芥川賞のすべて・のようなもの
第71回
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昭和49年/1974年上半期
(昭和49年/1974年7月17日決定発表/『文藝春秋』昭和49年/1974年9月号選評掲載)
選考委員  大岡昇平
男65歳
丹羽文雄
男69歳
中村光夫
男63歳
井上靖
男67歳
永井龍男
男70歳
吉行淳之介
男50歳
舟橋聖一
男69歳
瀧井孝作
男80歳
安岡章太郎
男54歳
選評総行数  24 30 21 19 23 29 36 30 31
候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数
日野啓三 「浮ぶ部屋」
79
男45歳
14 30 10 8 8 9 6 9 31
岡松和夫 「小蟹のいる村」
69
男43歳
8 0 8 10 6 6 6 12 0
太田道子 「微熱のとき」
132
女(30歳)
0 0 0 0 2 3 2 3 0
金鶴泳 「夏の亀裂」
172
男35歳
0 0 0 6 3 4 9 0 0
高橋昌男 「道化の背景」
70
男38歳
0 0 4 0 4 3 2 0 0
福沢英敏 「アイの問題」
69
男31歳
0 0 0 0 0 4 13 0 0
太佐順 「「父」の年輪」
49
男37歳
4 0 0 0 4 3 2 5 0
山本孝夫 「笑い声」
88
男50歳
0 0 0 0 2 3 0 0 0
                 
年齢/枚数の説明   見方・注意点

このページの選評出典:『芥川賞全集 第十巻』昭和57年/1982年11月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和49年/1974年9月号)
1行当たりの文字数:26字


選考委員
大岡昇平男65歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
巧みな構成 総行数24 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
日野啓三
男45歳
14 「ほぼ授賞の水準に達していると思った。」「前回の有力な候補作「此岸の家」が、最近、平林たい子賞を受けている。(引用者中略)引き続いて氏の作品が授賞するのは、よほどすぐれた作品でないと、新人が賞を受ける機会において、公平でなくなると思った。」「ところが私の評価では、「浮ぶ部屋」にはそれだけの力がない。」
岡松和夫
男43歳
8 「ほぼ授賞の水準に達していると思った。」「少し力が弱いが、(引用者注:「浮ぶ部屋」とくらべて)この方に授賞するのがよいと思った。」「構成も巧みだし、筆にきめの細かさがある。しかしなんとなくあまりにもうまくできすぎている感じがあり、すなおな感動を妨げる。」
太田道子
女(30歳)
0  
金鶴泳
男35歳
0  
高橋昌男
男38歳
0  
福沢英敏
男31歳
0  
太佐順
男37歳
4 「まだ形が整わないうらみがあるが、主題に正面から立ち向っていることに好感が持てる。そこから生れる文学的感動は、右の二作(引用者注:「浮ぶ部屋」「小蟹のいる村」)より良質のものであると思った。」
山本孝夫
男50歳
0  
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他の選考委員
丹羽文雄
中村光夫
井上靖
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吉行淳之介
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瀧井孝作
安岡章太郎
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選考委員
丹羽文雄男69歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
感想 総行数30 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
日野啓三
男45歳
30 「平林たい子文学賞と芥川賞の銓衡委員をかねている私は、今度の芥川賞銓衡に苦しい立場に置かれた。」「先ごろ平林賞をもらったばかりだからという委員があり、別のひとりは、平林賞につづいて芥川賞を贈るというのは、平林賞に追従したというふうに解釈されるおそれもあると言い出した。」「私は前作同様に内容の充実した、きめのこまかい作品だと思った。」
岡松和夫
男43歳
0  
太田道子
女(30歳)
0  
金鶴泳
男35歳
0  
高橋昌男
男38歳
0  
福沢英敏
男31歳
0  
太佐順
男37歳
0  
山本孝夫
男50歳
0  
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大岡昇平
中村光夫
井上靖
永井龍男
吉行淳之介
舟橋聖一
瀧井孝作
安岡章太郎
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選考委員
中村光夫男63歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
力倆は抜群 総行数21 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
日野啓三
男45歳
10 「作家としての力倆が抜群であることは、誰もがみとめるところで、欠陥はあるにしろ、才能にめぐまれた新人に違いありません。」「ただその達者すぎるところが、題材のむずかしさと相俟って、ひとり合点の印象を与えがちなのは、氏として一考すべきところでしょう。」
岡松和夫
男43歳
8 「作品としてのまとまりはよく、「楢山節考」を思わせる残酷な奇習が一応そつなく描けていますが、やはり話がうまくできすぎているのが欠点に感じられる小説です。」
太田道子
女(30歳)
0  
金鶴泳
男35歳
0  
高橋昌男
男38歳
4 「注目しました。」「「背景」にあまり眼をくばらずに、子供の道化をもっと掘りさげたら、ユニックな短篇になったろうと思います。」
福沢英敏
男31歳
0  
太佐順
男37歳
0  
山本孝夫
男50歳
0  
  「今度の候補作は伯仲の出来のものが多く、粒ぞろいと云えば云えますが、その粒がどれもやや小さく、結局、当選作は見出せません。」
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大岡昇平
丹羽文雄
井上靖
永井龍男
吉行淳之介
舟橋聖一
瀧井孝作
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選考委員
井上靖男67歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
「小蟹のいる村」ほか 総行数19 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
日野啓三
男45歳
8 「すでにでき上がった作家で、危げなく読めるが、「浮ぶ部屋」には前作によりかかっているようなところがあって、独立した作品としてみると弱さのあるのを否めなかった。」「「小蟹のいる村」と「浮ぶ部屋」の二作に授賞という声もあったが、私はなしの方を主張した。」
岡松和夫
男43歳
10 「一番読み応えがあった。」「救いがなく暗いが、文章もきちんとしており、才気も感じられ、会話もなかなかうまく書けていると思った。難を言えば、後半に説明不足と言うか、書き足りぬところがあって、こちらの想像で補わなければならず、惜しいと思った。」「「小蟹のいる村」と「浮ぶ部屋」の二作に授賞という声もあったが、私はなしの方を主張した。」
太田道子
女(30歳)
0  
金鶴泳
男35歳
6 「真面目に主題に取り組んでいて、正面から書いているところには好感が持てたが、もともと短篇の材料ではないと思った。」
高橋昌男
男38歳
0  
福沢英敏
男31歳
0  
太佐順
男37歳
0  
山本孝夫
男50歳
0  
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大岡昇平
丹羽文雄
中村光夫
永井龍男
吉行淳之介
舟橋聖一
瀧井孝作
安岡章太郎
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選考委員
永井龍男男70歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
一抹の古風さ 総行数23 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
日野啓三
男45歳
8 「前回候補作の「此岸の家」の続篇あるいは連作とみられるが、「此岸の家」がこの続篇を必要としたように、「浮ぶ部屋」もさらに同様に続篇を予想させる。」
岡松和夫
男43歳
6 「一抹の古風さは、題材によるものではなく、作者の手法の端々に見えがくれするのではないか。物語に心をうたれながら、清新さに欠けるうらみを感じるのは、その辺に原因があるのではないか。」
太田道子
女(30歳)
2 「油絵具で書いたような文章に注目したが、それだけのことに終った。」
金鶴泳
男35歳
3 「清潔な作品である。」「読書会の輪講やそのメンバーに筆が及ぶと、これだけでは到底書き足りないと思った。」
高橋昌男
男38歳
4 「(引用者注:「『父』の年輪」と共に)よくまとまり部分部分に光ったところのある短篇で好感が持てた。」
福沢英敏
男31歳
0  
太佐順
男37歳
4 「(引用者注:「道化の背景」と共に)よくまとまり部分部分に光ったところのある短篇で好感が持てた。」
山本孝夫
男50歳
2 「面白い題材を面白く書いているが、それ以上興を惹く力が不足している。」
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他の選考委員
大岡昇平
丹羽文雄
中村光夫
井上靖
吉行淳之介
舟橋聖一
瀧井孝作
安岡章太郎
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選考委員
吉行淳之介男50歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
長時間の選考 総行数29 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
日野啓三
男45歳
9 「私は(引用者中略)推し、一時は当選かと思われたが、長時間の議論の末ナシときまった。この作品についての否定的意見はいちいちもっともだが、それでも他の作品に比べて差があると考えていた。」「最終的には(引用者注:「浮ぶ部屋」と「小蟹のいる村」の)二作授賞に賛成したが、ダメだった。」
岡松和夫
男43歳
6 「最後の場面、滝の傍の木に結びつけられた沢山の日の丸にかこまれて、女主人公が健康だったころの自分の裸身におもいを致すところは新鮮だった。」「最終的には(引用者注:「浮ぶ部屋」と「小蟹のいる村」の)二作授賞に賛成したが、ダメだった。」
太田道子
女(30歳)
3 「ある種の才能はあきらかだが、文学少女である。文学というものになにか間違った固定観念があるのではないか。」
金鶴泳
男35歳
4 「生マジメすぎた。」「(引用者注:マジメでなく)生マジメとなると、作品から味とふくらみが失われやすい。」
高橋昌男
男38歳
3 「前回、私の票だけで、大いにヒンシュクされた高橋昌男には今回ある程度の票が入った。しかし、私は前の「白蟻」のほうを評価する。」
福沢英敏
男31歳
4 「おおかたのヒンシュクをかった」「私はなかなかおもしろかったが、当選の水準ではない。」
太佐順
男37歳
3 「(引用者注:「笑い声」と共に)好感がもてる気張らない書き方の作品だったが、ともに私にはよく分らない部分がところどころあった。」
山本孝夫
男50歳
3 「(引用者注:「『父』の年輪」と共に)好感がもてる気張らない書き方の作品だったが、ともに私にはよく分らない部分がところどころあった。」
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他の選考委員
大岡昇平
丹羽文雄
中村光夫
井上靖
永井龍男
舟橋聖一
瀧井孝作
安岡章太郎
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選考委員
舟橋聖一男69歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
不運な日野 総行数36 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
日野啓三
男45歳
6 「最も力量があった。私は前回作に劣らない出来栄えと思ったが、平林たい子賞とダブるのに異議のある向きもあって、授賞に到らなかった。」「(引用者注:「夏の亀裂」と共に)何かを書こうとする主題が感じられて、書き足りないところはあっても、読む者に訴えてくる誠実さと迫力がある。」
岡松和夫
男43歳
6 「肺病を苦にし、死を望んで観音堂へはいる女主人公のニヒリズムが少々作りものめき、いっそ時代を天保頃に遡らせたら、或いは怪奇なムードが出たかもしれない。」「が、銭湯で喀血するところは、鮮やかに書けている。」
太田道子
女(30歳)
2 「前作「流蜜のとき」に較べて不出来だ。小道具も多すぎる。」
金鶴泳
男35歳
9 「平板なところもあるが、真剣味にあふれている。終りの部分で、ナルシシズムとも違う自己尊敬という新しい語彙が出てくるのは、注目していい。」「(引用者注:「浮ぶ部屋」と共に)何かを書こうとする主題が感じられて、書き足りないところはあっても、読む者に訴えてくる誠実さと迫力がある。」
高橋昌男
男38歳
2 「柳橋や国技館の描写にアテコミがあるが、(引用者中略)授賞には遠くても、将来性があると思う。」
福沢英敏
男31歳
13 「たしかに糞便を失禁する汚い小説である。」「今までの小説美学とは次元を異にするとみえて、委員の中には「大落し」と大喝した人もあった。にもかかわらず、私が丸印をつけたのは(△印の委員も一人あった)、サドまたはマゾの思想の影響或いは悪影響があると思ったからだ。」「この汚らしさを滑稽とだけ受止めていいかどうかは問題である。この作者は生来病的なのかと思ったら、長野県伊那の健康な農民だそうである。」
太佐順
男37歳
2 「子供の実の父親をうまくぼかしてあり、(引用者中略)授賞には遠くても、将来性があると思う。」
山本孝夫
男50歳
0  
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他の選考委員
大岡昇平
丹羽文雄
中村光夫
井上靖
永井龍男
吉行淳之介
瀧井孝作
安岡章太郎
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選考委員
瀧井孝作男80歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
人棄物語 総行数30 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
日野啓三
男45歳
9 「私は前作には、すらすら読ませるけど可もなし不可もなし、と批評したが、今回のこれも筆は達者だが、ズラズラのべつ(原文傍点)幕なしで、短篇としてのしめくくりがなく、長篇の連作か、前回と同じに、達者に書きすぎてあると思った。筆力はあるが、筆力の緩急が足りないようだ。」
岡松和夫
男43歳
12 「よくまとまった短篇で、私には、寒村の習俗は温和なようで実は残酷なものに見えた。」「これは敗戦後のむざんな人棄物語とも見えた。今回の予選作八篇の中では、私はこれが一ばんよいと思った。」
太田道子
女(30歳)
3 「達者すぎて、実感のない造花のようで、これは面白がらせの読物小説と見えた。」
金鶴泳
男35歳
0  
高橋昌男
男38歳
0  
福沢英敏
男31歳
0  
太佐順
男37歳
5 「初心のういういしい感じはよいが、文章は、題名の「『父』の年輪」という硬い言葉と同じ筆致で、描写は未熟のようにみえた。」
山本孝夫
男50歳
0  
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他の選考委員
大岡昇平
丹羽文雄
中村光夫
井上靖
永井龍男
吉行淳之介
舟橋聖一
安岡章太郎
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選考委員
安岡章太郎男54歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
連作について 総行数31 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
日野啓三
男45歳
31 「最もすぐれていた。」「「浮ぶ部屋」は、それ(引用者注:「此岸の家」)と一連の作品である。しかし、これを独立した短篇小説として読んでも、勿論読めるものだ。ただ、文学賞の対象として取り上げる場合、こういうかたちで発表された作品は、いつも何かと面倒なことになりがちなものであろう。」「しかし、(引用者中略)これをおいて他の作品を推す気には、私はまったくなれなかった。」
岡松和夫
男43歳
0  
太田道子
女(30歳)
0  
金鶴泳
男35歳
0  
高橋昌男
男38歳
0  
福沢英敏
男31歳
0  
太佐順
男37歳
0  
山本孝夫
男50歳
0  
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他の選考委員
大岡昇平
丹羽文雄
中村光夫
井上靖
永井龍男
吉行淳之介
舟橋聖一
瀧井孝作
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候補者・作品
日野啓三男45歳×各選考委員 
「浮ぶ部屋」
短篇 79
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
大岡昇平
男65歳
14 「ほぼ授賞の水準に達していると思った。」「前回の有力な候補作「此岸の家」が、最近、平林たい子賞を受けている。(引用者中略)引き続いて氏の作品が授賞するのは、よほどすぐれた作品でないと、新人が賞を受ける機会において、公平でなくなると思った。」「ところが私の評価では、「浮ぶ部屋」にはそれだけの力がない。」
丹羽文雄
男69歳
30 「平林たい子文学賞と芥川賞の銓衡委員をかねている私は、今度の芥川賞銓衡に苦しい立場に置かれた。」「先ごろ平林賞をもらったばかりだからという委員があり、別のひとりは、平林賞につづいて芥川賞を贈るというのは、平林賞に追従したというふうに解釈されるおそれもあると言い出した。」「私は前作同様に内容の充実した、きめのこまかい作品だと思った。」
中村光夫
男63歳
10 「作家としての力倆が抜群であることは、誰もがみとめるところで、欠陥はあるにしろ、才能にめぐまれた新人に違いありません。」「ただその達者すぎるところが、題材のむずかしさと相俟って、ひとり合点の印象を与えがちなのは、氏として一考すべきところでしょう。」
井上靖
男67歳
8 「すでにでき上がった作家で、危げなく読めるが、「浮ぶ部屋」には前作によりかかっているようなところがあって、独立した作品としてみると弱さのあるのを否めなかった。」「「小蟹のいる村」と「浮ぶ部屋」の二作に授賞という声もあったが、私はなしの方を主張した。」
永井龍男
男70歳
8 「前回候補作の「此岸の家」の続篇あるいは連作とみられるが、「此岸の家」がこの続篇を必要としたように、「浮ぶ部屋」もさらに同様に続篇を予想させる。」
吉行淳之介
男50歳
9 「私は(引用者中略)推し、一時は当選かと思われたが、長時間の議論の末ナシときまった。この作品についての否定的意見はいちいちもっともだが、それでも他の作品に比べて差があると考えていた。」「最終的には(引用者注:「浮ぶ部屋」と「小蟹のいる村」の)二作授賞に賛成したが、ダメだった。」
舟橋聖一
男69歳
6 「最も力量があった。私は前回作に劣らない出来栄えと思ったが、平林たい子賞とダブるのに異議のある向きもあって、授賞に到らなかった。」「(引用者注:「夏の亀裂」と共に)何かを書こうとする主題が感じられて、書き足りないところはあっても、読む者に訴えてくる誠実さと迫力がある。」
瀧井孝作
男80歳
9 「私は前作には、すらすら読ませるけど可もなし不可もなし、と批評したが、今回のこれも筆は達者だが、ズラズラのべつ(原文傍点)幕なしで、短篇としてのしめくくりがなく、長篇の連作か、前回と同じに、達者に書きすぎてあると思った。筆力はあるが、筆力の緩急が足りないようだ。」
安岡章太郎
男54歳
31 「最もすぐれていた。」「「浮ぶ部屋」は、それ(引用者注:「此岸の家」)と一連の作品である。しかし、これを独立した短篇小説として読んでも、勿論読めるものだ。ただ、文学賞の対象として取り上げる場合、こういうかたちで発表された作品は、いつも何かと面倒なことになりがちなものであろう。」「しかし、(引用者中略)これをおいて他の作品を推す気には、私はまったくなれなかった。」
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他の候補作
岡松和夫
「小蟹のいる村」
太田道子
「微熱のとき」
金鶴泳
「夏の亀裂」
高橋昌男
「道化の背景」
福沢英敏
「アイの問題」
太佐順
「「父」の年輪」
山本孝夫
「笑い声」
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候補者・作品
岡松和夫男43歳×各選考委員 
「小蟹のいる村」
短篇 69
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
大岡昇平
男65歳
8 「ほぼ授賞の水準に達していると思った。」「少し力が弱いが、(引用者注:「浮ぶ部屋」とくらべて)この方に授賞するのがよいと思った。」「構成も巧みだし、筆にきめの細かさがある。しかしなんとなくあまりにもうまくできすぎている感じがあり、すなおな感動を妨げる。」
丹羽文雄
男69歳
0  
中村光夫
男63歳
8 「作品としてのまとまりはよく、「楢山節考」を思わせる残酷な奇習が一応そつなく描けていますが、やはり話がうまくできすぎているのが欠点に感じられる小説です。」
井上靖
男67歳
10 「一番読み応えがあった。」「救いがなく暗いが、文章もきちんとしており、才気も感じられ、会話もなかなかうまく書けていると思った。難を言えば、後半に説明不足と言うか、書き足りぬところがあって、こちらの想像で補わなければならず、惜しいと思った。」「「小蟹のいる村」と「浮ぶ部屋」の二作に授賞という声もあったが、私はなしの方を主張した。」
永井龍男
男70歳
6 「一抹の古風さは、題材によるものではなく、作者の手法の端々に見えがくれするのではないか。物語に心をうたれながら、清新さに欠けるうらみを感じるのは、その辺に原因があるのではないか。」
吉行淳之介
男50歳
6 「最後の場面、滝の傍の木に結びつけられた沢山の日の丸にかこまれて、女主人公が健康だったころの自分の裸身におもいを致すところは新鮮だった。」「最終的には(引用者注:「浮ぶ部屋」と「小蟹のいる村」の)二作授賞に賛成したが、ダメだった。」
舟橋聖一
男69歳
6 「肺病を苦にし、死を望んで観音堂へはいる女主人公のニヒリズムが少々作りものめき、いっそ時代を天保頃に遡らせたら、或いは怪奇なムードが出たかもしれない。」「が、銭湯で喀血するところは、鮮やかに書けている。」
瀧井孝作
男80歳
12 「よくまとまった短篇で、私には、寒村の習俗は温和なようで実は残酷なものに見えた。」「これは敗戦後のむざんな人棄物語とも見えた。今回の予選作八篇の中では、私はこれが一ばんよいと思った。」
安岡章太郎
男54歳
0  
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他の候補作
日野啓三
「浮ぶ部屋」
太田道子
「微熱のとき」
金鶴泳
「夏の亀裂」
高橋昌男
「道化の背景」
福沢英敏
「アイの問題」
太佐順
「「父」の年輪」
山本孝夫
「笑い声」
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候補者・作品
太田道子女(30歳)×各選考委員 
「微熱のとき」
短篇 132
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
大岡昇平
男65歳
0  
丹羽文雄
男69歳
0  
中村光夫
男63歳
0  
井上靖
男67歳
0  
永井龍男
男70歳
2 「油絵具で書いたような文章に注目したが、それだけのことに終った。」
吉行淳之介
男50歳
3 「ある種の才能はあきらかだが、文学少女である。文学というものになにか間違った固定観念があるのではないか。」
舟橋聖一
男69歳
2 「前作「流蜜のとき」に較べて不出来だ。小道具も多すぎる。」
瀧井孝作
男80歳
3 「達者すぎて、実感のない造花のようで、これは面白がらせの読物小説と見えた。」
安岡章太郎
男54歳
0  
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他の候補作
日野啓三
「浮ぶ部屋」
岡松和夫
「小蟹のいる村」
金鶴泳
「夏の亀裂」
高橋昌男
「道化の背景」
福沢英敏
「アイの問題」
太佐順
「「父」の年輪」
山本孝夫
「笑い声」
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候補者・作品
金鶴泳男35歳×各選考委員 
「夏の亀裂」
中篇 172
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
大岡昇平
男65歳
0  
丹羽文雄
男69歳
0  
中村光夫
男63歳
0  
井上靖
男67歳
6 「真面目に主題に取り組んでいて、正面から書いているところには好感が持てたが、もともと短篇の材料ではないと思った。」
永井龍男
男70歳
3 「清潔な作品である。」「読書会の輪講やそのメンバーに筆が及ぶと、これだけでは到底書き足りないと思った。」
吉行淳之介
男50歳
4 「生マジメすぎた。」「(引用者注:マジメでなく)生マジメとなると、作品から味とふくらみが失われやすい。」
舟橋聖一
男69歳
9 「平板なところもあるが、真剣味にあふれている。終りの部分で、ナルシシズムとも違う自己尊敬という新しい語彙が出てくるのは、注目していい。」「(引用者注:「浮ぶ部屋」と共に)何かを書こうとする主題が感じられて、書き足りないところはあっても、読む者に訴えてくる誠実さと迫力がある。」
瀧井孝作
男80歳
0  
安岡章太郎
男54歳
0  
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他の候補作
日野啓三
「浮ぶ部屋」
岡松和夫
「小蟹のいる村」
太田道子
「微熱のとき」
高橋昌男
「道化の背景」
福沢英敏
「アイの問題」
太佐順
「「父」の年輪」
山本孝夫
「笑い声」
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候補者・作品
高橋昌男男38歳×各選考委員 
「道化の背景」
短篇 70
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
大岡昇平
男65歳
0  
丹羽文雄
男69歳
0  
中村光夫
男63歳
4 「注目しました。」「「背景」にあまり眼をくばらずに、子供の道化をもっと掘りさげたら、ユニックな短篇になったろうと思います。」
井上靖
男67歳
0  
永井龍男
男70歳
4 「(引用者注:「『父』の年輪」と共に)よくまとまり部分部分に光ったところのある短篇で好感が持てた。」
吉行淳之介
男50歳
3 「前回、私の票だけで、大いにヒンシュクされた高橋昌男には今回ある程度の票が入った。しかし、私は前の「白蟻」のほうを評価する。」
舟橋聖一
男69歳
2 「柳橋や国技館の描写にアテコミがあるが、(引用者中略)授賞には遠くても、将来性があると思う。」
瀧井孝作
男80歳
0  
安岡章太郎
男54歳
0  
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他の候補作
日野啓三
「浮ぶ部屋」
岡松和夫
「小蟹のいる村」
太田道子
「微熱のとき」
金鶴泳
「夏の亀裂」
福沢英敏
「アイの問題」
太佐順
「「父」の年輪」
山本孝夫
「笑い声」
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候補者・作品
福沢英敏男31歳×各選考委員 
「アイの問題」
短篇 69
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
大岡昇平
男65歳
0  
丹羽文雄
男69歳
0  
中村光夫
男63歳
0  
井上靖
男67歳
0  
永井龍男
男70歳
0  
吉行淳之介
男50歳
4 「おおかたのヒンシュクをかった」「私はなかなかおもしろかったが、当選の水準ではない。」
舟橋聖一
男69歳
13 「たしかに糞便を失禁する汚い小説である。」「今までの小説美学とは次元を異にするとみえて、委員の中には「大落し」と大喝した人もあった。にもかかわらず、私が丸印をつけたのは(△印の委員も一人あった)、サドまたはマゾの思想の影響或いは悪影響があると思ったからだ。」「この汚らしさを滑稽とだけ受止めていいかどうかは問題である。この作者は生来病的なのかと思ったら、長野県伊那の健康な農民だそうである。」
瀧井孝作
男80歳
0  
安岡章太郎
男54歳
0  
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他の候補作
日野啓三
「浮ぶ部屋」
岡松和夫
「小蟹のいる村」
太田道子
「微熱のとき」
金鶴泳
「夏の亀裂」
高橋昌男
「道化の背景」
太佐順
「「父」の年輪」
山本孝夫
「笑い声」
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候補者・作品
太佐順男37歳×各選考委員 
「「父」の年輪」
短篇 49
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
大岡昇平
男65歳
4 「まだ形が整わないうらみがあるが、主題に正面から立ち向っていることに好感が持てる。そこから生れる文学的感動は、右の二作(引用者注:「浮ぶ部屋」「小蟹のいる村」)より良質のものであると思った。」
丹羽文雄
男69歳
0  
中村光夫
男63歳
0  
井上靖
男67歳
0  
永井龍男
男70歳
4 「(引用者注:「道化の背景」と共に)よくまとまり部分部分に光ったところのある短篇で好感が持てた。」
吉行淳之介
男50歳
3 「(引用者注:「笑い声」と共に)好感がもてる気張らない書き方の作品だったが、ともに私にはよく分らない部分がところどころあった。」
舟橋聖一
男69歳
2 「子供の実の父親をうまくぼかしてあり、(引用者中略)授賞には遠くても、将来性があると思う。」
瀧井孝作
男80歳
5 「初心のういういしい感じはよいが、文章は、題名の「『父』の年輪」という硬い言葉と同じ筆致で、描写は未熟のようにみえた。」
安岡章太郎
男54歳
0  
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他の候補作
日野啓三
「浮ぶ部屋」
岡松和夫
「小蟹のいる村」
太田道子
「微熱のとき」
金鶴泳
「夏の亀裂」
高橋昌男
「道化の背景」
福沢英敏
「アイの問題」
山本孝夫
「笑い声」
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候補者・作品
山本孝夫男50歳×各選考委員 
「笑い声」
短篇 88
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
大岡昇平
男65歳
0  
丹羽文雄
男69歳
0  
中村光夫
男63歳
0  
井上靖
男67歳
0  
永井龍男
男70歳
2 「面白い題材を面白く書いているが、それ以上興を惹く力が不足している。」
吉行淳之介
男50歳
3 「(引用者注:「『父』の年輪」と共に)好感がもてる気張らない書き方の作品だったが、ともに私にはよく分らない部分がところどころあった。」
舟橋聖一
男69歳
0  
瀧井孝作
男80歳
0  
安岡章太郎
男54歳
0  
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他の候補作
日野啓三
「浮ぶ部屋」
岡松和夫
「小蟹のいる村」
太田道子
「微熱のとき」
金鶴泳
「夏の亀裂」
高橋昌男
「道化の背景」
福沢英敏
「アイの問題」
太佐順
「「父」の年輪」
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