芥川賞のすべて・のようなもの
第68回
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昭和47年/1972年下半期
(昭和48年/1973年1月18日決定発表/『文藝春秋』昭和48年/1973年3月号選評掲載)
選考委員  中村光夫
男61歳
永井龍男
男68歳
安岡章太郎
男52歳
吉行淳之介
男48歳
瀧井孝作
男78歳
大岡昇平
男63歳
舟橋聖一
男68歳
丹羽文雄
男68歳
井上靖
男65歳
選評総行数  26 21 29 28 31 32 44 25 20
候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数
山本道子 「ベティさんの庭」
132
女36歳
7 4 11 8 8 10 13 9 9
郷静子 「れくいえむ」
264
女43歳
11 5 18 9 11 9 23 2 8
野呂邦暢 「海辺の広い庭」
188
男35歳
0 2 0 3 0 0 0 2 0
山田智彦 「蟻の塔」
119
男36歳
0 2 0 2 0 7 4 5 0
富岡多恵子 「窓の向うに動物が走る」
39
女37歳
0 3 0 5 6 3 5 5 8
三木卓 「ミッドワイフの家」
114
男37歳
0 2 0 6 0 2 2 5 0
高橋光子 「遺る罪は在らじと」
127
女44歳
8 3 0 2 5 0 2 7 0
加藤富夫 「酋長」
121
男44歳
0 4 0 5 0 7 0 0 0
                 
年齢/枚数の説明   見方・注意点

このページの選評出典:『芥川賞全集 第九巻』昭和57年/1982年10月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和48年/1973年3月号)
1行当たりの文字数:26字


選考委員
中村光夫男61歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
欠点がそのまま魅力 総行数26 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
山本道子
女36歳
7 「均衡のとれた力作であり、危な気のない出来です。」「しかしこの自然で素直な筆づかいが次第に単調に陥るのは、そこに描かれた生活が変化に乏しいからだけではないので、作者の成長のために、ここにできかけている枠を壊す必要があるのではないかと思います。」
郷静子
女43歳
11 「推しました。素人くさい粗雑さが構成にも文章にも指摘され、リアリズムの観点から見れば、破綻だらけといってよいのですが、結局読ます力を持ち、最後まで読めば、強い感銘をうけます。」「こういう混沌とした強さは、とくに新人に望ましいのですが、近ごろはこれと反対の傾向が幅をきかせています。」「ともかく、欠点がそのまま魅力になったような、この一作は珍重すべきでしょう。」
野呂邦暢
男35歳
0  
山田智彦
男36歳
0  
富岡多恵子
女37歳
0  
三木卓
男37歳
0  
高橋光子
女44歳
8 「注目しました。」「どちらかと云えば素人らしい作品ですが、モチイフと主要人物の輪郭がはっきりして、血が通っているので、読んでひとりの人間を知ったという気持になります。それだけに作者がいい気になって自分の世界にとじこもっているところがありますが、これもきょろきょろあたりに眼を配っているよりまし」
加藤富夫
男44歳
0  
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他の選考委員
永井龍男
安岡章太郎
吉行淳之介
瀧井孝作
大岡昇平
舟橋聖一
丹羽文雄
井上靖
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選考委員
永井龍男男68歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
作品が静か 総行数21 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
山本道子
女36歳
4 「「ベティさんの庭」を推した。前作「魔法」から着実な成長があり、個性を伸ばしている点に敬服した。あれこれ眼を移さないので、作品が静かであった。」
郷静子
女43歳
5 「読ませる迫力のあるのは、作者が多年題材を育ててきた結果であり、戦争体験がわれわれに刻まれているからでもあろう。席上舟橋委員が、主人公の死で完結したのが惜しいと指摘したのは名評だと思った。」
野呂邦暢
男35歳
2 「平面的にひろがり、中心がなかった。」
山田智彦
男36歳
2 「前作「実験室」に及ばない。」
富岡多恵子
女37歳
3 「小気味よい才筆であったが、少くとももう一章なければ小説としては安定しないと考えられた。」
三木卓
男37歳
2 「陰惨な題材と取組みながら、努めて絵にしている点が注目された。」
高橋光子
女44歳
3 「一口に云って平凡であった。」
加藤富夫
男44歳
4 「(引用者注:「ベティさんの庭」の)次ぎに挙げた。短篇としての仕上げに成功した作品である。たとえば、「重大発表」の意表をついた提示などがそれで、前作「玩具の兵隊」の作者として力量がみとめられる。」
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他の選考委員
中村光夫
安岡章太郎
吉行淳之介
瀧井孝作
大岡昇平
舟橋聖一
丹羽文雄
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選考委員
安岡章太郎男52歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
素人のこわさ 総行数29 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
山本道子
女36歳
11 「或る意味で素人の強さをもった作品である。」「(引用者注:新潮同人雑誌賞で読んだときより)少女趣味がなくなり、海外の日本人の生活が素直にえがかれていて、共感を呼んだ。ただ、素直なだけに単調であり、読後の印象はこの枚数に較べて軽い読物という気がした。」
郷静子
女43歳
18 「題名を見たときから困った作品だと思った。弱点をかぞえ上げればキリもない。」「にもかかわらず、この作品には他には見られない感動があった。ひとくちに言えば、それは戦争という共通体験のせいであろうか、単に罹災者の個人的なおもいで話というものではない。」「職業作家として立って行けるかどうかときかれれば、首をかしげざるを得ない。しかしこの作品は、いわばそういう素人の、怕いもの知らずの強さがなければ書けなかったものであろう。」
野呂邦暢
男35歳
0  
山田智彦
男36歳
0  
富岡多恵子
女37歳
0  
三木卓
男37歳
0  
高橋光子
女44歳
0  
加藤富夫
男44歳
0  
          - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
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永井龍男
吉行淳之介
瀧井孝作
大岡昇平
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選考委員
吉行淳之介男48歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
三人の詩人 総行数28 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
山本道子
女36歳
8 「詩人だが、小説家としての、それもストーリー・テラーの才能があるとみえる。上手な作品で、枠の中で物語は見ごとに進行して終るが、欲張ったことをいえばその枠をはじき飛ばす力がない。」
郷静子
女43歳
9 「戦争にたいする見方も納得できて、親愛感をもったが、私自身の体験や想像を上まわる部分がなく、ギョッとさせられるところがないのが物足らなかった。」「結局ういういしいところが好感をもたれ、さんざん銓衡会が揉めているうちに、すうっと二作授賞にきまってしまった。」
野呂邦暢
男35歳
3 「才能を随所に感じさせたが、この作品は欲張りすぎて焦点がぼけ、失敗作である。」
山田智彦
男36歳
2 「以前の候補作のほうが良かったという意見が多く、功労賞と考えても作品が弱い。」
富岡多恵子
女37歳
5 「詩人としての感覚をわざと殺した描き方で、そこに新鮮さがあったが、遊びに過ぎ、それはそれで構わないが、この新人賞にはいささか不適格とおもえた。」
三木卓
男37歳
6 「詩人としての感受性を開き過ぎて、かえって目ざわりの箇所もあったが、私はこの作品に一番高い点をつける。」
高橋光子
女44歳
2 「確かな筆致で、水準には達しているのだが、人物が等身大でありすぎる。」
加藤富夫
男44歳
5 「土俗風の不気味な世界をうまく描いているが、作者とのかかわり合い方にもう一つ分らないところがあった。」
  「今回は読みごたえのある作品が多かった」
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他の選考委員
中村光夫
永井龍男
安岡章太郎
瀧井孝作
大岡昇平
舟橋聖一
丹羽文雄
井上靖
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選考委員
瀧井孝作男78歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
戦争悪 総行数31 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
山本道子
女36歳
8 「郷愁の心持が素直に描いてあった。」
郷静子
女43歳
11 「反戦小説の長篇で、戦争悪がよくわかり、私は感心した。」「少女の友だちの父の反戦教授一家や、少女の兄の友人の反戦主義者なども、よく描きこんであり、少女の手紙の往復も、しまいの反戦主義者との会話なども、奔放な手法でなかなか好かった。」「戦争悪をこれほどまでハッキリと示した手腕は大きいと思った。」
野呂邦暢
男35歳
0  
山田智彦
男36歳
0  
富岡多恵子
女37歳
6 「漫画家の手法は面白いけれど、まだ少し小粒と見えた。澄んだ感じか、または大きいたっぷりした感じが、少し出初めたかとも見えた。」
三木卓
男37歳
0  
高橋光子
女44歳
5 「家付娘の母親の元気な働きぶり、養子の父親の真面目な村長ぶりなど、克明に描いてあった。しまいの引退後の老父のボケた強暴ぶりは描きすぎの感じがした。」
加藤富夫
男44歳
0  
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中村光夫
永井龍男
安岡章太郎
吉行淳之介
大岡昇平
舟橋聖一
丹羽文雄
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選考委員
大岡昇平男63歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
幸運な秀作 総行数32 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
山本道子
女36歳
10 「題材と技巧のバランスが取れていて、驚くべき自然さが現れた。幸運な秀作であった。」「(引用者注:新潮新人賞受賞から)一年の間に題材の純化と統一において、急速な成長が見られるのは、珍しい場合だと思った。」「最初からこの二作(引用者注:「ベティさんの庭」と「れくいえむ」)にほぼ同数の過半数票が集中し、最後までその比率はかわらなかった。」
郷静子
女43歳
9 「本土空襲という題材自身に切実さがあるが、それを時間をわざと混乱させながら、その混乱に陥ることなく、テーマの持つ力が増幅されているのは見事である。」「最初からこの二作(引用者注:「ベティさんの庭」と「れくいえむ」)にほぼ同数の過半数票が集中し、最後までその比率はかわらなかった。」
野呂邦暢
男35歳
0  
山田智彦
男36歳
7 「(引用者注:「酋長」と共に)今日の小説作りの技法は進歩したと感服したのだが、あまりにも磨かれた表面に、それとなく深い基盤をのぞかせる亀裂のようなものがある方がいい、と思った。」
富岡多恵子
女37歳
3 「(引用者注:詩人の作品でも)「窓の向うに動物が走る」のように「遊び」の感じがあって受賞になりにくくて、損をすることもある。」
三木卓
男37歳
2 「力みすぎという、小説界の新人と同じ誤りに陥っている」
高橋光子
女44歳
0  
加藤富夫
男44歳
7 「(引用者注:「蟻の塔」と共に)今日の小説作りの技法は進歩したと感服したのだが、あまりにも磨かれた表面に、それとなく深い基盤をのぞかせる亀裂のようなものがある方がいい、と思った。」
  「今回もよい作品が多かったが、候補八篇のうち三篇が詩人としてすでに声明のある作家によって占められた。」
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中村光夫
永井龍男
安岡章太郎
吉行淳之介
瀧井孝作
舟橋聖一
丹羽文雄
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選考委員
舟橋聖一男68歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
反戦と望郷 総行数44 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
山本道子
女36歳
13 「平凡で素直なタッチを買われたらしい。が、自然的とか丁寧さとかは悪いことではないにしても、特にとりたてて言うほどのこともない。その代り、どぎつさ(原文傍点)とかえげつなさ(原文傍点)とかがないから、多人数で銓衡するような場合には、票数がよく集る。」「この人はまもなく作家生活の壁に突き当るだろう。主婦の生活と書く生活の矛盾に早くも悩んでいるようだが、それを乗り切れば、将来性も出てこよう。」
郷静子
女43歳
23 「二八〇枚の力作だが、芥川賞の銓衡内規では、枚数超過で、寛くみてもスレスレのところにある。長すぎることが、この作品をより素人っぽくしていることは否み難い。」「あくまで戦中の体験と事実に立脚した小説であるのに、主人公節子を殺すことが嘘だと言っては過酷なら、小説作りのための御都合主義だという点が、私がすっきり出来なかった理由である。」
野呂邦暢
男35歳
0  
山田智彦
男36歳
4 「もの足りなかった。」「「実験室」に及ばず、」
富岡多恵子
女37歳
5 「もの足りなかった。」「「イバラの燃える音」を凌駕することが出来なかった。」
三木卓
男37歳
2 「心にとまった」
高橋光子
女44歳
2 「心にとまった」
加藤富夫
男44歳
0  
  「今回は特に推すものが見当らなかったので、私個人の答申は、該当作ナシとせざるを得なかったのである。」
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他の選考委員
中村光夫
永井龍男
安岡章太郎
吉行淳之介
瀧井孝作
大岡昇平
丹羽文雄
井上靖
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選考委員
丹羽文雄男68歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
読後感 総行数25 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
山本道子
女36歳
9 「ジャパニーズワイフの日常性が狙いで具体的に描かれていたのが目新しく、これまでこうした作品が生れなかったのが不思議なくらいである。ただ一ヵ所気になったのは、最後のところで夫が白人女を秘書として飛行機で発つところで、嫉妬したり、捨てられたと動揺するところが私には奇異に思われた。」
郷静子
女43歳
2 「偶然と感傷がすこし気になったが、力作である。」
野呂邦暢
男35歳
2 「文章の歯切れのよさが快かったが、あまり間口をひろげすぎたようである。」
山田智彦
男36歳
5 「(引用者注:「遺る罪は在らじと」と共に)しっかりと書かれていた。が、(引用者中略)内容が地味すぎたので損をした。」「山田君の才能については、すでに定評がある」
富岡多恵子
女37歳
5 「(引用者注:三木卓と)共に詩人だが、(引用者中略)詩人であることを武器にしている。」
三木卓
男37歳
5 「(引用者注:富岡多恵子と)共に詩人だが、(引用者中略)詩から抜け出そうとして苦闘している」
高橋光子
女44歳
7 「(引用者注:「蟻の塔」と共に)しっかりと書かれていた。が、(引用者中略)内容が地味すぎたので損をした。」「私小説的ふうの材料から飛躍して、蝶のように舞い上ったなら、その才能は一挙に花がひらくのではないか、という気がした。」
加藤富夫
男44歳
0  
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他の選考委員
中村光夫
永井龍男
安岡章太郎
吉行淳之介
瀧井孝作
大岡昇平
舟橋聖一
井上靖
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選考委員
井上靖男65歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
「ベティさんの庭」ほか 総行数20 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
山本道子
女36歳
9 「目立っていた。」「すがすがしく風の通っている作品で、ところどころ網膜にやきついてくるような鮮やかな場面もあって、作品の舞台になっている外地も、その外地に生きてゆく主人公の気持も生活も、よく描かれてあった。すっきりと仕上がっている。」
郷静子
女43歳
8 「作品に対する坐り方を変えてしまえば、これはこれで他の二作(引用者注:「ベティさんの庭」「窓の向うに動物が走る」)の持たぬ強さがあると言えよう。初心だけしか生み出せぬものが、多少もたれっぽく読む者の心に迫ってくる。私はこの作品は推さなかったが、推す人の推す理由は判らないではなかった。」
野呂邦暢
男35歳
0  
山田智彦
男36歳
0  
富岡多恵子
女37歳
8 「目立っていた。」「しゃれた作品である。」「上等に仕上がっている。こういう遊びの形で人間を描くことは難しいが、父親も、娘も、その心の触れ合いも、造花の中にちゃんと仕舞われている。達者だが、埃りはない。」
三木卓
男37歳
0  
高橋光子
女44歳
0  
加藤富夫
男44歳
0  
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他の選考委員
中村光夫
永井龍男
安岡章太郎
吉行淳之介
瀧井孝作
大岡昇平
舟橋聖一
丹羽文雄
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受賞者・作品
山本道子女36歳×各選考委員 
「ベティさんの庭」
短篇 132
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
中村光夫
男61歳
7 「均衡のとれた力作であり、危な気のない出来です。」「しかしこの自然で素直な筆づかいが次第に単調に陥るのは、そこに描かれた生活が変化に乏しいからだけではないので、作者の成長のために、ここにできかけている枠を壊す必要があるのではないかと思います。」
永井龍男
男68歳
4 「「ベティさんの庭」を推した。前作「魔法」から着実な成長があり、個性を伸ばしている点に敬服した。あれこれ眼を移さないので、作品が静かであった。」
安岡章太郎
男52歳
11 「或る意味で素人の強さをもった作品である。」「(引用者注:新潮同人雑誌賞で読んだときより)少女趣味がなくなり、海外の日本人の生活が素直にえがかれていて、共感を呼んだ。ただ、素直なだけに単調であり、読後の印象はこの枚数に較べて軽い読物という気がした。」
吉行淳之介
男48歳
8 「詩人だが、小説家としての、それもストーリー・テラーの才能があるとみえる。上手な作品で、枠の中で物語は見ごとに進行して終るが、欲張ったことをいえばその枠をはじき飛ばす力がない。」
瀧井孝作
男78歳
8 「郷愁の心持が素直に描いてあった。」
大岡昇平
男63歳
10 「題材と技巧のバランスが取れていて、驚くべき自然さが現れた。幸運な秀作であった。」「(引用者注:新潮新人賞受賞から)一年の間に題材の純化と統一において、急速な成長が見られるのは、珍しい場合だと思った。」「最初からこの二作(引用者注:「ベティさんの庭」と「れくいえむ」)にほぼ同数の過半数票が集中し、最後までその比率はかわらなかった。」
舟橋聖一
男68歳
13 「平凡で素直なタッチを買われたらしい。が、自然的とか丁寧さとかは悪いことではないにしても、特にとりたてて言うほどのこともない。その代り、どぎつさ(原文傍点)とかえげつなさ(原文傍点)とかがないから、多人数で銓衡するような場合には、票数がよく集る。」「この人はまもなく作家生活の壁に突き当るだろう。主婦の生活と書く生活の矛盾に早くも悩んでいるようだが、それを乗り切れば、将来性も出てこよう。」
丹羽文雄
男68歳
9 「ジャパニーズワイフの日常性が狙いで具体的に描かれていたのが目新しく、これまでこうした作品が生れなかったのが不思議なくらいである。ただ一ヵ所気になったのは、最後のところで夫が白人女を秘書として飛行機で発つところで、嫉妬したり、捨てられたと動揺するところが私には奇異に思われた。」
井上靖
男65歳
9 「目立っていた。」「すがすがしく風の通っている作品で、ところどころ網膜にやきついてくるような鮮やかな場面もあって、作品の舞台になっている外地も、その外地に生きてゆく主人公の気持も生活も、よく描かれてあった。すっきりと仕上がっている。」
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他の候補作
郷静子
「れくいえむ」
野呂邦暢
「海辺の広い庭」
山田智彦
「蟻の塔」
富岡多恵子
「窓の向うに動物が走る」
三木卓
「ミッドワイフの家」
高橋光子
「遺る罪は在らじと」
加藤富夫
「酋長」
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受賞者・作品
郷静子女43歳×各選考委員 
「れくいえむ」
中篇 264
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
中村光夫
男61歳
11 「推しました。素人くさい粗雑さが構成にも文章にも指摘され、リアリズムの観点から見れば、破綻だらけといってよいのですが、結局読ます力を持ち、最後まで読めば、強い感銘をうけます。」「こういう混沌とした強さは、とくに新人に望ましいのですが、近ごろはこれと反対の傾向が幅をきかせています。」「ともかく、欠点がそのまま魅力になったような、この一作は珍重すべきでしょう。」
永井龍男
男68歳
5 「読ませる迫力のあるのは、作者が多年題材を育ててきた結果であり、戦争体験がわれわれに刻まれているからでもあろう。席上舟橋委員が、主人公の死で完結したのが惜しいと指摘したのは名評だと思った。」
安岡章太郎
男52歳
18 「題名を見たときから困った作品だと思った。弱点をかぞえ上げればキリもない。」「にもかかわらず、この作品には他には見られない感動があった。ひとくちに言えば、それは戦争という共通体験のせいであろうか、単に罹災者の個人的なおもいで話というものではない。」「職業作家として立って行けるかどうかときかれれば、首をかしげざるを得ない。しかしこの作品は、いわばそういう素人の、怕いもの知らずの強さがなければ書けなかったものであろう。」
吉行淳之介
男48歳
9 「戦争にたいする見方も納得できて、親愛感をもったが、私自身の体験や想像を上まわる部分がなく、ギョッとさせられるところがないのが物足らなかった。」「結局ういういしいところが好感をもたれ、さんざん銓衡会が揉めているうちに、すうっと二作授賞にきまってしまった。」
瀧井孝作
男78歳
11 「反戦小説の長篇で、戦争悪がよくわかり、私は感心した。」「少女の友だちの父の反戦教授一家や、少女の兄の友人の反戦主義者なども、よく描きこんであり、少女の手紙の往復も、しまいの反戦主義者との会話なども、奔放な手法でなかなか好かった。」「戦争悪をこれほどまでハッキリと示した手腕は大きいと思った。」
大岡昇平
男63歳
9 「本土空襲という題材自身に切実さがあるが、それを時間をわざと混乱させながら、その混乱に陥ることなく、テーマの持つ力が増幅されているのは見事である。」「最初からこの二作(引用者注:「ベティさんの庭」と「れくいえむ」)にほぼ同数の過半数票が集中し、最後までその比率はかわらなかった。」
舟橋聖一
男68歳
23 「二八〇枚の力作だが、芥川賞の銓衡内規では、枚数超過で、寛くみてもスレスレのところにある。長すぎることが、この作品をより素人っぽくしていることは否み難い。」「あくまで戦中の体験と事実に立脚した小説であるのに、主人公節子を殺すことが嘘だと言っては過酷なら、小説作りのための御都合主義だという点が、私がすっきり出来なかった理由である。」
丹羽文雄
男68歳
2 「偶然と感傷がすこし気になったが、力作である。」
井上靖
男65歳
8 「作品に対する坐り方を変えてしまえば、これはこれで他の二作(引用者注:「ベティさんの庭」「窓の向うに動物が走る」)の持たぬ強さがあると言えよう。初心だけしか生み出せぬものが、多少もたれっぽく読む者の心に迫ってくる。私はこの作品は推さなかったが、推す人の推す理由は判らないではなかった。」
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他の候補作
山本道子
「ベティさんの庭」
野呂邦暢
「海辺の広い庭」
山田智彦
「蟻の塔」
富岡多恵子
「窓の向うに動物が走る」
三木卓
「ミッドワイフの家」
高橋光子
「遺る罪は在らじと」
加藤富夫
「酋長」
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候補者・作品
野呂邦暢男35歳×各選考委員 
「海辺の広い庭」
中篇 188
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
中村光夫
男61歳
0  
永井龍男
男68歳
2 「平面的にひろがり、中心がなかった。」
安岡章太郎
男52歳
0  
吉行淳之介
男48歳
3 「才能を随所に感じさせたが、この作品は欲張りすぎて焦点がぼけ、失敗作である。」
瀧井孝作
男78歳
0  
大岡昇平
男63歳
0  
舟橋聖一
男68歳
0  
丹羽文雄
男68歳
2 「文章の歯切れのよさが快かったが、あまり間口をひろげすぎたようである。」
井上靖
男65歳
0  
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他の候補作
山本道子
「ベティさんの庭」
郷静子
「れくいえむ」
山田智彦
「蟻の塔」
富岡多恵子
「窓の向うに動物が走る」
三木卓
「ミッドワイフの家」
高橋光子
「遺る罪は在らじと」
加藤富夫
「酋長」
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候補者・作品
山田智彦男36歳×各選考委員 
「蟻の塔」
短篇 119
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
中村光夫
男61歳
0  
永井龍男
男68歳
2 「前作「実験室」に及ばない。」
安岡章太郎
男52歳
0  
吉行淳之介
男48歳
2 「以前の候補作のほうが良かったという意見が多く、功労賞と考えても作品が弱い。」
瀧井孝作
男78歳
0  
大岡昇平
男63歳
7 「(引用者注:「酋長」と共に)今日の小説作りの技法は進歩したと感服したのだが、あまりにも磨かれた表面に、それとなく深い基盤をのぞかせる亀裂のようなものがある方がいい、と思った。」
舟橋聖一
男68歳
4 「もの足りなかった。」「「実験室」に及ばず、」
丹羽文雄
男68歳
5 「(引用者注:「遺る罪は在らじと」と共に)しっかりと書かれていた。が、(引用者中略)内容が地味すぎたので損をした。」「山田君の才能については、すでに定評がある」
井上靖
男65歳
0  
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他の候補作
山本道子
「ベティさんの庭」
郷静子
「れくいえむ」
野呂邦暢
「海辺の広い庭」
富岡多恵子
「窓の向うに動物が走る」
三木卓
「ミッドワイフの家」
高橋光子
「遺る罪は在らじと」
加藤富夫
「酋長」
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候補者・作品
富岡多恵子女37歳×各選考委員 
「窓の向うに動物が走る」
短篇 39
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
中村光夫
男61歳
0  
永井龍男
男68歳
3 「小気味よい才筆であったが、少くとももう一章なければ小説としては安定しないと考えられた。」
安岡章太郎
男52歳
0  
吉行淳之介
男48歳
5 「詩人としての感覚をわざと殺した描き方で、そこに新鮮さがあったが、遊びに過ぎ、それはそれで構わないが、この新人賞にはいささか不適格とおもえた。」
瀧井孝作
男78歳
6 「漫画家の手法は面白いけれど、まだ少し小粒と見えた。澄んだ感じか、または大きいたっぷりした感じが、少し出初めたかとも見えた。」
大岡昇平
男63歳
3 「(引用者注:詩人の作品でも)「窓の向うに動物が走る」のように「遊び」の感じがあって受賞になりにくくて、損をすることもある。」
舟橋聖一
男68歳
5 「もの足りなかった。」「「イバラの燃える音」を凌駕することが出来なかった。」
丹羽文雄
男68歳
5 「(引用者注:三木卓と)共に詩人だが、(引用者中略)詩人であることを武器にしている。」
井上靖
男65歳
8 「目立っていた。」「しゃれた作品である。」「上等に仕上がっている。こういう遊びの形で人間を描くことは難しいが、父親も、娘も、その心の触れ合いも、造花の中にちゃんと仕舞われている。達者だが、埃りはない。」
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他の候補作
山本道子
「ベティさんの庭」
郷静子
「れくいえむ」
野呂邦暢
「海辺の広い庭」
山田智彦
「蟻の塔」
三木卓
「ミッドワイフの家」
高橋光子
「遺る罪は在らじと」
加藤富夫
「酋長」
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候補者・作品
三木卓男37歳×各選考委員 
「ミッドワイフの家」
短篇 114
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
中村光夫
男61歳
0  
永井龍男
男68歳
2 「陰惨な題材と取組みながら、努めて絵にしている点が注目された。」
安岡章太郎
男52歳
0  
吉行淳之介
男48歳
6 「詩人としての感受性を開き過ぎて、かえって目ざわりの箇所もあったが、私はこの作品に一番高い点をつける。」
瀧井孝作
男78歳
0  
大岡昇平
男63歳
2 「力みすぎという、小説界の新人と同じ誤りに陥っている」
舟橋聖一
男68歳
2 「心にとまった」
丹羽文雄
男68歳
5 「(引用者注:富岡多恵子と)共に詩人だが、(引用者中略)詩から抜け出そうとして苦闘している」
井上靖
男65歳
0  
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他の候補作
山本道子
「ベティさんの庭」
郷静子
「れくいえむ」
野呂邦暢
「海辺の広い庭」
山田智彦
「蟻の塔」
富岡多恵子
「窓の向うに動物が走る」
高橋光子
「遺る罪は在らじと」
加藤富夫
「酋長」
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候補者・作品
高橋光子女44歳×各選考委員 
「遺る罪は在らじと」
短篇 127
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
中村光夫
男61歳
8 「注目しました。」「どちらかと云えば素人らしい作品ですが、モチイフと主要人物の輪郭がはっきりして、血が通っているので、読んでひとりの人間を知ったという気持になります。それだけに作者がいい気になって自分の世界にとじこもっているところがありますが、これもきょろきょろあたりに眼を配っているよりまし」
永井龍男
男68歳
3 「一口に云って平凡であった。」
安岡章太郎
男52歳
0  
吉行淳之介
男48歳
2 「確かな筆致で、水準には達しているのだが、人物が等身大でありすぎる。」
瀧井孝作
男78歳
5 「家付娘の母親の元気な働きぶり、養子の父親の真面目な村長ぶりなど、克明に描いてあった。しまいの引退後の老父のボケた強暴ぶりは描きすぎの感じがした。」
大岡昇平
男63歳
0  
舟橋聖一
男68歳
2 「心にとまった」
丹羽文雄
男68歳
7 「(引用者注:「蟻の塔」と共に)しっかりと書かれていた。が、(引用者中略)内容が地味すぎたので損をした。」「私小説的ふうの材料から飛躍して、蝶のように舞い上ったなら、その才能は一挙に花がひらくのではないか、という気がした。」
井上靖
男65歳
0  
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他の候補作
山本道子
「ベティさんの庭」
郷静子
「れくいえむ」
野呂邦暢
「海辺の広い庭」
山田智彦
「蟻の塔」
富岡多恵子
「窓の向うに動物が走る」
三木卓
「ミッドワイフの家」
加藤富夫
「酋長」
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候補者・作品
加藤富夫男44歳×各選考委員 
「酋長」
短篇 121
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
中村光夫
男61歳
0  
永井龍男
男68歳
4 「(引用者注:「ベティさんの庭」の)次ぎに挙げた。短篇としての仕上げに成功した作品である。たとえば、「重大発表」の意表をついた提示などがそれで、前作「玩具の兵隊」の作者として力量がみとめられる。」
安岡章太郎
男52歳
0  
吉行淳之介
男48歳
5 「土俗風の不気味な世界をうまく描いているが、作者とのかかわり合い方にもう一つ分らないところがあった。」
瀧井孝作
男78歳
0  
大岡昇平
男63歳
7 「(引用者注:「蟻の塔」と共に)今日の小説作りの技法は進歩したと感服したのだが、あまりにも磨かれた表面に、それとなく深い基盤をのぞかせる亀裂のようなものがある方がいい、と思った。」
舟橋聖一
男68歳
0  
丹羽文雄
男68歳
0  
井上靖
男65歳
0  
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他の候補作
山本道子
「ベティさんの庭」
郷静子
「れくいえむ」
野呂邦暢
「海辺の広い庭」
山田智彦
「蟻の塔」
富岡多恵子
「窓の向うに動物が走る」
三木卓
「ミッドワイフの家」
高橋光子
「遺る罪は在らじと」
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