芥川賞のすべて・のようなもの
第70回
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昭和48年/1973年下半期
(昭和49年/1974年1月16日決定発表/『文藝春秋』昭和49年/1974年3月号選評掲載)
選考委員  大岡昇平
男64歳
瀧井孝作
男79歳
井上靖
男66歳
中村光夫
男62歳
永井龍男
男69歳
丹羽文雄
男69歳
吉行淳之介
男49歳
安岡章太郎
男53歳
舟橋聖一
男69歳
選評総行数  40 34 18 30 19 27 25 33 39
候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数
森敦 「月山」
168
男61歳
14 3 6 21 6 12 10 19 5
野呂邦暢 「草のつるぎ」
154
男36歳
13 8 6 7 7 8 8 9 6
日野啓三 「此岸の家」
86
男44歳
13 4 5 4 7 6 4 3 8
岡松和夫 「墜ちる男」
79
男42歳
2 4 0 0 2 9 0 0 0
太田道子 「流蜜のとき」
127
女(30歳)
0 5 4 0 0 0 0 0 5
津島佑子 「火屋(ほや)
105
女26歳
0 4 0 0 0 3 4 0 0
吉田健至 「ネクタイの世界」
57
男42歳
0 0 0 0 0 0 0 0 0
金鶴泳 「石の道」
111
男35歳
8 5 0 0 0 0 3 3 0
高橋昌男 「白蟻」
73
男38歳
0 0 0 0 0 0 0 0 0
                 
年齢/枚数の説明   見方・注意点

このページの選評出典:『芥川賞全集 第十巻』昭和57年/1982年11月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和49年/1974年3月号)
1行当たりの文字数:26字


選考委員
大岡昇平男64歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
孤独な輝き 総行数40 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
森敦
男61歳
14 「こん回は「月山」「草のつるぎ」「此岸の家」がすぐれていて、銓衡の対象はすぐこの三作にしぼられた。」「現代のジャーナリズムの要求によって生産される作品にはない、孤独な輝きを持っている。」「何分作者は六十歳をすぎていて、昭和初年横光利一を中心とする文学グループにいた人である。」「そういう変り種に授賞することに私は賛成だが、一方二作授賞にして、若い新人に機会を与えたい気持があった。」「私は「月山」「草のつるぎ」二作授賞に投票した。」
野呂邦暢
男36歳
13 「こん回は「月山」「草のつるぎ」「此岸の家」がすぐれていて、銓衡の対象はすぐこの三作にしぼられた。」「これまで旧軍隊を書いた多くの小説よりも、現実性を持って書かれている。長篇小説の書き出しのような印象を与えるくらい、延び延びと書かれているのに感心した。」「私は「月山」「草のつるぎ」二作授賞に投票した。」
日野啓三
男44歳
13 「こん回は「月山」「草のつるぎ」「此岸の家」がすぐれていて、銓衡の対象はすぐこの三作にしぼられた。」「新聞記者らしい現代社会への洞察があり、いわゆる「小説」のじめじめした感じ、感情に溺れたところがない。しかしどことなく書き落されていることがある感じもあり、新聞記者の筆癖が出て来て、感興をさまたげるところもある。」
岡松和夫
男42歳
2 「古い地方都市の路地の土の匂いを感じさせた。」
太田道子
女(30歳)
0  
津島佑子
女26歳
0  
吉田健至
男42歳
0  
金鶴泳
男35歳
8 「感心した。」「土地が、多分故郷との対比において、重要な役割を果し、「石の道」は象徴的な重みを感じさせる。しかし女主人公の回想が少し無造作に、継続的に取り出されること、結末の幻想的な処理に、私は朝鮮文学を感じてしまう。」「この辺は何となく軽い感じになった。」
高橋昌男
男38歳
0  
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他の選考委員
瀧井孝作
井上靖
中村光夫
永井龍男
丹羽文雄
吉行淳之介
安岡章太郎
舟橋聖一
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選考委員
瀧井孝作男79歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
初心尊重 総行数34 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
森敦
男61歳
3 「歌いぶりはちょっと面白いが、足もとが弱いと思った。切実なものがないと見た。」
野呂邦暢
男36歳
8 「自衛隊の初期訓練、演習なども克明に書いて、班員の性格も描き分けて、地面に喰いついたようなひたむきな粘りがみえた。この人は、気の利いた作も書けるのに、今回は更に無器用なものを出して、私は、今回九篇の中ではこれが一番よいと思った。」
日野啓三
男44歳
4 「すらすら読ませるけれど、私は可もなし不可もなしと見た。達者に描けたが、初いういしさがすくない。」
岡松和夫
男42歳
4 「地方色もよく出て、筆にやわらかい味が出て、この人が出直したと思った。」
太田道子
女(30歳)
5 「これが現代の小説かもしれないが、せっかくの美しい風物も懶惰のマイナスに消されて、惜しかった。」
津島佑子
女26歳
4 「巧みすぎて回りくどかった。筆は初いういしいものがあるのだから、もっと素直に書いた方が伸びると思った。」
吉田健至
男42歳
0  
金鶴泳
男35歳
5 「筆の初いういしいのが佳かった。日本語に馴れずに初心に書いたものと見た。」
高橋昌男
男38歳
0  
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他の選考委員
大岡昇平
井上靖
中村光夫
永井龍男
丹羽文雄
吉行淳之介
安岡章太郎
舟橋聖一
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選考委員
井上靖男66歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
佳作「月山」 総行数18 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
森敦
男61歳
6 「目立っていた。雪深い集落の冬籠りの生活を、方言をうまく使って、現世とも幽界ともさだかならぬ土俗的な味わいで描き上げた手腕はなかなかのものである。」
野呂邦暢
男36歳
6 「(引用者注:「此岸の家」と共に)いいところもあれば、欠点もあった。」「この作品の明るさと、健康さは、やはりこれはこれで一つの資質と見るべきであろう。」
日野啓三
男44歳
5 「(引用者注:「草のつるぎ」と共に)いいところもあれば、欠点もあった。」「野心作だけに読みごたえはあったが、描き切れていないところもあった。」
岡松和夫
男42歳
0  
太田道子
女(30歳)
4 「面白かった。夫、妻、子供のひとすじ縄ではゆかぬ関係を小気味いい筆で酷薄に描いているところは、なかなかの才能だと思った。」
津島佑子
女26歳
0  
吉田健至
男42歳
0  
金鶴泳
男35歳
0  
高橋昌男
男38歳
0  
  「候補作九篇、いずれもあるレベルに達しているものばかりで、新しい作家の作品を読むたのしさを味わった。」
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他の選考委員
大岡昇平
瀧井孝作
中村光夫
永井龍男
丹羽文雄
吉行淳之介
安岡章太郎
舟橋聖一
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選考委員
中村光夫男62歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
抵抗できぬ魅力 総行数30 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
森敦
男61歳
21 「文章の気品と思想の成熟では(引用者中略)群をぬいていました。」「六十歳をこえた新人があり得るかという議論もありましたが、僕はこの点は問題はないと思います。」「ただこの作品は小説というよりむしろ散文で書かれた抒情詩の性格が強く、(引用者中略)素材に比して長すぎるし、(引用者中略)種々の欠点が指摘されます。」「これだけをとって他の八篇をすてるに忍びない気持は皆にあったので、二作当選という結果になったのも自然でした。」
野呂邦暢
男36歳
7 「前回の候補作とまったく違った筆致と作風なので、とまどいを感じました。」「この変化が、作者の内面の発展とどう結びつくのか、この作品だけでは、見当がつきません。」
日野啓三
男44歳
4 「(引用者注:「草のくるぎ」と「此岸の家」では)僕は後者(引用者注:「此岸の家」)を推しました。作品に厚味の足りない点はありますが、身近かなむずかしい題材を、これだけ鮮明に描いたのは新人として非凡の手腕です。」
岡松和夫
男42歳
0  
太田道子
女(30歳)
0  
津島佑子
女26歳
0  
吉田健至
男42歳
0  
金鶴泳
男35歳
0  
高橋昌男
男38歳
0  
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他の選考委員
大岡昇平
瀧井孝作
井上靖
永井龍男
丹羽文雄
吉行淳之介
安岡章太郎
舟橋聖一
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選考委員
永井龍男男69歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
共通の支持 総行数19 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
森敦
男61歳
6 「年期を入れた打込み方は、文句なかった。結末に近く友人が登場する展開について、数氏の批評があったが、長い一冬の自然との対比として、これもよかろうと私は判断した。」
野呂邦暢
男36歳
7 「単純な題材に、若さが充実していた。なまじいな批判や自省を捨てたところに、爽快な世界が生れた。」「これはこれで完結した一篇である。」
日野啓三
男44歳
7 「ここに描かれた夫婦生活は、解決を得ぬまま繰返し繰返し述べられなければならぬ危惧を感じさせる。」
岡松和夫
男42歳
2 「雰囲気を持った作品であった。」
太田道子
女(30歳)
0  
津島佑子
女26歳
0  
吉田健至
男42歳
0  
金鶴泳
男35歳
0  
高橋昌男
男38歳
0  
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他の選考委員
大岡昇平
瀧井孝作
井上靖
中村光夫
丹羽文雄
吉行淳之介
安岡章太郎
舟橋聖一
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選考委員
丹羽文雄男69歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
清冽な印象 総行数27 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
森敦
男61歳
12 「この人の名を私は三十年昔に知っていた。その後何も発表していなかったようである。そのなかの年月がこの作品の裏打ちとなっている。」「友人が呼びにくるところでは軽く失望したが、致命的な傷とはならない。」「読後の清冽な印象は鐘のひびきのように心に残った。」
野呂邦暢
男36歳
8 「「鳥たちの河口」の作者とは別人のようである。きらきらした才能を押えて、深刻がるふうもなく、思わせぶりなところもなく、百五十枚を一気に読ませて、さわやかな感銘をあたえた。」
日野啓三
男44歳
6 「文学賞には大へんな損な小説である。」「材料が手近かすぎるせいか。ちょっとした欠点も見のがされないのは気の毒である。しかし上手な小説であった。」
岡松和夫
男42歳
9 「よく心のくばられた作品である。」「が、この小説はいくら作者の目がはたらいても所詮は傍観者の小説で終る。」
太田道子
女(30歳)
0  
津島佑子
女26歳
3 「才能には期待をしているが、何か本道からそれていくような危険をつよく感じた。」
吉田健至
男42歳
0  
金鶴泳
男35歳
0  
高橋昌男
男38歳
0  
  「今回の九篇の候補作品の中で四篇(引用者注:「此岸の家」「堕ちる男」「月山」「草のつるぎ」)までがよい作品であった。このようなことは珍しい。」
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他の選考委員
大岡昇平
瀧井孝作
井上靖
中村光夫
永井龍男
吉行淳之介
安岡章太郎
舟橋聖一
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選考委員
吉行淳之介男49歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
運不運 総行数25 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
森敦
男61歳
10 「叩けばホコリも出るが、その文章の力は近来あまり見ないものである。勁いばかりでなく、柔軟であり、陰にこもった色気もあり、大した文章である。芥川賞は新人に与えられるというタテマエなので、この作者の年齢についてはともかく、過去に文壇歴があるという点が私も気にかかった。」「これ一作ではほかの候補者が気の毒で、二作授賞が妥当だとおもった。」
野呂邦暢
男36歳
8 「悪い作品ではないが、私には思わせぶりにおもえるところと平板なところが目立ち、不満であった。しかし、(引用者中略)その授賞には反対ではなく、慶賀したい。」
日野啓三
男44歳
4 「(引用者注:「月山」の他に)もう一作となると、私は「此岸の家」を推した。この作品にははじめは「草のつるぎ」を上まわる票が集まった。だが、異例の投票がおこなわれた結果、「草のつるぎ」のほうが当選作となった。」
岡松和夫
男42歳
0  
太田道子
女(30歳)
0  
津島佑子
女26歳
4 「才能十分で注目しているのだが、作品に出来不出来がある。」「「火屋」には票を入れることができなかった。」
吉田健至
男42歳
0  
金鶴泳
男35歳
3 「八年ほど前その長篇にたいして消極的な評をしたことがあるが、(引用者中略)おどろくほどの進歩で、欠点はあるにしても日野・野呂に劣るとはいえない。」
高橋昌男
男38歳
0  
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他の選考委員
大岡昇平
瀧井孝作
井上靖
中村光夫
永井龍男
丹羽文雄
安岡章太郎
舟橋聖一
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選考委員
安岡章太郎男53歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
科挙的芥川賞 総行数33 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
森敦
男61歳
19 「(引用者注:「此岸の家」「月山」「石の道」「草のつるぎ」などは)過去数回の授賞作と並べて劣らざるものであり、どれが授賞しても異存ないようなものであった。」「とにかく六十一歳といえば、この人など第一回の芥川賞候補になってもおかしくはないのである。」「この人の登場は、たしかに芥川賞候補作全体に活を入れるような効果はあったのである。」
野呂邦暢
男36歳
9 「(引用者注:「此岸の家」「月山」「石の道」「草のつるぎ」などは)過去数回の授賞作と並べて劣らざるものであり、どれが授賞しても異存ないようなものであった。」「素直でいい作品であった。」「素直になるというのは、この作品の場合、勇気のいることであっただろう。」
日野啓三
男44歳
3 「(引用者注:「此岸の家」「月山」「石の道」「草のつるぎ」などは)過去数回の授賞作と並べて劣らざるものであり、どれが授賞しても異存ないようなものであった。」
岡松和夫
男42歳
0  
太田道子
女(30歳)
0  
津島佑子
女26歳
0  
吉田健至
男42歳
0  
金鶴泳
男35歳
3 「(引用者注:「此岸の家」「月山」「石の道」「草のつるぎ」などは)過去数回の授賞作と並べて劣らざるものであり、どれが授賞しても異存ないようなものであった。」
高橋昌男
男38歳
0  
  「今回、私が銓衡に参加して以来、最もすぐれた作品がそろい、充実していた。」
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他の選考委員
大岡昇平
瀧井孝作
井上靖
中村光夫
永井龍男
丹羽文雄
吉行淳之介
舟橋聖一
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選考委員
舟橋聖一男69歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
カットバックのこと 総行数39 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
森敦
男61歳
5 「力作だが、この一作だけで授賞に踏み切れなかったところに、今度の銓衡の難しさがあった。僕は寡聞にして、この作者の存在を知らなかった。この山容に立向う雄渾な感覚は創造的であって、やはり横光さんのネオ・ロマンティクの残響が感じられた。」
野呂邦暢
男36歳
6 「前回の「鳥たちの河口」のほうを僕は評価したい。」「「鳥たちの河口」には、新しい人の持つ特有の鋭さがあった。今度はそれが消えている。」
日野啓三
男44歳
8 「僕は多分日野啓三に落着くだろうと思って、会場に臨んだ。果して最初の投票は日野が最多数であった。が、話合ううちに順序が逆転した。異国人を妻にしている男の悩みのようなものが、だいたい書けていると僕は思う。」
岡松和夫
男42歳
0  
太田道子
女(30歳)
5 「「流蜜のとき」の男女関係も常識的でない乙な味覚がある。最後に女が逃げようとして逃げそこなうところも暗示的だ。」
津島佑子
女26歳
0  
吉田健至
男42歳
0  
金鶴泳
男35歳
0  
高橋昌男
男38歳
0  
  「銓衡が終った後、中村光夫君が半星二つを丸印一つに数えることの疑問を発言された。」「ついでに言えば、候補何回ということが、評点の基準になるのはある程度はいいとしても、それが決定的となると、批評精神の衰弱ではあるまいか。」
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他の選考委員
大岡昇平
瀧井孝作
井上靖
中村光夫
永井龍男
丹羽文雄
吉行淳之介
安岡章太郎
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受賞者・作品
森敦男61歳×各選考委員 
「月山」
中篇 168
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
大岡昇平
男64歳
14 「こん回は「月山」「草のつるぎ」「此岸の家」がすぐれていて、銓衡の対象はすぐこの三作にしぼられた。」「現代のジャーナリズムの要求によって生産される作品にはない、孤独な輝きを持っている。」「何分作者は六十歳をすぎていて、昭和初年横光利一を中心とする文学グループにいた人である。」「そういう変り種に授賞することに私は賛成だが、一方二作授賞にして、若い新人に機会を与えたい気持があった。」「私は「月山」「草のつるぎ」二作授賞に投票した。」
瀧井孝作
男79歳
3 「歌いぶりはちょっと面白いが、足もとが弱いと思った。切実なものがないと見た。」
井上靖
男66歳
6 「目立っていた。雪深い集落の冬籠りの生活を、方言をうまく使って、現世とも幽界ともさだかならぬ土俗的な味わいで描き上げた手腕はなかなかのものである。」
中村光夫
男62歳
21 「文章の気品と思想の成熟では(引用者中略)群をぬいていました。」「六十歳をこえた新人があり得るかという議論もありましたが、僕はこの点は問題はないと思います。」「ただこの作品は小説というよりむしろ散文で書かれた抒情詩の性格が強く、(引用者中略)素材に比して長すぎるし、(引用者中略)種々の欠点が指摘されます。」「これだけをとって他の八篇をすてるに忍びない気持は皆にあったので、二作当選という結果になったのも自然でした。」
永井龍男
男69歳
6 「年期を入れた打込み方は、文句なかった。結末に近く友人が登場する展開について、数氏の批評があったが、長い一冬の自然との対比として、これもよかろうと私は判断した。」
丹羽文雄
男69歳
12 「この人の名を私は三十年昔に知っていた。その後何も発表していなかったようである。そのなかの年月がこの作品の裏打ちとなっている。」「友人が呼びにくるところでは軽く失望したが、致命的な傷とはならない。」「読後の清冽な印象は鐘のひびきのように心に残った。」
吉行淳之介
男49歳
10 「叩けばホコリも出るが、その文章の力は近来あまり見ないものである。勁いばかりでなく、柔軟であり、陰にこもった色気もあり、大した文章である。芥川賞は新人に与えられるというタテマエなので、この作者の年齢についてはともかく、過去に文壇歴があるという点が私も気にかかった。」「これ一作ではほかの候補者が気の毒で、二作授賞が妥当だとおもった。」
安岡章太郎
男53歳
19 「(引用者注:「此岸の家」「月山」「石の道」「草のつるぎ」などは)過去数回の授賞作と並べて劣らざるものであり、どれが授賞しても異存ないようなものであった。」「とにかく六十一歳といえば、この人など第一回の芥川賞候補になってもおかしくはないのである。」「この人の登場は、たしかに芥川賞候補作全体に活を入れるような効果はあったのである。」
舟橋聖一
男69歳
5 「力作だが、この一作だけで授賞に踏み切れなかったところに、今度の銓衡の難しさがあった。僕は寡聞にして、この作者の存在を知らなかった。この山容に立向う雄渾な感覚は創造的であって、やはり横光さんのネオ・ロマンティクの残響が感じられた。」
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他の候補作
野呂邦暢
「草のつるぎ」
日野啓三
「此岸の家」
岡松和夫
「墜ちる男」
太田道子
「流蜜のとき」
津島佑子
「火屋(ほや)
吉田健至
「ネクタイの世界」
金鶴泳
「石の道」
高橋昌男
「白蟻」
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受賞者・作品
野呂邦暢男36歳×各選考委員 
「草のつるぎ」
中篇 154
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
大岡昇平
男64歳
13 「こん回は「月山」「草のつるぎ」「此岸の家」がすぐれていて、銓衡の対象はすぐこの三作にしぼられた。」「これまで旧軍隊を書いた多くの小説よりも、現実性を持って書かれている。長篇小説の書き出しのような印象を与えるくらい、延び延びと書かれているのに感心した。」「私は「月山」「草のつるぎ」二作授賞に投票した。」
瀧井孝作
男79歳
8 「自衛隊の初期訓練、演習なども克明に書いて、班員の性格も描き分けて、地面に喰いついたようなひたむきな粘りがみえた。この人は、気の利いた作も書けるのに、今回は更に無器用なものを出して、私は、今回九篇の中ではこれが一番よいと思った。」
井上靖
男66歳
6 「(引用者注:「此岸の家」と共に)いいところもあれば、欠点もあった。」「この作品の明るさと、健康さは、やはりこれはこれで一つの資質と見るべきであろう。」
中村光夫
男62歳
7 「前回の候補作とまったく違った筆致と作風なので、とまどいを感じました。」「この変化が、作者の内面の発展とどう結びつくのか、この作品だけでは、見当がつきません。」
永井龍男
男69歳
7 「単純な題材に、若さが充実していた。なまじいな批判や自省を捨てたところに、爽快な世界が生れた。」「これはこれで完結した一篇である。」
丹羽文雄
男69歳
8 「「鳥たちの河口」の作者とは別人のようである。きらきらした才能を押えて、深刻がるふうもなく、思わせぶりなところもなく、百五十枚を一気に読ませて、さわやかな感銘をあたえた。」
吉行淳之介
男49歳
8 「悪い作品ではないが、私には思わせぶりにおもえるところと平板なところが目立ち、不満であった。しかし、(引用者中略)その授賞には反対ではなく、慶賀したい。」
安岡章太郎
男53歳
9 「(引用者注:「此岸の家」「月山」「石の道」「草のつるぎ」などは)過去数回の授賞作と並べて劣らざるものであり、どれが授賞しても異存ないようなものであった。」「素直でいい作品であった。」「素直になるというのは、この作品の場合、勇気のいることであっただろう。」
舟橋聖一
男69歳
6 「前回の「鳥たちの河口」のほうを僕は評価したい。」「「鳥たちの河口」には、新しい人の持つ特有の鋭さがあった。今度はそれが消えている。」
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他の候補作
森敦
「月山」
日野啓三
「此岸の家」
岡松和夫
「墜ちる男」
太田道子
「流蜜のとき」
津島佑子
「火屋(ほや)
吉田健至
「ネクタイの世界」
金鶴泳
「石の道」
高橋昌男
「白蟻」
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候補者・作品
日野啓三男44歳×各選考委員 
「此岸の家」
短篇 86
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
大岡昇平
男64歳
13 「こん回は「月山」「草のつるぎ」「此岸の家」がすぐれていて、銓衡の対象はすぐこの三作にしぼられた。」「新聞記者らしい現代社会への洞察があり、いわゆる「小説」のじめじめした感じ、感情に溺れたところがない。しかしどことなく書き落されていることがある感じもあり、新聞記者の筆癖が出て来て、感興をさまたげるところもある。」
瀧井孝作
男79歳
4 「すらすら読ませるけれど、私は可もなし不可もなしと見た。達者に描けたが、初いういしさがすくない。」
井上靖
男66歳
5 「(引用者注:「草のつるぎ」と共に)いいところもあれば、欠点もあった。」「野心作だけに読みごたえはあったが、描き切れていないところもあった。」
中村光夫
男62歳
4 「(引用者注:「草のくるぎ」と「此岸の家」では)僕は後者(引用者注:「此岸の家」)を推しました。作品に厚味の足りない点はありますが、身近かなむずかしい題材を、これだけ鮮明に描いたのは新人として非凡の手腕です。」
永井龍男
男69歳
7 「ここに描かれた夫婦生活は、解決を得ぬまま繰返し繰返し述べられなければならぬ危惧を感じさせる。」
丹羽文雄
男69歳
6 「文学賞には大へんな損な小説である。」「材料が手近かすぎるせいか。ちょっとした欠点も見のがされないのは気の毒である。しかし上手な小説であった。」
吉行淳之介
男49歳
4 「(引用者注:「月山」の他に)もう一作となると、私は「此岸の家」を推した。この作品にははじめは「草のつるぎ」を上まわる票が集まった。だが、異例の投票がおこなわれた結果、「草のつるぎ」のほうが当選作となった。」
安岡章太郎
男53歳
3 「(引用者注:「此岸の家」「月山」「石の道」「草のつるぎ」などは)過去数回の授賞作と並べて劣らざるものであり、どれが授賞しても異存ないようなものであった。」
舟橋聖一
男69歳
8 「僕は多分日野啓三に落着くだろうと思って、会場に臨んだ。果して最初の投票は日野が最多数であった。が、話合ううちに順序が逆転した。異国人を妻にしている男の悩みのようなものが、だいたい書けていると僕は思う。」
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他の候補作
森敦
「月山」
野呂邦暢
「草のつるぎ」
岡松和夫
「墜ちる男」
太田道子
「流蜜のとき」
津島佑子
「火屋(ほや)
吉田健至
「ネクタイの世界」
金鶴泳
「石の道」
高橋昌男
「白蟻」
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候補者・作品
岡松和夫男42歳×各選考委員 
「墜ちる男」
短篇 79
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
大岡昇平
男64歳
2 「古い地方都市の路地の土の匂いを感じさせた。」
瀧井孝作
男79歳
4 「地方色もよく出て、筆にやわらかい味が出て、この人が出直したと思った。」
井上靖
男66歳
0  
中村光夫
男62歳
0  
永井龍男
男69歳
2 「雰囲気を持った作品であった。」
丹羽文雄
男69歳
9 「よく心のくばられた作品である。」「が、この小説はいくら作者の目がはたらいても所詮は傍観者の小説で終る。」
吉行淳之介
男49歳
0  
安岡章太郎
男53歳
0  
舟橋聖一
男69歳
0  
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他の候補作
森敦
「月山」
野呂邦暢
「草のつるぎ」
日野啓三
「此岸の家」
太田道子
「流蜜のとき」
津島佑子
「火屋(ほや)
吉田健至
「ネクタイの世界」
金鶴泳
「石の道」
高橋昌男
「白蟻」
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候補者・作品
太田道子女(30歳)×各選考委員 
「流蜜のとき」
短篇 127
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
大岡昇平
男64歳
0  
瀧井孝作
男79歳
5 「これが現代の小説かもしれないが、せっかくの美しい風物も懶惰のマイナスに消されて、惜しかった。」
井上靖
男66歳
4 「面白かった。夫、妻、子供のひとすじ縄ではゆかぬ関係を小気味いい筆で酷薄に描いているところは、なかなかの才能だと思った。」
中村光夫
男62歳
0  
永井龍男
男69歳
0  
丹羽文雄
男69歳
0  
吉行淳之介
男49歳
0  
安岡章太郎
男53歳
0  
舟橋聖一
男69歳
5 「「流蜜のとき」の男女関係も常識的でない乙な味覚がある。最後に女が逃げようとして逃げそこなうところも暗示的だ。」
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他の候補作
森敦
「月山」
野呂邦暢
「草のつるぎ」
日野啓三
「此岸の家」
岡松和夫
「墜ちる男」
津島佑子
「火屋(ほや)
吉田健至
「ネクタイの世界」
金鶴泳
「石の道」
高橋昌男
「白蟻」
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候補者・作品
津島佑子女26歳×各選考委員 
「火屋(ほや)
短篇 105
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
大岡昇平
男64歳
0  
瀧井孝作
男79歳
4 「巧みすぎて回りくどかった。筆は初いういしいものがあるのだから、もっと素直に書いた方が伸びると思った。」
井上靖
男66歳
0  
中村光夫
男62歳
0  
永井龍男
男69歳
0  
丹羽文雄
男69歳
3 「才能には期待をしているが、何か本道からそれていくような危険をつよく感じた。」
吉行淳之介
男49歳
4 「才能十分で注目しているのだが、作品に出来不出来がある。」「「火屋」には票を入れることができなかった。」
安岡章太郎
男53歳
0  
舟橋聖一
男69歳
0  
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他の候補作
森敦
「月山」
野呂邦暢
「草のつるぎ」
日野啓三
「此岸の家」
岡松和夫
「墜ちる男」
太田道子
「流蜜のとき」
吉田健至
「ネクタイの世界」
金鶴泳
「石の道」
高橋昌男
「白蟻」
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候補者・作品
吉田健至男42歳×各選考委員 
「ネクタイの世界」
短篇 57
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
大岡昇平
男64歳
0  
瀧井孝作
男79歳
0  
井上靖
男66歳
0  
中村光夫
男62歳
0  
永井龍男
男69歳
0  
丹羽文雄
男69歳
0  
吉行淳之介
男49歳
0  
安岡章太郎
男53歳
0  
舟橋聖一
男69歳
0  
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他の候補作
森敦
「月山」
野呂邦暢
「草のつるぎ」
日野啓三
「此岸の家」
岡松和夫
「墜ちる男」
太田道子
「流蜜のとき」
津島佑子
「火屋(ほや)
金鶴泳
「石の道」
高橋昌男
「白蟻」
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候補者・作品
金鶴泳男35歳×各選考委員 
「石の道」
短篇 111
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
大岡昇平
男64歳
8 「感心した。」「土地が、多分故郷との対比において、重要な役割を果し、「石の道」は象徴的な重みを感じさせる。しかし女主人公の回想が少し無造作に、継続的に取り出されること、結末の幻想的な処理に、私は朝鮮文学を感じてしまう。」「この辺は何となく軽い感じになった。」
瀧井孝作
男79歳
5 「筆の初いういしいのが佳かった。日本語に馴れずに初心に書いたものと見た。」
井上靖
男66歳
0  
中村光夫
男62歳
0  
永井龍男
男69歳
0  
丹羽文雄
男69歳
0  
吉行淳之介
男49歳
3 「八年ほど前その長篇にたいして消極的な評をしたことがあるが、(引用者中略)おどろくほどの進歩で、欠点はあるにしても日野・野呂に劣るとはいえない。」
安岡章太郎
男53歳
3 「(引用者注:「此岸の家」「月山」「石の道」「草のつるぎ」などは)過去数回の授賞作と並べて劣らざるものであり、どれが授賞しても異存ないようなものであった。」
舟橋聖一
男69歳
0  
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他の候補作
森敦
「月山」
野呂邦暢
「草のつるぎ」
日野啓三
「此岸の家」
岡松和夫
「墜ちる男」
太田道子
「流蜜のとき」
津島佑子
「火屋(ほや)
吉田健至
「ネクタイの世界」
高橋昌男
「白蟻」
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候補者・作品
高橋昌男男38歳×各選考委員 
「白蟻」
短篇 73
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
大岡昇平
男64歳
0  
瀧井孝作
男79歳
0  
井上靖
男66歳
0  
中村光夫
男62歳
0  
永井龍男
男69歳
0  
丹羽文雄
男69歳
0  
吉行淳之介
男49歳
0  
安岡章太郎
男53歳
0  
舟橋聖一
男69歳
0  
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他の候補作
森敦
「月山」
野呂邦暢
「草のつるぎ」
日野啓三
「此岸の家」
岡松和夫
「墜ちる男」
太田道子
「流蜜のとき」
津島佑子
「火屋(ほや)
吉田健至
「ネクタイの世界」
金鶴泳
「石の道」
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