芥川賞のすべて・のようなもの
選評の概要
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111.
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Last Update[H28]2016/7/29

吉行淳之介
Yoshiyuki Jun'nosuke
生没年月日【注】 大正13年/1924年4月13日(戸籍上は4月1日)~平成6年/1994年7月26日
在任期間 第66回~第111回(通算23年・46回)
在任年齢 47歳8ヶ月~70歳2ヶ月
経歴 岡山県岡山市生まれ、東京育ち。東京大学除籍。大学生時代より同人誌『葦』『世代』『新思潮(第十四次)』に参加。出版社の新太陽社で働く。昭和27年/1952年に休職、病気療養生活を送りながら、大阪朝日放送の放送原稿を書く。父親は作家・詩人の吉行エイスケ、妹に女優の吉行和子、芥川賞受賞作家の吉行理恵がいる。
受賞歴・候補歴
個人全集 『吉行淳之介全集』全8巻(昭和46年/1971年7月~昭和47年/1972年2月・講談社刊)
『吉行淳之介全集』全17巻・別巻3(昭和58年/1983年4月~昭和60年/1985年1月・講談社刊)
『吉行淳之介全集』全15巻(平成9年/1997年7月~平成10年/1998年12月・新潮社刊)
芥川賞候補歴 第26回候補 「原色の街」(『世代』14号[昭和26年/1951年12月])
第27回候補 「谷間」(『三田文學』昭和27年/1952年6月号)
第28回候補 「ある脱出」(『群像』昭和27年/1952年12月号)
第31回受賞 「驟雨」(『文學界』昭和29年/1954年2月号)その他
第31回候補 「薔薇」(『新潮』昭和29年/1954年6月号)
備考
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下記の選評の概要には、評価として◎か○をつけたもの(見方・注意点を参照)、または受賞作に対するもののみ抜粋しました。さらにくわしい情報は、各回の「この回の全概要」をクリックしてご覧ください。

芥川賞 66 昭和46年/1971年下半期   一覧へ
選評の概要 「少年」がポイント 総行数32 (1行=26字)
選考委員 吉行淳之介 男47歳
候補 評価 行数 評言
男33歳
7 「私の推したのは、「オキナワの少年」と「玩具の兵隊」であった。」「おそらくずいぶんの努力の末にノンシャラン風の文体をつくり出したのは、手柄である。ただ、終りのところ、少年が家出先を無人島ときめたのは、あまりおもしろくない。この作品の成功は、主人公が少年であることが大きなポイントで、これからの作者は苦しむだろう。」
加藤富夫
男43歳
6 「私の推したのは、「オキナワの少年」と「玩具の兵隊」であった。」「地味な才能の作者だが、ここにある一種苦いユーモアを評価した。」
男36歳
8 「授賞には、私は反対であったが、悪い作品というのではない。」「新しい文学の担い手の一人である筈の氏が、こういう傾向の作品で受賞しては、困るとおもったわけだ。李氏といえば新進作家の感じがあるので、おのずから要求がきびしくなってしまう。」
  「この一作という作品はなく、二作合わせて当選作が出るだろうとおもっていた。」
選評出典:『芥川賞全集 第九巻』昭和57年/1982年10月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和47年/1972年3月号)
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芥川賞 67 昭和47年/1972年上半期   一覧へ
選評の概要 総行数27 (1行=26字)
選考委員 吉行淳之介 男48歳
候補 評価 行数 評言
男39歳
16 「巧みさの点では抜群だが、モチーフが弱いために、その巧みさが浮いた感じになるのが難とおもった。」「私はこの二作(引用者注:「誰かが触った」と「いつか汽笛を鳴らして」)に、一番良い点を入れておいた。」「宮原氏が、「文學界」新人賞を「石のニンフ達」で受賞したとき、私はたまたま委員をしていて一票を積極的投じた。」「以来、この賞の候補になるのが(引用者中略)四回目だそうで、力量のある作家に間違いない。」
男37歳
17 「主人公のマイナスの要素に焦点を当て(もちろん、そこにこの作品の眼目がある)、それがつぎつぎと現れてくるので、いささか食傷の気分になったが、これは力作のあまりのことであろう。」「私はこの二作(引用者注:「誰かが触った」と「いつか汽笛を鳴らして」)に、一番良い点を入れておいた。」「畑山氏の「一坪の大陸」が「群像新人賞」の佳作第一席になったとき、世評はあまりよくなかったが、私は感心した。」「以来、この賞の候補になるのが(引用者中略)四回目だそうで、力量のある作家に間違いない。」
  「いきなり落すには惜しい作品が揃っていたが、圧倒的な作品がなく、授賞作がきまるまで時間がかかった。」
選評出典:『芥川賞全集 第九巻』昭和57年/1982年10月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和47年/1972年9月号)
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芥川賞 68 昭和47年/1972年下半期   一覧へ
選評の概要 三人の詩人 総行数28 (1行=26字)
選考委員 吉行淳之介 男48歳
候補 評価 行数 評言
三木卓
男37歳
6 「詩人としての感受性を開き過ぎて、かえって目ざわりの箇所もあったが、私はこの作品に一番高い点をつける。」
女36歳
8 「詩人だが、小説家としての、それもストーリー・テラーの才能があるとみえる。上手な作品で、枠の中で物語は見ごとに進行して終るが、欲張ったことをいえばその枠をはじき飛ばす力がない。」
女43歳
9 「戦争にたいする見方も納得できて、親愛感をもったが、私自身の体験や想像を上まわる部分がなく、ギョッとさせられるところがないのが物足らなかった。」「結局ういういしいところが好感をもたれ、さんざん銓衡会が揉めているうちに、すうっと二作授賞にきまってしまった。」
  「今回は読みごたえのある作品が多かった」
選評出典:『芥川賞全集 第九巻』昭和57年/1982年10月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和48年/1973年3月号)
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芥川賞 69 昭和48年/1973年上半期   一覧へ
選評の概要 汽車はすでに発車 総行数39 (1行=26字)
選考委員 吉行淳之介 男49歳
候補 評価 行数 評言
森内俊雄
男36歳
7 「私は(引用者中略)推した。この作品は無理にツジツマを合わせようとしたり、不出来なところが多いが、作者の書きたいところに共感した。新人賞には、こういう欠点は許されるだろうと、おもった。」「なにしろ一票半しか入らなかったので引下るほかなかった。」
男38歳
5 「前回私は最も高く評価したのだが、今度の作品はけっして悪くはないが、不満である。」
  「今回の候補作は、すべて一応の水準に達していた。みんな小説がうまくなった。しかし、ここのところに問題がある。」
選評出典:『芥川賞全集 第十巻』昭和57年/1982年11月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和48年/1973年9月号)
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芥川賞 70 昭和48年/1973年下半期   一覧へ
選評の概要 運不運 総行数25 (1行=26字)
選考委員 吉行淳之介 男49歳
候補 評価 行数 評言
男61歳
10 「叩けばホコリも出るが、その文章の力は近来あまり見ないものである。勁いばかりでなく、柔軟であり、陰にこもった色気もあり、大した文章である。芥川賞は新人に与えられるというタテマエなので、この作者の年齢についてはともかく、過去に文壇歴があるという点が私も気にかかった。」「これ一作ではほかの候補者が気の毒で、二作授賞が妥当だとおもった。」
日野啓三
男44歳
4 「(引用者注:「月山」の他に)もう一作となると、私は「此岸の家」を推した。この作品にははじめは「草のつるぎ」を上まわる票が集まった。だが、異例の投票がおこなわれた結果、「草のつるぎ」のほうが当選作となった。」
男36歳
8 「悪い作品ではないが、私には思わせぶりにおもえるところと平板なところが目立ち、不満であった。しかし、(引用者中略)その授賞には反対ではなく、慶賀したい。」
選評出典:『芥川賞全集 第十巻』昭和57年/1982年11月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和49年/1974年3月号)
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芥川賞 71 昭和49年/1974年上半期   一覧へ
選評の概要 長時間の選考 総行数29 (1行=26字)
選考委員 吉行淳之介 男50歳
候補 評価 行数 評言
日野啓三
男45歳
9 「私は(引用者中略)推し、一時は当選かと思われたが、長時間の議論の末ナシときまった。この作品についての否定的意見はいちいちもっともだが、それでも他の作品に比べて差があると考えていた。」「最終的には(引用者注:「浮ぶ部屋」と「小蟹のいる村」の)二作授賞に賛成したが、ダメだった。」
選評出典:『芥川賞全集 第十巻』昭和57年/1982年11月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和49年/1974年9月号)
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芥川賞 72 昭和49年/1974年下半期   一覧へ
選評の概要 妥当な受賞 総行数28 (1行=26字)
選考委員 吉行淳之介 男50歳
候補 評価 行数 評言
男45歳
7 「私は阪田・日野両氏の作品が他作品を数歩離しているとみていた」「連作の一つともいえるわけで、(引用者中略)独立した短篇として鑑賞できにくい点があった。前作よりも良い、あるいは悪い、と意見が分れたが、当然の授賞とおもう。」
男49歳
13 「私は阪田・日野両氏の作品が他作品を数歩離しているとみていた」「瀧井さんが「ぬるい」とおっしゃったが、これはおもしろい表現の鋭い批評である。」「今度のものは、その「ぬるさ」がふんわりした品格のある良さになってきた、とおもった。芥川賞と直木賞の候補にときどきなって、最後に芥川賞を受賞した例は珍しいのではなかろうか。」
  「芥川賞の予想ほどアテにならないものはない。私自身についていえば、二十数年前、三回目の候補になったとき、「今回は安岡・吉行の二作授賞間違いなし」という予想がつたわってきた。私もその気になって、「間もなく賞金が入るから」と友人と飲み歩いたら、落選して借金に苦しんだ。」
選評出典:『芥川賞全集 第十巻』昭和57年/1982年11月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和50年/1975年3月号)
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芥川賞 73 昭和50年/1975年上半期   一覧へ
選評の概要 感想いろいろ 総行数39 (1行=26字)
選考委員 吉行淳之介 男51歳
候補 評価 行数 評言
女44歳
5 「しっかりした文章で感心したが、各節のおわりに必ず捨てゼリフのような数行があり、(引用者中略)その部分の発想が不統一で、戦争体験に十分モトデをかけたかどうか疑わしくなるところがある。」
  「このごろの候補作を読んでいると、文学についてなにか勘違いがあるようにおもえて仕方がない。」「もっとも、文学についての考え方はいろいろで、私は自分の考えを押しつけようとはおもわないが、今回の候補作はそれぞれ感心する点もあったが、結局受け容れられなかった。」「今回の私の意見は、「授賞作ナシ」である。」
選評出典:『芥川賞全集 第十巻』昭和57年/1982年11月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和50年/1975年9月号)
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芥川賞 74 昭和50年/1975年下半期   一覧へ
選評の概要 「岬」について 総行数30 (1行=26字)
選考委員 吉行淳之介 男51歳
候補 評価 行数 評言
男29歳
22 「人間関係が複雑をきわめているので、二度読んだ。」「読者はふつう親切ではないので、途中で放棄される可能性のある書き方である。」「終りの数頁をとくに評価する。」「欠点も眼についたが、未知数の魅力とエネルギーに満ちていて、芥川賞の作品にふさわしい。」
男44歳
3 「前半がよいが、堅実な筆ですでに既成作家をおもわせる。しかし、授賞に異存はない。」
選評出典:『芥川賞全集 第十巻』昭和57年/1982年11月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和51年/1976年3月号)
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芥川賞 75 昭和51年/1976年上半期   一覧へ
選評の概要 注目に値する資質 総行数34 (1行=26字)
選考委員 吉行淳之介 男52歳
候補 評価 行数 評言
男24歳
27 「この数年のこの賞の候補作の中で、その資質は群を抜いており、一方作品が中途半端な評価しかできないので、困った。」「どこを切っても同じ味がする上にやたら長く、半ばごろの「自分の中の都市」という理窟のような部分に行き当って、一たん読むのをやめた。」「作品の退屈さには目をつむって、抜群の資質に票を投じた。この人の今後のマスコミとのかかわり合いを考えると不安になって、「因果なことに才能がある」とおもうが、そこをなんとか切り抜けてもらいたい。」
  「今回は時間がかかった。それも、ほかの作品については結論が出ているのに、村上龍氏の作品で長引いた。」
選評出典:『芥川賞全集 第十一巻』昭和57年/1982年12月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和51年/1976年9月号)
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芥川賞 76 昭和51年/1976年下半期   一覧へ
選評の概要 不作でもない 総行数25 (1行=26字)
選考委員 吉行淳之介 男52歳
候補 評価 行数 評言
  「全部の作品に、私は票を半分ずつ入れた。こういうことは私としては初めてで、自分の気持としては「授賞作なし」なのだが、どの作品にもそれぞれ面白いところがあるので、あとは大勢にしたがうつもりだった。」
選評出典:『芥川賞全集 第十一巻』昭和57年/1982年12月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和52年/1977年3月号)
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芥川賞 77 昭和52年/1977年上半期   一覧へ
選評の概要 難航また難航 総行数32 (1行=26字)
選考委員 吉行淳之介 男53歳
候補 評価 行数 評言
男43歳
6 「池田満寿夫、高橋揆一郎、三田誠広の順に内心支持して会に出た。」「池田氏の作品についての評価は予想どおりだったが、その反対意見は二作授賞を許さない、という強烈さだった。」「道具立てが華やかで、作者の感性がきらめくのだが(その点も、私は好きだ)、むしろオーソドックスな小説といえる。」「また、池田氏はしたたかな技巧家であるが、あるいは本人自身気付いていないかもしれない素朴な心が、その裏側にある。」
高橋揆一郎
男49歳
7 「池田満寿夫、高橋揆一郎、三田誠広の順に内心支持して会に出た。」「語り手の女主人公も、その亭主になった炭坑夫も、魅力的に描けている。パターンになりかかる話の筋を、ふっくらとして同時に勁いところのある文章で救っている。」
男29歳
11 「池田満寿夫、高橋揆一郎、三田誠広の順に内心支持して会に出た。」「「僕って何」とは同年代に向って「君って何」という問いかけの批評を含んでいて、このあたりの年齢の周辺を私小説風に描いて過大に評価されてきたこれまでのいろいろの作品より、ずっと良かった。ユーモアにもとぼけているようで、批評がある。」
選評出典:『芥川賞全集 第十一巻』昭和57年/1982年12月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和52年/1977年9月号)
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芥川賞 78 昭和52年/1977年下半期   一覧へ
選評の概要 感想 総行数23 (1行=26字)
選考委員 吉行淳之介 男53歳
候補 評価 行数 評言
男30歳
8 「私としては、宮本輝、光岡明、中村昌義、三氏の作品が頭にあった。」「前作「泥の河」の後半が良い意味での抽象的なものに達していた趣は、この作品にはなかった。しかし、全体としての完成度は、前作よりも高い。抒情が浮き上らずに、物自体に沁みこんでいるところが良い。」
男30歳
10 「筆力抜群だが、映像世代の青年が活字で現わした土俗風ミステリーという感じである。」「ストーリーのツジツマの合わないところが気になる。」
  「今回の八篇は、抜群のものはないにしても、それぞれ水準に達している作品で、それが授賞作になってもそれほど不思議ではないとおもっていた。」
選評出典:『芥川賞全集 第十一巻』昭和57年/1982年12月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和53年/1978年3月号)
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芥川賞 79 昭和53年/1978年上半期   一覧へ
選評の概要 感想 総行数24 (1行=26字)
選考委員 吉行淳之介 男54歳
候補 評価 行数 評言
男30歳
6 「以前に候補になった「五月の傾斜」の続篇といえるものだが、作家としての力が増し、彫りの深い作品になった。」「さまざまなタイプの少年を描くことによって、男性の思春期というものを追究し、その本質がいつの時代にも変らないことを示したのは、手柄である。」
男50歳
11 「初老の女をあえて主人公にしたその力業が、うまく進んでいっているが、大江氏が指摘したように、作品世界と作者のつながりについてやはり曖昧なところができている。しかし、その力量はあきらかなので、作者のために弁じる用意が多少あった。しかし、予想外に票が集まった。」
選評出典:『芥川賞全集 第十二巻』昭和58年/1983年1月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和53年/1978年9月号)
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芥川賞 80 昭和53年/1978年下半期   一覧へ
選評の概要 次作に期待する 総行数24 (1行=26字)
選考委員 吉行淳之介 男54歳
候補 評価 行数 評言
重兼芳子
女51歳
16 「感覚・感性については抜群で、そういう資質がつくり出すディテールが魅力的であった。」「私はこの作品を推したが、票が割れてしまったこともあって、最後には「授賞作ナシ」にくみした。」「せっかくのディテールの下の配線が行きとどいていなくて、ランプが点燈しなかったり、光りすぎたりする。」「もっと、自分の十分に掴んでいることだけを、むしろ作文風に書いてみたらよいのではあるまいか。」
選評出典:『芥川賞全集 第十二巻』昭和58年/1983年1月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和54年/1979年3月号)
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芥川賞 81 昭和54年/1979年上半期   一覧へ
選評の概要 しぶしぶ 総行数30 (1行=26字)
選考委員 吉行淳之介 男55歳
候補 評価 行数 評言
女52歳
12 「前二回の作品を私は推したが、今回はどうも不満である。火葬場の作業員という仕事にたいして、まったく別の関係から光を当てようという試みは、これでは浅い。」「親子相姦も一つの趣向のようにみえてくる。」「この作品は気のはやりで、また以前のペースに戻ると信じたい。」
男35歳
7 「作者の狙いがなにか分らないので、その厚ぼったいようなヘンな文章にも惹かれて、もう一度丁寧に読んだが、よく分らない。」「どこか未知数の魅力がないとはいえない。しかし、もう一作、読んでみたかった。」
  「今回、票を入れた作品はなかった。」「芥川賞はたかが新人賞、という言い方もあるが、現実にはこわい賞になってしまっている。」
選評出典:『芥川賞全集 第十二巻』昭和58年/1983年1月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和54年/1979年9月号)
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芥川賞 82 昭和54年/1979年下半期   一覧へ
選評の概要 感想 総行数31 (1行=26字)
選考委員 吉行淳之介 男55歳
候補 評価 行数 評言
女51歳
5 「大きな箱に入れられて終点に持ってゆかれる人生、というような息の詰まる気分をチラチラ感じさせる力がある。しかし、話に即した文章はあるが、文体がない。私は消極的賛成であった。」
選評出典:『芥川賞全集 第十二巻』昭和58年/1983年1月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和55年/1980年3月号)
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芥川賞 83 昭和55年/1980年上半期   一覧へ
選評の概要 感想 総行数23 (1行=26字)
選考委員 吉行淳之介 男56歳
候補 評価 行数 評言
尾辻克彦
男43歳
4 「おもしろかった。」「前作「肌ざわり」に劣らない出来だった。」
村上春樹
男31歳
6 「おもしろかった。」「この時代に生きる二十四歳の青年の感性と知性がよく描かれていた。」「(引用者注:同棲している)双子の存在感をわざと稀薄にして描いているところなど、長い枚数を退屈せずに読んだ。」
選評出典:『芥川賞全集 第十二巻』昭和58年/1983年1月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和55年/1980年9月号)
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芥川賞 84 昭和55年/1980年下半期   一覧へ
選評の概要 感想 総行数31 (1行=26字)
選考委員 吉行淳之介 男56歳
候補 評価 行数 評言
男43歳
19 「独特のスタイルを持っていることを認めざるを得ない作品である。軽快な筆致と、軽妙な会話によって、一行ごとにパチパチとエスプリの火花が散る。」「感性や感覚のかたまりが迫ってくるだけでなく、本人が意図していないかもしれない、あるいはそう言われるのが不本意かもしれない、「人間とはなにか」とか「人生とは」とかいう問いかけも迫ってくる。」
選評出典:『芥川賞全集 第十二巻』昭和58年/1983年1月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和56年/1981年3月号)
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芥川賞 85 昭和56年/1981年上半期   一覧へ
選評の概要 感想 総行数24 (1行=26字)
選考委員 吉行淳之介 男57歳
候補 評価 行数 評言
女42歳
24 「私の実妹なので、銓衡委員としての立居振舞に困惑した。」「今回の作品はなかなか良いとおもった。」「今度はひとつ、自分なりに客観的になって、票を入れてみようと考えた。十五歳年下の妹というのは、他人のようで他人でない厄介な存在だ。」「もはや病膏肓、猫が自分か自分が猫か、猫の人相学や手相まで出てくる始末で、ここまでくれば許せるとおもいはじめた。」「入り組んだ話なので分りにくくて閉口した。もうすこし行替えでもしてみたら、どうだろう。」
選評出典:『芥川賞全集 第十二巻』昭和58年/1983年1月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和56年/1981年9月号)
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芥川賞 86 昭和56年/1981年下半期   一覧へ
選評の概要 感想 総行数28 (1行=26字)
選考委員 吉行淳之介 男57歳
候補 評価 行数 評言
  「候補作八篇を読み終って、今回は残念だが授賞作なし、になってしまうかな、とおもった。それにしても、近年短篇はどんどん長くなり、内容に比べてあまりにも長過ぎるものが多い。」「最後に三篇残ったが、それは当選圏内にあるという残り方ではなく、あとの五篇とそんなに差のあるものではなかった。」
選評出典:『芥川賞全集 第十二巻』昭和58年/1983年1月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和57年/1982年3月号)
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芥川賞 87 昭和57年/1982年上半期   一覧へ
選評の概要 感想 総行数34 (1行=26字)
選考委員 吉行淳之介 男58歳
候補 評価 行数 評言
選評出典:『芥川賞全集 第十二巻』昭和58年/1983年1月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和57年/1982年9月号)
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芥川賞 88 昭和57年/1982年下半期   一覧へ
選評の概要 受賞の二作品 総行数30 (1行=26字)
選考委員 吉行淳之介 男58歳
候補 評価 行数 評言
男42歳
20 「「黄色い小人が白い大きな女を喰った」という事件は、唐氏にダダ(イズム)風な刺戟も与えた筈である。こういう角度には、唐氏はモトデがかかっている。」「俗な言葉でいえば、死体までの遣手(婆)をメインにして、虚と実の境目でうまく遊んだといえる作品である。」「私は、(引用者中略)弱点を美点が大きく上まわった、とおもった。」
女46歳
13 「鮮明な細部を上質の文章で生かしている部分が多い。難をいえば、多元描写でもなく視点が前後半で移動しているともいえず、赤い糸で編んでいたものが白い糸に替わり、その白い編物の中にときどき赤い糸が出てきたりする構成のために、作者の意図を掴もうとしていささか混乱した。」「私は、(引用者中略)弱点を美点が大きく上まわった、とおもった。」
選評出典:『芥川賞全集 第十三巻』平成1年/1989年2月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和58年/1983年3月号)
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芥川賞 89 昭和58年/1983年上半期   一覧へ
選評の概要 「追い風」ほか 総行数34 (1行=26字)
選考委員 吉行淳之介 男59歳
候補 評価 行数 評言
高樹のぶ子
女37歳
10 「最終的に私は推した。」「この作中に挿入された童話について、丹羽文雄氏がたいそう賞められた。」「この小人の話から、反射的にモーパッサンの「脂肪の塊」を連想した。」「しかし、この挿話が作品に立体感を与えているのは、確かなところである。」
選評出典:『芥川賞全集 第十三巻』平成1年/1989年2月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和58年/1983年9月号)
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芥川賞 90 昭和58年/1983年下半期   一覧へ
選評の概要 感想 総行数29 (1行=26字)
選考委員 吉行淳之介 男59歳
候補 評価 行数 評言
男47歳
8 「兄である語り手と杢二とが作品の中で、はっきり兄弟として存在していて、そこがよかった。因みに、杢二が同棲している女から別れを告げられ、びっくりして「さっき、一緒に飯を食ったのにな」と答えるところで、候補作を読む作業をしていて久しぶりに笑った。」
女37歳
7 「思春期の少女を描いた作品で、この時期には暴力的な光景を見ることが、無意識のうちに性感につながり、そこから嫌悪を感じ取ることがある。」「良家の子女が、その立場のためにかえって不良少女に劣等感を抱きはじめるプロセスも、悪くない。」
  「今回は、すべての作品に半票を入れた」「「芥川賞」は新人賞の親玉みたいになってしまったが、やはり「新人賞」に変りはない筈なので、この水準で当選作ナシは有りえないだろう、とおもった。」「その気持は、ほぼ委員全体にあったようで、異例の四回の投票までして、二作にきまった。」
選評出典:『芥川賞全集 第十三巻』平成1年/1989年2月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和59年/1984年3月号)
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芥川賞 91 昭和59年/1984年上半期   一覧へ
選評の概要 生煮えの作品 総行数28 (1行=26字)
選考委員 吉行淳之介 男60歳
候補 評価 行数 評言
  「新人賞の作品に完成度を求めるのはムリなのは分っているにしても、生煮えの作品が多い。それも、作者が自分の書こうとするものを把握した上での力量不足とは違うようだ。」
選評出典:『芥川賞全集 第十三巻』平成1年/1989年2月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和59年/1984年9月号)
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芥川賞 92 昭和59年/1984年下半期   一覧へ
選評の概要 「青桐」と「刻」 総行数28 (1行=26字)
選考委員 吉行淳之介 男60歳
候補 評価 行数 評言
女45歳
18 「「青桐」は充江というハイミスの片想いを中心にした心の動きに沿って読んでいくことをすすめる。そうしないといたずらに混乱を起すおそれがあるのだが、読む者の視点を移動させてしまいそうな要素がすぐに現れてくる。」「重い問題を作品の中に持ち込むには、余程の覚悟と計算が必要だが、ここでは提起された問題の内容自体がすでに曖昧である。」「私としては、(引用者注:「青桐」と「刻」の)二作受賞か、という判断があった。」
李良枝
女29歳
12 「荒けずりな部分やいまさらとおもえる実験的手法の部分もあったが、全体として新人らしい新鮮さがあった。過ぎてゆく一刻一刻の中に無理に閉じこめられる苦痛と、またべつの時には一刻を享受している感情の激変もよく書けていた。」「私としては、(引用者注:「青桐」と「刻」の)二作受賞か、という判断があった。」
選評出典:『芥川賞全集 第十三巻』平成1年/1989年2月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和60年/1985年3月号)
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芥川賞 93 昭和60年/1985年上半期   一覧へ
選評の概要 感想 総行数33 (1行=26字)
選考委員 吉行淳之介 男61歳
候補 評価 行数 評言
海辺鷹彦
男38歳
12 「注目したが、とくにいいとおもったのは終りの十頁つまり全体の四分の一くらいに当る部分である。」「この部分は、作者の言いたいことも納得でき、なによりも文章がいい。ただし、反対意見に対抗するほどの情熱は持てなかったし、この人のものを読むのは初めてということもあって、大勢に従った。」
選評出典:『芥川賞全集 第十三巻』平成1年/1989年2月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和60年/1985年9月号)
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芥川賞 94 昭和60年/1985年下半期   一覧へ
選評の概要 「過越しの祭」を推す 総行数29 (1行=26字)
選考委員 吉行淳之介 男61歳
候補 評価 行数 評言
女55歳
7 「(引用者注:すべての候補作を見ていくと)安定した筆力が、際立ってくる。いくらモトデをかけてもそれが生きない場合があるが、この作者の二十数年間の苦闘は、作品に十分生きている。」「人間が書けている。」
選評出典:『芥川賞全集 第十四巻』平成1年/1989年5月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和61年/1986年3月号)
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芥川賞 95 昭和61年/1986年上半期   一覧へ
選評の概要 感想 総行数32 (1行=26字)
選考委員 吉行淳之介 男62歳
候補 評価 行数 評言
村田喜代子
女41歳
3 「私は評価した。読んでゆくにしたがって、昂揚を覚えた。外側の世界も心象も、すべて肉体感覚で表現できたあたり、なかなかのものである。」
選評出典:『芥川賞全集 第十四巻』平成1年/1989年5月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和61年/1986年9月号)
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芥川賞 96 昭和61年/1986年下半期   一覧へ
選評の概要 感想 総行数35 (1行=26字)
選考委員 吉行淳之介 男62歳
候補 評価 行数 評言
  「前回「受賞作なし」だったので、今回はなんとかして出したい、というのが委員全部の気持だったようだ。」
選評出典:『芥川賞全集 第十四巻』平成1年/1989年5月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和62年/1987年3月号)
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芥川賞 97 昭和62年/1987年上半期   一覧へ
選評の概要 二作を推したが 総行数35 (1行=26字)
選考委員 吉行淳之介 男63歳
候補 評価 行数 評言
女42歳
19 「予想を上まわる力を見せた。十分に計算された作品世界を提出し、そこに登場してくる人物も風物も、そして細部もすべていきいきしている。」「おばあさんに悪意があるわけでなく、ぼけているといえないこともないが、むしろ八十歳をしぜんに生きているのである。ここらあたり、不思議なユーモアがある。」
新井満
男41歳
16 「みずみずしく清新な作品である。「鍋の中」に劣らぬ作品として推したが、僅かな差で受賞にならなかった。」「男と女とが結ばれてゆくための設定は、ますます難しくなってきたが、作者は斜視の男と耳のきこえない女という組合せによって、力業をおこなっている。そしてこの二つは、作品のなかでしばしば有効にはたらいており、とくに末尾の斜視はみごとに機能している。」
選評出典:『芥川賞全集 第十四巻』平成1年/1989年5月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和62年/1987年9月号)
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芥川賞 98 昭和62年/1987年下半期   一覧へ
選評の概要 高得点の二作 総行数31 (1行=26字)
選考委員 吉行淳之介 男63歳
候補 評価 行数 評言
男42歳
16 「よかった。ここに書かれてあることをそのまま読んでゆき、終りまでたどりつけば、埃っぽい気分がずいぶんとさっぱりしているのに気付く」「金の話となると生ぐさくなくては困る場合が多いが、ここでは雨崎への小旅行と同じ色調で、両方とも星の話でも聞かされているようだ。そして、この作品ではそのことが肝心なところである。」
男57歳
13 「私は最後まで票を入れなかった。読んでいると面白いのだが、どうも曖昧なところがある。」「作者がしたたかな腕力で作品世界をつくりおおせたのか(それは、成功すれば慶賀すべきことだ)、つくっているうちにところどころ破れ目ができたのか、あるいはもっと素直な作品なのか、とうとう読み切れなかった。」
選評出典:『芥川賞全集 第十四巻』平成1年/1989年5月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和63年/1988年3月号)
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芥川賞 99 昭和63年/1988年上半期   一覧へ
選評の概要 新井満と吉本ばなな 総行数30 (1行=26字)
選考委員 吉行淳之介 男64歳
候補 評価 行数 評言
男42歳
16 「過半数の票を集めたものの、辛うじて受賞になった。」「作者は主人公に「不能」を与え、その実証として圭子という女をつくり出すことに努力したが、ここは不十分だった。この作者には欲張りすぎるところがあるが、その意欲はかいたい。」「主人公の妻は新しい男のもとに走るのだが、その健康そのものの男が主人公に説教するところ、大いに笑えた。」「私としては、「ヴェクサシオン」の作者でもあるこの作家を推すことに、ためらいはなかった。」
選評出典:『芥川賞全集 第十四巻』平成1年/1989年5月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和63年/1988年9月号)
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芥川賞 100 昭和63年/1988年下半期   一覧へ
選評の概要 良い作品が受賞した 総行数32 (1行=26字)
選考委員 吉行淳之介 男64歳
候補 評価 行数 評言
男37歳
17 「私は(引用者中略)第一位(引用者中略)に置いていた」「最初から好感がもてる作風だったが、切れ味が悪かったり切りそこなったりしていた。切れ過ぎるナイフも困るが、前回の「エチオピアからの手紙」から、にわかに良くなった。」「後半、アメリカ人の宣教師が出てきて、これがとてもいい。」「地味だが文学の本筋をゆく作品」
女33歳
17 「私は(引用者中略・注:「月潟鎌を買いにいく旅」と)同じ第二位に置いていた」「この人の場合は最初から注目してきた。」「自分自身を韓国育ちの韓国人と在日同胞との二人に分けて描いたために、はっきり結論が出ているようでいて、書き手の心が揺れているのが分かる。しかし、それはそれでいい、これからもいろいろのものが出てきて、収穫となるだろう。」
清水邦夫
男52歳
4 「私は(引用者中略・注:「由煕」と)同じ第二位に置いていた」
  「最後には、三作(引用者注:「ダイヤモンドダスト」「月潟鎌を買いにいく旅」「由煕」)に投票することになった。かなり長くこの賞の委員をつとめているが、三作にたいしてははじめてのことだ。」
選評出典:『芥川賞全集 第十四巻』平成1年/1989年5月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成1年/1989年3月号)
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芥川賞 101 平成1年/1989年上半期   一覧へ
選評の概要 佳作三篇 総行数32 (1行=24字)
選考委員 吉行淳之介 男65歳
候補 評価 行数 評言
選評出典:『芥川賞全集 第十五巻』平成14年/2002年4月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成1年/1989年9月号)
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芥川賞 102 平成1年/1989年下半期   一覧へ
選評の概要 受賞の二作 総行数33 (1行=24字)
選考委員 吉行淳之介 男65歳
候補 評価 行数 評言
女50歳
10 「稀薄なかんじがつづいているうちに、頭の中に文章も中身もしだいに積みかさなって、濃くなってきた。」「劇的なはなしを無造作のように書いてあるところもあったりして、それぞれユニークに適切に処理されている。これは、半ば無意識の計算だろうとおもう。」「この作品は資質がよく生かされて、感心した。」
男31歳
19 「作者の想像力が旺盛すぎてディテールが氾濫し、単純なはずのテーマが混乱しかかる。」「(引用者注:主人公の)次のステップへの移行の具合を、文中に散見する「女性への恐怖」や「女性を支配しているつもりが支配されている」というようなことを頭に入れて見てゆくと、作品全体がほぐれてきた。」「いずれにせよ、若々しく力に溢れたこの作家の受賞を喜びたい。」
選評出典:『芥川賞全集 第十五巻』平成14年/2002年4月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成2年/1990年3月号)
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芥川賞 103 平成2年/1990年上半期   一覧へ
選評の概要 明晰と曖昧ということ 総行数35 (1行=24字)
選考委員 吉行淳之介 男66歳
候補 評価 行数 評言
男44歳
19 「私の頭に浮んでくるのは芒や葦や萱で、それが緑だったり黄色だったり白く立枯れたりして並んでいる。鄙びているという意味ではなく、なかなかスマートで、その眺めがよかった。ユーモラスな点もあちこちにあって、評価できる。」「桃源郷の底によこたわっているらしい『古層の村』というような事柄に、あまり深刻にこだわってしまうと、この作品の評価が曖昧になってきそうだ。」
  「今回の七篇にとりあえず目を通して、おもわず溜息をついた。共通した特徴として、部分的には上等なのに、全体となるとそのレベルが維持できない。なにが言いたいのか分らなくなってしまう作品もある。」
選評出典:『芥川賞全集 第十五巻』平成14年/2002年4月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成2年/1990年9月号)
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芥川賞 104 平成2年/1990年下半期   一覧へ
選評の概要 感想 総行数35 (1行=24字)
選考委員 吉行淳之介 男66歳
候補 評価 行数 評言
女28歳
22 「この作風を貫くためには、説明はいけない。いつも困らされたが、透明で鋭敏な文章は健在であり、そこを評価して○をつけた。この人は、一作書き終ると振り出しに戻り、あらためて苦しい旅をつづけるタイプのようで、そこが信用できるとおもった。」
福元正實
男57歳
4 「私は○をつけたが、意外に票が集ってびっくりした。これが短篇というもので、五十枚で書けるものが二百枚になってしまった候補作に泣かされたことは何度もある。」
選評出典:『芥川賞全集 第十五巻』平成14年/2002年4月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成3年/1991年3月号)
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芥川賞 105 平成3年/1991年上半期   一覧へ
選評の概要 受賞の二作 総行数33 (1行=24字)
選考委員 吉行淳之介 男67歳
候補 評価 行数 評言
男46歳
20 「この「起こし屋」というアルバイトは、起される人たちの時間がマチマチの職場なので、今の時代に珍しく残っていたわけだ。そこのところを十分におさえて、筆をすすめて行っているかどうか。」「苦情は多いが好きな作品で、軽い昂揚とともに読み終えた。」「「眠りの世界」を覗いた手柄については、他の委員が書くだろう。」
女34歳
8 「主人公の華やかさがしだいに侘しさに移行し、この主人公への作者の投影がその侘しさを増幅させ、とくに末尾が辛い。こういう角度から読んでみると、かえって味わいが出てきた。」「この作品での才気煥発には余分なところが多く、とくに地の文でのウィットは不発で、すこし抑えたほうがいいだろう。」
選評出典:『芥川賞全集 第十五巻』平成14年/2002年4月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成3年/1991年9月号)
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芥川賞 106 平成3年/1991年下半期   一覧へ
選評の概要 感想 総行数32 (1行=24字)
選考委員 吉行淳之介 男67歳
候補 評価 行数 評言
女30歳
12 「一回目の大まかな選考で、(引用者中略)一位(引用者中略)だった。」「松村さんの能力は、文章をみてもディテールをみてもあきらかであるが、あちこちに独りよがりなところがある。とくに末尾は、強引にツジツマを合わせた。」「今回の受賞は珍しい幸運とおもえるので、その刺戟を有効に使ってほしい。」
  「何年ぶりかで、すべての候補作に△をつけた。いろいろな作風の作品が集まったが、どれも△のままで、○にならない。これを逆にいえばそれぞれかなりの器量のある作品が揃ったということにもなる。」
選評出典:『芥川賞全集 第十六巻』平成14年/2002年6月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成4年/1992年3月号)
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芥川賞 107 平成4年/1992年上半期   一覧へ
選評の概要 感想 総行数33 (1行=24字)
選考委員 吉行淳之介 男68歳
候補 評価 行数 評言
村上政彦
男33歳
10 「以前の候補作の「ナイスボール」が印象に残っていた。」「今回は、全体にわたって力が入っていたが、安定感ができたといえよう。繊細な音の採集からはじまって、複雑な話をよく調べまとめ上げていた。しかし、十分な票が集まらなかった。それにしても、「量子のベルカント」という題名と、頻出する「紗也」という人名とは、どうにかならなかったものか。」
男36歳
23 「私にとって地下の隧道全部が官能のにおいを放ち、大きな事故の予感まで官能的で、そこが面白かった。この作品には、予想以上の票が集まった。」
選評出典:『芥川賞全集 第十六巻』平成14年/2002年6月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成4年/1992年9月号)
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芥川賞 108 平成4年/1992年下半期   一覧へ
選評の概要 感想 総行数30 (1行=24字)
選考委員 吉行淳之介 男68歳
候補 評価 行数 評言
女32歳
12 「なかなか面白くて感心した。」「そのしたたかな才能に目の覚める気分だったが、だんだん「才気煥発」が目立つようになり、これはふつう誉め言葉なのだが、この場合には持時間不足を強引に押し切ろうとしているようにおもえてきた。そういう部分は、なまじ何の寓意か考え過ぎないようにして、あとは大勢に従った。」
選評出典:『芥川賞全集 第十六巻』平成14年/2002年6月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成5年/1993年3月号)
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芥川賞 109 平成5年/1993年上半期   一覧へ
選評の概要 力量抜群 総行数32 (1行=24字)
選考委員 吉行淳之介 男69歳
候補 評価 行数 評言
男36歳
24 「私はその両方(引用者注:最後に残った「寂寥郊野」と「穀雨」)にマルを付けていた。」「今回の候補作はみな長く、苦痛をあたえるものもあったが、「寂寥郊野」は無駄に長くはなかった。」「アルツハイマーの進行とともに、幸恵が日本語で喋っていたりするあたり、悲痛である。二、三の疑問点が残ったが、この作品は芥川賞受賞作として、出色のものとおもった。」
河林満
男42歳
11 「私はその両方(引用者注:最後に残った「寂寥郊野」と「穀雨」)にマルを付けていた。」「福祉事務所で働く男が主人公で、私はその内容に共感を持ったが、書き方に不満の残る部分があった。けっして悪い作品ではないが、すでに(引用者注:「寂寥郊野」との)二作の得点の差は大きく、力量の差ははっきりしていた。」
選評出典:『芥川賞全集 第十六巻』平成14年/2002年6月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成5年/1993年9月号)
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芥川賞 110 平成5年/1993年下半期   一覧へ
選評の概要 どこか光るもの 総行数26 (1行=24字)
選考委員 吉行淳之介 男69歳
候補 評価 行数 評言
男37歳
6 「(引用者注:奥泉光の作品には)いつもその腕力と言葉の氾濫に負けそうになっていたが、今回は素直に降参することにした。」
選評出典:『芥川賞全集 第十六巻』平成14年/2002年6月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成6年/1994年3月号)
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