芥川賞のすべて・のようなもの
第138回
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平成19年/2007年下半期
(平成20年/2008年1月16日決定発表/『文藝春秋』平成20年/2008年3月号選評掲載)
選考委員  池澤夏樹
男62歳
小川洋子
女45歳
村上龍
男55歳
黒井千次
男75歳
高樹のぶ子
女61歳
宮本輝
男60歳
川上弘美
女49歳
石原慎太郎
男75歳
山田詠美
女48歳
選評総行数  45 47 61 47 44 50 48 65 49
候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数
川上未映子 「乳と卵」
128
女31歳
21 25 17 18 0 18 21 13 5
田中慎弥 「切れた鎖」
105
男35歳
0 7 0 3 0 0 0 0 6
津村記久子 「カソウスキの行方」
110
女29歳
10 0 0 4 0 0 0 6 8
中山智幸 「空で歌う」
146
男32歳
10 0 0 3 0 0 0 0 8
西村賢太 「小銭をかぞえる」
108
男40歳
0 0 0 3 0 15 0 15 6
山崎ナオコーラ 「カツラ美容室別室」
201
女29歳
9 0 23 3 0 4 0 16 7
楊逸 「ワンちゃん」
113
女43歳
13 15 26 23 11 13 23 16 9
                 
年齢/枚数の説明   見方・注意点

このページの選評出典:『文藝春秋』平成20年/2008年3月号
1行当たりの文字数:14字


選考委員
池澤夏樹男62歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
仕掛けとたくらみの小説 総行数45 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
川上未映子
女31歳
21 「仕掛けとたくらみに満ちたよい小説だった。」「二泊三日の滞在という短い時間内にきっちりとドラマが構築されている。」「最適な量の大阪弁を交えた饒舌な口語調の文体が巧みで、読む者の頭の中によく響く。」「樋口一葉へのオマージュが隠してあるあたりもおもしろい。」
田中慎弥
男35歳
0  
津村記久子
女29歳
10 「なぜか最近の候補作には、寝そうで寝ない男女の仲をゆるゆると書いた話が多い。」「小説というのはもっと仕掛けるものではないか。」
中山智幸
男32歳
10 「なぜか最近の候補作には、寝そうで寝ない男女の仲をゆるゆると書いた話が多い。」「小説というのはもっと仕掛けるものではないか。」
西村賢太
男40歳
0  
山崎ナオコーラ
女29歳
9 「なぜか最近の候補作には、寝そうで寝ない男女の仲をゆるゆると書いた話が多い。」「小説というのはもっと仕掛けるものではないか。」
楊逸
女43歳
13 「問題作。国境を越え、言語の境界を越えて新鮮なストーリーを日本語文学にもたらしたことは高く評価する。」「この賞を出すにはもう何歩か洗練された日本語の文体が求められる。」
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他の選考委員
小川洋子
村上龍
黒井千次
高樹のぶ子
宮本輝
川上弘美
石原慎太郎
山田詠美
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選考委員
小川洋子女45歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
余計なお世話 総行数47 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
川上未映子
女31歳
25 「目の前にある、具体的な形を持つ何かを書き表わす時、その輪郭をなぞる指先が、独特の威力を持つ。勝手気ままに振る舞っているように見せかけながら、慎重に言葉を編み込んでゆく才能は見事だった。」「ただ、読み終えた時、もしこれが母娘の関係を描くのではなく、巻子さんの狂気にのみ焦点を絞った小説だったら……と想像してしまった。(引用者中略)しかしこれは、全くの余計なお世話である。」
田中慎弥
男35歳
7 「梅子が、私は忘れられない。性的な言葉を放出しながら他者を蔑む彼女の存在感は圧倒的だった。たとえ古臭いと言われても、構わず行けるところまで行ってほしい。」
津村記久子
女29歳
0  
中山智幸
男32歳
0  
西村賢太
男40歳
0  
山崎ナオコーラ
女29歳
0  
楊逸
女43歳
15 「日本語が、日本人が書いたのと変らない美しい文章である必要はないと思う。」「けれどワンちゃんが愛すべき人物であるのは間違いない。」
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他の選考委員
池澤夏樹
村上龍
黒井千次
高樹のぶ子
宮本輝
川上弘美
石原慎太郎
山田詠美
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選考委員
村上龍男55歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
選評 総行数61 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
川上未映子
女31歳
17 「3作(引用者注:「ワンちゃん」「カツラ美容室別室」「乳と卵」)を推薦しようと思った。」「「乳と卵」だけが受賞したのだが、作者の力量と作品の完成度からすると妥当な結果だと言える。」「長い長い地の文は充分にコントロールされていて、ときおり関西弁が挿入されるが、読者のために緻密に「翻訳」されている。」
田中慎弥
男35歳
0  
津村記久子
女29歳
0  
中山智幸
男32歳
0  
西村賢太
男40歳
0  
山崎ナオコーラ
女29歳
23 「3作(引用者注:「ワンちゃん」「カツラ美容室別室」「乳と卵」)を推薦しようと思った。」「非常に好感が持てる作品で、最初から最後まで破綻がなく面白く読んだ。」「特に、「疲れる女といるよりも、アパートで牛乳を温める方がいい。」という一節は、正統な欲望・欲求を持ち得ない成熟社会の若い男の台詞として象徴的だと思った。だが他の選考委員の評価は低く、「スカスカで何もない」という批判が多かった。」
楊逸
女43歳
26 「3作(引用者注:「ワンちゃん」「カツラ美容室別室」「乳と卵」)を推薦しようと思った。」「日本語表現が「稚拙」という理由で受賞には至らなかった。だがわたしは、移民二世や在日外国人による今後の日本語表現にモチベーションを与えるという意味でも受賞してほしかった。」「それにしても、ヒロインの中国人女性の視点で描かれた日本の地方の「惨状」はリアルだった。」
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他の選考委員
池澤夏樹
小川洋子
黒井千次
高樹のぶ子
宮本輝
川上弘美
石原慎太郎
山田詠美
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選考委員
黒井千次男75歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
大阪と中国の女性達 総行数47 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
川上未映子
女31歳
18 「前回候補作『わたくし率 イン 歯ー、または世界』に見られた言葉のエネルギーが持続力を持つものであることを証明する作品であった。」「女ばかりの二泊三日を通して、女であることの心身の実像を「泣き笑い」の如く描き出す。息の長い文章は「わたし」の語る大阪弁に支えられてはじめて成立すると思われる。」
田中慎弥
男35歳
3 「企みと作品の仕上りとの間に隙間があるような印象を受けた。」
津村記久子
女29歳
4 「時代の空気のようなものを感じた。」
中山智幸
男32歳
3 「企みと作品の仕上りとの間に隙間があるような印象を受けた。」
西村賢太
男40歳
3 「企みと作品の仕上りとの間に隙間があるような印象を受けた。」
山崎ナオコーラ
女29歳
3 「企みと作品の仕上りとの間に隙間があるような印象を受けた。」
楊逸
女43歳
23 「結婚というものを何よりも生活上の必要として捉えるリアルな視点が新鮮である。」「主人公の夫が充分に描かれず、姑の病気や死の方にウェイトのかかった末尾に不満は覚えるが、日本人のあまり書かなくなってしまった世界を突きつけられたような感慨を覚えた。日本語の表現に致命的な問題があるとは感じなかった。」
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他の選考委員
池澤夏樹
小川洋子
村上龍
高樹のぶ子
宮本輝
川上弘美
石原慎太郎
山田詠美
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選考委員
高樹のぶ子女61歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
「絶対文学と文芸ジャーナリズムの間で」 総行数44 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
川上未映子
女31歳
0  
田中慎弥
男35歳
0  
津村記久子
女29歳
0  
中山智幸
男32歳
0  
西村賢太
男40歳
0  
山崎ナオコーラ
女29歳
0  
楊逸
女43歳
11 「私にはぎりぎり許容できたが、ぎりぎりアウトの選考委員もいた。その線引きは日本語としての文章への許容度だったと思う。あるいは盛り込まれた情報に対する、評価の軽重か。」「中身はあるのに技術が足りない。多くの新人の逆である。」
  「実作者が受賞作を選ぶということは、(引用者中略)ある種の妥協を、意識的にであれ無意識にであれ、行うことだ。(引用者中略)自らの許容を強いることなしに受賞作は生まれにくい。選考料はある意味、この苦痛に対して支払われるものだと私は考えている。」「一方で文芸ジャーナリズムは、この絶対文学の対極にある。(引用者中略)小説が持っている情報の社会的鮮度と質量を、文学の重要な要素とする感覚のことで、これが無くては芥川賞は生き延びて来なかったと思う。」
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他の選考委員
池澤夏樹
小川洋子
村上龍
黒井千次
宮本輝
川上弘美
石原慎太郎
山田詠美
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選考委員
宮本輝男60歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
作家の引き出し 総行数50 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
川上未映子
女31歳
18 「作家としての引き出しの多さが『乳と卵』によってはっきりした。」「前作のいささかこざかしい言葉のフラグメントは『乳と卵』では整頓されて、そのぶん逆に灰汁が強くなった。」「諸手をあげてというわけにはいかなかったが、最終的に私も受賞に賛成票を投じた。」
田中慎弥
男35歳
0  
津村記久子
女29歳
0  
中山智幸
男32歳
0  
西村賢太
男40歳
15 「支持する委員は少なかった。私も推さなかったが、小説のうまさは候補作七篇のなかでは秀でたものを感じた。ただ、内容が前作とまったく同じで、藤沢清造という作家の全集を刊行することに執着しつづける男の、その根本的な動機というものが伝わってこない。」「私は、西村氏の書くまったく別の主人公による小説を読みたい。」
山崎ナオコーラ
女29歳
4 「期待したが、小説としての芯をみつけられないまま読み終えた。」
楊逸
女43歳
13 「とにもかくにも日本語が未熟すぎた。母国語以外で小説を書いたからといって、その粗さを大目に見るというわけにはいかない。小説の構成も粗くて、今日的な素材に対する作家としての繊細さに疑いを持たせてしまった。」
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他の選考委員
池澤夏樹
小川洋子
村上龍
黒井千次
高樹のぶ子
川上弘美
石原慎太郎
山田詠美
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選考委員
川上弘美女49歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
もう一度会いたい人 総行数48 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
川上未映子
女31歳
21 「少なくとも(引用者注:全候補作に登場する)三十人以上の人たちに会った。どの人にもう一度会いたいか、じっと考えた。」「緑子。ワンちゃん。その二人だと思った。」「あと十年たった緑子がどうなっているのか、たいそう興味をひかれる。病んでいるのに、不思議にすこやかな印象がある。」「緑子は、二度めに会った時、背反するものをさらに強く身の内に感じさせて玄妙だった。」
田中慎弥
男35歳
0  
津村記久子
女29歳
0  
中山智幸
男32歳
0  
西村賢太
男40歳
0  
山崎ナオコーラ
女29歳
0  
楊逸
女43歳
23 「少なくとも(引用者注:全候補作に登場する)三十人以上の人たちに会った。どの人にもう一度会いたいか、じっと考えた。」「緑子。ワンちゃん。その二人だと思った。」「(引用者注:ワンちゃんは)目が離せない。応援したくなる。弱いところがあって、そこが魅力的。」「二度め、そして三度めと会う回数が増えるにしたがって、こちらをなかなか向いてくれない、という印象があらわれはじめた。」
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他の選考委員
池澤夏樹
小川洋子
村上龍
黒井千次
高樹のぶ子
宮本輝
石原慎太郎
山田詠美
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選考委員
石原慎太郎男75歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
薄くて、軽い 総行数65 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
川上未映子
女31歳
13 「私はまったく認めなかった。」「乳房のメタファとしての意味が伝わってこない。」「一人勝手な調子に乗ってのお喋りは私には不快でただ聞き苦しい。この作品を評価しなかったということで私が将来慙愧することは恐らくあり得まい。」
田中慎弥
男35歳
0  
津村記久子
女29歳
6 「(引用者注:「カツラ美容室別室」等と共に、生活の無為性や無劇の劇性が)人間の最も芯にあるものに触れてくるなら結構だが、それもまた稀薄な作品ばかりだった。」
中山智幸
男32歳
0  
西村賢太
男40歳
15 「私にとって一番強い印象だった」「金策の地獄というのは人間の業のからんだ永遠の主題だが、今一つの迫力に欠ける。」「あられもない金策の理由がもっと普遍的なものの方が、金にあがく人間を太宰治的な世界として描けるのではなかろうか。」
山崎ナオコーラ
女29歳
16 「いわばただ流れる日々の無劇の劇のスケッチは旨いが、しょせんただそれだけ。淳之介とエリが結局結ばれない、というのはそれはそれでいいのだが、ならばなんでそういうことなのかという納得にはいたらない。」
楊逸
女43歳
16 「日本語としての文章が粗雑すぎる。」「アーサー・ビナード氏の詩集の日本語としての完成度と比べれば雲泥の差である。選者の誰かが、「こうした素材を描いた小説が文藝春秋の本誌に載ることに意味がある」などといっていたがそれは本来文学の本質とは全く関わりない。」
  「今回の候補作を通じていえることは素材の軽さといおうか、生活の無為性、無劇の劇性というべきものだろうか。」
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他の選考委員
池澤夏樹
小川洋子
村上龍
黒井千次
高樹のぶ子
宮本輝
川上弘美
山田詠美
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選考委員
山田詠美女48歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
「選評」 総行数49 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
川上未映子
女31歳
5 「容れ物としての女性の体の中に調合された感情を描いて、滑稽にして哀切。受賞作にと、即決した。」
田中慎弥
男35歳
6 「過去と現在、母と娘などの書き分けが上手く出来ていないので、誰が誰だかさっぱり解らなくなる。」
津村記久子
女29歳
8 「本来、漢字、平仮名で表記する言葉を片仮名にして雰囲気を持たせるやり方は、もう、ちょっと古い。そして、ちょっと古いものは、一番、古臭い。」
中山智幸
男32歳
8 「〈静かにゆれる海の上で巨大な船体が、民衆を見渡す権力者を思わせる悠然とした動きで左回りに動き始めた〉…って、これ、単なるフェリーでしょ?」
西村賢太
男40歳
6 「相変わらず、卑屈さと厚かましさのコントラストが抜群。ただし、そう感じるのは、この作者の小説を読み続けて来た故。いちげんさんの読者を意識すべし。」
山崎ナオコーラ
女29歳
7 「カツラ美容室のカツラさんがカツラをかぶっているという冒頭。これって、つかみ? それとも笑うとこ? 全然、乗れないんですけど。主人公の他人への接し方はチャーミングだが。」
楊逸
女43歳
9 「候補作の主人公の中で、一番応援したくなる〈ワンちゃん〉。でも、つたない。」「マスコミにひと言。文学は政治を題材に出来るが、政治は、文学を包容し得ない。選考と政治は無縁なり。」
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他の選考委員
池澤夏樹
小川洋子
村上龍
黒井千次
高樹のぶ子
宮本輝
川上弘美
石原慎太郎
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受賞者・作品
川上未映子女31歳×各選考委員 
「乳と卵」
短篇 128
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
池澤夏樹
男62歳
21 「仕掛けとたくらみに満ちたよい小説だった。」「二泊三日の滞在という短い時間内にきっちりとドラマが構築されている。」「最適な量の大阪弁を交えた饒舌な口語調の文体が巧みで、読む者の頭の中によく響く。」「樋口一葉へのオマージュが隠してあるあたりもおもしろい。」
小川洋子
女45歳
25 「目の前にある、具体的な形を持つ何かを書き表わす時、その輪郭をなぞる指先が、独特の威力を持つ。勝手気ままに振る舞っているように見せかけながら、慎重に言葉を編み込んでゆく才能は見事だった。」「ただ、読み終えた時、もしこれが母娘の関係を描くのではなく、巻子さんの狂気にのみ焦点を絞った小説だったら……と想像してしまった。(引用者中略)しかしこれは、全くの余計なお世話である。」
村上龍
男55歳
17 「3作(引用者注:「ワンちゃん」「カツラ美容室別室」「乳と卵」)を推薦しようと思った。」「「乳と卵」だけが受賞したのだが、作者の力量と作品の完成度からすると妥当な結果だと言える。」「長い長い地の文は充分にコントロールされていて、ときおり関西弁が挿入されるが、読者のために緻密に「翻訳」されている。」
黒井千次
男75歳
18 「前回候補作『わたくし率 イン 歯ー、または世界』に見られた言葉のエネルギーが持続力を持つものであることを証明する作品であった。」「女ばかりの二泊三日を通して、女であることの心身の実像を「泣き笑い」の如く描き出す。息の長い文章は「わたし」の語る大阪弁に支えられてはじめて成立すると思われる。」
高樹のぶ子
女61歳
0  
宮本輝
男60歳
18 「作家としての引き出しの多さが『乳と卵』によってはっきりした。」「前作のいささかこざかしい言葉のフラグメントは『乳と卵』では整頓されて、そのぶん逆に灰汁が強くなった。」「諸手をあげてというわけにはいかなかったが、最終的に私も受賞に賛成票を投じた。」
川上弘美
女49歳
21 「少なくとも(引用者注:全候補作に登場する)三十人以上の人たちに会った。どの人にもう一度会いたいか、じっと考えた。」「緑子。ワンちゃん。その二人だと思った。」「あと十年たった緑子がどうなっているのか、たいそう興味をひかれる。病んでいるのに、不思議にすこやかな印象がある。」「緑子は、二度めに会った時、背反するものをさらに強く身の内に感じさせて玄妙だった。」
石原慎太郎
男75歳
13 「私はまったく認めなかった。」「乳房のメタファとしての意味が伝わってこない。」「一人勝手な調子に乗ってのお喋りは私には不快でただ聞き苦しい。この作品を評価しなかったということで私が将来慙愧することは恐らくあり得まい。」
山田詠美
女48歳
5 「容れ物としての女性の体の中に調合された感情を描いて、滑稽にして哀切。受賞作にと、即決した。」
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他の候補作
田中慎弥
「切れた鎖」
津村記久子
「カソウスキの行方」
中山智幸
「空で歌う」
西村賢太
「小銭をかぞえる」
山崎ナオコーラ
「カツラ美容室別室」
楊逸
「ワンちゃん」
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候補者・作品
田中慎弥男35歳×各選考委員 
「切れた鎖」
短篇 105
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
池澤夏樹
男62歳
0  
小川洋子
女45歳
7 「梅子が、私は忘れられない。性的な言葉を放出しながら他者を蔑む彼女の存在感は圧倒的だった。たとえ古臭いと言われても、構わず行けるところまで行ってほしい。」
村上龍
男55歳
0  
黒井千次
男75歳
3 「企みと作品の仕上りとの間に隙間があるような印象を受けた。」
高樹のぶ子
女61歳
0  
宮本輝
男60歳
0  
川上弘美
女49歳
0  
石原慎太郎
男75歳
0  
山田詠美
女48歳
6 「過去と現在、母と娘などの書き分けが上手く出来ていないので、誰が誰だかさっぱり解らなくなる。」
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他の候補作
川上未映子
「乳と卵」
津村記久子
「カソウスキの行方」
中山智幸
「空で歌う」
西村賢太
「小銭をかぞえる」
山崎ナオコーラ
「カツラ美容室別室」
楊逸
「ワンちゃん」
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候補者・作品
津村記久子女29歳×各選考委員 
「カソウスキの行方」
短篇 110
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
池澤夏樹
男62歳
10 「なぜか最近の候補作には、寝そうで寝ない男女の仲をゆるゆると書いた話が多い。」「小説というのはもっと仕掛けるものではないか。」
小川洋子
女45歳
0  
村上龍
男55歳
0  
黒井千次
男75歳
4 「時代の空気のようなものを感じた。」
高樹のぶ子
女61歳
0  
宮本輝
男60歳
0  
川上弘美
女49歳
0  
石原慎太郎
男75歳
6 「(引用者注:「カツラ美容室別室」等と共に、生活の無為性や無劇の劇性が)人間の最も芯にあるものに触れてくるなら結構だが、それもまた稀薄な作品ばかりだった。」
山田詠美
女48歳
8 「本来、漢字、平仮名で表記する言葉を片仮名にして雰囲気を持たせるやり方は、もう、ちょっと古い。そして、ちょっと古いものは、一番、古臭い。」
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他の候補作
川上未映子
「乳と卵」
田中慎弥
「切れた鎖」
中山智幸
「空で歌う」
西村賢太
「小銭をかぞえる」
山崎ナオコーラ
「カツラ美容室別室」
楊逸
「ワンちゃん」
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候補者・作品
中山智幸男32歳×各選考委員 
「空で歌う」
短篇 146
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
池澤夏樹
男62歳
10 「なぜか最近の候補作には、寝そうで寝ない男女の仲をゆるゆると書いた話が多い。」「小説というのはもっと仕掛けるものではないか。」
小川洋子
女45歳
0  
村上龍
男55歳
0  
黒井千次
男75歳
3 「企みと作品の仕上りとの間に隙間があるような印象を受けた。」
高樹のぶ子
女61歳
0  
宮本輝
男60歳
0  
川上弘美
女49歳
0  
石原慎太郎
男75歳
0  
山田詠美
女48歳
8 「〈静かにゆれる海の上で巨大な船体が、民衆を見渡す権力者を思わせる悠然とした動きで左回りに動き始めた〉…って、これ、単なるフェリーでしょ?」
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他の候補作
川上未映子
「乳と卵」
田中慎弥
「切れた鎖」
津村記久子
「カソウスキの行方」
西村賢太
「小銭をかぞえる」
山崎ナオコーラ
「カツラ美容室別室」
楊逸
「ワンちゃん」
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候補者・作品
西村賢太男40歳×各選考委員 
「小銭をかぞえる」
短篇 108
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
池澤夏樹
男62歳
0  
小川洋子
女45歳
0  
村上龍
男55歳
0  
黒井千次
男75歳
3 「企みと作品の仕上りとの間に隙間があるような印象を受けた。」
高樹のぶ子
女61歳
0  
宮本輝
男60歳
15 「支持する委員は少なかった。私も推さなかったが、小説のうまさは候補作七篇のなかでは秀でたものを感じた。ただ、内容が前作とまったく同じで、藤沢清造という作家の全集を刊行することに執着しつづける男の、その根本的な動機というものが伝わってこない。」「私は、西村氏の書くまったく別の主人公による小説を読みたい。」
川上弘美
女49歳
0  
石原慎太郎
男75歳
15 「私にとって一番強い印象だった」「金策の地獄というのは人間の業のからんだ永遠の主題だが、今一つの迫力に欠ける。」「あられもない金策の理由がもっと普遍的なものの方が、金にあがく人間を太宰治的な世界として描けるのではなかろうか。」
山田詠美
女48歳
6 「相変わらず、卑屈さと厚かましさのコントラストが抜群。ただし、そう感じるのは、この作者の小説を読み続けて来た故。いちげんさんの読者を意識すべし。」
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他の候補作
川上未映子
「乳と卵」
田中慎弥
「切れた鎖」
津村記久子
「カソウスキの行方」
中山智幸
「空で歌う」
山崎ナオコーラ
「カツラ美容室別室」
楊逸
「ワンちゃん」
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候補者・作品
山崎ナオコーラ女29歳×各選考委員 
「カツラ美容室別室」
中篇 201
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
池澤夏樹
男62歳
9 「なぜか最近の候補作には、寝そうで寝ない男女の仲をゆるゆると書いた話が多い。」「小説というのはもっと仕掛けるものではないか。」
小川洋子
女45歳
0  
村上龍
男55歳
23 「3作(引用者注:「ワンちゃん」「カツラ美容室別室」「乳と卵」)を推薦しようと思った。」「非常に好感が持てる作品で、最初から最後まで破綻がなく面白く読んだ。」「特に、「疲れる女といるよりも、アパートで牛乳を温める方がいい。」という一節は、正統な欲望・欲求を持ち得ない成熟社会の若い男の台詞として象徴的だと思った。だが他の選考委員の評価は低く、「スカスカで何もない」という批判が多かった。」
黒井千次
男75歳
3 「企みと作品の仕上りとの間に隙間があるような印象を受けた。」
高樹のぶ子
女61歳
0  
宮本輝
男60歳
4 「期待したが、小説としての芯をみつけられないまま読み終えた。」
川上弘美
女49歳
0  
石原慎太郎
男75歳
16 「いわばただ流れる日々の無劇の劇のスケッチは旨いが、しょせんただそれだけ。淳之介とエリが結局結ばれない、というのはそれはそれでいいのだが、ならばなんでそういうことなのかという納得にはいたらない。」
山田詠美
女48歳
7 「カツラ美容室のカツラさんがカツラをかぶっているという冒頭。これって、つかみ? それとも笑うとこ? 全然、乗れないんですけど。主人公の他人への接し方はチャーミングだが。」
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他の候補作
川上未映子
「乳と卵」
田中慎弥
「切れた鎖」
津村記久子
「カソウスキの行方」
中山智幸
「空で歌う」
西村賢太
「小銭をかぞえる」
楊逸
「ワンちゃん」
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候補者・作品
楊逸女43歳×各選考委員 
「ワンちゃん」
短篇 113
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
池澤夏樹
男62歳
13 「問題作。国境を越え、言語の境界を越えて新鮮なストーリーを日本語文学にもたらしたことは高く評価する。」「この賞を出すにはもう何歩か洗練された日本語の文体が求められる。」
小川洋子
女45歳
15 「日本語が、日本人が書いたのと変らない美しい文章である必要はないと思う。」「けれどワンちゃんが愛すべき人物であるのは間違いない。」
村上龍
男55歳
26 「3作(引用者注:「ワンちゃん」「カツラ美容室別室」「乳と卵」)を推薦しようと思った。」「日本語表現が「稚拙」という理由で受賞には至らなかった。だがわたしは、移民二世や在日外国人による今後の日本語表現にモチベーションを与えるという意味でも受賞してほしかった。」「それにしても、ヒロインの中国人女性の視点で描かれた日本の地方の「惨状」はリアルだった。」
黒井千次
男75歳
23 「結婚というものを何よりも生活上の必要として捉えるリアルな視点が新鮮である。」「主人公の夫が充分に描かれず、姑の病気や死の方にウェイトのかかった末尾に不満は覚えるが、日本人のあまり書かなくなってしまった世界を突きつけられたような感慨を覚えた。日本語の表現に致命的な問題があるとは感じなかった。」
高樹のぶ子
女61歳
11 「私にはぎりぎり許容できたが、ぎりぎりアウトの選考委員もいた。その線引きは日本語としての文章への許容度だったと思う。あるいは盛り込まれた情報に対する、評価の軽重か。」「中身はあるのに技術が足りない。多くの新人の逆である。」
宮本輝
男60歳
13 「とにもかくにも日本語が未熟すぎた。母国語以外で小説を書いたからといって、その粗さを大目に見るというわけにはいかない。小説の構成も粗くて、今日的な素材に対する作家としての繊細さに疑いを持たせてしまった。」
川上弘美
女49歳
23 「少なくとも(引用者注:全候補作に登場する)三十人以上の人たちに会った。どの人にもう一度会いたいか、じっと考えた。」「緑子。ワンちゃん。その二人だと思った。」「(引用者注:ワンちゃんは)目が離せない。応援したくなる。弱いところがあって、そこが魅力的。」「二度め、そして三度めと会う回数が増えるにしたがって、こちらをなかなか向いてくれない、という印象があらわれはじめた。」
石原慎太郎
男75歳
16 「日本語としての文章が粗雑すぎる。」「アーサー・ビナード氏の詩集の日本語としての完成度と比べれば雲泥の差である。選者の誰かが、「こうした素材を描いた小説が文藝春秋の本誌に載ることに意味がある」などといっていたがそれは本来文学の本質とは全く関わりない。」
山田詠美
女48歳
9 「候補作の主人公の中で、一番応援したくなる〈ワンちゃん〉。でも、つたない。」「マスコミにひと言。文学は政治を題材に出来るが、政治は、文学を包容し得ない。選考と政治は無縁なり。」
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他の候補作
川上未映子
「乳と卵」
田中慎弥
「切れた鎖」
津村記久子
「カソウスキの行方」
中山智幸
「空で歌う」
西村賢太
「小銭をかぞえる」
山崎ナオコーラ
「カツラ美容室別室」
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