芥川賞のすべて・のようなもの
第54回
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昭和40年/1965年下半期
(昭和41年/1966年1月17日決定発表/『文藝春秋』昭和41年/1966年3月号選評掲載)
選考委員  瀧井孝作
男71歳
石川達三
男60歳
川端康成
男66歳
丹羽文雄
男61歳
石川淳
男66歳
井上靖
男58歳
中村光夫
男54歳
舟橋聖一
男61歳
永井龍男
男61歳
井伏鱒二
男67歳
選評総行数  45 43 25 22 12 25 32 45 20  
選評なし
候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数
高井有一 「北の河」
59
男33歳
25 10 9 11 0 9 15 11 7    
浅井美英子 「阿修羅王」
97
女34歳
2 6 0 0 0 0 0 0 4    
大西兼治 「お迎え待ち」
123
男(39歳)
2 5 0 0 0 0 0 4 3    
島京子 「渇不飲盗泉水」
81
女39歳
2 0 0 0 0 0 0 0 2    
長谷川修 「孤島の生活」
95
男39歳
5 4 2 7 0 3 3 10 7    
小笠原忠 「鳩の橋」
95
男60歳
4 4 0 5 0 3 3 0 3    
森万紀子 「距離」
60
女31歳
2 0 0 0 0 0 0 6 1    
なだいなだ 「童話」
121
男36歳
5 4 10 0 0 10 2 4 1    
渡辺淳一 「死化粧」
56
男32歳
4 5 4 0 0 7 2 12 4    
    欠席
書面回答
            欠席
年齢/枚数の説明   見方・注意点

このページの選評出典:『芥川賞全集 第七巻』昭和57年/1982年8月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和41年/1966年3月号)
1行当たりの文字数:26字


選考委員
瀧井孝作男71歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
「北の河」を推す 総行数45 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
高井有一
男33歳
25 「私はこれが一番よいと思った。」「読後私は何か憐れな感じがした。」「文章がもっと鋭いと申分ないが、やや説明も多い、ジカでない、紙一重の膜があった。しかし、河の中洲の母の水死体は鮮かに見えた。」
浅井美英子
女34歳
2 「選評も省略する。」
大西兼治
男(39歳)
2 「選評も省略する。」
島京子
女39歳
2 「選評も省略する。」
長谷川修
男39歳
5 「筆がいささか冗漫、野放図な明るさが新味で、読ませるが、考えさせられる何かはないようだ。」
小笠原忠
男60歳
4 「先生の風格に依る内容はあるが、作品として、筆は平凡、少し古い感じもした。」
森万紀子
女31歳
2 「選評も省略する。」
なだいなだ
男36歳
5 「童話のような筆で、少し脳タリンの少年巨人兵の姿はよくわかるが……。童話のような筆は、作者が逃げたか、揶揄か、少しものたりなかった。」
渡辺淳一
男32歳
4 「手術と、葬式と、テーマは二つに割れた作のように見えた。」
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他の選考委員
石川達三
川端康成
丹羽文雄
石川淳
井上靖
中村光夫
舟橋聖一
永井龍男
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選考委員
石川達三男60歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
描写以上のものを 総行数43 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
高井有一
男33歳
10 「私は積極的には推せなかったが、特に反対はしなかった。」「欠点がはっきりしている。しかし筆力もあり一種の感銘もある。何よりも作者のまじめな態度が良い。」「芥川賞は新しい文学を待望するとは言っても、奇をてらうものではないと私は思っている。」
浅井美英子
女34歳
6 「いささか乱暴な荒っぽい作品である。」「はじめは誰しも細密な心づかいを以て作品を構成して行かなくてはならない。この作者はその意味で、自分の創作態度を反省する必要がありはしないかと思う。」
大西兼治
男(39歳)
5 「いささか評価に苦しんだが、このままでは感銘も感動もない。死刑囚の群像を意外な明るさと淡々とした描写で書いているのが、作者の意図であったろうけれど、一番主要な点を故意に避けてしまったように思われて物足りない。」
島京子
女39歳
0  
長谷川修
男39歳
4 「最後まで残ったかたちになったが、私はこの作品は採らない。文明社会から逸脱しようとする願いは誰にも有るが、その願望はこの程度の浅い幻想では共感を呼ばない。」
小笠原忠
男60歳
4 「會津八一という実名を取り除いたら、作品の骨格がみな崩れてしまうように思われる。体験と実在の人物とに頼り過ぎているのだ。」
森万紀子
女31歳
0  
なだいなだ
男36歳
4 「主題が良いし量感もあり、技巧的にはいかにも手馴れているが、正面を避けて側面から書いているのが私には大きな不満だった。この主題を(童話)という形で処理しようとする作者の態度に疑問がある。」
渡辺淳一
男32歳
5 「母の病気を描き母その人を描き忘れている。従って、母は病気だけが生きていて、人格として生きて居ない。」
  「九篇の候補作品を読みながら、私はただ単なる描写(原文傍点)というものは何でもない、退屈なものだと思った。それが優れた小説である為には、描写しながら、描写だけでは終っていない、もう一つの何ものかが無くてはならない。」
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他の選考委員
瀧井孝作
川端康成
丹羽文雄
石川淳
井上靖
中村光夫
舟橋聖一
永井龍男
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選考委員
川端康成男66歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
抑える作風 総行数25 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
高井有一
男33歳
9 「(引用者注:授賞が)決定したのは、少し意外であった。いかにも地味で、古風かとも思える作品である。しかし、決定の後に読みかえしてみると、地味で古風かとも思えるところに、質実で丹念な観察と描写があって、これはこれで一つのものであろうか。」「抑える作風は近ごろめずらしいのかもしれない。」
浅井美英子
女34歳
0  
大西兼治
男(39歳)
0  
島京子
女39歳
0  
長谷川修
男39歳
2 「明るい楽しみであろうが、物足りないと言うべきか。」
小笠原忠
男60歳
0  
森万紀子
女31歳
0  
なだいなだ
男36歳
10 「一票を投じておいた」「すでに特色ある才能を認められている人である。」「ところどころの自然風景の短い描写などに、すぐれたものが見える。作者はこのような野性素朴の巨人に、寓意を托して「童話」と題したのかもしれないが、それは別としても、私はおもしろく読んだ。」
渡辺淳一
男32歳
4 「刺戟の強い作品であった。」「脳の手術など詳細に書き過ぎのようであるし、全体に刺戟を鎮めて書かれてあれば、落ちついて訴える作品になっただろうと惜しまれる。」
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他の選考委員
瀧井孝作
石川達三
丹羽文雄
石川淳
井上靖
中村光夫
舟橋聖一
永井龍男
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選考委員
丹羽文雄男61歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
無難と奔放 総行数22 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
高井有一
男33歳
11 「こういう小説は当選しやすい作品である。もちろん良かったから当選したのだが、こういう作者の身の構えが、審査員の気に入るということは、作品のよし悪し以外に考え直してもよいことであろうと思った。」「審査員もこういう小説を当選させておけば、無難である。いいかえると、曲がなさすぎる。」「審査員のひとりとして考えねばならないことだと思った。」
浅井美英子
女34歳
0  
大西兼治
男(39歳)
0  
島京子
女39歳
0  
長谷川修
男39歳
7 「奔放な、野放図なくらいの態度に私は心をうたれた。これを当選作として敢えて推したが、私自身の中の反撥心がそうさせたものであった。この小説には、夢がある。」「(引用者注:日本の文学は)絶望や虚無はお好きだが、人間が生きていく上には、もっと他の要素も大切であることが、この小説で教えられた。」
小笠原忠
男60歳
5 「この手放しの善意の文学から私たちはあまりに顔をそむけすぎてきた。」「小説としては拙いが、私はこの小説で心の上の澱が拭い去られたような感銘をうけた。」
森万紀子
女31歳
0  
なだいなだ
男36歳
0  
渡辺淳一
男32歳
0  
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他の選考委員
瀧井孝作
石川達三
川端康成
石川淳
井上靖
中村光夫
舟橋聖一
永井龍男
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選考委員
石川淳男66歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
とにかく待つ 総行数12 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
高井有一
男33歳
0  
浅井美英子
女34歳
0  
大西兼治
男(39歳)
0  
島京子
女39歳
0  
長谷川修
男39歳
0  
小笠原忠
男60歳
0  
森万紀子
女31歳
0  
なだいなだ
男36歳
0  
渡辺淳一
男32歳
0  
  「今回の銓衡はわたしとしては該当作品なしとするほかない。候補作品のそれぞれについて、なにかいうことはできるが、いってもムダのような気がする。」「すでに賞という仕掛があり、ここに半年のあいだの実績がある。どれか一篇を取って賞にあてることには、わたしも異存をとなえるほどではない。」
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他の選考委員
瀧井孝作
石川達三
川端康成
丹羽文雄
井上靖
中村光夫
舟橋聖一
永井龍男
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選考委員
井上靖男58歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
三篇の中から 総行数25 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
高井有一
男33歳
9 「文章も確りしており、浮いたところや背のびしているところのないのがよかった。母の死の理由がはっきりしていないのはこの作の大きな欠点となっているが、そうした欠点を持ちながらもなお、作品のこころだけはこちらに迫って来るようなところがある。」「第一位に推したゆえんである。」
浅井美英子
女34歳
0  
大西兼治
男(39歳)
0  
島京子
女39歳
0  
長谷川修
男39歳
3 「自由でのびのびした筆はいいが、この前の兎を染める作品の方がこの作者の才気が自然に出ていたと思う。」
小笠原忠
男60歳
3 「好感をもって読んだ。善意が手ばなしで出ている点が長所とも、欠点ともなっていた。」
森万紀子
女31歳
0  
なだいなだ
男36歳
10 「登場人物もそれぞれうまく書いており、手慣れた危げのない作風で、「北の河」と一二を争うものと思っていたが、意外に支持者は少かった。」「作者が主題から身を引いているところがこの作の力を弱めていることは事実であろう。」
渡辺淳一
男32歳
7 「特にいい作品とは言えないが、一人の医師として、他の肉親の者とは違った眼で母の死を見ている主人公をそつなく書いている。」「一応の佳作と言っていいと思う。」
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他の選考委員
瀧井孝作
石川達三
川端康成
丹羽文雄
石川淳
中村光夫
舟橋聖一
永井龍男
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選考委員
中村光夫男54歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
新人の意味 総行数32 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
高井有一
男33歳
15 「素朴で幼稚なところもあるような筆づかいで、小説の技術もうまいとは言いかねます。」「しかしこのややたどたどしい北国の自然の描写には、あるひたむきな感情の流れがあり、敗戦直後の暗い農村を背景に、清純な母子像を彫りあげています。」「単純すぎて、ものたりぬ点はあっても、効果をあてこんだ芸と工夫ばかり氾濫するなかで、珍しく、澄んだ心が感じられる作品です。」
浅井美英子
女34歳
0  
大西兼治
男(39歳)
0  
島京子
女39歳
0  
長谷川修
男39歳
3 「個性のはっきりした作品」「奔放な才気は、将来を期待させます。」
小笠原忠
男60歳
3 「個性のはっきりした作品」
森万紀子
女31歳
0  
なだいなだ
男36歳
2 「個性のはっきりした作品」
渡辺淳一
男32歳
2 「個性のはっきりした作品」
  「今度は九篇ともあまり差のない出来で、はっきり際立った作品は見当りません。」
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他の選考委員
瀧井孝作
石川達三
川端康成
丹羽文雄
石川淳
井上靖
舟橋聖一
永井龍男
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選考委員
舟橋聖一男61歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考所思 総行数45 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
高井有一
男33歳
11 「哀愁ある佳品である。」「もっとも半分以上はフィクションだろうから、いっそ息子の年齢を十八位にすれば、もっと背景や周囲が鮮明になり、母との心理も生々しくなって、ちょっとした傑作が生れたかも知れない。」
浅井美英子
女34歳
0  
大西兼治
男(39歳)
4 「どうもどこかで一度読んだもののような気がしてならなかった。」「材料に異色があり、興味的だが、難点もある。」
島京子
女39歳
0  
長谷川修
男39歳
10 「前々回の「真赤な兎」のほうがすぐれている。」「冒険小説風の構想は面白いが、(引用者中略)通俗的な譬喩の表現が時々出てくるのには、閉口した。作者はそれをリアルのつもりでいるのか、それともロマンチックのつもりでいるのか。が、それはそのどちらでもなく、只うすぎたない。」
小笠原忠
男60歳
0  
森万紀子
女31歳
6 「「単独者」ほどには惹かれなかった。行文の省略も、うまいのか幼稚なのか、わかりにくいところが出てきた。」
なだいなだ
男36歳
4 「不満だ。何回となく銓衡圏内にはいり、次第に力量を増している作家だが、推しにくいものが内在する。」
渡辺淳一
男32歳
12 「面白かった。」「この医者が、手術の疲労から咽喉を痛め、扁桃腺炎で三十九度の熱を出すまで、自分の病気を放っておくのは戴けない。そんな非科学的な熱を出さずにすむ方法は、いくらでもある。然し作者は紺屋の白袴を自負している気なのだろう。」
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他の選考委員
瀧井孝作
石川達三
川端康成
丹羽文雄
石川淳
井上靖
中村光夫
永井龍男
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選考委員
永井龍男男61歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
軽さと繊細さ 総行数20 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
高井有一
男33歳
7 「私は最後まで残した。」「(引用者注:「死化粧」と)ほとんど同じ題材を扱っているが、(引用者中略・注:「北の河」の方が)整った文体と抒情味が行き渡っているので、それがより多く好意を持たれる結果になったようだ。」「次作にいまは注目したい。その繊細さの中に多少の危惧を感じるからである。」
浅井美英子
女34歳
4 「作者は、(引用者中略)相当な才人である。」「結末の手落ちが大きい」
大西兼治
男(39歳)
3 「世故にたけた人の世間話を聞くような安易な後味であった。」
島京子
女39歳
2 「あるローカルな風味を感じさせる文体に興味があった。」
長谷川修
男39歳
7 「作者は、(引用者中略)相当な才人である。」「私は最後まで残した。」「軽さを指摘する人が多かったが、今後もこの作家はこの軽さを生かす処に道があると思う。」
小笠原忠
男60歳
3 「素直さに大人の読む少年小説を感じた。善意の小説というものを、低く評価してはなるまい。」
森万紀子
女31歳
1 「古い現実を一線超えるものがなく、」
なだいなだ
男36歳
1 「作意に、ついてゆきかねた」
渡辺淳一
男32歳
4 「新潮同人雑誌賞の時に支持した。「北の河」とほとんど同じ題材を扱っている」
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他の選考委員
瀧井孝作
石川達三
川端康成
丹羽文雄
石川淳
井上靖
中村光夫
舟橋聖一
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受賞者・作品
高井有一男33歳×各選考委員 
「北の河」
短篇 59
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
瀧井孝作
男71歳
25 「私はこれが一番よいと思った。」「読後私は何か憐れな感じがした。」「文章がもっと鋭いと申分ないが、やや説明も多い、ジカでない、紙一重の膜があった。しかし、河の中洲の母の水死体は鮮かに見えた。」
石川達三
男60歳
10 「私は積極的には推せなかったが、特に反対はしなかった。」「欠点がはっきりしている。しかし筆力もあり一種の感銘もある。何よりも作者のまじめな態度が良い。」「芥川賞は新しい文学を待望するとは言っても、奇をてらうものではないと私は思っている。」
川端康成
男66歳
9 「(引用者注:授賞が)決定したのは、少し意外であった。いかにも地味で、古風かとも思える作品である。しかし、決定の後に読みかえしてみると、地味で古風かとも思えるところに、質実で丹念な観察と描写があって、これはこれで一つのものであろうか。」「抑える作風は近ごろめずらしいのかもしれない。」
丹羽文雄
男61歳
11 「こういう小説は当選しやすい作品である。もちろん良かったから当選したのだが、こういう作者の身の構えが、審査員の気に入るということは、作品のよし悪し以外に考え直してもよいことであろうと思った。」「審査員もこういう小説を当選させておけば、無難である。いいかえると、曲がなさすぎる。」「審査員のひとりとして考えねばならないことだと思った。」
石川淳
男66歳
0  
井上靖
男58歳
9 「文章も確りしており、浮いたところや背のびしているところのないのがよかった。母の死の理由がはっきりしていないのはこの作の大きな欠点となっているが、そうした欠点を持ちながらもなお、作品のこころだけはこちらに迫って来るようなところがある。」「第一位に推したゆえんである。」
中村光夫
男54歳
15 「素朴で幼稚なところもあるような筆づかいで、小説の技術もうまいとは言いかねます。」「しかしこのややたどたどしい北国の自然の描写には、あるひたむきな感情の流れがあり、敗戦直後の暗い農村を背景に、清純な母子像を彫りあげています。」「単純すぎて、ものたりぬ点はあっても、効果をあてこんだ芸と工夫ばかり氾濫するなかで、珍しく、澄んだ心が感じられる作品です。」
舟橋聖一
男61歳
11 「哀愁ある佳品である。」「もっとも半分以上はフィクションだろうから、いっそ息子の年齢を十八位にすれば、もっと背景や周囲が鮮明になり、母との心理も生々しくなって、ちょっとした傑作が生れたかも知れない。」
永井龍男
男61歳
7 「私は最後まで残した。」「(引用者注:「死化粧」と)ほとんど同じ題材を扱っているが、(引用者中略・注:「北の河」の方が)整った文体と抒情味が行き渡っているので、それがより多く好意を持たれる結果になったようだ。」「次作にいまは注目したい。その繊細さの中に多少の危惧を感じるからである。」
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他の候補作
浅井美英子
「阿修羅王」
大西兼治
「お迎え待ち」
島京子
「渇不飲盗泉水」
長谷川修
「孤島の生活」
小笠原忠
「鳩の橋」
森万紀子
「距離」
なだいなだ
「童話」
渡辺淳一
「死化粧」
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候補者・作品
浅井美英子女34歳×各選考委員 
「阿修羅王」
短篇 97
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
瀧井孝作
男71歳
2 「選評も省略する。」
石川達三
男60歳
6 「いささか乱暴な荒っぽい作品である。」「はじめは誰しも細密な心づかいを以て作品を構成して行かなくてはならない。この作者はその意味で、自分の創作態度を反省する必要がありはしないかと思う。」
川端康成
男66歳
0  
丹羽文雄
男61歳
0  
石川淳
男66歳
0  
井上靖
男58歳
0  
中村光夫
男54歳
0  
舟橋聖一
男61歳
0  
永井龍男
男61歳
4 「作者は、(引用者中略)相当な才人である。」「結末の手落ちが大きい」
          - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
他の候補作
高井有一
「北の河」
大西兼治
「お迎え待ち」
島京子
「渇不飲盗泉水」
長谷川修
「孤島の生活」
小笠原忠
「鳩の橋」
森万紀子
「距離」
なだいなだ
「童話」
渡辺淳一
「死化粧」
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候補者・作品
大西兼治男(39歳)×各選考委員 
「お迎え待ち」
短篇 123
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
瀧井孝作
男71歳
2 「選評も省略する。」
石川達三
男60歳
5 「いささか評価に苦しんだが、このままでは感銘も感動もない。死刑囚の群像を意外な明るさと淡々とした描写で書いているのが、作者の意図であったろうけれど、一番主要な点を故意に避けてしまったように思われて物足りない。」
川端康成
男66歳
0  
丹羽文雄
男61歳
0  
石川淳
男66歳
0  
井上靖
男58歳
0  
中村光夫
男54歳
0  
舟橋聖一
男61歳
4 「どうもどこかで一度読んだもののような気がしてならなかった。」「材料に異色があり、興味的だが、難点もある。」
永井龍男
男61歳
3 「世故にたけた人の世間話を聞くような安易な後味であった。」
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他の候補作
高井有一
「北の河」
浅井美英子
「阿修羅王」
島京子
「渇不飲盗泉水」
長谷川修
「孤島の生活」
小笠原忠
「鳩の橋」
森万紀子
「距離」
なだいなだ
「童話」
渡辺淳一
「死化粧」
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候補者・作品
島京子女39歳×各選考委員 
「渇不飲盗泉水」
短篇 81
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
瀧井孝作
男71歳
2 「選評も省略する。」
石川達三
男60歳
0  
川端康成
男66歳
0  
丹羽文雄
男61歳
0  
石川淳
男66歳
0  
井上靖
男58歳
0  
中村光夫
男54歳
0  
舟橋聖一
男61歳
0  
永井龍男
男61歳
2 「あるローカルな風味を感じさせる文体に興味があった。」
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他の候補作
高井有一
「北の河」
浅井美英子
「阿修羅王」
大西兼治
「お迎え待ち」
長谷川修
「孤島の生活」
小笠原忠
「鳩の橋」
森万紀子
「距離」
なだいなだ
「童話」
渡辺淳一
「死化粧」
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候補者・作品
長谷川修男39歳×各選考委員 
「孤島の生活」
短篇 95
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
瀧井孝作
男71歳
5 「筆がいささか冗漫、野放図な明るさが新味で、読ませるが、考えさせられる何かはないようだ。」
石川達三
男60歳
4 「最後まで残ったかたちになったが、私はこの作品は採らない。文明社会から逸脱しようとする願いは誰にも有るが、その願望はこの程度の浅い幻想では共感を呼ばない。」
川端康成
男66歳
2 「明るい楽しみであろうが、物足りないと言うべきか。」
丹羽文雄
男61歳
7 「奔放な、野放図なくらいの態度に私は心をうたれた。これを当選作として敢えて推したが、私自身の中の反撥心がそうさせたものであった。この小説には、夢がある。」「(引用者注:日本の文学は)絶望や虚無はお好きだが、人間が生きていく上には、もっと他の要素も大切であることが、この小説で教えられた。」
石川淳
男66歳
0  
井上靖
男58歳
3 「自由でのびのびした筆はいいが、この前の兎を染める作品の方がこの作者の才気が自然に出ていたと思う。」
中村光夫
男54歳
3 「個性のはっきりした作品」「奔放な才気は、将来を期待させます。」
舟橋聖一
男61歳
10 「前々回の「真赤な兎」のほうがすぐれている。」「冒険小説風の構想は面白いが、(引用者中略)通俗的な譬喩の表現が時々出てくるのには、閉口した。作者はそれをリアルのつもりでいるのか、それともロマンチックのつもりでいるのか。が、それはそのどちらでもなく、只うすぎたない。」
永井龍男
男61歳
7 「作者は、(引用者中略)相当な才人である。」「私は最後まで残した。」「軽さを指摘する人が多かったが、今後もこの作家はこの軽さを生かす処に道があると思う。」
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他の候補作
高井有一
「北の河」
浅井美英子
「阿修羅王」
大西兼治
「お迎え待ち」
島京子
「渇不飲盗泉水」
小笠原忠
「鳩の橋」
森万紀子
「距離」
なだいなだ
「童話」
渡辺淳一
「死化粧」
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候補者・作品
小笠原忠男60歳×各選考委員 
「鳩の橋」
短篇 95
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
瀧井孝作
男71歳
4 「先生の風格に依る内容はあるが、作品として、筆は平凡、少し古い感じもした。」
石川達三
男60歳
4 「會津八一という実名を取り除いたら、作品の骨格がみな崩れてしまうように思われる。体験と実在の人物とに頼り過ぎているのだ。」
川端康成
男66歳
0  
丹羽文雄
男61歳
5 「この手放しの善意の文学から私たちはあまりに顔をそむけすぎてきた。」「小説としては拙いが、私はこの小説で心の上の澱が拭い去られたような感銘をうけた。」
石川淳
男66歳
0  
井上靖
男58歳
3 「好感をもって読んだ。善意が手ばなしで出ている点が長所とも、欠点ともなっていた。」
中村光夫
男54歳
3 「個性のはっきりした作品」
舟橋聖一
男61歳
0  
永井龍男
男61歳
3 「素直さに大人の読む少年小説を感じた。善意の小説というものを、低く評価してはなるまい。」
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他の候補作
高井有一
「北の河」
浅井美英子
「阿修羅王」
大西兼治
「お迎え待ち」
島京子
「渇不飲盗泉水」
長谷川修
「孤島の生活」
森万紀子
「距離」
なだいなだ
「童話」
渡辺淳一
「死化粧」
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候補者・作品
森万紀子女31歳×各選考委員 
「距離」
短篇 60
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
瀧井孝作
男71歳
2 「選評も省略する。」
石川達三
男60歳
0  
川端康成
男66歳
0  
丹羽文雄
男61歳
0  
石川淳
男66歳
0  
井上靖
男58歳
0  
中村光夫
男54歳
0  
舟橋聖一
男61歳
6 「「単独者」ほどには惹かれなかった。行文の省略も、うまいのか幼稚なのか、わかりにくいところが出てきた。」
永井龍男
男61歳
1 「古い現実を一線超えるものがなく、」
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他の候補作
高井有一
「北の河」
浅井美英子
「阿修羅王」
大西兼治
「お迎え待ち」
島京子
「渇不飲盗泉水」
長谷川修
「孤島の生活」
小笠原忠
「鳩の橋」
なだいなだ
「童話」
渡辺淳一
「死化粧」
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候補者・作品
なだいなだ男36歳×各選考委員 
「童話」
短篇 121
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
瀧井孝作
男71歳
5 「童話のような筆で、少し脳タリンの少年巨人兵の姿はよくわかるが……。童話のような筆は、作者が逃げたか、揶揄か、少しものたりなかった。」
石川達三
男60歳
4 「主題が良いし量感もあり、技巧的にはいかにも手馴れているが、正面を避けて側面から書いているのが私には大きな不満だった。この主題を(童話)という形で処理しようとする作者の態度に疑問がある。」
川端康成
男66歳
10 「一票を投じておいた」「すでに特色ある才能を認められている人である。」「ところどころの自然風景の短い描写などに、すぐれたものが見える。作者はこのような野性素朴の巨人に、寓意を托して「童話」と題したのかもしれないが、それは別としても、私はおもしろく読んだ。」
丹羽文雄
男61歳
0  
石川淳
男66歳
0  
井上靖
男58歳
10 「登場人物もそれぞれうまく書いており、手慣れた危げのない作風で、「北の河」と一二を争うものと思っていたが、意外に支持者は少かった。」「作者が主題から身を引いているところがこの作の力を弱めていることは事実であろう。」
中村光夫
男54歳
2 「個性のはっきりした作品」
舟橋聖一
男61歳
4 「不満だ。何回となく銓衡圏内にはいり、次第に力量を増している作家だが、推しにくいものが内在する。」
永井龍男
男61歳
1 「作意に、ついてゆきかねた」
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他の候補作
高井有一
「北の河」
浅井美英子
「阿修羅王」
大西兼治
「お迎え待ち」
島京子
「渇不飲盗泉水」
長谷川修
「孤島の生活」
小笠原忠
「鳩の橋」
森万紀子
「距離」
渡辺淳一
「死化粧」
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候補者・作品
渡辺淳一男32歳×各選考委員 
「死化粧」
短篇 56
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
瀧井孝作
男71歳
4 「手術と、葬式と、テーマは二つに割れた作のように見えた。」
石川達三
男60歳
5 「母の病気を描き母その人を描き忘れている。従って、母は病気だけが生きていて、人格として生きて居ない。」
川端康成
男66歳
4 「刺戟の強い作品であった。」「脳の手術など詳細に書き過ぎのようであるし、全体に刺戟を鎮めて書かれてあれば、落ちついて訴える作品になっただろうと惜しまれる。」
丹羽文雄
男61歳
0  
石川淳
男66歳
0  
井上靖
男58歳
7 「特にいい作品とは言えないが、一人の医師として、他の肉親の者とは違った眼で母の死を見ている主人公をそつなく書いている。」「一応の佳作と言っていいと思う。」
中村光夫
男54歳
2 「個性のはっきりした作品」
舟橋聖一
男61歳
12 「面白かった。」「この医者が、手術の疲労から咽喉を痛め、扁桃腺炎で三十九度の熱を出すまで、自分の病気を放っておくのは戴けない。そんな非科学的な熱を出さずにすむ方法は、いくらでもある。然し作者は紺屋の白袴を自負している気なのだろう。」
永井龍男
男61歳
4 「新潮同人雑誌賞の時に支持した。「北の河」とほとんど同じ題材を扱っている」
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他の候補作
高井有一
「北の河」
浅井美英子
「阿修羅王」
大西兼治
「お迎え待ち」
島京子
「渇不飲盗泉水」
長谷川修
「孤島の生活」
小笠原忠
「鳩の橋」
森万紀子
「距離」
なだいなだ
「童話」
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