生没年月日【注】 | 大正13年/1924年2月18日~平成27年/2015年1月21日 | |
在任期間 | 第94回~第110回(通算8.5年・17回) | |
在任年齢 | 61歳10ヶ月~69歳10ヶ月 | |
経歴 | 兵庫県生まれ。大阪外国語学校印度語科卒。 | |
受賞歴・候補歴 |
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処女作 | 『枯草の根』(昭和36年/1961年10月・講談社刊) | |
個人全集 | 『陳舜臣全集』全27巻(昭和61年/1986年5月~昭和63年/1988年9月・講談社刊) | |
直木賞候補歴 | 第46回候補 『枯草の根』(昭和36年/1961年10月・講談社刊) 第56回候補 『炎に絵を』(昭和41年/1966年9月・文藝春秋/ポケット文春) 第60回受賞 「青玉獅子香炉」(『別冊文藝春秋』105号[昭和43年/1968年9月]) |
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サイト内リンク | ▼小研究-ミステリーと直木賞 ▼直木賞受賞作全作読破への道Part3 |
下記の選評の概要には、評価として◎か○をつけたもの(見方・注意点を参照)、または受賞作に対するもののみ抜粋しました。さらにくわしい情報は、各回の「この回の全概要」をクリックしてご覧ください。
選考委員 陳舜臣 61歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
落合恵子 | 41歳 |
◎ | 16 | 「最も印象にのこった」「連作の冒頭に、どうしようもない状況が示され、はたして救いはないのかと問いかけてくる。つづいて、さまざまな角度からの切りこみで、救いの可能性が暗示される。」「私はそこに清冽な熱気をかんじた。風俗もみごとに描けているし、この作家が大成することはまちがいない。」 |
島田荘司 | 37歳 |
○ | 11 | 「はじめから物語の展開がほぼ予想できたが、主人公の若さが最後まで魅力を失わなかった。」「設定がヒッチコックの「裏窓」に似ていることなどが減点法の好餌となったのは残念である。」 |
60歳 |
□ | 10 | 「庶民の生きる場の縮図が歪みなく描かれ、そのあまりにも歪みのなさに、かえって不安さえおぼえた。ともあれ、人間の息吹きがたしかめられる一つの小世界が、親しみぶかくうかびあがり、私としてはこれを受賞作とするのに異存はない。」 | |
31歳 |
■ | 13 | 「登場する男に魅力がなく、読みながら、何の因果でこんなつまらない男の話につき合わねばならないのかと、腹立たしくなった。が、ひるがえって考えると、そんな読中感をおこさせるのも作家の手腕であろう。」 | |
「傾向として直木賞は完成度が重視され、減点法の選考が主流のようにおもえる。作品の構成が複雑になればなるほど不利となる。」 | ||||
選評出典:『オール讀物』昭和61年/1986年4月号 |
選考委員 陳舜臣 62歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
56歳 |
◎ | 33 | 「主人公ゆうの目が、全篇を通じていささかも乱れをみせていないのがみごとであった。」「ゆうは自分の世界のなかで、おぞましいことの多い現実と戦い、傷つきながら、彼女のなりの自己形成の道を行く。肩に力がはいりがちなその過程が、抑制のきいた筆でえがかれて、すばらしいビルドゥングスロマンであるとおもう。」「推理小説でない作品で受賞したことが、私にはいささか気になった。これからも皆川氏には推理小説をつづけて書いていただきたい。」 | |
泡坂妻夫 | 53歳 |
○ | 17 | 「すみずみまで行き届いた作品である。」「現実と非現実のあいだを、文章がやや古風に渡り歩き、一種のムードを醸し出し、それによって一層あざやかな現実を洗い出すという、いつもながらの泡坂節に、ファンである私は堪能した。」「二作受賞の声もあったが、泡坂・逢坂両氏に票が割れ、けっきょく見送られたのは惜しかった。」 |
選評出典:『オール讀物』昭和61年/1986年10月号 |
選考委員 陳舜臣 63歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
54歳 |
◎ | 26 | 「彼が直木賞候補にあげられたのは、これが八度目であるという。最初は第五十九回で、つぎが第六十一回であったそうだ。私が三度目の候補で受賞したのが第六十回のときであった。いわば肩をならべてきた戦友であり、その彼の作品を俎上にのせるのは奇妙なかんじである。」「群を抜いていて、正直いって私はほっとした。」「死の周辺に包みこまれた小宇宙のなかで、さまざまに共鳴し合う音を、読者はきくことができる。」 | |
泡坂妻夫 | 54歳 |
○ | 10 | 「歳月の経過をじゅうぶんに埋め尽したかんじがあり、ミステリーの要素もわずらわしくないていどに組み入れられ、私には好ましい作品におもえた。たそがれへの愛惜の情とでもいうべきものを、読者の胸に宿らせる力をもっている。」 |
三浦浩 | 57歳 |
○ | 41 | 「私たちが生きている時代を、奇抜に角度をかえることによって、まばゆいほどの光量で照らし出してくれた。」「細部の欠点は、設定作業の困難をおもえば、許容限度をこえていないようにおもう。筋が錯綜してわかりにくいところもあるが、そもそも事件にまきこまれた主人公自身、状況がよくわからずにもがいているのだ。」「このような良質の小説が登場してきたことをよろこびたい。」 |
選評出典:『オール讀物』昭和63年/1988年4月号 |
選考委員 陳舜臣 64歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
41歳 |
○ | 27 | 「現実を遠く超えた荒唐無稽が、シュルレアリズムとして、最も鋭く現実を再構築する例もあろう。(引用者中略)そんな創作のいろは(原文傍点)を思い起こさせた。」「なによりもおもしろく読めるのがこの作品の強みである。」「後半、冒険談になってから、密度がややゆるんだかんじがする。エネルギーの持続がこれからの景山氏の課題になるだろう。」 | |
西村望 | 62歳 |
○ | 10 | 「物語に迫力があり、ブルドーザーのように砂礫をはねとばして進む文章にも、独特の味がある。ただし、読む人によっては、それが文章の粗さと映るかもしれない。男性的なテーマを描き切ることのできる、貴重な才能であるとおもう。」 |
48歳 |
△ | 12 | 「ひとくちでいえば、しっかりした作品である。」「前回の候補作とのはばを考えると、西木氏の実力は着実に拡大安定にむかっているといえる。すでに実績を積みあげたのだから、これからは思い切った冒険も試みてほしいとおもう。」 | |
選評出典:『オール讀物』昭和63年/1988年10月号 |
選考委員 陳舜臣 64歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
35歳 |
◎ | 43 | 「文章によけいな細工をして、ある効果をもたせようという意図はないのに、全体にやさしさがにじみ出る効果をもたらしている。それは杉本氏の折り目正しい文章と、すなおな語り口によるものなのだ。」「もうすこし整理すれば、もっとよくなったであろうという声もあったが、持ち味まで削りとられたのでは元も子もない。私は杉本氏には、「この調子で」とアドバイスしたい。」 | |
古川薫 | 63歳 |
○ | 14 | 「土地のもつ魔力のようなものが、風景描写ではなく、人物描写によって、うまくにじみ出ている。ホテルの主人、手伝いの女、娼婦など、いずれも土地に根をもつ濃密な人間性が、半透明な主人公に蔽いかぶさって、ともどもに存在感をあざやかにしている。受賞にいたらなかったのは残念である。」 |
39歳 |
△ | 26 | 「このまえの候補作『マドンナのごとく』にくらべると、格段によくなっている。」「藤堂氏の文章は、読者をうまく乗せてしまうリズムがある。そのリズムに頼りすぎると危険ではあるまいか。リズムは常に変化しなければ平板になる。藤堂氏の作品の醸し出すふしぎな魅力は、不安定の美、であるかもしれない。」「安定していないというのは、大成の可能性が大きいという意味である。」 | |
選評出典:『オール讀物』平成1年/1989年3月号 |
選考委員 陳舜臣 65歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
隆慶一郎 | 65歳 |
○ | 7 | 「いつものことながら、作者の世界にひきこまれて、あっというまに読んだ。作者の批評精神が、ときどき作中にのぞくが、私にはそれほど気にならなかった。」 |
古川薫 | 64歳 |
○ | 9 | 「贅肉のない文章で独特のムードを醸し出した作品である。」「このような良質の中篇が、日本のエンターテインメントに欠けているのではあるまいか。読んでいてふとシムノンを連想した。」 |
40歳 |
△ | 20 | 「前回の候補作「漂流裁判」から一歩も二歩も前進している。ただ話の進行のつなぎに、もうすこし工夫が欲しかった。」「強い問題意識をもった執筆姿勢に好感がもてる。じゃぱゆきさんの境遇というテーマが作者の正義感によって光っている。」 | |
41歳 |
■ | 28 | 「淡彩スケッチふうの佳品である。少年の目を通して、家族や界隈の人たちがあざやかに描かれている。ところが、読んでいても、かんじんの少年の顔がみえてこない。あるいは少年の顔をみせないのが、この作品の基本的な姿勢かもしれない。」 | |
「私は選考の結果、どの作品が受賞しても異議はないという心構えで、選考会に臨んだ。一面からいえば、これでなければならないという突出した作品もなかったことになる。これは全体のレベルの高さをよろこぶべきであろう。」 | ||||
選評出典:『オール讀物』平成1年/1989年9月号 |
選考委員 陳舜臣 65歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
43歳 |
○ | 15 | 「日本のハードボイルドも、やっとこのような作品をうむようになったかという感慨が先に立った。うれしい作品である。」「登場人物を含めて、もうすこし刈り込めたいのではないか、という不満もないではないが、近年、出色のミステリーであることにまちがいはない。」「瑕瑾の謗りを気にしないで、我が道を行ってほしい。」 | |
酒見賢一 | 26歳 |
○ | 26 | 「ほとんど作者の頭脳からうみ出された物語で、それに敬意を表したいとおもう。」「純架空物語はすくなくないが、「後宮小説」はそれに比肩しうる佳作であろう。登場人物の性格が、あざやかに書き分けられ、最後まで破綻がないのはみごとである。」 |
68歳 |
△ | 11 | 「うまい作品である。文章と話し口のうまさのわりには、感銘度が浅かった。小伝という女性の燃えるすがたを期待しすぎたかもしれない。この作品はむしろ「権八抄」として読むべきであろう。」 | |
「このたびの候補作で、これは困る、という作品は一作もなく、そのために選考にあたって、こちらが困ってしまったのが正直なところである。」 | ||||
選評出典:『オール讀物』平成2年/1990年3月号 |
選考委員 陳舜臣 68歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
東郷隆 | 41歳 |
◎ | 15 | 「中世の雰囲気がよく出ていた。妖術や幻術のたぐいは、中世をいろどるおもなトーンといってよい。小説に登場させるのはかなり危険だが、東郷氏は大手を振ってそれをやってのけた。その度胸のよさを買いたい。構成にもさしたる破綻はなく、良質のエンターテインメントになっている。」 |
宮部みゆき | 32歳 |
○ | 14 | 「今日的なテーマを、掘り下げて描いた秀作だが、すこし肥満気味である。会話などにやや冗長な部分があり、それを苅りこんで、もっとスリムにできたのではないか。いずれにしても、宮部氏の力量が安定感を増したことを証明する作品といえるだろう。」 |
48歳 |
□ | 14 | 「きめのこまかい文章で、前半はみごとで、これはと思わせたが、幸徳秋水や管野スガといった実在の人物が出てくると、とみに厚みを失ったかんじがした。自分ひとりで面白がっていて、その面白さが読者に伝わってこないうらみがある。」 | |
「今回の候補作五作は、あまり優劣の差はないようにおもえた。」「選考委員会に出席することができず、やむをえず書面回答となった。各作品僅差とおもったので、どの作品が受賞作になっても反対しないことを、選考委員会にお伝えした。」 | ||||
選評出典:『オール讀物』平成5年/1993年3月号 |