芥川賞のすべて・のようなもの
第126回
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平成13年/2001年下半期
(平成14年/2002年1月16日決定発表/『文藝春秋』平成14年/2002年3月号選評掲載)
選考委員  村上龍
男49歳
黒井千次
男69歳
高樹のぶ子
女55歳
宮本輝
男54歳
古井由吉
男64歳
池澤夏樹
男56歳
日野啓三
男72歳
石原慎太郎
男69歳
河野多恵子
女75歳
三浦哲郎
男70歳
選評総行数  66 59 63 84 49 65 81 65 54 54
候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数
長嶋有 「猛スピードで母は」
99
男29歳
60 30 17 25 0 35 40 14 45 11
石黒達昌 「真夜中の方へ」
135
男40歳
0 5 0 6 0 0 0 0 0 0
岡崎祥久 「南へ下る道」
218
男33歳
0 4 0 11 0 0 0 0 5 6
鈴木弘樹 「グラウンド」
191
男(38歳)
0 6 0 25 49 0 0 14 0 8
大道珠貴 「ゆううつな苺」
118
女35歳
0 18 9 8 0 31 36 0 4 13
法月ゆり 「六フィート下から」
117
女(39歳)
6 5 23 9 0 0 6 0 0 25
                  欠席
書面回答
年齢/枚数の説明   見方・注意点

このページの選評出典:『文藝春秋』平成14年/2002年3月号
1行当たりの文字数:14字


選考委員
村上龍男49歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
選評 総行数66 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
長嶋有
男29歳
60 「前作へのわたしの批判が今回反映されていたわけではなかった。」「長嶋氏は別の方法でハードルをクリアした。つまり、時代に適応できない家族・親子を描くのではなく、状況をサバイバルしようと無自覚に努力する母と子を描いたのだった。」「一人で子どもを産み、一人で子どもを育てている多くの女性が、この作品によって勇気を得るだろうとわたしは思う。」
石黒達昌
男40歳
0  
岡崎祥久
男33歳
0  
鈴木弘樹
男(38歳)
0  
大道珠貴
女35歳
0  
法月ゆり
女(39歳)
6 「好感を持った。」「ホラーサスペンスのような趣で読めたが、受賞には至らなかった。」
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他の選考委員
黒井千次
高樹のぶ子
宮本輝
古井由吉
池澤夏樹
日野啓三
石原慎太郎
河野多恵子
三浦哲郎
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選考委員
黒井千次男69歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
選評 総行数59 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
長嶋有
男29歳
30 「母子家庭におけるこの息子は語り手ではあるのだが、見る者と見られる者との距離が巧みに設けられているために、息子は母親を見ることによって自然のうちに自己発見へと導かれる。その過程が、健げでありながらもどこか哀しい影を帯びているところに作品の奥行きが生れている。」
石黒達昌
男40歳
5 「(引用者注:「南へ下る道」と共に)テーマと話の展開とがうまく噛み合っていないように思われた。」
岡崎祥久
男33歳
4 「(引用者注:「真夜中の方へ」と共に)テーマと話の展開とがうまく噛み合っていないように思われた。」
鈴木弘樹
男(38歳)
6 「湿気を帯びた重い読後感が残ったが、肩肘張った文章への抵抗が拭えない。この原石はもう少し磨く必要がありそうだ。」
大道珠貴
女35歳
18 「大人と子供の間に揺れて立ちながら重心を失うことのない少女の、遠くを見つめるような横顔がくっきり浮かぶ作品である。その歳頃の鬱屈と感情の曲折はよく捉えられているけれど、後半に登場する英語教師がややパターン化されて力を削いだ感がある。」
法月ゆり
女(39歳)
5 「方程式を組み上げて終った感がある。素材の特異さにもたれかかっていないだろうか。」
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他の選考委員
村上龍
高樹のぶ子
宮本輝
古井由吉
池澤夏樹
日野啓三
石原慎太郎
河野多恵子
三浦哲郎
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選考委員
高樹のぶ子女55歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
読者との直取引き 総行数63 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
長嶋有
男29歳
17 「視点を幼く据えた書き方(幼さ装い)の弱点である認識の小ささや小説全体としての情報量の少さを、母親の会話で見事にクリアしている。(引用者中略)いきおい小説空間が大人のものになった。」
石黒達昌
男40歳
0  
岡崎祥久
男33歳
0  
鈴木弘樹
男(38歳)
0  
大道珠貴
女35歳
9 「中学生の現状と生理感覚が良く伝わってきて、世のお父さん方に是非読ませたいと思ったほどだが、子供の視線ゆえの弱点がそのまま残され、小説としては幼い印象になった。」
法月ゆり
女(39歳)
23 「強引に物語を作り読ませる力があり、アメリカの小村での体験をワクワクドキドキしながら読んだ。私は○印。」「法月さんには今後も人間を動かし、面白くて怖くてかつ人間の深みに届く物語を作って本賞を取って欲しい。」
  「初めての選考にのぞみ、二つの事を考えた。文学賞は人が書き人が択ぶのだから常に相対評価。その半期で最良の一作を択ぶことに徹する。」「もう一つは、作品本位とはいうものの先に期待が持てるかどうかを一考したい。」
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他の選考委員
村上龍
黒井千次
宮本輝
古井由吉
池澤夏樹
日野啓三
石原慎太郎
河野多恵子
三浦哲郎
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選考委員
宮本輝男54歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
「軽さ」のわずかな進化 総行数84 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
長嶋有
男29歳
25 「前回の「サイドカーに犬」とさして変わらない印象をうけた。」「なるほど「今日的問題」ではあろう。」「にもかかわらず、私はこの小説の軽さに納得できない。」「長嶋氏の文章は、ここ数年で頻出した軽やかな文章の延長線上に生まれた「メソッド」にすぎないという気がして、私は受賞に賛同できなかった。」
石黒達昌
男40歳
6 「氏は「なにか小説を一本書いてやろう」として小説をでっちあげているにすぎないのではないかという気がしてならない。」
岡崎祥久
男33歳
11 「おもしろい発想ではあるが、若い夫婦が、高速道路ではなく国道一号線から二号線へ、そして三号線へと車で旅をするだけの話で終わってしまっている。」「最後まで読んで損をしたなという気分になった。」
鈴木弘樹
男(38歳)
25 「私は(引用者中略)推した。」「文学が本来持っている重い錘を作品の底に垂らしていると思った。」「だが、この作品を推したのは私以外には古井委員だけ」「確かに読みづらい小説である。」「けれども、読み終えると、切なく湿った何物かが心に残った。」
大道珠貴
女35歳
8 「まず題が悪い。主人公の少女はよく描けているが、前作や前々作に見られた一種の抽象性はなり(原文傍点)をひそめて、少女小説の域にとどまってしまった。」
法月ゆり
女(39歳)
9 「作者がこの小説にこめようとしたものが十全に書かれてはいない。」「法を犯してまでも、友人の遺体を自分たちの手で火葬にするアメリカ人の心が描けていないと思う。」
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他の選考委員
村上龍
黒井千次
高樹のぶ子
古井由吉
池澤夏樹
日野啓三
石原慎太郎
河野多恵子
三浦哲郎
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選考委員
古井由吉男64歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
「悪文」の架ける虹 総行数49 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
長嶋有
男29歳
0  
石黒達昌
男40歳
0  
岡崎祥久
男33歳
0  
鈴木弘樹
男(38歳)
49 「苦労して読むうちに、苦労はすこしも減らなかったが、やがて関心を惹かれた。」「推敲を見事に拒んでいる。」「「色街」を描いているが、永井荷風のそれとも吉行淳之介のそれともまるで違う。」「この世界も雑多な必要と装飾を詰めに詰めた、それ自体、真空であるらしい。文章はそれに成ろうとする。一文ごとに危機である。進むごとに、無惨なような形が後に残る。しかし寒空に、冷いような虹を瞬時架けた箇所はある。」
大道珠貴
女35歳
0  
法月ゆり
女(39歳)
0  
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他の選考委員
村上龍
黒井千次
高樹のぶ子
宮本輝
池澤夏樹
日野啓三
石原慎太郎
河野多恵子
三浦哲郎
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選考委員
池澤夏樹男56歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
時代の雰囲気の大きな違い 総行数65 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
長嶋有
男29歳
35 「おもしろかった。この母と息子は今回の候補作六篇の登場人物の中で最も鮮やかな印象を残した。」「まずは毅然と生きる母に共感を覚える。次に、それを肯定しながら、一歩の距離をおいて母を見て育つ息子の方にも共鳴する。」「母と子の暮らしはいくつものエピソードを連ねて語られるが、その一つ一つがとてもうまく作られている。」
石黒達昌
男40歳
0  
岡崎祥久
男33歳
0  
鈴木弘樹
男(38歳)
0  
大道珠貴
女35歳
31 「(引用者注:「猛スピードで母は」とは)また別の読後感を残す。一言でいえばやりきれないのだ。」「もちろん、それが理由で大道さんの作を推さなかったわけではない。それはそうなのだが、今の時代のやりきれなさを果敢に引き受けた大道さんを、今少し積極的に評価すべきだったかとも思う。」
法月ゆり
女(39歳)
0  
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他の選考委員
村上龍
黒井千次
高樹のぶ子
宮本輝
古井由吉
日野啓三
石原慎太郎
河野多恵子
三浦哲郎
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選考委員
日野啓三男72歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
新しい未来の世代 総行数81 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
長嶋有
男29歳
40 「(引用者注:「ゆううつな苺」と共に)小学生の息子と中学生の娘から見られた親たちの姿が、くっきりとしっかりと書かれている。」「驚くのは、彼ら幼いはずの視点人物が無意識のうちにとっている“距離感”の見事さだ。」「子供たち自身も、一個の他者として実存している。」「北海道の冬の海の上に垂れこめる冬空の冷気と陰鬱さとが最も記憶に残った。」
石黒達昌
男40歳
0  
岡崎祥久
男33歳
0  
鈴木弘樹
男(38歳)
0  
大道珠貴
女35歳
36 「(引用者注:「猛スピードで母は」と共に)小学生の息子と中学生の娘から見られた親たちの姿が、くっきりとしっかりと書かれている。」「驚くのは、彼ら幼いはずの視点人物が無意識のうちにとっている“距離感”の見事さだ。」「子供たち自身も、一個の他者として実存している。」「女子中学生は若干不良っぽいが、その分生きる味気なさも知っている。」
法月ゆり
女(39歳)
6 「戦後の時代を闇雲に走り続けるようにしてきた、ひとりの女性の生き方を間接的に描いて、虚構的な想像力の鮮やかさが強く心に残った。」
  「しばらくぶりで気持ちいい新年を迎えている。誰が受賞したかということ(多分に偶然の結果だ)ではなくて、今回の候補者たちの何人かは、ともに日本文学の新しい未来を予感させるものを秘めていたからだ。池澤夏樹の『スティル・ライフ』の時以来、こういうことはしばらくぶりだが、時にはそういうこともあるのだ。」
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他の選考委員
村上龍
黒井千次
高樹のぶ子
宮本輝
古井由吉
池澤夏樹
石原慎太郎
河野多恵子
三浦哲郎
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選考委員
石原慎太郎男69歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
乏しい収穫 総行数65 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
長嶋有
男29歳
14 「私は受賞には押さなかった」「ある種のペーソスはあっても、実はごくありふれたものにしか感じられない。こんな程度の作品を読んで誰がどう心を動かされるというのだろうか。」
石黒達昌
男40歳
0  
岡崎祥久
男33歳
0  
鈴木弘樹
男(38歳)
14 「主人公の性格が、今ひとつ鮮明でない。題名からしても、主人公にとってかつて手掛けた野球というスポーツが一種のメタファとしてどんな意味を持つのかがわからない。」
大道珠貴
女35歳
0  
法月ゆり
女(39歳)
0  
  「今回の候補作のどれを読んでも、文学の魅力の絶対必要要件としてのカタルシスが一向にありはしない。しかも総じて昨今の候補作はどれも皆小粒、というより妙にちまちましてしまって読んでいて張り合いもない。」「(引用者注:「グラウンド」と「猛スピードで母は」の)二作以外はとても論の対象たりえない。」
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他の選考委員
村上龍
黒井千次
高樹のぶ子
宮本輝
古井由吉
池澤夏樹
日野啓三
河野多恵子
三浦哲郎
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選考委員
河野多恵子女75歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
人間の誇り 総行数54 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
長嶋有
男29歳
45 「この作品で人間の誇りを描く意識は恐らく全くなかったと思われるが、全篇から伝ってくる人間の誇りの瑞々しさに、このうえなく魅かれた。」「この作品ではまた、事物の展開にも、文章にも無駄がない。省略の効果をよく知っている。」
石黒達昌
男40歳
0  
岡崎祥久
男33歳
5 「以前に読んだ候補作『楽天屋』のよい特色が少々薄れているようだが、次作をまた読みたいと思った。」
鈴木弘樹
男(38歳)
0  
大道珠貴
女35歳
4 「『ゆううつな苺』がよかった。三度目の候補作だが、確実に伸びてきている。」
法月ゆり
女(39歳)
0  
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他の選考委員
村上龍
黒井千次
高樹のぶ子
宮本輝
古井由吉
池澤夏樹
日野啓三
石原慎太郎
三浦哲郎
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選考委員
三浦哲郎男70歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
感想 総行数54 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
長嶋有
男29歳
11 「引用者注:「ゆううつな苺」と共に)よく書けていると感心したが、(引用者中略)才能のある書き手なのに、依然として好評だった前作のエリアから一歩も踏み出せずにいるのがちょっと不満であった。」
石黒達昌
男40歳
0  
岡崎祥久
男33歳
6 「長すぎる。読み易くて、時々はっとするような文章に出会うが、このままでは冗漫といわれても仕方がないだろう。」
鈴木弘樹
男(38歳)
8 「読み通すのに苦労した。」「いまになにか出てくるはずだ。そう思いながら読み進めていったが、結局なにも出てこなかった。」
大道珠貴
女35歳
13 「引用者注:「猛スピードで母は」と共に)よく書けていると感心したが、(引用者中略)才能のある書き手なのに、依然として好評だった前作のエリアから一歩も踏み出せずにいるのがちょっと不満であった。」
法月ゆり
女(39歳)
25 「書面で、(引用者中略)推す旨を伝えておいた。」「これは一読して候補作中抜群に面白かった。」「どのページをひらいても、深さ六フィートの地中から叔母の無言の呟きがきこえてきて人間というものの奇怪さについて考えさせられる。端倪すべからざる作品だと思う。」
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他の選考委員
村上龍
黒井千次
高樹のぶ子
宮本輝
古井由吉
池澤夏樹
日野啓三
石原慎太郎
河野多恵子
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受賞者・作品
長嶋有男29歳×各選考委員 
「猛スピードで母は」
短篇 99
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
村上龍
男49歳
60 「前作へのわたしの批判が今回反映されていたわけではなかった。」「長嶋氏は別の方法でハードルをクリアした。つまり、時代に適応できない家族・親子を描くのではなく、状況をサバイバルしようと無自覚に努力する母と子を描いたのだった。」「一人で子どもを産み、一人で子どもを育てている多くの女性が、この作品によって勇気を得るだろうとわたしは思う。」
黒井千次
男69歳
30 「母子家庭におけるこの息子は語り手ではあるのだが、見る者と見られる者との距離が巧みに設けられているために、息子は母親を見ることによって自然のうちに自己発見へと導かれる。その過程が、健げでありながらもどこか哀しい影を帯びているところに作品の奥行きが生れている。」
高樹のぶ子
女55歳
17 「視点を幼く据えた書き方(幼さ装い)の弱点である認識の小ささや小説全体としての情報量の少さを、母親の会話で見事にクリアしている。(引用者中略)いきおい小説空間が大人のものになった。」
宮本輝
男54歳
25 「前回の「サイドカーに犬」とさして変わらない印象をうけた。」「なるほど「今日的問題」ではあろう。」「にもかかわらず、私はこの小説の軽さに納得できない。」「長嶋氏の文章は、ここ数年で頻出した軽やかな文章の延長線上に生まれた「メソッド」にすぎないという気がして、私は受賞に賛同できなかった。」
古井由吉
男64歳
0  
池澤夏樹
男56歳
35 「おもしろかった。この母と息子は今回の候補作六篇の登場人物の中で最も鮮やかな印象を残した。」「まずは毅然と生きる母に共感を覚える。次に、それを肯定しながら、一歩の距離をおいて母を見て育つ息子の方にも共鳴する。」「母と子の暮らしはいくつものエピソードを連ねて語られるが、その一つ一つがとてもうまく作られている。」
日野啓三
男72歳
40 「(引用者注:「ゆううつな苺」と共に)小学生の息子と中学生の娘から見られた親たちの姿が、くっきりとしっかりと書かれている。」「驚くのは、彼ら幼いはずの視点人物が無意識のうちにとっている“距離感”の見事さだ。」「子供たち自身も、一個の他者として実存している。」「北海道の冬の海の上に垂れこめる冬空の冷気と陰鬱さとが最も記憶に残った。」
石原慎太郎
男69歳
14 「私は受賞には押さなかった」「ある種のペーソスはあっても、実はごくありふれたものにしか感じられない。こんな程度の作品を読んで誰がどう心を動かされるというのだろうか。」
河野多恵子
女75歳
45 「この作品で人間の誇りを描く意識は恐らく全くなかったと思われるが、全篇から伝ってくる人間の誇りの瑞々しさに、このうえなく魅かれた。」「この作品ではまた、事物の展開にも、文章にも無駄がない。省略の効果をよく知っている。」
三浦哲郎
男70歳
11 「引用者注:「ゆううつな苺」と共に)よく書けていると感心したが、(引用者中略)才能のある書き手なのに、依然として好評だった前作のエリアから一歩も踏み出せずにいるのがちょっと不満であった。」
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他の候補作
石黒達昌
「真夜中の方へ」
岡崎祥久
「南へ下る道」
鈴木弘樹
「グラウンド」
大道珠貴
「ゆううつな苺」
法月ゆり
「六フィート下から」
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候補者・作品
石黒達昌男40歳×各選考委員 
「真夜中の方へ」
中篇 135
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
村上龍
男49歳
0  
黒井千次
男69歳
5 「(引用者注:「南へ下る道」と共に)テーマと話の展開とがうまく噛み合っていないように思われた。」
高樹のぶ子
女55歳
0  
宮本輝
男54歳
6 「氏は「なにか小説を一本書いてやろう」として小説をでっちあげているにすぎないのではないかという気がしてならない。」
古井由吉
男64歳
0  
池澤夏樹
男56歳
0  
日野啓三
男72歳
0  
石原慎太郎
男69歳
0  
河野多恵子
女75歳
0  
三浦哲郎
男70歳
0  
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他の候補作
長嶋有
「猛スピードで母は」
岡崎祥久
「南へ下る道」
鈴木弘樹
「グラウンド」
大道珠貴
「ゆううつな苺」
法月ゆり
「六フィート下から」
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候補者・作品
岡崎祥久男33歳×各選考委員 
「南へ下る道」
中篇 218
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
村上龍
男49歳
0  
黒井千次
男69歳
4 「(引用者注:「真夜中の方へ」と共に)テーマと話の展開とがうまく噛み合っていないように思われた。」
高樹のぶ子
女55歳
0  
宮本輝
男54歳
11 「おもしろい発想ではあるが、若い夫婦が、高速道路ではなく国道一号線から二号線へ、そして三号線へと車で旅をするだけの話で終わってしまっている。」「最後まで読んで損をしたなという気分になった。」
古井由吉
男64歳
0  
池澤夏樹
男56歳
0  
日野啓三
男72歳
0  
石原慎太郎
男69歳
0  
河野多恵子
女75歳
5 「以前に読んだ候補作『楽天屋』のよい特色が少々薄れているようだが、次作をまた読みたいと思った。」
三浦哲郎
男70歳
6 「長すぎる。読み易くて、時々はっとするような文章に出会うが、このままでは冗漫といわれても仕方がないだろう。」
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他の候補作
長嶋有
「猛スピードで母は」
石黒達昌
「真夜中の方へ」
鈴木弘樹
「グラウンド」
大道珠貴
「ゆううつな苺」
法月ゆり
「六フィート下から」
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候補者・作品
鈴木弘樹男(38歳)×各選考委員 
「グラウンド」
中篇 191
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
村上龍
男49歳
0  
黒井千次
男69歳
6 「湿気を帯びた重い読後感が残ったが、肩肘張った文章への抵抗が拭えない。この原石はもう少し磨く必要がありそうだ。」
高樹のぶ子
女55歳
0  
宮本輝
男54歳
25 「私は(引用者中略)推した。」「文学が本来持っている重い錘を作品の底に垂らしていると思った。」「だが、この作品を推したのは私以外には古井委員だけ」「確かに読みづらい小説である。」「けれども、読み終えると、切なく湿った何物かが心に残った。」
古井由吉
男64歳
49 「苦労して読むうちに、苦労はすこしも減らなかったが、やがて関心を惹かれた。」「推敲を見事に拒んでいる。」「「色街」を描いているが、永井荷風のそれとも吉行淳之介のそれともまるで違う。」「この世界も雑多な必要と装飾を詰めに詰めた、それ自体、真空であるらしい。文章はそれに成ろうとする。一文ごとに危機である。進むごとに、無惨なような形が後に残る。しかし寒空に、冷いような虹を瞬時架けた箇所はある。」
池澤夏樹
男56歳
0  
日野啓三
男72歳
0  
石原慎太郎
男69歳
14 「主人公の性格が、今ひとつ鮮明でない。題名からしても、主人公にとってかつて手掛けた野球というスポーツが一種のメタファとしてどんな意味を持つのかがわからない。」
河野多恵子
女75歳
0  
三浦哲郎
男70歳
8 「読み通すのに苦労した。」「いまになにか出てくるはずだ。そう思いながら読み進めていったが、結局なにも出てこなかった。」
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他の候補作
長嶋有
「猛スピードで母は」
石黒達昌
「真夜中の方へ」
岡崎祥久
「南へ下る道」
大道珠貴
「ゆううつな苺」
法月ゆり
「六フィート下から」
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候補者・作品
大道珠貴女35歳×各選考委員 
「ゆううつな苺」
短篇 118
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
村上龍
男49歳
0  
黒井千次
男69歳
18 「大人と子供の間に揺れて立ちながら重心を失うことのない少女の、遠くを見つめるような横顔がくっきり浮かぶ作品である。その歳頃の鬱屈と感情の曲折はよく捉えられているけれど、後半に登場する英語教師がややパターン化されて力を削いだ感がある。」
高樹のぶ子
女55歳
9 「中学生の現状と生理感覚が良く伝わってきて、世のお父さん方に是非読ませたいと思ったほどだが、子供の視線ゆえの弱点がそのまま残され、小説としては幼い印象になった。」
宮本輝
男54歳
8 「まず題が悪い。主人公の少女はよく描けているが、前作や前々作に見られた一種の抽象性はなり(原文傍点)をひそめて、少女小説の域にとどまってしまった。」
古井由吉
男64歳
0  
池澤夏樹
男56歳
31 「(引用者注:「猛スピードで母は」とは)また別の読後感を残す。一言でいえばやりきれないのだ。」「もちろん、それが理由で大道さんの作を推さなかったわけではない。それはそうなのだが、今の時代のやりきれなさを果敢に引き受けた大道さんを、今少し積極的に評価すべきだったかとも思う。」
日野啓三
男72歳
36 「(引用者注:「猛スピードで母は」と共に)小学生の息子と中学生の娘から見られた親たちの姿が、くっきりとしっかりと書かれている。」「驚くのは、彼ら幼いはずの視点人物が無意識のうちにとっている“距離感”の見事さだ。」「子供たち自身も、一個の他者として実存している。」「女子中学生は若干不良っぽいが、その分生きる味気なさも知っている。」
石原慎太郎
男69歳
0  
河野多恵子
女75歳
4 「『ゆううつな苺』がよかった。三度目の候補作だが、確実に伸びてきている。」
三浦哲郎
男70歳
13 「引用者注:「猛スピードで母は」と共に)よく書けていると感心したが、(引用者中略)才能のある書き手なのに、依然として好評だった前作のエリアから一歩も踏み出せずにいるのがちょっと不満であった。」
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他の候補作
長嶋有
「猛スピードで母は」
石黒達昌
「真夜中の方へ」
岡崎祥久
「南へ下る道」
鈴木弘樹
「グラウンド」
法月ゆり
「六フィート下から」
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候補者・作品
法月ゆり女(39歳)×各選考委員 
「六フィート下から」
短篇 117
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
村上龍
男49歳
6 「好感を持った。」「ホラーサスペンスのような趣で読めたが、受賞には至らなかった。」
黒井千次
男69歳
5 「方程式を組み上げて終った感がある。素材の特異さにもたれかかっていないだろうか。」
高樹のぶ子
女55歳
23 「強引に物語を作り読ませる力があり、アメリカの小村での体験をワクワクドキドキしながら読んだ。私は○印。」「法月さんには今後も人間を動かし、面白くて怖くてかつ人間の深みに届く物語を作って本賞を取って欲しい。」
宮本輝
男54歳
9 「作者がこの小説にこめようとしたものが十全に書かれてはいない。」「法を犯してまでも、友人の遺体を自分たちの手で火葬にするアメリカ人の心が描けていないと思う。」
古井由吉
男64歳
0  
池澤夏樹
男56歳
0  
日野啓三
男72歳
6 「戦後の時代を闇雲に走り続けるようにしてきた、ひとりの女性の生き方を間接的に描いて、虚構的な想像力の鮮やかさが強く心に残った。」
石原慎太郎
男69歳
0  
河野多恵子
女75歳
0  
三浦哲郎
男70歳
25 「書面で、(引用者中略)推す旨を伝えておいた。」「これは一読して候補作中抜群に面白かった。」「どのページをひらいても、深さ六フィートの地中から叔母の無言の呟きがきこえてきて人間というものの奇怪さについて考えさせられる。端倪すべからざる作品だと思う。」
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他の候補作
長嶋有
「猛スピードで母は」
石黒達昌
「真夜中の方へ」
岡崎祥久
「南へ下る道」
鈴木弘樹
「グラウンド」
大道珠貴
「ゆううつな苺」
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