芥川賞のすべて・のようなもの
第80回
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昭和53年/1978年下半期
(昭和54年/1979年1月19日決定発表/『文藝春秋』昭和54年/1979年3月号選評掲載)
選考委員  大江健三郎
男43歳
中村光夫
男67歳
安岡章太郎
男58歳
開高健
男48歳
瀧井孝作
男84歳
井上靖
男71歳
丸谷才一
男53歳
丹羽文雄
男74歳
吉行淳之介
男54歳
遠藤周作
男55歳
選評総行数  29 28 34 30 31 24 33 24 24 28
候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数
増田みず子 「桜寮」
98
女30歳
0 0 0 0 0 5 3 0 0 0
松浦理英子 「葬儀の日」
84
女20歳
0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
中村昌義 「淵の声」
154
男(48歳)
0 3 4 0 7 3 3 0 3 9
重兼芳子 「髪(かみ)
99
女51歳
16 16 5 9 3 4 7 0 16 9
立松和平 「赤く照り輝く山」
117
男31歳
0 0 0 0 0 3 0 0 0 0
青野聰 「母と子の契約」
183
男35歳
13 9 20 8 7 0 4 0 2 10
丸元淑生 「秋月へ」
203
男44歳
5 3 0 11 10 5 15 24 3 0
                   
年齢/枚数の説明   見方・注意点

このページの選評出典:『芥川賞全集 第十二巻』昭和58年/1983年1月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和54年/1979年3月号)
1行当たりの文字数:26字


選考委員
大江健三郎男43歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
「たくらみ」と素材 総行数29 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
増田みず子
女30歳
0  
松浦理英子
女20歳
0  
中村昌義
男(48歳)
0  
重兼芳子
女51歳
16 「短篇としてよくプロットをつくりあげ、その一環の「わたし」の仮構にも、語り口にも工夫する。(引用者中略)この手続きをよくふんでいるが、それゆえに作る手つきはすけて見える。あざとく通俗的に感じられるところもあろう。したがって僕は、この作者がおなじ工夫の短篇をさらに重ねて、一冊の小説集にまとめ広い読者をえることを考えて、むしろ直木賞にふさわしいと思う。」「しかし(引用者中略)次作への期待をいだかしめるに十分」
立松和平
男31歳
0  
青野聰
男35歳
13 「中心の母親像も、それをとらえる子供自身の像も、面白さにおいて並はずれている。」「これはやはり実作者としての僕の、手さぐりの推測を出ぬが、この作者の素材の昇華のさせ方は、意識的な力をおおいにはたらかせていると思う。しかし、小説の読み手、書き手として経験の深い委員から、文章の実際に立った批判が出てくると、僕としてはその推測の根拠を示しえぬと気づく。」「しかし(引用者中略)次作への期待をいだかしめるに十分」
丸元淑生
男44歳
5 「文学的に質の安定した読後感をあたえながら、「たくらみ」のなさゆえに平板である。しかし(引用者中略)次作への期待をいだかしめるに十分」
  「今回は授賞作がなかったが、むしろ芥川賞を連続性で見ると、充実した銓衡会であったと思う。」
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他の選考委員
中村光夫
安岡章太郎
開高健
瀧井孝作
井上靖
丸谷才一
丹羽文雄
吉行淳之介
遠藤周作
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選考委員
中村光夫男67歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
残った二作 総行数28 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
増田みず子
女30歳
0  
松浦理英子
女20歳
0  
中村昌義
男(48歳)
3 「(引用者注:銓衡会では)出来栄えを注目されました。」
重兼芳子
女51歳
16 「稀れに見る感受性の持主です。」「小説全体にも作者の狙った効果は充分にでているのですが、問題はその狙いがどこにあるかです。」「僕としてはここにむしろ現代のタルチュフを認めます。」「ここまで人間の悪をいわば純粋に培養したら、作者は結末の責任をとらねばなりません。そこが紋切型のアイマイな態度で終っているのは致命的な欠点といえます。」
立松和平
男31歳
0  
青野聰
男35歳
9 「継母の描写が溌剌としすぎるせいか、彼女だけが画面一杯にひろがって、父や他の兄弟たちが影のような存在なのは、物足りませんが、これを種々の点で「蒲団」の裏返しと考えると、数世代を経る間の我国の私小説変質の跡が辿れそうです。」
丸元淑生
男44歳
3 「(引用者注:銓衡会では)出来栄えを注目されました。」
  「今回は同じような出来の作品が多く、どれも当選作としては背丈の足りぬようなところがあって、いろいろ議論があった末、「なし」に落ちつきました。まず順当な結論でしょう。」
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他の選考委員
大江健三郎
安岡章太郎
開高健
瀧井孝作
井上靖
丸谷才一
丹羽文雄
吉行淳之介
遠藤周作
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選考委員
安岡章太郎男58歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
次作を期待 総行数34 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
増田みず子
女30歳
0  
松浦理英子
女20歳
0  
中村昌義
男(48歳)
4 「なかなかのものだと思ったが、この連作短篇は、これだけを独立して読むよりは、むしろ長篇としてまとまったかたちで読むべきであろう。」
重兼芳子
女51歳
5 「感受性という面からは最も優れたものがあるが、妙に作り過ぎたところが作品としては弱い。もっと小さな、身辺の断片でもいいから、それだけを克明に追求すれば、この感受性は生かされるのではないか。」
立松和平
男31歳
0  
青野聰
男35歳
20 「荒削りながら主題の好さと、主人公の個性にひかされて、面白く読めた。一見、素朴な書き方だが、部分的にはオヤと思うほど達者であり、観察も光ったところがある。」「この主題は作者にとって掛けがえのないものであろうが、それにしては扱いが粗雑なのだ。」「日常不断の父親の生活態度のエゴイステックな面を、もう少し適確に捉えない限り、母親をいくら書きこんでも、書くだけ上滑りすることになる。」
丸元淑生
男44歳
0  
  「今回、該当作ナシとなったのは、とくに不作ぞろいだったからではない。委員の間で票が割れてしまったことと、どの作品にも、いま一歩というところがあって、決定的に推せるものがなかったためだ。」
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大江健三郎
中村光夫
開高健
瀧井孝作
井上靖
丸谷才一
丹羽文雄
吉行淳之介
遠藤周作
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選考委員
開高健男48歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
該当作なし 総行数30 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
増田みず子
女30歳
0  
松浦理英子
女20歳
0  
中村昌義
男(48歳)
0  
重兼芳子
女51歳
9 「辛酸をなめぬいた、したたかな女が、したたかさにもかかわらずその汚泥のさなかであてどない愛についついひきこまれ、まきこまれていく姿を書くことに憑かれている。今回の作は随所にしたたか女の眼が光っていていいリアリティーを確保しているのだが、最後の詰めで投げだしてしまっているのが致命傷である。」
立松和平
男31歳
0  
青野聰
男35歳
8 「さまざまな、いい獲物を狩りたてているのに、一歩飛躍して止メの一撃を定着するというところで躓いている。」「継母の特異さをなぞることでは成功したけれど、父をなぞることをしなかったので陰影を深められなかった。」
丸元淑生
男44歳
11 「さまざまな、いい獲物を狩りたてているのに、一歩飛躍して止メの一撃を定着するというところで躓いている。」「少年の血と心の遍歴をこまかく描きながらも表題に掲げた主題とそれをかさねあわせることにいささか失敗したので、一歩を踏みだせなかった。」
  「周知のようにこの賞をもらうと作者のみならずその家族一同の人生コースが一変することになるので、授賞作がないのはさびしいけれど、他人の人生をうかつになぶらなくてすんだと思って、ホッとすることも反面にある。」
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大江健三郎
中村光夫
安岡章太郎
瀧井孝作
井上靖
丸谷才一
丹羽文雄
吉行淳之介
遠藤周作
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選考委員
瀧井孝作男84歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
青野聰君を推す 総行数31 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
増田みず子
女30歳
0  
松浦理英子
女20歳
0  
中村昌義
男(48歳)
7 「この作家のものは律義な筆で、以前に候補作を二篇も読んでいて、前回よりも今回の方が一番よいと思ったが、今回は(引用者中略・注:「母と子の契約」に次いで)次点と見た。」
重兼芳子
女51歳
3 「十日ほど前に読んで一月十九日の銓衡会のときは「髪」は何が書いてあったか思出せなかった。印象が淡くて忘れてしまったのだ。」
立松和平
男31歳
0  
青野聰
男35歳
7 「幼稚のようなやわらかい筆の味が活き活きして、私は今回これが一番よいと思った。」
丸元淑生
男44歳
10 「いろいろ書いてあって、集約するのは六ケしいが、何か読ませるものはあった。私はこの作家が『海』の十二月号に短篇「贈物」を出したので、私はこれも読んでみたが、(引用者中略)つまらなかった。この拙作にて、候補作の「秋月へ」の方も減点で、拙作を出すと前の秀作もマイナスになると思った。」
  「四作(引用者注:「母と子の契約」「淵の声」「秋月へ」「髪」)が認められて、最初の採点には、六点が三作と五点五分が一作と採点されて、選者は十人で、過半数が四作もあって、当選作が出る筈のところ、だんだん話合ううちに減点されて、今回はナシになった。」
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大江健三郎
中村光夫
安岡章太郎
開高健
井上靖
丸谷才一
丹羽文雄
吉行淳之介
遠藤周作
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選考委員
井上靖男71歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
秀作なし 総行数24 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
増田みず子
女30歳
5 「私の場合、一作を選ぶとなると、増田みず子「桜寮」ということになる。書けていないところも、多少押しつけがましいところもあるが、短篇の形で、何かを書こうとした、少くともそれを意識して筆を執った唯一つの作品と言えるかと思った。」
松浦理英子
女20歳
0  
中村昌義
男(48歳)
3 「丁寧に書いてもあるし、文章もしっくりと落着いているが、(引用者中略)読後の感動というものはあいまいだった。」
重兼芳子
女51歳
4 「テーマを打ち出すために物語を作って行く才能は、なかなか優れていると思ったが、しかし、(引用者中略)読後の印象は、はっきりしたものとしては、こちらに伝わって来なかった。」
立松和平
男31歳
3 「筆ものびのびとしており、決めるところはきちんと決めている。ただ読後、文学的感銘の浅いのは残念だった。」
青野聰
男35歳
0  
丸元淑生
男44歳
5 「きちんと書いているが、主題がはっきりしていないと言うか、強く打ち出されていないというか、こちらに訴えてくるものは弱かった。」
  「候補作七篇、一応どれも面白く読んだが、特に優れていて、多数の人に読んで貰いたいという作品はなかった。芥川賞となると、何らかの意味で、これが今年の新人であると、強く押し出すだけのものがないと困る。」
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大江健三郎
中村光夫
安岡章太郎
開高健
瀧井孝作
丸谷才一
丹羽文雄
吉行淳之介
遠藤周作
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選考委員
丸谷才一男53歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
『秋月へ』の魅力 総行数33 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
増田みず子
女30歳
3 「前回にくらべて急に腕をあげた。前半のノイローゼへの執着は詰まらないが、後半のユーモアには注目すべきものがある。」
松浦理英子
女20歳
0  
中村昌義
男(48歳)
3 「いちおうしつかり書いてゐるが、出来あひの型を丁寧になぞつてゐるだけなのが惜しい。」
重兼芳子
女51歳
7 「ひどく達者な小説だが、どうも感じが悪い。」「おそらく、小説とは何なのかといふとらへ方が低いせゐで、こんなことになるのである。残念な話だ。たとへば爪切りのくだりなど、なかなかいいところを見てゐるのに。」
立松和平
男31歳
0  
青野聰
男35歳
4 「ただ不思議な感じがしただけだつた。この小説の題材になつた家族に対しては同情する。しかしこの小説の作中人物である家族には、どのやうな共感も持てない。」
丸元淑生
男44歳
15 「二つの趣向が新しい。第一は曾祖父が秋月の乱の反逆者だといふことからはじまる、家の歴史の研究である。」「第二は、主人公である少年が威勢のいい勇敢な少年であることで、すなはちこれは一篇のピカレスク・ロマン(悪者小説)として読めないこともない。」「現代小説が自閉症的な内向性に閉ぢこもつてゐるとき、かういふ作風はまことに小気味よいものだと思ふ。いろいろ欠点はあるにしても、この楽しさを無視することはわたしにはできなかつた。」
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井上靖
丹羽文雄
吉行淳之介
遠藤周作
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選考委員
丹羽文雄男74歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
感想 総行数24 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
増田みず子
女30歳
0  
松浦理英子
女20歳
0  
中村昌義
男(48歳)
0  
重兼芳子
女51歳
0  
立松和平
男31歳
0  
青野聰
男35歳
0  
丸元淑生
男44歳
24 「いちばん面白く読んだ。」「ある選者が十五枚に書くべきであったと冗談をいったが、この作品の欠点は、小説に必要でない部分をあれこれ書きこんでいることである。」「曾祖父と祖母と少年の関係にしぼればよかった。」「改めて長篇に書き直すか、五十枚ぐらいの短篇につくり直したら、よいものが出来るであろうと信じる。」
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大江健三郎
中村光夫
安岡章太郎
開高健
瀧井孝作
井上靖
丸谷才一
吉行淳之介
遠藤周作
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選考委員
吉行淳之介男54歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
次作に期待する 総行数24 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
増田みず子
女30歳
0  
松浦理英子
女20歳
0  
中村昌義
男(48歳)
3 「着実に進境を示したが、母親のことと前の恋人のことが、この作品だけでははっきりせず、つまり連作の弱味で、大いにソンをした。」
重兼芳子
女51歳
16 「感覚・感性については抜群で、そういう資質がつくり出すディテールが魅力的であった。」「私はこの作品を推したが、票が割れてしまったこともあって、最後には「授賞作ナシ」にくみした。」「せっかくのディテールの下の配線が行きとどいていなくて、ランプが点燈しなかったり、光りすぎたりする。」「もっと、自分の十分に掴んでいることだけを、むしろ作文風に書いてみたらよいのではあるまいか。」
立松和平
男31歳
0  
青野聰
男35歳
2 「大人の視点で書いたものを読まないと、私には判定がつかない。」
丸元淑生
男44歳
3 「良い資質をもっているが、まだ小説という生きもののことが、よく分っていない。ムラが多く、全体として散漫である。」
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大江健三郎
中村光夫
安岡章太郎
開高健
瀧井孝作
井上靖
丸谷才一
丹羽文雄
遠藤周作
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選考委員
遠藤周作男55歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
当選作なし 総行数28 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
増田みず子
女30歳
0  
松浦理英子
女20歳
0  
中村昌義
男(48歳)
9 「連作の一部であり、そのためにこの短篇を独立して読むと迫力がかけるという欠点があるのが気の毒だった。」「初めて中村さんの作品に接した読者は、主人公がなぜ昔の母の世界を、思慕していたのかわからないだろう。」
重兼芳子
女51歳
9 「うまい作家だ。小説のツボを知っている。どんな材料でもこなせる危険がある。この「髪」も読ませるがしかし教会の人をあまりに薄っぺらに描きすぎている。」
立松和平
男31歳
0  
青野聰
男35歳
10 「実にユニークな材料を扱い、ユニークな母と子どもとを描き、その才能を私は評価したが、文章であらずもがなの部分がありすぎた。これを削ればいいのにと思う箇所にぶつかるたび、残念だなと思わざるをえなかった。」
丸元淑生
男44歳
0  
  「席上、強力にこれを推すという発言はなかったし、又全部の作品が強力な発言をうながすようなものでもなかった。」
          - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
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大江健三郎
中村光夫
安岡章太郎
開高健
瀧井孝作
井上靖
丸谷才一
丹羽文雄
吉行淳之介
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候補者・作品
増田みず子女30歳×各選考委員 
「桜寮」
短篇 98
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
大江健三郎
男43歳
0  
中村光夫
男67歳
0  
安岡章太郎
男58歳
0  
開高健
男48歳
0  
瀧井孝作
男84歳
0  
井上靖
男71歳
5 「私の場合、一作を選ぶとなると、増田みず子「桜寮」ということになる。書けていないところも、多少押しつけがましいところもあるが、短篇の形で、何かを書こうとした、少くともそれを意識して筆を執った唯一つの作品と言えるかと思った。」
丸谷才一
男53歳
3 「前回にくらべて急に腕をあげた。前半のノイローゼへの執着は詰まらないが、後半のユーモアには注目すべきものがある。」
丹羽文雄
男74歳
0  
吉行淳之介
男54歳
0  
遠藤周作
男55歳
0  
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他の候補作
松浦理英子
「葬儀の日」
中村昌義
「淵の声」
重兼芳子
「髪(かみ)
立松和平
「赤く照り輝く山」
青野聰
「母と子の契約」
丸元淑生
「秋月へ」
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候補者・作品
松浦理英子女20歳×各選考委員 
「葬儀の日」
短篇 84
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
大江健三郎
男43歳
0  
中村光夫
男67歳
0  
安岡章太郎
男58歳
0  
開高健
男48歳
0  
瀧井孝作
男84歳
0  
井上靖
男71歳
0  
丸谷才一
男53歳
0  
丹羽文雄
男74歳
0  
吉行淳之介
男54歳
0  
遠藤周作
男55歳
0  
          - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
他の候補作
増田みず子
「桜寮」
中村昌義
「淵の声」
重兼芳子
「髪(かみ)
立松和平
「赤く照り輝く山」
青野聰
「母と子の契約」
丸元淑生
「秋月へ」
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候補者・作品
中村昌義男(48歳)×各選考委員 
「淵の声」
中篇 154
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
大江健三郎
男43歳
0  
中村光夫
男67歳
3 「(引用者注:銓衡会では)出来栄えを注目されました。」
安岡章太郎
男58歳
4 「なかなかのものだと思ったが、この連作短篇は、これだけを独立して読むよりは、むしろ長篇としてまとまったかたちで読むべきであろう。」
開高健
男48歳
0  
瀧井孝作
男84歳
7 「この作家のものは律義な筆で、以前に候補作を二篇も読んでいて、前回よりも今回の方が一番よいと思ったが、今回は(引用者中略・注:「母と子の契約」に次いで)次点と見た。」
井上靖
男71歳
3 「丁寧に書いてもあるし、文章もしっくりと落着いているが、(引用者中略)読後の感動というものはあいまいだった。」
丸谷才一
男53歳
3 「いちおうしつかり書いてゐるが、出来あひの型を丁寧になぞつてゐるだけなのが惜しい。」
丹羽文雄
男74歳
0  
吉行淳之介
男54歳
3 「着実に進境を示したが、母親のことと前の恋人のことが、この作品だけでははっきりせず、つまり連作の弱味で、大いにソンをした。」
遠藤周作
男55歳
9 「連作の一部であり、そのためにこの短篇を独立して読むと迫力がかけるという欠点があるのが気の毒だった。」「初めて中村さんの作品に接した読者は、主人公がなぜ昔の母の世界を、思慕していたのかわからないだろう。」
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他の候補作
増田みず子
「桜寮」
松浦理英子
「葬儀の日」
重兼芳子
「髪(かみ)
立松和平
「赤く照り輝く山」
青野聰
「母と子の契約」
丸元淑生
「秋月へ」
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候補者・作品
重兼芳子女51歳×各選考委員 
「髪(かみ)
短篇 99
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
大江健三郎
男43歳
16 「短篇としてよくプロットをつくりあげ、その一環の「わたし」の仮構にも、語り口にも工夫する。(引用者中略)この手続きをよくふんでいるが、それゆえに作る手つきはすけて見える。あざとく通俗的に感じられるところもあろう。したがって僕は、この作者がおなじ工夫の短篇をさらに重ねて、一冊の小説集にまとめ広い読者をえることを考えて、むしろ直木賞にふさわしいと思う。」「しかし(引用者中略)次作への期待をいだかしめるに十分」
中村光夫
男67歳
16 「稀れに見る感受性の持主です。」「小説全体にも作者の狙った効果は充分にでているのですが、問題はその狙いがどこにあるかです。」「僕としてはここにむしろ現代のタルチュフを認めます。」「ここまで人間の悪をいわば純粋に培養したら、作者は結末の責任をとらねばなりません。そこが紋切型のアイマイな態度で終っているのは致命的な欠点といえます。」
安岡章太郎
男58歳
5 「感受性という面からは最も優れたものがあるが、妙に作り過ぎたところが作品としては弱い。もっと小さな、身辺の断片でもいいから、それだけを克明に追求すれば、この感受性は生かされるのではないか。」
開高健
男48歳
9 「辛酸をなめぬいた、したたかな女が、したたかさにもかかわらずその汚泥のさなかであてどない愛についついひきこまれ、まきこまれていく姿を書くことに憑かれている。今回の作は随所にしたたか女の眼が光っていていいリアリティーを確保しているのだが、最後の詰めで投げだしてしまっているのが致命傷である。」
瀧井孝作
男84歳
3 「十日ほど前に読んで一月十九日の銓衡会のときは「髪」は何が書いてあったか思出せなかった。印象が淡くて忘れてしまったのだ。」
井上靖
男71歳
4 「テーマを打ち出すために物語を作って行く才能は、なかなか優れていると思ったが、しかし、(引用者中略)読後の印象は、はっきりしたものとしては、こちらに伝わって来なかった。」
丸谷才一
男53歳
7 「ひどく達者な小説だが、どうも感じが悪い。」「おそらく、小説とは何なのかといふとらへ方が低いせゐで、こんなことになるのである。残念な話だ。たとへば爪切りのくだりなど、なかなかいいところを見てゐるのに。」
丹羽文雄
男74歳
0  
吉行淳之介
男54歳
16 「感覚・感性については抜群で、そういう資質がつくり出すディテールが魅力的であった。」「私はこの作品を推したが、票が割れてしまったこともあって、最後には「授賞作ナシ」にくみした。」「せっかくのディテールの下の配線が行きとどいていなくて、ランプが点燈しなかったり、光りすぎたりする。」「もっと、自分の十分に掴んでいることだけを、むしろ作文風に書いてみたらよいのではあるまいか。」
遠藤周作
男55歳
9 「うまい作家だ。小説のツボを知っている。どんな材料でもこなせる危険がある。この「髪」も読ませるがしかし教会の人をあまりに薄っぺらに描きすぎている。」
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他の候補作
増田みず子
「桜寮」
松浦理英子
「葬儀の日」
中村昌義
「淵の声」
立松和平
「赤く照り輝く山」
青野聰
「母と子の契約」
丸元淑生
「秋月へ」
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候補者・作品
立松和平男31歳×各選考委員 
「赤く照り輝く山」
短篇 117
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
大江健三郎
男43歳
0  
中村光夫
男67歳
0  
安岡章太郎
男58歳
0  
開高健
男48歳
0  
瀧井孝作
男84歳
0  
井上靖
男71歳
3 「筆ものびのびとしており、決めるところはきちんと決めている。ただ読後、文学的感銘の浅いのは残念だった。」
丸谷才一
男53歳
0  
丹羽文雄
男74歳
0  
吉行淳之介
男54歳
0  
遠藤周作
男55歳
0  
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他の候補作
増田みず子
「桜寮」
松浦理英子
「葬儀の日」
中村昌義
「淵の声」
重兼芳子
「髪(かみ)
青野聰
「母と子の契約」
丸元淑生
「秋月へ」
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候補者・作品
青野聰男35歳×各選考委員 
「母と子の契約」
中篇 183
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
大江健三郎
男43歳
13 「中心の母親像も、それをとらえる子供自身の像も、面白さにおいて並はずれている。」「これはやはり実作者としての僕の、手さぐりの推測を出ぬが、この作者の素材の昇華のさせ方は、意識的な力をおおいにはたらかせていると思う。しかし、小説の読み手、書き手として経験の深い委員から、文章の実際に立った批判が出てくると、僕としてはその推測の根拠を示しえぬと気づく。」「しかし(引用者中略)次作への期待をいだかしめるに十分」
中村光夫
男67歳
9 「継母の描写が溌剌としすぎるせいか、彼女だけが画面一杯にひろがって、父や他の兄弟たちが影のような存在なのは、物足りませんが、これを種々の点で「蒲団」の裏返しと考えると、数世代を経る間の我国の私小説変質の跡が辿れそうです。」
安岡章太郎
男58歳
20 「荒削りながら主題の好さと、主人公の個性にひかされて、面白く読めた。一見、素朴な書き方だが、部分的にはオヤと思うほど達者であり、観察も光ったところがある。」「この主題は作者にとって掛けがえのないものであろうが、それにしては扱いが粗雑なのだ。」「日常不断の父親の生活態度のエゴイステックな面を、もう少し適確に捉えない限り、母親をいくら書きこんでも、書くだけ上滑りすることになる。」
開高健
男48歳
8 「さまざまな、いい獲物を狩りたてているのに、一歩飛躍して止メの一撃を定着するというところで躓いている。」「継母の特異さをなぞることでは成功したけれど、父をなぞることをしなかったので陰影を深められなかった。」
瀧井孝作
男84歳
7 「幼稚のようなやわらかい筆の味が活き活きして、私は今回これが一番よいと思った。」
井上靖
男71歳
0  
丸谷才一
男53歳
4 「ただ不思議な感じがしただけだつた。この小説の題材になつた家族に対しては同情する。しかしこの小説の作中人物である家族には、どのやうな共感も持てない。」
丹羽文雄
男74歳
0  
吉行淳之介
男54歳
2 「大人の視点で書いたものを読まないと、私には判定がつかない。」
遠藤周作
男55歳
10 「実にユニークな材料を扱い、ユニークな母と子どもとを描き、その才能を私は評価したが、文章であらずもがなの部分がありすぎた。これを削ればいいのにと思う箇所にぶつかるたび、残念だなと思わざるをえなかった。」
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他の候補作
増田みず子
「桜寮」
松浦理英子
「葬儀の日」
中村昌義
「淵の声」
重兼芳子
「髪(かみ)
立松和平
「赤く照り輝く山」
丸元淑生
「秋月へ」
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候補者・作品
丸元淑生男44歳×各選考委員 
「秋月へ」
中篇 203
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
大江健三郎
男43歳
5 「文学的に質の安定した読後感をあたえながら、「たくらみ」のなさゆえに平板である。しかし(引用者中略)次作への期待をいだかしめるに十分」
中村光夫
男67歳
3 「(引用者注:銓衡会では)出来栄えを注目されました。」
安岡章太郎
男58歳
0  
開高健
男48歳
11 「さまざまな、いい獲物を狩りたてているのに、一歩飛躍して止メの一撃を定着するというところで躓いている。」「少年の血と心の遍歴をこまかく描きながらも表題に掲げた主題とそれをかさねあわせることにいささか失敗したので、一歩を踏みだせなかった。」
瀧井孝作
男84歳
10 「いろいろ書いてあって、集約するのは六ケしいが、何か読ませるものはあった。私はこの作家が『海』の十二月号に短篇「贈物」を出したので、私はこれも読んでみたが、(引用者中略)つまらなかった。この拙作にて、候補作の「秋月へ」の方も減点で、拙作を出すと前の秀作もマイナスになると思った。」
井上靖
男71歳
5 「きちんと書いているが、主題がはっきりしていないと言うか、強く打ち出されていないというか、こちらに訴えてくるものは弱かった。」
丸谷才一
男53歳
15 「二つの趣向が新しい。第一は曾祖父が秋月の乱の反逆者だといふことからはじまる、家の歴史の研究である。」「第二は、主人公である少年が威勢のいい勇敢な少年であることで、すなはちこれは一篇のピカレスク・ロマン(悪者小説)として読めないこともない。」「現代小説が自閉症的な内向性に閉ぢこもつてゐるとき、かういふ作風はまことに小気味よいものだと思ふ。いろいろ欠点はあるにしても、この楽しさを無視することはわたしにはできなかつた。」
丹羽文雄
男74歳
24 「いちばん面白く読んだ。」「ある選者が十五枚に書くべきであったと冗談をいったが、この作品の欠点は、小説に必要でない部分をあれこれ書きこんでいることである。」「曾祖父と祖母と少年の関係にしぼればよかった。」「改めて長篇に書き直すか、五十枚ぐらいの短篇につくり直したら、よいものが出来るであろうと信じる。」
吉行淳之介
男54歳
3 「良い資質をもっているが、まだ小説という生きもののことが、よく分っていない。ムラが多く、全体として散漫である。」
遠藤周作
男55歳
0  
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他の候補作
増田みず子
「桜寮」
松浦理英子
「葬儀の日」
中村昌義
「淵の声」
重兼芳子
「髪(かみ)
立松和平
「赤く照り輝く山」
青野聰
「母と子の契約」
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