第165回

第164回第166回

令和3年/2021年上半期 令和3年/2021年7月14日決定発表／『オール讀物』令和3年/2021年9・10月合併号選評掲載

選考委員　 林真理子 67歳 北方謙三 73歳 角田光代 54歳 高村薫 68歳 三浦しをん 44歳 浅田次郎 69歳 桐野夏生 69歳 伊集院静 71歳 宮部みゆき 60歳 選評総行数　 93 120 126 103 159 87 163 103 163 評 評 評 評 評 評 評 評 評 候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 佐藤究　『テスカトリポカ』 1122枚 43歳 評 ○ 31 ■ 28 ○ 36 △ 20 ◎ 46 ■ 29 ○ 64 ● 10 ○ 91 澤田瞳子　『星落ちて、なお』 556枚 43歳 評 □ 17 ○ 29 △ 25 ● 24 △ 19 □ 15 ■ 23 ◎ 46 ○ 65 一穂ミチ　『スモールワールズ』 438枚 43歳 評 △ 21 ■ 15 △ 20 ■ 22 ◎ 39 ◎ 17 △ 19 ― 0 ― 0 呉勝浩　『おれたちの歌をうたえ』 1147枚 39歳 評 ● 13 ● 21 ■ 25 ● 15 ■ 35 ● 6 ■ 30 ■ 21 ― 0 砂原浩太朗　『高瀬庄左衛門御留書』 573枚 52歳 評 ■ 7 ■ 25 ■ 14 ■ 17 ■ 23 ● 16 ■ 27 △ 26 ― 0                   年齢/枚数の説明   見方・注意点

林真理子67歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題圧倒的迫力　総行数93　（1行=12字） 候補 評価 行数 評言 佐藤究 43歳 全 ○ 31 「この方の並はずれた筆力にまず圧倒された。」「そしてこの作者の偏執的な知識と書き方にも驚いた。」「この作家は手間を惜しまない、どころではない。（引用者中略）調べていくことに快楽を感じているはずだ。そしてこの快楽は読み手にも伝わっていくのである。」 澤田瞳子 43歳 全 □ 17 「最初私は物足りなさを感じた。主人公の女性絵師に、芸術家としての昂ぶりや熱意をあまり感じなかったからだ。が、すぐに理解した。これは天才を父に持つ、普通に近い娘の生き方なのである。淡々とし過ぎているように感じたが、それは当然のことなのだ。」「読後感がよくさすがの筆さばきと感服した。」 一穂ミチ 43歳 全 △ 21 「面白く読んだ。」「冒頭の作品があまりにも惜しい。他の五作品とレベルが違っている。最初の「ネオンテトラ」は、リアリティがなく、終わり方も唐突である。」「あきらかに水準に達していないものは、切り捨てる勇気も必要だったのではないだろうか。」 呉勝浩 39歳 全 ● 13 「長い物語を読み終えてふと思う。「この人たちはいったい何が目的だったのか」」「元刑事とヤンキーとのわくわくする旅が始まる。いったいどんなことが起きるのかと思ったとたん、急に牧歌的になっていくのもテンションが下がった。」 砂原浩太朗 52歳 全 ■ 7 「抑制のきいた文章に魅了された。」「が、既視感から免れることは出来なかった。」   「今回は三時間に及ぶ長さであったが、よい議論が出来て充実した選考会であった。」

他の選考委員 北方謙三 角田光代 高村薫 三浦しをん 浅田次郎 桐野夏生 伊集院静 宮部みゆき

北方謙三73歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題古く新しく　総行数120　（1行=12字） 候補 評価 行数 評言 佐藤究 43歳 全 ■ 28 「斬新な部分は、暴力の描き方だったと思う。小説の結構そのものは、よくあるアクション小説の域を出ていない。非人間的にさえ見える暴力が、なぜか読む側の痛みを誘発してこないと感じた。」「（引用者注：「星落ちて、なお」と）結果は同じ点数での同時受賞であった。」 澤田瞳子 43歳 全 ○ 29 「言葉をさまざまに費して評する必要はなく、描かれた人物がそこここに立ちあがり、時が流れる。新しくはなく、しかし連綿と続いてきた物語の、強さを持っている。だから、古くもならないだろう。この作者は、物語の端緒から、筆が躍る傾向があったが、今回は驚くほど抑制された筆だった。」「（引用者注：「テスカトリポカ」と）結果は同じ点数での同時受賞であった。」 一穂ミチ 43歳 全 ■ 15 「いささか評価に困った。まず、どの一篇からも、私は行間を感じなかった。人物の造形が、ただ頭で考えただけなのか、言葉以上のふくらみを持ってこない。」「私は『魔王の帰還』と『花うた』が好きだったが、それも人間の顔がよく見えてこなかった。」 呉勝浩 39歳 全 ● 21 「冗漫とか難解とかいうのではなく、小説の発想そのものが、文学と乖離しているのではないか、と思った。人間の物語のようであって、そうなっていない。」「文学作品を遣った謎解きにも違和感があり、作者がひとりで愉しみすぎているのではないか、と途中で感じたりした。」 砂原浩太朗 52歳 全 ■ 25 「暗く湿ったどうにもならない深い部分の情念に、手が届いたかもしれない。そのはじめの感じが、すぐに表層的な物語に後退した。」「この作品の肝が、嫁、舅の関係だと考えると、二人の描き方はいかにも安直である。暗く背徳的で、孤立した思いの部分まで、登場人物ではなく作者が踏みこめていないのだ。」   「候補作を読んでいて、自分の感覚は古くなっているのではないか、と肺腑を衝かれたような感じ方をする時がある。」「昔から小説を書いている。そして、いまも書いている。そう思うことで、なんとか候補作にもむき合えるのである。」

他の選考委員 林真理子 角田光代 高村薫 三浦しをん 浅田次郎 桐野夏生 伊集院静 宮部みゆき

角田光代54歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題心臓を持つ小説　総行数126　（1行=12字） 候補 評価 行数 評言 佐藤究 43歳 全 ○ 36 「私にとってまったくはじめて読む小説だった。」「何より膨大な資料を作者がかみ砕いて血肉として小説に与えている。」「いっさいの感情描写のなされないコシモという青年の、この魅力はなんだろう。この凄惨な小説にちりばめられたうつくしさも、私には見たことのない、触れたことのない種類のものだった。」 澤田瞳子 43歳 全 △ 25 「絵を描かざるを得ないむしろ凡人としてのとよの苦悩に焦点をあてたのならばそれは成功していると思う。けれども暁斎や清兵衛の過剰さも、それに引きずられて減じられてしまったように思えて、それもやっぱり私にはちょっともの足りない。」 一穂ミチ 43歳 全 △ 20 「収録された短編小説に登場する人々は、みな何かしらの理由で社会の大多数からはみ出している。はみ出さざるを得ない人たちを描く小説はあたらしくはないけれど、この作者の世界の切り取りかたが私には新鮮に感じられた。」「駆け足で状況説明になってしまったように思える小説もあり、この短編集で受賞作とするのは私にはもったいない気がした。」 呉勝浩 39歳 全 ■ 25 「作者が力を出し切った力作だと思う。」「ただ過去の殺人事件において、千百合が革命グループに心酔していたことがこれほど重要ならば、その革命グループの思想を、既存の知識や印象に頼らずもっと書いたほうが説得力が増すし、なぜ千百合がそこまで熱狂したのかがほんの数行でも書かれていれば、千百合もセイさんも、小説内には姿をあらわさない近藤柾人も、人物が生きたのではないか。」 砂原浩太朗 52歳 全 ■ 14 「一揆が起き、幼なじみとの斬り合いも描かれるが、小説は一貫して静謐なままだ。それはこの小説、この作者の魅力だと思う。けれど同時に、登場人物とストーリーを、作者があまりにもコントロールしすぎているゆえのしずけさとも思えた。」   「物語そのものが心臓を持つかのような『テスカトリポカ』と、まったく正反対の魅力を持つ『星落ちて、なお』の二作受賞となった。」

他の選考委員 林真理子 北方謙三 高村薫 三浦しをん 浅田次郎 桐野夏生 伊集院静 宮部みゆき

高村薫68歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題選評　総行数103　（1行=12字） 候補 評価 行数 評言 佐藤究 43歳 全 △ 20 「事前の予想以上に絶賛の嵐で、評者は大いに困惑した。今回の候補作のなかでもっとも筆力があるのは明らかな一方、これはほんとうに物語の力と言えるのか、血まみれの臓器や肉片が飛び交う残虐なイメージの力ではないかのか、ふと分からなくなったからである。」 澤田瞳子 43歳 全 ● 24 「「画鬼」の父の具体的描写はなく、すべてが暁翠の独白で語られるだけなので、その葛藤は具体性を欠き、障子越しに他人の暮らしを垣間見るようなあいまいさである。有名な芸者ぽん太と清兵衛の愛も、まるで艶やかさが伝わらない。」 一穂ミチ 43歳 全 ■ 22 「身近な世界を切り取っているようで実は生身の人間はどこにもいない、人工的に構築された箱庭とそこに置かれたフィギュアのようだと言おうか。」「本作の短編はどれも手練れゆえに書き流した感が強い。本ものの小説家であるために、あと少しの執念と用心深さを。」 呉勝浩 39歳 全 ● 15 「これでもかと詰め込まれた題材・登場人物・エピソード・仕掛けのすべてが未整理で、中心がどんどんずれていってしまう。」「本作はあれもこれもと欲張りすぎて、少々作者の手に余ったか。」 砂原浩太朗 52歳 全 ■ 17 「既視感の強い時代小説の定型であり、読者は安心して物語に身を委ねられるが、伏線や謎の回収が遅すぎ、終盤でまとめて明らかになるころには謎としての力を失っている。」   「今回の選考会では、エンターテインメント小説における物語の現在地についていろいろ考えさせられた。物語とは何なのだろう。」

他の選考委員 林真理子 北方謙三 角田光代 三浦しをん 浅田次郎 桐野夏生 伊集院静 宮部みゆき

三浦しをん44歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題選評　総行数159　（1行=12字） 候補 評価 行数 評言 佐藤究 43歳 全 ◎ 46 「（引用者注：「スモールワールズ」と共に）推した。」「圧倒的な傑作だ。」「私は小説に絶対に「希望」が必要だとは微塵も思わない。しかし世界に満ちる暴力性の問題を徹底追求する本作は、暴力と理不尽を越える希望をも、ちゃんと提示してくれているのだ。硬質な美を湛える文章が紡ぎだす静謐な多摩川の情景を、コシモが選び取った道を、よく見てほしい。これがまっとうな倫理と希望でないなら、なんなのだ。」 澤田瞳子 43歳 全 △ 19 「ドラマが盛りあがりそうなところ（たとえば主人公の離婚など）が具体的に描かれぬまま年代が変わってしまうので、ちょっと登場人物に思い入れを抱きにくく堅実すぎるかなと感じた。だが、明治の美人画と江戸の女性画のちがいや、女性絵師の扱いの不当さなど、はじめて知ることが多く、作者がなぜ河鍋暁翠（とよ）を主人公にしたのか、思いが十二分に伝わってきた。」 一穂ミチ 43歳 全 ◎ 39 「（引用者注：「テスカトリポカ」と共に）推した。」「各話がさりげなくつながっている短編集で、そのさりげなさがうまいし、話ごとのテイストのちがいと完成度の高さが素晴らしいと感じた。」「タイトルどおり、小さくささやかかもしれないが、しかしいま、このときを、つらさや悲しみを抱えながらも笑ったり怒ったりして精一杯生きている「私たち」の姿が、こんなにも鮮やかに小説として刻印されるとはと、脱帽するほかなかった。」 呉勝浩 39歳 全 ■ 35 「ぐいぐい拝読した。ただ個人的には、暗号を解けば金塊を手に入れられると思って読み進めたのに、まったく異なる結論に至ったのがやや不満というか、ちょっと「芯がブレている」感じを受けた。当初の目的とちがうものを手に入れてももちろんいいのだが、暗号解読の結論がロマンチックかつスイートすぎるせいかもしれない。」 砂原浩太朗 52歳 全 ■ 23 「魅力ある登場人物が多いこと、ご飯がおいしそうなこと、暮らしに困窮する人々の存在にきちんと触れられていることに好感を持った。ただ、庄左衛門と嫁の志穂のあいだに恋愛感情が発生するのが、どうしても引っかかる。」「志穂が自立した意思を持つ生き生きとした女性として描かれているからなおさら、惜しいと思った。」

他の選考委員 林真理子 北方謙三 角田光代 高村薫 浅田次郎 桐野夏生 伊集院静 宮部みゆき

浅田次郎69歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題小説とは何か　総行数87　（1行=12字） 候補 評価 行数 評言 佐藤究 43歳 全 ■ 29 「（引用者注：選考会で）最も議論がかわされた作品」「これほど壮大で精密な虚構は、小説という表現方法だからこそ可能と思える。だが、その壮大さ精密さを実現するために、視点者の情動が犠牲になった。登場人物のおのおのが、当たり前の人間感情を欠くのである。」「死は文学の欠くべからざるテーマにはちがいないが、死をかくも丹念に描くことはむしろ、人間不在の反文学としか思えなかった。」 澤田瞳子 43歳 全 □ 15 「実直な作家である。」「「星落ちて、なお」は生真面目な作風に手が合っており、すぐれた評伝でも読むような気分で楽しめた。ぜひとも本作で受賞していただきたいと願って選考会に臨んだ。」 一穂ミチ 43歳 全 ◎ 17 「読み始めたとたん、新人ではないと確信した。小説の書き方が手慣れており、かつ垢抜けていて、美学も哲学も備えた文学の構えをしていた。しかも収録された短篇のそれぞれが個性に富み、高い水準を保って出来不出来がなかった。」「私は作者の確固たる文学観と穢れなき才能を信じて強く推した。」 呉勝浩 39歳 全 ● 6 「多くの場面において小説的ではない映像的な既視感をおぼえた。」 砂原浩太朗 52歳 全 ● 16 「新しい時代小説を提示する気概が欲しかった。」   「コロナ禍にあって、「小説とは何か」を考え続けた貴重な選考会であったと思う。」

他の選考委員 林真理子 北方謙三 角田光代 高村薫 三浦しをん 桐野夏生 伊集院静 宮部みゆき

桐野夏生69歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題選評　総行数163　（1行=12字） 候補 評価 行数 評言 佐藤究 43歳 全 ○ 64 「この小説を遥かに上回る残虐な出来事は、世界のあちこちで起きている。現実を直視すれば、この作品はその意味で「清い」のである。」「言葉にもディテールにも揺るぎはなく、文体は簡潔で力強い。満足のゆく質と量である。」「ただ、日本編は、メキシコの乾いた土くれに血が吸い込まれるような凄絶さが消えて、少々湿気を帯びたきらいがある。」 澤田瞳子 43歳 全 ■ 23 「偉大な父の存在という重荷（引用者中略）西洋絵画が入ってきて、父から継いだ絵はすでに時代に遅れになっている、（引用者中略）このふたつの苦しみがいまひとつ伝わってこないのは、とよの人物造型がやや平板だからかもしれない。」「また、江戸から明治に移った混乱や、明治という時代の新鮮さは、あまり感じられなかった。」 一穂ミチ 43歳 全 △ 19 「特に会話がよく、絵が目に浮かぶ。とりわけ、「愛を適量」が面白かった。」「しかしながら、小説は虚構である。日常のリアリティがあり過ぎるのも、どうだろうか。もう少し人物を濃淡で書き分けて、作り込んでもいいような気がした。」 呉勝浩 39歳 全 ■ 30 「文章のテンポは悪くないだけに、どんどん景色が変わるように文章だけが先に進み、想像力が追いつかない。つまり、作者が意図的に隠したり、違う方向に誘おうとしているきらいがある。例えば、春子のための復讐でした喧嘩が、案外深刻なものだったという事実は、かなり後で明かされるが、その場面をきちんと書かないのはアンフェアである。千百合の事件も、後から連合赤軍事件と思しき事件が当てはめられるけれど、当時、その事件の中で生きた人間の内面に迫っていない。」 砂原浩太朗 52歳 全 ■ 27 「最初は、描写の丁寧さと繊細さに驚いた。」「このトーンでゆくのかと思ったが、中盤から崩れる」「主人公の性格がよくわからなくなるところが多々あった」「主人公の小物ぶりは、人物造型として考えてあったのだろうか。とすれば、嫁の志穂が惹かれる理由がわからない。」

他の選考委員 林真理子 北方謙三 角田光代 高村薫 三浦しをん 浅田次郎 伊集院静 宮部みゆき

伊集院静71歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題諸々揃って　総行数103　（1行=12字） 候補 評価 行数 評言 佐藤究 43歳 全 ● 10 「最後まで小説として認められなかった」「小児の扱いがこれほど安易になされて、文学の品格は問われないのか、と今も思っている」 澤田瞳子 43歳 全 ◎ 46 「安定味のある文体、そつのない構成で、候補作品で唯一人、プロの力量を感じられる作品だった。」「他の選考委員から、鬼才である絵師の父、その跡を受け継いだ主人公である娘の、絵を描くシーンが欲しいという意見があった。だが、三人の委員（偶然、皆男性であったのだが）は、その必要無しとの意見で一致した。珍しいことなのだが、ベテラン男性委員が澤田作品を推したことは、彼女の力量と、今後の作品への期待なのであろうと私も嬉しかった。」 一穂ミチ 43歳 全 ― 0   呉勝浩 39歳 全 ■ 21 「日本列島を震撼させた若者と社会体制の衝突がいまだに小説として描かれうることを示している。」「ただ、この作品が物語として成立するのか？　と私は疑問を感じるし、検証するにたる文章をまだ確立されていないのではという思いを持たざるを得ないことも事実である。」 砂原浩太朗 52歳 全 △ 26 「一読して、どこかで読んだ気がするという印象を受けることに私はいささか驚いた。」「私は、既視感ということについて、それが作家にとって初期のことであれば間々許されようと考える立場である。」そういうことを越えて、老いた侍の、苦悩と人間の情念とが、よく描けていると感心した。」

他の選考委員 林真理子 北方謙三 角田光代 高村薫 三浦しをん 浅田次郎 桐野夏生 宮部みゆき

宮部みゆき60歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題花の戦争　総行数163　（1行=12字） 候補 評価 行数 評言 佐藤究 43歳 全 ○ 91 「この作品は、直木賞の長い歴史のなかに燦然と輝く黒い太陽なのです」「昨今稀な――現代を舞台にしては書きにくくなる一方の、きわめてまっとうな勧善懲悪の物語です。」「主人公の青年コシモは、現代国際社会の地獄巡りを経て成長し、己の生きるべき道を見出す。ヒューマニズムを信じている小説なのです。敵役が邪悪だからといって、作品そのものが邪悪なわけではありません。」「暴力を、「心の闇」などという言葉で水割りにしない。私は読後、「参りました」と感嘆することしかできませんでした。傑作です。」 澤田瞳子 43歳 全 ○ 65 「一見オーソドックスな歴史人物小説であるように見えて、実は掟破りの挑戦をしている果敢な小説です。」「何が掟破りなのか。それは、史実を題材にした歴史小説では、普通は主人公に取り立てられることのない人物を中心に据えていること。」「澤田さんは、その人生を長編小説一冊分かけて掘り下げました。」「そのおかげで、作品のしめくくり、亡き父についてインタビューを受ける最晩年のとよの静かなたたずまいに、私は気持ちよく泣かせていただきました。」 一穂ミチ 43歳 全 ― 0   呉勝浩 39歳 全 ― 0   砂原浩太朗 52歳 全 ― 0     「今回の選考会は強力な候補作をめぐる華やかな戦争だったと申し上げたい」「今回の結果は個人的にも最高に嬉しく、実作家としての自分の今後を考える良い機会にもなりました。」

他の選考委員 林真理子 北方謙三 角田光代 高村薫 三浦しをん 浅田次郎 桐野夏生 伊集院静

佐藤究43歳×各選考委員　 『テスカトリポカ』 長篇 1122枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 林真理子 67歳 全 ○ 31 「この方の並はずれた筆力にまず圧倒された。」「そしてこの作者の偏執的な知識と書き方にも驚いた。」「この作家は手間を惜しまない、どころではない。（引用者中略）調べていくことに快楽を感じているはずだ。そしてこの快楽は読み手にも伝わっていくのである。」 北方謙三 73歳 全 ■ 28 「斬新な部分は、暴力の描き方だったと思う。小説の結構そのものは、よくあるアクション小説の域を出ていない。非人間的にさえ見える暴力が、なぜか読む側の痛みを誘発してこないと感じた。」「（引用者注：「星落ちて、なお」と）結果は同じ点数での同時受賞であった。」 角田光代 54歳 全 ○ 36 「私にとってまったくはじめて読む小説だった。」「何より膨大な資料を作者がかみ砕いて血肉として小説に与えている。」「いっさいの感情描写のなされないコシモという青年の、この魅力はなんだろう。この凄惨な小説にちりばめられたうつくしさも、私には見たことのない、触れたことのない種類のものだった。」 高村薫 68歳 全 △ 20 「事前の予想以上に絶賛の嵐で、評者は大いに困惑した。今回の候補作のなかでもっとも筆力があるのは明らかな一方、これはほんとうに物語の力と言えるのか、血まみれの臓器や肉片が飛び交う残虐なイメージの力ではないかのか、ふと分からなくなったからである。」 三浦しをん 44歳 全 ◎ 46 「（引用者注：「スモールワールズ」と共に）推した。」「圧倒的な傑作だ。」「私は小説に絶対に「希望」が必要だとは微塵も思わない。しかし世界に満ちる暴力性の問題を徹底追求する本作は、暴力と理不尽を越える希望をも、ちゃんと提示してくれているのだ。硬質な美を湛える文章が紡ぎだす静謐な多摩川の情景を、コシモが選び取った道を、よく見てほしい。これがまっとうな倫理と希望でないなら、なんなのだ。」 浅田次郎 69歳 全 ■ 29 「（引用者注：選考会で）最も議論がかわされた作品」「これほど壮大で精密な虚構は、小説という表現方法だからこそ可能と思える。だが、その壮大さ精密さを実現するために、視点者の情動が犠牲になった。登場人物のおのおのが、当たり前の人間感情を欠くのである。」「死は文学の欠くべからざるテーマにはちがいないが、死をかくも丹念に描くことはむしろ、人間不在の反文学としか思えなかった。」 桐野夏生 69歳 全 ○ 64 「この小説を遥かに上回る残虐な出来事は、世界のあちこちで起きている。現実を直視すれば、この作品はその意味で「清い」のである。」「言葉にもディテールにも揺るぎはなく、文体は簡潔で力強い。満足のゆく質と量である。」「ただ、日本編は、メキシコの乾いた土くれに血が吸い込まれるような凄絶さが消えて、少々湿気を帯びたきらいがある。」 伊集院静 71歳 全 ● 10 「最後まで小説として認められなかった」「小児の扱いがこれほど安易になされて、文学の品格は問われないのか、と今も思っている」 宮部みゆき 60歳 全 ○ 91 「この作品は、直木賞の長い歴史のなかに燦然と輝く黒い太陽なのです」「昨今稀な――現代を舞台にしては書きにくくなる一方の、きわめてまっとうな勧善懲悪の物語です。」「主人公の青年コシモは、現代国際社会の地獄巡りを経て成長し、己の生きるべき道を見出す。ヒューマニズムを信じている小説なのです。敵役が邪悪だからといって、作品そのものが邪悪なわけではありません。」「暴力を、「心の闇」などという言葉で水割りにしない。私は読後、「参りました」と感嘆することしかできませんでした。傑作です。」

他の候補作 澤田瞳子 『星落ちて、なお』 一穂ミチ 『スモールワールズ』 呉勝浩 『おれたちの歌をうたえ』 砂原浩太朗 『高瀬庄左衛門御留書』

澤田瞳子43歳×各選考委員　 『星落ちて、なお』 長篇 556枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 林真理子 67歳 全 □ 17 「最初私は物足りなさを感じた。主人公の女性絵師に、芸術家としての昂ぶりや熱意をあまり感じなかったからだ。が、すぐに理解した。これは天才を父に持つ、普通に近い娘の生き方なのである。淡々とし過ぎているように感じたが、それは当然のことなのだ。」「読後感がよくさすがの筆さばきと感服した。」 北方謙三 73歳 全 ○ 29 「言葉をさまざまに費して評する必要はなく、描かれた人物がそこここに立ちあがり、時が流れる。新しくはなく、しかし連綿と続いてきた物語の、強さを持っている。だから、古くもならないだろう。この作者は、物語の端緒から、筆が躍る傾向があったが、今回は驚くほど抑制された筆だった。」「（引用者注：「テスカトリポカ」と）結果は同じ点数での同時受賞であった。」 角田光代 54歳 全 △ 25 「絵を描かざるを得ないむしろ凡人としてのとよの苦悩に焦点をあてたのならばそれは成功していると思う。けれども暁斎や清兵衛の過剰さも、それに引きずられて減じられてしまったように思えて、それもやっぱり私にはちょっともの足りない。」 高村薫 68歳 全 ● 24 「「画鬼」の父の具体的描写はなく、すべてが暁翠の独白で語られるだけなので、その葛藤は具体性を欠き、障子越しに他人の暮らしを垣間見るようなあいまいさである。有名な芸者ぽん太と清兵衛の愛も、まるで艶やかさが伝わらない。」 三浦しをん 44歳 全 △ 19 「ドラマが盛りあがりそうなところ（たとえば主人公の離婚など）が具体的に描かれぬまま年代が変わってしまうので、ちょっと登場人物に思い入れを抱きにくく堅実すぎるかなと感じた。だが、明治の美人画と江戸の女性画のちがいや、女性絵師の扱いの不当さなど、はじめて知ることが多く、作者がなぜ河鍋暁翠（とよ）を主人公にしたのか、思いが十二分に伝わってきた。」 浅田次郎 69歳 全 □ 15 「実直な作家である。」「「星落ちて、なお」は生真面目な作風に手が合っており、すぐれた評伝でも読むような気分で楽しめた。ぜひとも本作で受賞していただきたいと願って選考会に臨んだ。」 桐野夏生 69歳 全 ■ 23 「偉大な父の存在という重荷（引用者中略）西洋絵画が入ってきて、父から継いだ絵はすでに時代に遅れになっている、（引用者中略）このふたつの苦しみがいまひとつ伝わってこないのは、とよの人物造型がやや平板だからかもしれない。」「また、江戸から明治に移った混乱や、明治という時代の新鮮さは、あまり感じられなかった。」 伊集院静 71歳 全 ◎ 46 「安定味のある文体、そつのない構成で、候補作品で唯一人、プロの力量を感じられる作品だった。」「他の選考委員から、鬼才である絵師の父、その跡を受け継いだ主人公である娘の、絵を描くシーンが欲しいという意見があった。だが、三人の委員（偶然、皆男性であったのだが）は、その必要無しとの意見で一致した。珍しいことなのだが、ベテラン男性委員が澤田作品を推したことは、彼女の力量と、今後の作品への期待なのであろうと私も嬉しかった。」 宮部みゆき 60歳 全 ○ 65 「一見オーソドックスな歴史人物小説であるように見えて、実は掟破りの挑戦をしている果敢な小説です。」「何が掟破りなのか。それは、史実を題材にした歴史小説では、普通は主人公に取り立てられることのない人物を中心に据えていること。」「澤田さんは、その人生を長編小説一冊分かけて掘り下げました。」「そのおかげで、作品のしめくくり、亡き父についてインタビューを受ける最晩年のとよの静かなたたずまいに、私は気持ちよく泣かせていただきました。」

他の候補作 佐藤究 『テスカトリポカ』 一穂ミチ 『スモールワールズ』 呉勝浩 『おれたちの歌をうたえ』 砂原浩太朗 『高瀬庄左衛門御留書』

一穂ミチ43歳×各選考委員　 『スモールワールズ』 連作6篇 438枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 林真理子 67歳 全 △ 21 「面白く読んだ。」「冒頭の作品があまりにも惜しい。他の五作品とレベルが違っている。最初の「ネオンテトラ」は、リアリティがなく、終わり方も唐突である。」「あきらかに水準に達していないものは、切り捨てる勇気も必要だったのではないだろうか。」 北方謙三 73歳 全 ■ 15 「いささか評価に困った。まず、どの一篇からも、私は行間を感じなかった。人物の造形が、ただ頭で考えただけなのか、言葉以上のふくらみを持ってこない。」「私は『魔王の帰還』と『花うた』が好きだったが、それも人間の顔がよく見えてこなかった。」 角田光代 54歳 全 △ 20 「収録された短編小説に登場する人々は、みな何かしらの理由で社会の大多数からはみ出している。はみ出さざるを得ない人たちを描く小説はあたらしくはないけれど、この作者の世界の切り取りかたが私には新鮮に感じられた。」「駆け足で状況説明になってしまったように思える小説もあり、この短編集で受賞作とするのは私にはもったいない気がした。」 高村薫 68歳 全 ■ 22 「身近な世界を切り取っているようで実は生身の人間はどこにもいない、人工的に構築された箱庭とそこに置かれたフィギュアのようだと言おうか。」「本作の短編はどれも手練れゆえに書き流した感が強い。本ものの小説家であるために、あと少しの執念と用心深さを。」 三浦しをん 44歳 全 ◎ 39 「（引用者注：「テスカトリポカ」と共に）推した。」「各話がさりげなくつながっている短編集で、そのさりげなさがうまいし、話ごとのテイストのちがいと完成度の高さが素晴らしいと感じた。」「タイトルどおり、小さくささやかかもしれないが、しかしいま、このときを、つらさや悲しみを抱えながらも笑ったり怒ったりして精一杯生きている「私たち」の姿が、こんなにも鮮やかに小説として刻印されるとはと、脱帽するほかなかった。」 浅田次郎 69歳 全 ◎ 17 「読み始めたとたん、新人ではないと確信した。小説の書き方が手慣れており、かつ垢抜けていて、美学も哲学も備えた文学の構えをしていた。しかも収録された短篇のそれぞれが個性に富み、高い水準を保って出来不出来がなかった。」「私は作者の確固たる文学観と穢れなき才能を信じて強く推した。」 桐野夏生 69歳 全 △ 19 「特に会話がよく、絵が目に浮かぶ。とりわけ、「愛を適量」が面白かった。」「しかしながら、小説は虚構である。日常のリアリティがあり過ぎるのも、どうだろうか。もう少し人物を濃淡で書き分けて、作り込んでもいいような気がした。」 伊集院静 71歳 全 ― 0   宮部みゆき 60歳 全 ― 0

他の候補作 佐藤究 『テスカトリポカ』 澤田瞳子 『星落ちて、なお』 呉勝浩 『おれたちの歌をうたえ』 砂原浩太朗 『高瀬庄左衛門御留書』

呉勝浩39歳×各選考委員　 『おれたちの歌をうたえ』 長篇 1147枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 林真理子 67歳 全 ● 13 「長い物語を読み終えてふと思う。「この人たちはいったい何が目的だったのか」」「元刑事とヤンキーとのわくわくする旅が始まる。いったいどんなことが起きるのかと思ったとたん、急に牧歌的になっていくのもテンションが下がった。」 北方謙三 73歳 全 ● 21 「冗漫とか難解とかいうのではなく、小説の発想そのものが、文学と乖離しているのではないか、と思った。人間の物語のようであって、そうなっていない。」「文学作品を遣った謎解きにも違和感があり、作者がひとりで愉しみすぎているのではないか、と途中で感じたりした。」 角田光代 54歳 全 ■ 25 「作者が力を出し切った力作だと思う。」「ただ過去の殺人事件において、千百合が革命グループに心酔していたことがこれほど重要ならば、その革命グループの思想を、既存の知識や印象に頼らずもっと書いたほうが説得力が増すし、なぜ千百合がそこまで熱狂したのかがほんの数行でも書かれていれば、千百合もセイさんも、小説内には姿をあらわさない近藤柾人も、人物が生きたのではないか。」 高村薫 68歳 全 ● 15 「これでもかと詰め込まれた題材・登場人物・エピソード・仕掛けのすべてが未整理で、中心がどんどんずれていってしまう。」「本作はあれもこれもと欲張りすぎて、少々作者の手に余ったか。」 三浦しをん 44歳 全 ■ 35 「ぐいぐい拝読した。ただ個人的には、暗号を解けば金塊を手に入れられると思って読み進めたのに、まったく異なる結論に至ったのがやや不満というか、ちょっと「芯がブレている」感じを受けた。当初の目的とちがうものを手に入れてももちろんいいのだが、暗号解読の結論がロマンチックかつスイートすぎるせいかもしれない。」 浅田次郎 69歳 全 ● 6 「多くの場面において小説的ではない映像的な既視感をおぼえた。」 桐野夏生 69歳 全 ■ 30 「文章のテンポは悪くないだけに、どんどん景色が変わるように文章だけが先に進み、想像力が追いつかない。つまり、作者が意図的に隠したり、違う方向に誘おうとしているきらいがある。例えば、春子のための復讐でした喧嘩が、案外深刻なものだったという事実は、かなり後で明かされるが、その場面をきちんと書かないのはアンフェアである。千百合の事件も、後から連合赤軍事件と思しき事件が当てはめられるけれど、当時、その事件の中で生きた人間の内面に迫っていない。」 伊集院静 71歳 全 ■ 21 「日本列島を震撼させた若者と社会体制の衝突がいまだに小説として描かれうることを示している。」「ただ、この作品が物語として成立するのか？　と私は疑問を感じるし、検証するにたる文章をまだ確立されていないのではという思いを持たざるを得ないことも事実である。」 宮部みゆき 60歳 全 ― 0

他の候補作 佐藤究 『テスカトリポカ』 澤田瞳子 『星落ちて、なお』 一穂ミチ 『スモールワールズ』 砂原浩太朗 『高瀬庄左衛門御留書』

砂原浩太朗52歳×各選考委員　 『高瀬庄左衛門御留書』 長篇 573枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 林真理子 67歳 全 ■ 7 「抑制のきいた文章に魅了された。」「が、既視感から免れることは出来なかった。」 北方謙三 73歳 全 ■ 25 「暗く湿ったどうにもならない深い部分の情念に、手が届いたかもしれない。そのはじめの感じが、すぐに表層的な物語に後退した。」「この作品の肝が、嫁、舅の関係だと考えると、二人の描き方はいかにも安直である。暗く背徳的で、孤立した思いの部分まで、登場人物ではなく作者が踏みこめていないのだ。」 角田光代 54歳 全 ■ 14 「一揆が起き、幼なじみとの斬り合いも描かれるが、小説は一貫して静謐なままだ。それはこの小説、この作者の魅力だと思う。けれど同時に、登場人物とストーリーを、作者があまりにもコントロールしすぎているゆえのしずけさとも思えた。」 高村薫 68歳 全 ■ 17 「既視感の強い時代小説の定型であり、読者は安心して物語に身を委ねられるが、伏線や謎の回収が遅すぎ、終盤でまとめて明らかになるころには謎としての力を失っている。」 三浦しをん 44歳 全 ■ 23 「魅力ある登場人物が多いこと、ご飯がおいしそうなこと、暮らしに困窮する人々の存在にきちんと触れられていることに好感を持った。ただ、庄左衛門と嫁の志穂のあいだに恋愛感情が発生するのが、どうしても引っかかる。」「志穂が自立した意思を持つ生き生きとした女性として描かれているからなおさら、惜しいと思った。」 浅田次郎 69歳 全 ● 16 「新しい時代小説を提示する気概が欲しかった。」 桐野夏生 69歳 全 ■ 27 「最初は、描写の丁寧さと繊細さに驚いた。」「このトーンでゆくのかと思ったが、中盤から崩れる」「主人公の性格がよくわからなくなるところが多々あった」「主人公の小物ぶりは、人物造型として考えてあったのだろうか。とすれば、嫁の志穂が惹かれる理由がわからない。」 伊集院静 71歳 全 △ 26 「一読して、どこかで読んだ気がするという印象を受けることに私はいささか驚いた。」「私は、既視感ということについて、それが作家にとって初期のことであれば間々許されようと考える立場である。」そういうことを越えて、老いた侍の、苦悩と人間の情念とが、よく描けていると感心した。」 宮部みゆき 60歳 全 ― 0

他の候補作 佐藤究 『テスカトリポカ』 澤田瞳子 『星落ちて、なお』 一穂ミチ 『スモールワールズ』 呉勝浩 『おれたちの歌をうたえ』