芥川賞のすべて・のようなもの
選評の概要
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156.
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Last Update[H29]2017/2/15

宮本輝
Miyamoto Teru
生没年月日【注】 昭和22年/1947年3月6日~
在任期間 第114回~(通算21.5年・43回)
在任年齢 48歳9ヶ月~
経歴 本名=宮本正仁。兵庫県神戸市生まれ。追手門学院大学文学部卒。サンケイ広告社に勤め、作家を志し昭和50年/1975年に退社。太宰治賞受賞で作家デビュー。
受賞歴・候補歴
個人全集 『宮本輝全集』全14巻(平成4年/1992年4月~平成5年/1993年5月・新潮社刊)
芥川賞候補歴 第78回受賞 「螢川」(『文芸展望』19号/昭和52年/1977年秋季号[10月])
備考
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下記の選評の概要には、評価として◎か○をつけたもの(見方・注意点を参照)、または受賞作に対するもののみ抜粋しました。さらにくわしい情報は、各回の「この回の全概要」をクリックしてご覧ください。

芥川賞 114 平成7年/1995年下半期   一覧へ
選評の概要 選評 総行数39 (1行=24字)
選考委員 宮本輝 男48歳
候補 評価 行数 評言
男48歳
15 「これまで幾つかの文学賞の選考で沖縄を舞台にした作品を何篇か読んできたが、(引用者中略)最も優れていると思う。」「沖縄という固有の風土で生きる庶民の息づかいや生命力を、ときに繊細に、ときに野太く描きあげた。」「読み終えて、私はなぜか一種の希望のようなものを感じた。」
選評出典:『芥川賞全集 第十七巻』平成14年/2002年8月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成8年/1996年3月号)
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芥川賞 115 平成8年/1996年上半期   一覧へ
選評の概要 しょせん寓話だ 総行数35 (1行=24字)
選考委員 宮本輝 男49歳
候補 評価 行数 評言
福島次郎
男(66歳)
10 「好感を持ったが、いいところと悪いところの差がありすぎるという意見にはうなずかざるを得なかった。」「同性愛を苦しいまでの恋として描いた筆さばきに底力を感じた。この作者は、ここまで〈はらわた〉を見せるために長い年月が必要であったにちがいない。その点も含めて、私は(引用者中略)受賞作として推した。」
女38歳
8 「私はまったく評価していなかったので、最初の投票で委員の多くがこの作品を推したときには驚いてしまった。」「蛇が人間と化して喋ったりすることに、私は文学的幻想を感じない。」「私は最後まで「蛇を踏む」の受賞に反対意見を述べた。寓話はしょせん寓話でしかないと私は思っている。」
選評出典:『芥川賞全集 第十七巻』平成14年/2002年8月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成8年/1996年9月号)
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芥川賞 116 平成8年/1996年下半期   一覧へ
選評の概要 「人間」という謎 総行数38 (1行=24字)
選考委員 宮本輝 男49歳
候補 評価 行数 評言
男37歳
17 「一気に読んだ。」「辻氏の筆からスタミナは最後まで失われず、不可知な人間の闇を描くことに成功したと思う。」「力あまって、生硬な文章が多用されていて、そこが黙認できないという委員の意見も理解したうえで、なお、私は「海峡の光」の確固たる小説世界を支持した。」「辻氏は、作家としてのある決意を秘めて、この作品に立ち向かっている。その気迫もまた、私は読みながら感じつづけることができた。」
女28歳
6 「前作「フルハウス」の構成上の崩れが少なくなり、家族のなかの孤独、もしくは異和感が、そのまま社会や人間世界における自分の居場所の喪失感につながっている。」「受賞作となることに賛成した。」
選評出典:『芥川賞全集 第十七巻』平成14年/2002年8月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成9年/1997年3月号)
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芥川賞 117 平成9年/1997年上半期   一覧へ
選評の概要 優れた構成と精神性 総行数36 (1行=24字)
選考委員 宮本輝 男50歳
候補 評価 行数 評言
男36歳
18 「また沖縄か、と苦笑する委員がいらっしゃったが、それは刮目させる作品を生み出し得ない多くの新人たちに対する苦い思いのあらわれである。」「メタファリックな小説の作りが、世迷い言の寓話と一線を画したのは、作者の目が高いからだと思う。」「ところどころに瑕瑾はあり、文章も必ずしも独自な秀逸を放ってはいないが、優れた構成と精神性に私は感心した。」
選評出典:『芥川賞全集 第十八巻』平成14年/2002年10月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成9年/1997年9月号)
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芥川賞 118 平成9年/1997年下半期   一覧へ
選評の概要 大切な何かが足りない 総行数35 (1行=24字)
選考委員 宮本輝 男50歳
候補 評価 行数 評言
  「今回、私は芥川賞に推せる作品をみつけることができなかった。」「どの候補作も、何かが足りない。そしてその何かは、極めて重要な何かである。」
選評出典:『芥川賞全集 第十八巻』平成14年/2002年10月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成10年/1998年3月号)
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芥川賞 119 平成10年/1998年上半期   一覧へ
選評の概要 芥川賞の基準 総行数34 (1行=24字)
選考委員 宮本輝 男51歳
候補 評価 行数 評言
男43歳
8 「(引用者注:票の割れた「ゲルマニウムの夜」と「ブエノスアイレス午前零時」の)どちらかを選べと言われると、私は花村氏の作品のほうが広がりがあるような気がした。」「ある種の爆発力のようなものを、花村氏に感じたが、もう一作読んでみたいという気持もぬぐい切れなかった。」
男39歳
7 「藤沢氏の作品には、いつも、材料を上手にまとめただけといった印象を持つ。「書かれた小説世界」以上の何かが、読後、湧きあがってこない。」
  「私は強く推したい作品がなく、他の選考委員の意見に耳をかたむけるつもりで出席した。」
選評出典:『芥川賞全集 第十八巻』平成14年/2002年10月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成10年/1998年9月号)
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芥川賞 120 平成10年/1998年下半期   一覧へ
選評の概要 若く強い膂力 総行数39 (1行=24字)
選考委員 宮本輝 男51歳
候補 評価 行数 評言
男23歳
18 「小説の後半からの破綻、手の込みすぎた文章。全体に漂う妙な驕り。それらはみな鼻持ちならないのだが、ことごとくが既製品の範疇から出て手脚を延ばしている。」「この若い作者が内に秘めているものは、出たとこ勝負の腕力ではない。将来に大きな楽しみをかかえた強くて豊かな膂力であって、私にも幾つかの不満はありながらも芥川賞に推さざるを得なかった。」
選評出典:『芥川賞全集 第十八巻』平成14年/2002年10月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成11年/1999年3月号)
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芥川賞 121 平成11年/1999年上半期   一覧へ
選評の概要 目線と位置 総行数37 (1行=24字)
選考委員 宮本輝 男52歳
候補 評価 行数 評言
選評出典:『芥川賞全集 第十八巻』平成14年/2002年10月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成11年/1999年9月号)
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芥川賞 122 平成11年/1999年下半期   一覧へ
選評の概要 将来に期待して 総行数35 (1行=24字)
選考委員 宮本輝 男52歳
候補 評価 行数 評言
男34歳
7 「前作の「おっぱい」とは比べものにならないほどに腕を上げていた。」「(引用者注:在日朝鮮人の)同じ民族間におけるギャップを、丁寧なディテールによって描写した。演説でも説明でもなく「描写」した点を私は推した。」
男→女37歳
8 「一読するとあまりにも軽すぎて、これではいささか……と首をかしげそうになるのだが、このように軽妙に書ける技量の背後には、したたかな文章技術というツボを刺す長い鍼が、本人が意識するしないにかかわらず隠されているものだ。」
  「芥川賞の選考にあたる者が軽々しく口にできる言葉ではないことを承知しながらも、私は今回、あらためて人間の運とか巡り合わせといったものについて考えざるを得なかった。」
選評出典:『芥川賞全集 第十八巻』平成14年/2002年10月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成12年/2000年3月号)
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芥川賞 123 平成12年/2000年上半期   一覧へ
選評の概要 マニュアルという呪縛 総行数52 (1行=24字)
選考委員 宮本輝 男53歳
候補 評価 行数 評言
男46歳
10 「前回の「幽(かすか)」から感じた鼻持ちならない部分は消えて、案外この人は無器用な小説家かもしれないと考えを改めさせられたが、それでも受賞作として推すことはできなかった。」「得体の知れない男の部屋で知り合った女と主人公が関係を結ぶところで見事なほどに破綻してしまっている。」
男38歳
14 「「きれぎれ」くらい賛否がまっぷたつに分かれた候補作品も珍しいのではと思われる。」「私は終始否定に廻って、受賞を強く推す委員の意見に耳を傾けたが、ついに納得することはできなかった。」「読み初めてから読み終わるまで、ただただ不快感だけがせりあがってきて、途中で投げ捨てたくなる衝動と戦わなければならなかった。」
選評出典:『芥川賞全集 第十九巻』平成14年/2002年12月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成12年/2000年9月号)
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芥川賞 124 平成12年/2000年下半期   一覧へ
選評の概要 後半の弱さ 総行数49 (1行=24字)
選考委員 宮本輝 男53歳
候補 評価 行数 評言
男42歳
9 「従来の氏の欠点であった「創る手つきの浅さ」といったものが改善されている。少々神がかり的なところがあるにすぎない人間が、周りに信奉者を得て、それらがいつのまにか一種のカルト集団へと増殖していくさまを予知させる部分は、これまでの青来氏を越える何かがある。」
男37歳
12 「私は積極的には推せなかった。」「作品の主題なのかどうなのか、熊の敷石なるものも、私には別段どうといったことのないただのエスプリにすぎないのではないかという感想しか持てなかった。」
  「候補作六篇、それぞれに作者の持ち味が出ていて、今回は豊作だという印象を抱いて選考会に出席した。」
選評出典:『芥川賞全集 第十九巻』平成14年/2002年12月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成13年/2001年3月号)
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芥川賞 125 平成13年/2001年上半期   一覧へ
選評の概要 「小説」の練り 総行数38 (1行=24字)
選考委員 宮本輝 男54歳
候補 評価 行数 評言
男45歳
16 「安定した文章で、前作に散見されて幾人かの委員に指摘された構成上の傷の修復に努めて、それがうまく是正されている。」「この指摘された自分の欠点をすみやかに直せるというのは、出来そうで出来ない技である。」「前作の失敗を糧にして、あらたな作品を生み出したということに私は氏の才能を感じた。」
  「今回は、これが芥川賞の候補作かと憮然となる作品は一篇もなく、どれもそれぞれ持ち味があって、楽しく読んだ。」
選評出典:『芥川賞全集 第十九巻』平成14年/2002年12月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成13年/2001年9月号)
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芥川賞 126 平成13年/2001年下半期   一覧へ
選評の概要 「軽さ」のわずかな進化 総行数84 (1行=14字)
選考委員 宮本輝 男54歳
候補 評価 行数 評言
鈴木弘樹
男(38歳)
25 「私は(引用者中略)推した。」「文学が本来持っている重い錘を作品の底に垂らしていると思った。」「だが、この作品を推したのは私以外には古井委員だけ」「確かに読みづらい小説である。」「けれども、読み終えると、切なく湿った何物かが心に残った。」
男29歳
25 「前回の「サイドカーに犬」とさして変わらない印象をうけた。」「なるほど「今日的問題」ではあろう。」「にもかかわらず、私はこの小説の軽さに納得できない。」「長嶋氏の文章は、ここ数年で頻出した軽やかな文章の延長線上に生まれた「メソッド」にすぎないという気がして、私は受賞に賛同できなかった。」
選評出典:『文藝春秋』平成14年/2002年3月号
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芥川賞 127 平成14年/2002年上半期   一覧へ
選評の概要 「心」への衝動 総行数59 (1行=14字)
選考委員 宮本輝 男55歳
候補 評価 行数 評言
男33歳
21 「最初の投票で、ああもうこの作品が受賞だなと選考委員すべてが思うほどに高得点だった。」「私には不満なところが多い。」「私は「ひとつのドラマ性」が欲しかった。吉田氏はあえて淡彩すぎる描き方をしたのであろうし、その意図は成功したようであるが、私はそこのところで、作者が力技から逃げたというふうに感じた。」
  「近年、芥川賞の候補作品に幾分かの変化が見られるような気がする。無機的かつ機械的なものから有機的かつ心の奥へといった変化と言えば言えそうだ。」
選評出典:『文藝春秋』平成14年/2002年9月号
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芥川賞 128 平成14年/2002年下半期   一覧へ
選評の概要 小さな種 総行数56 (1行=14字)
選考委員 宮本輝 男55歳
候補 評価 行数 評言
女36歳
26 「この作者の持ち味は、いまのところそれだけでしかない。「くすっ」と笑わせるアイロニー、そしてあまりにも工夫のない稚拙すぎる題。」「このような書き手は意外なほど頑固で狷介で柔軟性に欠けるきらいがあって、それが潜在する能力を自ら押さえつける結果となるものだ。」「私がこの作品を積極的に推せなかったのは、そうした危惧をぬぐいきれなかったからである。だが、このような小さな種から、大きな花が咲くのを見たいという思いもあった。」
選評出典:『文藝春秋』平成15年/2003年3月号
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芥川賞 129 平成15年/2003年上半期   一覧へ
選評の概要 僅差 総行数50 (1行=14字)
選考委員 宮本輝 男56歳
候補 評価 行数 評言
栗田有起
女31歳
25 「受賞作として推した」「三浦委員は「まごころと、生活への自信を持って生きている」と主人公を評したが、私もまったく同じ意見であった。「ハリガネムシ」とはたったの一票差で(引用者中略)受賞を逸した。」「文学賞の選考ではありがちなこととはいえ、私には釈然としないものが残った。」
男42歳
20 「受賞に私は反対した。」「また古臭いものをひきずり出してきたなという印象でしかなく、読んでいて汚ならしくて、不快感に包まれた。」「「文学」のテーマとしての「暴力性」とかそれに付随するセックスや獣性などといったものに、私はもう飽き飽きとしている。」
選評出典:『文藝春秋』平成15年/2003年9月号
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芥川賞 130 平成15年/2003年下半期   一覧へ
選評の概要 伸びようとする力 総行数46 (1行=14字)
選考委員 宮本輝 男56歳
候補 評価 行数 評言
女20歳
19 「読み始めたとき、私は「ああまたこのて(原文傍点)の小説か」と思ったのだが、読み終えたとき、妙に心に残る何かがあった。それで日を置いてもう一度読み直した。」「作品全体がある哀しみを抽象化している。そのような小説を書けるのは才能というしかない。私はそう思って(引用者中略)受賞作に推した。」
女19歳
22 「「インストール」と今回の「蹴りたい背中」に至る短期間に、綿矢さんの世界は目をみはるほどに拡がっている。ディティールが拡がったという言い方が正しいかもしれない。」「確かに十九歳の世界はまだまだ狭い。」「だが私は(引用者中略)「蹴りたい背中」に伸びゆく力を感じた。伸びゆく年代であろうとなかろうと才能がなければ伸びてはいかない。」
選評出典:『文藝春秋』平成16年/2004年3月号
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芥川賞 131 平成16年/2004年上半期   一覧へ
選評の概要 余計な夾雑物 総行数58 (1行=14字)
選考委員 宮本輝 男57歳
候補 評価 行数 評言
男33歳
33 「主人公のちょいとふざけたラップ口調で語られる「介護する者」と「介護される者」との日々の辛さやいらだちや不安や怒りは、まことに正論である。」「だがその正論が、モブ氏がこの小説で使った口調によって価値を持ったとするなら、私はその点においてある種の危惧を抱かざるを得ない。」「それは単なる一過性の小技にすぎないのであって、一篇の小説が内包する本質的な深さとは無関係だからである。」
選評出典:『文藝春秋』平成16年/2004年9月号
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芥川賞 132 平成16年/2004年下半期   一覧へ
選評の概要 素材の肉厚化 総行数49 (1行=14字)
選考委員 宮本輝 男57歳
候補 評価 行数 評言
男36歳
34 「これまでの氏の作品と比して、その素材も文章も構成も機微が増し、登場人物それぞれの存在感が肉厚化したと感じて、私は受賞作に推した。」「けれども、受賞に反対する委員の意見は辛辣で、一時は受賞作なしという流れにもなりかけた。」「阿部氏の小説が「時代」の流れに沿った創造物としての土台しか見せていないからかもしれない。」
中島たい子
女35歳
7 「魅力を感じて受賞作に推した。軽さが表に出ているが、どうしてなかなか練達な筆であり、したたかな書き手だと思う。」
選評出典:『文藝春秋』平成17年/2005年3月号
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芥川賞 133 平成17年/2005年上半期   一覧へ
選評の概要 穴の深さ 総行数45 (1行=14字)
選考委員 宮本輝 男58歳
候補 評価 行数 評言
男27歳
25 「前作、前々作と比して(引用者中略)語彙のひろがりを感じたが、幼児期に養父母によってひどい虐待を受けつづけた過去を持つ青年の内面に筆が届いているとは思えなかった。」「リスクを負っている素材であることを中村氏がどこまで自覚しているか、私にはどうもこころもとなくて、(引用者中略)推す委員の意見に賛同しづらかったが、二十七歳という若さと今後の可能性を買うことにした。」
  「今回は候補作七篇、どれも決め手がなく、選考は難航した。」「七作のうち五作は、いわば論外として早々に賞の対象から外れ、残った二作(引用者注:「土の中の子供」と「無花果カレーライス」)から受賞作を出すかどうかに論議が絞られた形となった。」
選評出典:『文藝春秋』平成17年/2005年9月号
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芥川賞 134 平成17年/2005年下半期   一覧へ
選評の概要 安定感 総行数69 (1行=14字)
選考委員 宮本輝 男58歳
候補 評価 行数 評言
松尾スズキ
男43歳
26 「入院患者のひとりひとりが巧みに描かれ、しかも根底に書き手の愛情のようなものが確かに存在していると感じて受賞作に推した。他の委員の賛同は少なく、受賞には到らなかったが、松尾氏の次作を読みたいと思う。」
女39歳
20 「私は二回読んだ。一回目は、いつもの絲山氏の世界だという感想しか持てなかったが、二回目に読み終えたとき、かなり印象が変わった。」「何年も実社会でもまれた人しか持ち得ない目が随所に光っている。」「あまりに小品ではあるが、氏の作家としての安定感は納得せざるを得ない。強く推す委員も多くて、私も受賞に賛成票を投じた。」
選評出典:『文藝春秋』平成18年/2006年3月号
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芥川賞 135 平成18年/2006年上半期   一覧へ
選評の概要 小説の小ささ、大きさ。 総行数62 (1行=14字)
選考委員 宮本輝 男59歳
候補 評価 行数 評言
男35歳
46 「二人の委員が強く推し、他の委員も全否定の票は入れなかった。」「なるほど、そのような小説である。」「もっと大きな芯が土台として設定できたのではないかと不満を感じた。」「多くの働く人々が見るもの、感じるもの、味わうもの……。それらを超えた何かが小説の芯として確かに沈んでいなければ、その小説になにほどの意味があるのか……。」
  「今回、私はどの候補作も推せなかった。」「(引用者注:受賞した「八月の路上に捨てる」以外の)他の四篇の候補作にも、私は似たような(引用者注:小説の土台が初めから小さいという)不満を持った。」
選評出典:『文藝春秋』平成18年/2006年9月号
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芥川賞 136 平成18年/2006年下半期   一覧へ
選評の概要 けだるい生命力 総行数44 (1行=14字)
選考委員 宮本輝 男59歳
候補 評価 行数 評言
女23歳
16 「今回、私は二作(引用者注:「ひとり日和」と「その街の今は」)を推した。」「主人公である二十歳の女性の、抑えた感情が終始一貫していて、それがこの小説に静かな哀しみの調べを奏でさせている。」「途中、冗長なところがあって、小説が長過ぎるのが欠点だが、読み終えると、それさえも、青春のけだるい生命力を表現するリズムと化していた。」
柴崎友香
女33歳
22 「今回、私は二作(引用者注:「ひとり日和」と「その街の今は」)を推した。」「柴崎氏は非凡な才を見せている。ただこの小説が他の委員からの支持を得られなかったのは、なぜ主人公が昔の「ミナミ」の写真に強く惹かれるのかに筆が到っていない点だけでなく、小説のどこかにいわば「さび」の部分がないという決定的な瑕瑾によると思う。」
選評出典:『文藝春秋』平成19年/2007年3月号
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芥川賞 137 平成19年/2007年上半期   一覧へ
選評の概要 言語の観念化 総行数51 (1行=14字)
選考委員 宮本輝 男60歳
候補 評価 行数 評言
男37歳
12 「言語についてのある種の哲学的論考が、私には所詮観念にすぎない思考の遊びに思えて受賞作として推せなかったが、それをよしとする委員が大勢を占めた。」
選評出典:『文藝春秋』平成19年/2007年9月号
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芥川賞 138 平成19年/2007年下半期   一覧へ
選評の概要 作家の引き出し 総行数50 (1行=14字)
選考委員 宮本輝 男60歳
候補 評価 行数 評言
女31歳
18 「作家としての引き出しの多さが『乳と卵』によってはっきりした。」「前作のいささかこざかしい言葉のフラグメントは『乳と卵』では整頓されて、そのぶん逆に灰汁が強くなった。」「諸手をあげてというわけにはいかなかったが、最終的に私も受賞に賛成票を投じた。」
選評出典:『文藝春秋』平成20年/2008年3月号
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芥川賞 139 平成20年/2008年上半期   一覧へ
選評の概要 言語感覚の差異 総行数51 (1行=14字)
選考委員 宮本輝 男61歳
候補 評価 行数 評言
女44歳
29 「前作の「ワンちゃん」よりも優れているとは思えない。小説の造りという点においても、あまりにも陳腐で大時代的な表現においても、前作とさして差はないと思った。」「後半になればなるほど陰影は薄くなり、類型的な風俗小説と化していく。どうにも異和感をぬぐえない日本語と併わせて、私は授賞に賛成できなかった。」「楊逸氏が現代の日本人と比して、書くべき多くの素材を内包していることは確かである。」
  「(引用者注:候補作の)なかにはなぜこれが芥川賞の候補作かと驚いてしまうものもあった。」
選評出典:『文藝春秋』平成20年/2008年9月号
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芥川賞 140 平成20年/2008年下半期   一覧へ
選評の概要 機微のうねり 総行数56 (1行=13字)
選考委員 宮本輝 男61歳
候補 評価 行数 評言
女30歳
15 「大仕掛けではない小説だけに、機微のうねりを活写する手腕の裏には、まだ三十歳の作者が内蔵する世界の豊かさを感じざるを得ない。春秋に富む才能だと思う。」
選評出典:『文藝春秋』平成21年/2009年3月号
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芥川賞 141 平成21年/2009年上半期   一覧へ
選評の概要 どう化けるか 総行数52 (1行=13字)
選考委員 宮本輝 男62歳
候補 評価 行数 評言
男44歳
23 「観念というよりも屁理屈に近い主人公の思考はまことに得手勝手で、鼻もちならないペダンチストここにあり、といった反発すら感じたが、磯崎氏はこれから一皮も二皮も剥ける可能性を感じさせる。」「私は、磯崎氏の今回の候補作での受賞には賛成できなかったが、受賞によって無用な鎧兜が脱げたときの化け方が楽しみな書き手だと思う。」
選評出典:『文藝春秋』平成21年/2009年9月号
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芥川賞 142 平成21年/2009年下半期   一覧へ
選評の概要 行間のない文学 総行数83 (1行=13字)
選考委員 宮本輝 男62歳
候補 評価 行数 評言
  「委員ひとりひとりは、言葉は違っても、どの候補作に対しても「何かが足りない」という意味の、それもかなり辛辣な評価をした。(引用者中略)自分にとって決定的に足りない何かがいったい何であるのかについて、結局は自分で考え抜いて掴んだものしか現場では役に立たないのだ。」「えらそうにこれを書いている私も、一篇の小説を仕上げたあと、いつも何かが足りないと頭をかかえている。」
選評出典:『文藝春秋』平成22年/2010年3月号
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芥川賞 143 平成22年/2010年上半期   一覧へ
選評の概要 戯画化の是非 総行数76 (1行=13字)
選考委員 宮本輝 男63歳
候補 評価 行数 評言
女35歳
32 「巧みに戯画化されたユーモア小説として読んだが、多分にデフォルメされているのであろう女子大生たちやドイツ人教授が展開する一種のドタバタと、アンネ・フランクという実在した十四歳の少女とをリンクさせる手法を支持できなかった。」「ついに収容所で死んだ十四歳のアンネの居場所を密告したのが、ほかならぬアンネ自身であったという小説には、私はその造りが正しいか正しくないかの次元とは別の強い抵抗を感じて授賞に賛同しなかった。」
選評出典:『文藝春秋』平成22年/2010年9月号
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芥川賞 144 平成22年/2010年下半期   一覧へ
選評の概要 小説の濃淡 総行数99 (1行=13字)
選考委員 宮本輝 男63歳
候補 評価 行数 評言
女26歳
31 「ジグソーパズルの小さなピースに精密でイメージ喚起力の強い図版が描かれてあって、そのピースを嵌め込んで完成した全体図は奇妙に曖昧模糊とした妖しい抽象画だというのが(引用者中略)「きことわ」である。」「その難易度の高い絵画的手法を小説の世界でやっておけた二十六歳の才能はたいしたものだと思う。」
男43歳
26 「(引用者注:以前の候補作に比べて)主人公が外の世界、たとえば荷役会社での重労働や、そこで働く多くの人間とのつながりが描かれたことで、氏の独特の私小説世界に、息づく生な世の中が加味された。それは「苦役列車」に小説として文字どおり「面白さ」をもたらしたのだ。」「基礎的な強い文章力があればこその副産物であって、出会い頭に偶然に生まれた面白さではない。」
選評出典:『文藝春秋』平成23年/2011年3月号
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芥川賞 145 平成23年/2011年上半期   一覧へ
選評の概要 さざ波と小技 総行数77 (1行=13字)
選考委員 宮本輝 男64歳
候補 評価 行数 評言
  「今回の候補作六篇、どれも上手に書かれている。その点に関しては、私は全否定する作品はひとつもなかった。」「しかし、文学の感動という、芥川賞の根幹を成す一点に、たとえ半歩でも踏み込みかけている作品もなかった。」
選評出典:『文藝春秋』平成23年/2011年9月号
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芥川賞 146 平成23年/2011年下半期   一覧へ
選評の概要 マグマと観念の二作 総行数104 (1行=13字)
選考委員 宮本輝 男64歳
候補 評価 行数 評言
石田千
女43歳
24 「受賞作に推した。」「あまり器用とはいえない石田さんの小説造りの底には、思いどおりにいかない現実社会であっても、地道に生きつづけることへの応援のような心意気が静かに息づいていて、たしかに「人々がいる」のだ。」
男39歳
41 「賛否がこれほど大きく割れた候補作は珍しい。」「私はその中間の立場にいて、私には読み取れない何かがあるとしたら、受賞に強く賛成する委員の意見に耳を傾けたいと思っていた。」「最近の若い作家の眼の低さを思えば、たとえ手は低くても、その冒険や試みは買わなければならないと思い、私は受賞に賛成する側に廻った。フィクションになりそこねた言語論としてあらためて読むと、妙にフィクションとして成り立ってくる。」
男39歳
26 「小説の構成力、筆力等は、候補作中随一であることは、私も認める。しかし、私はこの「共喰い」という小説を生理的に受けつけることができなかった。」「何物かへの鬱屈した怒りのマグマの依って来たる根をもっと具体的にしなければ、肝心なところから腰が引けていることになるのではないのか。」「私ひとり、最後まで受賞に反対した。」
選評出典:『文藝春秋』平成24年/2012年3月号
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芥川賞 147 平成24年/2012年上半期   一覧へ
選評の概要 持続への敬意 総行数87 (1行=13字)
選考委員 宮本輝 男65歳
候補 評価 行数 評言
女35歳
52 「鹿島田さんは内なる可燃物をわずかながらも燃焼させた。十四年間書きつづけてきたことによって得ることができたひとつの境地の幕開けだとしたら、その持続の力に敬意を表したい。」「私は「冥土めぐり」に登場する人物たちも風景も小道具も、みな作者の己心のなかで展開されているものとして読んだ。」「だが、どうしても諸手をあげて(引用者注:褒める)とはなれないのは、鹿島田さんの小説につねに漂よっているレトロな少女趣味が好きになれないからだ。」
選評出典:『文藝春秋』平成24年/2012年9月号
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芥川賞 148 平成24年/2012年下半期   一覧へ
選評の概要 影と本体 総行数89 (1行=13字)
選考委員 宮本輝 男65歳
候補 評価 行数 評言
女75歳
37 「物言わぬ家と長い時間が、心を持つ生き物と化して、淡く静かに人々の営みを照らしている。それが、観念的にではなく、夢のなかの確かな皮膚感覚として心のどこかで長くたゆたうのだ。」「強固な文学観を土台とした稀に見る特異な才能だと思い、私は受賞作として推した。」
選評出典:『文藝春秋』平成25年/2013年3月号
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芥川賞 149 平成25年/2013年上半期   一覧へ
選評の概要 深読みの功罪 総行数94 (1行=13字)
選考委員 宮本輝 男66歳
候補 評価 行数 評言
女33歳
26 「幼い女の子の「わたし」が、じつはおとなになってからの「わたし」の視点によることも深読みしなくてもわかる。」「だが、私は題にもなっている「爪と目」を使っての最後の場面が、単なるホラー趣味以外の何物でもない気がして首をかしげざるを得なかった。爪と目が、この小説の奥に置こうとしたものの暗喩になりきっていなくて、強くは推せなかった。」
  「過度な深読みなしではただの文章の垂れ流しでしかないという作品が芥川賞の候補作となるようになって久しい。新しい書き手のなかには、読み手に深読みを強要させる小説にこそ文学性の濃さがあると錯覚している人が、ひとむかし前よりも増えてきたと思う。今回もそのての小説が多かった。」
選評出典:『文藝春秋』平成25年/2013年9月号
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芥川賞 150 平成25年/2013年下半期   一覧へ
選評の概要 手法や様式の類型化 総行数132 (1行=13字)
選考委員 宮本輝 男66歳
候補 評価 行数 評言
岩城けい
女42歳
34 「強く推した。」「外国語を「聞く、話す」だけではなく、「読む、書く」能力も持たなければ、その国での生活のランクアップは望めないのは、なにもオーストラリアに限ったことではない。サリマは挑戦を始めるのだ。」「私は一読して深く感動した。文学の感動、人間の感動というものに心打たれた。」
女30歳
14 「平凡な一主婦がなべて抱くであろう心の穴を普遍化している。」「だがそれを幻想や非日常や、マジックリアリズムの手法で描きながら、突然あらわれた穴も、得体の知れない獣も、たくさんの子供たちなども、小説の最後ですべて消えてしまうことに、私は主題からの一種の逃げを感じて推さなかった。」
  「外野席からはうがった批判も多々あるようだが、選考にたずさわる多くの人々が真摯に作品と向き合って、この数十年間の日本の文学を担ってきたことは間違いのない事実なのだ。」「かつては新しいとされた幻想、非日常、マジックリアリズム等々も、すでに類型化している。今回、そのての「新しさ」が類型化したとき、作家は何に依って立つのかをあらためて考えさせられた。」
選評出典:『文藝春秋』平成26年/2014年3月号
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芥川賞 151 平成26年/2014年上半期   一覧へ
選評の概要 モノの命 総行数89 (1行=13字)
選考委員 宮本輝 男67歳
候補 評価 行数 評言
女40歳
28 「反対意見もありながらも受賞作となったのは、デビュー作から今作に到るまでの、しつこいまでの主題へのこだわりを、これまでとは異なる目線に変えたことで明晰になったからだと私は思う。」「(引用者注:これまでの作品とは違い)作者の目は俯瞰的である。この大きな変化が、町や建物のあちこちで生きてうごめいている人間たちを読む者に見せたのだ。」
  「今回の候補作五篇は巧みなところといい、足りないところといい、なにもかもほぼ拮抗していて、二回の投票でも決まらず、三回目ではさらに混沌として結論が出ず、四回目でやっと柴崎友香さんが受賞ということになった。」
選評出典:『文藝春秋』平成26年/2014年9月号
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芥川賞 152 平成26年/2014年下半期   一覧へ
選評の概要 全体のなかのパーツ 総行数99 (1行=13字)
選考委員 宮本輝 男67歳
候補 評価 行数 評言
高橋弘希
男35歳
28 「とりわけ最後の数行が、私をこの主人公の心情に同化させた。文章の力だと思う。その描写力や構造には非凡なものを感じ、高橋氏に才能を認めて受賞作に推したが、過半数に達する賛同を得られなかった。」
男44歳
20 「最初の投票で過半数を得ていた。」「ひとつの小説のなかのパーツであって、これ一作で完成品として評価するわけにはいかないと思い、積極的には推せなかった」「しかし、ふるさとの持つ力、そのふるさとの人々の包容力が、主人公の置かれた厳しい境遇に一種楽観的な光明を与える結末は、小野氏の真の持ち味がやっと具象化されてきた証だと思う。」
選評出典:『文藝春秋』平成27年/2015年3月号
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芥川賞 153 平成27年/2015年上半期   一覧へ
選評の概要 ひたむきさ 総行数96 (1行=13字)
選考委員 宮本輝 男68歳
候補 評価 行数 評言
男35歳
30 「受賞作に推した。この作者がいま話題のお笑い芸人であり「火花」はすでに六十万部を超えているとかはまったく関係がない。」「読み始めると、生硬な「文学的」な表現のなかに純でひたむきなものを感じ始めた。」「自分がいま書こうとしている小説に、ひたむきに向き合いつづけた結果として、「火花」のなかにその心があぶりだされたのであろう。」
男29歳
22 「まだこれから長い生が待ち受けている青年と、老いて、家族に負担をかけながら残り少ない年月を生きるしかない老人の、微妙な愛憎をユーモアを交えて描いてみせた。」「このユーモアは作者が企んだものではないと感じさせるのも羽田さんの技量であろうと思い、私は受賞に賛成した。」
  「最初の投票で、三作(引用者注:「ジミ・ヘンドリクス・エクスペリエンス」「スクラップ・アンド・ビルド」「火花」)がさほど差のない点数で残った。競馬に譬えれば鼻差であろう。」
選評出典:『文藝春秋』平成27年/2015年9月号
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芥川賞 154 平成27年/2015年下半期   一覧へ
選評の概要 将来性を買う 総行数89 (1行=13字)
選考委員 宮本輝 男68歳
候補 評価 行数 評言
男33歳
29 「(引用者注:「異類婚姻譚」と共に)どちらも手練れで将来性を感じさせる。」「死者は焼かれてどこかへ消えて、生者は葬儀が終われば去って行き、またそれぞれの新しい生を生きていく。その淡々とした営みのなかに人間というもののけなげさをさりげなく描いたとすれば、この作者は相当にしたたかだと感じた。」
女36歳
20 「(引用者注:「死んでいない者」と共に)どちらも手練れで将来性を感じさせる。」「夫婦の顔が似てくることへの気味悪さが、決してとげとげしくない文章で掘り下げられていくが、読み終えて、なんだかほっこりとした感情を呼び起こすのが不思議だ。その不思議さは論理的に説明できないもので、小説とはそうでなければならないと思う。」
選評出典:『文藝春秋』平成28年/2016年3月号
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芥川賞 155 平成28年/2016年上半期   一覧へ
選評の概要 佳品揃い 総行数97 (1行=13字)
選考委員 宮本輝 男69歳
候補 評価 行数 評言
女36歳
20 「職場というものが、その仕事への好悪とはべつに、そこで働く人間の意識下に与える何物かを形づくっていくさまを、村田さんは肩肘張らずに小説化してみせた。」「その手腕は見事であって、わたしは芥川賞にふさわしいと思った。」
  「今回の候補作五篇、印象に残るいい作品揃いでどれも捨てがたく、わたしとしては難しい選考会だった。」
選評出典:『文藝春秋』平成28年/2016年9月号
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芥川賞 156 平成28年/2016年下半期   一覧へ
選評の概要 きめ手なしの五篇 総行数88 (1行=13字)
選考委員 宮本輝 男69歳
候補 評価 行数 評言
男50歳
18 「主人公である十九歳の寡黙な青年は、寡黙なのではなく語彙を持っていないだけであり、それはじつは作者その人の語彙不足なのではないかという懸念を払うことができなかった。」「実際に存在した北海道の演劇塾での一年間には、もっとどろどろした人間の葛藤があったはずだが、作者はそれを避けてしまっている。その点も大きな不満だった。」
  「今回は拮抗していた。ドングリの背比べという拮抗の仕方で、私はどれも芥川賞として強く推せなかった。」
選評出典:『文藝春秋』平成29年/2017年3月号
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