芥川賞のすべて・のようなもの
第38回
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昭和32年/1957年下半期
(昭和33年/1958年1月20日決定発表/『文藝春秋』昭和33年/1958年3月号選評掲載)
選考委員  中村光夫
男46歳
石川達三
男52歳
瀧井孝作
男63歳
佐藤春夫
男65歳
川端康成
男58歳
井上靖
男50歳
丹羽文雄
男53歳
舟橋聖一
男53歳
宇野浩二
男66歳
選評総行数  27 25 30 31 28 28 22 44 70
候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数
開高健 「裸の王様」
134
男27歳
11 7 8 18 11 15 12 8 10
大江健三郎 「死者の奢り」等
110
男22歳
12 11 13 19 18 13 6 36 16
川端康夫 「涼み台」
72
男22歳
6 0 11 0 7 2 0 0 7
真崎浩 「暗い地図」
66
男31歳
4 0 2 0 0 4 0 0 6
窪田精 「狂った時間」
139
男36歳
0 0 3 0 0 2 0 0 11
副田義也 「闘牛」
33
男23歳
6 0 2 0 0 2 0 0 7
吉田克 「右京の僧」
101
男(34歳)
0 2 2 0 0 3 0 0 15
                欠席
年齢/枚数の説明   見方・注意点

このページの選評出典:『芥川賞全集 第五巻』昭和57年/1982年6月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和33年/1958年3月号)
1行当たりの文字数:26字


選考委員
中村光夫男46歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
粘りのある腰 総行数27 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
開高健
男27歳
11 「予期通り、開高氏か大江氏かということになりましたが、決定には骨が折れました。」「近ごろめずらしい骨の太い、構成力もしっかりした新人で、「パニック」などには、島木健作を思わせるところがあり、派手ではなくとも将来に期待できる人と思われます」「「裸の王様」は、着想の新しさ、粘りのある腰、底にある批評精神など、作者の資性の長所がはっきりでた小説であり、欠点はあっても、既成作家の作品に充分伍し得る出来栄え」「作品としては(引用者注:大江健三郎より)「裸の王様」をとる、というのが僕の意見です。」
大江健三郎
男22歳
12 「予期通り、開高氏か大江氏かということになりましたが、決定には骨が折れました。」「「死者の奢り」は若々しい才気は感じられても、作者が自分の若い嗜好に溺れたようなところがあり、氏が今後大きく伸びるにしても、氏の若書きであり、代表作にはなるまいと思われました。」
川端康夫
男22歳
6 「(引用者注:「闘牛」と)作風が両極端といってよいほど違っていながら、どこかひよわな純粋さで共通しています。」「古風な小説の観念になずみすぎ、」
真崎浩
男31歳
4 「題材も文体もありきたりのなかで、或る澄んだ眼を感じさせます。文学修業の既成観念からぬけだして、新しいものを把むべきでしょう。」
窪田精
男36歳
0  
副田義也
男23歳
6 「(引用者注:「涼み台」と)作風が両極端といってよいほど違っていながら、どこかひよわな純粋さで共通しています。」「感覚の新しさが器用すぎる文体でそこなわれています」
吉田克
男(34歳)
0  
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他の選考委員
石川達三
瀧井孝作
佐藤春夫
川端康成
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丹羽文雄
舟橋聖一
宇野浩二
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選考委員
石川達三男52歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
若い世代に 総行数25 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
開高健
男27歳
7 「最後のところで結論をいそいだ感があり、作家としての経歴の浅さを暴露しているが、取材は新しいし意図は強健である。整理の足りないところもあるが、作品全体の強さがそれを補っている。ほかの候補作のどれよりも、はっきりした意図をもち、創作意慾にみちている。それが魅力だ。」
大江健三郎
男22歳
11 「「死者の奢り」を推した人も少くなかったが私は納得できないものがあった。死体の不気味な描写がいくら書かれても、それは小説にはならない。」「死体が(生かされ)ていない。従って作品全体が私には物足りなかった。「他人の足」は一部によく解らない所があるが、コントとしては優れた構成と香気とをもっている。しかし是だけでは授賞にはすこし足りない。」
川端康夫
男22歳
0  
真崎浩
男31歳
0  
窪田精
男36歳
0  
副田義也
男23歳
0  
吉田克
男(34歳)
2  
  「二三年前にくらべると、候補にのぼった作者の年齢が格段に若くなっている。昭和生れの作家が登場してきた。私たちはこの人たちに新しい期待をもってもいいかも知れない。」
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中村光夫
瀧井孝作
佐藤春夫
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井上靖
丹羽文雄
舟橋聖一
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選考委員
瀧井孝作男63歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
「涼み台」を推す 総行数30 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
開高健
男27歳
8 「僕は好きな作品とは云えなかった。」「とりすました形式主義よりも自然の野性の魅力を主張した、このテーマは宜い。しかし、この小説の作中人物は、大方中間小説のように安っぽい描写で、僕は好きにはなれなかった。」
大江健三郎
男22歳
13 「僕は好きな作品とは云えなかった。」「「死者の奢り」は、(引用者中略)素直に描いてあるならば面白いが、この題名のように、むかむかする死体各々が何か曰くを云い相なのは、このユーモアは、若いキザで厭味ではないかしら。」「小説集もすぐに二冊出ると云われて、殆ど流行作家のようで、芥川賞などはもう必要もない人のように思われた。」
川端康夫
男22歳
11 「女の心持の深いものが描かれて、それは少年の目に映った世相で、澄んだ爽かな感じがあった。僕はこれを今回の候補作品の一つに推したが、(引用者中略)読み甲斐のあるものとして推したが。」「優等生の作文のようで、大江氏開高氏にくらべると、まだ力が弱いがこの優等生の所からもっと踏破って出るとよいと思った。」
真崎浩
男31歳
2 「陳腐、」「どこがよいのか、分らなかった。」
窪田精
男36歳
3 「まとまりのないもの、」「どこがよいのか、分らなかった。」
副田義也
男23歳
2 「思い付だけで軽薄。」「どこがよいのか、分らなかった。」
吉田克
男(34歳)
2 「薄手、」「どこがよいのか、分らなかった。」
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中村光夫
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佐藤春夫
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丹羽文雄
舟橋聖一
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選考委員
佐藤春夫男65歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
「裸の王様」一本槍 総行数31 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
開高健
男27歳
18 「二篇(引用者注:「裸の王様」と「死者の奢り」)中の何れかという段になると、僕は終始一貫して「裸の王様」一本槍で二篇を同列に置くことをさえ承認しにくい。」「作者の読者に訴える主題も明確に必然的に追究されて、そこに一個の健全な芸術論を展開したのもよく、」「この生硬も一種の表現と見て看過する。」「まっとうに主題と取組む熱誠な作風はチョコ才な作品の横行する現代では最も珍重すべきであろう。」
大江健三郎
男22歳
19 「正しく読むに足る作品で作者の才気は十分見えている。しかしその衒気と匠気とは僕をして顔をそむけさせる。好んで奇異嫌悪の題材を採ったのにも何らの必然性は認めにくいから読者の好奇心を釣ろうとするかとしか見えない。「死者の奢り」という題の気取りも嫌味である。」「要するに僕はこの作者の才能を認めながらそれに多少の反感を持つのを否むことができなかった。」
川端康夫
男22歳
0  
真崎浩
男31歳
0  
窪田精
男36歳
0  
副田義也
男23歳
0  
吉田克
男(34歳)
0  
  「全候補作品中から衆議に従って「死者の奢り」と「裸の王様」とを最後の銓衡まで残ることには僕も異議はない。他にはこの二篇の水準に達した作品は見出せない。」
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中村光夫
石川達三
瀧井孝作
川端康成
井上靖
丹羽文雄
舟橋聖一
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選考委員
川端康成男58歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
二様の気負い 総行数28 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
開高健
男27歳
11 「授賞に強い反対はない」「「死者の奢り」を推すために、「裸の王様」の欠点を言い過ぎるのは誤りであろう。」「やはり意識して作られた小説であるから、「死者の奢り」の場合とはちがった意味で、そして同じような欠点がないではない。最後の審査会の劇画化などに、それが現われている。」「開高氏と大江氏と明暗二様の気負いを見るが、これは悪いとは思わない。」
大江健三郎
男22歳
18 「「死者の奢り」を、私は初めから推したかった。」「(引用者注:「裸の王様」とどちらを選ぶかという時も)私は「死者の奢り」を選んだ。」「異常な題材を、意識して書いているので、行き過ぎの欠点と、私たちに感じられる個所が少くないのは当然である。それでも、この二作に見る才能はあざやかである。」「開高氏と大江氏と明暗二様の気負いを見るが、これは悪いとは思わない。」
川端康夫
男22歳
7 「私とまぎらわしい名だが、縁者でも知人でもない。」「好感を持ったが、子供を通してのやや古風な抒情は、書きにくくてむずかしく、(引用者中略)欠点の現われもわかりやすく同情されるのが、反ってよくない。しかし、この人もまだ大学在学中の若さだから、今後が待たれるだろう。」
真崎浩
男31歳
0  
窪田精
男36歳
0  
副田義也
男23歳
0  
吉田克
男(34歳)
0  
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他の選考委員
中村光夫
石川達三
瀧井孝作
佐藤春夫
井上靖
丹羽文雄
舟橋聖一
宇野浩二
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選考委員
井上靖男50歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
大江氏の才能と資質に 総行数28 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
開高健
男27歳
15 「(引用者注:「死者の奢り」と共に)作風は対蹠的であるが、それぞれ特異な資質と芥川賞作品として推すにふさわしいある新しさを持っていた。」「当選にはいささかの不満もない。新風爽やかな独自の才能であることは衆目の見るところである。」
大江健三郎
男22歳
13 「(引用者注:「裸の王様」と共に)作風は対蹠的であるが、それぞれ特異な資質と芥川賞作品として推すにふさわしいある新しさを持っていた。」「「死者の奢り」に一票を投じた。」「本当の意味で小説の面白さというものは、(引用者注:「裸の王様」よりも)「死者の奢り」の方にあって、またその面白さの質や才能の質が上等ではないかと思ったからである。要するに私は大江氏の才能、資質の方をより珍重したわけである。」
川端康夫
男22歳
2 「なかなか達者ではあったが、この方は発想の古さが気になった。」
真崎浩
男31歳
4 「いいと思った。戦時中の少年が素直な眼で掴まれ、素直な筆で書かれ、いかにも行儀のいい作品といった感じだった。」
窪田精
男36歳
2 「私には作品の意図がよくのみ込めなかった。」
副田義也
男23歳
2 「その才気に注目させられた。」
吉田克
男(34歳)
3 「構想、筆力共に未熟で、他の作品に較べて見劣りがした。」
  「こんどは大江健三郎氏の「死者の奢り」と開高健氏の「裸の王様」の二作が際立って光っていたので、他の候補作品はみな影が薄く感じられた。」
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他の選考委員
中村光夫
石川達三
瀧井孝作
佐藤春夫
川端康成
丹羽文雄
舟橋聖一
宇野浩二
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選考委員
丹羽文雄男53歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
今日の作品に缺けているもの 総行数22 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
開高健
男27歳
12 「私は推した」「今日の作品に欠けているものを「裸の王様」は力強く打ち出していた。やぼったいという人もあるかも知れない。が、やぼったく思われるような人間的な情熱を小馬鹿にして、知的ごまかしをやっている小説が多いのだ。」「欠点はある。最後の展覧会など書きすぎであった。」
大江健三郎
男22歳
6 「作品の出来ばえからいえば、(引用者中略・注:「裸の王様」より)「他人の足」の方がはるかに巧緻な短篇であった。」「「死者の奢り」は、最後まで落すに惜しい作品であったが、大江の二篇はいわばもっとも今日的な作品であった。」
川端康夫
男22歳
0  
真崎浩
男31歳
0  
窪田精
男36歳
0  
副田義也
男23歳
0  
吉田克
男(34歳)
0  
  「今回の審査会ほど難航を極めたのは珍しい。妥協性の強い私はしまいに二篇(引用者注:「裸の王様」と「死者の奢り」)を芥川賞にと言い出したものだが、互に一篇を主張する人が多くて、容易にまとまらず、ついに数で決定をみることになった。」
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他の選考委員
中村光夫
石川達三
瀧井孝作
佐藤春夫
川端康成
井上靖
舟橋聖一
宇野浩二
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選考委員
舟橋聖一男53歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
大江のエネルギー 総行数44 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
開高健
男27歳
8 「私には何ンの感興も呼ばなかった。」「中村光夫の云うほど、島木に似ているとも思わなかった。受賞した開高は、その「感想」で、アランの散文論を引いて、小説の美辞麗句をやっつけていたが、そういうところが、人生派委員のお気に召したにしても、特に珍しい説ではない。」
大江健三郎
男22歳
36 「「死者の奢り」は、頭抜けている」「大江には、いい意味のデカダンスがあり、それが人生派の抵抗になったろうが、この程度のデカダンスなしには、新しいエネルギッシュな小説のスタイルは、進歩しない。」「三島由紀夫の云う「頽廃とエネルギーの結合」は大江にも当てはまり、そしてこの程度の病的感覚をもつエネルギーこそ、やや飽和状態にある近代文学の頂点を、更にもう一つ知的な頂点へ前進させるための推進力となることを、私はこの際、述べておきたい。」
川端康夫
男22歳
0  
真崎浩
男31歳
0  
窪田精
男36歳
0  
副田義也
男23歳
0  
吉田克
男(34歳)
0  
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他の選考委員
中村光夫
石川達三
瀧井孝作
佐藤春夫
川端康成
井上靖
丹羽文雄
宇野浩二
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選考委員
宇野浩二男66歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
我流銓衡感 総行数70 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
開高健
男27歳
10 「なかなか面白く作られてあり、今の文壇に数の少ない諷刺的な所があり適宜に諧謔もあり、話が変っていて、読む人をよろこばせるのであろう。」「今の日本の実業家が教育界と官僚に取り入る事を暴露することなどなかなか味をやっている。しかし、私は、この小説一つではこの作者がまだ信用できない。」
大江健三郎
男22歳
16 「話は、死体処理室の管理人と女子学生とをうまく使って、異様のように作られている所は、なかなか人を喰った様な所もあるけれど、人間と言うものが殆んど書かれていない。それに、この小説の欠点は、抽象的であることだ。しかしこの作品は、こんどの候補作品の中では、よかれあしかれ、妙に迫力のようなものもある、けれど……。」
川端康夫
男22歳
7 「小ましゃくれており、あまり古風でありすぎる。私は、いかなる作品でも、どこか抜けたところのある小説のほうを好む。」
真崎浩
男31歳
6 「よしあしは別として、(引用者注:「涼み台」より)この人の方が達者であり、話としては一ととおり作られているけれど、未だし未だしである。」
窪田精
男36歳
11 「いわば、風がわりな恋愛小説ではあるが、(引用者中略)こういう作品としては、一応まとまっている。が、この主人公のいう復讐が裏ぎられた党員の妹を手に入れるという事が通俗的であり、それに、此の作品は、いやに作者が意気ごんでいるのが感じられて、からまわりをしている。しいてヒイキして云えば、この小説は、かりに力作としても、失敗である。」
副田義也
男23歳
7 「要するに大学の入学試験を受ける学生の闘争心の様なものを取り扱っただけのもので、これも話はうまく作ってあるけれど、これでは小説にはならぬ。」「もう少しましなものが書けるのではないか、どうか。」
吉田克
男(34歳)
15 「一口にいえば、ありふれた恋愛小説である。」「その時代の天皇の下につく僧と野にいる僧との関係を、庶民の見方から書き、それに、其頃の奴隷視されていた農民と重税のことを取り入れてなかなかうまく考えている。しかし、作り話が作り話に見えるのがこの小説の致命傷である。」
  「いつの世にもあるくちさがない人たちが、いつの時も殆んどそうであるが、「こんども、芥川賞の候補作品のなかには『文學界』に出た小説が多いね。しかも、『文學界』の新人賞というのに通った人の小説がこのごろよく芥川賞をうけるようだね。」などと云うのを耳にするけれど、それは偶然かもしれないし、仕方のないことでもあろうか。」
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他の選考委員
中村光夫
石川達三
瀧井孝作
佐藤春夫
川端康成
井上靖
丹羽文雄
舟橋聖一
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受賞者・作品
開高健男27歳×各選考委員 
「裸の王様」
短篇 134
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
中村光夫
男46歳
11 「予期通り、開高氏か大江氏かということになりましたが、決定には骨が折れました。」「近ごろめずらしい骨の太い、構成力もしっかりした新人で、「パニック」などには、島木健作を思わせるところがあり、派手ではなくとも将来に期待できる人と思われます」「「裸の王様」は、着想の新しさ、粘りのある腰、底にある批評精神など、作者の資性の長所がはっきりでた小説であり、欠点はあっても、既成作家の作品に充分伍し得る出来栄え」「作品としては(引用者注:大江健三郎より)「裸の王様」をとる、というのが僕の意見です。」
石川達三
男52歳
7 「最後のところで結論をいそいだ感があり、作家としての経歴の浅さを暴露しているが、取材は新しいし意図は強健である。整理の足りないところもあるが、作品全体の強さがそれを補っている。ほかの候補作のどれよりも、はっきりした意図をもち、創作意慾にみちている。それが魅力だ。」
瀧井孝作
男63歳
8 「僕は好きな作品とは云えなかった。」「とりすました形式主義よりも自然の野性の魅力を主張した、このテーマは宜い。しかし、この小説の作中人物は、大方中間小説のように安っぽい描写で、僕は好きにはなれなかった。」
佐藤春夫
男65歳
18 「二篇(引用者注:「裸の王様」と「死者の奢り」)中の何れかという段になると、僕は終始一貫して「裸の王様」一本槍で二篇を同列に置くことをさえ承認しにくい。」「作者の読者に訴える主題も明確に必然的に追究されて、そこに一個の健全な芸術論を展開したのもよく、」「この生硬も一種の表現と見て看過する。」「まっとうに主題と取組む熱誠な作風はチョコ才な作品の横行する現代では最も珍重すべきであろう。」
川端康成
男58歳
11 「授賞に強い反対はない」「「死者の奢り」を推すために、「裸の王様」の欠点を言い過ぎるのは誤りであろう。」「やはり意識して作られた小説であるから、「死者の奢り」の場合とはちがった意味で、そして同じような欠点がないではない。最後の審査会の劇画化などに、それが現われている。」「開高氏と大江氏と明暗二様の気負いを見るが、これは悪いとは思わない。」
井上靖
男50歳
15 「(引用者注:「死者の奢り」と共に)作風は対蹠的であるが、それぞれ特異な資質と芥川賞作品として推すにふさわしいある新しさを持っていた。」「当選にはいささかの不満もない。新風爽やかな独自の才能であることは衆目の見るところである。」
丹羽文雄
男53歳
12 「私は推した」「今日の作品に欠けているものを「裸の王様」は力強く打ち出していた。やぼったいという人もあるかも知れない。が、やぼったく思われるような人間的な情熱を小馬鹿にして、知的ごまかしをやっている小説が多いのだ。」「欠点はある。最後の展覧会など書きすぎであった。」
舟橋聖一
男53歳
8 「私には何ンの感興も呼ばなかった。」「中村光夫の云うほど、島木に似ているとも思わなかった。受賞した開高は、その「感想」で、アランの散文論を引いて、小説の美辞麗句をやっつけていたが、そういうところが、人生派委員のお気に召したにしても、特に珍しい説ではない。」
宇野浩二
男66歳
10 「なかなか面白く作られてあり、今の文壇に数の少ない諷刺的な所があり適宜に諧謔もあり、話が変っていて、読む人をよろこばせるのであろう。」「今の日本の実業家が教育界と官僚に取り入る事を暴露することなどなかなか味をやっている。しかし、私は、この小説一つではこの作者がまだ信用できない。」
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他の候補作
大江健三郎
「死者の奢り」等
川端康夫
「涼み台」
真崎浩
「暗い地図」
窪田精
「狂った時間」
副田義也
「闘牛」
吉田克
「右京の僧」
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候補者・作品
大江健三郎男22歳×各選考委員 
「死者の奢り」等
短篇2篇 110
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
中村光夫
男46歳
12 「予期通り、開高氏か大江氏かということになりましたが、決定には骨が折れました。」「「死者の奢り」は若々しい才気は感じられても、作者が自分の若い嗜好に溺れたようなところがあり、氏が今後大きく伸びるにしても、氏の若書きであり、代表作にはなるまいと思われました。」
石川達三
男52歳
11 「「死者の奢り」を推した人も少くなかったが私は納得できないものがあった。死体の不気味な描写がいくら書かれても、それは小説にはならない。」「死体が(生かされ)ていない。従って作品全体が私には物足りなかった。「他人の足」は一部によく解らない所があるが、コントとしては優れた構成と香気とをもっている。しかし是だけでは授賞にはすこし足りない。」
瀧井孝作
男63歳
13 「僕は好きな作品とは云えなかった。」「「死者の奢り」は、(引用者中略)素直に描いてあるならば面白いが、この題名のように、むかむかする死体各々が何か曰くを云い相なのは、このユーモアは、若いキザで厭味ではないかしら。」「小説集もすぐに二冊出ると云われて、殆ど流行作家のようで、芥川賞などはもう必要もない人のように思われた。」
佐藤春夫
男65歳
19 「正しく読むに足る作品で作者の才気は十分見えている。しかしその衒気と匠気とは僕をして顔をそむけさせる。好んで奇異嫌悪の題材を採ったのにも何らの必然性は認めにくいから読者の好奇心を釣ろうとするかとしか見えない。「死者の奢り」という題の気取りも嫌味である。」「要するに僕はこの作者の才能を認めながらそれに多少の反感を持つのを否むことができなかった。」
川端康成
男58歳
18 「「死者の奢り」を、私は初めから推したかった。」「(引用者注:「裸の王様」とどちらを選ぶかという時も)私は「死者の奢り」を選んだ。」「異常な題材を、意識して書いているので、行き過ぎの欠点と、私たちに感じられる個所が少くないのは当然である。それでも、この二作に見る才能はあざやかである。」「開高氏と大江氏と明暗二様の気負いを見るが、これは悪いとは思わない。」
井上靖
男50歳
13 「(引用者注:「裸の王様」と共に)作風は対蹠的であるが、それぞれ特異な資質と芥川賞作品として推すにふさわしいある新しさを持っていた。」「「死者の奢り」に一票を投じた。」「本当の意味で小説の面白さというものは、(引用者注:「裸の王様」よりも)「死者の奢り」の方にあって、またその面白さの質や才能の質が上等ではないかと思ったからである。要するに私は大江氏の才能、資質の方をより珍重したわけである。」
丹羽文雄
男53歳
6 「作品の出来ばえからいえば、(引用者中略・注:「裸の王様」より)「他人の足」の方がはるかに巧緻な短篇であった。」「「死者の奢り」は、最後まで落すに惜しい作品であったが、大江の二篇はいわばもっとも今日的な作品であった。」
舟橋聖一
男53歳
36 「「死者の奢り」は、頭抜けている」「大江には、いい意味のデカダンスがあり、それが人生派の抵抗になったろうが、この程度のデカダンスなしには、新しいエネルギッシュな小説のスタイルは、進歩しない。」「三島由紀夫の云う「頽廃とエネルギーの結合」は大江にも当てはまり、そしてこの程度の病的感覚をもつエネルギーこそ、やや飽和状態にある近代文学の頂点を、更にもう一つ知的な頂点へ前進させるための推進力となることを、私はこの際、述べておきたい。」
宇野浩二
男66歳
16 「話は、死体処理室の管理人と女子学生とをうまく使って、異様のように作られている所は、なかなか人を喰った様な所もあるけれど、人間と言うものが殆んど書かれていない。それに、この小説の欠点は、抽象的であることだ。しかしこの作品は、こんどの候補作品の中では、よかれあしかれ、妙に迫力のようなものもある、けれど……。」
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他の候補作
開高健
「裸の王様」
川端康夫
「涼み台」
真崎浩
「暗い地図」
窪田精
「狂った時間」
副田義也
「闘牛」
吉田克
「右京の僧」
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候補者・作品
川端康夫男22歳×各選考委員 
「涼み台」
短篇 72
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
中村光夫
男46歳
6 「(引用者注:「闘牛」と)作風が両極端といってよいほど違っていながら、どこかひよわな純粋さで共通しています。」「古風な小説の観念になずみすぎ、」
石川達三
男52歳
0  
瀧井孝作
男63歳
11 「女の心持の深いものが描かれて、それは少年の目に映った世相で、澄んだ爽かな感じがあった。僕はこれを今回の候補作品の一つに推したが、(引用者中略)読み甲斐のあるものとして推したが。」「優等生の作文のようで、大江氏開高氏にくらべると、まだ力が弱いがこの優等生の所からもっと踏破って出るとよいと思った。」
佐藤春夫
男65歳
0  
川端康成
男58歳
7 「私とまぎらわしい名だが、縁者でも知人でもない。」「好感を持ったが、子供を通してのやや古風な抒情は、書きにくくてむずかしく、(引用者中略)欠点の現われもわかりやすく同情されるのが、反ってよくない。しかし、この人もまだ大学在学中の若さだから、今後が待たれるだろう。」
井上靖
男50歳
2 「なかなか達者ではあったが、この方は発想の古さが気になった。」
丹羽文雄
男53歳
0  
舟橋聖一
男53歳
0  
宇野浩二
男66歳
7 「小ましゃくれており、あまり古風でありすぎる。私は、いかなる作品でも、どこか抜けたところのある小説のほうを好む。」
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他の候補作
開高健
「裸の王様」
大江健三郎
「死者の奢り」等
真崎浩
「暗い地図」
窪田精
「狂った時間」
副田義也
「闘牛」
吉田克
「右京の僧」
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候補者・作品
真崎浩男31歳×各選考委員 
「暗い地図」
短篇 66
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
中村光夫
男46歳
4 「題材も文体もありきたりのなかで、或る澄んだ眼を感じさせます。文学修業の既成観念からぬけだして、新しいものを把むべきでしょう。」
石川達三
男52歳
0  
瀧井孝作
男63歳
2 「陳腐、」「どこがよいのか、分らなかった。」
佐藤春夫
男65歳
0  
川端康成
男58歳
0  
井上靖
男50歳
4 「いいと思った。戦時中の少年が素直な眼で掴まれ、素直な筆で書かれ、いかにも行儀のいい作品といった感じだった。」
丹羽文雄
男53歳
0  
舟橋聖一
男53歳
0  
宇野浩二
男66歳
6 「よしあしは別として、(引用者注:「涼み台」より)この人の方が達者であり、話としては一ととおり作られているけれど、未だし未だしである。」
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他の候補作
開高健
「裸の王様」
大江健三郎
「死者の奢り」等
川端康夫
「涼み台」
窪田精
「狂った時間」
副田義也
「闘牛」
吉田克
「右京の僧」
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候補者・作品
窪田精男36歳×各選考委員 
「狂った時間」
短篇 139
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
中村光夫
男46歳
0  
石川達三
男52歳
0  
瀧井孝作
男63歳
3 「まとまりのないもの、」「どこがよいのか、分らなかった。」
佐藤春夫
男65歳
0  
川端康成
男58歳
0  
井上靖
男50歳
2 「私には作品の意図がよくのみ込めなかった。」
丹羽文雄
男53歳
0  
舟橋聖一
男53歳
0  
宇野浩二
男66歳
11 「いわば、風がわりな恋愛小説ではあるが、(引用者中略)こういう作品としては、一応まとまっている。が、この主人公のいう復讐が裏ぎられた党員の妹を手に入れるという事が通俗的であり、それに、此の作品は、いやに作者が意気ごんでいるのが感じられて、からまわりをしている。しいてヒイキして云えば、この小説は、かりに力作としても、失敗である。」
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他の候補作
開高健
「裸の王様」
大江健三郎
「死者の奢り」等
川端康夫
「涼み台」
真崎浩
「暗い地図」
副田義也
「闘牛」
吉田克
「右京の僧」
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候補者・作品
副田義也男23歳×各選考委員 
「闘牛」
短篇 33
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
中村光夫
男46歳
6 「(引用者注:「涼み台」と)作風が両極端といってよいほど違っていながら、どこかひよわな純粋さで共通しています。」「感覚の新しさが器用すぎる文体でそこなわれています」
石川達三
男52歳
0  
瀧井孝作
男63歳
2 「思い付だけで軽薄。」「どこがよいのか、分らなかった。」
佐藤春夫
男65歳
0  
川端康成
男58歳
0  
井上靖
男50歳
2 「その才気に注目させられた。」
丹羽文雄
男53歳
0  
舟橋聖一
男53歳
0  
宇野浩二
男66歳
7 「要するに大学の入学試験を受ける学生の闘争心の様なものを取り扱っただけのもので、これも話はうまく作ってあるけれど、これでは小説にはならぬ。」「もう少しましなものが書けるのではないか、どうか。」
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他の候補作
開高健
「裸の王様」
大江健三郎
「死者の奢り」等
川端康夫
「涼み台」
真崎浩
「暗い地図」
窪田精
「狂った時間」
吉田克
「右京の僧」
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候補者・作品
吉田克男(34歳)×各選考委員 
「右京の僧」
短篇 101
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
中村光夫
男46歳
0  
石川達三
男52歳
2  
瀧井孝作
男63歳
2 「薄手、」「どこがよいのか、分らなかった。」
佐藤春夫
男65歳
0  
川端康成
男58歳
0  
井上靖
男50歳
3 「構想、筆力共に未熟で、他の作品に較べて見劣りがした。」
丹羽文雄
男53歳
0  
舟橋聖一
男53歳
0  
宇野浩二
男66歳
15 「一口にいえば、ありふれた恋愛小説である。」「その時代の天皇の下につく僧と野にいる僧との関係を、庶民の見方から書き、それに、其頃の奴隷視されていた農民と重税のことを取り入れてなかなかうまく考えている。しかし、作り話が作り話に見えるのがこの小説の致命傷である。」
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他の候補作
開高健
「裸の王様」
大江健三郎
「死者の奢り」等
川端康夫
「涼み台」
真崎浩
「暗い地図」
窪田精
「狂った時間」
副田義也
「闘牛」
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