芥川賞のすべて・のようなもの
第58回
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昭和42年/1967年下半期
(昭和43年/1968年1月22日決定発表/『文藝春秋』昭和43年/1968年3月号選評掲載)
選考委員  三島由紀夫
男43歳
石川達三
男62歳
大岡昇平
男58歳
舟橋聖一
男63歳
瀧井孝作
男73歳
丹羽文雄
男63歳
石川淳
男68歳
井上靖
男60歳
永井龍男
男63歳
中村光夫
男56歳
川端康成
男68歳
選評総行数  32 28 28 53 37 18 14 24 25 30 33
候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数
柏原兵三 「徳山道助の帰郷」
187
男34歳
25 4 10 24 8 5 3 11 8 15 6
桑原幹夫 「死の翼の下に」
90
男37歳
0 2 0 0 0 0 0 0 0 0 2
佐江衆一 「風」
53
男34歳
10 2 0 0 0 0 0 13 0 0 5
丸谷才一 「秘密」
103
男42歳
0 2 1 31 6 0 8 8 10 5 4
勝目梓 「『マイ・カアニヴァル』」
100
男35歳
0 6 4 0 8 0 0 0 2 4 13
佐木隆三 「奇蹟の市」
99
男30歳
0 7 6 0 9 2 0 0 9 0 6
阿部昭 「東京の春」
106
男33歳
0 5 3 0 5 12 0 0 2 4 14
                     
年齢/枚数の説明   見方・注意点

このページの選評出典:『芥川賞全集 第七巻』昭和57年/1982年8月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和43年/1968年3月号)
1行当たりの文字数:26字


選考委員
三島由紀夫男43歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
典型的日本人 総行数32 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
柏原兵三
男34歳
25 「授賞については、全く賛成である。」「私はこれと佐江衆一氏の「風」のどちらかと思っていた」「あくまで典型的日本人の心理を一歩も逸脱せぬ物語の、実に平板な進行に、何のことかわからずに読んでいるうち、第三章の柿の木に至って、忽ち真のテーマがあらわれ、(引用者中略)目にもとまらぬ早さで、作者の言わんとするところが象徴的に結晶する。」「(引用者注:文体に)自然の流露感や内的必然性がなく、若隠居みたいな気取りの見えるのが残念である。」
桑原幹夫
男37歳
0  
佐江衆一
男34歳
10 「古風なドイツ風な静かな小説で、文章は(引用者注:「徳山道助の帰郷」より)このほうがよいと思った。」「このごろはこういう作品に接することが少ないので、久々で、演奏が素人っぽくても気品のある室内楽をきいた感じがする。」
丸谷才一
男42歳
0  
勝目梓
男35歳
0  
佐木隆三
男30歳
0  
阿部昭
男33歳
0  
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他の選考委員
石川達三
大岡昇平
舟橋聖一
瀧井孝作
丹羽文雄
石川淳
井上靖
永井龍男
中村光夫
川端康成
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選考委員
石川達三男62歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
努力賞 総行数28 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
柏原兵三
男34歳
4 「私は積極的に推す気はなかった。しかしこれが当選することに反対はしないつもりだった。欠点はいろいろ有るが、努力賞に該当してもいいと思っていた。」
桑原幹夫
男37歳
2 「これだけの長さをかけて書くほどの内容ではない。自分の情緒に執着し過ぎたようだ。」
佐江衆一
男34歳
2 「綺麗だが、綺麗ごとに終っている。」
丸谷才一
男42歳
2 「数人の支持があったが、このなまぬるさが私には退屈だった。」
勝目梓
男35歳
6 「もう私などには理解し兼ねる世界だ。読んでいて何かしら虚しい。」「それは作者と私との年代の差であろうかとも思った。しかし作者の年代だけにしか通用しないような文学では、やはり困るのではないだろうか。」
佐木隆三
男30歳
7 「数票の支持があったが、このわざとらしい汚なさには賛成し兼ねる。」「露出症的な性描写はそれ自体が作者の自慰であって、こんなところに(人生の真実)があるのだとは私は思わない。」
阿部昭
男33歳
5 「いやらしい人物の群像で、(引用者中略)私の慾を言えば、ここまでは誰にでも書ける、ここからもう一歩踏み込んだ所から文学が始まるのではないかと考えた。」
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他の選考委員
三島由紀夫
大岡昇平
舟橋聖一
瀧井孝作
丹羽文雄
石川淳
井上靖
永井龍男
中村光夫
川端康成
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選考委員
大岡昇平男58歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
順当な結果 総行数28 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
柏原兵三
男34歳
10 「(引用者注:授賞は)順当の結果といえよう。」「十分に作者の力量を窺わせる作品である。」「ただ太平洋戦争が負けると判断して、何もしなかった旧軍人を想像することは私にはむずかしい。」「あの民族の激動期を抜いて、軍人の人間性が仮構されている点に不満であった。」
桑原幹夫
男37歳
0  
佐江衆一
男34歳
0  
丸谷才一
男42歳
1 「後半が少しぞんざいである。」
勝目梓
男35歳
4 「新鮮味のある勝目梓「マイ・カアニヴァル」がダークホースになるのではないかと予想していたが、水準はやはり古い選手の作品が高いのである。」
佐木隆三
男30歳
6 「特に欠点と目されるものがない。人間関係の扱方もしっかりしており、筆力がある。私はこの意味でこの作品を推したのだが、この題材は「北九州物」という言葉があるほど書き古されており、マカロニ・ウエスターンみたいな残酷物語の型が出来かかっている。」
阿部昭
男33歳
3 「最も現代的な題材を扱っており、なかなか面白かったが、人物の扱いがやや常套的に想像的な点が不満であった。」
  「今期は二回或いは三回候補になった作家によい作品が多く、銓衡に手間取った。」
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他の選考委員
三島由紀夫
石川達三
舟橋聖一
瀧井孝作
丹羽文雄
石川淳
井上靖
永井龍男
中村光夫
川端康成
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選考委員
舟橋聖一男63歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
丸谷と柏原 総行数53 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
柏原兵三
男34歳
24 「ごく平凡な職業軍人のステロタイプを描いたもので、反戦もなければ軍閥批判もない。その栄達心、功名心もありふれた世俗的なものだ。」「私の読後感をもむなしくするのみであった。」「過去半世紀にのさばった旧軍人の伝記を、無条件肯定の観点から書かれては困ると思うのである。」「たしかに大飛球の力作だが、塀を越して外野スタンドに入ったとは、私には思えない。」
桑原幹夫
男37歳
0  
佐江衆一
男34歳
0  
丸谷才一
男42歳
31 「推す気で出かけた。」「昭和二十年に兵役に服していた作者が、敗北のさなかの軍隊生活を書き、その中で徴兵忌避の心理を空想するリアリティを書いたものであったなら、私はこの作をもっと強く推す気になったろう。惜しむらくは、あまりにお伽話になっているので、推しきれなかった。」
勝目梓
男35歳
0  
佐木隆三
男30歳
0  
阿部昭
男33歳
0  
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他の選考委員
三島由紀夫
石川達三
大岡昇平
瀧井孝作
丹羽文雄
石川淳
井上靖
永井龍男
中村光夫
川端康成
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選考委員
瀧井孝作男73歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
「奇蹟の市」は強烈 総行数37 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
柏原兵三
男34歳
8 「力作で、一応は読ませる筆だが、新味にはとぼしい感じだ。」
桑原幹夫
男37歳
0  
佐江衆一
男34歳
0  
丸谷才一
男42歳
6 「徴兵忌避の小説」「徴兵忌避も敗戦にまぎれて憲兵の調べも何もなかったという小説。」
勝目梓
男35歳
8 「混血児の大阪弁などもうまくて、初め読んだ時は器用な作と見たが、私は今、この筋を書いて、あざとい虚構の厭な作とわかった。」
佐木隆三
男30歳
9 「必死に強烈な生き方が、生ま生ましく描かれて、私はこの作が今回一番の佳作と見た。」「しかし、これが芥川賞になると、この小説の主人公の中学生を模倣した、中学生の非行少年振りが流行はびこるとこまると考えて、私はこの佳作を敢えて主張しなかったが。」
阿部昭
男33歳
5 「主人公の孤独な心持はわかるが、文章にデッサン力が不足か、表現が粗末に散漫な感じがしたのは惜しい。」
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他の選考委員
三島由紀夫
石川達三
大岡昇平
舟橋聖一
丹羽文雄
石川淳
井上靖
永井龍男
中村光夫
川端康成
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選考委員
丹羽文雄男63歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
誠実な筆に一票 総行数18 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
柏原兵三
男34歳
5 「前半はあれほど書かなくともよかったのではないか。しかし後半がよいので、前半には目をつむってもよいと思った。」「(引用者注:決選投票では)誠実な筆の感じに一票を投ずることにした。」
桑原幹夫
男37歳
0  
佐江衆一
男34歳
0  
丸谷才一
男42歳
0  
勝目梓
男35歳
0  
佐木隆三
男30歳
2 「好意をもったが、悪達者すぎるのにためらう気持ちになり、」
阿部昭
男33歳
12 「いちばん心をひかれた。しかしそれは、出来ばえを抜きにしてのことである。」「たれかがこの材料を書かねばならなかったのだ。作品を通じての作者の自嘲はよくわかる。」「が、残念なのは自嘲の底が浅いことである。書きこみが足りないからである。」「じっくり腰を下して書きこまれたならば、すばらしい作品が出来たにちがいない。」
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他の選考委員
三島由紀夫
石川達三
大岡昇平
舟橋聖一
瀧井孝作
石川淳
井上靖
永井龍男
中村光夫
川端康成
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選考委員
石川淳男68歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
該当するものなし 総行数14 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
柏原兵三
男34歳
3 「これはすでに授賞ときまったものだから、わたしはあとからなにかいう興味がない。」
桑原幹夫
男37歳
0  
佐江衆一
男34歳
0  
丸谷才一
男42歳
8 「わたしは該当なしと考えるが、ぜひということになると、「秘密」を取る。」「主人公が兵営の前から逃げ出して山にのぼるくだりは納得したが、そのあとがいけない。末段は精彩を欠く。」「しかし、山のぼりの部分だけを見ても、この作者にかなりの力量があることはわかる。(引用者中略)わたしはそこを推した。」
勝目梓
男35歳
0  
佐木隆三
男30歳
0  
阿部昭
男33歳
0  
  「今回はどの作品も出来がよいとはいえない。該当作品なしとするのがおそらく妥当である。」
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他の選考委員
三島由紀夫
石川達三
大岡昇平
舟橋聖一
瀧井孝作
丹羽文雄
井上靖
永井龍男
中村光夫
川端康成
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選考委員
井上靖男60歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
佳作三篇 総行数24 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
柏原兵三
男34歳
11 「私には面白かった。」「一見古い書き方で、老軍人の生涯を丹念に綴っている。」「作者は意識してこうした手法を用いており、書かねばならぬことは全部拾い上げてしまっている。みごとである。」
桑原幹夫
男37歳
0  
佐江衆一
男34歳
13 「私には面白かった。」「なかなかいい短篇である。」「人生の截断面の切り方はなかなか鮮かだと思った。殊に主人公の妻の唐突な行動は、唐突ではあるが、はっとするようなものを持っている。」
丸谷才一
男42歳
8 「私には面白かった。」「この作家は既に一家を成しており、他の候補作のような初々しさはないが、フィクションで、この書きにくい主題と取り組む力量は相当なものである。」
勝目梓
男35歳
0  
佐木隆三
男30歳
0  
阿部昭
男33歳
0  
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他の選考委員
三島由紀夫
石川達三
大岡昇平
舟橋聖一
瀧井孝作
丹羽文雄
石川淳
永井龍男
中村光夫
川端康成
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選考委員
永井龍男男63歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
暖かみのある筆致 総行数25 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
柏原兵三
男34歳
8 「大砲の夢を見る辺りでは興ざめしたが、全篇を通じた寛闊な雰囲気に、ある感動を与えられた。そのあたたかみに反撥をおぼえるとなれば、話は別である。」
桑原幹夫
男37歳
0  
佐江衆一
男34歳
0  
丸谷才一
男42歳
10 「作の三分の二を過ぎてから、にわかに先を急いだらしい形跡があり、企み過ぎて何もかもと気を配ったのが却って欠点になった形であるが、前作の「にぎやかな街で」と合わせて、才気を感じさせる。」
勝目梓
男35歳
2 「才筆である。」
佐木隆三
男30歳
9 「今回の候補作中最も若い作者の作品にふさわしく、既成の道徳や約束もすべてたたきこわそうとする。表現も確かなものがあるが、なにもかもねじ伏せてしまおうとする筆力のかげに、作者の強引な底意がちらつかないではなかった。」
阿部昭
男33歳
2 「才筆である。」
  「今回の候補作は、優劣をにわかに判じ難く思われたが、それは私ばかりではなかったようで、銓衡会は難航した。」
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他の選考委員
三島由紀夫
石川達三
大岡昇平
舟橋聖一
瀧井孝作
丹羽文雄
石川淳
井上靖
中村光夫
川端康成
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選考委員
中村光夫男56歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
精神の幅 総行数30 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
柏原兵三
男34歳
15 「鈍い鑿をつかって彫りあげたような小説で、はじめはその鈍さが気になりますが、終りに近づくにつれて、ひとりの職業軍人とその親族の生態がくっきり浮きあがってきて、鈍さが凡庸の同義語でないことがわかります。」「小説としてさまざまの欠点はありますが、在来のリアリズムの常識を破った作者のしずかな姿勢は、強い個性の現われと見てよいでしょう。」
桑原幹夫
男37歳
0  
佐江衆一
男34歳
0  
丸谷才一
男42歳
5 「作者の精神の幅が作品より広い感じで、安心してよめますが、器用なだけに安易に手をぬいたところが気になります。」
勝目梓
男35歳
4 「才筆です。このどこか飄逸な軽味は珍重さるべきでしょうが、この持味を文学として生かすには容易ならぬ苦心が要りましょう。」
佐木隆三
男30歳
0  
阿部昭
男33歳
4 「これまでの氏の候補作にくらべてずいぶんよくなっていますが、作中人物のいやらしさをそのまま作者のいやらしさととらえるようなところをまだ抜けきっていません。」
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他の選考委員
三島由紀夫
石川達三
大岡昇平
舟橋聖一
瀧井孝作
丹羽文雄
石川淳
井上靖
永井龍男
川端康成
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選考委員
川端康成男68歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
質量ともに無難 総行数33 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
柏原兵三
男34歳
6 「私が(引用者中略)投票したのは、この作品が質量ともに授賞作として無難と思えたからであった。しかし、「帰郷」を書いた部分、殊に結尾のすぐれているのにくらべて、徳山中将の経歴を書いた冒頭はまったく劣っている。「帰郷」だけを扱った作品と見て、これを取った。」
桑原幹夫
男37歳
2 「私は好感を持った。」
佐江衆一
男34歳
5 「作品の長所短所は別としても、それぞれの才能は見えている。」「いかにも一つの短篇という、選者のほぼ一致した評価であった。」
丸谷才一
男42歳
4 「作品の長所短所は別としても、それぞれの才能は見えている。」「後半の終戦の後がよくない。」
勝目梓
男35歳
13 「材料、主題ははなはだ今日的で分明であり、その描法もまた今日的で感覚の鮮明があるように感じられた。」「一つの作意からの想像によって話を積みあげてゆくところに、おもしろい特色があるのだが、佳境に進むにつれて、見えすいた感じが出て来るようなのは、内側の抑止が足りないのかと思われる。」「いずれにしろ、才能は見える作品である。」
佐木隆三
男30歳
6 「作品の長所短所は別としても、それぞれの才能は見えている。」「「東京の春」とともに、今日的な衝撃を与える作品だが、ここまで意識的にきたなく書かれると、私は推挙する勇気に欠ける。」
阿部昭
男33歳
14 「材料、主題ははなはだ今日的で分明であり、その描法もまた今日的で感覚の鮮明があるように感じられた。」「題材は今日の急所を突いているだけに、かえって処理に落ちつきを必要としたのではなかろうか。」「いずれにしろ、才能は見える作品である。」
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他の選考委員
三島由紀夫
石川達三
大岡昇平
舟橋聖一
瀧井孝作
丹羽文雄
石川淳
井上靖
永井龍男
中村光夫
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受賞者・作品
柏原兵三男34歳×各選考委員 
「徳山道助の帰郷」
中篇 187
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
三島由紀夫
男43歳
25 「授賞については、全く賛成である。」「私はこれと佐江衆一氏の「風」のどちらかと思っていた」「あくまで典型的日本人の心理を一歩も逸脱せぬ物語の、実に平板な進行に、何のことかわからずに読んでいるうち、第三章の柿の木に至って、忽ち真のテーマがあらわれ、(引用者中略)目にもとまらぬ早さで、作者の言わんとするところが象徴的に結晶する。」「(引用者注:文体に)自然の流露感や内的必然性がなく、若隠居みたいな気取りの見えるのが残念である。」
石川達三
男62歳
4 「私は積極的に推す気はなかった。しかしこれが当選することに反対はしないつもりだった。欠点はいろいろ有るが、努力賞に該当してもいいと思っていた。」
大岡昇平
男58歳
10 「(引用者注:授賞は)順当の結果といえよう。」「十分に作者の力量を窺わせる作品である。」「ただ太平洋戦争が負けると判断して、何もしなかった旧軍人を想像することは私にはむずかしい。」「あの民族の激動期を抜いて、軍人の人間性が仮構されている点に不満であった。」
舟橋聖一
男63歳
24 「ごく平凡な職業軍人のステロタイプを描いたもので、反戦もなければ軍閥批判もない。その栄達心、功名心もありふれた世俗的なものだ。」「私の読後感をもむなしくするのみであった。」「過去半世紀にのさばった旧軍人の伝記を、無条件肯定の観点から書かれては困ると思うのである。」「たしかに大飛球の力作だが、塀を越して外野スタンドに入ったとは、私には思えない。」
瀧井孝作
男73歳
8 「力作で、一応は読ませる筆だが、新味にはとぼしい感じだ。」
丹羽文雄
男63歳
5 「前半はあれほど書かなくともよかったのではないか。しかし後半がよいので、前半には目をつむってもよいと思った。」「(引用者注:決選投票では)誠実な筆の感じに一票を投ずることにした。」
石川淳
男68歳
3 「これはすでに授賞ときまったものだから、わたしはあとからなにかいう興味がない。」
井上靖
男60歳
11 「私には面白かった。」「一見古い書き方で、老軍人の生涯を丹念に綴っている。」「作者は意識してこうした手法を用いており、書かねばならぬことは全部拾い上げてしまっている。みごとである。」
永井龍男
男63歳
8 「大砲の夢を見る辺りでは興ざめしたが、全篇を通じた寛闊な雰囲気に、ある感動を与えられた。そのあたたかみに反撥をおぼえるとなれば、話は別である。」
中村光夫
男56歳
15 「鈍い鑿をつかって彫りあげたような小説で、はじめはその鈍さが気になりますが、終りに近づくにつれて、ひとりの職業軍人とその親族の生態がくっきり浮きあがってきて、鈍さが凡庸の同義語でないことがわかります。」「小説としてさまざまの欠点はありますが、在来のリアリズムの常識を破った作者のしずかな姿勢は、強い個性の現われと見てよいでしょう。」
川端康成
男68歳
6 「私が(引用者中略)投票したのは、この作品が質量ともに授賞作として無難と思えたからであった。しかし、「帰郷」を書いた部分、殊に結尾のすぐれているのにくらべて、徳山中将の経歴を書いた冒頭はまったく劣っている。「帰郷」だけを扱った作品と見て、これを取った。」
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他の候補作
桑原幹夫
「死の翼の下に」
佐江衆一
「風」
丸谷才一
「秘密」
勝目梓
「『マイ・カアニヴァル』」
佐木隆三
「奇蹟の市」
阿部昭
「東京の春」
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候補者・作品
桑原幹夫男37歳×各選考委員 
「死の翼の下に」
短篇 90
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
三島由紀夫
男43歳
0  
石川達三
男62歳
2 「これだけの長さをかけて書くほどの内容ではない。自分の情緒に執着し過ぎたようだ。」
大岡昇平
男58歳
0  
舟橋聖一
男63歳
0  
瀧井孝作
男73歳
0  
丹羽文雄
男63歳
0  
石川淳
男68歳
0  
井上靖
男60歳
0  
永井龍男
男63歳
0  
中村光夫
男56歳
0  
川端康成
男68歳
2 「私は好感を持った。」
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他の候補作
柏原兵三
「徳山道助の帰郷」
佐江衆一
「風」
丸谷才一
「秘密」
勝目梓
「『マイ・カアニヴァル』」
佐木隆三
「奇蹟の市」
阿部昭
「東京の春」
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候補者・作品
佐江衆一男34歳×各選考委員 
「風」
短篇 53
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
三島由紀夫
男43歳
10 「古風なドイツ風な静かな小説で、文章は(引用者注:「徳山道助の帰郷」より)このほうがよいと思った。」「このごろはこういう作品に接することが少ないので、久々で、演奏が素人っぽくても気品のある室内楽をきいた感じがする。」
石川達三
男62歳
2 「綺麗だが、綺麗ごとに終っている。」
大岡昇平
男58歳
0  
舟橋聖一
男63歳
0  
瀧井孝作
男73歳
0  
丹羽文雄
男63歳
0  
石川淳
男68歳
0  
井上靖
男60歳
13 「私には面白かった。」「なかなかいい短篇である。」「人生の截断面の切り方はなかなか鮮かだと思った。殊に主人公の妻の唐突な行動は、唐突ではあるが、はっとするようなものを持っている。」
永井龍男
男63歳
0  
中村光夫
男56歳
0  
川端康成
男68歳
5 「作品の長所短所は別としても、それぞれの才能は見えている。」「いかにも一つの短篇という、選者のほぼ一致した評価であった。」
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他の候補作
柏原兵三
「徳山道助の帰郷」
桑原幹夫
「死の翼の下に」
丸谷才一
「秘密」
勝目梓
「『マイ・カアニヴァル』」
佐木隆三
「奇蹟の市」
阿部昭
「東京の春」
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候補者・作品
丸谷才一男42歳×各選考委員 
「秘密」
短篇 103
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
三島由紀夫
男43歳
0  
石川達三
男62歳
2 「数人の支持があったが、このなまぬるさが私には退屈だった。」
大岡昇平
男58歳
1 「後半が少しぞんざいである。」
舟橋聖一
男63歳
31 「推す気で出かけた。」「昭和二十年に兵役に服していた作者が、敗北のさなかの軍隊生活を書き、その中で徴兵忌避の心理を空想するリアリティを書いたものであったなら、私はこの作をもっと強く推す気になったろう。惜しむらくは、あまりにお伽話になっているので、推しきれなかった。」
瀧井孝作
男73歳
6 「徴兵忌避の小説」「徴兵忌避も敗戦にまぎれて憲兵の調べも何もなかったという小説。」
丹羽文雄
男63歳
0  
石川淳
男68歳
8 「わたしは該当なしと考えるが、ぜひということになると、「秘密」を取る。」「主人公が兵営の前から逃げ出して山にのぼるくだりは納得したが、そのあとがいけない。末段は精彩を欠く。」「しかし、山のぼりの部分だけを見ても、この作者にかなりの力量があることはわかる。(引用者中略)わたしはそこを推した。」
井上靖
男60歳
8 「私には面白かった。」「この作家は既に一家を成しており、他の候補作のような初々しさはないが、フィクションで、この書きにくい主題と取り組む力量は相当なものである。」
永井龍男
男63歳
10 「作の三分の二を過ぎてから、にわかに先を急いだらしい形跡があり、企み過ぎて何もかもと気を配ったのが却って欠点になった形であるが、前作の「にぎやかな街で」と合わせて、才気を感じさせる。」
中村光夫
男56歳
5 「作者の精神の幅が作品より広い感じで、安心してよめますが、器用なだけに安易に手をぬいたところが気になります。」
川端康成
男68歳
4 「作品の長所短所は別としても、それぞれの才能は見えている。」「後半の終戦の後がよくない。」
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他の候補作
柏原兵三
「徳山道助の帰郷」
桑原幹夫
「死の翼の下に」
佐江衆一
「風」
勝目梓
「『マイ・カアニヴァル』」
佐木隆三
「奇蹟の市」
阿部昭
「東京の春」
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候補者・作品
勝目梓男35歳×各選考委員 
「『マイ・カアニヴァル』」
短篇 100
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
三島由紀夫
男43歳
0  
石川達三
男62歳
6 「もう私などには理解し兼ねる世界だ。読んでいて何かしら虚しい。」「それは作者と私との年代の差であろうかとも思った。しかし作者の年代だけにしか通用しないような文学では、やはり困るのではないだろうか。」
大岡昇平
男58歳
4 「新鮮味のある勝目梓「マイ・カアニヴァル」がダークホースになるのではないかと予想していたが、水準はやはり古い選手の作品が高いのである。」
舟橋聖一
男63歳
0  
瀧井孝作
男73歳
8 「混血児の大阪弁などもうまくて、初め読んだ時は器用な作と見たが、私は今、この筋を書いて、あざとい虚構の厭な作とわかった。」
丹羽文雄
男63歳
0  
石川淳
男68歳
0  
井上靖
男60歳
0  
永井龍男
男63歳
2 「才筆である。」
中村光夫
男56歳
4 「才筆です。このどこか飄逸な軽味は珍重さるべきでしょうが、この持味を文学として生かすには容易ならぬ苦心が要りましょう。」
川端康成
男68歳
13 「材料、主題ははなはだ今日的で分明であり、その描法もまた今日的で感覚の鮮明があるように感じられた。」「一つの作意からの想像によって話を積みあげてゆくところに、おもしろい特色があるのだが、佳境に進むにつれて、見えすいた感じが出て来るようなのは、内側の抑止が足りないのかと思われる。」「いずれにしろ、才能は見える作品である。」
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他の候補作
柏原兵三
「徳山道助の帰郷」
桑原幹夫
「死の翼の下に」
佐江衆一
「風」
丸谷才一
「秘密」
佐木隆三
「奇蹟の市」
阿部昭
「東京の春」
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候補者・作品
佐木隆三男30歳×各選考委員 
「奇蹟の市」
短篇 99
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
三島由紀夫
男43歳
0  
石川達三
男62歳
7 「数票の支持があったが、このわざとらしい汚なさには賛成し兼ねる。」「露出症的な性描写はそれ自体が作者の自慰であって、こんなところに(人生の真実)があるのだとは私は思わない。」
大岡昇平
男58歳
6 「特に欠点と目されるものがない。人間関係の扱方もしっかりしており、筆力がある。私はこの意味でこの作品を推したのだが、この題材は「北九州物」という言葉があるほど書き古されており、マカロニ・ウエスターンみたいな残酷物語の型が出来かかっている。」
舟橋聖一
男63歳
0  
瀧井孝作
男73歳
9 「必死に強烈な生き方が、生ま生ましく描かれて、私はこの作が今回一番の佳作と見た。」「しかし、これが芥川賞になると、この小説の主人公の中学生を模倣した、中学生の非行少年振りが流行はびこるとこまると考えて、私はこの佳作を敢えて主張しなかったが。」
丹羽文雄
男63歳
2 「好意をもったが、悪達者すぎるのにためらう気持ちになり、」
石川淳
男68歳
0  
井上靖
男60歳
0  
永井龍男
男63歳
9 「今回の候補作中最も若い作者の作品にふさわしく、既成の道徳や約束もすべてたたきこわそうとする。表現も確かなものがあるが、なにもかもねじ伏せてしまおうとする筆力のかげに、作者の強引な底意がちらつかないではなかった。」
中村光夫
男56歳
0  
川端康成
男68歳
6 「作品の長所短所は別としても、それぞれの才能は見えている。」「「東京の春」とともに、今日的な衝撃を与える作品だが、ここまで意識的にきたなく書かれると、私は推挙する勇気に欠ける。」
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他の候補作
柏原兵三
「徳山道助の帰郷」
桑原幹夫
「死の翼の下に」
佐江衆一
「風」
丸谷才一
「秘密」
勝目梓
「『マイ・カアニヴァル』」
阿部昭
「東京の春」
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候補者・作品
阿部昭男33歳×各選考委員 
「東京の春」
短篇 106
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
三島由紀夫
男43歳
0  
石川達三
男62歳
5 「いやらしい人物の群像で、(引用者中略)私の慾を言えば、ここまでは誰にでも書ける、ここからもう一歩踏み込んだ所から文学が始まるのではないかと考えた。」
大岡昇平
男58歳
3 「最も現代的な題材を扱っており、なかなか面白かったが、人物の扱いがやや常套的に想像的な点が不満であった。」
舟橋聖一
男63歳
0  
瀧井孝作
男73歳
5 「主人公の孤独な心持はわかるが、文章にデッサン力が不足か、表現が粗末に散漫な感じがしたのは惜しい。」
丹羽文雄
男63歳
12 「いちばん心をひかれた。しかしそれは、出来ばえを抜きにしてのことである。」「たれかがこの材料を書かねばならなかったのだ。作品を通じての作者の自嘲はよくわかる。」「が、残念なのは自嘲の底が浅いことである。書きこみが足りないからである。」「じっくり腰を下して書きこまれたならば、すばらしい作品が出来たにちがいない。」
石川淳
男68歳
0  
井上靖
男60歳
0  
永井龍男
男63歳
2 「才筆である。」
中村光夫
男56歳
4 「これまでの氏の候補作にくらべてずいぶんよくなっていますが、作中人物のいやらしさをそのまま作者のいやらしさととらえるようなところをまだ抜けきっていません。」
川端康成
男68歳
14 「材料、主題ははなはだ今日的で分明であり、その描法もまた今日的で感覚の鮮明があるように感じられた。」「題材は今日の急所を突いているだけに、かえって処理に落ちつきを必要としたのではなかろうか。」「いずれにしろ、才能は見える作品である。」
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他の候補作
柏原兵三
「徳山道助の帰郷」
桑原幹夫
「死の翼の下に」
佐江衆一
「風」
丸谷才一
「秘密」
勝目梓
「『マイ・カアニヴァル』」
佐木隆三
「奇蹟の市」
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