芥川賞のすべて・のようなもの
選評の概要
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9192939495.
96.
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Last Update[H28]2016/7/29

安岡章太郎
Yasuoka Shotaro
生没年月日【注】 大正9年/1920年5月30日~平成25年/2013年1月26日
在任期間 第66回~第96回(通算15.5年・31回)
在任年齢 51歳7ヶ月~66歳7ヶ月
経歴 高知県高知市生まれ。慶應義塾大学文学部卒。大学在学中に応召、満洲での軍隊経験をもつ。昭和23年/1948年頃から創作を始め、『三田文学』に発表。
受賞歴・候補歴
個人全集 『安岡章太郎全集』全7巻(昭和46年/1971年1月~7月・講談社刊)
『安岡章太郎集』全10巻(昭和61年/1986年11月~昭和63年/1988年5月・岩波書店刊)
芥川賞候補歴 第25回候補 「ガラスの靴」(『三田文學』昭和26年/1951年6月号)
第27回候補 「宿題」(『文學界』昭和27年/1952年2月号)
第28回候補 「愛玩」(『文學界』昭和27年/1952年11月号)
第29回受賞 「悪い仲間」(『群像』昭和28年/1953年6月号)
第29回受賞 「陰気な愉しみ」(『新潮』昭和28年/1953年4月号)
備考
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下記の選評の概要には、評価として◎か○をつけたもの(見方・注意点を参照)、または受賞作に対するもののみ抜粋しました。さらにくわしい情報は、各回の「この回の全概要」をクリックしてご覧ください。

芥川賞 66 昭和46年/1971年下半期   一覧へ
選評の概要 最良の「砧をうつ」 総行数31 (1行=26字)
選考委員 安岡章太郎 男51歳
候補 評価 行数 評言
男36歳
19 「「砧をうつ女」以外には、とくに推したいものはなかった。」「李恢成の作品は、(引用者中略)主要なものは大抵読んでいるが、こんどの「砧をうつ女」はその中でも最良の一つであろう。」「素直な抒情的な筆がよくのびている。」「母国の土だけでなく風俗も文化も失った憐れな女を、ひとごとならずわれわれに感じさせるところがある。」
男33歳
9 「たしかに私にも一応おもしろく読めたし、その軽快な筆致はかなり快適なものであった。しかし、(引用者中略)じつは少年の自由というのは本当の意味で自由なわけではなく、新鮮さもまた見掛け倒しのものに過ぎないようにも思われた。」「もう二、三作みてから賞になってもいいように思う。」
  「芥川賞は、何も学校の入学試験ではないのだから、何度落選してもべつに恥ではなく、何度も候補に上る作家は何処かにそれだけの支持者がいるということなのだから、むしろ意を強くしていいのである。」
選評出典:『芥川賞全集 第九巻』昭和57年/1982年10月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和47年/1972年3月号)
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芥川賞 67 昭和47年/1972年上半期   一覧へ
選評の概要 総行数31 (1行=26字)
選考委員 安岡章太郎 男52歳
候補 評価 行数 評言
男39歳
8 「極めて明るいタッチで描いて成功した作品である。」「私は宮原氏の作品を推したが、二本立ての授賞になったのは、それなりの理由があることだと思う。」
男37歳
7 「身体的な欠陥になやむ男を主人公に、一人称で描いたものだが、この苦痛は個人的なものであるだけに一層重厚である。」「二本立ての授賞になったのは、それなりの理由があることだと思う。」
  「こんどの候補作はツブがそろっており、平均して皆、かなりの水準に達していると思う。」
選評出典:『芥川賞全集 第九巻』昭和57年/1982年10月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和47年/1972年9月号)
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芥川賞 68 昭和47年/1972年下半期   一覧へ
選評の概要 素人のこわさ 総行数29 (1行=26字)
選考委員 安岡章太郎 男52歳
候補 評価 行数 評言
女43歳
18 「題名を見たときから困った作品だと思った。弱点をかぞえ上げればキリもない。」「にもかかわらず、この作品には他には見られない感動があった。ひとくちに言えば、それは戦争という共通体験のせいであろうか、単に罹災者の個人的なおもいで話というものではない。」「職業作家として立って行けるかどうかときかれれば、首をかしげざるを得ない。しかしこの作品は、いわばそういう素人の、怕いもの知らずの強さがなければ書けなかったものであろう。」
女36歳
11 「或る意味で素人の強さをもった作品である。」「(引用者注:新潮同人雑誌賞で読んだときより)少女趣味がなくなり、海外の日本人の生活が素直にえがかれていて、共感を呼んだ。ただ、素直なだけに単調であり、読後の印象はこの枚数に較べて軽い読物という気がした。」
選評出典:『芥川賞全集 第九巻』昭和57年/1982年10月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和48年/1973年3月号)
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芥川賞 69 昭和48年/1973年上半期   一覧へ
選評の概要 技巧的作品 総行数31 (1行=26字)
選考委員 安岡章太郎 男53歳
候補 評価 行数 評言
男38歳
9 「(引用者注:「鳥たちの河口」と共に)短篇として一応のマトマリは見せているが、じつは(引用者中略)前回の候補作にくらべて、万遍なく欠点をとりつくろったようなところがあり、それだけ作品自体の生命力は失われているのである。」「こういう結末は甚だ技巧的であって、本当の結末にいたらないし、また本当の意味の技巧でもない。」
  「今回の候補作品では、これといって推したい作品はなかった。これは文運が突如下降したというようなことでは勿論ない。たまたま推したい作品はないというだけで、全般の水準は、いつもの通りといっていい。」「具体的には作品の一つ一つに個性が失われていると思われるのである。」
選評出典:『芥川賞全集 第十巻』昭和57年/1982年11月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和48年/1973年9月号)
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芥川賞 70 昭和48年/1973年下半期   一覧へ
選評の概要 科挙的芥川賞 総行数33 (1行=26字)
選考委員 安岡章太郎 男53歳
候補 評価 行数 評言
男61歳
19 「(引用者注:「此岸の家」「月山」「石の道」「草のつるぎ」などは)過去数回の授賞作と並べて劣らざるものであり、どれが授賞しても異存ないようなものであった。」「とにかく六十一歳といえば、この人など第一回の芥川賞候補になってもおかしくはないのである。」「この人の登場は、たしかに芥川賞候補作全体に活を入れるような効果はあったのである。」
男36歳
9 「(引用者注:「此岸の家」「月山」「石の道」「草のつるぎ」などは)過去数回の授賞作と並べて劣らざるものであり、どれが授賞しても異存ないようなものであった。」「素直でいい作品であった。」「素直になるというのは、この作品の場合、勇気のいることであっただろう。」
  「今回、私が銓衡に参加して以来、最もすぐれた作品がそろい、充実していた。」
選評出典:『芥川賞全集 第十巻』昭和57年/1982年11月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和49年/1974年3月号)
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芥川賞 71 昭和49年/1974年上半期   一覧へ
選評の概要 連作について 総行数31 (1行=26字)
選考委員 安岡章太郎 男54歳
候補 評価 行数 評言
日野啓三
男45歳
31 「最もすぐれていた。」「「浮ぶ部屋」は、それ(引用者注:「此岸の家」)と一連の作品である。しかし、これを独立した短篇小説として読んでも、勿論読めるものだ。ただ、文学賞の対象として取り上げる場合、こういうかたちで発表された作品は、いつも何かと面倒なことになりがちなものであろう。」「しかし、(引用者中略)これをおいて他の作品を推す気には、私はまったくなれなかった。」
選評出典:『芥川賞全集 第十巻』昭和57年/1982年11月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和49年/1974年9月号)
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芥川賞 72 昭和49年/1974年下半期   一覧へ
選評の概要 日野、阪田の健闘 総行数31 (1行=26字)
選考委員 安岡章太郎 男54歳
候補 評価 行数 評言
男49歳
16 「二作(引用者注:「土の器」と「あの夕陽」)が最も優れていると思った。」「私の最も感銘し、かつ同感したのは、「怪我の話とか、大手術中に麻酔がきれて構わず讃美歌をうたった話とか、肉体の痛みを素材にした話」が、じつに「泥絵風の呪力ではなくて、逆に痛みだけが抽き出されて物質化されてくるという感じ」に、主人公が聞いていていい気持になるというあたりだ。」
男45歳
17 「二作(引用者注:「土の器」と「あの夕陽」)が最も優れていると思った。」「(引用者注:「此岸の家」「浮ぶ部屋」を含め)主題は一貫して、失われた“殖民地”の故郷をどう取戻すかであるが、主人公がそこに何を託しているかといえば、自身の“自我”というようなものであろう。」
選評出典:『芥川賞全集 第十巻』昭和57年/1982年11月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和50年/1975年3月号)
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芥川賞 73 昭和50年/1975年上半期   一覧へ
選評の概要 該当作見当らず 総行数34 (1行=26字)
選考委員 安岡章太郎 男55歳
候補 評価 行数 評言
女44歳
5 「私には、事実としての感動は重く大きかったが、それが文学の感動にはならなかった。とくに《学徒動員したのは》というような名詞を勝手に動詞につくりかえる言い方には、私は非常に抵抗をおぼえた。」
  「芥川賞にかぎらず、どんな賞でも、授賞作はないよりあった方がいいと思う。しかし今回は、どうも該当作はなさそうだと思って私は出席した。」
選評出典:『芥川賞全集 第十巻』昭和57年/1982年11月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和50年/1975年9月号)
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芥川賞 74 昭和50年/1975年下半期   一覧へ
選評の概要 雑感 総行数31 (1行=26字)
選考委員 安岡章太郎 男55歳
候補 評価 行数 評言
男44歳
4 「(引用者注:以前の作と比べて)最も安定した作品になっていた。素朴な文章だが、戦時中の博多の町の描写は極めて的確だと思った。」
男29歳
3 「おそろしく読み難い。しかし粘着力のある筆致。旺盛な筆力がある。ただし、最後の場面は文体が浮き上り、全体を安っぽくしている。」
  「どれもが新人として平均の水準を抜いた作品であり、その意味でツブがそろっていた。だが、積極的に推せる強力な作品は一つもなかった。」
選評出典:『芥川賞全集 第十巻』昭和57年/1982年11月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和51年/1976年3月号)
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芥川賞 75 昭和51年/1976年上半期   一覧へ
選評の概要 センシティヴな才能 総行数32 (1行=26字)
選考委員 安岡章太郎 男56歳
候補 評価 行数 評言
男24歳
17 「印象にのこった。」「候補に上る以前から、それこそ「はしゃぎ過ぎ」の感があるほど話題になった作品であるが、内容に較べて二百枚という長さは退屈である。」「何が言いたいのかサッパリわからない。ただ、この作品には繊細で延びのある感受性があり、それが風景描写などに生きている。」「私はこの作品に賞は出さない方がいいと思ったが、積極的に反対するだけの情熱もなかった。」
選評出典:『芥川賞全集 第十一巻』昭和57年/1982年12月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和51年/1976年9月号)
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芥川賞 76 昭和51年/1976年下半期   一覧へ
選評の概要 似たような作品 総行数31 (1行=26字)
選考委員 安岡章太郎 男56歳
候補 評価 行数 評言
  「こんどは何と似たような作品ばかりが集ったことだろう。」
選評出典:『芥川賞全集 第十一巻』昭和57年/1982年12月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和52年/1977年3月号)
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芥川賞 77 昭和52年/1977年上半期   一覧へ
選評の概要 新しいパターン古い情念 総行数31 (1行=26字)
選考委員 安岡章太郎 男57歳
候補 評価 行数 評言
男29歳
12 「いいと思った。しかし、(引用者中略)積極的に推せるものはなかった。」「前半部がとくにダラシのない文章で退屈であった。しかし読みすすめるにつれて、当今学生気質といったものが過不足なく描かれたシタタカなところがあり、なかなかヤルじゃないか、という気がした。」
男43歳
12 「いいと思った。しかし、(引用者中略)積極的に推せるものはなかった。」「倉庫の中の裸の女というのは、前衛的なパターンであり、それに黄色人種の男と女の古めかしい情念がからめ合わせてある点に、新しさがあるわけだが、これが効果を上げるのは一回こっきりのことである。」
選評出典:『芥川賞全集 第十一巻』昭和57年/1982年12月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和52年/1977年9月号)
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芥川賞 78 昭和52年/1977年下半期   一覧へ
選評の概要 合せて一本 総行数26 (1行=26字)
選考委員 安岡章太郎 男57歳
候補 評価 行数 評言
男30歳
9 「こんどの候補作中、最も難点がなく、文章にも一種独特の雰囲気があり、描写力にも見るべきものがあったが、その反面、何処といって新しさがあるわけでもなく、感受性の若わかしさが感じられるのでもない。」「これ一本を当選作とするのは、何としてもタメラわれた。」
男30歳
13 「積極的に推せる作品ではなかった。「螢川」と違ってこれには一発かませてやろうというような野心はあり、そこに新しさがあるといえば言える。しかし、この作者には野望以外に何があるだろう。」「なかで使われている会話も、九州やら四国やら関東やら、あちこちの方言が練り合せてあるようで、そのこと自体をどうのこうのとは言わないが、作品を空疎なものにしていることはたしかだろう。」
  「一つの賞が二本立てになるのは、甲乙つけ難い作品が二本そろったときと、一本ではその賞に物足りないときで、だいたい後者の場合が多いのだが、こんどもそうだった。」
選評出典:『芥川賞全集 第十一巻』昭和57年/1982年12月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和53年/1978年3月号)
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芥川賞 79 昭和53年/1978年上半期   一覧へ
選評の概要 青い実の色づく頃 総行数32 (1行=26字)
選考委員 安岡章太郎 男58歳
候補 評価 行数 評言
男50歳
12 「一種ふしぎな作風である。」「こんどの「伸予」(なんてヘンな名前だろう)にも何か名状し難い色気がある。中学生と女教師の恋愛はよくあることだろうが、それが三十年ちかくもたって、また燃え上るというのは尋常でない。単に昔の憶い出という以上に、他の契機がありそうなものだが、それについての説明は何もない。それでいながら別段不自然を感じさせることもなく、ストーリイを引っぱって行く点、なかなかの力量であろう。」
男30歳
10 「何ということもない高校生の感情が剣道の試合をつうじて描かれているだけのものだが、その仕上りは爽やかである。しかし高校生同士の会話に、テレビドラマのセリフを繰り返しているような常套句が多いのは、或る程度止むを得ないことだろうが、地の文章にもそれは影響をあたえており、全体の印象は稀薄である。」
選評出典:『芥川賞全集 第十二巻』昭和58年/1983年1月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和53年/1978年9月号)
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芥川賞 80 昭和53年/1978年下半期   一覧へ
選評の概要 次作を期待 総行数34 (1行=26字)
選考委員 安岡章太郎 男58歳
候補 評価 行数 評言
  「今回、該当作ナシとなったのは、とくに不作ぞろいだったからではない。委員の間で票が割れてしまったことと、どの作品にも、いま一歩というところがあって、決定的に推せるものがなかったためだ。」
選評出典:『芥川賞全集 第十二巻』昭和58年/1983年1月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和54年/1979年3月号)
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芥川賞 81 昭和54年/1979年上半期   一覧へ
選評の概要 二つの作品 総行数29 (1行=26字)
選考委員 安岡章太郎 男59歳
候補 評価 行数 評言
男35歳
17 「欠点を上げれば数限りもないであろう。第一、長すぎるし、構成もシッカリしているとはいえない。」「要するに、ヘンな外人を女房にした男の曲りくねったノロケ話といえば、それにつきるであろう。にもかかわらず私がこの作品を推したのは、とにもかくにもここには外人の女が一個の肉体をそなえたかたちで文章にあらわされているからだ。」
女52歳
12 「最も欠点の少い――或いは上げにくい――作品であろう。」「いわばこれは「創作民話」とでもいうべきものであろうか。しかし、いうまでもないことだが、本当の民話は個人の手でつくられたのではない。」「その点、私はこの作品には一抹の疑問がある。欠点は少いけれども、鮮烈なものが感じられないのだ。」
選評出典:『芥川賞全集 第十二巻』昭和58年/1983年1月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和54年/1979年9月号)
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芥川賞 82 昭和54年/1979年下半期   一覧へ
選評の概要 文体喪失の時代 総行数34 (1行=26字)
選考委員 安岡章太郎 男59歳
候補 評価 行数 評言
女51歳
6 「文章は平板ながら、イヤ味なところはない。戦争花嫁(?)をつうじて、孤独な存在感は描けており、その限りでは面白く読めた。しかし、この作者には、文体を持てとは言わないまでも、まずもう少し血の通った文章を書くことにつとめて貰いたい。」
  「いわゆる“第一次戦後派”の諸氏が登場したとき、そろって悪文家ばかりであるといわれたものだが、いまや彼等が悪文家であるとは、誰も言わない。現在では、“悪文”というに足るだけの文章もなくなってしまったのであろう。あるのは何とかカルチュアー・センター式の、平板な、紋切り型の文章ばかりだ。」
選評出典:『芥川賞全集 第十二巻』昭和58年/1983年1月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和55年/1980年3月号)
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芥川賞 83 昭和55年/1980年上半期   一覧へ
選評の概要 栄養過剰の不作 総行数34 (1行=26字)
選考委員 安岡章太郎 男60歳
候補 評価 行数 評言
  「今回、該当作がなかったのは、いつもにくらべて特に不作だったからというわけではない。」
選評出典:『芥川賞全集 第十二巻』昭和58年/1983年1月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和55年/1980年9月号)
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芥川賞 84 昭和55年/1980年下半期   一覧へ
選評の概要 常識的なるもの 総行数33 (1行=26字)
選考委員 安岡章太郎 男60歳
候補 評価 行数 評言
男43歳
12 「当選したのは、私の予想したとほりであつた。尾辻氏の作品のなかでも、これは最も常識的で、かつ安心して読めたからだ。」「皮膚感覚だけではとらへ切れない「父」が登場するため、ともかく骨格が出来てきた。だから、その「父」が消えてしまつて、最後の墓場の場面なんかになると、常識的といふより描写が平板になつて、いささか退屈させられることにもなるわけだ。」
選評出典:『芥川賞全集 第十二巻』昭和58年/1983年1月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和56年/1981年3月号)
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芥川賞 85 昭和56年/1981年上半期   一覧へ
選評の概要 都市生活者の心情 総行数31 (1行=26字)
選考委員 安岡章太郎 男61歳
候補 評価 行数 評言
女42歳
16 「私はイヌ派であり、したがつてネコ派の文学には同調し兼ねるはずであるが、(引用者中略)おもしろかつた。主題はネコにちがひないが、それよりはむしろ都会で生れ都会で死んで行く都市生活者の心情といつたものが全篇の基調になつてをり、その甘酸つぱいやうな抒情性が、近頃にはめづらしく、おもしろいものに感じられたのである。」
  「今回も、一五〇枚、二五〇枚といつも、短篇と呼ぶには長過ぎる作品が目立つた。」「ノド自慢なら途中で鐘を叩いて終らせることも出来やうが、小説は最後まで読まないわけには行かないので、選者は疲労困憊させられた。」
選評出典:『芥川賞全集 第十二巻』昭和58年/1983年1月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和56年/1981年9月号)
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芥川賞 86 昭和56年/1981年下半期   一覧へ
選評の概要 憂欝な季節 総行数30 (1行=26字)
選考委員 安岡章太郎 男61歳
候補 評価 行数 評言
  「三十年ばかりも前、私や吉行淳之介や庄野潤三は、芥川賞銓衡の頃になると、何とも鬱たうしい気分になつたものだ。毎回、候補作品に上げられながら、連続的に落選ばかりさせられてゐると、さらしものにされたやうな心持になつてくるのである。それを考へて、今回は個々の作品についての感想は一切述べないことにする。」「半年ごとに繰返される「芥川賞」といふお祭り騒ぎのオミコシは、本当の担ぎ手が誰であるやら、何処にゐるやらわからないままに、文学とは無縁な方角にワツシヨイワツシヨイと流されてゐることだけは、誰の目にも確かであらう。いつたいこの流れを、誰がどうやつて防ぎ止めることが出来るだらうか。」
選評出典:『芥川賞全集 第十二巻』昭和58年/1983年1月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和57年/1982年3月号)
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芥川賞 87 昭和57年/1982年上半期   一覧へ
選評の概要 帯に短く、襷に短し 総行数30 (1行=26字)
選考委員 安岡章太郎 男62歳
候補 評価 行数 評言
  「該当作ナシの場合は、「帯に短し、襷に長し」といふやうな評言がよくいはれた。しかし今回(そして前回も)、全作品は、帯に短し、襷になほ短しである。」
選評出典:『芥川賞全集 第十二巻』昭和58年/1983年1月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和57年/1982年9月号)
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芥川賞 88 昭和57年/1982年下半期   一覧へ
選評の概要 事件の中味は 総行数32 (1行=26字)
選考委員 安岡章太郎 男62歳
候補 評価 行数 評言
女46歳
7 「いかにも新人らしい作品で、視点が中国人の少年から日本人の少女に中途で切り変ったりする点、多少散漫な印象もあるが、内容的に分裂しているわけではない。」「作者が言わなければならぬというものがあって、ちゃんとそれが描かれており、そこに小説の原点があると言っていいだろう。」
男42歳
20 「芥川賞が新進登竜門ということなら、(引用者中略)不適当と思った。たしかに面白さという点では、これは候補作中抜群であり、あらゆる意味で新人ばなれがしている。しかし、それはアタリマエで、唐氏の奇才は劇作家として知れ渡っているからだ。」「成功作かといえば、そうは言えまい。」「女性(引用者注:K・オハラ)と語り手“私”のからみ合いは秀逸であるが、それに引きずられて主題は立ち消えになっている。」
選評出典:『芥川賞全集 第十三巻』平成1年/1989年2月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和58年/1983年3月号)
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芥川賞 89 昭和58年/1983年上半期   一覧へ
選評の概要 短編小説の低落 総行数32 (1行=26字)
選考委員 安岡章太郎 男63歳
候補 評価 行数 評言
  「いつも言うことだが、今回も全体を通じて短篇小説の低落ぶりを痛感させられた。」
選評出典:『芥川賞全集 第十三巻』平成1年/1989年2月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和58年/1983年9月号)
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芥川賞 90 昭和58年/1983年下半期   一覧へ
選評の概要 掴み難きもの 総行数30 (1行=26字)
選考委員 安岡章太郎 男63歳
候補 評価 行数 評言
梅原稜子
女41歳
5 「(引用者注:女流の作品の)なかでは、(引用者中略)短篇小説らしくまとまっていて、私は一応この作品を推してみたが、なにぶん文章に魅力がなく、欠点が無いということが、トリエが無いということになって、」
男47歳
13 「小説らしい小説として読める作品であった。」「この作者は七、八年前に新潮新人賞をとった頃からみると、着実に成長しているようだ。」「杢二のような男は、おそらく戦前にもいたし、戦争中にもいて、決して珍しいタイプであるとは思えない。」「けだし、こうした人物が小説の主人公となって登場してくるのは、それだけ現代が無気力で、何をやろうにも力の入れどころのないような、無抵抗無感覚の時代になっているからであろう。」
女37歳
5 「この作品は、私としてはやはり積極的に推す気にはなれない。最初の「その細き道」の素直さを憶い返して貰いたい。」
選評出典:『芥川賞全集 第十三巻』平成1年/1989年2月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和59年/1984年3月号)
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芥川賞 91 昭和59年/1984年上半期   一覧へ
選評の概要 何が健全か 総行数32 (1行=26字)
選考委員 安岡章太郎 男64歳
候補 評価 行数 評言
  「候補作を見ると、この頃の新人は基礎的な習練もまったく無しに、いきなり小説らしきものを書いて、それをまた編集記者も文句も言わずに受けとって雑誌にのせているのかという気がする。」
選評出典:『芥川賞全集 第十三巻』平成1年/1989年2月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和59年/1984年9月号)
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芥川賞 92 昭和59年/1984年下半期   一覧へ
選評の概要 ひさびさの充実感 総行数31 (1行=26字)
選考委員 安岡章太郎 男64歳
候補 評価 行数 評言
女45歳
13 「「青桐」を読めば、大抵の人が、これまでの木崎さと子とは別人の印象を受けるのではないか。」「こんどの作品で彼女は初めて自身の内部に根づいた文体を獲得したとは言えるのでないか。」「いまは消滅してしまった地主という階級、その名残りをかろうじて保持していた一と握りの人たち、そういう人たちが消えて行くという“歴史”が、この作品の主題であるように、私には思われる。」
李良枝
女29歳
7 「一つの歴史を私は感じた。」「李氏は、そのこと(引用者注:在日朝鮮人という存在)を冷静な眼で観察しながら、振幅の激しい感情をこめて謳い上げており、在来の朝鮮人文学には見られなかった領域をひらいたものと言えよう。」
  「今回は、ひさしぶりで充実した候補作が並び、読む側として張り合いがあった。」
選評出典:『芥川賞全集 第十三巻』平成1年/1989年2月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和60年/1985年3月号)
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芥川賞 93 昭和60年/1985年上半期   一覧へ
選評の概要 書く必然性 総行数30 (1行=26字)
選考委員 安岡章太郎 男65歳
候補 評価 行数 評言
  「簡単に言って、現代の若手作家たちには書く意欲がなく、書く必然性を感じさせるものがない。」
選評出典:『芥川賞全集 第十三巻』平成1年/1989年2月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和60年/1985年9月号)
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芥川賞 94 昭和60年/1985年下半期   一覧へ
選評の概要 安心して読めること 総行数29 (1行=26字)
選考委員 安岡章太郎 男65歳
候補 評価 行数 評言
女55歳
22 「(引用者注:「果つる日」と共に)安心して読めた」「両者とも五十歳過ぎ、(引用者中略)とにかく他の若い人たちと違って文章は堅固で、鑑賞に耐えるのである。」「率直にいって小説としての完結性に欠けるかもしれない。」「しかし、これまで描かれたことにない異人種や、異民族文化との衝突が、断片的、かつ一方的なものであるにしろ、極めてリアルに切実に述べられていて、読みながら劇的な昂奮を覚えさせられた。」
  「この頃は二百枚ぐらいのものまで短編になるらしい。つまり最近は、文学も小学生の体格同様、大型化しているのであろうか、そのぶん水膨れで、筋骨薄弱の傾向がいちじるしいようだ。」
選評出典:『芥川賞全集 第十四巻』平成1年/1989年5月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和61年/1986年3月号)
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芥川賞 95 昭和61年/1986年上半期   一覧へ
選評の概要 泥田の中のネオン・サイン 総行数34 (1行=26字)
選考委員 安岡章太郎 男66歳
候補 評価 行数 評言
藤本恵子
女35歳
24 「戦後の農地解放で小作人から小さいながら自作農になった農民の、明るくて悲惨な生活が、日常的な筆致でよく描かれて入る。読みながら私は、普仏戦争前後のフランス庶民、モーパッサンの短編に出てくるような人物を連想した。」「文章は近頃の新人の例にもれず、冗漫に過ぎるが、少女マンガめいたこのリズムを失えば、作者は何も書けなくなるかもしれない。そのへんがムツかしいところだ。」
  「該当作ナシときまったが、今回の作品がとくに水準が低かったとは思えない。」
選評出典:『芥川賞全集 第十四巻』平成1年/1989年5月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和61年/1986年9月号)
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