芥川賞のすべて・のようなもの
選評の概要
3435.
3637383940.
4142434445.
4647484950.
5152535455.
5657585960.
6162636465.
6667686970.
7172737475.
7677787980.
8182838485.
8687888990.
9192939495.
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Last Update[H27]2015/11/3

中村光夫
Nakamura Mitsuo
生没年月日【注】 明治44年/1911年2月5日~昭和63年/1988年7月12日
在任期間 第34回~第95回(通算31年・62回)
在任年齢 44歳10ヶ月~75歳4ヶ月
経歴 本名=木庭一郎。東京市下谷区生まれ。東京帝国大学文学部仏文学科卒。在学中より文芸評論活動を始める。昭和13年/1938年~昭和14年/1939年にパリ大学で学ぶ。文芸評論家として活動する一方で、昭和32年/1957年からは戯曲を、昭和38年/1963年からは小説も発表し始める。
受賞歴・候補歴
  • 第4回文學界賞(昭和11年/1936年)「二葉亭四迷論」《評論》
  • 第1回池谷信三郎賞(昭和11年/1936年)「二葉亭四迷論」《評論》
  • |候補| 第4回毎日出版文化賞(昭和25年/1950年)『風俗小説論』《評論》
  • 第3回読売文学賞[文芸評論賞](昭和26年/1951年)諸作品《評論》
  • |候補| 第1回新潮社文学賞(昭和29年/1954年)『志賀直哉論』《評論》
  • |候補| 第9回読売文学賞[戯曲賞](昭和32年/1957年)「人と狼」《戯曲》
  • |候補| 第5回新潮社文学賞(昭和33年/1958年)『二葉亭四迷伝』《伝記》
  • 第10回読売文学賞[評論・伝記賞](昭和33年/1958年)『二葉亭四迷伝』《伝記》
  • |候補| 第10回読売文学賞[戯曲賞](昭和33年/1958年)『人と狼』《戯曲》
  • 第7回岸田演劇賞(昭和35年/1960年)「パリ繁昌記」《戯曲》
  • |候補| 第15回読売文学賞[小説賞](昭和38年/1963年)『『わが性の白書』』
  • 第16回読売文学賞[戯曲賞](昭和39年/1964年)「汽笛一聲」《戯曲》
  • 第23回日本藝術院賞[文芸](昭和41年/1966年度)"評論家としての多年の業績"
  • |候補| 第3回谷崎潤一郎賞(昭和42年/1967年)『贋の偶像』
  • |候補| 第14回新潮社文学賞(昭和42年/1967年)『贋の偶像』
  • 第20回野間文芸賞(昭和42年/1967年)『贋の偶像』
  • |候補| 第22回読売文学賞[小説賞](昭和45年/1970年)『虚実』
  • |候補| 第9回谷崎潤一郎賞(昭和48年/1973年)『平和の死』
  • |候補| 第10回谷崎潤一郎賞(昭和49年/1974年)『ある女』
  • |候補| 第8回川端康成文学賞(昭和56年/1981年)「形見」
  • 文化功労者(昭和57年/1982年)
個人全集 『中村光夫全集』全16巻(昭和46年/1971年11月~昭和48年/1973年7月・筑摩書房刊)
備考
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下記の選評の概要には、評価として◎か○をつけたもの(見方・注意点を参照)、または受賞作に対するもののみ抜粋しました。さらにくわしい情報は、各回の「この回の全概要」をクリックしてご覧ください。

芥川賞 34 昭和30年/1955年下半期   一覧へ
選評の概要 石原君、しっかり 総行数39 (1行=26字)
選考委員 中村光夫 男44歳
候補 評価 行数 評言
男23歳
24 「未成品といえば一番ひどい未成品ですが、未完成がそのまま未知の生命力の激しさを感じさせる点で異彩を放っています。」「常識から云えば、この文脈もところどころ怪しい。「丁度」を「調度」と書くような学生に芥川賞をあたえることは、少なくも考えものでしょう。」「石原氏への授賞に賛成しながら、僕はなにかとりかえしのつかぬむごいことをしてしまったような、うしろめたさを一瞬感じました。」「しかしこういうむごさをそそるものがたしかにこの小説にはあります。おそらくそれが石原氏の才能でしょう。」
選評出典:『芥川賞全集 第五巻』昭和57年/1982年6月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和31年/1956年3月号)
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芥川賞 35 昭和31年/1956年上半期   一覧へ
選評の概要 「夏の嵐」を推す 総行数45 (1行=26字)
選考委員 中村光夫 男45歳
候補 評価 行数 評言
深井迪子
女24歳
16 「既成の小説の規格を破って、何か自分の云いたいことを云おうとする野心に燃えています。そしてその企図は必ずしも成功していないにせよ、作者が何を書きたかったかということは、はっきり伝わってくるし、現代の青年男女がかつてない新しい面から描かれています。」「作者の観察は未熟で一面的であり、近親相姦の設定など不必要と思われますが、とにかく若い精神が時代の無道徳にどうたえているかという大問題が正面から提起されています。」
男36歳
5 「多年の努力がようやく描写の技巧で規格に達する作品を生んだというだけで、型にはまった空疎な物語という印象を受けました。」「一番小説臭すぎて詰らない小説と思っていたので、この授賞は僕には意外でした。」
  「(引用者注:候補作は)あまり不出来なものはない代りに際立った秀作も見当りませんでした。」
選評出典:『芥川賞全集 第五巻』昭和57年/1982年6月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和31年/1956年9月号)
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芥川賞 36 昭和31年/1956年下半期   一覧へ
選評の概要 受賞作なし 総行数36 (1行=26字)
選考委員 中村光夫 男45歳
候補 評価 行数 評言
  「軍隊と戦争を扱った作品が多いのが、まず目立ちました。戦後十年の現在が、我国でも本当の戦争文学の出る時期で、これらの作品はその前触れかも知れません。」「僕も授賞作なしに賛成しましたが、「なし」にきめるのはなにか寂しい気がして、がっかりします。」
選評出典:『芥川賞全集 第五巻』昭和57年/1982年6月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和32年/1957年3月号)
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芥川賞 37 昭和32年/1957年上半期   一覧へ
選評の概要 疑問と期待 総行数26 (1行=26字)
選考委員 中村光夫 男46歳
候補 評価 行数 評言
男32歳
17 「候補作のなかで、菊村氏が抜群の才を感じさせるのは事実ですが、氏の作風にはかなり疑問の点があります。「不法所持」は力作であるだけに、物語をつくりあげる才能の逞しさとともに、欠点もはっきりでています。(引用者中略)普通の犯罪小説以上のものを狙った作者の意図は納得できても、安手なつくりものという印象を拭いきれません。」「「硫黄島」はそれにくらべると、力が弱い代りによくまとまっていて、厭味もないので、授賞作としてはこの方が適当と思いました。」
選評出典:『芥川賞全集 第五巻』昭和57年/1982年6月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和32年/1957年9月号)
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芥川賞 38 昭和32年/1957年下半期   一覧へ
選評の概要 粘りのある腰 総行数27 (1行=26字)
選考委員 中村光夫 男46歳
候補 評価 行数 評言
男27歳
11 「予期通り、開高氏か大江氏かということになりましたが、決定には骨が折れました。」「近ごろめずらしい骨の太い、構成力もしっかりした新人で、「パニック」などには、島木健作を思わせるところがあり、派手ではなくとも将来に期待できる人と思われます」「「裸の王様」は、着想の新しさ、粘りのある腰、底にある批評精神など、作者の資性の長所がはっきりでた小説であり、欠点はあっても、既成作家の作品に充分伍し得る出来栄え」「作品としては(引用者注:大江健三郎より)「裸の王様」をとる、というのが僕の意見です。」
選評出典:『芥川賞全集 第五巻』昭和57年/1982年6月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和33年/1958年3月号)
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芥川賞 39 昭和33年/1958年上半期   一覧へ
選評の概要 無名の新人発見を 総行数30 (1行=26字)
選考委員 中村光夫 男47歳
候補 評価 行数 評言
男23歳
17 「「飼育」が予選通過作品のなかで抜群の出来であるのは、ほとんど誰も異存のなかった」「僕は芥川賞はすでに名をなした新人顕彰より、むしろ無名の新人発見を使命とすべきだという考えから、氏の受賞には反対でした。」「しかし授賞ときまれば、それもまたよいという気がするのは、大江氏の才能の性格によるのでしょうか。」
  「今回は授賞作品なしというのが僕の意見でした。」
選評出典:『芥川賞全集 第五巻』昭和57年/1982年6月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和33年/1958年9月号)
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芥川賞 40 昭和33年/1958年下半期   一覧へ
選評の概要 不作 総行数30 (1行=26字)
選考委員 中村光夫 男47歳
候補 評価 行数 評言
  「今度は候補作の数が多いわりに、よいものがなく、「なし」はまず妥当な帰結でした。」「千幾篇のなかから選んだのがこれでは不作というほかありません。」
選評出典:『芥川賞全集 第五巻』昭和57年/1982年6月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和34年/1959年3月号)
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芥川賞 41 昭和34年/1959年上半期   一覧へ
選評の概要 「山塔」の必然性 総行数30 (1行=26字)
選考委員 中村光夫 男48歳
候補 評価 行数 評言
男49歳
15 「地味でわがままな作品ですが、とりつきにくい代りに、そこに展開される世界は、はっきり作者のものです。」「人間がいるとか、人生が感じられるとかいう評語はそこからでるわけです。」「小説として欠点はいろいろあっても、作者は小説を書かずにいられぬ人であり、「山塔」はその必然性を充分感じさせます。問題は、このモチイフの必然性だけが裸で歩いているような作風にどう肉をつけて行くかですが、受賞がこれを促す転機になればと思います。」
選評出典:『芥川賞全集 第六巻』昭和57年/1982年7月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和34年/1959年9月号)
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芥川賞 42 昭和34年/1959年下半期   一覧へ
選評の概要 収穫なし 総行数32 (1行=26字)
選考委員 中村光夫 男48歳
候補 評価 行数 評言
  「席上で、いくらか問題になった作品は三篇だけでしたが、そのどれもが受賞に値しないというのが、大多数の一致した意見で、実に寂しい会でした。」
選評出典:『芥川賞全集 第六巻』昭和57年/1982年7月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和35年/1960年3月号)
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芥川賞 43 昭和35年/1960年上半期   一覧へ
選評の概要 群像を描く才能 総行数28 (1行=26字)
選考委員 中村光夫 男49歳
候補 評価 行数 評言
男33歳
7 「一番たしかな才能を感じさせる力作でした。」「前々回の「狂詩」あたりとくらべると、別人の感がありますが、何か調子が低く、無駄が多いのが気になります。しかし現代の大きな問題を背景に、たっぷりした筆力で群像を描いて行く才能は、その欠点を補うに充分でしょう。」
  「今度はめずらしく候補作品の粒がそろっていました。」
選評出典:『芥川賞全集 第六巻』昭和57年/1982年7月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和35年/1960年9月号)
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芥川賞 44 昭和35年/1960年下半期   一覧へ
選評の概要 できた作品 総行数33 (1行=26字)
選考委員 中村光夫 男49歳
候補 評価 行数 評言
男29歳
15 「一口に云えばいかにも古めかしいので、童話のように幸福な恋愛と結婚を物語りながら、恋愛が一方的に前提とされているだけで、少しも描かれていないという気がします。」「ともかく一応できた作品であり、作者の性格の或る強さが感じられることはたしかです。」
  「候補作の粒がそろっているわりに、これといって当選作に推したいものはありませんでした。」「今度の審査会は、候補作の水準が丁度そうなっていたせいか、各自の文学観の違いが、試験紙の反応のようにはっきりでて、いい勉強となりました。」
選評出典:『芥川賞全集 第六巻』昭和57年/1982年7月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和36年/1961年3月号)
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芥川賞 45 昭和36年/1961年上半期   一覧へ
選評の概要 優劣なし 総行数30 (1行=26字)
選考委員 中村光夫 男50歳
候補 評価 行数 評言
山川方夫
男31歳
9 「なかで際立って技巧的にすぐれ、題材も作者に切実なものと思われるので、弱いところはあっても当選に値するのではないかと思いましたが、席上反対論は意外に多く、それを撥ねかえせない弱点が、この作品にあることは認めないわけに行きません。」「しかしそれを認めても、これを越えて当選させたい作品は他に見当らないというのが僕の気持でした。」
  「予選通過作が七篇ともあまり優劣のない出来で、それだけにこれひとつというのがなく、結局、当選作なしときまりました。」
選評出典:『芥川賞全集 第六巻』昭和57年/1982年7月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和36年/1961年9月号)
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芥川賞 46 昭和36年/1961年下半期   一覧へ
選評の概要 背丈がたりない 総行数28 (1行=26字)
選考委員 中村光夫 男50歳
候補 評価 行数 評言
男27歳
10 「巨鯨と人間の闘いという、古い文学的テーマを奔放な若々しい筆致で仕上げたところに、人真似でない熱情と個性が感じられ、なにかをする人であろうという期待はよせられます。」「文章そのものに、絵で言うと、絵具の質の悪いようなところがあるのが、一番気がかりです。しかしいわゆる芸術家でないところにこの人の新しさがあるのかも知れません。」
  「今回は予選を通過した作家に新顔が少なく、二度目三度目の人が過半をしめたのが特色でした。」「そのせいか出来栄えが平均しているわりに、新鮮な傑出した作品がなく、候補作としては全部文句なくみとめられても、積極的に当選させたいものは、見当りませんでした。」
選評出典:『芥川賞全集 第六巻』昭和57年/1982年7月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和37年/1962年3月号)
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芥川賞 47 昭和37年/1962年上半期   一覧へ
選評の概要 書きたいものを持つこと 総行数29 (1行=26字)
選考委員 中村光夫 男51歳
候補 評価 行数 評言
男34歳
9 「作者が、ひとり合点を楽しんでいる小説で、そのいい気なところに反撥する人がいるのは当然だし、技術的に未熟という評もあたっています。しかし作者が何か書きたいものを持ち、それがはっきりしない形でも、とにかくでていることは確かです。」「新人への授賞は、折紙をつける場合も、賭けする気持でする場合もあり、それでよいのだと思います。」
  「今度も同じような出来栄えの作品が多くて、票がわれるのではないかと思って出席しました。」
選評出典:『芥川賞全集 第六巻』昭和57年/1982年7月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和37年/1962年9月号)
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芥川賞 48 昭和37年/1962年下半期   一覧へ
選評の概要 当選作なし 総行数29 (1行=26字)
選考委員 中村光夫 男51歳
候補 評価 行数 評言
  「どれも予選を通った理由はわかっても、当選作とするには力が弱い感じです。」
選評出典:『芥川賞全集 第六巻』昭和57年/1982年7月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和38年/1963年3月号)
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芥川賞 49 昭和38年/1963年上半期   一覧へ
選評の概要 二作より一作 総行数31 (1行=26字)
選考委員 中村光夫 男52歳
候補 評価 行数 評言
男48歳
8 「少年の対人感情があまり一本調子で、しかも不自然なところがあり、そのために読後の印象が不純になります。しかしいわゆる文化人のおかしな生態をかなり生き生き描きだした点に、ある新しさがあることはたしかで、候補作のうちでは、これを第一に推しました。しかし文句のない当選作とは云えません。」
女37歳
4 「氏にしては尋常すぎる作品で、大きな傷もない代りにやや冗長で力の乏しいきらいがあります。しかし作品の完成度においては他をぬいているので、これが受賞したのも当然でしょう。」
  「一作でよいから、もっと積極的に推せる作品がほしいと、いつもながら思います。」
選評出典:『芥川賞全集 第六巻』昭和57年/1982年7月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和38年/1963年9月号)
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芥川賞 50 昭和38年/1963年下半期   一覧へ
選評の概要 「感傷旅行」を推す 総行数36 (1行=26字)
選考委員 中村光夫 男52歳
候補 評価 行数 評言
女35歳
9 「軽薄な世界を軽薄な筆致で描ききった作品で、そこに意外な効果が生れていますが、その独創性が意識されていない、というより意識したらこわれてしまうような性質のものであることが問題です。」「この作品にとは云えなくても、少なくも作者のなかに文学があるのはたしかです。」
選評出典:『芥川賞全集 第六巻』昭和57年/1982年7月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和39年/1964年3月号)
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芥川賞 51 昭和39年/1964年上半期   一覧へ
選評の概要 若さの唄 総行数31 (1行=26字)
選考委員 中村光夫 男53歳
候補 評価 行数 評言
男29歳
15 「長さの点から、候補作とみとめるかどうかについて、論議が交されましたが、それがきまると、授賞作もこれに自然落付いてしまったのは、作品の比重から云って当然でしょう。」「小説としての欠点はいくらでもあげられます。」「しかしその代り、この小説の根底には、ほとんど生臭いほどみずみずしい抒情の欲求があり、読みおわると稚拙な表現を通じて、それがはっきり伝わってきます。作者の人生にたいする姿勢の問題です。」
選評出典:『芥川賞全集 第七巻』昭和57年/1982年8月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和39年/1964年9月号)
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芥川賞 52 昭和39年/1964年下半期   一覧へ
選評の概要 もう一押し 総行数34 (1行=26字)
選考委員 中村光夫 男53歳
候補 評価 行数 評言
選評出典:『芥川賞全集 第七巻』昭和57年/1982年8月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和40年/1965年3月号)
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芥川賞 53 昭和40年/1965年上半期   一覧へ
選評の概要 「玩具」を推す 総行数33 (1行=26字)
選考委員 中村光夫 男54歳
候補 評価 行数 評言
女37歳
12 「(引用者注:最後に残った「玩具」「剣ヶ崎」「砂の関係」のうち)一篇を授賞作に推すのは、どれも一長一短であるだけに骨の折れる仕事でした。」「扱われた世界が狭く、盆栽のような気がしますが、作品の底をながれる感情のこまやかさと明晰な理智は珍重すべき」「将来の可能性はともかく、現在眼の前にある作品について判断すれば、(引用者中略)一番完成していると思われました。」
選評出典:『芥川賞全集 第七巻』昭和57年/1982年8月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和40年/1965年9月号)
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芥川賞 54 昭和40年/1965年下半期   一覧へ
選評の概要 新人の意味 総行数32 (1行=26字)
選考委員 中村光夫 男54歳
候補 評価 行数 評言
男33歳
15 「素朴で幼稚なところもあるような筆づかいで、小説の技術もうまいとは言いかねます。」「しかしこのややたどたどしい北国の自然の描写には、あるひたむきな感情の流れがあり、敗戦直後の暗い農村を背景に、清純な母子像を彫りあげています。」「単純すぎて、ものたりぬ点はあっても、効果をあてこんだ芸と工夫ばかり氾濫するなかで、珍しく、澄んだ心が感じられる作品です。」
  「今度は九篇ともあまり差のない出来で、はっきり際立った作品は見当りません。」
選評出典:『芥川賞全集 第七巻』昭和57年/1982年8月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和41年/1966年3月号)
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芥川賞 55 昭和41年/1966年上半期   一覧へ
選評の概要 マイナスの面 総行数35 (1行=26字)
選考委員 中村光夫 男55歳
候補 評価 行数 評言
  「結局、今回は授賞作なしとするのが、一番妥当と思われます。」
選評出典:『芥川賞全集 第七巻』昭和57年/1982年8月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和41年/1966年9月号)
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芥川賞 56 昭和41年/1966年下半期   一覧へ
選評の概要 若い才能 総行数32 (1行=26字)
選考委員 中村光夫 男55歳
候補 評価 行数 評言
男23歳
11 「意外に早く(引用者中略)決定しました。」「どぎつい題材を扱いながら、それにもかかわらず、軽く仕上げたところが作者の人柄を感じさせますが、看守の家庭の描写に生活の匂いが欠けていて、全体が絵にかいたようなきれいごとに終っています。」「処女作にこれだけのものが書ける若い才能は、多少冒険でも買ってよいでしょう。」
宮原昭夫
男34歳
5 「女子高校生をうまく描いた作品で、彼女らの集団演技や生ぐさい反抗が、さっぱりした筆致でよく捉えられています。」「これと「夏の流れ」の二作授賞を主張しました」
選評出典:『芥川賞全集 第七巻』昭和57年/1982年8月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和42年/1967年3月号)
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芥川賞 57 昭和42年/1967年上半期   一覧へ
選評の概要 二つの試作 総行数43 (1行=26字)
選考委員 中村光夫 男56歳
候補 評価 行数 評言
男41歳
15 「(引用者注:「にぎやかな味で」と共に)重味のある材料をこなして、作者の手腕は感じられますが、それぞれ不満な点があり、当選作にはならないというのが僕の意見です。」「主人公の意識と現実とのあいだのドラマが、作品の中心であるべき筈なのに、極めて不充分にしか見られず、主人公の反省や省察が読者として素直について行けない底の浅さを感じさせます。」
選評出典:『芥川賞全集 第七巻』昭和57年/1982年8月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和42年/1967年9月号)
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芥川賞 58 昭和42年/1967年下半期   一覧へ
選評の概要 精神の幅 総行数30 (1行=26字)
選考委員 中村光夫 男56歳
候補 評価 行数 評言
男34歳
15 「鈍い鑿をつかって彫りあげたような小説で、はじめはその鈍さが気になりますが、終りに近づくにつれて、ひとりの職業軍人とその親族の生態がくっきり浮きあがってきて、鈍さが凡庸の同義語でないことがわかります。」「小説としてさまざまの欠点はありますが、在来のリアリズムの常識を破った作者のしずかな姿勢は、強い個性の現われと見てよいでしょう。」
選評出典:『芥川賞全集 第七巻』昭和57年/1982年8月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和43年/1968年3月号)
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芥川賞 59 昭和43年/1968年上半期   一覧へ
選評の概要 一位「三匹の蟹」 総行数33 (1行=26字)
選考委員 中村光夫 男57歳
候補 評価 行数 評言
女37歳
14 「やはり一番すぐれています。作中人物がみな利口ぶって爪立ちしているのに、作者が半分しか気付いていないのが欠点ですが、女主人公のぎすぎすした不安に現代生活の虚しさが自ずからでています。」「作者の心を正面切て読者になげつけている小説は、(引用者注:候補作中)「三匹の蟹」だけです。」
男42歳
11 「(引用者注:「三匹の蟹」への授賞に異議が多かった場合)「年の残り」を推します。」「巧みな語り口のわりに、読後にうける感銘はうすく、老人小説がはやれば、すぐこれだけのものを書く作者の才気にはある危険を感じますが、この作品の出来はわるくないと思います。」
選評出典:『芥川賞全集 第八巻』昭和57年/1982年9月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和43年/1968年9月号)
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芥川賞 60 昭和43年/1968年下半期   一覧へ
選評の概要 「客」その他 総行数28 (1行=26字)
選考委員 中村光夫 男57歳
候補 評価 行数 評言
  「今度は同じような出来の作品が多く、とくに授賞の対象にしたいものは見当りませんでした。」
選評出典:『芥川賞全集 第八巻』昭和57年/1982年9月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和44年/1969年3月号)
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芥川賞 61 昭和44年/1969年上半期   一覧へ
選評の概要 当選作なし 総行数27 (1行=26字)
選考委員 中村光夫 男58歳
候補 評価 行数 評言
男32歳
9 「才筆には違いありませんが、僕は最後まで興味を覚えることができませんでした。」「現代をこのような形で表現しようとする企図はたしかに独創的であっても、それはこのような饒舌を読者におしつける弁明にはならないでしょう。」
男41歳
9 「達者な小説です。達者という点では全候補作のなかでずばぬけています。しかしうますぎるせいか、読後感にどこか空虚なところがあります。「それでどうしたんだ」と読者に反問されることは、小説にとって致命傷でしょう。」
  「今回は当選作なしというのが僕の意見です。」
選評出典:『芥川賞全集 第八巻』昭和57年/1982年9月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和44年/1969年9月号)
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芥川賞 62 昭和44年/1969年下半期   一覧へ
選評の概要 自信と努力 総行数30 (1行=26字)
選考委員 中村光夫 男58歳
候補 評価 行数 評言
男47歳
17 「当選したのは、まず順当であったと思います。」「決して完全な作品ではなく、むしろ欠陥の多いものです。」「しかし、ともかく、作者が自分の書きたいものをはっきり把んで、全身でこれを表現することに努めているので、この自信と努力がある快感になって読者に伝わります。」
  「今回は同じような出来の作品がいくつもあり、いわば小粒の粒ぞろいでしたが、これというものは見当りませんでした。」
選評出典:『芥川賞全集 第八巻』昭和57年/1982年9月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和45年/1970年3月号)
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芥川賞 63 昭和45年/1970年上半期   一覧へ
選評の概要 素質の独自性 総行数28 (1行=26字)
選考委員 中村光夫 男59歳
候補 評価 行数 評言
男49歳
14 「推そうとはっきり思いました。こんなことはめったにありません。」「その魅力は、ぎごちなさが、作者自身意識しない素質の独自性を感じさせるところにあります。」「平衡感覚の力技と苦いユーモアがその最も目につきやすい特色でしょう。」
女36歳
14 「ほとんど僕ひとりが反対した結果になりました。」「よみ終ってから、これ(引用者注:道具立て)が題名通り、人間の苦の象徴と見られるかというと、そうは行きません。かといって、主人公の個性的体験の世界と見るには、作者が読者の方に目を配りすぎていて、中途半端な印象をあたえます。」「要するには、意図とたくらみが勝ちすぎた失敗作という風によみました。」
選評出典:『芥川賞全集 第八巻』昭和57年/1982年9月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和45年/1970年9月号)
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芥川賞 64 昭和45年/1970年下半期   一覧へ
選評の概要 まれに見る新人 総行数26 (1行=26字)
選考委員 中村光夫 男59歳
候補 評価 行数 評言
男33歳
21 「「杳子」よりも、「妻隠」の方がすぐれていると思い、これを当選作として推すつもりでした。」「「杳子」は(引用者中略)主人公の独り合点な抒情が、そのまま作者によって肯定されているようなところが、終りになるほど露骨になります。」「「妻隠」は、(引用者中略)若夫婦の生活の不安、空しさ、甘さなどが、彼らの肉体の曖昧のように、読者の心にやわらかく浸み透ってきます。」
選評出典:『芥川賞全集 第八巻』昭和57年/1982年9月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和46年/1971年3月号)
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芥川賞 65 昭和46年/1971年上半期   一覧へ
選評の概要 もう一工夫ほしい 総行数25 (1行=26字)
選考委員 中村光夫 男60歳
候補 評価 行数 評言
  「八篇の作風はそれぞれ異っていますが、全体としてある共通の印象が残りました。」「相当な技巧をこらして、めいめい才を競っているが、なぜこの小説を書くのか、書いたことで何を得ているのかという、一番初歩の疑問に答える力がないことで、新人としての魅力の乏しさとも云えましょう。」
選評出典:『芥川賞全集 第八巻』昭和57年/1982年9月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和46年/1971年9月号)
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芥川賞 66 昭和46年/1971年下半期   一覧へ
選評の概要 才能の使い方に遊び 総行数29 (1行=26字)
選考委員 中村光夫 男60歳
候補 評価 行数 評言
男36歳
10 「欠点の多い作品と思われました。」「登場人物は鮮やかに描かれていますが、鮮やかすぎる作りものに似た印象をあたえるのは、氏の筆がひとのつけた条痕を行くスキーのように走りすぎるからでしょう。」「その結果、表現のたどたどしさが作者の精神の模索を象徴したような氏のこれまでの魅力が消えて、できすぎた失敗作ともいうべきものになっています。」
男33歳
7 「欠点の多い作品と思われました。」「いくぶんわざとらしい文体で、少年の感受性を造型することに一応成功していますが、そこに描きだされる「オキナワ」は型にはまった沖縄で、そのためか、結末の主人公の脱出の意欲もただ話を面白くだけという印象しかあたえられません。」
  「今回はどれも才人の作が集った代りに、深刻の表情をしながら才能の使いかたに、遊びのあるものが多く、作者の力倆は感じられても、まとまった感銘は与えられません。」
選評出典:『芥川賞全集 第九巻』昭和57年/1982年10月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和47年/1972年3月号)
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芥川賞 67 昭和47年/1972年上半期   一覧へ
選評の概要 総行数30 (1行=26字)
選考委員 中村光夫 男61歳
候補 評価 行数 評言
男39歳
17 「一番非のうちどころのない作品でした。」「しかしあまりそつ(原文傍点)がなさすぎて、モチイフの薄弱さを疑わせるのが、この小説の弱点で、審査員各自が胸底に持っていたこの不満が決定間際に表面化したために、第一回の投票で圧倒的な多数を得たにかかわらず、この作品の単独授賞は容易に決定しなかったのです。」
男37歳
15 「性格が対蹠的で、互に相補う観のあるこの二つの小説(引用者注:「誰かが触った」と「いつか汽笛を鳴らして」)の当選は、自然でした。」「しかし僕個人としては、畑山氏の作品はそれほど買えません。」「「ぼくの原点」が、そのまま作者によって肯定されているのが問題です。作者の資性と思われるユーモアとはにかみが生きてこないのはそのためでしょう。」
選評出典:『芥川賞全集 第九巻』昭和57年/1982年10月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和47年/1972年9月号)
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芥川賞 68 昭和47年/1972年下半期   一覧へ
選評の概要 欠点がそのまま魅力 総行数26 (1行=26字)
選考委員 中村光夫 男61歳
候補 評価 行数 評言
女43歳
11 「推しました。素人くさい粗雑さが構成にも文章にも指摘され、リアリズムの観点から見れば、破綻だらけといってよいのですが、結局読ます力を持ち、最後まで読めば、強い感銘をうけます。」「こういう混沌とした強さは、とくに新人に望ましいのですが、近ごろはこれと反対の傾向が幅をきかせています。」「ともかく、欠点がそのまま魅力になったような、この一作は珍重すべきでしょう。」
女36歳
7 「均衡のとれた力作であり、危な気のない出来です。」「しかしこの自然で素直な筆づかいが次第に単調に陥るのは、そこに描かれた生活が変化に乏しいからだけではないので、作者の成長のために、ここにできかけている枠を壊す必要があるのではないかと思います。」
選評出典:『芥川賞全集 第九巻』昭和57年/1982年10月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和48年/1973年3月号)
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芥川賞 69 昭和48年/1973年上半期   一覧へ
選評の概要 思いつきと物語 総行数27 (1行=26字)
選考委員 中村光夫 男62歳
候補 評価 行数 評言
男38歳
7 「読みよい点で群をぬいています。つまり、テーマと手法のバランスがよくとれた作品なのですが、それは新味の欠けた感じをあたえることにもなります。」
  「今度の予選通過作品には、一頃とちがってまとまったテーマがはっきり感じられるものが多く、同時に作者が自分の思いつきに溺れこんで冗長に陥る傾向も目立ちました。」
選評出典:『芥川賞全集 第十巻』昭和57年/1982年11月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和48年/1973年9月号)
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芥川賞 70 昭和48年/1973年下半期   一覧へ
選評の概要 抵抗できぬ魅力 総行数30 (1行=26字)
選考委員 中村光夫 男62歳
候補 評価 行数 評言
男61歳
21 「文章の気品と思想の成熟では(引用者中略)群をぬいていました。」「六十歳をこえた新人があり得るかという議論もありましたが、僕はこの点は問題はないと思います。」「ただこの作品は小説というよりむしろ散文で書かれた抒情詩の性格が強く、(引用者中略)素材に比して長すぎるし、(引用者中略)種々の欠点が指摘されます。」「これだけをとって他の八篇をすてるに忍びない気持は皆にあったので、二作当選という結果になったのも自然でした。」
日野啓三
男44歳
4 「(引用者注:「草のくるぎ」と「此岸の家」では)僕は後者(引用者注:「此岸の家」)を推しました。作品に厚味の足りない点はありますが、身近かなむずかしい題材を、これだけ鮮明に描いたのは新人として非凡の手腕です。」
男36歳
7 「前回の候補作とまったく違った筆致と作風なので、とまどいを感じました。」「この変化が、作者の内面の発展とどう結びつくのか、この作品だけでは、見当がつきません。」
選評出典:『芥川賞全集 第十巻』昭和57年/1982年11月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和49年/1974年3月号)
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芥川賞 71 昭和49年/1974年上半期   一覧へ
選評の概要 力倆は抜群 総行数21 (1行=26字)
選考委員 中村光夫 男63歳
候補 評価 行数 評言
  「今度の候補作は伯仲の出来のものが多く、粒ぞろいと云えば云えますが、その粒がどれもやや小さく、結局、当選作は見出せません。」
選評出典:『芥川賞全集 第十巻』昭和57年/1982年11月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和49年/1974年9月号)
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芥川賞 72 昭和49年/1974年下半期   一覧へ
選評の概要 対照的な二作 総行数25 (1行=26字)
選考委員 中村光夫 男63歳
候補 評価 行数 評言
男45歳
17 「一番すぐれていると思いましたが、これをすぐ当選作として推せるかというと、いろいろ疑問がのこりました。」「うまさの点では誰にもひけをとらぬ代りに、氏の作品には何か口のうますぎる人の打明け話をきかされているようなところがあって、主人公の心の動きに素直について行けません。」「ことによると氏の新しさかも知れませんが、いずれにせよ、氏の告白が文学作品として完成するのは、容易ならぬことでしょう。」
男49歳
5 「ある特異な精神力を持つ老母の死という刺戟の強い題材を、過不足ない筆致で最後まで破綻なく描ききった中篇で、「あの夕陽」と正反対の作風であることが、或る安定感をあたえ、二作授賞は妥当と思われます。」
選評出典:『芥川賞全集 第十巻』昭和57年/1982年11月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和50年/1975年3月号)
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芥川賞 73 昭和50年/1975年上半期   一覧へ
選評の概要 肉筆の味 総行数25 (1行=26字)
選考委員 中村光夫 男64歳
候補 評価 行数 評言
女44歳
16 「印象にのこりました。」「(引用者注:「青い沼」と共に)当選圏内ですが、それぞれに難もあり、取捨に迷いました。」「この作者の処女作のようですが、処女作の長所と欠点をはっきりと兼ね備えた作品です。」「技術の幼稚さに初心の執念ともいうべき力が感じられるところが、おそらく作者の無意識の才能なので、これが体験にうらづけられ、周到に蒐集され、配分された題材と相まって、読者に生の感動をあたえます。」
選評出典:『芥川賞全集 第十巻』昭和57年/1982年11月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和50年/1975年9月号)
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芥川賞 74 昭和50年/1975年下半期   一覧へ
選評の概要 独自な小説世界 総行数30 (1行=26字)
選考委員 中村光夫 男64歳
候補 評価 行数 評言
男29歳
14 「僕としては、本来なら授賞作なし、だがもし強いて選ぶなら中上氏、という考えで出席しました。」「氏はいくども候補にあがり、充分力倆をみとめられた新人ですが、今度の「岬」はそれらにくらべても出来のよい作品とは云えません。」「独自な小説世界を持つのは、ひとつの才能といえるので、これに賞を与えることは、一種の冒険ではあっても、やりがいのある冒険です。」
男44歳
8 「(引用者注:中上健次と比べて)未知数と発展の可能性をあまり含まぬように思えます。」「氏が博多を終始一貫して舞台としているのも、もしそれが、積極的決意の所産なら、やがて氏の作風に狭くとも深い味わいがでてくることが期待できます。」
  「今回は七篇の候補作の出来がほぼ平均している代りに傑出した作品もなく、審査は難航しそうに思われました。」
選評出典:『芥川賞全集 第十巻』昭和57年/1982年11月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和51年/1976年3月号)
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芥川賞 75 昭和51年/1976年上半期   一覧へ
選評の概要 無意識の独創 総行数29 (1行=26字)
選考委員 中村光夫 男65歳
候補 評価 行数 評言
男24歳
23 「他の六篇とはっきり異質の作品」「技巧的な出来栄えから見れば、他の候補作の大部分に劣るといってもよいのですが、その底に、本人にも手に負えぬ才能の汎濫が感じられ、この卑陋な素材の小説に、ほとんど爽かな読後感をあたえます。」「無意識の独創は新人の魅力であり、それに脱帽するのが選者の礼儀でしょう。」
選評出典:『芥川賞全集 第十一巻』昭和57年/1982年12月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和51年/1976年9月号)
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芥川賞 76 昭和51年/1976年下半期   一覧へ
選評の概要 「陽ざかりの道」 総行数31 (1行=26字)
選考委員 中村光夫 男65歳
候補 評価 行数 評言
  「今度の候補作は七篇とも出来栄えが平均していて、どれも相当な錬度である代りに、これという傑出した作品がなく、なかから一篇を選ぶのはむずかしく思われました。」
選評出典:『芥川賞全集 第十一巻』昭和57年/1982年12月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和52年/1977年3月号)
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芥川賞 77 昭和52年/1977年上半期   一覧へ
選評の概要 「エーゲ海に捧ぐ」を推す 総行数29 (1行=26字)
選考委員 中村光夫 男66歳
候補 評価 行数 評言
男43歳
12 「抜群の出来です。」「氏を芥川賞の対象になる「新人」と見てよいかについては、多少の疑問がありますが、その点が問題ないとすれば、これを当選作としたいと思います。」「きらびやかな、稀に見る才能には違いなくとも、それが外面的でぎらぎらしすぎること、シチュエーションの設定は巧みでも、人物の把握がやや粗笨な点などが気にかかります。」「しかしそれは氏にとっても将来の問題」
男29歳
5 「素朴な語り口」「ものものしい題名のわりに、主人公の心理が浅くしか把握されていないので、内面の展開がなく、冗長の感をあたえるのは惜しまれます。」
  「全体として、思春期の少年を主人公としたものが眼立ち、古風な男くさい世界をわざと扱ったのが多かったのは、時勢を微妙に反映しているようです。」
選評出典:『芥川賞全集 第十一巻』昭和57年/1982年12月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和52年/1977年9月号)
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芥川賞 78 昭和52年/1977年下半期   一覧へ
選評の概要 甲乙つけがたし 総行数31 (1行=26字)
選考委員 中村光夫 男66歳
候補 評価 行数 評言
男30歳
10 「最後まで残った三篇は、票数もまったく同じで、甲乙をつけ難かった」「はじめから一種の抒情性がみなぎっていて、それが結末の川の螢の描写で頂点に達します。それだけに主人公が、いくら子供でもいい気すぎて、人間関係の彫りが浅すぎるのが気になりますが、これだけの題材をまとめた構成力は立派といってよいでしょう。」
男30歳
13 「最後まで残った三篇は、票数もまったく同じで、甲乙をつけ難かった」「たんに初歩の技術がうまいというだけのことであり、目はしのきく青年が、現代ばなれという現代風の題材を小器用にまとめただけという印象は拭えません。しかしこれだけの筆力も稀れな天分には違いないので、作者がもし自分の欠点に気付いて、工夫をこらしたら、多くのものが期待できると思います。」
  「八篇の候補作のできが似たりよったりなので、予想通り、審査は難航しました。傑出した作品がない結果と云えますが、地味な精進を重ねてきた人々には、認められる好機でしょう。」
選評出典:『芥川賞全集 第十一巻』昭和57年/1982年12月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和53年/1978年3月号)
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芥川賞 79 昭和53年/1978年上半期   一覧へ
選評の概要 熟練の賜 総行数29 (1行=26字)
選考委員 中村光夫 男67歳
候補 評価 行数 評言
男30歳
10 「題名通り、初秋の空のように爽やかな小説です。思春期を扱って厭味でなく、いわゆる青春小説が文学になり得た稀な例でしょう。」「とくに前半の少年の友情を描いた部分はすぐれていますが、後半に少女が登場すると急に筆がみだれて、興を削がれます。」
男50歳
13 「読者の共感を得難い老女の恋を描いて、いつのまにか彼女の心情の動きに引きこむのは凡手でありません。」「滑稽とも醜怪とも思える彼女の心の動きが、つまりは人間の姿なのだろうか。こんなことを考えさせられます。」
選評出典:『芥川賞全集 第十二巻』昭和58年/1983年1月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和53年/1978年9月号)
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芥川賞 80 昭和53年/1978年下半期   一覧へ
選評の概要 残った二作 総行数28 (1行=26字)
選考委員 中村光夫 男67歳
候補 評価 行数 評言
  「今回は同じような出来の作品が多く、どれも当選作としては背丈の足りぬようなところがあって、いろいろ議論があった末、「なし」に落ちつきました。まず順当な結論でしょう。」
選評出典:『芥川賞全集 第十二巻』昭和58年/1983年1月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和54年/1979年3月号)
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芥川賞 81 昭和54年/1979年上半期   一覧へ
選評の概要 感想 総行数32 (1行=26字)
選考委員 中村光夫 男68歳
候補 評価 行数 評言
女52歳
9 「(引用者注:「蘭の跡」と共に)小粒ながらすぐれた短篇です。」「題材の要求をよくこなし、調和のとれた作品をつくりあげています。」「思い切って陰気な素材ですが、仕上げが美事なので、焼場の遺骨の堆積に、ある美と秩序が感じられます。」
男35歳
17 「量から云って、またある意味で質から見ても、ここで第一にあげるべき作品でしょう。」「メスの切れ味が冴えません。自分を見る眼にも、他人に対する視線にも、かなり厚い抒情の霞がかかっています。」「しかしこの退屈の底に、ある思いがけない魅力が湧きあがってくるのも事実です。それは作者自身も気付かなかった純潔な善良性というべきもので、父の遺産として氏の血のなかにあるものでしょう。」
  「今度の候補作には、とくに傑出したものは見当らず、甲乙のつけがたい作品が大部分でした。」
選評出典:『芥川賞全集 第十二巻』昭和58年/1983年1月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和54年/1979年9月号)
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芥川賞 82 昭和54年/1979年下半期   一覧へ
選評の概要 「新」をもたらすもの 総行数30 (1行=26字)
選考委員 中村光夫 男68歳
候補 評価 行数 評言
女51歳
19 「始めから高点を得て、あまり波瀾なく当選ときまりましたが、作品の出来から云つて当然と思はれました。」「登場人物がすべて型通りすぎるのが欠点といへば欠点ですが、そこに却つて田舎町の退屈の厚味が感じられます。」「読者がこの小説に覚える興味は、アメリカの小都市の、平凡な市民たちの姿が、具体的に描きだされてゐることから生れます。」
選評出典:『芥川賞全集 第十二巻』昭和58年/1983年1月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和55年/1980年3月号)
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芥川賞 83 昭和55年/1980年上半期   一覧へ
選評の概要 選評 総行数29 (1行=26字)
選考委員 中村光夫 男69歳
候補 評価 行数 評言
選評出典:『芥川賞全集 第十二巻』昭和58年/1983年1月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和55年/1980年9月号)
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芥川賞 84 昭和55年/1980年下半期   一覧へ
選評の概要 佳作三篇 総行数28 (1行=26字)
選考委員 中村光夫 男69歳
候補 評価 行数 評言
男43歳
13 「むろん氏がここで開拓した軽味とユーモアは独自のもので、都会的で繊細な感受性が生かされてゐますが、結局精巧な細工物といふ感じで、他の二作(引用者注:「裸足」「遠い朝」)とくらべて、技巧的には格段にすぐれてゐても、芸術作品として傑出してゐるとは云へないと思ひます。」
選評出典:『芥川賞全集 第十二巻』昭和58年/1983年1月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和56年/1981年3月号)
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芥川賞 85 昭和56年/1981年上半期   一覧へ
選評の概要 感動を生む散文 総行数30 (1行=26字)
選考委員 中村光夫 男70歳
候補 評価 行数 評言
女42歳
10 「小品ながら段違ひの出来栄えです。」「これが小説といへるか、(引用者中略)といふやうな疑問はいくらでも出せませう。」「しかし作者の純潔な、同時に宿命的な猫への執心が、或るものに達してゐることはたしかなので、小説を文学的感動を生む散文とする大正期の思想が、ここにひとつの実を結んでゐます。」
選評出典:『芥川賞全集 第十二巻』昭和58年/1983年1月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和56年/1981年9月号)
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芥川賞 86 昭和56年/1981年下半期   一覧へ
選評の概要 選評 総行数29 (1行=26字)
選考委員 中村光夫 男70歳
候補 評価 行数 評言
  「八篇の作品を読み終つて、どれも推す気持にならないのは何とも云へぬ寂しい気持です。」「今度のやうに妥協しようにもその種がないとなると、誰のせゐともわからず、ただムカつぱらが立つてきます。」
選評出典:『芥川賞全集 第十二巻』昭和58年/1983年1月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和57年/1982年3月号)
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芥川賞 87 昭和57年/1982年上半期   一覧へ
選評の概要 選評 総行数29 (1行=26字)
選考委員 中村光夫 男71歳
候補 評価 行数 評言
  「「当選作なし」といふ結果は別にめづらしくありません。それが二度続いたのは始めてださうですが、これも偶然に近い出来事です。」
選評出典:『芥川賞全集 第十二巻』昭和58年/1983年1月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和57年/1982年9月号)
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芥川賞 88 昭和57年/1982年下半期   一覧へ
選評の概要 対照的な作風 総行数24 (1行=26字)
選考委員 中村光夫 男71歳
候補 評価 行数 評言
女46歳
10 「自分の心の片隅に生きつづけて来た少女期の回想を誇張なく描いています。」「全体の印象が、浮動の時期を背景とした少年少女の交遊より、むしろ時代の変遷を描いた風景画のようですが、あっさりしすぎているところが、長所でもあり、欠点とも云えましょう。」
男42歳
16 「力作という点では、(引用者中略)群をぬいていました。しかしこれが文学作品として秀作かとなると、多くの疑問がおこります。」「事件の主人公は佐川君の筈ですが、作者の筆はどこでも彼に届いていません。」「結局、殺人、食肉という事件は、彼ら(引用者注:話者や登場人物)の饒舌と気取りの背景をなしているだけで、この小説は面白くなりそうな事件を、つまらなく描いた小説ということになります。」
選評出典:『芥川賞全集 第十三巻』平成1年/1989年2月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和58年/1983年3月号)
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芥川賞 89 昭和58年/1983年上半期   一覧へ
選評の概要 個性の努力 総行数31 (1行=26字)
選考委員 中村光夫 男72歳
候補 評価 行数 評言
  「八篇の候補作を読み終って、まず浮んできた感想は、どれも相当な出来であり、簡単に甲乙をつけ難いということです。」「短篇の場合、終りまで骨を折らずに読めないということは、作品の欠陥を示しているといってよいでしょう。」
選評出典:『芥川賞全集 第十三巻』平成1年/1989年2月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和58年/1983年9月号)
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芥川賞 90 昭和58年/1983年下半期   一覧へ
選評の概要 出来がよい「ウホッホ探険隊」 総行数25 (1行=26字)
選考委員 中村光夫 男72歳
候補 評価 行数 評言
男47歳
6 「うまい小説で、うますぎないように充分注意を払っている点は「(引用者注:ウホッホ)探険隊」より上わ手と思われます。」「人生の曲り角を散歩しているような二人(引用者注:杢二の妻君と義兄)の挙止がよく出ています。」
女37歳
5 「非行にそまって行く女子高校生を描いていますが、彼女らは、悪事をはたらくグループに属しても裏をかえせば、性格は純白なので、おそらく事実をそのままに扱いながらつくりものの印象をあたえるのはこのためでしょう。」
選評出典:『芥川賞全集 第十三巻』平成1年/1989年2月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和59年/1984年3月号)
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芥川賞 91 昭和59年/1984年上半期   一覧へ
選評の概要 燃料不足のせいか 総行数19 (1行=26字)
選考委員 中村光夫 男73歳
候補 評価 行数 評言
  「受賞作なしと決定しましたが、候補作が例年に比して劣るという訳ではないと思います。」「今回、僕がどれも推す気になれなかったのは、火にかけた鍋が、燃料不足のせいかいつまでも煮たたぬといった、情況のせいです。」
選評出典:『芥川賞全集 第十三巻』平成1年/1989年2月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和59年/1984年9月号)
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芥川賞 92 昭和59年/1984年下半期   一覧へ
選評の概要 選評 総行数24 (1行=26字)
選考委員 中村光夫 男73歳
候補 評価 行数 評言
女45歳
7 「古風ながら筆力を十分にうかがわせる文体です。」「しかし、(引用者中略)作者の人間をみる眼の甘さが、よくも悪くもあるので、読後の感動が稀薄なのは、その為かと思われます。」
  「今回の候補作は七篇でいつもより数は少ないが、読むのに苦労しました。」「各篇が長いのかというとそうでもなく、もっぱら内容の読みにくさからきていると思われます。」
選評出典:『芥川賞全集 第十三巻』平成1年/1989年2月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和60年/1985年3月号)
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芥川賞 93 昭和60年/1985年上半期   一覧へ
選評の概要 選評 総行数22 (1行=26字)
選考委員 中村光夫 男74歳
候補 評価 行数 評言
  「今度の予選を通った作品は、力作が多いが、どうも作者の心から本当に流れでたと思われるような作品に乏しい。選者もいざとなると困るのではないか。」「こんなことを何かの序に云った人がいましたが、たしかそうだったと思います。」
選評出典:『芥川賞全集 第十三巻』平成1年/1989年2月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和60年/1985年9月号)
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芥川賞 94 昭和60年/1985年下半期   一覧へ
選評の概要 女流三篇 総行数29 (1行=26字)
選考委員 中村光夫 男74歳
候補 評価 行数 評言
女55歳
17 「無雑作すぎるとも思われる作者の語り口にのせられて、異国で暮す中年女の怨恨と愚痴に思わずつきあわされてしまったといった印象でした。」「しかしこの作品の特色は、登場人物が溌剌と生きていることで、文章の粗雑さに対する不満をおぎなっています。」「生活の鬱憤を吐露する話が、充分小説になっているのは、米谷氏の並々ならぬ才能をもの語るものと思われました。」
山田詠美
女26歳
8 「作者が自己の感性を充分に生かしきった作品で、若い作者の優れた資質をうかがわせるものです。」「センセーショナルな材料を扱いながら、不潔でなく、読後感がさっぱりしているのは、これが男女のむしろ古風とも思われる純愛悲恋物語と読めたせいかもしれません。」
選評出典:『芥川賞全集 第十四巻』平成1年/1989年5月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和61年/1986年3月号)
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