芥川賞のすべて・のようなもの
第92回
  • =受賞者=
  • 木崎さと子
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Last Update[H26]2014/6/20

木崎さと子
Kizaki Satoko
生没年月日【注】 昭和14年/1939年11月6日~
受賞年齢 45歳2ヵ月
経歴 本名=原田正子、旧姓=横山。旧満州・新京市(現・長春)生まれ。東京女子大学短期大学部卒。会社員を経て、昭和37年/1962年に結婚後、夫とともに17年間をアメリカ、フランス、東京で生活。昭和54年/1979年帰国後、作家デビュー。従姉妹に直木賞受賞作家の皆川博子がいる。
受賞歴・候補歴
備考
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芥川賞 第84回候補  一覧へ

らそく
裸足」(『文學界』昭和55年/1980年12月号)
媒体・作品情報
誌名 「文學界」
巻号 第34巻 第12号  別表記12月号
印刷/発行年月日 発行 昭和55年/1980年12月1日
発行者等 編集兼発行人 松村善二郎 印刷人 北島義俊 印刷所 大日本印刷株式会社
発行所 株式会社文藝春秋(東京都)
総ページ数 344 表記上の枚数 基本の文字組
(1ページ当り)
26字
×24行
×2段
本文ページ 162~187
(計26頁)
測定枚数 77
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書誌
>>昭和57年/1982年11月・文藝春秋刊『裸足』所収
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候補者 木崎さと子 女41歳
選考委員 評価 行数 評言
吉行淳之介
男56歳
3 「新鮮でユニークなところがあるが、材料と材料との間に、なにか頼りない稀薄なものがあるのが気にかかった。」
大江健三郎
男45歳
4 「独特なフランス人をとらえてはいるのである。しかし作家としての実力は、むしろわが国のわが国びとを確実にとらえうることで示されよう。」
丸谷才一
男55歳
0  
遠藤周作
男57歳
3 「(引用者注:「父が消えた」に次いで「遠い朝」「その細き道」と)ほとんど同一線上にある」
丹羽文雄
男76歳
21 「高く買った。」「どっしりと腰のすわった、大人の小説であった。小説の構成などには神経質にならず、ごく自然に過去と現在をないまぜに描いている呼吸がひどく大人っぽい。その裏打ちとなっているのは、作者の年齢であり、体験であり、何よりも生活を感じさせることであった。」「木崎さんの才能は一応大人が安心して読めるだけのものを何か本質的に備えているようである。」
安岡章太郎
男60歳
0  
開高健
男50歳
5 「4点 作品中に何であれあざやかに見えるものがあるということでは全候補作中、この一作だけ。フランス人のアル中の白子の廃人の顔が鮮明に輝いている。」
井上靖
男73歳
8 「(引用者注:「父が消えた」と共に)光っていた。」「材料も面白いし、取り扱っている主題も面白いが、結局は書き切れず、ものあり気に終ってしまったのは惜しいと思う。しかし、それにも拘らず、ある新しさは感じられる。」
瀧井孝作
男86歳
32 「自殺教唆、自殺幇助のようなところも天衣無縫のような筆とみたい。終いの方の総選挙の投票場で、最高裁判事を審査する場面(引用者中略)もうまい。」
中村光夫
男69歳
6 「短篇としてまとまりが悪いのに、読後の印象がはつきりして、作者の才能を感じさせます。ことに彼女がフランスで愛した白子でアルコール中毒の青年はよく描けてゐます。」
選評出典:『芥川賞全集 第十二巻』昭和58年/1983年1月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和56年/1981年3月号)
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かえんぼく
火炎木」(『文學界』昭和56年/1981年4月号)
媒体・作品情報
誌名 「文學界」
巻号 第35巻 第4号  別表記4月号
印刷/発行年月日 発行 昭和56年/1981年4月1日
発行者等 編集兼発行人 松村善二郎 印刷人 北島義俊 印刷所 大日本印刷株式会社
発行所 株式会社文藝春秋(東京都)
総ページ数 312 表記上の枚数 基本の文字組
(1ページ当り)
26字
×24行
×2段
本文ページ 20~67
(計48頁)
測定枚数 145
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書誌
>>昭和57年/1982年11月・文藝春秋刊『裸足』所収
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候補者 木崎さと子 女41歳
選考委員 評価 行数 評言
安岡章太郎
男61歳
0  
丸谷才一
男55歳
0  
大江健三郎
男46歳
7 「感覚の鋭さという軸にそって見ると、(引用者中略)(+)」「その感覚の表現が安定しているかどうかの軸では、(引用者中略)(-)」「作家としてのオリジナリティーという軸では、(引用者中略)(+)」「将来への発展性ということでは、(引用者中略)(+)」
吉行淳之介
男57歳
0  
中村光夫
男70歳
5 「人物に現実性があり、作者の関心事たる人種の問題も、無理なく表出されてゐると思はれますが、難がないだけに奥様芸といふ感じです。」
遠藤周作
男58歳
0  
丹羽文雄
男76歳
19 「よいと思いました。」「いろんな女性のものをみてきましたが、その中でも木崎さと子さんは信頼の出来る作家のように思いました。」「出産という、何でもない材料(本人にとっては生死にかかわる重大事件でしょうが)を、女性でなければ書けないところをよくとらえています。満洲でなじんだ真赤な太陽の追憶も、出産にからめて思うとき、単なる感傷とはいいきれないものを感じさせました。」
井上靖
男74歳
5 「(引用者注:「傷」と共に)まあ小説を書く態度で押し切っているとは思ったが、(引用者中略)また欠点もあり、それが目立っていた。」
瀧井孝作
男87歳
6 「パーティの席で、赤ん坊が火炎木に注目する場面など、なかなかうまいと思った。前回に、「裸足」というフランスのことを書いていて、又、この「火炎木」のような題材を持っているにも、面白いと思った。」
開高健
男50歳
0  
選評出典:『芥川賞全集 第十二巻』昭和58年/1983年1月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和56年/1981年9月号)
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芥川賞 第86回候補  一覧へ

りきょう
離郷」(『文學界』昭和56年/1981年7月号)
媒体・作品情報
誌名 「文學界」
巻号 第35巻 第7号  別表記7月号
印刷/発行年月日 発行 昭和56年/1981年7月1日
発行者等 編集兼発行人 松村善二郎 印刷人 北島義俊 印刷所 大日本印刷株式会社
発行所 株式会社文藝春秋(東京都)
総ページ数 296 表記上の枚数 目次 140枚 基本の文字組
(1ページ当り)
26字
×23行
×2段
本文ページ 32~81
(計50頁)
測定枚数 145
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書誌
>>『文藝春秋』昭和57年/1982年3月号
>>昭和57年/1982年11月・文藝春秋刊『裸足』所収
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候補者 木崎さと子 女42歳
選考委員 評価 行数 評言
吉行淳之介
男57歳
19 「おもしろくて次のページがたのしみだった。このときは、今回はこれだろう、と考えたが、五分の三あたりからにわかに索莫としてしまった。」「よく調べてみると、二つの小説として成立するものを無理に一つにしてしまい、そのつなぎ目に精神分析らしきものを使ったためらしい、と分った。老人に積極的に心を開いてゆく若い人妻の物語は独立させないといけない。」
丹羽文雄
男77歳
25 「このままでは当選とならないが、すこし手を入れたならば、気の利いた作品が出来たにちがいないと思われる」「藍子というえたいの知れない女が、献身的に老人に仕えている。老人が死ぬ。正妻が現れる。葬儀となる。(引用者中略)作品はここで藍子の過去をひき出した。小説の印象が分裂を起した。まったくよけいな部分であった。」
大江健三郎
男46歳
7 「語りの視点をになう人物の設定がまちがっている。この人物を発明することで視野は拡大されたが、作者の人間観、主題は、この人物の感受性と別のものだ。そこで作者は、重要な人物のそれぞれに説明的な告白をさせたくなる。」
遠藤周作
男58歳
0  
瀧井孝作
男87歳
3 「一寸うまいが、長すぎる。」
丸谷才一
男56歳
0  
安岡章太郎
男61歳
0  
井上靖
男74歳
3 「才能は感じられる。もう一度書き直したら、いい作品になったのではないかと思う。」
開高健
男51歳
0  
中村光夫
男70歳
0  
選評出典:『芥川賞全集 第十二巻』昭和58年/1983年1月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和57年/1982年3月号)
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芥川賞 第87回候補  一覧へ

なが
吹き 流し」(『文學界』昭和57年/1982年6月号)
媒体・作品情報
誌名 「文學界」
巻号 第36巻 第6号  別表記6月号
印刷/発行年月日 発行 昭和57年/1982年6月1日
発行者等 編集兼発行人 松村善二郎 印刷人 北島義俊 印刷所 大日本印刷株式会社
発行所 株式会社文藝春秋(東京都)
総ページ数 328 表記上の枚数 基本の文字組
(1ページ当り)
26字
×23行
×2段
本文ページ 18~29
(計12頁)
測定枚数 34
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書誌
>>昭和57年/1982年11月・文藝春秋刊『裸足』所収
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候補者 木崎さと子 女42歳
選考委員 評価 行数 評言
丸谷才一
男56歳
0  
丹羽文雄
男77歳
0  
中村光夫
男71歳
0  
安岡章太郎
男62歳
0  
遠藤周作
男59歳
0  
開高健
男51歳
0  
井上靖
男75歳
0  
大江健三郎
男47歳
6 「芥川賞のこの一、二年の候補たちには、受賞せぬものの、個性と潜在的な能力はあきらかな人びとが三、四人いた。今度の候補では木崎氏がそのひとりだが、(引用者中略)「物語」をつくる努力をしていない。つまりは、彼女の今度の作品が示すように、かれら彼女らは、短篇に持続的な努力をする気持をもたぬのか?」
吉行淳之介
男58歳
2 「期待していた木崎さと子さんの作品が、スケッチというか、デッサンの練習帖といった趣の作品なので、落胆した。」
選評出典:『芥川賞全集 第十二巻』昭和58年/1983年1月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和57年/1982年9月号)
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しろ はら
白い 原」(『文學界』昭和57年/1982年11月号)
媒体・作品情報
誌名 「文學界」
巻号 第36巻 第11号  別表記11月号
印刷/発行年月日 発行 昭和57年/1982年11月1日
発行者等 編集兼発行人 阿部達児 印刷人 北島義俊 印刷所 大日本印刷株式会社
発行所 株式会社文藝春秋(東京都)
総ページ数 296 表記上の枚数 目次 120枚 基本の文字組
(1ページ当り)
26字
×23行
×2段
本文ページ 20~65
(計46頁)
測定枚数 127
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書誌
>>昭和60年/1985年3月・文藝春秋刊『青桐』所収
>>昭和63年/1988年2月・文藝春秋/文春文庫『青桐』所収
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候補者 木崎さと子 女43歳
選考委員 評価 行数 評言
中村光夫
男71歳
0  
吉行淳之介
男58歳
0  
安岡章太郎
男62歳
0  
丸谷才一
男57歳
0  
大江健三郎
男47歳
0  
丹羽文雄
男78歳
0  
井上靖
男75歳
4 「一応の候補と考えていたが、強引に推すだけの強さはなかった。いいところもあるが、欠点もあった。」
遠藤周作
男59歳
0  
開高健
男52歳
0  
選評出典:『芥川賞全集 第十三巻』平成1年/1989年2月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和58年/1983年3月号)
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芥川賞 第92受賞  一覧へ

あおぎり
青桐」(『文學界』昭和59年/1984年11月号)
媒体・作品情報
誌名 「文學界」
巻号 第38巻 第11号  別表記11月号
印刷/発行年月日 発行 昭和59年/1984年11月1日
発行者等 編集兼発行人 湯川 豊 印刷人 北島義俊 印刷所 大日本印刷株式会社
発行所 株式会社文藝春秋(東京都)
総ページ数 296 表記上の枚数 基本の文字組
(1ページ当り)
26字
×24行
×2段
本文ページ 18~81
(計64頁)
測定枚数 194
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書誌
>>『文藝春秋』昭和60年/1985年3月号
>>昭和60年/1985年3月・文藝春秋刊『青桐』所収
>>昭和63年/1988年2月・文藝春秋/文春文庫『青桐』所収
>>平成1年/1989年2月・文藝春秋刊『芥川賞全集 第13巻』所収
>>平成10年/1998年7月・角川書店刊『女性作家シリーズ17 安西篤子・山本道子・岩橋邦枝・木崎さと子』所収
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候補者 木崎さと子 女45歳
選考委員 評価 行数 評言
丹羽文雄
男80歳
24 「第八十四回の芥川賞候補作品の中で、木崎さと子さんの「裸足」を読んだとき、この人は必ず芥川賞をとる人だと思った。」「それから四篇ほど候補作品をよんできた。」「「青桐」は、いちばん心をこめた作品になっている。」「「青桐」をよんでいて、突如癌特有の臭いに接して、私は思わず息をのむ思いがした。」「小説の中の臭いを、私は嗅いだ。」「それだけでもこの小説はみごとだと思った。」
安岡章太郎
男64歳
13 「「青桐」を読めば、大抵の人が、これまでの木崎さと子とは別人の印象を受けるのではないか。」「こんどの作品で彼女は初めて自身の内部に根づいた文体を獲得したとは言えるのでないか。」「いまは消滅してしまった地主という階級、その名残りをかろうじて保持していた一と握りの人たち、そういう人たちが消えて行くという“歴史”が、この作品の主題であるように、私には思われる。」
遠藤周作
男61歳
30 「他の候補作品より好感が持てた理由は三つある。」「ひとつは副人物の一人一人の描写が丁寧に書きこまれているということである。」「ふたつ目には彼女が非常に書きにくい人物をあえて中心においたことである。」「書きにくい人物をとに角ここまで書いた力を私はやはり認めたい。」「ただ、叔母がどうして自然という考えを自らの人生に受け入れたかはもう少し詳しく書いてほしかった。」
三浦哲郎
男53歳
10 「感心した。」「かなり難しい素材だが、作者は粘りづよい筆で主人公の気持の揺れを丹念に書き込んでいる。とりわけ、従姉の帰国後が冴えている。この賞に相応しい力量の持主だと思う。」
吉行淳之介
男60歳
18 「「青桐」は充江というハイミスの片想いを中心にした心の動きに沿って読んでいくことをすすめる。そうしないといたずらに混乱を起すおそれがあるのだが、読む者の視点を移動させてしまいそうな要素がすぐに現れてくる。」「重い問題を作品の中に持ち込むには、余程の覚悟と計算が必要だが、ここでは提起された問題の内容自体がすでに曖昧である。」「私としては、(引用者注:「青桐」と「刻」の)二作受賞か、という判断があった。」
開高健
男54歳
8 「いかにも古風だけれど着実で、こまかくて、しぶとくテーマに食いさがり、細部をよく噛みしめている。ケレンもハッタリもないが、常識の説得力がある。私としては以前の作品にあった煌めきを買いたいところだが、受賞後の作でそれを回復されることを期待したい。」
丸谷才一
男59歳
30 「わたしの好みに合わない。」「たとえば癌の話。」「乳癌になっても医者に見せることをしないで死んでゆく人はいるかもしれない。いるならいるでいっこう構わない。しかしこの作者は、そういう覚悟で生きる、あるいは死ぬ、その人と、きちんとつきあっているだろうか。はなはだ心もとない気がする。」「作者は筋を作る都合のため、この作中人物を医者にかからせないでいる。しかし小説家には、作中人物をこんなふうにあつかう権利はないはずだ。」
中村光夫
男73歳
7 「古風ながら筆力を十分にうかがわせる文体です。」「しかし、(引用者中略)作者の人間をみる眼の甘さが、よくも悪くもあるので、読後の感動が稀薄なのは、その為かと思われます。」
選評出典:『芥川賞全集 第十三巻』平成1年/1989年2月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和60年/1985年3月号)
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