芥川賞のすべて・のようなもの
選評の概要
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86.
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Last Update[H29]2017/3/19

瀧井孝作
Takii Kosaku
このページの情報は「直木賞のすべて」内の「選考委員の群像 瀧井孝作」と同じものです。
生没年月日【注】 明治27年/1894年4月4日~昭和59年/1984年11月21日
在任期間 第1回~第86回(通算47年・86回)
在任年齢 41歳2ヶ月~87歳8ヶ月
経歴 岐阜県生まれ。
高山市において句人の河東碧梧桐に師事。大正3年/1914年上京、時事新聞記者や『改造』編集者を経て、大正9年/1920年小説「弟」で文壇デビュー。
小説に「無限抱擁」「欲呆け」、句集に「折柴句集」、随筆集に「野草の花」などがある。
受賞歴・候補歴
  • |候補| 第1回日本文化協会文芸賞(昭和14年/1939年)『積雪』
  • 第20回読売文学賞[小説賞](昭和43年/1968年)『野趣』
  • |候補| 第20回読売文学賞[随筆・紀行賞](昭和43年/1968年)『翁草』
  • 勲三等瑞宝章(昭和44年/1969年)
  • 高山市名誉市民(昭和46年/1971年)
  • 第6回日本文学大賞(昭和49年/1974年)『俳人仲間』
  • 文化功労者(昭和49年/1974年)
  • 勲二等瑞宝章(昭和50年/1975年)
  • 八王子市名誉市民(昭和50年/1975年)
個人全集 『瀧井孝作全集』全12巻・別巻1(中央公論社)
備考
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下記の選評の概要には、評価として◎か○をつけたもの(見方・注意点を参照)、または受賞作に対するもののみ抜粋しました。さらにくわしい情報は、各回の「この回の全概要」をクリックしてご覧ください。

芥川賞 1 昭和10年/1935年上半期   一覧へ
選評の概要 総行数69 (1行=26字)
選考委員 瀧井孝作 男41歳
候補 評価 行数 評言
男30歳
8 「この人のもの、ぼくは力量を大いに買うが些か洗練に欠けるうらみがある。手堅い点では申分ないけれど。」
  「七月二十四日の夜、芥川忌の集りのあとで、また小委員会を開いてその折り、近頃名前の出てきた人、例えば坪田譲治氏、島木健作氏、劇作家の真船豊氏などは、已に認められた人として今更芥川賞でもあるまいから、相当名の出た人は、はぶくことにしよう、とその席上できめられた。」「こんどの候補者選出の責任はぼくにある。この五人のほかにもっとよい候補者があったかも分らない。」
選評出典:『芥川賞全集 第一巻』昭和57年/1982年2月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和10年/1935年9月号)
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芥川賞 2 昭和10年/1935年下半期   一覧へ
選評の概要 総行数3 (1行=26字)
選考委員 瀧井孝作 男41歳
候補 評価 行数 評言
川崎長太郎
男34歳
3 「川崎長太郎君を推す。川崎君を推す迄には種々経緯もあるが、今は父の死に会って飛騨へ急いでいるので、何も書いていられない。」
選評出典:『芥川賞全集 第一巻』昭和57年/1982年2月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和11年/1936年4月号)
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芥川賞 3 昭和11年/1936年上半期   一覧へ
選評の概要 総行数23 (1行=26字)
選考委員 瀧井孝作 男42歳
候補 評価 行数 評言
男36歳
6 「文章のしっかりしている点で一番感心した。それに情婦にたいする愛情もなかなかよく描けているようだ。」
男34歳
3 「筋書のような感じもするが、昔風の史話として面白い作だと思う。」
  「以前に挙げられた候補者は再び候補者には選ばないと云う話で、以前の人々ので佳い作もあったと思うけれど、これは今回は強いて挙げない。」
選評出典:『芥川賞全集 第一巻』昭和57年/1982年2月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和11年/1936年9月号)
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芥川賞 4 昭和11年/1936年下半期   一覧へ
選評の概要 総行数21 (1行=26字)
選考委員 瀧井孝作 男42歳
候補 評価 行数 評言
男37歳
13 「(引用者注:「地中海」とともに)図抜けて佳いと思った。」「以前の作のような弱々しい所がなくなって、持前の饒舌の筆の上に図太く根を据えた作者がうかがわれた。この作者の成長に先ず感心した。」「芥川賞は一期一人と云う建前だが、この二人(引用者注:石川淳、富沢有為男)の二作はどちらにも甲乙はつけ難く、今回は特別に二人二作を推選した。」
男34歳
13 「(引用者注:「普賢」とともに)図抜けて佳いと思った。」「現実直写のつよい文体で、事柄がハッキリ簡潔に正確に描いてあり空虚な箇所が少しもなく、一と息に読み通せた。」「南仏の風物が背景にされて男女関係のスリルがよく描写されている。」「芥川賞は一期一人と云う建前だが、この二人(引用者注:石川淳、富沢有為男)の二作はどちらにも甲乙はつけ難く、今回は特別に二人二作を推選した。」
選評出典:『芥川賞全集 第一巻』昭和57年/1982年2月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和12年/1937年3月号)
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芥川賞 5 昭和12年/1937年上半期   一覧へ
選評の概要 総行数17 (1行=26字)
選考委員 瀧井孝作 男43歳
候補 評価 行数 評言
男37歳
17 「一冊に纏めて読むと、作家の味まみが実にハッキリ分る。」「貧乏の苦味などの自己主観を出さずに、明るく、サラサラと描いた所に、新味があると思った。」「君の才能は友人間にはとくに認められていたが、一般的には未だ埋れている風だから、今回推薦してみた。」
  「こんどは、特別にすぐれたものがないようであった。」
選評出典:『芥川賞全集 第一巻』昭和57年/1982年2月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和12年/1937年9月号)
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芥川賞 6 昭和12年/1937年下半期   一覧へ
選評の概要 総行数30 (1行=26字)
選考委員 瀧井孝作 男43歳
候補 評価 行数 評言
男31歳
17 「火野葦平と云う人の作品は、今回はじめてで、山芋、河豚、糞尿譚と三篇読んでみた。三篇読んで、今回の芥川賞の候補者のねうちはあると思った。」「此の端倪できない程の変った素材を駆使する点、面白い作家だが、只行文が未だお話の程度で創作の域に至らない憾があった。筆が力強くなれば勿論並々でない大物だろうと思われた。」
  「(引用者注:火野葦平の)他は皆、各々名前も出て已に活躍している人々で、名前の古い例では前回の尾崎一雄君の例もあるが、前回の場合位に芥川賞も活きるかどうか分らなんだ。今回も名は古いけれど此の人に、格別に芥川賞と云う程の感じは淡かった。」
選評出典:『芥川賞全集 第二巻』昭和57年/1982年3月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和13年/1938年3月号)
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芥川賞 7 昭和13年/1938年上半期   一覧へ
選評の概要 総行数51 (1行=26字)
選考委員 瀧井孝作 男44歳
候補 評価 行数 評言
田畑修一郎
男34歳
13 「まともに見て描いてあって自然な感じのする点で、こんどぼくの読んだ中では一番好きだと思った。」「一票を入れた。今月の文芸汎論に出た田畑氏の近作の短篇も美しい作と思ったので、それで推選した。」
男37歳
17 「この作者はドギツイ逞しい力をもっていて、これが特長らしいが、筆が尚洗練されて幅が出てくれば申分ないと思った。厚物咲一篇はわりに消化れて、幅もあるし、立上った感じの作で、これはよいと思った。」「読んでも面白いが、何か無気味な怪力乱神のようなものがあって、ぼくは好きになれなんだ。」「当選に強いて反対もしなかった。」
選評出典:『芥川賞全集 第二巻』昭和57年/1982年3月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和13年/1938年9月号)
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芥川賞 8 昭和13年/1938年下半期   一覧へ
選評の概要 総行数36 (1行=26字)
選考委員 瀧井孝作 男44歳
候補 評価 行数 評言
女29歳
12 「国際結婚の人々の心持が描かれていて、これはこの作者の独特の題材らしかった。」「幾分弱いと云う非難もあったが、それは女らしい美しさにもなっているから、欠点とは云えないと思った。女性らしい繊細な心持が美しく見事に描かれて、人々の心持でも、風景でもその明るみも影もなかなかうまく、上品な絵のような所もあった。」
選評出典:『芥川賞全集 第二巻』昭和57年/1982年3月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和14年/1939年3月号)
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芥川賞 9 昭和14年/1939年上半期   一覧へ
選評の概要 総行数48 (1行=26字)
選考委員 瀧井孝作 男45歳
候補 評価 行数 評言
男34歳
14 「小学児童の心持とその行動とがこまかく観察してあって、それを描く筆つきが軽快にすらすらとよく筆が廻って、スッキリと写生してあった。渋滞なく筆の廻っている点で、立派な手腕のある人だと思った。」「最近、早稲田文学の八月号に「子供の倫理」というのが出てから、これも読んでみた。」「この二篇を読んで、ぼくは安心してこの初めての人を推選しようと思った。」
男28歳
15 「面白く読んだ。やや漫画風の筆つきで、人物の性格なども大袈裟に描いて正確な写生とは云えないようだが、しかし、その筆つきに幅と力とがあって、その力量の現れている点で、わざとらしい誇張もそうイヤでなく却って面白味になっていると思った。」「以前の変な筆名(引用者注:珂〈王+比〉粧二)を捨てあらためて本名で出直したようで、この今回の作品も、そういう面目をあらためた力の入った感じもうけとれると思った。」
選評出典:『芥川賞全集 第二巻』昭和57年/1982年3月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和14年/1939年9月号)
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芥川賞 10 昭和14年/1939年下半期   一覧へ
選評の概要 総行数83 (1行=26字)
選考委員 瀧井孝作 男45歳
候補 評価 行数 評言
男32歳
26 「「密猟者」と「流刑囚の妻」とは、二つ共すぐれた作品だと思った。仏蘭西のメリメの短篇に似た手法と、芥川龍之介の再来を思わせるような才気とが見えた。描写が鮮明で、場面場面が目の前にハッキリと浮出してくる、これに感心した。」「「密猟者」は、芸道そのものが主題になっているが、この作品には、猟師の鉄砲の名人の人生観達人の無常観と云うようなものが織交ぜてあった。これは「宮本武蔵」などの大衆文芸の手法もとり入れてあると思った。」「ぼくは、この二つの短篇を今日、推薦したいと思った。」
  「銓衡会の席上で、「密猟者」の当選も確定し、その後で、こんどの作はどれも相当に面白かったと云う話も出た。」
選評出典:『芥川賞全集 第二巻』昭和57年/1982年3月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和15年/1940年3月号)
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芥川賞 11 昭和15年/1940年上半期   一覧へ
選評の概要 総行数35 (1行=26字)
選考委員 瀧井孝作 男46歳
候補 評価 行数 評言
  「いろいろ読んでみたが、芥川賞に適当と思われるような作品は、ないらしかった。」
選評出典:『芥川賞全集 第二巻』昭和57年/1982年3月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和15年/1940年9月号)
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芥川賞 12 昭和15年/1940年下半期   一覧へ
選評の概要 総行数58 (1行=26字)
選考委員 瀧井孝作 男46歳
候補 評価 行数 評言
村田孝太郎
男(37歳)
8 「ぼくは一番好きで一番佳いと思った。」「生活の暗示に富んだ筆で、描写に力と厚味があり、堂々として、鶏の姿が美しく表現されていて、読み乍ら実に愉しかった。鶏のことばかりを描いてある点も、作品として何か新味が感じられた。」
男44歳
14 「主人公の晩年、農村人として生き抜いたという、これは史実とみるよりも作者の創作のようにみえたが、この土の精神の力説は、佳い主題で、佳い小説に成っていると思った・描写の筆は分り易いが、味いは稍平板ではないか、猶活々とした血肉があれば申分ないがと思った。」「(引用者注:前回候補の)「薤露の章」は唐氏の伝奇小説李〈女+圭〉伝を換骨奪胎した歴史小説で、この作者が斯様に特異小説をつくる、その頭のはたらきが買われたわけだ、とぼくは思った。」
選評出典:『芥川賞全集 第三巻』昭和57年/1982年4月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和16年/1941年3月号)
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芥川賞 13 昭和16年/1941年上半期   一覧へ
選評の概要 (座談会形式) 総行数66 (1行=26字)
選考委員 瀧井孝作 男47歳
候補 評価 行数 評言
石原文雄
男41歳
6 「僕が一番好きなのは、「断崖の村」」「だいたい村を見渡しているような――家みたいなものになるのだけれども……。」
男28歳
26 「上海だの、南京、蘇州なんかの景色は非常にうまく書いてあるように思うね。」「上海にいる人らしいし、ああいう雑誌に出たのを、ここで芥川賞として取上げるのも、この際いいのじゃないかという気持は勿論あるのだね。」「今度は「長江デルタ」でどうですかね。」
  「候補者にはなるけれども、賞とするには足りない、今度は賞なしで、掲載するという程度でどうかね。」
選評出典:『芥川賞全集 第三巻』昭和57年/1982年4月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和16年/1941年9月号)
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芥川賞 14 昭和16年/1941年下半期   一覧へ
選評の概要 総行数35 (1行=26字)
選考委員 瀧井孝作 男47歳
候補 評価 行数 評言
女27歳
7 「読後すこし淋しい感じの残る点物足らぬ感じがした。これは銓衡会の席上で、いろいろ問題になり、結局作者に、結末の所を描足してもらえば宜いと云うことで、授賞と定った。」「(引用者注:過去の作の)「双流」よりもムキで純粋な感じで、好いと思った。」
  「今回は、これは好いと直ぐに云える位の、そんなにすぐれた作品はなかった。」
選評出典:『芥川賞全集 第三巻』昭和57年/1982年4月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和17年/1942年3月号)
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芥川賞 15 昭和17年/1942年上半期   一覧へ
選評の概要 総行数43 (1行=26字)
選考委員 瀧井孝作 男48歳
候補 評価 行数 評言
  「こんどの芥川賞の予選に、ぼくらは、指定された作品を、凡そ三十篇読んだが、全部読んで、この中から候補者にあげてもよいようなのは、一人もなかった。」
選評出典:『芥川賞全集 第三巻』昭和57年/1982年4月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和17年/1942年9月号)
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芥川賞 16 昭和17年/1942年下半期   一覧へ
選評の概要 総行数15 (1行=26字)
選考委員 瀧井孝作 男48歳
候補 評価 行数 評言
男34歳
5 「幾分このような不満の点(引用者注:創作小説としては力も弱く品位も低いきらいがある所、素材の報告に止っている所)もあると思った。」
  「何篇かは相当読みごたえがあり、亦面白く読めた。しかし、それは大方、雑誌の中間読物と云うような感じの作品が多くて、創作小説としては、力も弱く品位も低いきらいがあった。」
選評出典:『芥川賞全集 第三巻』昭和57年/1982年4月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和18年/1943年3月号)
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芥川賞 17 昭和18年/1943年上半期   一覧へ
選評の概要 総行数19 (1行=26字)
選考委員 瀧井孝作 男49歳
候補 評価 行数 評言
男38歳
7 「すこし荒削の感じだが、筆に情熱と昂奮があった。詩のような甲高い調子も、作者の一杯な気持の自然に出たものだと思った。」「蒙古人と支那人との生活問題をハッキリ提出した一篇の主題もなかなか良いと思った。」
相原とく子
女(不明)
5 「今回読んだ中で、ぼくは一番好きな短篇だと思った。芥川賞は茲三四回大陸の時局物の入選ばかりが続くので、こんどは内地向きの短篇も好いと思ったが、(引用者中略)すこし小粒にみえて当選はしなかった。」
選評出典:『芥川賞全集 第三巻』昭和57年/1982年4月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和18年/1943年9月号)
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芥川賞 18 昭和18年/1943年下半期   一覧へ
選評の概要 総行数13 (1行=26字)
選考委員 瀧井孝作 男49歳
候補 評価 行数 評言
男41歳
8 「素直な明るい筆致で、分り易く描いてあった。読後の気持もよかった。」「紙漉業の事をわりに精細に写して、家庭の入組んだ普通の小説風の場面はわりにあっさり写してあった。このようなやり方も一つの新しい手法だろうと思った。」
若杉慧
男40歳
5 「主題は現在の国際時局に暗示する所もあって、なかなかうまい小説だと思った。描写も慥かで武士の切腹のありさまなど、鮮かな筆で、読みながら打たれた。」
選評出典:『芥川賞全集 第三巻』昭和57年/1982年4月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和19年/1944年3月号)
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芥川賞 19 昭和19年/1944年上半期   一覧へ
選評の概要 総行数12 (1行=26字)
選考委員 瀧井孝作 男50歳
候補 評価 行数 評言
林柾木
男44歳
8 「一番好きになった。」「事柄を端的に出す描写もうまくて気が利いていた。」「近頃ガサツな時局物が余りに多いから、却ってこういう沁々した作品を読むと心持が和らげられるし、却ってこの静かな作品を採りたいと思った。」
男32歳
4 「(引用者注:「登攀」と共に)読んでそれぞれ面白味も腕前の力もあるが、この二篇を「昔の人」と比べると、短篇としての冴えと匂いとが稍劣ると思った。」
男34歳
4 「(引用者注:「劉廣福」と共に)読んでそれぞれ面白味も腕前の力もあるが、この二篇を「昔の人」と比べると、短篇としての冴えと匂いとが稍劣ると思った。」
選評出典:『芥川賞全集 第三巻』昭和57年/1982年4月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和19年/1944年9月号)
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芥川賞 20 昭和19年/1944年下半期   一覧へ
選評の概要 総行数12 (1行=26字)
選考委員 瀧井孝作 男50歳
候補 評価 行数 評言
男26歳
8 「推薦される事になって、思直してこれに不賛成は云わず措いた。」「(引用者注:「雨絃記」に比べて)そんなに厭味な所はないが、正確に描く方よりも歌う方が多い、綾が多すぎて弱いと思ったけれども作ることはなかなかうまい作家だと思った。」
  「こんど読んだものの中では、特別にこの一篇を推薦したいと思える程のものはなかった。」「つまらぬ作品の受賞という事は芥川賞の名折れにもなると思って、今回は一度休んでもよいかと思った。」
選評出典:『芥川賞全集 第三巻』昭和57年/1982年4月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和20年/1945年3月号)
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芥川賞 21 昭和24年/1949年上半期   一覧へ
選評の概要 教養と人柄との持味 総行数64 (1行=26字)
選考委員 瀧井孝作 男55歳
候補 評価 行数 評言
光永鐵夫
男47歳
23 「一番すぐれていると思った。これは、リアリズムの小説ではなく、リリシズムのもので、そしてフィクションの作品だが、文章も板についていて、調っていて、読後の感じは、沁々した佳い感じがあった。」
女48歳
13 「教養人の終戦後の窮迫が描かれて、善良な人柄の美しさが、悠たりした明るい上品さで出ていた。教養と人柄との持味で出来た作品で、作者の技倆は未だ分らない気がされた。」
男24歳
10 「小谷剛という人のものは、作家という同人雑誌で幾つも読んでみたが、私は、どれも未だ採れないと思った。文壇の流行小説に中毒して、小説らしく真似て、夢中で書く若い時分に往々例のある習作で「確証」というのも習作の一つにすぎないと思った。文章も線の弱い、頭に沁まない、軽薄なもので……。」
  「こんどは、どうも、際立ってよいと言うのはなかったようで、選択にいろいろと迷った。厳選の建前から、今回は当選なしにしようかと云う話も出た。が、折角復活した芥川賞第一回に当選なしも、淋しい、というようなわけで、結局、この中で比較的にどれがよいか、各自の思う所で投票してみようという話になった。」
選評出典:『芥川賞全集 第四巻』昭和57年/1982年5月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和24年/1949年9月号)
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芥川賞 22 昭和24年/1949年下半期   一覧へ
選評の概要 国際的の小説 総行数47 (1行=26字)
選考委員 瀧井孝作 男55歳
候補 評価 行数 評言
男42歳
17 「猟銃と闘牛と二つ読んでみて、この人は面白く読ませる才人らしい、と分りました。」「新聞小説でも書ける腕達者で、小説らしい形式で行く所に、私は、心からまだ好きではない、段々に好きになれるかもしれない、が今の所まだ、と考えました。」
  「芥川賞には、もっと珠のような短篇をほしいと思います。未だ荒蕪で、よい芽も育ちにくいかも知れませんが、美しい短篇も採り上げられるようにしたいと思います。」
選評出典:『芥川賞全集 第四巻』昭和57年/1982年5月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和25年/1950年4月号)
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芥川賞 23 昭和25年/1950年上半期   一覧へ
選評の概要 型破りに 総行数54 (1行=26字)
選考委員 瀧井孝作 男56歳
候補 評価 行数 評言
田宮虎彦
男39歳
37 「当選しそうでしたが、しまいにはずされて、一寸心のこりもありました。」「新人ではないし、もう十分認められている人ですが、それはこのごろ沢山書いていても筆に流れた所がないし、投げやりでないし、そして新人のように熱中した仕事振だから、このような一生懸命の仕事振に対して、こんどは特別に、型破りに、賞を呈するのもよいかと考えました。」「殊に、田宮氏の歴史小説に感心しました」「腕前は水際立ってズバ抜けています。」「現代小説は見劣りがすると思いました。」
男35歳
17 「「異邦人」は、(引用者中略)題材がまず面白いと思いました。」「庶民と共に浮世のドン底に入って、精神のやすらぎを得ようとする、脱落した心持がこの小説のテーマらしく、この意味では一種の思想小説ともとれました。亦、思想小説としても、主張のない何気ない点が好もしいと思いました。」「デッサンの確かりした、線のするどい筆つきで、これにユーモラスのやわらか味もあって、一種の持味のある好い作家のように思われました。」「それで私は、この「異邦人」を推しました。」
選評出典:『芥川賞全集 第四巻』昭和57年/1982年5月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和25年/1950年10月号)
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芥川賞 24 昭和25年/1950年下半期   一覧へ
選評の概要 主張なしで 総行数55 (1行=26字)
選考委員 瀧井孝作 男56歳
候補 評価 行数 評言
近藤啓太郎
男30歳
15 「候補に推しておきました。」「強い筆致で、漁村の風物が出ていて、朴訥な地方文学として、面白いかと思いました。かなり感心しました。」「ところが、銓衡会の席上で、丹羽君は「この人は今当選したら身の破滅になる、まだまだでしょう」と云って、抑えてしまい、私は、当人の事をよく心得た筈の丹羽君がそう云う以上は、わきから口出しするわけにいかないので、私は主張せずに沈黙してしまいました。」
選評出典:『芥川賞全集 第四巻』昭和57年/1982年5月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和26年/1951年4月号)
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芥川賞 25 昭和26年/1951年上半期   一覧へ
選評の概要 仮空の小説 総行数61 (1行=26字)
選考委員 瀧井孝作 男57歳
候補 評価 行数 評言
男37歳
27 「「春の草」を読んで、この作家の段々に伸びてきた事が分りました。」「この小説は、作家の夢とか想とか云うものが次々と湧き出してきて、段々に描き続けられたような所もあって、面白いと思いました。」「歌うような筆致は、林芙美子の作品に似た所もあるかと思いましたが、林芙美子よりも若々しくやわらかいようで、これは新人のせいばかりでなく、この作家の特色かとも考えられました。」「私は、今回はこの二人(引用者注:石川利光と安部公房)を推したいと考えました。」
男27歳
20 「寓話諷刺の作品にふさわしい文体がちゃんと出来ている」「文体文章がちゃんと確かりしているから、どんな事が書いてあっても、読ませるので、筆に力があるのです。自分のスタイルを持っている。これはよい作家だと思いました。」「私は、今回はこの二人(引用者注:石川利光と安部公房)を推したいと考えました。」
選評出典:『芥川賞全集 第四巻』昭和57年/1982年5月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和26年/1951年10月号)
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芥川賞 26 昭和26年/1951年下半期   一覧へ
選評の概要 題材と文体との一致 総行数52 (1行=26字)
選考委員 瀧井孝作 男57歳
候補 評価 行数 評言
男33歳
29 「「広場の孤独」は、苛立った風の、しかもテンポの早い風の、独自風の、この文体が、錯雑した国際間の軋轢に混迷した人々の描かれた、この題材に、ぴったりした所があって、今度は題材と文体とが一致したようで、これは佳いと思いました。それで今回は「広場の孤独」を推薦しました。「漢奸」と云うのは、分りやすく行届いた筆だが、作者の心持に余裕がありすぎて、これも、切迫した題材に比べて、文体が生温くて、一致しないようで、物足りないと思いました。」
選評出典:『芥川賞全集 第四巻』昭和57年/1982年5月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和27年/1952年3月号)
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芥川賞 27 昭和27年/1952年上半期   一覧へ
選評の概要 直井潔氏を推す 総行数29 (1行=26字)
選考委員 瀧井孝作 男58歳
候補 評価 行数 評言
直井潔
男37歳
23 「図抜けて佳いと思いました。」「この小説には、病人の暗い面は背景に滲んで、明るい面が妙に美しく出て、読後感が妙に明るい、これが此の小説の特長だと思いました。」「この作品の当選しなかったのは、余りに平明直写で、曲がなく、平板のようで、これが物足りないのかもしれませんが。」「川端康成さんは(引用者注:昭和18年の処女作)『清流』をしきりに褒めて、この人を支持すると云われたが、私は、『清流』の方は若々しい美しさ、こんどの『淵』の方は、成長した力強さがあると思いましたが……。」
  「今回の候補作品に付いては、私は、文學界の十月号位に『新人の文学』の方で、改めて詳説したいと思います。」
選評出典:『芥川賞全集 第四巻』昭和57年/1982年5月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和27年/1952年9月号)
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芥川賞 28 昭和27年/1952年下半期   一覧へ
選評の概要 目をつぶって 総行数31 (1行=26字)
選考委員 瀧井孝作 男58歳
候補 評価 行数 評言
安岡章太郎
男32歳
4 「(引用者注:当選作を)強いて出すとすれば、安岡章太郎氏の「愛玩」は、うまい短篇だし、前回の「宿題」も、佳作で、これらを見て、短篇作家として、推薦してもよいのではないか、と考えていました。」
男43歳
7 「青空に雪の降るけしき、と形容したいような、美しい文章に感心しました。内容は、無名の文学青年の伝記で、大したものではないのによくまとめてあるので面白い、と見ました。」「この人は、探求追求というような一つの小説の方法を身につけているようだと分りました。」
男31歳
3 「大衆小説風の面白味で、軽い才筆というのか、これは、「喪神」は、ショッキリ角力を見たような妙な感じのものでした。」
  「私は、こんどは、格別よいのがないと見ていました。前回も当選なしで、こんども亦当選なしでは、面白くないから、誰か出したいが……。」
選評出典:『芥川賞全集 第五巻』昭和57年/1982年6月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和28年/1953年3月号)
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芥川賞 29 昭和28年/1953年上半期   一覧へ
選評の概要 安岡氏を推す 総行数30 (1行=26字)
選考委員 瀧井孝作 男59歳
候補 評価 行数 評言
男33歳
10 「安岡章太郎氏の短篇は、前にいくつか佳いのを読んだ。こんどの二つも悪くない。それで、こんどこの人が当選することには、賛成した。」「確かりして活きいきした所があり、何か噛附いて行くような強い所があった。確かりした独自の観察眼があるから、尚この上、視野が、ひろがれば、結構だと思った。」
選評出典:『芥川賞全集 第五巻』昭和57年/1982年6月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和28年/1953年9月号)
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芥川賞 30 昭和28年/1953年下半期   一覧へ
選評の概要 三人三様 総行数50 (1行=26字)
選考委員 瀧井孝作 男59歳
候補 評価 行数 評言
庄野潤三
男32歳
9 「失恋した青年がしまいに、睡り薬をのんで入水自殺して、流木のように岸に打上げられて、助かってけろっとした所もよい。」「前に『恋文』というのも佳かったが、この『流木』は、また充実味が出てきた。」「ともかくこの人は、文章がきれいでうまい。」
広池秋子
女34歳
14 「佳かった。」「ピチピチした生きのいい筆で光彩があった。」「作者が、オンリーの女性仲間に、あたたかい愛情があり、描写の一行一行も、たのしんで描いているようで、好かった。」「この作者は、下積みのみじめな女達をよく知っているようで、この方で特色もあり、尚、筆が伸びれば、林芙美子の跡継になるのではないか、と思ったりした。」
  「今回は、この三人(引用者注:広池秋子、庄野潤三、小島信夫)が問題になって、三人三様で、それぞれ捨てられず、委員が一致して一人を推すことも出来ないようで、(引用者中略)一遍に幾人もは工合がわるい気がして、今回は休み当選者なしと云うことで、三人とも見送ることになった。」
選評出典:『芥川賞全集 第五巻』昭和57年/1982年6月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和29年/1954年3月号)
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芥川賞 31 昭和29年/1954年上半期   一覧へ
選評の概要 前作を超える佳い作 総行数29 (1行=26字)
選考委員 瀧井孝作 男60歳
候補 評価 行数 評言
男30歳
6 「『驟雨』は、以前の候補作『原色の街』と似た素材だが、野獣派風の荒い筆触の前作よりは、亦幾分うまくなったようで、前作よりは佳いという点で、採ればとれるかと思った。」
  「今回は、沢山候補作が出たが、各々一寸佳い位の所で、特にこれと云う抽ん出た作はなく、私は今回も当選なしかと考えられた。」
選評出典:『芥川賞全集 第五巻』昭和57年/1982年6月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和29年/1954年9月号)
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芥川賞 32 昭和29年/1954年下半期   一覧へ
選評の概要 庄野氏を推す 総行数37 (1行=26字)
選考委員 瀧井孝作 男60歳
候補 評価 行数 評言
男33歳
20 「一番よいと思った。」「サラリーマン生活の弱点を衝いたテーマで、このテーマは、このように明白に提出されると、皆んなが一応は心得ておくべきで、これは大勢に読んでもらいたいと思った。それに、この短篇は、うま味が多い。読みながら不安の心持が惻惻と迫って、やわらかい美しい文章で、香気のようなふくいくとしたものがある。」
小沼丹
男36歳
7 「(引用者注:小島信夫よりも)「白孔雀のゐるホテル」「白い機影」「紅い花」などの方を、採りたかった。小沼氏は、淡彩の風趣のある筆致に、どの作品も、独特の持味がある。好い作家だと思った。」「今回は、三人も当選は多すぎると云われて、小沼氏の残されたのは惜しかった。」
男39歳
9 「「アメリカン・スクール」は、読んでは面白いが、読後に残る感じは淡い。この作者の「神」と「犬」という短篇も読んでみたが、これは佳作とは云えない、調子に乗った乱作と云うような所があった。」
選評出典:『芥川賞全集 第五巻』昭和57年/1982年6月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和30年/1955年3月号)
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芥川賞 33 昭和30年/1955年上半期   一覧へ
選評の概要 坂上弘君に注目 総行数31 (1行=26字)
選考委員 瀧井孝作 男61歳
候補 評価 行数 評言
坂上弘
男19歳
6 「カンワ゛スに絵画をぶちまけたような荒っぽい、テンポの早い、無造作な軽い筆触に、何か新味があるようで、私は注目した。」「未だ十九歳だから、今後なお注目したいと思った。」
男32歳
6 「わるくはないが、アカデミックの形式主義か、飜訳小説に似て、瓶詰をたべるような味だと思った。」「「白い人」遠藤周作氏が当選したことは、西洋小説のようなものも日本人が描けるのだという意味で面白いと思った。」
  「格別これを推したいと思われるものはなかった。」
選評出典:『芥川賞全集 第五巻』昭和57年/1982年6月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和30年/1955年9月号)
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芥川賞 34 昭和30年/1955年下半期   一覧へ
選評の概要 「痩我慢の説」を推す 総行数44 (1行=26字)
選考委員 瀧井孝作 男61歳
候補 評価 行数 評言
藤枝静男
男48歳
13 「一番よいと思った。」「「イペリット眼」(引用者中略)も一寸よかったが、こんどの方が、手法もずっと進歩して、筆もよく利いて、この人はやはり勉強しているのだと思われた。」「アプレ青年少女の行動がいきいきとして、よく分り、本当に深切に描いてあって、これは、大人の小説だと思った。しまいの所、医者が深酔して怪我して傷つく所なども、小説の末尾として感じのふかいものがあった。」
男23歳
32 「小説の構成組立に、たくみすぎ、ひねりすぎの所もあるが、若々しい情熱には、惹かれるものがあった。これはしかし読後、“わるふざけ”というような、感じのわるいものがあったが、二月号の「文學界」の「奪われぬもの」というスポーツ小説は、少し筆は弱いけれど、まともに描いた小説で、これならまあよかろうと思った。」「この作家は未だ若くこれからだが、只、器用と才気にまかせずに、尚勉強してもらいたい、と云いたい。」
選評出典:『芥川賞全集 第五巻』昭和57年/1982年6月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和31年/1956年3月号)
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芥川賞 35 昭和31年/1956年上半期   一覧へ
選評の概要 有吉佐和子を推す 総行数37 (1行=26字)
選考委員 瀧井孝作 男62歳
候補 評価 行数 評言
有吉佐和子
女25歳
15 「(引用者注:初めて読んだ時)佳作だと思った。」「再読した所、またこの小説の中の人物の心持にひきこまれて、老父の心持、娘の心持に、同情しながら読んだ。このごろの大方の小説は、読んでその作中人物の心持にひきこまれる程に、心をこめて書かれたものはすくないようだが、これは、そのすくない中の一つだと思った。」
男36歳
6 「わるくはないけれど、このごろ流行のフィクションで、人物もはじめから終りまで二人きりの相対で、なかなか巧みなものだが、それだけに自然な新鮮な方では前の「飛魚」の方が佳かったが。」
  「長篇なので今回の候補からはずされた、西野辰吉氏の「秩父困民党」は、佳作だと思った。小島直記氏の「人間の椅子」は、経済調査庁という役所の機構を主題にした小説が、すこし変ったものだと見た。」
選評出典:『芥川賞全集 第五巻』昭和57年/1982年6月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和31年/1956年9月号)
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芥川賞 36 昭和31年/1956年下半期   一覧へ
選評の概要 藤枝氏の清潔な心持 総行数33 (1行=26字)
選考委員 瀧井孝作 男62歳
候補 評価 行数 評言
藤枝静男
男49歳
24 「一番佳いと思った。」「北満の殺風景な兵隊の雑事にも、端的な自然描写が実にいきいきした色彩と滋味とを加えて、うまいと思った。人物の性格もよく描き分けられて、実によく見て見抜いてあると思った。このような眼の確かな克明な描写の小説は、日本人ばなれがしていると思った。」「青年の清潔な心持が世俗の邪悪にいかに対抗したか、これがテーマだが、この清潔な心持は、この人の独特のもので、そうざらにはない得難いものではないかしら。」
  「こんどは大方のが稀薄なので、銓衡も何だか気乗薄のようで、「無しにしよう」という大勢になって、私の推した「犬の血」も、この大勢にまきこまれた恰好になったが。」
選評出典:『芥川賞全集 第五巻』昭和57年/1982年6月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和32年/1957年3月号)
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芥川賞 37 昭和32年/1957年上半期   一覧へ
選評の概要 「残菊抄」を推す 総行数31 (1行=26字)
選考委員 瀧井孝作 男63歳
候補 評価 行数 評言
島村利正
男45歳
11 「一番佳いと思った。」「美しい小説で、一寸古風なようだが、古風なところが今の流行小説にない清新な感じだと見た。これは古くさいのではない、生き生きした古風で、絵の方で云えば版画の味に似たものとでも云えようか。この版画の味も、小説としてはまた清新の手法で面白いと思った。」
男32歳
11 「(引用者注:「残菊抄」の)次に(引用者中略)「不法所持」が佳いと思った。殺人事件の犯人を探す、探偵小説のようだが、しかし人物の心持が主に描かれて、人物の心持を追求する筆もよく伸びて、面白いと思った。」「「硫黄島」は、「不法所持」にくらべると、描写の肉附が手薄のようで、か細い弱々しい感じで、話の筋はいろいろ引っぱられるが、線だけで淡い感じだ。」
選評出典:『芥川賞全集 第五巻』昭和57年/1982年6月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和32年/1957年9月号)
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芥川賞 38 昭和32年/1957年下半期   一覧へ
選評の概要 「涼み台」を推す 総行数30 (1行=26字)
選考委員 瀧井孝作 男63歳
候補 評価 行数 評言
川端康夫
男22歳
11 「女の心持の深いものが描かれて、それは少年の目に映った世相で、澄んだ爽かな感じがあった。僕はこれを今回の候補作品の一つに推したが、(引用者中略)読み甲斐のあるものとして推したが。」「優等生の作文のようで、大江氏開高氏にくらべると、まだ力が弱いがこの優等生の所からもっと踏破って出るとよいと思った。」
男27歳
8 「僕は好きな作品とは云えなかった。」「とりすました形式主義よりも自然の野性の魅力を主張した、このテーマは宜い。しかし、この小説の作中人物は、大方中間小説のように安っぽい描写で、僕は好きにはなれなかった。」
選評出典:『芥川賞全集 第五巻』昭和57年/1982年6月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和33年/1958年3月号)
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芥川賞 39 昭和33年/1958年上半期   一覧へ
選評の概要 未熟な作の中で 総行数37 (1行=26字)
選考委員 瀧井孝作 男64歳
候補 評価 行数 評言
男23歳
7 「(引用者注:候補作中)一番佳い方だと思った。」「描写には、若い情熱のムンムンしたものがあった。大江健三郎氏は、本も何冊か出て、もう有名な流行作家のようで、芥川賞の必要もないわけだが。今回は賞無しというのも少し淋しいかと思って、この心持から当選の方に僕は敢て賛成した。」
選評出典:『芥川賞全集 第五巻』昭和57年/1982年6月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和33年/1958年9月号)
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芥川賞 40 昭和33年/1958年下半期   一覧へ
選評の概要 新鮮味 総行数43 (1行=26字)
選考委員 瀧井孝作 男64歳
候補 評価 行数 評言
金達寿
男39歳
18 「一番読みごたえがあって、面白かった。」「朴達という農奴出の煽動者も、しまいの裁判の場面も、面白く描いて、筆も、政治小説としては平易にわかりやすく、田野の乾し草の香のような味があって、うまいと思った。」「私は、(引用者注:以前の「玄界灘」より)この題材が新しい方で、こんどはこれを推したが、新人でないと云われて、惜しいが仕方がなかった。」
選評出典:『芥川賞全集 第五巻』昭和57年/1982年6月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和34年/1959年3月号)
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芥川賞 41 昭和34年/1959年上半期   一覧へ
選評の概要 北杜夫を推す 総行数37 (1行=26字)
選考委員 瀧井孝作 男65歳
候補 評価 行数 評言
北杜夫
男32歳
13 「図抜けて佳いと思った。」「この人のものは前にも予選作品を読んだが、それは何を書いてあったか今はおぼえてないが、(引用者中略)それからみると格段の進歩ではないかしら。」「昆虫採集マニヤの人物を点景とした、一つの風景画を見るような美しい感じの小説で、この風景小説の意味でも新しいと思った。」「作者はこの小説を打込んで書いてまた脱皮したものがあるようにも考えられた。」
佃実夫
男33歳
5 「(引用者注:「谿間にて」の次に)佳いかと思った。」「ともかく読ませる筆で、モラエスという老年の西洋人の阿波の徳島での孤栖の生活が、詳細に描かれていた。古風のような描写だが、面白く読ませる、相当の力作だと見た。」
男49歳
12 「何か面白い所もあるが、何かよくわからない、作者のひとり合点のような所もあった。」「よくわからないのは、未だ熟さない、こなれない、欠点もあると見た。ともかく、この人には妙な独自の何かがあると思った。何かがある点では好意を持つが……。」
選評出典:『芥川賞全集 第六巻』昭和57年/1982年7月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和34年/1959年9月号)
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芥川賞 42 昭和34年/1959年下半期   一覧へ
選評の概要 「感情のウェイヴ」 総行数32 (1行=26字)
選考委員 瀧井孝作 男65歳
候補 評価 行数 評言
吉田紗美子
女33歳
16 「一番よいと思った。」「人妻のヨロメキの小説とも見られやすいが、これは男女の色事の小説ではなく、女の目覚めがテーマだ。女の自覚をこれだけ精細に見詰めた、読み応えのある小説はそう沢山はない。文章はまだ少し硬いようだが、まともでテキパキして、風景描写も遠近が出て空気が描けて、かなりの技倆だ。」「この作がこんど当選しなかったのは、一寸ふしぎだ。」
選評出典:『芥川賞全集 第六巻』昭和57年/1982年7月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和35年/1960年3月号)
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芥川賞 43 昭和35年/1960年上半期   一覧へ
選評の概要 佳い味 総行数49 (1行=26字)
選考委員 瀧井孝作 男66歳
候補 評価 行数 評言
男33歳
15 「段ちがいに佳かった。」「「谿間にて」よりもこんどの方がまた進歩していると思った。それは規模が大きくて、又よくこなれて佳い味があるのだ。この佳い味というものは一つの天分で、天分があってもすぐ出るものでもなく、なかなか得難いものだが、この作者は勉強をつづけてこの味が出てきたようだ。」
  「こんどは予選作品も、いつもとくらべて読みごたえがあった。」
選評出典:『芥川賞全集 第六巻』昭和57年/1982年7月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和35年/1960年9月号)
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芥川賞 44 昭和35年/1960年下半期   一覧へ
選評の概要 甘美な恋愛小説 総行数43 (1行=26字)
選考委員 瀧井孝作 男66歳
候補 評価 行数 評言
男29歳
12 「一番佳いと思った。」「筆致が清澄で、事物がわかりやすい。短篇としての構成も、うまい。」「十七字音の定型の俳句を見るような古風なもので、この古風なのも却って面白いと思った。」
泉大八
男32歳
6 「二番目に(引用者中略)佳いかと思った。」「在来のプロレタリヤ小説とくらべて、これは明るいうまみがあって、長いけれど面白く読めた。」「筆には、明るい若いやわらかい味がある、これが佳いと思った。」
選評出典:『芥川賞全集 第六巻』昭和57年/1982年7月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和36年/1961年3月号)
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芥川賞 45 昭和36年/1961年上半期   一覧へ
選評の概要 技倆幼稚 総行数36 (1行=26字)
選考委員 瀧井孝作 男67歳
候補 評価 行数 評言
  「七篇共、読後の感じはわるくないが、大体に技倆が幼稚で、どれも、どうも採れないと思った。」
選評出典:『芥川賞全集 第六巻』昭和57年/1982年7月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和36年/1961年9月号)
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芥川賞 46 昭和36年/1961年下半期   一覧へ
選評の概要 異色のもの 総行数37 (1行=26字)
選考委員 瀧井孝作 男67歳
候補 評価 行数 評言
大森光章
男39歳
7 「一番佳いと思った。」「前回の「名門」は、まだ文章の力が弱くて、採れなかったが、この「王国」は、北海道の冬の山の雪げしきが、精彩のある筆で、文章に作者の生地が出て、佳かった。」
男27歳
13 「恋敵・仕事敵の腕比べなども描いて、大衆向の読物とも見える。」「大体は、若気の至りの粗大なものだろうが、向うみずの盲目の情熱と、野放図のたくましい構想力とは、また異色のもののようで、捨て難い。このようなものも、稀にたまには有ってもよいと思った。この粗大が、はびこっては困るが。」「今回は又ナシでは淋しいので、「鯨神」は賛成も多いようで、僕は敢えて、当選の方に、努めたが。」
選評出典:『芥川賞全集 第六巻』昭和57年/1982年7月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和37年/1962年3月号)
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芥川賞 47 昭和37年/1962年上半期   一覧へ
選評の概要 子供っぽい作 総行数38 (1行=26字)
選考委員 瀧井孝作 男68歳
候補 評価 行数 評言
男34歳
8 「一番いいと思った。」「暗いが、しかし、何か読ませる力があるのだ。文章には、まだ淡いが、この作家の持味もあるようだ。」「「美談の出発」という題は、この主人公の自嘲の意味もあるらしかった。」
  「今回は、大体に子供っぽい作ばかりで、もっと、大人の小説を読みたいと思った。」
選評出典:『芥川賞全集 第六巻』昭和57年/1982年7月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和37年/1962年9月号)
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芥川賞 48 昭和37年/1962年下半期   一覧へ
選評の概要 「美少女」は佳い 総行数42 (1行=26字)
選考委員 瀧井孝作 男68歳
候補 評価 行数 評言
選評出典:『芥川賞全集 第六巻』昭和57年/1982年7月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和38年/1963年3月号)
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芥川賞 49 昭和38年/1963年上半期   一覧へ
選評の概要 混沌とした味 総行数36 (1行=26字)
選考委員 瀧井孝作 男69歳
候補 評価 行数 評言
男48歳
12 「かなり放縦な破ぶれかぶれの描写だが、ゴチャゴチャの描写に却って、家庭の崩れた容子がよく出ていた。結末の、安保反対のデモ行進の所など、時代相もハッキリして、うまいと思った。妙な混沌とした味のある小説だ。」
女37歳
9 「病身の心持と風景描写だけの短篇だが、前半の転地に赴くまでの心持は、おだやかなおっとりとした好い味の描写で、後半の浜辺の描写は長いわりに淡いと思った。」「佳作「美少女」が当選せずに見落されて、少し惜しかったので、今回は特別にこの人も推薦した。」
選評出典:『芥川賞全集 第六巻』昭和57年/1982年7月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和38年/1963年9月号)
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芥川賞 50 昭和38年/1963年下半期   一覧へ
選評の概要 ゆがんだもの 総行数50 (1行=26字)
選考委員 瀧井孝作 男69歳
候補 評価 行数 評言
女35歳
5 「浮薄なマス・コミに追回される、関西の放送台本作家の、その情事が描かれて、メチャクチャに歪んだ姿が見える。只それが、実体ではない、影像のように映るだけで、甚だ淡いのが物足りない。人物も煙のように幽霊かお化けの感じだ。」
  「今回の予選作は、九篇共に、今の世相の歪んだ不安な感じが、この九篇の中に何か共通して出て居た。」
選評出典:『芥川賞全集 第六巻』昭和57年/1982年7月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和39年/1964年3月号)
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芥川賞 51 昭和39年/1964年上半期   一覧へ
選評の概要 立原氏の文章 総行数32 (1行=26字)
選考委員 瀧井孝作 男70歳
候補 評価 行数 評言
立原正秋
男38歳
6 「文章も、この題材にふさわしい、しなやかな絹糸のような感触があり、私は、今回の予選作の中ではこれが一番よいかと思った。ただ、小説としても、余りに芝居じみて、小道具も多くて、少し古い感じがしたのは惜しい。」
男29歳
5 「力はあるようだが、筆も荒っぽく、理窟ぽく、仰々しく、長すぎて、読むのに少し退屈した。」
選評出典:『芥川賞全集 第七巻』昭和57年/1982年8月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和39年/1964年9月号)
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芥川賞 52 昭和39年/1964年下半期   一覧へ
選評の概要 伊藤沆氏を推す 総行数42 (1行=26字)
選考委員 瀧井孝作 男70歳
候補 評価 行数 評言
伊藤沆
男50歳
13 「私はこの人の昨年か名古屋の「作家」に出した、「幽囚記」という百五十枚ほどの歴史小説に感心して居た。(引用者中略)これは大人の小説だと思った。この歴史小説が佳かったので、こんどこの私小説も推薦した。この「幽囚記」がこんど参考にでも読まれたらよかったが……。」
立川洋三
男36歳
3 「テキパキと描いてあった。この人のものは尚読みたいと思った。」
津村節子
女36歳
3 「素直によく描いてあった。」
選評出典:『芥川賞全集 第七巻』昭和57年/1982年8月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和40年/1965年3月号)
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芥川賞 53 昭和40年/1965年上半期   一覧へ
選評の概要 「玩具」もよい 総行数40 (1行=26字)
選考委員 瀧井孝作 男71歳
候補 評価 行数 評言
女37歳
8 「随筆風の作だが、随筆風に書いて、これだけ潤いのあるのは佳い。前回の候補作「さい果て」(引用者中略)も佳かったので、この「玩具」も推してもよいと思った。」
選評出典:『芥川賞全集 第七巻』昭和57年/1982年8月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和40年/1965年9月号)
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芥川賞 54 昭和40年/1965年下半期   一覧へ
選評の概要 「北の河」を推す 総行数45 (1行=26字)
選考委員 瀧井孝作 男71歳
候補 評価 行数 評言
男33歳
25 「私はこれが一番よいと思った。」「読後私は何か憐れな感じがした。」「文章がもっと鋭いと申分ないが、やや説明も多い、ジカでない、紙一重の膜があった。しかし、河の中洲の母の水死体は鮮かに見えた。」
選評出典:『芥川賞全集 第七巻』昭和57年/1982年8月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和41年/1966年3月号)
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芥川賞 55 昭和41年/1966年上半期   一覧へ
選評の概要 見事な交響音 総行数67 (1行=26字)
選考委員 瀧井孝作 男72歳
候補 評価 行数 評言
萩原葉子
女45歳
22 「(引用者注:この作者は)うまくなったと思った。一気に終いまで読んだ。」「大体に、此頃雑誌の小説は低い感じのものが多いが、とにかくこの高いリズムのある作品は、推称に価すると思った。」「「図抜けて佳かった。」
  「「天上の花」以外は、ひどい作ばかりが選ばれた。このような悪作ばかりが予選に通るのは、どうしたわけか。」
選評出典:『芥川賞全集 第七巻』昭和57年/1982年8月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和41年/1966年9月号)
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芥川賞 56 昭和41年/1966年下半期   一覧へ
選評の概要 人の命の重さ 総行数42 (1行=26字)
選考委員 瀧井孝作 男72歳
候補 評価 行数 評言
男23歳
17 「日常生活の何気ない中に不気味なものを蔵したこの作は、以前の、庄野潤三の「静物」という小説の方法にも似通うかと見えた。」「何気ない題もよい。生命の流れの意味もあるようだ。」
斎藤せつ子
女36歳
9 「永井荷風の「葛飾土産」の短篇を見るように、うまいものだ。」「どの登場人物も簡潔に描けて、うまい。」「この短篇は、新潮の同人雑誌文学賞をもらったと云われた。」
選評出典:『芥川賞全集 第七巻』昭和57年/1982年8月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和42年/1967年3月号)
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芥川賞 57 昭和42年/1967年上半期   一覧へ
選評の概要 挺身者 総行数48 (1行=26字)
選考委員 瀧井孝作 男73歳
候補 評価 行数 評言
男41歳
20 「描写に無駄がなく、テキパキ簡潔に、よく描けて居た。読了して、構成もよかった。目下の米国占領治下の、制圧された悲哀がよくわかった。」「しかし、この小説は中国人の孫弁護士なども登場して、いろいろのことが二重写しになり、筋の段取りがあまりによく出来すぎて、あまりに達者なもので、作り物だという不安もした。」
選評出典:『芥川賞全集 第七巻』昭和57年/1982年8月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和42年/1967年9月号)
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芥川賞 58 昭和42年/1967年下半期   一覧へ
選評の概要 「奇蹟の市」は強烈 総行数37 (1行=26字)
選考委員 瀧井孝作 男73歳
候補 評価 行数 評言
佐木隆三
男30歳
9 「必死に強烈な生き方が、生ま生ましく描かれて、私はこの作が今回一番の佳作と見た。」「しかし、これが芥川賞になると、この小説の主人公の中学生を模倣した、中学生の非行少年振りが流行はびこるとこまると考えて、私はこの佳作を敢えて主張しなかったが。」
男34歳
8 「力作で、一応は読ませる筆だが、新味にはとぼしい感じだ。」
選評出典:『芥川賞全集 第七巻』昭和57年/1982年8月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和43年/1968年3月号)
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芥川賞 59 昭和43年/1968年上半期   一覧へ
選評の概要 希有の文才 総行数43 (1行=26字)
選考委員 瀧井孝作 男74歳
候補 評価 行数 評言
女37歳
25 「海外居住者の退屈、無聊、孤独、死にたいほどの寂寥が、私にはよくわかって、この作に感心した。」「この無内容な時間を何とか過ごさねばならない、やりきれなさが、読みながら実に感じられる小説だ。」「描かれたアメリカ人も他の国籍人も、皆んな根無し草のようで、ひどいものだ。(引用者中略)こんな根無し草の人人の多い風俗に注目して描いた小説だ。」「私は、このひとは、希有の文才だと思った。」
男42歳
5 「丸谷氏の作は前に二つ読んだが、こんどのこれがまあ出来がよかった。」
選評出典:『芥川賞全集 第八巻』昭和57年/1982年9月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和43年/1968年9月号)
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芥川賞 60 昭和43年/1968年下半期   一覧へ
選評の概要 小粒の感じ 総行数26 (1行=26字)
選考委員 瀧井孝作 男74歳
候補 評価 行数 評言
  「今回、九篇の予選作品は、どれも粒の小さい、低い感じがした。」
選評出典:『芥川賞全集 第八巻』昭和57年/1982年9月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和44年/1969年3月号)
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芥川賞 61 昭和44年/1969年上半期   一覧へ
選評の概要 繊細美 総行数26 (1行=26字)
選考委員 瀧井孝作 男75歳
候補 評価 行数 評言
直井潔
男54歳
5 「童話の味で、文章がいきいきして、新しい爽やかな感じで、実に佳かった。文章にこれだけの持味のある作家は、今は殆ど少なくなったが……。」
男32歳
8 「現今の学校卒業生の生活手記で、十八歳の少年にしては余りにおしゃべりだが、この饒舌に何か魅惑される、たぶらかされる面白味があった。」「構成も面白く、繊細な美しさがあった。筋のない小説らしい。」
男41歳
6 「描写がリアルにハッキリして佳かった。」「しまいの学生一人で馬の屠殺は、少し唐突のようで、書き足りないが、何か智恵のない感じがした。」
選評出典:『芥川賞全集 第八巻』昭和57年/1982年9月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和44年/1969年9月号)
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芥川賞 62 昭和44年/1969年下半期   一覧へ
選評の概要 森万紀子に注目 総行数32 (1行=26字)
選考委員 瀧井孝作 男75歳
候補 評価 行数 評言
森万紀子
女35歳
14 「私は面白いユーモア小説と見た。このひとの筆には、事物にカミつく牙があった。書出しの宿屋の小女とブリーダーの細君との対立の場面もうまいと思った。」
男47歳
6 「大方甘い詠嘆と感傷だけで、事物は何も描いてなかった。遠方の風景を望遠鏡でのぞくようなもどかしさがあった。また私は、この作者の発想、飜訳調の文章にも反発した。」
選評出典:『芥川賞全集 第八巻』昭和57年/1982年9月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和45年/1970年3月号)
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芥川賞 63 昭和45年/1970年上半期   一覧へ
選評の概要 戯画的小説 総行数30 (1行=26字)
選考委員 瀧井孝作 男76歳
候補 評価 行数 評言
女36歳
11 「女のかなしみを、只訴えたい、一途に書きたい、この切迫した筆力があった。しかし、何か異常な、妙な不分明な所もあったが、不分明なりに何か一貫して、特殊な女の性情が、読みながらわかった。」「全体に暗い薄墨色くもり空の色調情調が活きて、ふしぎな佳作と思った。」
男49歳
9 「戯画化は面白いとしても、この文章までも軽軽しいフザケぶりには少し感心できなかった。むかしの鳥羽僧正の絵巻「鳥獣戯画」は、世相風刺の烏滸絵と云われたが、白描の筆力が光って美しかった。戯画化小説でも「鳥獣戯画」ほどの筆力が出たら申し分ないが……。」
選評出典:『芥川賞全集 第八巻』昭和57年/1982年9月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和45年/1970年9月号)
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芥川賞 64 昭和45年/1970年下半期   一覧へ
選評の概要 「杳子」を推す 総行数29 (1行=26字)
選考委員 瀧井孝作 男76歳
候補 評価 行数 評言
男33歳
17 「「杳子」は(引用者中略)何か混沌とした、暗い明晰でない、灰色の感じが、この小説の場合には、この灰色の混沌も、小説の色どりと持味になって、密度の濃い、面白いヤヤコシさで、筆の妙味に陶然とさせられた。」「次に同じ作者の「妻隠」を読んで、(引用者中略)明るい明晰で、別人の筆かと思う位に変って居た。これも佳作だが水彩画のような味で、「杳子」は油彩のようなねっとりした味の小説。」「これだけ打込んで描いたのは、大いに褒めてもよいと思った。」
選評出典:『芥川賞全集 第八巻』昭和57年/1982年9月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和46年/1971年3月号)
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芥川賞 65 昭和46年/1971年上半期   一覧へ
選評の概要 不明瞭と饒舌 総行数31 (1行=26字)
選考委員 瀧井孝作 男77歳
候補 評価 行数 評言
森万紀子
女36歳
7 「筆の線が太く荒荒しく、描写の筆力は、今回の予選作八篇の中では一番強いと思った。この作者は以前の候補作「単独者」「密約」など、小説の題から見ても、何か得体のしれないものを持つようだが、この何物かがうまく出てくれば面白いと思った。」
選評出典:『芥川賞全集 第八巻』昭和57年/1982年9月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和46年/1971年9月号)
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芥川賞 66 昭和46年/1971年下半期   一覧へ
選評の概要 李恢成と秦恒平 総行数33 (1行=26字)
選考委員 瀧井孝作 男77歳
候補 評価 行数 評言
男36歳
11 「叙情がよくまとまって居た。李恢成氏の作は、こんどで五回候補になったが、私はこれが一番よいと思った。李恢成氏の日本語は、初心なたどたどしい所が新鮮味であったが、この「砧をうつ女」は、またよい意味で、野放図になったと思った。」
秦恒平
男36歳
11 「この短篇のはじめの、古代の武人の姿も簡潔に描かれ、武人の孫の生い立ちも憐れ深く、武人の孫の八歳の幼年が出家の時に、一人で廬山の頂上目がけて這い上る所は粘ばり強くて、「廬山」の題も宜かった。」「泉鏡花と芥川龍之介と二人の作に似た凝った所があると私は見たが、こんどの「廬山」は、それに野生の強いものが出てきたと思った。」
男33歳
5 「方言もうまく使って、まあ読ませるが、少し他愛のない感じもした。――素質のある人なら、受賞すれば、更によい作が出来るから、私は、授賞に反対はしなかった。――」
選評出典:『芥川賞全集 第九巻』昭和57年/1982年10月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和47年/1972年3月号)
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芥川賞 67 昭和47年/1972年上半期   一覧へ
選評の概要 総行数34 (1行=26字)
選考委員 瀧井孝作 男78歳
候補 評価 行数 評言
森内俊雄
男35歳
6 「暖かい心持がよく出て居て、佳作と思った。平凡な材料でもあと味がよかった。」
男37歳
7 「悲しい心持の切実な物語だが、文章が稍くだくだしいのが、少し惜しい。強い簡潔の筆なら尚よかったが……。」
男39歳
14 「文章もうまいが、軽くスラスラしすぎて図式のようで、実感が淡かった。」「色いろの場面が、隔離病院内の子供の患者たちの、学校教師の目から描かれて、この学校教師は芝居の狂言まわしとも見えて、実感は淡かった。技巧の勝った小説と見えた。」
選評出典:『芥川賞全集 第九巻』昭和57年/1982年10月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和47年/1972年9月号)
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芥川賞 68 昭和47年/1972年下半期   一覧へ
選評の概要 戦争悪 総行数31 (1行=26字)
選考委員 瀧井孝作 男78歳
候補 評価 行数 評言
女43歳
11 「反戦小説の長篇で、戦争悪がよくわかり、私は感心した。」「少女の友だちの父の反戦教授一家や、少女の兄の友人の反戦主義者なども、よく描きこんであり、少女の手紙の往復も、しまいの反戦主義者との会話なども、奔放な手法でなかなか好かった。」「戦争悪をこれほどまでハッキリと示した手腕は大きいと思った。」
女36歳
8 「郷愁の心持が素直に描いてあった。」
選評出典:『芥川賞全集 第九巻』昭和57年/1982年10月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和48年/1973年3月号)
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芥川賞 69 昭和48年/1973年上半期   一覧へ
選評の概要 小説の脊骨 総行数33 (1行=26字)
選考委員 瀧井孝作 男79歳
候補 評価 行数 評言
青木八束
男40歳
11 「こんどの予選作の中で、私はこれが一ばんよいと思った。」「人物も劇的に事物も立体的に目に映り、(引用者中略)すべて面白く描けて居た。しかし、この作は今回三票きりで、落選した。銓衡委員には各々個性があるから、私はこれを強いて推すこともしなかった。」
野呂邦暢
男35歳
6 「広い天地と疎らの鳥類と孤独の男とがスッキリ描けて居た。私はこの作は今回(引用者注:「蛇いちごの周囲」に次いで)二番目によいと見たが、四票きりで落選した。」
男38歳
4 「五票で当選したが、私は票は入れなかった。小説の脊骨が弱い。筆が甘い。読んでも頭に沁まなかった。」
選評出典:『芥川賞全集 第十巻』昭和57年/1982年11月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和48年/1973年9月号)
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芥川賞 70 昭和48年/1973年下半期   一覧へ
選評の概要 初心尊重 総行数34 (1行=26字)
選考委員 瀧井孝作 男79歳
候補 評価 行数 評言
男36歳
8 「自衛隊の初期訓練、演習なども克明に書いて、班員の性格も描き分けて、地面に喰いついたようなひたむきな粘りがみえた。この人は、気の利いた作も書けるのに、今回は更に無器用なものを出して、私は、今回九篇の中ではこれが一番よいと思った。」
金鶴泳
男35歳
5 「筆の初いういしいのが佳かった。日本語に馴れずに初心に書いたものと見た。」
男61歳
3 「歌いぶりはちょっと面白いが、足もとが弱いと思った。切実なものがないと見た。」
選評出典:『芥川賞全集 第十巻』昭和57年/1982年11月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和49年/1974年3月号)
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芥川賞 71 昭和49年/1974年上半期   一覧へ
選評の概要 人棄物語 総行数30 (1行=26字)
選考委員 瀧井孝作 男80歳
候補 評価 行数 評言
岡松和夫
男43歳
12 「よくまとまった短篇で、私には、寒村の習俗は温和なようで実は残酷なものに見えた。」「これは敗戦後のむざんな人棄物語とも見えた。今回の予選作八篇の中では、私はこれが一ばんよいと思った。」
選評出典:『芥川賞全集 第十巻』昭和57年/1982年11月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和49年/1974年9月号)
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芥川賞 72 昭和49年/1974年下半期   一覧へ
選評の概要 凝視小説 総行数27 (1行=26字)
選考委員 瀧井孝作 男80歳
候補 評価 行数 評言
男49歳
8 「読みごたえのある力作と見た。私はひきこまれて読んだが、わかりやすい文章は結構だが、しかし、一般向きで弱く平凡で、私は、この作家の目に、もっときびしさが見えてきて、もっと実感が出たら尚好きだが、この作家が自分の文体を確立したら、私は申分がないと思った。」
男45歳
11 「前の連作、「此岸の家」と「浮ぶ部屋」と似通うが、前の二作よりも、これは筆に粘りが出て、線も太く、文章は強くなった、と私は見た。人物も部屋も風景もありありと目に映って好かった。」
選評出典:『芥川賞全集 第十巻』昭和57年/1982年11月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和50年/1975年3月号)
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芥川賞 73 昭和50年/1975年上半期   一覧へ
選評の概要 冴えた筆 総行数26 (1行=26字)
選考委員 瀧井孝作 男81歳
候補 評価 行数 評言
女44歳
12 「私は読みながら、むごたらしさに、あわれさに、涙が出てきた。何よりも、筆が冴えて、いきいきして、惹きこまれた。」「いろいろのことが混乱して、わかりにくい箇所もあるが、これも実感の表現とみた。」「私は、この作家の長崎原爆体験のモチーフと、冴えた筆力と、両方を推奨したい。」
島村利正
男63歳
8 「しなやかな筆の風景描写も、この小説のヒロインの目にうつる感じのようで、大方の小説は活字だが、これは肉筆をみる感じ、これもまた新しいと思った。」
選評出典:『芥川賞全集 第十巻』昭和57年/1982年11月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和50年/1975年9月号)
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芥川賞 74 昭和50年/1975年下半期   一覧へ
選評の概要 岡松君の充実味 総行数30 (1行=26字)
選考委員 瀧井孝作 男81歳
候補 評価 行数 評言
男44歳
14 「私はこの作の溌剌した筆致を見て、この作者の急に進歩した充実味に感心した。はじめの章の一、二、三、小学生時分の海洋訓練の志賀島行のところは、名文と見た。」「しまいの山寺の僧になった竹元少年の成長も宜かった。」
男29歳
5 「人物がゴチャゴチャして、描写も何もない、わけのわからんものと私は見た。これよりもまだ、前回の候補作「浄徳寺ツアー」には、団体旅行の猥雑味が描いてあったと思った。」
選評出典:『芥川賞全集 第十巻』昭和57年/1982年11月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和51年/1976年3月号)
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芥川賞 75 昭和51年/1976年上半期   一覧へ
選評の概要 若者の才気 総行数33 (1行=26字)
選考委員 瀧井孝作 男82歳
候補 評価 行数 評言
光岡明
男43歳
7 「私は読みながら細君のかいた私小説かと思ったが、あとで光岡明氏は別人とわかり、細君の筆ではない、達者なものだと思った。」
森泰三
男(54歳)
5 「私はこの小説の末尾にある、結婚の心持を訴えた長文の手紙には、打たれて惹きこまれた。この作品は筆が堅すぎるせいか、銓衡にとりあげたのは私一人であった。」
男24歳
8 「アメリカ軍の基地に近い酒場の女たち、麻薬常習の仲間たちのたわいのない、水の泡のような日常を描いたもの、と私はみた。この若い人の野放図の奔放な才気な一応認めるが……。」「私はこの人の尚洗練された第二作第三作をまちたかった。」
選評出典:『芥川賞全集 第十一巻』昭和57年/1982年12月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和51年/1976年9月号)
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芥川賞 76 昭和51年/1976年下半期   一覧へ
選評の概要 寺久保氏と金鶴泳氏と 総行数37 (1行=26字)
選考委員 瀧井孝作 男82歳
候補 評価 行数 評言
選評出典:『芥川賞全集 第十一巻』昭和57年/1982年12月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和52年/1977年3月号)
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芥川賞 77 昭和52年/1977年上半期   一覧へ
選評の概要 短篇を望む 総行数32 (1行=26字)
選考委員 瀧井孝作 男83歳
候補 評価 行数 評言
寺久保友哉
男40歳
13 「前半はやわらかい筆にてこまかい心持が出て、(引用者中略)後半のヒドイ目にあう場面は自ずと急迫した筆にて、私はひきこまれた。人の心のあやふやな所がテーマと見えた。」
男29歳
4 「おしゃべりのズラズラしゃべりまくる筆で、このおしゃべりが特長かもしれないが、私はもっと簡潔に書いてほしいと思った。」
男43歳
6 「小説として構図は新しいようだが、内容はとりとめがなく、まとまりのない作だと思った。」
  「大体にどれもくだくだと長すぎて、私は、もっと簡潔な引緊った、短篇を望む。」
選評出典:『芥川賞全集 第十一巻』昭和57年/1982年12月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和52年/1977年9月号)
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芥川賞 78 昭和52年/1977年下半期   一覧へ
選評の概要 山村奇話 総行数28 (1行=26字)
選考委員 瀧井孝作 男83歳
候補 評価 行数 評言
男30歳
4 「越中弁で描いてあってもわかりやすい作で、しまいの螢の光景は、この世のものとも思えない程、美しい感じがした。」
男30歳
19 「人の名は片カナ、言葉も方言、一寸わかりにくいところも多いが、それもむかしの土俗の厚味のようにも感じられて、私は面白く読んだ。」「手のこんだ佳い作品で宜しいが……。只一ばんしまいの場面、(引用者中略)ガシンの場合だけ何故生埋めにされるのか、これは、何故か、私は作者に質したいような気持もした。」
選評出典:『芥川賞全集 第十一巻』昭和57年/1982年12月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和53年/1978年3月号)
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芥川賞 79 昭和53年/1978年上半期   一覧へ
選評の概要 うまい短篇 総行数30 (1行=26字)
選考委員 瀧井孝作 男84歳
候補 評価 行数 評言
男30歳
12 「剣道の試合の描写もしっかりしてうまいが、それに女学生が出てくると匂うように花やかで、うまい短篇に仕立ててある。私は、よい作家が出てきたと注目した。」
男50歳
18 「寡婦のさびしい告白、繰り言の小説で、これは前半は面白いが、後半は男に捨てられてからあとが長すぎて、少ししまりがない作と見えた。私は、この作者の『新潮』八月号に出した、「別ればなし」も読んで、「伸予」よりも「別ればなし」の方がよいと見た。」
選評出典:『芥川賞全集 第十二巻』昭和58年/1983年1月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和53年/1978年9月号)
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芥川賞 80 昭和53年/1978年下半期   一覧へ
選評の概要 青野聰君を推す 総行数31 (1行=26字)
選考委員 瀧井孝作 男84歳
候補 評価 行数 評言
青野聰
男35歳
7 「幼稚のようなやわらかい筆の味が活き活きして、私は今回これが一番よいと思った。」
中村昌義
男(48歳)
7 「この作家のものは律義な筆で、以前に候補作を二篇も読んでいて、前回よりも今回の方が一番よいと思ったが、今回は(引用者中略・注:「母と子の契約」に次いで)次点と見た。」
  「四作(引用者注:「母と子の契約」「淵の声」「秋月へ」「髪」)が認められて、最初の採点には、六点が三作と五点五分が一作と採点されて、選者は十人で、過半数が四作もあって、当選作が出る筈のところ、だんだん話合ううちに減点されて、今回はナシになった。」
選評出典:『芥川賞全集 第十二巻』昭和58年/1983年1月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和54年/1979年3月号)
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芥川賞 81 昭和54年/1979年上半期   一覧へ
選評の概要 青野聰氏を推す 総行数27 (1行=26字)
選考委員 瀧井孝作 男85歳
候補 評価 行数 評言
男35歳
9 「若い夫婦仲のゆがみがテーマにて、充実した中篇小説だ。私は、前回の芥川賞候補作、この青野君の『母と子の契約』という継母とまま子とを描いた中篇が宜かったが、惜しくも当選せず、今回は前回と二作つづいた秀作で、入賞は当然であった。」
女52歳
4 「私は読み乍ら些か気味がわるくて、銓衡から外したが……。」
選評出典:『芥川賞全集 第十二巻』昭和58年/1983年1月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和54年/1979年9月号)
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芥川賞 82 昭和54年/1979年下半期   一覧へ
選評の概要 「誘惑」を推す 総行数30 (1行=26字)
選考委員 瀧井孝作 男85歳
候補 評価 行数 評言
森瑤子
女39歳
9 「私はうまい小説とみて、これを推選したが、採点では三点五分の少数にて落選した。」
立松和平
男32歳
4 「作家の写生の目の働きとキチッとした筆捌きには、私はこの「村雨」も当選にしてもよいと思ったが、しかしこれも採点には三点の少数であった。」
女51歳
8 「小説の描写は、森瑤子さんの「誘惑」の方が勝ると私は見たが、(引用者中略)八点の多数にて当選した。」
選評出典:『芥川賞全集 第十二巻』昭和58年/1983年1月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和55年/1980年3月号)
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芥川賞 83 昭和55年/1980年上半期   一覧へ
選評の概要 今回は票が割れて 総行数29 (1行=26字)
選考委員 瀧井孝作 男86歳
候補 評価 行数 評言
飯尾憲士
男53歳
8 「朝鮮のソウルにて、叔父・甥、叔母・姪たちに歓迎される酒宴の場面、ありありした描写に私は惹込まれて涙ぐんだりした。実感の強い作にて、私はこれ一つを推した。」
  「今回は票が割れて、ナシになったのは惜しい。」
選評出典:『芥川賞全集 第十二巻』昭和58年/1983年1月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和55年/1980年9月号)
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芥川賞 84 昭和55年/1980年下半期   一覧へ
選評の概要 「島影」「裸足」 総行数43 (1行=26字)
選考委員 瀧井孝作 男86歳
候補 評価 行数 評言
土居良一
男25歳
11 「祥三の目に映ったいろいろの事柄が、実にハッキリとまたスッキリと描かれて、私はうまいものだと感心した。」「略歴をみてもよい作家が生れたものだと思った。」
木崎さと子
女41歳
32 「自殺教唆、自殺幇助のようなところも天衣無縫のような筆とみたい。終いの方の総選挙の投票場で、最高裁判事を審査する場面(引用者中略)もうまい。」
男43歳
0  
選評出典:『芥川賞全集 第十二巻』昭和58年/1983年1月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和56年/1981年3月号)
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芥川賞 85 昭和56年/1981年上半期   一覧へ
選評の概要 選評 総行数17 (1行=26字)
選考委員 瀧井孝作 男87歳
候補 評価 行数 評言
女42歳
6 「短篇だが、文体に持味があり、読ませるものを持っている。うまいと思った。」
木崎さと子
女41歳
6 「パーティの席で、赤ん坊が火炎木に注目する場面など、なかなかうまいと思った。前回に、「裸足」というフランスのことを書いていて、又、この「火炎木」のような題材を持っているにも、面白いと思った。」
選評出典:『芥川賞全集 第十二巻』昭和58年/1983年1月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和56年/1981年9月号)
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芥川賞 86 昭和56年/1981年下半期   一覧へ
選評の概要 選評 総行数22 (1行=26字)
選考委員 瀧井孝作 男87歳
候補 評価 行数 評言
選評出典:『芥川賞全集 第十二巻』昭和58年/1983年1月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和57年/1982年3月号)
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