芥川賞のすべて・のようなもの
選評の概要
979899100.
101102103104105.
106107108109110.
111112113114115.
116117118119120.
121122123124125.
126127128129130.
131132133134135.
136.
選考委員の群像 トップページ
直木賞・芥川賞受賞作一覧
受賞作・候補作一覧
受賞作家の群像
候補作家の群像
選評の概要
マップ

選考委員の一覧へ
Last Update[H27]2015/1/30

河野多恵子
Kono Taeko
生没年月日【注】 大正15年/1926年4月30日~平成27年/2015年1月29日
在任期間 第97回~第136回(通算20年・40回)
在任年齢 61歳2ヶ月~80歳8ヶ月
経歴 大阪府大阪市生まれ。大阪府女子専門学校(現・大阪府立大学)卒。昭和25年/1950年より丹羽文雄主宰『文学者』同人となり、主に同誌に作品を発表。新潮社の同人雑誌賞を受けた「幼児狩り」で注目される。
受賞歴・候補歴
  • 第8回同人雑誌賞(昭和36年/1961年)「幼児狩り」
  • |候補| 第47回芥川賞(昭和37年/1962年上期)「雪」
  • |候補| 第48回芥川賞(昭和37年/1962年下期)「美少女」
  • 第49回芥川賞(昭和38年/1963年上期)「蟹」
  • 第6回女流文学賞(昭和42年/1967年)『最後の時』
  • |候補| 第4回谷崎潤一郎賞(昭和43年/1968年)『不意の声』
  • 第20回読売文学賞[小説賞](昭和43年/1968年)『不意の声』
  • |候補| 第8回谷崎潤一郎賞(昭和47年/1972年)『骨の肉』
  • |候補| 第11回女流文学賞(昭和47年/1972年)『骨の肉』
  • |候補| 第9回谷崎潤一郎賞(昭和48年/1973年)『双夢』
  • |候補| 第2回川端康成文学賞(昭和50年/1975年)「択ばれて在る日々」
  • |候補| 第12回谷崎潤一郎賞(昭和51年/1976年)『血と貝殻』
  • 第28回読売文学賞[評論・伝記賞](昭和51年/1976年)『谷崎文学と肯定の欲望』
  • 第16回谷崎潤一郎賞(昭和55年/1980年)『一年の牧歌』
  • 第40回日本藝術院賞[文芸](昭和58年/1983年度)"作家としての業績"
  • 第44回野間文芸賞(平成3年/1991年)『みいら採り猟奇譚』
  • 第10回伊藤整文学賞[小説部門](平成11年/1999年)『後日の話』
  • 第41回毎日芸術賞(平成11年/1999年度)『後日の話』
  • 第28回川端康成文学賞(平成14年/2002年)「半所有者」
  • 文化功労者(平成14年/2002年)
  • 文化勲章(平成26年/2014年)
個人全集 『河野多恵子全集』全10巻(平成6年/1994年11月~平成7年/1995年9月・新潮社刊)
芥川賞候補歴 第47回候補 「雪」(『新潮』昭和37年/1962年5月号)
第48回候補 「美少女」(『新潮』昭和37年/1962年8月号)
第49回受賞 「蟹」(『文學界』昭和38年/1963年6月号)
備考
  - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

下記の選評の概要には、評価として◎か○をつけたもの(見方・注意点を参照)、または受賞作に対するもののみ抜粋しました。さらにくわしい情報は、各回の「この回の全概要」をクリックしてご覧ください。

芥川賞 97 昭和62年/1987年上半期   一覧へ
選評の概要 村田氏の登場 総行数30 (1行=26字)
選考委員 河野多恵子 女61歳
候補 評価 行数 評言
女42歳
6 「(引用者注:最終的に)「鍋の中」一作の受賞を支持した。米谷ふみ子・山田詠美氏の出現には、女性新人の歴然とした変化が認められた。現実との強い対決が作品の基盤となっているのが、大きな特色である。村田喜代子氏のこの受賞作もまたそうである。」
尾崎昌躬
男43歳
6 「この作品を認めながらも今後に疑問を呈した委員があった。私もそれは思わぬでもなかったが、賭けてみたいと考えていた。」「少しも旧めかしくなく、作中の世界を超えて展がるものが、この作品にはあった。」
選評出典:『芥川賞全集 第十四巻』平成1年/1989年5月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和62年/1987年9月号)
ページの先頭へ
        - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

芥川賞 98 昭和62年/1987年下半期   一覧へ
選評の概要 二作の強み 総行数32 (1行=26字)
選考委員 河野多恵子 女61歳
候補 評価 行数 評言
男57歳
17 「私はその豊かさ、強さに圧倒された。呆然となったくらいである。」「何か大きな成り行きとでも言うべきものに、めいめいに、時には共同で深く呼応してゆく。しかも、その呼応ぶりそものが、時に大きな成り行きをあたかも見返しているような凄味をぎらりと放つ。これほど自然に、明らかに、毒を孕んだ新人の作品は稀であろう。」
男42歳
13 「個性的に新しい感覚のよさ、乾いた抒情の味は、なかなかのものだった。作者が育んできた独自の思想(ルビ:かんがえ)と両者が溶け合っていて、この作品および作者の得難い強みはそこにあり、期待をそそる。」「根には、今日の〈偽の現実〉との作者の対決がある。が、時折、理窟や説明に縋る。この作者ならばそれを克服するだけのあと一段の成長を程なく遂げそうなので、私は少し先での受賞を理想と考え、且つ早目の受賞に反対する気持には到らなかった。」
選評出典:『芥川賞全集 第十四巻』平成1年/1989年5月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和63年/1988年3月号)
ページの先頭へ
        - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

芥川賞 99 昭和63年/1988年上半期   一覧へ
選評の概要 感想 総行数33 (1行=26字)
選考委員 河野多恵子 女62歳
候補 評価 行数 評言
夫馬基彦
男44歳
7 「何とか授賞の検討対象になり得ていると思った」「いつもながらの呼吸の深い文体がよい。」「実力は相当のものである。しかし、前作に較べると、作品の張りが聊か弱い。私はこの作品を一応推したが、今回は受賞作なしであっても止むを得ないという事前の考えは、選考会の席でも変えてはもらえなかった。」
男42歳
0  
  「前回は強い候補作が多くて、びっくりした。今度は、その反対の意味でびっくりした。」「今回の候補作を読み通し、読み返しながら最も強く感じたことを記す。大極においても、細部についても、矛盾や不自然が気になった。」「矛盾・不自然歓迎だが、矛盾どまり、不自然どまりの単なるでたらめに対しては、頑固なリアリズム文学の信奉者のように拒絶する。その種のでたらめに抽象性や新手法や新しい文学を見拵えようとするのは、全く笑止である。」
選評出典:『芥川賞全集 第十四巻』平成1年/1989年5月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和63年/1988年9月号)
ページの先頭へ
        - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

芥川賞 100 昭和63年/1988年下半期   一覧へ
選評の概要 三作について 総行数31 (1行=26字)
選考委員 河野多恵子 女62歳
候補 評価 行数 評言
女33歳
15 「(引用者注:「黄昏のストーム・シーディング」と共に)推した。」「ソウルの大学の留学生由煕と、彼女の下宿先の年上の娘〈私〉とに、作者の内部がほぼ七三くらいの割合いに配分されている。」「この作品で作者の書きたかったことを表現するのに、この配分の仕方は実に適切である。」「通読中、私は言葉の生理性をはじめ言葉の問題で幾様にも揺さぶりかけられた。」
大岡玲
男30歳
5 「(引用者注:「由煕」と共に)推した。」「弱点の指摘と共に資質が大方の評価を受け、期待をもって今回は見送られた。その活々した抽象性の駆使の鮮やかさは、優れた才能の出現を思わせる。」
男37歳
13 「完成度ということでは一番よく書けている。」「印象的な部分も幾つかあった。が、冴えているとは言い難い。評価された死や土地や農村の問題にしても、出てくる事柄や見方が決して私の承知していることばかりではないにも拘らず、次々にみな何となく、既に知っている気持にさせられてしまうのである。」
選評出典:『芥川賞全集 第十四巻』平成1年/1989年5月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成1年/1989年3月号)
ページの先頭へ
        - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

芥川賞 101 平成1年/1989年上半期   一覧へ
選評の概要 大きな期待 総行数34 (1行=24字)
選考委員 河野多恵子 女63歳
候補 評価 行数 評言
荻野アンナ
女32歳
21 「私はためらいなく押した。」「軽妙な運びで、読む者に人間の愉快な不可解さを分ってゆく。」「視覚で聞く方言に仕立て切った、周到さと繊細な文章感覚にも感心した。なかなかの才気の持主なのに、才気のある作家の順調な成長がとかくそのために妨げられる、人間と文学を侮る態度がないのもよい。ただ、才気が末端で時に空廻りする。」
選評出典:『芥川賞全集 第十五巻』平成14年/2002年4月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成1年/1989年9月号)
ページの先頭へ
        - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

芥川賞 102 平成1年/1989年下半期   一覧へ
選評の概要 大岡氏と荻野氏 総行数32 (1行=24字)
選考委員 河野多恵子 女63歳
候補 評価 行数 評言
男31歳
13 「私は(引用者中略)推した。」「又しても導入部の拙さや無意味な補強の部分があるなど欠点はある。しかし、作者が前人未踏の分野に挑んでいることは確かである。」「大岡氏の登場には、文学的にも社会的にも、一九八〇年代に対する鮮やかな反措定の観がある。」
荻野アンナ
女33歳
8 「私は(引用者中略)推した。」「前回の時から一段と成長している。」「留学時代が、未来を含む主人公の人生の紛れもない一時期として伝わってくる。過去が現在にあり、確かに未来へ転じてゆきそうな手応えと光りが全編に満ちており、標題の〈ドアを開(原文ママ)めるな〉も絶妙!」
女50歳
7 「女の一生もの、人生派ものになりかねない素材を扱いながら、一向にそうならず、人生と人間のおもしろさを描き出したことは一応評価する。しかし、そのおもしろさが、この作品を超えて読者に働きかけるまでには到っていない。」
  「今回の候補作の水準は非常に高かった。」
選評出典:『芥川賞全集 第十五巻』平成14年/2002年4月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成2年/1990年3月号)
ページの先頭へ
        - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

芥川賞 103 平成2年/1990年上半期   一覧へ
選評の概要 最後の選択 総行数34 (1行=24字)
選考委員 河野多恵子 女64歳
候補 評価 行数 評言
荻野アンナ
女33歳
5 「私は最も強く推した。」「作者の才能と実力をあらためて感じたが、票は少かった。」
男44歳
11 「次々に現われ、交錯する、意外な事件のわざとらしい辻褄の合わせ方やミステリーのリアリティの欠如で、破綻している箇所がいくつかある。」「しかし、この作品はなかなか中国を実感させる。」「ある程度には信用できるので、私は最終的にはこれを択んだ。」
選評出典:『芥川賞全集 第十五巻』平成14年/2002年4月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成2年/1990年9月号)
ページの先頭へ
        - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

芥川賞 104 平成2年/1990年下半期   一覧へ
選評の概要 感想 総行数33 (1行=24字)
選考委員 河野多恵子 女64歳
候補 評価 行数 評言
女28歳
12 「今度も文章がよかった。」「作者はこれまでに妖しい世界、あるいはエキセントリックな様相を手がけながら、そのたびに説得力が足りなかった。今度の作品も同じ傾向のものではあるけれども、展がりが備わった。」「受賞に価する作品だと思われる。」
選評出典:『芥川賞全集 第十五巻』平成14年/2002年4月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成3年/1991年3月号)
ページの先頭へ
        - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

芥川賞 105 平成3年/1991年上半期   一覧へ
選評の概要 二作を推す 総行数34 (1行=24字)
選考委員 河野多恵子 女65歳
候補 評価 行数 評言
男46歳
16 「私には「眠り」を描いた作品として興味深かった。」「起こし屋というアルバイト青年を主人公にしたのが、この作品の取得の基になっている。」「しかし、自動起床装置導入の話が出てくるところから、急につまらなくなった。主人公(と同僚聡)の視力・感じ方が狭く、幼稚に、粗くなる。実力不足が窺かれる気がしたが、そこに到るまでの間に伝わってきた才能を信じて、推すことにした。」
女34歳
18 「第一回の候補の時から多くの選者が才能は認めておりながら、毎回見送りとなった。何よりも才気の空まわりが目立ったからだが、受賞作ではそういう弱点が多分に消え、作家としての成長を示している。欠点はあるけれども……。」「この作品の男女の描き方は全く新しい。」「作者は男女を描くのに、常にまず人間として見ることを経て男あるいは女を描いている。」
選評出典:『芥川賞全集 第十五巻』平成14年/2002年4月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成3年/1991年9月号)
ページの先頭へ
        - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

芥川賞 106 平成3年/1991年下半期   一覧へ
選評の概要 創作の会得 総行数32 (1行=24字)
選考委員 河野多恵子 女65歳
候補 評価 行数 評言
女30歳
9 「快い手応えを感じながら読み進んだ。」「一つのことが、幾様にも生き、幾つものことが響き合い、映り合う。姉の妊娠を知るところ以後は落ちるが、最後は立ち直った。」「何よりも作者が創作というものを全身で会得している様子が信頼できるので、この作品を推した。」
選評出典:『芥川賞全集 第十六巻』平成14年/2002年6月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成4年/1992年3月号)
ページの先頭へ
        - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

芥川賞 107 平成4年/1992年上半期   一覧へ
選評の概要 『運転士』を推す 総行数32 (1行=24字)
選考委員 河野多恵子 女66歳
候補 評価 行数 評言
男36歳
19 「積極的にして、全く衒い心のない、すぐれた作品であった。」「この主人公には、往年の小説の人物のキャラクターとは異なるキャラクターが備わっている。このように抽象的に捉えられることで初めて表現され得る現代の新しい様ざまのキャラクターの存在を想像させられもした。現代短編小説の魅力の横溢する、充実した作品が受賞作に得られて幸いである。」
  「また小説を書くうえで、非常に大切なことは、衒い心の自戒であろう。その作品で生かそうとしている自分の体験なり、認識なり、創作理論なり、着想なりを衒う心が(恐らく無意識のうちに)生じると、よい作品になる可能性は失われてしまう。」「候補作のうちの数編はそういう作品だったことを記しておく。」
選評出典:『芥川賞全集 第十六巻』平成14年/2002年6月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成4年/1992年9月号)
ページの先頭へ
        - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

芥川賞 108 平成4年/1992年下半期   一覧へ
選評の概要 可能性の気配 総行数33 (1行=24字)
選考委員 河野多恵子 女66歳
候補 評価 行数 評言
女32歳
9 「最後の部分が文学的誠実さを失ってしまっている。しかし、この人には、かねて注目してきた。自在で綾に富んだ発想とそれに適切な文章を駆使する才能は、なかなかのものである。」
  「今度の六候補作には、強く推したいものはなかった。」「どの作品にも、相当の佳作になり得る可能性の気配が感じられながら、その可能性が充分に発揮されていない、もどかしさがあった。」
選評出典:『芥川賞全集 第十六巻』平成14年/2002年6月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成5年/1993年3月号)
ページの先頭へ
        - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

芥川賞 109 平成5年/1993年上半期   一覧へ
選評の概要 あるカップルの物語 総行数35 (1行=24字)
選考委員 河野多恵子 女67歳
候補 評価 行数 評言
男36歳
31 「推した。」「この作品は老人問題小説でも、老人小説でもない。」「描かれているのは、まさしく、あるカップルの――それも豊かな物語の印象が強い。その夫、その妻をはじめ作中人物のそれぞれに人間としての誇りを見出しているからである。つまり、人物を人格において捉えて、みごとに成功している。」「すぐれた前衛作品が出現した。」
選評出典:『芥川賞全集 第十六巻』平成14年/2002年6月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成5年/1993年9月号)
ページの先頭へ
        - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

芥川賞 110 平成5年/1993年下半期   一覧へ
選評の概要 見事な標題 総行数27 (1行=24字)
選考委員 河野多恵子 女67歳
候補 評価 行数 評言
男37歳
7 「人を殺した者のその後の様相を捉えている。」「結末で、(引用者中略)石に全編が重層的抽象性をもって結ばれており、標題の中心の意味もその石にある。読み終えてみて、見事な題であることがよく判った。」
選評出典:『芥川賞全集 第十六巻』平成14年/2002年6月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成6年/1994年3月号)
ページの先頭へ
        - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

芥川賞 111 平成6年/1994年上半期   一覧へ
選評の概要 四作について 総行数34 (1行=24字)
選考委員 河野多恵子 女68歳
候補 評価 行数 評言
女38歳
12 「名作である。」「まさにリアリズムでは捉え得ない、その微妙で深く有機的な首都と郷里の主人公における関係を、作者は実に巧妙な抽象性を用いて表現している。文章の鮮やかさに支えられた一行一行の転換の妙味は、快感を与えるほどである。」
男39歳
7 「一部によさは見られるので、最初から退けることはしなかったが、受賞には反対した。書きたい気持の沸っていることは分るけれども、まだ無闇に書きたいだけで、創作衝動以前のものにしか感じられなかった。」
選評出典:『芥川賞全集 第十七巻』平成14年/2002年8月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成6年/1994年9月号)
ページの先頭へ
        - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

芥川賞 112 平成6年/1994年下半期   一覧へ
選評の概要 感想 総行数26 (1行=24字)
選考委員 河野多恵子 女68歳
候補 評価 行数 評言
  「いずれの作品も、作者の精いっぱいの頑張りを感じさせる。それなのに、受賞作が得られない。要するに、暢気すぎるのである。創作ということについて、深く考えていないとみえる。ただ頑張れば、何かが生まれてくると思っているかのようである。」「よい小説を書こうと思えば、最初の一行、少くとも数行で、作者とその作品の特質が早くも屹立していなければならない。」
選評出典:『芥川賞全集 第十七巻』平成14年/2002年8月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成7年/1995年3月号)
ページの先頭へ
        - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

芥川賞 113 平成7年/1995年上半期   一覧へ
選評の概要 受賞作の新しさ 総行数34 (1行=24字)
選考委員 河野多恵子 女69歳
候補 評価 行数 評言
男38歳
17 「本当に新しい男女を活々と表現していた。」「二人(引用者注:〈ぼく〉と〈真紀さん〉)は互いに異性意識から全く解放されていて、そのために却って男が、女が、どこまでも自由に――つまり、豊かに、鋭く、描出されている。男女共学の収穫の達成を想わせる人たちの創造に成功した文学作品が、遂に出現したのである。」
選評出典:『芥川賞全集 第十七巻』平成14年/2002年8月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成7年/1995年9月号)
ページの先頭へ
        - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

芥川賞 114 平成7年/1995年下半期   一覧へ
選評の概要 『豚の報い』の魅力 総行数35 (1行=24字)
選考委員 河野多恵子 女69歳
候補 評価 行数 評言
男48歳
14 「作者はいっさいの顕示も思惑もなしに沖縄を溌剌と描いている。沖縄の自然と人々の魅力に衝たれて、自然というもの、人間というものを見直したい気持にさせる。作者の生きている感動が伝わってくる。沖縄を描いて沖縄を超えている、この作品を敢えて沖縄文学と呼ぶのは、むしろ非礼かもしれない。」
選評出典:『芥川賞全集 第十七巻』平成14年/2002年8月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成8年/1996年3月号)
ページの先頭へ
        - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

芥川賞 115 平成8年/1996年上半期   一覧へ
選評の概要 「蛇を踏む」を推す 総行数33 (1行=24字)
選考委員 河野多恵子 女70歳
候補 評価 行数 評言
女38歳
15 「作者の川上弘美さんがこれの書けたことで如何にも小説を書く呼吸を会得した気配の感じられる出来栄えを示していた。」「私は自分が自分の肉体から決して出られないこと、他の人の感覚を決して知りようがないことを時に思うことがある。この作品は、そのような一つの例外もない絶対的な真実を、変身という裏返しの方法によって描いたものとして、興味深く読んだ。文章も自由に作者のものになっていて快い。」
選評出典:『芥川賞全集 第十七巻』平成14年/2002年8月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成8年/1996年9月号)
ページの先頭へ
        - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

芥川賞 116 平成8年/1996年下半期   一覧へ
選評の概要 感想 総行数30 (1行=24字)
選考委員 河野多恵子 女70歳
候補 評価 行数 評言
女28歳
17 「珍しく省略ということを弁えている。」「この作品の冒頭の四行は、もう少し鮮やかな書き方が出来たことだろう。しかし、以後、最後に至るまで、実に興味深く読んだ。」「虚と実の展開してゆく様相に引きこまれた。特殊な家族を扱いながら、親・子・きょうだい・夫婦というものの本質を捉え切っている。」「作者の才能を鮮やかに感じさせる作品である。」
男37歳
10 「少年時代の同級生花井修のクラスでの立ち廻り方は、よく描けている。」「ただ、主人公の花井への二十年近い拘泥りが、私には実感が淡かった。が、そこに強い理解を示す複数の委員もあった。」「私の気のつかぬ何等かの取柄があるのかもしれないと思いもして、二作受賞に賛成したのである。」
  「いつ頃からか、芥川賞の候補作に限らず、無意味に長い作品が多くなった。」
選評出典:『芥川賞全集 第十七巻』平成14年/2002年8月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成9年/1997年3月号)
ページの先頭へ
        - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

芥川賞 117 平成9年/1997年上半期   一覧へ
選評の概要 『水滴』の強み 総行数35 (1行=24字)
選考委員 河野多恵子 女71歳
候補 評価 行数 評言
男36歳
31 「この賞の選考に携わってきた十一年間で、印象に残る受賞作は複数あるけれども、最も感心した」「敬服した。」「非リアリズムによって、沖縄戦という戦争を現代に及ぶ視野で捉えている。」「硬張ったメッセージは一つもない。しかし、ウジのその言葉(引用者注:「嘘物言いして戦場の哀れ事語てぃ銭儲けしよって、今に罰被るよ」)にしても、(引用者中略)戦争体験者の体験意識の途方もない、風化ならぬ通俗化に対する痛烈な批判とも聞えるのである。」
選評出典:『芥川賞全集 第十八巻』平成14年/2002年10月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成9年/1997年9月号)
ページの先頭へ
        - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

芥川賞 118 平成9年/1997年下半期   一覧へ
選評の概要 惜しい作品 総行数36 (1行=24字)
選考委員 河野多恵子 女71歳
候補 評価 行数 評言
  「(引用者注:受賞作なしは)たまたま佳作に出会えなかっただけのことで、そこに何等かの傾向を問おうとするのは、早計ではあるまいか。」
選評出典:『芥川賞全集 第十八巻』平成14年/2002年10月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成10年/1998年3月号)
ページの先頭へ
        - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

芥川賞 119 平成10年/1998年上半期   一覧へ
選評の概要 リアリズムからの前進 総行数33 (1行=24字)
選考委員 河野多恵子 女72歳
候補 評価 行数 評言
男39歳
22 「(引用者注:主人公カザマが老女ミツコに対応するのは仕事の)一部であること、また彼のミツコに対するやさしさが立場上のやさしさであることが、自然に、豊かに描出されていて、作品世界を不思議なほど広がりのあるものにしている。それは、この作品の抽象性が成功しているからでもある。」「四度目の候補である今度の作品で、遽かに才能が大きく呼吸しはじめた。」
男43歳
12 「確かな手応えを感じた。」「閉塞的な世界であるにも拘らず陰湿性がなく、(引用者中略)広がりを見せる。宗教への問いかけ、擦り寄り方には、主人公の〈悪あがき〉自体にある真摯さに深い説得力があって、いたく引き込まれた。」
選評出典:『芥川賞全集 第十八巻』平成14年/2002年10月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成10年/1998年9月号)
ページの先頭へ
        - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

芥川賞 120 平成10年/1998年下半期   一覧へ
選評の概要 志に賭ける 総行数33 (1行=24字)
選考委員 河野多恵子 女72歳
候補 評価 行数 評言
男23歳
33 「私はこの作品の新仮名遣に、作者が語っている理由ある選択以上の取得、つまり効果を感じる。」「「日蝕」の創作動機は、奇跡との遭遇願望である。とはいえ、主人公の学僧は、作者の分身ではない。」「学僧は、海苔を干す時に使われる小簾のようなもので、干し上がれば用のないものである。」「主人公の学僧を無性格な人物たらしめてあるのは、大きな取得になっている。」「私はこの作品に作者の志の高さを見たので、それに賭けるつもりで推した。」
選評出典:『芥川賞全集 第十八巻』平成14年/2002年10月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成11年/1999年3月号)
ページの先頭へ
        - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

芥川賞 121 平成11年/1999年上半期   一覧へ
選評の概要 個性というもの 総行数36 (1行=24字)
選考委員 河野多恵子 女73歳
候補 評価 行数 評言
  「小説には、その作者独特のものが表われていなくてはならない。独特のものというのは、個性の意味である。」「小説の人称(引用者中略・注は)普通には三人称か一人称である。どちらにも、それぞれ利点と弱点がある。書こうとしている小説の人称を決めるには、先ずそのことをよく考えてみなくてはならない。」「文章は容れ物でもなければ、衣裳でもない。」「右のことを七候補作中の五作に、私はそれぞれ複数で強く感じた。」
選評出典:『芥川賞全集 第十八巻』平成14年/2002年10月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成11年/1999年9月号)
ページの先頭へ
        - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

芥川賞 122 平成11年/1999年下半期   一覧へ
選評の概要 二受賞者について 総行数36 (1行=24字)
選考委員 河野多恵子 女73歳
候補 評価 行数 評言
男→女37歳
16 「前候補作「恋の休日」に感じた文章のよい粘着力やさりげなくて鋭い表現力が、今回の「夏の約束」では一層生きるようになった。男性同性愛者たちのカップルや性転換者の交友をこだわりなく描いて、雰囲気に広がりがある。彼等は世間の差別的な視線とうまく折合いをつけている。」「しかし、差別的視線の弛みは、世間の寛大化や理解度の深まりの結果などではない。何事も相対化してしまう、今日の風潮の結果に外ならない。」
男34歳
7 「前候補作「おっぱい」よりも確実に進歩を感じさせる。文章に筆力が備わってきた。」「ただ、標題にも自ら表われているように思えるのだが、描かれている世界に、雰囲気として、そこを越えて行く力の漲り方が足りない。が、そういう点も遠からず克服できそうな作者である。」
  「勿論、この賞でも、他の新人賞でも、英語だけの標題であろうと、選者は優れた作品は推す。私の見るところでは、近年殖えている英語だけの標題の作品にはとかく、創作衝動微弱、醗酵不足、熟考不足のままで書きだした(ワープロを打ちはじめた)気配のものが多いのである。」
選評出典:『芥川賞全集 第十八巻』平成14年/2002年10月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成12年/2000年3月号)
ページの先頭へ
        - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

芥川賞 123 平成12年/2000年上半期   一覧へ
選評の概要 苦しい選評 総行数35 (1行=24字)
選考委員 河野多恵子 女74歳
候補 評価 行数 評言
男46歳
10 「前回の候補作同様に、古風で、精気のない作品だった。主人公と伊関との長ったらしい話にしても、現代の問題を論じているかに見えて、私には昔のの立った文学青年の面影が感じられた。文章は前回よりは少しは改良されたものの、それも本質的には変っていない。」
男38歳
14 「文章のスタイルとか語り口に特色があると見られている人のようである。」「駄じゃれとしても、低調の部類だろう。泰然と構えて、言葉の機能の奥深さを知り、洗練されねばならないのに、作者はこれまでの特色にひたすら勤勉であって、痛ましい気がする。」
  「推したい作品がなかった。選評を書くのが、何とも苦しい。」「個性と趣味・嗜好との混同は禁物で、後者に執着していては作家は衰弱するということを又しても付記しておく。」
選評出典:『芥川賞全集 第十九巻』平成14年/2002年12月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成12年/2000年9月号)
ページの先頭へ
        - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

芥川賞 124 平成12年/2000年下半期   一覧へ
選評の概要 六候補作について 総行数37 (1行=24字)
選考委員 河野多恵子 女74歳
候補 評価 行数 評言
玄侑宗久
男44歳
12 「「玄山」は僧侶の描いた僧侶に堕していない。作者の僧侶としての経験や認識が基盤になっておりながら、作家としての眼と姿勢が終始鮮やかに感じられ、私は専らこれを推した。」
男42歳
5 「後半に聊か無駄が混じっているが、これまでの候補作でかなりよかった「泥海の兄弟」「信長の守護神」に較べても成長している。」
男37歳
15 「とても推せなかった。」「彼等(引用者注:主人公とその友人)の会話、幾つものエピソード、食事や風景のこと、いずれもエスプリもどき、知性まがいの筆触しか感じられない。「私」のような閲歴であるらしい作者がそういう自分を直接に当てにして「私」を書いているからだろう。」
選評出典:『芥川賞全集 第十九巻』平成14年/2002年12月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成13年/2001年3月号)
ページの先頭へ
        - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

芥川賞 125 平成13年/2001年上半期   一覧へ
選評の概要 自然に決まる 総行数32 (1行=24字)
選考委員 河野多恵子 女75歳
候補 評価 行数 評言
男45歳
15 「第一回目の投票で、すでに充分過半数以上の票を得ていた。」「私は三回の投票すべて、この二作(引用者注:「中陰の花」「サイドカーに犬」)に○を入れた。」「前回の候補作よりも確実に進歩していた。無駄な迂回がなくなり、しかもすっきり仕上ったことで作品が痩せるのではなく、豊かになっていて嬉ばしい。」
長嶋有
男28歳
14 「第二回目の投票で、半数の票を得た。」「私は三回の投票すべて、この二作(引用者注:「中陰の花」「サイドカーに犬」)に○を入れた。」「おどろくほどカンのよい人である。(引用者中略)省略――それも新しい省略の仕方をひそかに発見しつつあるらしい点から見ても、関心を抱かずにはいられない。「サイドカーに犬」は書くに足りるモチーフをもち、それがよく表現されていた。」
  「今回の選考会は至って順調に進んで早目に好結果が得られた。」
選評出典:『芥川賞全集 第十九巻』平成14年/2002年12月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成13年/2001年9月号)
ページの先頭へ
        - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

芥川賞 126 平成13年/2001年下半期   一覧へ
選評の概要 人間の誇り 総行数54 (1行=14字)
選考委員 河野多恵子 女75歳
候補 評価 行数 評言
男29歳
45 「この作品で人間の誇りを描く意識は恐らく全くなかったと思われるが、全篇から伝ってくる人間の誇りの瑞々しさに、このうえなく魅かれた。」「この作品ではまた、事物の展開にも、文章にも無駄がない。省略の効果をよく知っている。」
選評出典:『文藝春秋』平成14年/2002年3月号
ページの先頭へ
        - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

芥川賞 127 平成14年/2002年上半期   一覧へ
選評の概要 秀作 総行数60 (1行=14字)
選考委員 河野多恵子 女76歳
候補 評価 行数 評言
男33歳
32 「前回の候補作までは、途中で無意味な大迂回や出っ張りがあったり、要の位置がずれていたりして、折角の良さが充分に生きていなくて惜しまれた。」「「パーク・ライフ」の完成度はきわめて高い。」「人間が生きて在るとは、どういうことなのか。そのことがまことに伸びやかに、深く伝わってくる。」「秀作と呼ぶのに、何のためらいもない。」
選評出典:『文藝春秋』平成14年/2002年9月号
ページの先頭へ
        - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

芥川賞 128 平成14年/2002年下半期   一覧へ
選評の概要 大道さんを推す 総行数66 (1行=14字)
選考委員 河野多恵子 女76歳
候補 評価 行数 評言
女36歳
20 「私はこの人の作品には、(引用者注:最初の候補のときより)珍しく小説としての表情のあることに関心をもっていた。受賞作ではそれに加えて厚みが増した。」「終りのほうで役場の職員がすずめばちの駆除に来てからあと、殊に最後の行替えから結末までの部分の出来栄えは、この全篇中でも最も見事である。」
選評出典:『文藝春秋』平成15年/2003年3月号
ページの先頭へ
        - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

芥川賞 129 平成15年/2003年上半期   一覧へ
選評の概要 二作について 総行数53 (1行=14字)
選考委員 河野多恵子 女77歳
候補 評価 行数 評言
男42歳
28 「作者が小説の創り方を全身で知っているかのような感じを与える出来栄えである。」「この作品には、無駄や独りよがりや顕示的なところが全くない。客観視する意志と力をもっている作者のようだ。作品の風通しのよさも、それ故だろう。」「ほんの小さな端役といえども精彩があり、全篇を支える確実な一員に思えてくるのは大したものである。」
選評出典:『文藝春秋』平成15年/2003年9月号
ページの先頭へ
        - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

芥川賞 130 平成15年/2003年下半期   一覧へ
選評の概要 二受賞作について 総行数45 (1行=14字)
選考委員 河野多恵子 女77歳
候補 評価 行数 評言
女20歳
31 「主人公が彫ってもらう刺青に関する部分は簡略で、全篇中そこだけ鮮明さも足りない。が、この部分で強い印象を与える描き方がなされていたならば、作品は割れていたことだろう。」「結末も、見事なものだ。読書はここで、主人公と殺されたアマとの繋がりの深さを陰画のかたちで今更ながら訴えられる。」「非常に若い(引用者注:受賞した二人の)両作者が、非常に若い人物を描きながら若さの衒いや顕示がなく、視力は勁い。」
女19歳
20 「彼等(引用者注:〈私〉と〈にな川〉)はまさしく高校一年生である実感に満ち、同時にそれを越えて生活というものを実感させる。」「非常に若い(引用者注:受賞した二人の)両作者が、非常に若い人物を描きながら若さの衒いや顕示がなく、視力は勁い。」
選評出典:『文藝春秋』平成16年/2004年3月号
ページの先頭へ
        - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

芥川賞 131 平成16年/2004年上半期   一覧へ
選評の概要 栗田さんは佳い 総行数56 (1行=14字)
選考委員 河野多恵子 女78歳
候補 評価 行数 評言
栗田有起
女32歳
10 「私は推した。以前の候補作よりも筋骨が強くなり、この作者のよき特性が一層よく分った。設定も細部も意表を衝き、且つどこまでも実感に富んでいる。」
男33歳
21 「受賞は、全く意外であった。介護されている祖母、大麻、音楽、それらの関係に何の有機性もない。」「祖母にしても、私には操り人形のようにしか見えなかった。」
  「前回のこの賞では、二人の女性が受賞していたから、今回は男の人の成果を期待したい気持になった。受賞者の性別など、本当は問うところではないのだが……。」
選評出典:『文藝春秋』平成16年/2004年9月号
ページの先頭へ
        - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

芥川賞 132 平成16年/2004年下半期   一覧へ
選評の概要 三作者の次作に関心 総行数48 (1行=14字)
選考委員 河野多恵子 女78歳
候補 評価 行数 評言
白岩玄
男21歳
26 「興味深く読んだ。表現しようとしていることが、感じとして、なかなかよく伝わってくる。会話の最後に「(笑)」とした箇所が幾つもあるが、その有無にも選択の心くばりが窺える。仮りにも青春小説の類いの作ではない。」「(引用者注:白岩玄、中島たい子、山崎ナオコーラの)三作者の今回の候補作の良さが、別の題材を扱ってどういう発揮のされ方をするのか、それぞれに関心をそそられた。」
中島たい子
女35歳
17 「小説の枚数がいたく寛大に扱われているらしい今日、脂肪太りの作品によく出会うが、この小説では実に大小の省略の効果があがっている。」「(引用者注:白岩玄、中島たい子、山崎ナオコーラの)三作者の今回の候補作の良さが、別の題材を扱ってどういう発揮のされ方をするのか、それぞれに関心をそそられた。」
山崎ナオコーラ
女26歳
13 「専門学校生の主人公と二十歳年長の女性との関係が、苦笑でも軽いニヒルでもない微妙な特色のある客観視で捉えられている。」「(引用者注:白岩玄、中島たい子、山崎ナオコーラの)三作者の今回の候補作の良さが、別の題材を扱ってどういう発揮のされ方をするのか、それぞれに関心をそそられた。」
男36歳
3 「残念ながら根本的な古めかしさを感じるにとどまった。」
選評出典:『文藝春秋』平成17年/2005年3月号
ページの先頭へ
        - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

芥川賞 133 平成17年/2005年上半期   一覧へ
選評の概要 感想 総行数43 (1行=14字)
選考委員 河野多恵子 女79歳
候補 評価 行数 評言
男27歳
10 「今回の候補作でも暴力を、今度はネガティブの象(ルビ:かたち)で書いているが、非常に難しいことではあるにしても、人間の内部に確実に触れるには到っていない。とはいえ、物や小生物などを落下させるくだり、さらに自分を落下させた場合も想像の表現は、尋常ならぬ見事なものだ。」
  「今回の候補作には、ぜひとも受賞作にしたいものがなくて残念だった。」
選評出典:『文藝春秋』平成17年/2005年9月号
ページの先頭へ
        - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

芥川賞 134 平成17年/2005年下半期   一覧へ
選評の概要 『沖で待つ』の新しさ 総行数45 (1行=14字)
選考委員 河野多恵子 女79歳
候補 評価 行数 評言
女39歳
45 「この作品には、全く無駄がない」「一人称、しかも話言葉という、無駄の生じる危険の多い形式を用いておりながら、その無駄のなさは小気味がよいほどで、正味のおいしさに富んでいる。」「職業の織り込まれ方の見事さには感心した。」「現代の本式の職業をこれほどまでに自由に書きこなした『沖で待つ』の新しさには瞠目する。」
選評出典:『文藝春秋』平成18年/2006年3月号
ページの先頭へ
        - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

芥川賞 135 平成18年/2006年上半期   一覧へ
選評の概要 ○ひとつ、△ひとつ 総行数58 (1行=14字)
選考委員 河野多恵子 女80歳
候補 評価 行数 評言
男35歳
53 「以前の二作もかなりよかったが、今度の作品では確実な成長が感じられた。」「三人称に挑戦して、最小限の主語の使い方にも成功している。」「不如意な結婚生活と離婚を扱って、簡潔な文章からさまざまに迸る人間の妙味の豊かさには尋常ならぬものがある。私はこの作品ひとつに○の票を入れた。」
選評出典:『文藝春秋』平成18年/2006年9月号
ページの先頭へ
        - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

芥川賞 136 平成18年/2006年下半期   一覧へ
選評の概要 よい小説の書き方 総行数44 (1行=14字)
選考委員 河野多恵子 女80歳
候補 評価 行数 評言
女23歳
31 「落ちついて書いてある。この作者は見るべきところをしっかりと見ている。無駄がない。小説は表現するものであって、理屈で説明するものではないことも知っている。」「作者は極く若い人だが、若さの衒いや若さにまかせて書いている様子は全くない。私はこの人に本物の早熟を感じた。」
  「(引用者注:「ひとり日和」以外の)他の候補作も一所懸命書かれており、それぞれに何等かの取り得もあるのだが、この作品と競い合うような強さをもつものはなかった。」
選評出典:『文藝春秋』平成19年/2007年3月号
ページの先頭へ
        - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -


ページの先頭へ

トップページ直木賞・芥川賞受賞作一覧受賞作・候補作一覧受賞作家の群像候補作家の群像
選評の概要マップ || 選考委員の一覧へ