芥川賞のすべて・のようなもの
選評の概要
55.
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6667686970.
71727374.
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Last Update[H27]2015/5/26

大岡昇平
Ooka Shohei
生没年月日【注】 明治42年/1909年3月6日~昭和63年/1988年12月25日
在任期間 第55回~第74回(通算10年・20回)
在任年齢 57歳3ヶ月~66歳9ヶ月
経歴 東京市牛込区生まれ。京都帝国大学文学部仏文科卒。在学中より河上徹太郎や中原中也と同人誌『白痴群』を創刊。卒業後は、帝国酸素に勤務。そのかたわら翻訳も行う。昭和19年/1944年に応召。戦後、帰国後に『俘虜記』を発表する。
受賞歴・候補歴
個人全集 『大岡昇平全集』全15巻(昭和48年/1973年10月~昭和50年/1975年8月・中央公論社刊)
『大岡昇平全集』全23巻・別巻(平成6年/1994年10月~平成15年/2003年8月・筑摩書房刊)
備考
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下記の選評の概要には、評価として◎か○をつけたもの(見方・注意点を参照)、または受賞作に対するもののみ抜粋しました。さらにくわしい情報は、各回の「この回の全概要」をクリックしてご覧ください。

芥川賞 55 昭和41年/1966年上半期   一覧へ
選評の概要 水準を超えるもの 総行数38 (1行=26字)
選考委員 大岡昇平 男57歳
候補 評価 行数 評言
山崎柳子
女43歳
8 「推薦出来ると思った。」「結末、混血児の自殺の段取りも、少し説得的でない。しかし黒人の混血児童について、政治を表に出さず、問題を生活の中に解消して書き込んである点で、凡手ではない。」「私はこれを当選作にしてもよい、と思った」
なだいなだ
男37歳
10 「推薦出来ると思った。」「文体に才気があり、面白くすらすら読めた。「日本文学をぶっつぶせ」という主張に私はまったく賛成なので、その主張の下に雑誌を出そうとしている医学生の群れに、風俗的な興味があった。しかし最後に女主人公が、雑誌を出す基金にしてくれといって、五十万円を枕元において自殺する、というのはお粗末というほかはない。」
野島勝彦
男30歳
8 「推薦出来ると思った。」「一番むずかしい主題を追求していて、作者の態度に好感が持てた。」「世代の異る女性の「胎」を網羅しているのが、滑稽な印象を与えて損をした。」
  「(引用者注:私は)元来新人賞は要するにコンクールであるから、その期の最優秀作を選べばよいという意見である。ただ芥川賞が社会的権威があるから、受賞者のその後の経歴に影響するところが大きい。」「ある程度の水準に達していることが要求されるのではないか、と思っていた。」
選評出典:『芥川賞全集 第七巻』昭和57年/1982年8月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和41年/1966年9月号)
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芥川賞 56 昭和41年/1966年下半期   一覧へ
選評の概要 冷静な作者 総行数24 (1行=26字)
選考委員 大岡昇平 男57歳
候補 評価 行数 評言
男23歳
12 「死刑執行担当者の心理の洞察においても文章においても、自己統制が出来ている。」「芥川賞は本来若者のものなのだから、授賞は当然といえよう。」「看守の日常生活が、あまりしゃれているので、少し違和感を覚えたが、これは私が古い先入観に捉われているからであった。」
選評出典:『芥川賞全集 第七巻』昭和57年/1982年8月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和42年/1967年3月号)
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芥川賞 57 昭和42年/1967年上半期   一覧へ
選評の概要 非凡な手腕 総行数23 (1行=26字)
選考委員 大岡昇平 男58歳
候補 評価 行数 評言
男41歳
16 「困難な沖縄の状況の下で、これだけの作品が出たということは、慶賀すべきことである。内地にはない深刻な状況が取扱われていて、切迫した小説的興味を生み出している。」「この作品の下には、表面に出ていない、多くのものがある、という感じである。それをどういう風に書きあらわすか、に作者の将来の問題がかかっていると思われる。」
選評出典:『芥川賞全集 第七巻』昭和57年/1982年8月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和42年/1967年9月号)
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芥川賞 58 昭和42年/1967年下半期   一覧へ
選評の概要 順当な結果 総行数28 (1行=26字)
選考委員 大岡昇平 男58歳
候補 評価 行数 評言
佐木隆三
男30歳
6 「特に欠点と目されるものがない。人間関係の扱方もしっかりしており、筆力がある。私はこの意味でこの作品を推したのだが、この題材は「北九州物」という言葉があるほど書き古されており、マカロニ・ウエスターンみたいな残酷物語の型が出来かかっている。」
男34歳
10 「(引用者注:授賞は)順当の結果といえよう。」「十分に作者の力量を窺わせる作品である。」「ただ太平洋戦争が負けると判断して、何もしなかった旧軍人を想像することは私にはむずかしい。」「あの民族の激動期を抜いて、軍人の人間性が仮構されている点に不満であった。」
  「今期は二回或いは三回候補になった作家によい作品が多く、銓衡に手間取った。」
選評出典:『芥川賞全集 第七巻』昭和57年/1982年8月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和43年/1968年3月号)
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芥川賞 59 昭和43年/1968年上半期   一覧へ
選評の概要 丸谷氏に二重マル 総行数34 (1行=26字)
選考委員 大岡昇平 男59歳
候補 評価 行数 評言
男42歳
23 「「年の残り」と「三匹の蟹」がずば抜けてすぐれており、また作風にそれぞれ特色があって、優劣がつけ難かった」「老人の心理がよく描けており、人間の生について、根源的な問いを発している。」「この作品のテーマの捉え方は、明らかに氏の作家としての個性的な核に根ざしている。」「私の採点では丸谷氏に二重マル、大庭氏に一重マルというところであった。」
女37歳
17 「「年の残り」と「三匹の蟹」がずば抜けてすぐれており、また作風にそれぞれ特色があって、優劣がつけ難かった」「その流動的な文体と、ソフィストケイトされた会話に、いいようのない魅力がある。否むことの出来ない才能の刻印があり、これも逸するわけに行かない。」「私の採点では丸谷氏に二重マル、大庭氏に一重マルというところであった。」
  「大庭みな子氏の「三匹の蟹」も「群像」新人賞受賞作品であり、すでに世評が定っている。それに重ねて授賞出来るのは、芥川賞が普通の新人賞より一段上の権威があるからである。」
選評出典:『芥川賞全集 第八巻』昭和57年/1982年9月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和43年/1968年9月号)
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芥川賞 60 昭和43年/1968年下半期   一覧へ
選評の概要 「未成年」の欠点 総行数37 (1行=26字)
選考委員 大岡昇平 男59歳
候補 評価 行数 評言
阿部昭
男34歳
10 「私の採点で一番よかった」「「季刊藝術」秋号「大いなる日」と読み合わせると、延びようとする気配が感じられる。この作品で授賞してもよいのではないか、と考えていたが、結末が、主題との関連において必然性がなく、そこに欠点があった。」
  「私は芥川賞に限らず、新人賞にはなるべく当選作を出すべきであるという意見で、いつもその方針で銓衡に当っている。しかしこんどはどうも該当作がないのではないか、という気がしていた。」「今回は「父もの」という言葉が出たくらい、父親と息子、その妻との三つ巴の関係を書いたものが多かった。」
選評出典:『芥川賞全集 第八巻』昭和57年/1982年9月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和44年/1969年3月号)
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芥川賞 61 昭和44年/1969年上半期   一覧へ
選評の概要 庄司の「新しさ」 総行数28 (1行=26字)
選考委員 大岡昇平 男60歳
候補 評価 行数 評言
男32歳
6 「現代の典型の一つを、「猛烈」「最高」など流行語で書き表しているのに興味を惹かれました。」「この作品が「新しさ」という点で、芥川賞にふさわしいのではないか、と推薦しておきました」
男41歳
7 「朝鮮戦争時代、占領軍と日本人との間に生じた忌まわしい間隙が、二人のアルバイト学生の生活を通してよく描けています。」「描写力がしっかりしている上に、題材には沖縄問題が深刻化している今、現代的興味もあるといえます。」
  「今期は、よい作品が多かったと思います。」
選評出典:『芥川賞全集 第八巻』昭和57年/1982年9月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和44年/1969年9月号)
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芥川賞 62 昭和44年/1969年下半期   一覧へ
選評の概要 詩人の視角 総行数32 (1行=26字)
選考委員 大岡昇平 男60歳
候補 評価 行数 評言
男47歳
14 「その清新な感受性と、作品の詩的な、もしくは音楽的な構成によって、現代の小説に新風をもたらしたといえる」「この構成力は詩人のそれであり、小説の世界を拡大し、多極化したといえる。詩人の視覚は現実に垂直に対するはずだが、戦中戦後の大連という世界が、十分の拡がりと厚みをもって浮き彫りされているのに感歎したのである。」
李恢成
男34歳
7 「全体的に未熟であるが、一種のみずみずしさが、その観察にも文章にも感じられ、新人賞にふさわしいと思った。日常的な生活上の些細事が、人物が朝鮮人国籍を持つという事実によって、にわかに緊張を持つのに驚歎した。」
選評出典:『芥川賞全集 第八巻』昭和57年/1982年9月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和45年/1970年3月号)
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芥川賞 63 昭和45年/1970年上半期   一覧へ
選評の概要 円熟と誠実 総行数32 (1行=26字)
選考委員 大岡昇平 男61歳
候補 評価 行数 評言
男49歳
7 「円熟という芥川賞では珍しい要素が加わっていて、群を抜いていた。私自身、二十年前に同じような外地の収容所を題材としながら、古山氏の域に達しなかったので、特にこの作品には弱いのである。」
女36歳
9 「文章もしっかりしており、孤独な女性の感情と感覚の惑乱が、隈なく描き出されている。やや仰々しい道具立ては恐怖小説的傾斜を懸念させるのだが、「小さな子供が溺れ死のうとしていても……仏は見ているだけだ」というような句に、作者の誠実を信じたい。」
  「今期は、選択に迷うくらいすぐれた作品が多かった。」
選評出典:『芥川賞全集 第八巻』昭和57年/1982年9月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和45年/1970年9月号)
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芥川賞 64 昭和45年/1970年下半期   一覧へ
選評の概要 日本文学になかったもの 総行数19 (1行=26字)
選考委員 大岡昇平 男61歳
候補 評価 行数 評言
男33歳
10 「二作(引用者注:「杳子」「妻隠」)では「杳子」の方が、よく書きこまれている。従来この作者の作品は、一本調子にすぎるのが欠点だが、「妻隠」においては、視点の転換、面の交錯が、実にうまく行われている。私はこの方を推したが、むろん「杳子」も授賞の価値は十分である。」「実感派と目されていた委員が、こぞってこの作品(引用者注:「杳子」)を推したのは、興味深かった。」
選評出典:『芥川賞全集 第八巻』昭和57年/1982年9月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和46年/1971年3月号)
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芥川賞 65 昭和46年/1971年上半期   一覧へ
選評の概要 多彩な候補作 総行数31 (1行=26字)
選考委員 大岡昇平 男62歳
候補 評価 行数 評言
金石範
男44歳
12 「(引用者注:「黄色い娼婦」「渋面の祭」と共に)新鮮味があり、技巧もすぐれていて、どれが受賞してもおかしくない、と思われた。」「主題にも文体にもあいまいさはなく、デッサンがしっかりしている作品である。」「しかし現在の日本の「純文学」の基準では、この自然な物語性は直木賞にふさわしいということになるのである。」
森万紀子
女36歳
16 「(引用者注:「万徳幽霊奇譚」「渋面の祭」と共に)新鮮味があり、技巧もすぐれていて、どれが受賞してもおかしくない、と思われた。」「この作者の持ち味の、人生と社会に対する独自な観点が、主人公を娼婦と設定して、一層直截な表現を得ていると私には思われた。」「一種の切迫感のある力作だが、一方やや肩に力が入りすぎた感じもある。」「しかしこの作家にはもう芥川賞は必要ないだろう。」
花輪莞爾
男35歳
11 「(引用者注:「黄色い娼婦」「万徳幽霊奇譚」と共に)新鮮味があり、技巧もすぐれていて、どれが受賞してもおかしくない、と思われた。」「主題と文体の調和のとれた作品である。」「異色ある作品と、私には思われたが、極めて少数の支持しかなかった。」
  「こん期は多彩でよい候補作が集ったと思った。」
選評出典:『芥川賞全集 第八巻』昭和57年/1982年9月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和46年/1971年9月号)
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芥川賞 66 昭和46年/1971年下半期   一覧へ
選評の概要 一つの世界をもつ 総行数24 (1行=26字)
選考委員 大岡昇平 男62歳
候補 評価 行数 評言
男36歳
13 「私は半票ぐらいの気持だった。一人の朝鮮の母親の生涯が、よく描かれているけれど、一人のすでに出来上った作家の、片手間仕事のような印象を私は受けた。」「「砧をうつ女」のような情感的なものでない作品を期待していた。しかしこれを推す委員がいれば、強いて反対する理由はなかった。」
男33歳
6 「占領時代の沖縄の世相が、逃げたい心を通して、納得できる。文学的に幼い部分もあるが、この作家はとにかく一つの世界を持っているのである。」
選評出典:『芥川賞全集 第九巻』昭和57年/1982年10月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和47年/1972年3月号)
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芥川賞 67 昭和47年/1972年上半期   一覧へ
選評の概要 総行数41 (1行=26字)
選考委員 大岡昇平 男63歳
候補 評価 行数 評言
男39歳
25 「最初から一番票が集った。私も票をつけた一人だが、一抹の不安はまたは不満はそのあまりにもうまく仕上げられていることだった。」「芥川賞の性格からいって、この作品の受賞は、日本のハンセン氏病対策の歴史の上で「いのちの初夜」「小島の春」に続く位置を占めるかも知れない。作者がこのように明るく問題を提出したことに、一つの芸術意志が感じられるのだが、問題の切実性が、芸術性をゆるがせた珍しい例となっていると思った。」
男37歳
11 「在日朝鮮人というアクチュアルな問題を取扱っている。」「テーマの扱い方と叙述において、「誰かが触った」の斉一性に及ばないが、作者の姿勢に切実なものが感じられ、最後には同じくらいの票が集って来た。私は二作授賞に賛成した。」
選評出典:『芥川賞全集 第九巻』昭和57年/1982年10月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和47年/1972年9月号)
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芥川賞 68 昭和47年/1972年下半期   一覧へ
選評の概要 幸運な秀作 総行数32 (1行=26字)
選考委員 大岡昇平 男63歳
候補 評価 行数 評言
女36歳
10 「題材と技巧のバランスが取れていて、驚くべき自然さが現れた。幸運な秀作であった。」「(引用者注:新潮新人賞受賞から)一年の間に題材の純化と統一において、急速な成長が見られるのは、珍しい場合だと思った。」「最初からこの二作(引用者注:「ベティさんの庭」と「れくいえむ」)にほぼ同数の過半数票が集中し、最後までその比率はかわらなかった。」
女43歳
9 「本土空襲という題材自身に切実さがあるが、それを時間をわざと混乱させながら、その混乱に陥ることなく、テーマの持つ力が増幅されているのは見事である。」「最初からこの二作(引用者注:「ベティさんの庭」と「れくいえむ」)にほぼ同数の過半数票が集中し、最後までその比率はかわらなかった。」
  「今回もよい作品が多かったが、候補八篇のうち三篇が詩人としてすでに声明のある作家によって占められた。」
選評出典:『芥川賞全集 第九巻』昭和57年/1982年10月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和48年/1973年3月号)
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芥川賞 69 昭和48年/1973年上半期   一覧へ
選評の概要 むずかしい選考 総行数24 (1行=26字)
選考委員 大岡昇平 男64歳
候補 評価 行数 評言
男38歳
11 「(引用者注:「鳥たちの河口」と)ほぼ同じぐらいの出来だと思っていた」「荒けずりだが、敗戦直後の満州の現実への視点がしっかりしている。」「この作品には氏の詩作の経験を思わすものを、見出さなかった。詩と散文を区別する方法意識は、詩人の側に生れるもんなんだなあ、というようなことを感じた。」
野呂邦暢
男35歳
11 「(引用者注:「鶸」と)ほぼ同じぐらいの出来だと思っていた」「よくできているが、少し道具立てが整いすぎている、という評があった。殊に最後に鷹に教われるところが、(引用者中略)物語の形が整っているということは、それを裏付ける感動が伴わない場合、欠点となることがある例だった。」
  「こん期はこれといって際立った作品がなく、最初から票が破れて、私の経験した最もむずかしい銓衡となった。」「芥川賞は二作当選が三回続いている。そう二作当選を続けるのはうまくないという気分が委員全体にあって、それを主張すると、当選作なしになる可能性があった。」
選評出典:『芥川賞全集 第十巻』昭和57年/1982年11月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和48年/1973年9月号)
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芥川賞 70 昭和48年/1973年下半期   一覧へ
選評の概要 孤独な輝き 総行数40 (1行=26字)
選考委員 大岡昇平 男64歳
候補 評価 行数 評言
男61歳
14 「こん回は「月山」「草のつるぎ」「此岸の家」がすぐれていて、銓衡の対象はすぐこの三作にしぼられた。」「現代のジャーナリズムの要求によって生産される作品にはない、孤独な輝きを持っている。」「何分作者は六十歳をすぎていて、昭和初年横光利一を中心とする文学グループにいた人である。」「そういう変り種に授賞することに私は賛成だが、一方二作授賞にして、若い新人に機会を与えたい気持があった。」「私は「月山」「草のつるぎ」二作授賞に投票した。」
男36歳
13 「こん回は「月山」「草のつるぎ」「此岸の家」がすぐれていて、銓衡の対象はすぐこの三作にしぼられた。」「これまで旧軍隊を書いた多くの小説よりも、現実性を持って書かれている。長篇小説の書き出しのような印象を与えるくらい、延び延びと書かれているのに感心した。」「私は「月山」「草のつるぎ」二作授賞に投票した。」
選評出典:『芥川賞全集 第十巻』昭和57年/1982年11月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和49年/1974年3月号)
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芥川賞 71 昭和49年/1974年上半期   一覧へ
選評の概要 巧みな構成 総行数24 (1行=26字)
選考委員 大岡昇平 男65歳
候補 評価 行数 評言
岡松和夫
男43歳
8 「ほぼ授賞の水準に達していると思った。」「少し力が弱いが、(引用者注:「浮ぶ部屋」とくらべて)この方に授賞するのがよいと思った。」「構成も巧みだし、筆にきめの細かさがある。しかしなんとなくあまりにもうまくできすぎている感じがあり、すなおな感動を妨げる。」
選評出典:『芥川賞全集 第十巻』昭和57年/1982年11月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和49年/1974年9月号)
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芥川賞 72 昭和49年/1974年下半期   一覧へ
選評の概要 岡松氏の「熊野」 総行数18 (1行=26字)
選考委員 大岡昇平 男65歳
候補 評価 行数 評言
岡松和夫
男43歳
3 「無難な出来栄なので、(引用者注:同じく実績のある日野啓三ではなく)その方に一票を投じた。」
男45歳
4 「むずかしい主題に取組んでるが、やや混迷の気配が見えるので、作風に転換が見られてからでよい、と思った。」
男49歳
0  
  「全体としてあまりすぐれた作品がないように思ったが、二期該当作なしは適当でないので、これまでの実績を考慮した銓衡がいいように思われた。」
選評出典:『芥川賞全集 第十巻』昭和57年/1982年11月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和50年/1975年3月号)
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芥川賞 73 昭和50年/1975年上半期   一覧へ
選評の概要 人を打つ力 総行数36 (1行=26字)
選考委員 大岡昇平 男66歳
候補 評価 行数 評言
女44歳
20 「今回は際立ってすぐれた作品がなく、素材の持つ力によって、最初から「祭りの場」に票が集まった。」「文章と表現の細部に、こなれていないところや、あいまいさがある、などの欠点があるため、採決となって、僅差当選となった。」「十四歳の少女だった被爆者が、三十年経って、その体験を小説に結晶させた努力と才能を私は評価したい。」
中上健次
男28歳
11 「面白かった。」「私としてはそろそろ授賞してもいい頃と思われ、「祭りの場」と共に二作授賞を考えていたのであるが、氏は二年の間にすでに流行作家になっている。悪達者の面もまた現われている、との観察があって、票が集まらなかった。」
選評出典:『芥川賞全集 第十巻』昭和57年/1982年11月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和50年/1975年9月号)
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