとも読みごたえのあった作品」「文章も安定していたし、テンポのある文体はエンタティメントの必須条件にかなっていた。」「何より登場人物に魅力があり、主人公の才蔵をはじめ、道賢、兵衛、芳王子等がまことによく描き分けられて、氏が以前より、その力量を上げられているのと、元々持ち合わせていた才能が本作品で花開いたと思えた。」「強く推したが支持して下さる委員の数がわずかに足らなかった。」 |
52歳 |
△ | 22 | 「私にはこれが、たとえ登場人物の大半が若者、子供のような年齢であれ、人間が描かれているのだろうかと感じた。そうだ、こんな感情もあり得るな、と人物設定の枠からはみ出して行く、小説本来の面白味に疑問を抱いた。予定調和の物語を読んでいるようで、氏の持つ小説世界とは別のものに感じられた。しかし十分に読みごたえもあるし、受賞にかなうものだった。」 | |
選評出典:『オール讀物』平成29年/2017年3月号 |
選考委員 伊集院静 70歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
加藤シゲアキ | 33歳 |
◎ | 29 | 「(引用者注:「インビジブル」と共に)推した。」「読みはじめ、これは、と思う箇所に何度もめぐりあって、新しい作家の世界におおいに期待がふくらんだ。加藤氏は一作毎にきちんと作品のテーマを置き、そこにむかって真摯に小説を執筆なさっている。その点が清々しい。」「難を言えば、少し真面目に取り組み過ぎなのでは、と感じてしまう。」 |
坂上泉 | 30歳 |
◎ | 31 | 「(引用者注:「オルタネート」と共に)推した。」「若い作者がよくぞ、この時代の大阪の、しかもあの特別な一帯を物語の舞台にしたものだ、とまず感心した。」「私たちはこの作品を読むことによって、あの戦争が日本人に何をしたかを再び問うことになるだろう。私、個人としては、師であり友であった読売の記者で、“黒田軍団”の統率者であった黒田清らしき新聞記者が作品中に登場してひどく懐かしく、あの時代の男の気骨がよみがえった。」 |
56歳 |
△ | 31 | 「読んでいて、これほど作者の世界にやわらかく入り込める作品はそうそうあるまい。読み手がそう感じるのは作者の並々ならぬ力量と、経験から来るものだろう。」「作品中で私は“閨仏”と“灰の男”が好きだった。」 | |
選評出典:『オール讀物』令和3年/2021年3・4月合併号 |
選考委員 伊集院静 72歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
永井紗耶子 | 45歳 |
◎ | 30 | 「推した」「文体に安定味があり、何より弓のようなしなやかさが感じられた。主人公の周子の視線が、冷静に見えて実は熱気を含んでいた。この両刃で人、物事を捉える視点はこの作家の資質であろう。」 |
56歳 |
□ | 47 | 「作品中に、感染症、新型コロナが扱われている。この二年余り、世界の人々に多大な影響を与えているコロナ禍を明確に扱っている点は評価されるべきことだ。」「私が最後に支持票を入れたのは、この作家の根にある辺りに強靭な小説家の覚悟が見えるように思えたからだ。」「今日のテーマに果敢に取組んだ点で、頭ひとつ抜けていた印象だった。」 | |
選評出典:『オール讀物』令和4年/2022年9・10月合併号 |