選評の概要
97. 98. 99. 100.101. 102. 103. 104. 105.
106. 107. 108. 109. 110.
111. 112. 113. 114. 115.
116. 117. 118. 119. 120.
121. 122. 123. 124. 125.
126. 127. 128. 129. 130.
131. 132. 133. 134. 135.
136.
生没年月日【注】 | 大正15年/1926年4月30日~平成27年/2015年1月29日 | |
在任期間 | 第97回~第136回(通算20年・40回) | |
在任年齢 | 61歳2ヶ月~80歳8ヶ月 | |
経歴 | 大阪府大阪市生まれ。大阪府女子専門学校(現・大阪府立大学)卒。昭和25年/1950年より丹羽文雄主宰『文学者』同人となり、主に同誌に作品を発表。新潮社の同人雑誌賞を受けた「幼児狩り」で注目される。 | |
受賞歴・候補歴 |
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個人全集 | 『河野多恵子全集』全10巻(平成6年/1994年11月~平成7年/1995年9月・新潮社刊) | |
芥川賞候補歴 | 第47回候補 「雪」(『新潮』昭和37年/1962年5月号) 第48回候補 「美少女」(『新潮』昭和37年/1962年8月号) 第49回受賞 「蟹」(『文學界』昭和38年/1963年6月号) |
下記の選評の概要には、評価として◎か○をつけたもの(見方・注意点を参照)、または受賞作に対するもののみ抜粋しました。さらにくわしい情報は、各回の「この回の全概要」をクリックしてご覧ください。
選考委員 河野多恵子 61歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
42歳 |
◎ | 6 | 「(引用者注:最終的に)「鍋の中」一作の受賞を支持した。米谷ふみ子・山田詠美氏の出現には、女性新人の歴然とした変化が認められた。現実との強い対決が作品の基盤となっているのが、大きな特色である。村田喜代子氏のこの受賞作もまたそうである。」 | |
尾崎昌躬 | 43歳 |
○ | 6 | 「この作品を認めながらも今後に疑問を呈した委員があった。私もそれは思わぬでもなかったが、賭けてみたいと考えていた。」「少しも旧めかしくなく、作中の世界を超えて展がるものが、この作品にはあった。」 |
選評出典:『芥川賞全集 第十四巻』平成1年/1989年5月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和62年/1987年9月号) |
選考委員 河野多恵子 62歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
夫馬基彦 | 44歳 |
○ | 7 | 「何とか授賞の検討対象になり得ていると思った」「いつもながらの呼吸の深い文体がよい。」「実力は相当のものである。しかし、前作に較べると、作品の張りが聊か弱い。私はこの作品を一応推したが、今回は受賞作なしであっても止むを得ないという事前の考えは、選考会の席でも変えてはもらえなかった。」 |
42歳 |
― | 0 | ||
「前回は強い候補作が多くて、びっくりした。今度は、その反対の意味でびっくりした。」「今回の候補作を読み通し、読み返しながら最も強く感じたことを記す。大極においても、細部についても、矛盾や不自然が気になった。」「矛盾・不自然歓迎だが、矛盾どまり、不自然どまりの単なるでたらめに対しては、頑固なリアリズム文学の信奉者のように拒絶する。その種のでたらめに抽象性や新手法や新しい文学を見拵えようとするのは、全く笑止である。」 | ||||
選評出典:『芥川賞全集 第十四巻』平成1年/1989年5月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和63年/1988年9月号) |
選考委員 河野多恵子 62歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
33歳 |
◎ | 15 | 「(引用者注:「黄昏のストーム・シーディング」と共に)推した。」「ソウルの大学の留学生由煕と、彼女の下宿先の年上の娘〈私〉とに、作者の内部がほぼ七三くらいの割合いに配分されている。」「この作品で作者の書きたかったことを表現するのに、この配分の仕方は実に適切である。」「通読中、私は言葉の生理性をはじめ言葉の問題で幾様にも揺さぶりかけられた。」 | |
大岡玲 | 30歳 |
◎ | 5 | 「(引用者注:「由煕」と共に)推した。」「弱点の指摘と共に資質が大方の評価を受け、期待をもって今回は見送られた。その活々した抽象性の駆使の鮮やかさは、優れた才能の出現を思わせる。」 |
37歳 |
△ | 13 | 「完成度ということでは一番よく書けている。」「印象的な部分も幾つかあった。が、冴えているとは言い難い。評価された死や土地や農村の問題にしても、出てくる事柄や見方が決して私の承知していることばかりではないにも拘らず、次々にみな何となく、既に知っている気持にさせられてしまうのである。」 | |
選評出典:『芥川賞全集 第十四巻』平成1年/1989年5月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成1年/1989年3月号) |
選考委員 河野多恵子 63歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
荻野アンナ | 32歳 |
◎ | 21 | 「私はためらいなく押した。」「軽妙な運びで、読む者に人間の愉快な不可解さを分ってゆく。」「視覚で聞く方言に仕立て切った、周到さと繊細な文章感覚にも感心した。なかなかの才気の持主なのに、才気のある作家の順調な成長がとかくそのために妨げられる、人間と文学を侮る態度がないのもよい。ただ、才気が末端で時に空廻りする。」 |
選評出典:『芥川賞全集 第十五巻』平成14年/2002年4月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成1年/1989年9月号) |
選考委員 河野多恵子 63歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
31歳 |
◎ | 13 | 「私は(引用者中略)推した。」「又しても導入部の拙さや無意味な補強の部分があるなど欠点はある。しかし、作者が前人未踏の分野に挑んでいることは確かである。」「大岡氏の登場には、文学的にも社会的にも、一九八〇年代に対する鮮やかな反措定の観がある。」 | |
荻野アンナ | 33歳 |
◎ | 8 | 「私は(引用者中略)推した。」「前回の時から一段と成長している。」「留学時代が、未来を含む主人公の人生の紛れもない一時期として伝わってくる。過去が現在にあり、確かに未来へ転じてゆきそうな手応えと光りが全編に満ちており、標題の〈ドアを開(原文ママ)めるな〉も絶妙!」 |
50歳 |
△ | 7 | 「女の一生もの、人生派ものになりかねない素材を扱いながら、一向にそうならず、人生と人間のおもしろさを描き出したことは一応評価する。しかし、そのおもしろさが、この作品を超えて読者に働きかけるまでには到っていない。」 | |
「今回の候補作の水準は非常に高かった。」 | ||||
選評出典:『芥川賞全集 第十五巻』平成14年/2002年4月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成2年/1990年3月号) |
選考委員 河野多恵子 74歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
玄侑宗久 | 44歳 |
◎ | 12 | 「「玄山」は僧侶の描いた僧侶に堕していない。作者の僧侶としての経験や認識が基盤になっておりながら、作家としての眼と姿勢が終始鮮やかに感じられ、私は専らこれを推した。」 |
42歳 |
□ | 5 | 「後半に聊か無駄が混じっているが、これまでの候補作でかなりよかった「泥海の兄弟」「信長の守護神」に較べても成長している。」 | |
37歳 |
● | 15 | 「とても推せなかった。」「彼等(引用者注:主人公とその友人)の会話、幾つものエピソード、食事や風景のこと、いずれもエスプリもどき、知性まがいの筆触しか感じられない。「私」のような閲歴であるらしい作者がそういう自分を直接に当てにして「私」を書いているからだろう。」 | |
選評出典:『芥川賞全集 第十九巻』平成14年/2002年12月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成13年/2001年3月号) |
選考委員 河野多恵子 75歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
45歳 |
◎ | 15 | 「第一回目の投票で、すでに充分過半数以上の票を得ていた。」「私は三回の投票すべて、この二作(引用者注:「中陰の花」「サイドカーに犬」)に○を入れた。」「前回の候補作よりも確実に進歩していた。無駄な迂回がなくなり、しかもすっきり仕上ったことで作品が痩せるのではなく、豊かになっていて嬉ばしい。」 | |
長嶋有 | 28歳 |
◎ | 14 | 「第二回目の投票で、半数の票を得た。」「私は三回の投票すべて、この二作(引用者注:「中陰の花」「サイドカーに犬」)に○を入れた。」「おどろくほどカンのよい人である。(引用者中略)省略――それも新しい省略の仕方をひそかに発見しつつあるらしい点から見ても、関心を抱かずにはいられない。「サイドカーに犬」は書くに足りるモチーフをもち、それがよく表現されていた。」 |
「今回の選考会は至って順調に進んで早目に好結果が得られた。」 | ||||
選評出典:『芥川賞全集 第十九巻』平成14年/2002年12月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成13年/2001年9月号) |
選考委員 河野多恵子 78歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
栗田有起 | 32歳 |
◎ | 10 | 「私は推した。以前の候補作よりも筋骨が強くなり、この作者のよき特性が一層よく分った。設定も細部も意表を衝き、且つどこまでも実感に富んでいる。」 |
33歳 |
● | 21 | 「受賞は、全く意外であった。介護されている祖母、大麻、音楽、それらの関係に何の有機性もない。」「祖母にしても、私には操り人形のようにしか見えなかった。」 | |
「前回のこの賞では、二人の女性が受賞していたから、今回は男の人の成果を期待したい気持になった。受賞者の性別など、本当は問うところではないのだが……。」 | ||||
選評出典:『文藝春秋』平成16年/2004年9月号 |
選考委員 河野多恵子 78歳 | ||||
候補 | 評価 | 行数 | 評言 | |
白岩玄 | 21歳 |
○ | 26 | 「興味深く読んだ。表現しようとしていることが、感じとして、なかなかよく伝わってくる。会話の最後に「(笑)」とした箇所が幾つもあるが、その有無にも選択の心くばりが窺える。仮りにも青春小説の類いの作ではない。」「(引用者注:白岩玄、中島たい子、山崎ナオコーラの)三作者の今回の候補作の良さが、別の題材を扱ってどういう発揮のされ方をするのか、それぞれに関心をそそられた。」 |
中島たい子 | 35歳 |
○ | 17 | 「小説の枚数がいたく寛大に扱われているらしい今日、脂肪太りの作品によく出会うが、この小説では実に大小の省略の効果があがっている。」「(引用者注:白岩玄、中島たい子、山崎ナオコーラの)三作者の今回の候補作の良さが、別の題材を扱ってどういう発揮のされ方をするのか、それぞれに関心をそそられた。」 |
山崎ナオコーラ | 26歳 |
○ | 13 | 「専門学校生の主人公と二十歳年長の女性との関係が、苦笑でも軽いニヒルでもない微妙な特色のある客観視で捉えられている。」「(引用者注:白岩玄、中島たい子、山崎ナオコーラの)三作者の今回の候補作の良さが、別の題材を扱ってどういう発揮のされ方をするのか、それぞれに関心をそそられた。」 |
36歳 |
● | 3 | 「残念ながら根本的な古めかしさを感じるにとどまった。」 | |
選評出典:『文藝春秋』平成17年/2005年3月号 |