芥川賞のすべて・のようなもの
第104回
芥川賞-選評の概要 トップページ
直木賞・芥川賞受賞作一覧
受賞作・候補作一覧
受賞作家の群像
候補作家の群像
選考委員の群像
マップ

ページの最後へ
Last Update[H26]2014/6/20

104   一覧へ 103前の回へ 後の回へ105
平成2年/1990年下半期
(平成3年/1991年1月16日決定発表/『文藝春秋』平成3年/1991年3月号選評掲載)
選考委員  河野多恵子
女64歳
黒井千次
男58歳
田久保英夫
男62歳
大江健三郎
男55歳
日野啓三
男61歳
大庭みな子
女60歳
丸谷才一
男65歳
吉行淳之介
男66歳
古井由吉
男53歳
三浦哲郎
男59歳
選評総行数  33 37 35 31 34 25 37 35 34 35
候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数
小川洋子 「妊娠カレンダー」
87
女28歳
12 16 16 13 21 5 18 22 0 14
有爲エンジェル 「踊ろう、マヤ」
191
女42歳
7 13 6 11 0 0 7 6 30 3
鷺沢萠 「葉桜の日」
148
女22歳
10 8 6 6 0 2 12 3 4 7
村上政彦 「ドライヴしない?」
163
男32歳
2 0 0 0 0 0 0 0 0 0
福元正實 「七面鳥の森」
75
男57歳
3 10 7 0 0 5 0 4 0 11
稲葉真弓 「琥珀の町」
71
女40歳
7 0 0 0 0 8 0 0 0 0
崎山多美 「シマ籠る」
117
女36歳
3 0 0 0 0 0 0 0 0 0
                   
年齢/枚数の説明   見方・注意点

このページの選評出典:『芥川賞全集 第十五巻』平成14年/2002年4月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成3年/1991年3月号)
1行当たりの文字数:24字


選考委員
河野多恵子女64歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
感想 総行数33 (1行=24字)
候補 評価 行数 評言
小川洋子
女28歳
12 「今度も文章がよかった。」「作者はこれまでに妖しい世界、あるいはエキセントリックな様相を手がけながら、そのたびに説得力が足りなかった。今度の作品も同じ傾向のものではあるけれども、展がりが備わった。」「受賞に価する作品だと思われる。」
有爲エンジェル
女42歳
7 「事故死した幼い娘と自分に対する主人公の独善的な見方がそのまま作者の見方を感じさせる。」
鷺沢萠
女22歳
10 「着眼はわるくはなく、登場人物も割り合いに描けているのだが、後半の運びが通俗的になる。そこに作者の弱点を見てしまうのは、早計かもしれない。」
村上政彦
男32歳
2 「小説を作る(原文傍点)ことに心を向けすぎ、生きた創造性が封じられている。」
福元正實
男57歳
3 「リアリズムから少しだけキッカリ離陸させることを意識して書かれておれば、もっと成功していただろう。」
稲葉真弓
女40歳
7 「整いすぎていた。もっと鋭いモチーフで、もっと自由に書ける作者ではないのだろうか。」
崎山多美
女36歳
3 「前作より進歩している。沖縄の人たちと踊りとの実に深い繋がりが実感される。」
          - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
他の選考委員
黒井千次
田久保英夫
大江健三郎
日野啓三
大庭みな子
丸谷才一
吉行淳之介
古井由吉
三浦哲郎
  ページの先頭へ

選考委員
黒井千次男58歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
一長一短 総行数37 (1行=24字)
候補 評価 行数 評言
小川洋子
女28歳
16 「(引用者注:最後に絞られた「妊娠カレンダー」「踊ろう、マヤ」「七面鳥の森」の三篇は)いずれも一長一短の感があり、どれを選ぶかに苦慮した。」「妹の悪意が倫理によって裁ける性質のものではないだけに、作品はどこか透明な仄暗さを孕んでいる。そこに魅力があるのだが、同時に曖昧さの残るのも事実である。」「結局は、他の二篇に比して、「一短」を上まわる「一長」が窺えたので、授賞には素直に同意した。」
有爲エンジェル
女42歳
13 「(引用者注:最後に絞られた「妊娠カレンダー」「踊ろう、マヤ」「七面鳥の森」の三篇は)いずれも一長一短の感があり、どれを選ぶかに苦慮した。」「力量感のある小説だった。ただ、力のままに突走り、幼い娘の死という素材を一つの作品世界にまで昇華させることの出来なかったのが惜しまれる。」
鷺沢萠
女22歳
8 「この作者には滑らかなストーリー展開の才がある。しかし、在日韓国・朝鮮人の捉え方まで、軽やかに流されて行く点に疑問を抱いた。」「小説づくり(原文傍点)を急ぐあまり、素材への取組みが薄手である、との印象を拭い去れなかった。」
村上政彦
男32歳
0  
福元正實
男57歳
10 「(引用者注:最後に絞られた「妊娠カレンダー」「踊ろう、マヤ」「七面鳥の森」の三篇は)いずれも一長一短の感があり、どれを選ぶかに苦慮した。」「意図に惹かれた。短篇としては比較的よく仕上っているが、現実と寓意との計算がまだ弱いように感じられる。」
稲葉真弓
女40歳
0  
崎山多美
女36歳
0  
          - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
他の選考委員
河野多恵子
田久保英夫
大江健三郎
日野啓三
大庭みな子
丸谷才一
吉行淳之介
古井由吉
三浦哲郎
  ページの先頭へ

選考委員
田久保英夫男62歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
女の身体感覚 総行数35 (1行=24字)
候補 評価 行数 評言
小川洋子
女28歳
16 「ほぼ予期通り、(引用者中略)受賞した。これまでの作にも、女性の身体や食べることへの鋭敏な感覚が目立ったが、今度の作品では殊にそれがよく機能している。」「何より出産する姉と、まだ未経験の妹との女だけの感じ合う世界が、色濃い相互性で描かれ、ひきこむ力がある。」
有爲エンジェル
女42歳
6 「素材のつよさがよく出た作品だ、と思った。」「この衝迫はどこか事実性のつよい手記を読んだ時と似ている。あるいは切り口や身振りの大きい文章の性質のせいかも知れない。」
鷺沢萠
女22歳
6 「ごく若い年齢のわりに、「物語」をうまく仕立てる力があるのに驚いた。しかしその反面、これを描こうとする作者と人物の心に、隙間を感じてしまうのは、おそらく手紙の扱いなどに、ストーリィの展開に追われる難が出たせいであろう。」
村上政彦
男32歳
0  
福元正實
男57歳
7 「私はややとぼけた超現実的な雰囲気と、七面鳥の描写が面白かった。けれども、森で七面鳥を飼う男の「怨念」の説明や、それをうけとめる「ぼく」の反応に、かなりの無理を感じた。」
稲葉真弓
女40歳
0  
崎山多美
女36歳
0  
          - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
他の選考委員
河野多恵子
黒井千次
大江健三郎
日野啓三
大庭みな子
丸谷才一
吉行淳之介
古井由吉
三浦哲郎
  ページの先頭へ

選考委員
大江健三郎男55歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
三人の女流たち 総行数31 (1行=24字)
候補 評価 行数 評言
小川洋子
女28歳
13 「心理のこまやかな移りゆきを鋭くかつ柔らかに具象化できる人だ。」「妹は姉の陣痛への恐怖にうちのめされて、幼児期への退行にかさなる幻想世界にはいりこむ……そこを微妙な陰翳の濃淡で表現しえたのが、小川氏の作風の手柄。しかし骨格をなすプロットを揺らぎなく作って、現実的な手ごたえをしのばせる工夫が、今後の展開には必要だと思う。」
有爲エンジェル
女42歳
11 「知的な力ということでは(引用者中略)突出している。」「荒っぽくガサガサしているようでも説明的であるようでも、こうした表現しかないところにつきつめた上での文体なのだ。これだけ独特なタイプに自己をきたえた人が、なんであれその結実を見せないはずはない。」
鷺沢萠
女22歳
6 「若いありふれた人物を選んで(深沢七郎なら庶民だナー、といったはず)、その背丈にそくした観察を働かせる力がある。通俗的な物語を作る傾向も、出発時の小説家にはひとつの才能なのだ。」
村上政彦
男32歳
0  
福元正實
男57歳
0  
稲葉真弓
女40歳
0  
崎山多美
女36歳
0  
          - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
他の選考委員
河野多恵子
黒井千次
田久保英夫
日野啓三
大庭みな子
丸谷才一
吉行淳之介
古井由吉
三浦哲郎
  ページの先頭へ

選考委員
日野啓三男61歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
静かな物憂い恐怖 総行数34 (1行=24字)
候補 評価 行数 評言
小川洋子
女28歳
21 「今回の候補作は、作品全体の密度が均質化して気持ちよく読めた。」「ごく普通のことの奥に、ぞっとする不安ないし恐怖を透視すること。それが作品の中だけの恐怖であっても、文学という営みの貴重な意味と考える。出産を含めてこれまで自然だったはずのことが自然ではなくなってきた時代の感触が、声高にではなく書かれていることに感心した。」
有爲エンジェル
女42歳
0  
鷺沢萠
女22歳
0  
村上政彦
男32歳
0  
福元正實
男57歳
0  
稲葉真弓
女40歳
0  
崎山多美
女36歳
0  
  「村田喜代子とともに小川洋子も地方都市在住であることがおもしろいと思った。東京は急速にダメになっているのかもしれない。」
          - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
他の選考委員
河野多恵子
黒井千次
田久保英夫
大江健三郎
大庭みな子
丸谷才一
吉行淳之介
古井由吉
三浦哲郎
  ページの先頭へ

選考委員
大庭みな子女60歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
夢 総行数25 (1行=24字)
候補 評価 行数 評言
小川洋子
女28歳
5 「今度の作品では夢魔の影が固まりつつある気配が強い。今後の作品世界の大胆な跳梁を夢みている。」
有爲エンジェル
女42歳
0  
鷺沢萠
女22歳
2 「つかみどころのないエネルギーが綾になっていて、育つ音が聞こえる。」
村上政彦
男32歳
0  
福元正實
男57歳
5 「へんな気味悪さとおかしさのある作品で、それが企まれたものか、実際の経験に近いものから素朴に流れ出たものかよくわからない。それにしても魅力のある作品だと思ったが、受賞には及ばなかった。」
稲葉真弓
女40歳
8 「古風なようで、妙に視覚的な戦列さがある。わたしがぼんやり見過したものを、この人は目を据えてしっかりと見たのだと感心した。話の筋立てが思いつきめいてあまり説得性がないような気がする。」
崎山多美
女36歳
0  
  「いつの間にか女性の自己主張は当然のものとなって久しいが、今はその美意識が気になる。女性の自己主張を頷かせる新しい美的世界を築く同性作家の出現を夢みている。」
          - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
他の選考委員
河野多恵子
黒井千次
田久保英夫
大江健三郎
日野啓三
丸谷才一
吉行淳之介
古井由吉
三浦哲郎
  ページの先頭へ

選考委員
丸谷才一男65歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
三作について 総行数37 (1行=24字)
候補 評価 行数 評言
小川洋子
女28歳
18 「人生といふ厄介な代物を妙な角度から見ようとする趣向がすばらしい。この着想は大いに賞揚されて然るべきものだ。」「しかし末尾の数枚には落胆した。グレープフルーツのジャムは妹の悪意の、むづかしく言へばオブジェクティヴ・コレラティヴ(客観的相関物)、うんと砕いて言へば小道具に、なつてゐるかしら。ずいぶん疑はしい。」
有爲エンジェル
女42歳
7 「わたしが苦手とする型の小説だ。そしてあれこれ困りながらも何となく感銘を受けるのは、やはり素材の力か。筆力のゆゑか。」「だが、子供の件と亭主の件と、話が二つに割れてゐる。」
鷺沢萠
女22歳
12 「巧妙な話術によつてわたしを驚かせた。こみいつた人間関係と複雑な時間の構造をすつきりと呑込ませる語り口は大したものだ。」「しかし後半になるといろいろ不満が生じるし、前半の傷も見えて来る。」「一番大事なのは、エンディングがいかにも安手なことだらう。」
村上政彦
男32歳
0  
福元正實
男57歳
0  
稲葉真弓
女40歳
0  
崎山多美
女36歳
0  
          - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
他の選考委員
河野多恵子
黒井千次
田久保英夫
大江健三郎
日野啓三
大庭みな子
吉行淳之介
古井由吉
三浦哲郎
  ページの先頭へ

選考委員
吉行淳之介男66歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
感想 総行数35 (1行=24字)
候補 評価 行数 評言
小川洋子
女28歳
22 「この作風を貫くためには、説明はいけない。いつも困らされたが、透明で鋭敏な文章は健在であり、そこを評価して○をつけた。この人は、一作書き終ると振り出しに戻り、あらためて苦しい旅をつづけるタイプのようで、そこが信用できるとおもった。」
有爲エンジェル
女42歳
6 「せっかくの材料を長い長いメモ風に書きつづったので、説明が多く、矛盾も散見され、隙間風が入る。終りのころにオカルト風の部分が出てきて、そこにはなんの説明もないが生彩がある。」
鷺沢萠
女22歳
3 「筆力旺盛で将来の活躍が予感される。しかし、この作品は小説のどのジャンルに属するものか、曖昧だ。」
村上政彦
男32歳
0  
福元正實
男57歳
4 「私は○をつけたが、意外に票が集ってびっくりした。これが短篇というもので、五十枚で書けるものが二百枚になってしまった候補作に泣かされたことは何度もある。」
稲葉真弓
女40歳
0  
崎山多美
女36歳
0  
          - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
他の選考委員
河野多恵子
黒井千次
田久保英夫
大江健三郎
日野啓三
大庭みな子
丸谷才一
古井由吉
三浦哲郎
  ページの先頭へ

選考委員
古井由吉男53歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
LOVEの小説 総行数34 (1行=24字)
候補 評価 行数 評言
小川洋子
女28歳
0  
有爲エンジェル
女42歳
30 「当選にまで至るとの確信は持ち得なかったが、とにかく予選通過作品中の筆頭に置いた。人好きのする作品ではないと思われる。」「荒けずりの形(ルビ:なり)をしている。しかし荒く立っている。」「作中、たとえば、母親と少女が朝帰りの道でかわす会話を読んでいただきたい。(引用者中略)このやや荒涼の感を帯びた緊張は貴重なものだ、と私は思う。」
鷺沢萠
女22歳
4 「達者な小説である。」「何かしらの気韻も伝わった。そのうちにもっと、断念の「節くれ」もできてくることだろう。」
村上政彦
男32歳
0  
福元正實
男57歳
0  
稲葉真弓
女40歳
0  
崎山多美
女36歳
0  
          - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
他の選考委員
河野多恵子
黒井千次
田久保英夫
大江健三郎
日野啓三
大庭みな子
丸谷才一
吉行淳之介
三浦哲郎
  ページの先頭へ

選考委員
三浦哲郎男59歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
感想 総行数35 (1行=24字)
候補 評価 行数 評言
小川洋子
女28歳
14 「小川氏の文体は、簡潔で正確な上に、乾いているというほどではないが至って湿り気のすくない、ひんやりとした感触が快い。」「ただ、このような選考には私情が無縁のものと知りつつも、現実に染色体が欠損したまま生まれた肉親を持つ身にとっては、どうしても結末の部分を平静に受け入れられなかったことを恥と共に告白しておかねばならない。」
有爲エンジェル
女42歳
3 「次作を期待したい。」「これをたとえば火山の鳴動だと思いたい。」
鷺沢萠
女22歳
7 「驚くほどなめらかな叙述で、一気に読めた。」「この作品ではあまりにも手際がよすぎて、読後になにかしら物足らなさを感じた。」
村上政彦
男32歳
0  
福元正實
男57歳
11 「異色作で、私には面白かった。無愛想といってもいいほどの地味な文章が、不如意な世の中を象徴しているようで、行間に作者の苦笑がにじんでいる。」
稲葉真弓
女40歳
0  
崎山多美
女36歳
0  
          - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
他の選考委員
河野多恵子
黒井千次
田久保英夫
大江健三郎
日野啓三
大庭みな子
丸谷才一
吉行淳之介
古井由吉
  ページの先頭へ


受賞者・作品
小川洋子女28歳×各選考委員 
「妊娠カレンダー」
短篇 87
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
河野多恵子
女64歳
12 「今度も文章がよかった。」「作者はこれまでに妖しい世界、あるいはエキセントリックな様相を手がけながら、そのたびに説得力が足りなかった。今度の作品も同じ傾向のものではあるけれども、展がりが備わった。」「受賞に価する作品だと思われる。」
黒井千次
男58歳
16 「(引用者注:最後に絞られた「妊娠カレンダー」「踊ろう、マヤ」「七面鳥の森」の三篇は)いずれも一長一短の感があり、どれを選ぶかに苦慮した。」「妹の悪意が倫理によって裁ける性質のものではないだけに、作品はどこか透明な仄暗さを孕んでいる。そこに魅力があるのだが、同時に曖昧さの残るのも事実である。」「結局は、他の二篇に比して、「一短」を上まわる「一長」が窺えたので、授賞には素直に同意した。」
田久保英夫
男62歳
16 「ほぼ予期通り、(引用者中略)受賞した。これまでの作にも、女性の身体や食べることへの鋭敏な感覚が目立ったが、今度の作品では殊にそれがよく機能している。」「何より出産する姉と、まだ未経験の妹との女だけの感じ合う世界が、色濃い相互性で描かれ、ひきこむ力がある。」
大江健三郎
男55歳
13 「心理のこまやかな移りゆきを鋭くかつ柔らかに具象化できる人だ。」「妹は姉の陣痛への恐怖にうちのめされて、幼児期への退行にかさなる幻想世界にはいりこむ……そこを微妙な陰翳の濃淡で表現しえたのが、小川氏の作風の手柄。しかし骨格をなすプロットを揺らぎなく作って、現実的な手ごたえをしのばせる工夫が、今後の展開には必要だと思う。」
日野啓三
男61歳
21 「今回の候補作は、作品全体の密度が均質化して気持ちよく読めた。」「ごく普通のことの奥に、ぞっとする不安ないし恐怖を透視すること。それが作品の中だけの恐怖であっても、文学という営みの貴重な意味と考える。出産を含めてこれまで自然だったはずのことが自然ではなくなってきた時代の感触が、声高にではなく書かれていることに感心した。」
大庭みな子
女60歳
5 「今度の作品では夢魔の影が固まりつつある気配が強い。今後の作品世界の大胆な跳梁を夢みている。」
丸谷才一
男65歳
18 「人生といふ厄介な代物を妙な角度から見ようとする趣向がすばらしい。この着想は大いに賞揚されて然るべきものだ。」「しかし末尾の数枚には落胆した。グレープフルーツのジャムは妹の悪意の、むづかしく言へばオブジェクティヴ・コレラティヴ(客観的相関物)、うんと砕いて言へば小道具に、なつてゐるかしら。ずいぶん疑はしい。」
吉行淳之介
男66歳
22 「この作風を貫くためには、説明はいけない。いつも困らされたが、透明で鋭敏な文章は健在であり、そこを評価して○をつけた。この人は、一作書き終ると振り出しに戻り、あらためて苦しい旅をつづけるタイプのようで、そこが信用できるとおもった。」
古井由吉
男53歳
0  
三浦哲郎
男59歳
14 「小川氏の文体は、簡潔で正確な上に、乾いているというほどではないが至って湿り気のすくない、ひんやりとした感触が快い。」「ただ、このような選考には私情が無縁のものと知りつつも、現実に染色体が欠損したまま生まれた肉親を持つ身にとっては、どうしても結末の部分を平静に受け入れられなかったことを恥と共に告白しておかねばならない。」
          - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
他の候補作
有爲エンジェル
「踊ろう、マヤ」
鷺沢萠
「葉桜の日」
村上政彦
「ドライヴしない?」
福元正實
「七面鳥の森」
稲葉真弓
「琥珀の町」
崎山多美
「シマ籠る」
  ページの先頭へ

候補者・作品
有爲エンジェル女42歳×各選考委員 
「踊ろう、マヤ」
中篇 191
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
河野多恵子
女64歳
7 「事故死した幼い娘と自分に対する主人公の独善的な見方がそのまま作者の見方を感じさせる。」
黒井千次
男58歳
13 「(引用者注:最後に絞られた「妊娠カレンダー」「踊ろう、マヤ」「七面鳥の森」の三篇は)いずれも一長一短の感があり、どれを選ぶかに苦慮した。」「力量感のある小説だった。ただ、力のままに突走り、幼い娘の死という素材を一つの作品世界にまで昇華させることの出来なかったのが惜しまれる。」
田久保英夫
男62歳
6 「素材のつよさがよく出た作品だ、と思った。」「この衝迫はどこか事実性のつよい手記を読んだ時と似ている。あるいは切り口や身振りの大きい文章の性質のせいかも知れない。」
大江健三郎
男55歳
11 「知的な力ということでは(引用者中略)突出している。」「荒っぽくガサガサしているようでも説明的であるようでも、こうした表現しかないところにつきつめた上での文体なのだ。これだけ独特なタイプに自己をきたえた人が、なんであれその結実を見せないはずはない。」
日野啓三
男61歳
0  
大庭みな子
女60歳
0  
丸谷才一
男65歳
7 「わたしが苦手とする型の小説だ。そしてあれこれ困りながらも何となく感銘を受けるのは、やはり素材の力か。筆力のゆゑか。」「だが、子供の件と亭主の件と、話が二つに割れてゐる。」
吉行淳之介
男66歳
6 「せっかくの材料を長い長いメモ風に書きつづったので、説明が多く、矛盾も散見され、隙間風が入る。終りのころにオカルト風の部分が出てきて、そこにはなんの説明もないが生彩がある。」
古井由吉
男53歳
30 「当選にまで至るとの確信は持ち得なかったが、とにかく予選通過作品中の筆頭に置いた。人好きのする作品ではないと思われる。」「荒けずりの形(ルビ:なり)をしている。しかし荒く立っている。」「作中、たとえば、母親と少女が朝帰りの道でかわす会話を読んでいただきたい。(引用者中略)このやや荒涼の感を帯びた緊張は貴重なものだ、と私は思う。」
三浦哲郎
男59歳
3 「次作を期待したい。」「これをたとえば火山の鳴動だと思いたい。」
          - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
他の候補作
小川洋子
「妊娠カレンダー」
鷺沢萠
「葉桜の日」
村上政彦
「ドライヴしない?」
福元正實
「七面鳥の森」
稲葉真弓
「琥珀の町」
崎山多美
「シマ籠る」
  ページの先頭へ

候補者・作品
鷺沢萠女22歳×各選考委員 
「葉桜の日」
中篇 148
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
河野多恵子
女64歳
10 「着眼はわるくはなく、登場人物も割り合いに描けているのだが、後半の運びが通俗的になる。そこに作者の弱点を見てしまうのは、早計かもしれない。」
黒井千次
男58歳
8 「この作者には滑らかなストーリー展開の才がある。しかし、在日韓国・朝鮮人の捉え方まで、軽やかに流されて行く点に疑問を抱いた。」「小説づくり(原文傍点)を急ぐあまり、素材への取組みが薄手である、との印象を拭い去れなかった。」
田久保英夫
男62歳
6 「ごく若い年齢のわりに、「物語」をうまく仕立てる力があるのに驚いた。しかしその反面、これを描こうとする作者と人物の心に、隙間を感じてしまうのは、おそらく手紙の扱いなどに、ストーリィの展開に追われる難が出たせいであろう。」
大江健三郎
男55歳
6 「若いありふれた人物を選んで(深沢七郎なら庶民だナー、といったはず)、その背丈にそくした観察を働かせる力がある。通俗的な物語を作る傾向も、出発時の小説家にはひとつの才能なのだ。」
日野啓三
男61歳
0  
大庭みな子
女60歳
2 「つかみどころのないエネルギーが綾になっていて、育つ音が聞こえる。」
丸谷才一
男65歳
12 「巧妙な話術によつてわたしを驚かせた。こみいつた人間関係と複雑な時間の構造をすつきりと呑込ませる語り口は大したものだ。」「しかし後半になるといろいろ不満が生じるし、前半の傷も見えて来る。」「一番大事なのは、エンディングがいかにも安手なことだらう。」
吉行淳之介
男66歳
3 「筆力旺盛で将来の活躍が予感される。しかし、この作品は小説のどのジャンルに属するものか、曖昧だ。」
古井由吉
男53歳
4 「達者な小説である。」「何かしらの気韻も伝わった。そのうちにもっと、断念の「節くれ」もできてくることだろう。」
三浦哲郎
男59歳
7 「驚くほどなめらかな叙述で、一気に読めた。」「この作品ではあまりにも手際がよすぎて、読後になにかしら物足らなさを感じた。」
          - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
他の候補作
小川洋子
「妊娠カレンダー」
有爲エンジェル
「踊ろう、マヤ」
村上政彦
「ドライヴしない?」
福元正實
「七面鳥の森」
稲葉真弓
「琥珀の町」
崎山多美
「シマ籠る」
  ページの先頭へ

候補者・作品
村上政彦男32歳×各選考委員 
「ドライヴしない?」
中篇 163
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
河野多恵子
女64歳
2 「小説を作る(原文傍点)ことに心を向けすぎ、生きた創造性が封じられている。」
黒井千次
男58歳
0  
田久保英夫
男62歳
0  
大江健三郎
男55歳
0  
日野啓三
男61歳
0  
大庭みな子
女60歳
0  
丸谷才一
男65歳
0  
吉行淳之介
男66歳
0  
古井由吉
男53歳
0  
三浦哲郎
男59歳
0  
          - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
他の候補作
小川洋子
「妊娠カレンダー」
有爲エンジェル
「踊ろう、マヤ」
鷺沢萠
「葉桜の日」
福元正實
「七面鳥の森」
稲葉真弓
「琥珀の町」
崎山多美
「シマ籠る」
  ページの先頭へ

候補者・作品
福元正實男57歳×各選考委員 
「七面鳥の森」
短篇 75
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
河野多恵子
女64歳
3 「リアリズムから少しだけキッカリ離陸させることを意識して書かれておれば、もっと成功していただろう。」
黒井千次
男58歳
10 「(引用者注:最後に絞られた「妊娠カレンダー」「踊ろう、マヤ」「七面鳥の森」の三篇は)いずれも一長一短の感があり、どれを選ぶかに苦慮した。」「意図に惹かれた。短篇としては比較的よく仕上っているが、現実と寓意との計算がまだ弱いように感じられる。」
田久保英夫
男62歳
7 「私はややとぼけた超現実的な雰囲気と、七面鳥の描写が面白かった。けれども、森で七面鳥を飼う男の「怨念」の説明や、それをうけとめる「ぼく」の反応に、かなりの無理を感じた。」
大江健三郎
男55歳
0  
日野啓三
男61歳
0  
大庭みな子
女60歳
5 「へんな気味悪さとおかしさのある作品で、それが企まれたものか、実際の経験に近いものから素朴に流れ出たものかよくわからない。それにしても魅力のある作品だと思ったが、受賞には及ばなかった。」
丸谷才一
男65歳
0  
吉行淳之介
男66歳
4 「私は○をつけたが、意外に票が集ってびっくりした。これが短篇というもので、五十枚で書けるものが二百枚になってしまった候補作に泣かされたことは何度もある。」
古井由吉
男53歳
0  
三浦哲郎
男59歳
11 「異色作で、私には面白かった。無愛想といってもいいほどの地味な文章が、不如意な世の中を象徴しているようで、行間に作者の苦笑がにじんでいる。」
          - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
他の候補作
小川洋子
「妊娠カレンダー」
有爲エンジェル
「踊ろう、マヤ」
鷺沢萠
「葉桜の日」
村上政彦
「ドライヴしない?」
稲葉真弓
「琥珀の町」
崎山多美
「シマ籠る」
  ページの先頭へ

候補者・作品
稲葉真弓女40歳×各選考委員 
「琥珀の町」
短篇 71
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
河野多恵子
女64歳
7 「整いすぎていた。もっと鋭いモチーフで、もっと自由に書ける作者ではないのだろうか。」
黒井千次
男58歳
0  
田久保英夫
男62歳
0  
大江健三郎
男55歳
0  
日野啓三
男61歳
0  
大庭みな子
女60歳
8 「古風なようで、妙に視覚的な戦列さがある。わたしがぼんやり見過したものを、この人は目を据えてしっかりと見たのだと感心した。話の筋立てが思いつきめいてあまり説得性がないような気がする。」
丸谷才一
男65歳
0  
吉行淳之介
男66歳
0  
古井由吉
男53歳
0  
三浦哲郎
男59歳
0  
          - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
他の候補作
小川洋子
「妊娠カレンダー」
有爲エンジェル
「踊ろう、マヤ」
鷺沢萠
「葉桜の日」
村上政彦
「ドライヴしない?」
福元正實
「七面鳥の森」
崎山多美
「シマ籠る」
  ページの先頭へ

候補者・作品
崎山多美女36歳×各選考委員 
「シマ籠る」
短篇 117
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
河野多恵子
女64歳
3 「前作より進歩している。沖縄の人たちと踊りとの実に深い繋がりが実感される。」
黒井千次
男58歳
0  
田久保英夫
男62歳
0  
大江健三郎
男55歳
0  
日野啓三
男61歳
0  
大庭みな子
女60歳
0  
丸谷才一
男65歳
0  
吉行淳之介
男66歳
0  
古井由吉
男53歳
0  
三浦哲郎
男59歳
0  
          - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
他の候補作
小川洋子
「妊娠カレンダー」
有爲エンジェル
「踊ろう、マヤ」
鷺沢萠
「葉桜の日」
村上政彦
「ドライヴしない?」
福元正實
「七面鳥の森」
稲葉真弓
「琥珀の町」
  ページの先頭へ



ページの先頭へ

トップページ直木賞・芥川賞受賞作一覧受賞作・候補作一覧受賞作家の群像候補作家の群像
選考委員の群像マップ