芥川賞のすべて・のようなもの
第10回
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Last Update[H26]2014/6/20

寒川光太郎
Samukawa Kotaro
生没年月日【注】 明治41年/1908年1月1日~昭和52年/1977年1月25日
受賞年齢 32歳1ヵ月
経歴 本名=菅原憲光。北海道苫前郡羽幌町生まれ。法政大学英文科中退。満洲にて新聞記者を勤めたのち帰国、喫茶店経営、共産党員、樺太庁博物館館員、雑誌編集などを経て創作をつづける。
受賞歴・候補歴
  • 第10回芥川賞(昭和14年/1939年下期)「密猟者」
  • |予選候補| 第10回芥川賞(昭和14年/1939年下期)「流刑囚の妻」
備考
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芥川賞 第10受賞  一覧へ

みつりょうしゃ
密猟者」(『創作』1号[昭和14年/1939年7月])
媒体・作品情報
測定媒体 昭和57年/1982年3月・文藝春秋刊『芥川賞全集 第2巻』
形態 四六判 上製
総ページ数 457 表記上の枚数 基本の文字組
(1ページ当り)
26字
×21行
×2段
本文ページ 317~344
(計28頁)
測定枚数 68
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書誌
>>『文藝春秋』昭和15年/1940年3月号
>>昭和15年/1940年4月・小山書店刊『密猟者』所収
>>昭和15年/1940年11月・小山書店刊『日本小説代表作全集 第5 昭和15年・前半期』所収
>>昭和22年/1947年☆月・開明社刊『密猟者』所収
>>昭和23年/1948年2月・春陽堂/春陽堂文庫『密猟者』所収
>>昭和24年/1949年9月・小山書店刊『芥川賞全集 第4巻』所収
>>昭和29年/1954年☆月・春陽堂書店/春陽文庫『密猟者』所収
>>昭和33年/1958年3月・筑摩書房刊『現代日本文学全集87 昭和小説集(二)』所収
>>昭和52年/1977年4月・みやま書房刊『密猟者』所収
>>昭和56年/1981年2月・立風書房刊『北海道文学全集 第14巻 この風土に育つ1』所収
>>昭和57年/1982年3月・文藝春秋刊『芥川賞全集 第2巻』所収
>>平成16年/2004年4月・リブリオ出版/大きな活字で読みやすい本『文学賞受賞・名作集成 第1巻 芥川賞篇』所収
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候補者 寒川光太郎 男32歳
選考委員 評価 行数 評言
瀧井孝作
男45歳
26 「「密猟者」と「流刑囚の妻」とは、二つ共すぐれた作品だと思った。仏蘭西のメリメの短篇に似た手法と、芥川龍之介の再来を思わせるような才気とが見えた。描写が鮮明で、場面場面が目の前にハッキリと浮出してくる、これに感心した。」「「密猟者」は、芸道そのものが主題になっているが、この作品には、猟師の鉄砲の名人の人生観達人の無常観と云うようなものが織交ぜてあった。これは「宮本武蔵」などの大衆文芸の手法もとり入れてあると思った。」「ぼくは、この二つの短篇を今日、推薦したいと思った。」
久米正雄
男48歳
24 「私はゆくりなくも、二十五年前芥川龍之介が「鼻」をひっさげて、夏目先生に見えた時分の事を思い出した。」「文壇出世作の興奮、それを感じさせた濃度では、芥川賞第一回受賞作「蒼氓」以上であり、「コシャマイン記」を抜く。」「仕立は所謂冒険小説に近いが、その通俗の領域を突き抜けて、どうやら、高級な浪曼派作品に迫っている」「此の力勁い「新時代の跫音」が、どんな反響を呼ぶかは、非常な興味である。」
室生犀星
男50歳
13 「半分しかよんでいなかった。当夜持って出た私の覚書には「身につかず」と書いて置いた。(引用者中略)「密猟者」の生活全体がその読んだ日の私の心の向きにつき(原文傍点)が悪かったからである。」「翌日私は「密猟者」を読んで見て鮮かなる一芸を諒解したのである。」「ただ、こういう世界は詩人にのみ描ける世界であることを嘗ての作品経験から私は知っていたので、やはり大して驚かなかった。」
小島政二郎
男46歳
35 「素ぼくな美しさで対象を打ち出そうとしている作者の心の掛け声が実に爽かだ。この作者の文体は清潔である。文体と、描かれた世界と、このくらい呼吸と表情と色彩とを一にしている作品は稀有だ。」「こんな新鮮で力強い立体的な――そうして最後に心理的な文章の書ける作者に、私は「豹」が師匠に対して抱いたような憎しみを覚えずにいられなかった。」「「流刑囚の妻」(創作第二号)もいい作だ。」
川端康成
男40歳
9 「(引用者注:寒川光太郎か金史良かを)選びたかったのは、他の委員諸氏と私も同じであった。特に「密猟者」ということが満場一致であったのは、寒川氏の名誉を或いは倍加するものであろう。」「精神を象徴化する詩人の強さに、面白いところがあって、独特の才質が認められる。しかし、その高く張った未熟さのうちに、ふと崩れそうな不安もないではない。この人の将来の道はそう楽であるまい。」
佐佐木茂索
男45歳
6 「「密猟者」を推す。」「「流刑囚の妻」も悪くないが「密猟者」の方がずっと傑れている。全体にたるみがなく、しかもところどころ十分に籠手を利かしているあたり、老巧でさえもある。結末も下手に書けば大変な大芝居になる処を堂々と押切っている。」
佐藤春夫
男47歳
22 「二篇(引用者注:「密猟者」と「光の中に」)をこの順序で推すつもりで委員会に出席した。」「異常な人物事件場面を描き出して殆んど欠点というべきものがない。特に「豹」という人物は立体的に写されていると思う。」「例えば最初の船に乗り込むまでのあたりなどメリメを思い出しながら読んで芥川が見たら喜ぶに決っている作品だと思った。」
横光利一
男41歳
7 「ときどきこのような作品の出るのは賛成である。素材をよく割切って計算している手腕がある。」「終始、言葉のもつ美しさを頼りとしている若々しい大胆さが、一途に花を開き切った均衡のある作品。」
宇野浩二
男48歳
30 「『密猟者』は、終りの方が少し呆気ないが、(これは可也の欠点であるが、)読みつづけながら、題材のせいだけでなく、絶えず一種の緊張を感じた。それは、やはり題材のせいもあるが、題材にふさわしい文章のせいでもあろう。」「『密猟者』でも、『流刑囚』でも、共に、大方の人に知られていない、遠い北国の、珍しい人間の、風変りな生活が書かれてあるので、気がつかないが、芝居がかりな場面や気持ちが、読者もそれに引かれ、作者もそれが得意であろうが、やがて欠点になり兼ねない。」
菊池寛
男51歳
  「ほとんど全委員の一致するところであった。」「(引用者注:「光の中に」を読んだ)すぐその後で、「密猟者」(寒川光太郎)を読んで、すぐそれに決めてしまった。」「久米が、「コンラッドの名短篇」に比すべしといったが、これぐらいの面白い小説は、外国の短篇小説にも、なかなかないのである。僕は各国の「一九三八年度傑作集」などいうものは読んでいるが、いい短篇などいうものは容易にはないものである。」「ある人は芥川賞創設以来だという人もいたが、とにかく相当な作家で、石川、火野系の力量豊満な人だと思う。進出期待すべしである。」
選評出典:『芥川賞全集 第二巻』昭和57年/1982年3月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和15年/1940年3月号)
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芥川賞 第10回予選候補  一覧へ

アリタン つま
流刑囚の 妻」(『創作』2号[昭和14年/1939年9月])
媒体・作品情報
測定媒体 昭和23年/1948年2月・春陽堂/春陽堂文庫『密猟者』
総ページ数 117 表記上の枚数 基本の文字組
(1ページ当り)
45字
×15行
×1段
本文ページ 51~116
(計66頁)
測定枚数 98
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書誌
>>昭和15年/1940年4月・小山書店刊『密猟者』所収「流刑囚」
>>昭和23年/1948年2月・春陽堂/春陽堂文庫『密猟者』所収「流刑囚」
>>昭和52年/1977年4月・みやま書房刊『密猟者』所収「流刑囚」
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候補者 寒川光太郎 男32歳
選考委員 評価 行数 評言
瀧井孝作
男45歳
26 「「密猟者」と「流刑囚の妻」とは、二つ共すぐれた作品だと思った。仏蘭西のメリメの短篇に似た手法と、芥川龍之介の再来を思わせるような才気とが見えた。描写が鮮明で、場面場面が目の前にハッキリと浮出してくる、これに感心した。」「「密猟者」は、芸道そのものが主題になっているが、この作品には、猟師の鉄砲の名人の人生観達人の無常観と云うようなものが織交ぜてあった。これは「宮本武蔵」などの大衆文芸の手法もとり入れてあると思った。」「ぼくは、この二つの短篇を今日、推薦したいと思った。」
久米正雄
男48歳
24 「私はゆくりなくも、二十五年前芥川龍之介が「鼻」をひっさげて、夏目先生に見えた時分の事を思い出した。」「文壇出世作の興奮、それを感じさせた濃度では、芥川賞第一回受賞作「蒼氓」以上であり、「コシャマイン記」を抜く。」「仕立は所謂冒険小説に近いが、その通俗の領域を突き抜けて、どうやら、高級な浪曼派作品に迫っている」「此の力勁い「新時代の跫音」が、どんな反響を呼ぶかは、非常な興味である。」
室生犀星
男50歳
13 「半分しかよんでいなかった。当夜持って出た私の覚書には「身につかず」と書いて置いた。(引用者中略)「密猟者」の生活全体がその読んだ日の私の心の向きにつき(原文傍点)が悪かったからである。」「翌日私は「密猟者」を読んで見て鮮かなる一芸を諒解したのである。」「ただ、こういう世界は詩人にのみ描ける世界であることを嘗ての作品経験から私は知っていたので、やはり大して驚かなかった。」
小島政二郎
男46歳
35 「素ぼくな美しさで対象を打ち出そうとしている作者の心の掛け声が実に爽かだ。この作者の文体は清潔である。文体と、描かれた世界と、このくらい呼吸と表情と色彩とを一にしている作品は稀有だ。」「こんな新鮮で力強い立体的な――そうして最後に心理的な文章の書ける作者に、私は「豹」が師匠に対して抱いたような憎しみを覚えずにいられなかった。」「「流刑囚の妻」(創作第二号)もいい作だ。」
川端康成
男40歳
9 「(引用者注:寒川光太郎か金史良かを)選びたかったのは、他の委員諸氏と私も同じであった。特に「密猟者」ということが満場一致であったのは、寒川氏の名誉を或いは倍加するものであろう。」「精神を象徴化する詩人の強さに、面白いところがあって、独特の才質が認められる。しかし、その高く張った未熟さのうちに、ふと崩れそうな不安もないではない。この人の将来の道はそう楽であるまい。」
佐佐木茂索
男45歳
6 「「密猟者」を推す。」「「流刑囚の妻」も悪くないが「密猟者」の方がずっと傑れている。全体にたるみがなく、しかもところどころ十分に籠手を利かしているあたり、老巧でさえもある。結末も下手に書けば大変な大芝居になる処を堂々と押切っている。」
佐藤春夫
男47歳
22 「二篇(引用者注:「密猟者」と「光の中に」)をこの順序で推すつもりで委員会に出席した。」「異常な人物事件場面を描き出して殆んど欠点というべきものがない。特に「豹」という人物は立体的に写されていると思う。」「例えば最初の船に乗り込むまでのあたりなどメリメを思い出しながら読んで芥川が見たら喜ぶに決っている作品だと思った。」
横光利一
男41歳
7 「ときどきこのような作品の出るのは賛成である。素材をよく割切って計算している手腕がある。」「終始、言葉のもつ美しさを頼りとしている若々しい大胆さが、一途に花を開き切った均衡のある作品。」
宇野浩二
男48歳
30 「『密猟者』は、終りの方が少し呆気ないが、(これは可也の欠点であるが、)読みつづけながら、題材のせいだけでなく、絶えず一種の緊張を感じた。それは、やはり題材のせいもあるが、題材にふさわしい文章のせいでもあろう。」「『密猟者』でも、『流刑囚』でも、共に、大方の人に知られていない、遠い北国の、珍しい人間の、風変りな生活が書かれてあるので、気がつかないが、芝居がかりな場面や気持ちが、読者もそれに引かれ、作者もそれが得意であろうが、やがて欠点になり兼ねない。」
菊池寛
男51歳
  「ほとんど全委員の一致するところであった。」「(引用者注:「光の中に」を読んだ)すぐその後で、「密猟者」(寒川光太郎)を読んで、すぐそれに決めてしまった。」「久米が、「コンラッドの名短篇」に比すべしといったが、これぐらいの面白い小説は、外国の短篇小説にも、なかなかないのである。僕は各国の「一九三八年度傑作集」などいうものは読んでいるが、いい短篇などいうものは容易にはないものである。」「ある人は芥川賞創設以来だという人もいたが、とにかく相当な作家で、石川、火野系の力量豊満な人だと思う。進出期待すべしである。」
選評出典:『芥川賞全集 第二巻』昭和57年/1982年3月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和15年/1940年3月号)
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