芥川賞のすべて・のようなもの
第73回
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昭和50年/1975年上半期
(昭和50年/1975年7月17日決定発表/『文藝春秋』昭和50年/1975年9月号選評掲載)
選考委員  井上靖
男68歳
大岡昇平
男66歳
瀧井孝作
男81歳
中村光夫
男64歳
永井龍男
男71歳
丹羽文雄
男70歳
舟橋聖一
男70歳
安岡章太郎
男55歳
吉行淳之介
男51歳
選評総行数  11 36 26 25 25 25 27 34 39
候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数
林京子 「祭りの場」
105
女44歳
9 20 12 16 9 0 16 5 5
中上健次 「浄徳寺ツアー」
88
男28歳
0 11 0 0 3 0 3 7 4
高橋揆一郎 「清吉の暦」
109
男47歳
0 0 0 0 2 0 0 21 2
波多野文彦 「真夜中のパズル」
67
男(32歳)
0 3 4 0 4 0 0 0 3
岩橋邦枝 「暮色の深まり」
90
女40歳
0 0 0 0 2 25 0 0 4
島村利正 「青い沼」
90
男63歳
2 0 8 13 2 0 4 0 5
梅原稜子 「掌の光景」
83
女32歳
0 0 0 0 2 25 3 0 4
小沢冬雄 「営巣記」
132
男43歳
2 2 0 0 6 0 5 0 2
                 
年齢/枚数の説明   見方・注意点

このページの選評出典:『芥川賞全集 第十巻』昭和57年/1982年11月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和50年/1975年9月号)
1行当たりの文字数:26字


選考委員
井上靖男68歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
「祭りの場」をとる 総行数11 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
林京子
女44歳
9 「戦後三十年、漸くにして、このような作品が、芥川賞候補作として登場して来たといった、ある感慨があった。」「このような題材の前には、よく書けているも、書けていないもないと思った。原爆を直接体験し、そして三十年生きてきた人だけの持つ突き放し方、皮肉、そうしたものが文体を造っている。」
中上健次
男28歳
0  
高橋揆一郎
男47歳
0  
波多野文彦
男(32歳)
0  
岩橋邦枝
女40歳
0  
島村利正
男63歳
2 「優れた資質を感じた。」
梅原稜子
女32歳
0  
小沢冬雄
男43歳
2 「優れた資質を感じた。」
  「候補作八篇、いずれも面白く読んだ」
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他の選考委員
大岡昇平
瀧井孝作
中村光夫
永井龍男
丹羽文雄
舟橋聖一
安岡章太郎
吉行淳之介
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選考委員
大岡昇平男66歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
人を打つ力 総行数36 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
林京子
女44歳
20 「今回は際立ってすぐれた作品がなく、素材の持つ力によって、最初から「祭りの場」に票が集まった。」「文章と表現の細部に、こなれていないところや、あいまいさがある、などの欠点があるため、採決となって、僅差当選となった。」「十四歳の少女だった被爆者が、三十年経って、その体験を小説に結晶させた努力と才能を私は評価したい。」
中上健次
男28歳
11 「面白かった。」「私としてはそろそろ授賞してもいい頃と思われ、「祭りの場」と共に二作授賞を考えていたのであるが、氏は二年の間にすでに流行作家になっている。悪達者の面もまた現われている、との観察があって、票が集まらなかった。」
高橋揆一郎
男47歳
0  
波多野文彦
男(32歳)
3 「旅行社のガイドをつとめる若者を主人公にしていることに、風俗的興味を感じた。」
岩橋邦枝
女40歳
0  
島村利正
男63歳
0  
梅原稜子
女32歳
0  
小沢冬雄
男43歳
2 「しっとりした味わいのある作品だが、少しくどいところがある。」
          - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
他の選考委員
井上靖
瀧井孝作
中村光夫
永井龍男
丹羽文雄
舟橋聖一
安岡章太郎
吉行淳之介
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選考委員
瀧井孝作男81歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
冴えた筆 総行数26 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
林京子
女44歳
12 「私は読みながら、むごたらしさに、あわれさに、涙が出てきた。何よりも、筆が冴えて、いきいきして、惹きこまれた。」「いろいろのことが混乱して、わかりにくい箇所もあるが、これも実感の表現とみた。」「私は、この作家の長崎原爆体験のモチーフと、冴えた筆力と、両方を推奨したい。」
中上健次
男28歳
0  
高橋揆一郎
男47歳
0  
波多野文彦
男(32歳)
4 「ジグソーパズルというはめ(原文傍点)絵の遊び、時間つぶしにふける、倦怠感か危機感か、若い人の現代感覚表現の短篇とみたが、この素材からは、もっと筆の冴えがほしかった。」
岩橋邦枝
女40歳
0  
島村利正
男63歳
8 「しなやかな筆の風景描写も、この小説のヒロインの目にうつる感じのようで、大方の小説は活字だが、これは肉筆をみる感じ、これもまた新しいと思った。」
梅原稜子
女32歳
0  
小沢冬雄
男43歳
0  
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他の選考委員
井上靖
大岡昇平
中村光夫
永井龍男
丹羽文雄
舟橋聖一
安岡章太郎
吉行淳之介
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選考委員
中村光夫男64歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
肉筆の味 総行数25 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
林京子
女44歳
16 「印象にのこりました。」「(引用者注:「青い沼」と共に)当選圏内ですが、それぞれに難もあり、取捨に迷いました。」「この作者の処女作のようですが、処女作の長所と欠点をはっきりと兼ね備えた作品です。」「技術の幼稚さに初心の執念ともいうべき力が感じられるところが、おそらく作者の無意識の才能なので、これが体験にうらづけられ、周到に蒐集され、配分された題材と相まって、読者に生の感動をあたえます。」
中上健次
男28歳
0  
高橋揆一郎
男47歳
0  
波多野文彦
男(32歳)
0  
岩橋邦枝
女40歳
0  
島村利正
男63歳
13 「印象にのこりました。」「(引用者注:「祭りの場」と共に)当選圏内ですが、それぞれに難もあり、取捨に迷いました。」「よくもわるくも、芸術作品として完成した小説」「古風が古くささと隣り合せのところが気になりますが、近頃よく見られる、無理にでっちあげられた活字くさい小説でなく、肉筆の味わいを持っているところは、正反対の作風の「祭りの場」と一脈通ずるものを持つと思われます。」
梅原稜子
女32歳
0  
小沢冬雄
男43歳
0  
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他の選考委員
井上靖
大岡昇平
瀧井孝作
永井龍男
丹羽文雄
舟橋聖一
安岡章太郎
吉行淳之介
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選考委員
永井龍男男71歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
激しく迫る主題 総行数25 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
林京子
女44歳
9 「作者の体験をもとに、記録や他人の体験記にも多く接した上の作品で、一読眼を覆わしめるものがある。」「省略された文章のために、判断しがたい個所もあるが、なんとしてもこの主題は、激しくわれわれに迫る。」
中上健次
男28歳
3 「作者の若さが出ていて好感を持った。」「猥雑な人間の一団を、一団として扱う手法に新鮮さがあり、」
高橋揆一郎
男47歳
2 「手腕のある作品だったが、清吉の妻を描く筆を省いた点に物足りなさが感じられる。」
波多野文彦
男(32歳)
4 「作者の若さが出ていて好感を持った。」「前半に無駄が多いが、後半パズルに集中してから冴えを見せた。」
岩橋邦枝
女40歳
2 「正直に云って退屈だった。」
島村利正
男63歳
2 「老練な作品だが、この作者にはもっとすぐれた作品がいくつかあるし、すでに中堅の作家である。」
梅原稜子
女32歳
2 「正直に云って退屈だった。」
小沢冬雄
男43歳
6 「一児への愛、妻への愛の深まる経過が、骨肉への愛情の手記として、素直に読む者の胸にしみる。」
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他の選考委員
井上靖
大岡昇平
瀧井孝作
中村光夫
丹羽文雄
舟橋聖一
安岡章太郎
吉行淳之介
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選考委員
丹羽文雄男70歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
読後感 総行数25 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
林京子
女44歳
0  
中上健次
男28歳
0  
高橋揆一郎
男47歳
0  
波多野文彦
男(32歳)
0  
岩橋邦枝
女40歳
25 「当選作を別にして、(引用者中略)興味をおぼえた。」「(引用者注:「掌の光景」と共に)女心を描いていた。単なる抒情的なものでなく、三十女の心情をえげつないほどに抉り出したものである。女というものの本性をこのように抉り出した作品は珍しい。」「文学的にはいろいろと難点を残しているが、倦怠期という概念で見すごしにせず、堂々とそれに挑んだのは、みごとである。」
島村利正
男63歳
0  
梅原稜子
女32歳
25 「当選作を別にして、(引用者中略)興味をおぼえた。」「(引用者注:「暮色の深まり」と共に)女心を描いていた。単なる抒情的なものでなく、三十女の心情をえげつないほどに抉り出したものである。女というものの本性をこのように抉り出した作品は珍しい。」「文学的にはいろいろと難点を残しているが、倦怠期という概念で見すごしにせず、堂々とそれに挑んだのは、みごとである。」
小沢冬雄
男43歳
0  
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他の選考委員
井上靖
大岡昇平
瀧井孝作
中村光夫
永井龍男
舟橋聖一
安岡章太郎
吉行淳之介
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選考委員
舟橋聖一男70歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
林京子の力作 総行数27 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
林京子
女44歳
16 「圧倒的な重みがあった。」「芥川賞にははじめての原爆もので、九委員のうち、七・五票を得たのも当然だ。」「「夏の花」(原民喜)以来、原爆ものは殆んど読んでいるが、林さんの強みはその犠牲に三十年の歳月を費しながら、なおこの一篇をまとめるのに耐えたところにあった。少々の瑕瑾、例えば伯父さんからの聞書などに誇張があっても、全体がそれを乗り越えている。」
中上健次
男28歳
3 「前回作のほうが出来がよかった。」
高橋揆一郎
男47歳
0  
波多野文彦
男(32歳)
0  
岩橋邦枝
女40歳
0  
島村利正
男63歳
4 「瀧井孝作さんと中村光夫君が支持した。」「叮嚀な描写力を持っている。その点では八候補作中随一だが、なにぶんにも古さが目立って、授賞にはならなかった。」
梅原稜子
女32歳
3 「前回作のほうが出来がよかった。」
小沢冬雄
男43歳
5 「感動して読んだ。妻君をポカポカ殴りながら、なおかつ可愛がっている主人公の気持がよく伝わってくる。」
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他の選考委員
井上靖
大岡昇平
瀧井孝作
中村光夫
永井龍男
丹羽文雄
安岡章太郎
吉行淳之介
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選考委員
安岡章太郎男55歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
該当作見当らず 総行数34 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
林京子
女44歳
5 「私には、事実としての感動は重く大きかったが、それが文学の感動にはならなかった。とくに《学徒動員したのは》というような名詞を勝手に動詞につくりかえる言い方には、私は非常に抵抗をおぼえた。」
中上健次
男28歳
7 「団体旅行の添乗員というのは、そのまま現代の弥次喜多の役柄であろうし、おもしろい材料にちがいないのだが、十返舎一九の時代にはあったもののあわれ(原文傍点)はこの作品にはない。」
高橋揆一郎
男47歳
21 「一番おもしろく読めた」「回想の主人公がいまは坑夫をやめてホルモン焼屋のおやじになっている点が、ともすれば感傷過剰におちいりがちなこの種の素材を、そうならずにユトリのあるものにしている。」「おもしろかったのは炭坑の中の描写だ。とくに昔、坑道の中で馬をつかってみたくだりは光っている。」「しかし全体に文章が調子にのりすぎていて、どうかすると大衆小説のようになりそうな危険もある。」
波多野文彦
男(32歳)
0  
岩橋邦枝
女40歳
0  
島村利正
男63歳
0  
梅原稜子
女32歳
0  
小沢冬雄
男43歳
0  
  「芥川賞にかぎらず、どんな賞でも、授賞作はないよりあった方がいいと思う。しかし今回は、どうも該当作はなさそうだと思って私は出席した。」
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他の選考委員
井上靖
大岡昇平
瀧井孝作
中村光夫
永井龍男
丹羽文雄
舟橋聖一
吉行淳之介
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選考委員
吉行淳之介男51歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
感想いろいろ 総行数39 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
林京子
女44歳
5 「しっかりした文章で感心したが、各節のおわりに必ず捨てゼリフのような数行があり、(引用者中略)その部分の発想が不統一で、戦争体験に十分モトデをかけたかどうか疑わしくなるところがある。」
中上健次
男28歳
4 「自分の個人的な憤りをたたきつけている作品で、このエネルギーをもっと内面化させてもらいたい。」
高橋揆一郎
男47歳
2 「かなりいいとおもったが、当選作に推すまでの自信が持てない。」
波多野文彦
男(32歳)
3 「このままでは当選作には推せないが、作者の感受性に好ましいものを感じて、将来を期待できる。」
岩橋邦枝
女40歳
4 「現在の自分についての判断に謬りがあるとしかおもえない。」
島村利正
男63歳
5 「一時代前のある意味では懐しい男女関係をしっかりした筆で書きこんである。しかし、この作者の名は私にとっては既成作家である。その業績を顕彰するのなら、他のしかるべき賞がある、とおもう。」
梅原稜子
女32歳
4 「作者の独断偏見の面白さが、前作に比べて薄い。」
小沢冬雄
男43歳
2 「おわりの場面に至る手つづきが一つ抜けていて、もっと怖ろしい筈の結末が抒情に流れた。」
  「このごろの候補作を読んでいると、文学についてなにか勘違いがあるようにおもえて仕方がない。」「もっとも、文学についての考え方はいろいろで、私は自分の考えを押しつけようとはおもわないが、今回の候補作はそれぞれ感心する点もあったが、結局受け容れられなかった。」「今回の私の意見は、「授賞作ナシ」である。」
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他の選考委員
井上靖
大岡昇平
瀧井孝作
中村光夫
永井龍男
丹羽文雄
舟橋聖一
安岡章太郎
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受賞者・作品
林京子女44歳×各選考委員 
「祭りの場」
短篇 105
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
井上靖
男68歳
9 「戦後三十年、漸くにして、このような作品が、芥川賞候補作として登場して来たといった、ある感慨があった。」「このような題材の前には、よく書けているも、書けていないもないと思った。原爆を直接体験し、そして三十年生きてきた人だけの持つ突き放し方、皮肉、そうしたものが文体を造っている。」
大岡昇平
男66歳
20 「今回は際立ってすぐれた作品がなく、素材の持つ力によって、最初から「祭りの場」に票が集まった。」「文章と表現の細部に、こなれていないところや、あいまいさがある、などの欠点があるため、採決となって、僅差当選となった。」「十四歳の少女だった被爆者が、三十年経って、その体験を小説に結晶させた努力と才能を私は評価したい。」
瀧井孝作
男81歳
12 「私は読みながら、むごたらしさに、あわれさに、涙が出てきた。何よりも、筆が冴えて、いきいきして、惹きこまれた。」「いろいろのことが混乱して、わかりにくい箇所もあるが、これも実感の表現とみた。」「私は、この作家の長崎原爆体験のモチーフと、冴えた筆力と、両方を推奨したい。」
中村光夫
男64歳
16 「印象にのこりました。」「(引用者注:「青い沼」と共に)当選圏内ですが、それぞれに難もあり、取捨に迷いました。」「この作者の処女作のようですが、処女作の長所と欠点をはっきりと兼ね備えた作品です。」「技術の幼稚さに初心の執念ともいうべき力が感じられるところが、おそらく作者の無意識の才能なので、これが体験にうらづけられ、周到に蒐集され、配分された題材と相まって、読者に生の感動をあたえます。」
永井龍男
男71歳
9 「作者の体験をもとに、記録や他人の体験記にも多く接した上の作品で、一読眼を覆わしめるものがある。」「省略された文章のために、判断しがたい個所もあるが、なんとしてもこの主題は、激しくわれわれに迫る。」
丹羽文雄
男70歳
0  
舟橋聖一
男70歳
16 「圧倒的な重みがあった。」「芥川賞にははじめての原爆もので、九委員のうち、七・五票を得たのも当然だ。」「「夏の花」(原民喜)以来、原爆ものは殆んど読んでいるが、林さんの強みはその犠牲に三十年の歳月を費しながら、なおこの一篇をまとめるのに耐えたところにあった。少々の瑕瑾、例えば伯父さんからの聞書などに誇張があっても、全体がそれを乗り越えている。」
安岡章太郎
男55歳
5 「私には、事実としての感動は重く大きかったが、それが文学の感動にはならなかった。とくに《学徒動員したのは》というような名詞を勝手に動詞につくりかえる言い方には、私は非常に抵抗をおぼえた。」
吉行淳之介
男51歳
5 「しっかりした文章で感心したが、各節のおわりに必ず捨てゼリフのような数行があり、(引用者中略)その部分の発想が不統一で、戦争体験に十分モトデをかけたかどうか疑わしくなるところがある。」
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他の候補作
中上健次
「浄徳寺ツアー」
高橋揆一郎
「清吉の暦」
波多野文彦
「真夜中のパズル」
岩橋邦枝
「暮色の深まり」
島村利正
「青い沼」
梅原稜子
「掌の光景」
小沢冬雄
「営巣記」
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候補者・作品
中上健次男28歳×各選考委員 
「浄徳寺ツアー」
短篇 88
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
井上靖
男68歳
0  
大岡昇平
男66歳
11 「面白かった。」「私としてはそろそろ授賞してもいい頃と思われ、「祭りの場」と共に二作授賞を考えていたのであるが、氏は二年の間にすでに流行作家になっている。悪達者の面もまた現われている、との観察があって、票が集まらなかった。」
瀧井孝作
男81歳
0  
中村光夫
男64歳
0  
永井龍男
男71歳
3 「作者の若さが出ていて好感を持った。」「猥雑な人間の一団を、一団として扱う手法に新鮮さがあり、」
丹羽文雄
男70歳
0  
舟橋聖一
男70歳
3 「前回作のほうが出来がよかった。」
安岡章太郎
男55歳
7 「団体旅行の添乗員というのは、そのまま現代の弥次喜多の役柄であろうし、おもしろい材料にちがいないのだが、十返舎一九の時代にはあったもののあわれ(原文傍点)はこの作品にはない。」
吉行淳之介
男51歳
4 「自分の個人的な憤りをたたきつけている作品で、このエネルギーをもっと内面化させてもらいたい。」
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他の候補作
林京子
「祭りの場」
高橋揆一郎
「清吉の暦」
波多野文彦
「真夜中のパズル」
岩橋邦枝
「暮色の深まり」
島村利正
「青い沼」
梅原稜子
「掌の光景」
小沢冬雄
「営巣記」
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候補者・作品
高橋揆一郎男47歳×各選考委員 
「清吉の暦」
短篇 109
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
井上靖
男68歳
0  
大岡昇平
男66歳
0  
瀧井孝作
男81歳
0  
中村光夫
男64歳
0  
永井龍男
男71歳
2 「手腕のある作品だったが、清吉の妻を描く筆を省いた点に物足りなさが感じられる。」
丹羽文雄
男70歳
0  
舟橋聖一
男70歳
0  
安岡章太郎
男55歳
21 「一番おもしろく読めた」「回想の主人公がいまは坑夫をやめてホルモン焼屋のおやじになっている点が、ともすれば感傷過剰におちいりがちなこの種の素材を、そうならずにユトリのあるものにしている。」「おもしろかったのは炭坑の中の描写だ。とくに昔、坑道の中で馬をつかってみたくだりは光っている。」「しかし全体に文章が調子にのりすぎていて、どうかすると大衆小説のようになりそうな危険もある。」
吉行淳之介
男51歳
2 「かなりいいとおもったが、当選作に推すまでの自信が持てない。」
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他の候補作
林京子
「祭りの場」
中上健次
「浄徳寺ツアー」
波多野文彦
「真夜中のパズル」
岩橋邦枝
「暮色の深まり」
島村利正
「青い沼」
梅原稜子
「掌の光景」
小沢冬雄
「営巣記」
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候補者・作品
波多野文彦男(32歳)×各選考委員 
「真夜中のパズル」
短篇 67
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
井上靖
男68歳
0  
大岡昇平
男66歳
3 「旅行社のガイドをつとめる若者を主人公にしていることに、風俗的興味を感じた。」
瀧井孝作
男81歳
4 「ジグソーパズルというはめ(原文傍点)絵の遊び、時間つぶしにふける、倦怠感か危機感か、若い人の現代感覚表現の短篇とみたが、この素材からは、もっと筆の冴えがほしかった。」
中村光夫
男64歳
0  
永井龍男
男71歳
4 「作者の若さが出ていて好感を持った。」「前半に無駄が多いが、後半パズルに集中してから冴えを見せた。」
丹羽文雄
男70歳
0  
舟橋聖一
男70歳
0  
安岡章太郎
男55歳
0  
吉行淳之介
男51歳
3 「このままでは当選作には推せないが、作者の感受性に好ましいものを感じて、将来を期待できる。」
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他の候補作
林京子
「祭りの場」
中上健次
「浄徳寺ツアー」
高橋揆一郎
「清吉の暦」
岩橋邦枝
「暮色の深まり」
島村利正
「青い沼」
梅原稜子
「掌の光景」
小沢冬雄
「営巣記」
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候補者・作品
岩橋邦枝女40歳×各選考委員 
「暮色の深まり」
短篇 90
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
井上靖
男68歳
0  
大岡昇平
男66歳
0  
瀧井孝作
男81歳
0  
中村光夫
男64歳
0  
永井龍男
男71歳
2 「正直に云って退屈だった。」
丹羽文雄
男70歳
25 「当選作を別にして、(引用者中略)興味をおぼえた。」「(引用者注:「掌の光景」と共に)女心を描いていた。単なる抒情的なものでなく、三十女の心情をえげつないほどに抉り出したものである。女というものの本性をこのように抉り出した作品は珍しい。」「文学的にはいろいろと難点を残しているが、倦怠期という概念で見すごしにせず、堂々とそれに挑んだのは、みごとである。」
舟橋聖一
男70歳
0  
安岡章太郎
男55歳
0  
吉行淳之介
男51歳
4 「現在の自分についての判断に謬りがあるとしかおもえない。」
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他の候補作
林京子
「祭りの場」
中上健次
「浄徳寺ツアー」
高橋揆一郎
「清吉の暦」
波多野文彦
「真夜中のパズル」
島村利正
「青い沼」
梅原稜子
「掌の光景」
小沢冬雄
「営巣記」
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候補者・作品
島村利正男63歳×各選考委員 
「青い沼」
短篇 90
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
井上靖
男68歳
2 「優れた資質を感じた。」
大岡昇平
男66歳
0  
瀧井孝作
男81歳
8 「しなやかな筆の風景描写も、この小説のヒロインの目にうつる感じのようで、大方の小説は活字だが、これは肉筆をみる感じ、これもまた新しいと思った。」
中村光夫
男64歳
13 「印象にのこりました。」「(引用者注:「祭りの場」と共に)当選圏内ですが、それぞれに難もあり、取捨に迷いました。」「よくもわるくも、芸術作品として完成した小説」「古風が古くささと隣り合せのところが気になりますが、近頃よく見られる、無理にでっちあげられた活字くさい小説でなく、肉筆の味わいを持っているところは、正反対の作風の「祭りの場」と一脈通ずるものを持つと思われます。」
永井龍男
男71歳
2 「老練な作品だが、この作者にはもっとすぐれた作品がいくつかあるし、すでに中堅の作家である。」
丹羽文雄
男70歳
0  
舟橋聖一
男70歳
4 「瀧井孝作さんと中村光夫君が支持した。」「叮嚀な描写力を持っている。その点では八候補作中随一だが、なにぶんにも古さが目立って、授賞にはならなかった。」
安岡章太郎
男55歳
0  
吉行淳之介
男51歳
5 「一時代前のある意味では懐しい男女関係をしっかりした筆で書きこんである。しかし、この作者の名は私にとっては既成作家である。その業績を顕彰するのなら、他のしかるべき賞がある、とおもう。」
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他の候補作
林京子
「祭りの場」
中上健次
「浄徳寺ツアー」
高橋揆一郎
「清吉の暦」
波多野文彦
「真夜中のパズル」
岩橋邦枝
「暮色の深まり」
梅原稜子
「掌の光景」
小沢冬雄
「営巣記」
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候補者・作品
梅原稜子女32歳×各選考委員 
「掌の光景」
短篇 83
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
井上靖
男68歳
0  
大岡昇平
男66歳
0  
瀧井孝作
男81歳
0  
中村光夫
男64歳
0  
永井龍男
男71歳
2 「正直に云って退屈だった。」
丹羽文雄
男70歳
25 「当選作を別にして、(引用者中略)興味をおぼえた。」「(引用者注:「暮色の深まり」と共に)女心を描いていた。単なる抒情的なものでなく、三十女の心情をえげつないほどに抉り出したものである。女というものの本性をこのように抉り出した作品は珍しい。」「文学的にはいろいろと難点を残しているが、倦怠期という概念で見すごしにせず、堂々とそれに挑んだのは、みごとである。」
舟橋聖一
男70歳
3 「前回作のほうが出来がよかった。」
安岡章太郎
男55歳
0  
吉行淳之介
男51歳
4 「作者の独断偏見の面白さが、前作に比べて薄い。」
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他の候補作
林京子
「祭りの場」
中上健次
「浄徳寺ツアー」
高橋揆一郎
「清吉の暦」
波多野文彦
「真夜中のパズル」
岩橋邦枝
「暮色の深まり」
島村利正
「青い沼」
小沢冬雄
「営巣記」
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候補者・作品
小沢冬雄男43歳×各選考委員 
「営巣記」
短篇 132
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
井上靖
男68歳
2 「優れた資質を感じた。」
大岡昇平
男66歳
2 「しっとりした味わいのある作品だが、少しくどいところがある。」
瀧井孝作
男81歳
0  
中村光夫
男64歳
0  
永井龍男
男71歳
6 「一児への愛、妻への愛の深まる経過が、骨肉への愛情の手記として、素直に読む者の胸にしみる。」
丹羽文雄
男70歳
0  
舟橋聖一
男70歳
5 「感動して読んだ。妻君をポカポカ殴りながら、なおかつ可愛がっている主人公の気持がよく伝わってくる。」
安岡章太郎
男55歳
0  
吉行淳之介
男51歳
2 「おわりの場面に至る手つづきが一つ抜けていて、もっと怖ろしい筈の結末が抒情に流れた。」
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他の候補作
林京子
「祭りの場」
中上健次
「浄徳寺ツアー」
高橋揆一郎
「清吉の暦」
波多野文彦
「真夜中のパズル」
岩橋邦枝
「暮色の深まり」
島村利正
「青い沼」
梅原稜子
「掌の光景」
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