芥川賞のすべて・のようなもの
第94回
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昭和60年/1985年下半期
(昭和61年/1986年1月16日決定発表/『文藝春秋』昭和61年/1986年3月号選評掲載)
選考委員  吉行淳之介
男61歳
水上勉
男66歳
田久保英夫
男57歳
安岡章太郎
男65歳
古井由吉
男48歳
中村光夫
男74歳
遠藤周作
男62歳
三浦哲郎
男54歳
開高健
男55歳
選評総行数  29 33 33 29 33 29 27 32 32
候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数
米谷ふみ子 「過越しの祭」
131
女55歳
7 19 10 22 33 17 7 15 11
小林恭二 「小説伝」
154
男28歳
0 0 0 0 0 0 0 0 0
佐佐木邦子 「卵」
59
女36歳
0 0 0 0 0 2 0 0 0
辻原登 「犬かけて」
145
男40歳
0 0 0 0 0 0 0 0 0
石和鷹 「果つる日」
96
男52歳
5 7 6 11 0 2 10 13 0
山田詠美 「ベッドタイムアイズ」
102
女26歳
7 7 9 0 0 8 13 8 0
南木佳士 「エチオピアからの手紙」
111
男34歳
10 8 8 0 0 0 9 2 0
                 
年齢/枚数の説明   見方・注意点

このページの選評出典:『芥川賞全集 第十四巻』平成1年/1989年5月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和61年/1986年3月号)
1行当たりの文字数:26字


選考委員
吉行淳之介男61歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
「過越しの祭」を推す 総行数29 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
米谷ふみ子
女55歳
7 「(引用者注:すべての候補作を見ていくと)安定した筆力が、際立ってくる。いくらモトデをかけてもそれが生きない場合があるが、この作者の二十数年間の苦闘は、作品に十分生きている。」「人間が書けている。」
小林恭二
男28歳
0  
佐佐木邦子
女36歳
0  
辻原登
男40歳
0  
石和鷹
男52歳
5 「前作につづく切実な作品である。私としては、作品のあちこちに出てくる「軽み」に疑問を持った。これは深刻さを中和させ、さらには際立たせようという狙いとおもったが、有効に働かず浮いてしまっている。」
山田詠美
女26歳
7 「悪くない。終始、セックスを扱っていて汚くならず、良い素質が感じられた。ただ、バラツキのある作品で、新鮮なディテールとへんに理に落ちてつまらなくなるディテールとが混在している。」
南木佳士
男34歳
10 「大きく脱皮しているので驚いた。」「主人公の爽やかな人柄はそのまま作者のものであろうが、それが作品全体に行きわたった。ただ、肝心の「エチオピアからの手紙」が、うるさい。この手紙を抜きにして、作品を成立させたほうがよかった。」
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他の選考委員
水上勉
田久保英夫
安岡章太郎
古井由吉
中村光夫
遠藤周作
三浦哲郎
開高健
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選考委員
水上勉男66歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
感想 総行数33 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
米谷ふみ子
女55歳
19 「推すつもりで出かけた。」「何ともきめこまかく、目こぼしのない文章で、自分でえらんだ結婚ながら、人生の愁苦を描いて十全なのである。自分の思い入れは大阪弁で挿入され、これが上質なユーモアをうんで風通しがよくなる。」
小林恭二
男28歳
0  
佐佐木邦子
女36歳
0  
辻原登
男40歳
0  
石和鷹
男52歳
7 「好感をもった」「奥さんを癌でうしなう悲痛な話を、(引用者中略)淡々と描いたところがいいのだが、少し……。結末の歌に無理があるようにも思えて、強く推せなかった。」
山田詠美
女26歳
7 「簡潔な文章で、才気がある。黒人兵との性をこんなに描いても汚れが感じられない。うまさでは抜群の思いがし、ひきこまれたが、つくりも劇画風で、心をうつものが残らぬのは、結末の安易さだろうか。」
南木佳士
男34歳
8 「好感をもった」「癌で死ぬ人を毎日のように見送らねばならぬ医師の日々もよくわかって心を打たれたが、授賞作となると、もう一つというものを感じた。」
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他の選考委員
吉行淳之介
田久保英夫
安岡章太郎
古井由吉
中村光夫
遠藤周作
三浦哲郎
開高健
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選考委員
田久保英夫男57歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
四つの作品 総行数33 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
米谷ふみ子
女55歳
10 「頭一つほど抜いているのではないか、と思っていた。」「私たちの生半可な西欧への観念や理解に、重いひび割れを起す力を持っている。ただ小説が容易に動き出さず、姑や小姑への女の感情が、ときにナマすぎる欠点もいなめない。」
小林恭二
男28歳
0  
佐佐木邦子
女36歳
0  
辻原登
男40歳
0  
石和鷹
男52歳
6 「並なみならぬ筆力が見えるが、そのシリアスな面と、もう一人の女とかかわる時などの筆致の軽みが、根底で背き合っている。どこか一点、それを調和する方法を見出せば、感銘はまったく違ってきたろう。」
山田詠美
女26歳
9 「文章力と感覚のかがやきに注目した。ただその文才のあまり、「ディック」とか「プッシイ」などの暗喩めいた英語、英語のカタカナに日本語のルビ、その逆の表記の多用が、作品の雰囲気のための飾りに使われている。この飾りをとれば、対象が黒人兵であれ誰であれ、肉体から心の愛に至る男女の物語は単純で、とくに斬新さはない。」
南木佳士
男34歳
8 「終始その作品に漂う静かさに惹かれた。これは今回のほかの作にないものだ。」「しかし要所要所、もっと絵具をつよく使ってほしい。」
  「初めて選考の場に加わって、すべてを新鮮に感じた。」
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他の選考委員
吉行淳之介
水上勉
安岡章太郎
古井由吉
中村光夫
遠藤周作
三浦哲郎
開高健
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選考委員
安岡章太郎男65歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
安心して読めること 総行数29 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
米谷ふみ子
女55歳
22 「(引用者注:「果つる日」と共に)安心して読めた」「両者とも五十歳過ぎ、(引用者中略)とにかく他の若い人たちと違って文章は堅固で、鑑賞に耐えるのである。」「率直にいって小説としての完結性に欠けるかもしれない。」「しかし、これまで描かれたことにない異人種や、異民族文化との衝突が、断片的、かつ一方的なものであるにしろ、極めてリアルに切実に述べられていて、読みながら劇的な昂奮を覚えさせられた。」
小林恭二
男28歳
0  
佐佐木邦子
女36歳
0  
辻原登
男40歳
0  
石和鷹
男52歳
11 「(引用者注:「過越しの祭」と共に)安心して読めた」「両者とも五十歳過ぎ、(引用者中略)とにかく他の若い人たちと違って文章は堅固で、鑑賞に耐えるのである。」
山田詠美
女26歳
0  
南木佳士
男34歳
0  
  「この頃は二百枚ぐらいのものまで短編になるらしい。つまり最近は、文学も小学生の体格同様、大型化しているのであろうか、そのぶん水膨れで、筋骨薄弱の傾向がいちじるしいようだ。」
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他の選考委員
吉行淳之介
水上勉
田久保英夫
古井由吉
中村光夫
遠藤周作
三浦哲郎
開高健
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選考委員
古井由吉男48歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
自縄自縛の手答え 総行数33 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
米谷ふみ子
女55歳
33 「ほかの作品よりはやや抜けた支持を集めた。何事かにしかと触れたという、手答えが買われたのだと思う。」「うしろの幽霊がいつのまにか前にまわりこんで、いっそうなまなましい姿となって立ち現われたような、そんなやりきれなさにひきこまれる。その辺の筆力には確かなものがある。」「読み手の私も、主人公のかりそめの脱走には息をこらし、外に出て吸いこんだ空気は、主人公とともに、理窟抜きに甘かった。それからが問題なのだろう。」
小林恭二
男28歳
0  
佐佐木邦子
女36歳
0  
辻原登
男40歳
0  
石和鷹
男52歳
0  
山田詠美
女26歳
0  
南木佳士
男34歳
0  
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他の選考委員
吉行淳之介
水上勉
田久保英夫
安岡章太郎
中村光夫
遠藤周作
三浦哲郎
開高健
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選考委員
中村光夫男74歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
女流三篇 総行数29 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
米谷ふみ子
女55歳
17 「無雑作すぎるとも思われる作者の語り口にのせられて、異国で暮す中年女の怨恨と愚痴に思わずつきあわされてしまったといった印象でした。」「しかしこの作品の特色は、登場人物が溌剌と生きていることで、文章の粗雑さに対する不満をおぎなっています。」「生活の鬱憤を吐露する話が、充分小説になっているのは、米谷氏の並々ならぬ才能をもの語るものと思われました。」
小林恭二
男28歳
0  
佐佐木邦子
女36歳
2 「巧妙な書きだしに捕えられて読みすすみましたが、なかば以後落胆しました。」
辻原登
男40歳
0  
石和鷹
男52歳
2 「小説としての完成度は、(引用者中略)数段上でしょう。」
山田詠美
女26歳
8 「作者が自己の感性を充分に生かしきった作品で、若い作者の優れた資質をうかがわせるものです。」「センセーショナルな材料を扱いながら、不潔でなく、読後感がさっぱりしているのは、これが男女のむしろ古風とも思われる純愛悲恋物語と読めたせいかもしれません。」
南木佳士
男34歳
0  
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他の選考委員
吉行淳之介
水上勉
田久保英夫
安岡章太郎
古井由吉
遠藤周作
三浦哲郎
開高健
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選考委員
遠藤周作男62歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
僅かの差 総行数27 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
米谷ふみ子
女55歳
7 「「過越しの祭」については他の選衡委員が書かれるであろう」「私の気持としてはこれら四作(引用者注:「過越しの祭」「ベッドタイムアイズ」「エチオピアからの手紙」「果つる日」)はほんの僅かの差しかない。」
小林恭二
男28歳
0  
佐佐木邦子
女36歳
0  
辻原登
男40歳
0  
石和鷹
男52歳
10 「好感をもった」「人間のどうにもならぬ心の動きがつかまえられていた。その心の奥をもっと書きこめば、とこれも惜しいと思った。」「私の気持としてはこれら四作(引用者注:「過越しの祭」「ベッドタイムアイズ」「エチオピアからの手紙」「果つる日」)はほんの僅かの差しかない。」
山田詠美
女26歳
13 「既にジャーナリズムの評判になり、受賞作の有力候補といわれていた。実際、読んでみると、なみなみならぬ筆力であり、はじめて書いた作品とは思われないが、私には「マリア姉さん」が描かれておらず、またこのような性格の女性が恋人の肉体以外に関心を持たぬ筈はないという疑問が最後まで残ってしまった。」「私の気持としてはこれら四作(引用者注:「過越しの祭」「ベッドタイムアイズ」「エチオピアからの手紙」「果つる日」)はほんの僅かの差しかない。」
南木佳士
男34歳
9 「好感をもった」「これまでの南木さんの作品では一番いいものではないか。抑えられていて主人公の心情も私にはよく伝わり、ひょっとしてと思ったほどである。」「私の気持としてはこれら四作(引用者注:「過越しの祭」「ベッドタイムアイズ」「エチオピアからの手紙」「果つる日」)はほんの僅かの差しかない。」
  「いつもはやや失望してきた芥川賞選衡だったが、今度はなかなかの力作、佳作が並び、これは受賞作を決めかねるのではないかと思った。」
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他の選考委員
吉行淳之介
水上勉
田久保英夫
安岡章太郎
古井由吉
中村光夫
三浦哲郎
開高健
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選考委員
三浦哲郎男54歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
感想 総行数32 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
米谷ふみ子
女55歳
15 「重厚な作品である。」「力量を充分認めた上でいうのだが、この作品を読んでいるうちにところどころ文章が主婦の作文めいてきて、そこから作者の生の声がきこえてくるのが気掛かりであった。読後の重い感銘のなかに、婦人の口から二十年間のうらみつらみを聞かされたような一種の鬱陶しさが混じるのは、多分そのせいである。」
小林恭二
男28歳
0  
佐佐木邦子
女36歳
0  
辻原登
男40歳
0  
石和鷹
男52歳
13 「私は(引用者中略)最も有力だと思っていた。」「一読して確かに打ってくるものがある。今度は病妻の死を中心に据えているだけに、前作よりも引き締まって完成度の高い作品になっている。」「これだけを切り離して完全に独立した一篇として見た場合の評価は多少違ったものになるかもしれないという不安はあった。連作小説というものの厄介なところである。」
山田詠美
女26歳
8 「豊かな表現力に驚かされたが、新鮮さと古風さとの不思議な混交ぶりには首をかしげざるを得なかった。」「いずれにしても、これほどの才筆の持主ならもう一作見てからでも遅くはないと思った。」
南木佳士
男34歳
2 「今回は、予想通り米谷、石和、山田、南木の四氏に絞られた」
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他の選考委員
吉行淳之介
水上勉
田久保英夫
安岡章太郎
古井由吉
中村光夫
遠藤周作
開高健
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選考委員
開高健男55歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
固有なるもの 総行数32 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
米谷ふみ子
女55歳
11 「泥か泡のようにつかみどころのない作品が多いなかで、この作品はあちらこちらに手ごたえがある。何よりも固有なるものが定着されている。」「全体としての出来栄えからするとこの作品に点が集る。ただし、難らしい難をあげると、“作品”というよりは主婦体験の作文を出ていないということが、ある。」
小林恭二
男28歳
0  
佐佐木邦子
女36歳
0  
辻原登
男40歳
0  
石和鷹
男52歳
0  
山田詠美
女26歳
0  
南木佳士
男34歳
0  
  「毎度毎度、家を出るときはお通夜に出かけるみたいだし、選考がはじまって意見を求められると口を開きかけて何故か黙ってしまいたくなる。」「ヤケ酒をすする気力もない。謝礼は一文のこらず家へ持って帰るけれど、寝床で洩れるのは濁った泡のような嘆息一つというありさまである。何トカナラヌカ。」
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他の選考委員
吉行淳之介
水上勉
田久保英夫
安岡章太郎
古井由吉
中村光夫
遠藤周作
三浦哲郎
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受賞者・作品
米谷ふみ子女55歳×各選考委員 
「過越しの祭」
短篇 131
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
吉行淳之介
男61歳
7 「(引用者注:すべての候補作を見ていくと)安定した筆力が、際立ってくる。いくらモトデをかけてもそれが生きない場合があるが、この作者の二十数年間の苦闘は、作品に十分生きている。」「人間が書けている。」
水上勉
男66歳
19 「推すつもりで出かけた。」「何ともきめこまかく、目こぼしのない文章で、自分でえらんだ結婚ながら、人生の愁苦を描いて十全なのである。自分の思い入れは大阪弁で挿入され、これが上質なユーモアをうんで風通しがよくなる。」
田久保英夫
男57歳
10 「頭一つほど抜いているのではないか、と思っていた。」「私たちの生半可な西欧への観念や理解に、重いひび割れを起す力を持っている。ただ小説が容易に動き出さず、姑や小姑への女の感情が、ときにナマすぎる欠点もいなめない。」
安岡章太郎
男65歳
22 「(引用者注:「果つる日」と共に)安心して読めた」「両者とも五十歳過ぎ、(引用者中略)とにかく他の若い人たちと違って文章は堅固で、鑑賞に耐えるのである。」「率直にいって小説としての完結性に欠けるかもしれない。」「しかし、これまで描かれたことにない異人種や、異民族文化との衝突が、断片的、かつ一方的なものであるにしろ、極めてリアルに切実に述べられていて、読みながら劇的な昂奮を覚えさせられた。」
古井由吉
男48歳
33 「ほかの作品よりはやや抜けた支持を集めた。何事かにしかと触れたという、手答えが買われたのだと思う。」「うしろの幽霊がいつのまにか前にまわりこんで、いっそうなまなましい姿となって立ち現われたような、そんなやりきれなさにひきこまれる。その辺の筆力には確かなものがある。」「読み手の私も、主人公のかりそめの脱走には息をこらし、外に出て吸いこんだ空気は、主人公とともに、理窟抜きに甘かった。それからが問題なのだろう。」
中村光夫
男74歳
17 「無雑作すぎるとも思われる作者の語り口にのせられて、異国で暮す中年女の怨恨と愚痴に思わずつきあわされてしまったといった印象でした。」「しかしこの作品の特色は、登場人物が溌剌と生きていることで、文章の粗雑さに対する不満をおぎなっています。」「生活の鬱憤を吐露する話が、充分小説になっているのは、米谷氏の並々ならぬ才能をもの語るものと思われました。」
遠藤周作
男62歳
7 「「過越しの祭」については他の選衡委員が書かれるであろう」「私の気持としてはこれら四作(引用者注:「過越しの祭」「ベッドタイムアイズ」「エチオピアからの手紙」「果つる日」)はほんの僅かの差しかない。」
三浦哲郎
男54歳
15 「重厚な作品である。」「力量を充分認めた上でいうのだが、この作品を読んでいるうちにところどころ文章が主婦の作文めいてきて、そこから作者の生の声がきこえてくるのが気掛かりであった。読後の重い感銘のなかに、婦人の口から二十年間のうらみつらみを聞かされたような一種の鬱陶しさが混じるのは、多分そのせいである。」
開高健
男55歳
11 「泥か泡のようにつかみどころのない作品が多いなかで、この作品はあちらこちらに手ごたえがある。何よりも固有なるものが定着されている。」「全体としての出来栄えからするとこの作品に点が集る。ただし、難らしい難をあげると、“作品”というよりは主婦体験の作文を出ていないということが、ある。」
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他の候補作
小林恭二
「小説伝」
佐佐木邦子
「卵」
辻原登
「犬かけて」
石和鷹
「果つる日」
山田詠美
「ベッドタイムアイズ」
南木佳士
「エチオピアからの手紙」
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候補者・作品
小林恭二男28歳×各選考委員 
「小説伝」
中篇 154
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
吉行淳之介
男61歳
0  
水上勉
男66歳
0  
田久保英夫
男57歳
0  
安岡章太郎
男65歳
0  
古井由吉
男48歳
0  
中村光夫
男74歳
0  
遠藤周作
男62歳
0  
三浦哲郎
男54歳
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開高健
男55歳
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他の候補作
米谷ふみ子
「過越しの祭」
佐佐木邦子
「卵」
辻原登
「犬かけて」
石和鷹
「果つる日」
山田詠美
「ベッドタイムアイズ」
南木佳士
「エチオピアからの手紙」
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候補者・作品
佐佐木邦子女36歳×各選考委員 
「卵」
短篇 59
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
吉行淳之介
男61歳
0  
水上勉
男66歳
0  
田久保英夫
男57歳
0  
安岡章太郎
男65歳
0  
古井由吉
男48歳
0  
中村光夫
男74歳
2 「巧妙な書きだしに捕えられて読みすすみましたが、なかば以後落胆しました。」
遠藤周作
男62歳
0  
三浦哲郎
男54歳
0  
開高健
男55歳
0  
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他の候補作
米谷ふみ子
「過越しの祭」
小林恭二
「小説伝」
辻原登
「犬かけて」
石和鷹
「果つる日」
山田詠美
「ベッドタイムアイズ」
南木佳士
「エチオピアからの手紙」
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候補者・作品
辻原登男40歳×各選考委員 
「犬かけて」
短篇 145
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
吉行淳之介
男61歳
0  
水上勉
男66歳
0  
田久保英夫
男57歳
0  
安岡章太郎
男65歳
0  
古井由吉
男48歳
0  
中村光夫
男74歳
0  
遠藤周作
男62歳
0  
三浦哲郎
男54歳
0  
開高健
男55歳
0  
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他の候補作
米谷ふみ子
「過越しの祭」
小林恭二
「小説伝」
佐佐木邦子
「卵」
石和鷹
「果つる日」
山田詠美
「ベッドタイムアイズ」
南木佳士
「エチオピアからの手紙」
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候補者・作品
石和鷹男52歳×各選考委員 
「果つる日」
短篇 96
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
吉行淳之介
男61歳
5 「前作につづく切実な作品である。私としては、作品のあちこちに出てくる「軽み」に疑問を持った。これは深刻さを中和させ、さらには際立たせようという狙いとおもったが、有効に働かず浮いてしまっている。」
水上勉
男66歳
7 「好感をもった」「奥さんを癌でうしなう悲痛な話を、(引用者中略)淡々と描いたところがいいのだが、少し……。結末の歌に無理があるようにも思えて、強く推せなかった。」
田久保英夫
男57歳
6 「並なみならぬ筆力が見えるが、そのシリアスな面と、もう一人の女とかかわる時などの筆致の軽みが、根底で背き合っている。どこか一点、それを調和する方法を見出せば、感銘はまったく違ってきたろう。」
安岡章太郎
男65歳
11 「(引用者注:「過越しの祭」と共に)安心して読めた」「両者とも五十歳過ぎ、(引用者中略)とにかく他の若い人たちと違って文章は堅固で、鑑賞に耐えるのである。」
古井由吉
男48歳
0  
中村光夫
男74歳
2 「小説としての完成度は、(引用者中略)数段上でしょう。」
遠藤周作
男62歳
10 「好感をもった」「人間のどうにもならぬ心の動きがつかまえられていた。その心の奥をもっと書きこめば、とこれも惜しいと思った。」「私の気持としてはこれら四作(引用者注:「過越しの祭」「ベッドタイムアイズ」「エチオピアからの手紙」「果つる日」)はほんの僅かの差しかない。」
三浦哲郎
男54歳
13 「私は(引用者中略)最も有力だと思っていた。」「一読して確かに打ってくるものがある。今度は病妻の死を中心に据えているだけに、前作よりも引き締まって完成度の高い作品になっている。」「これだけを切り離して完全に独立した一篇として見た場合の評価は多少違ったものになるかもしれないという不安はあった。連作小説というものの厄介なところである。」
開高健
男55歳
0  
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他の候補作
米谷ふみ子
「過越しの祭」
小林恭二
「小説伝」
佐佐木邦子
「卵」
辻原登
「犬かけて」
山田詠美
「ベッドタイムアイズ」
南木佳士
「エチオピアからの手紙」
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候補者・作品
山田詠美女26歳×各選考委員 
「ベッドタイムアイズ」
短篇 102
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
吉行淳之介
男61歳
7 「悪くない。終始、セックスを扱っていて汚くならず、良い素質が感じられた。ただ、バラツキのある作品で、新鮮なディテールとへんに理に落ちてつまらなくなるディテールとが混在している。」
水上勉
男66歳
7 「簡潔な文章で、才気がある。黒人兵との性をこんなに描いても汚れが感じられない。うまさでは抜群の思いがし、ひきこまれたが、つくりも劇画風で、心をうつものが残らぬのは、結末の安易さだろうか。」
田久保英夫
男57歳
9 「文章力と感覚のかがやきに注目した。ただその文才のあまり、「ディック」とか「プッシイ」などの暗喩めいた英語、英語のカタカナに日本語のルビ、その逆の表記の多用が、作品の雰囲気のための飾りに使われている。この飾りをとれば、対象が黒人兵であれ誰であれ、肉体から心の愛に至る男女の物語は単純で、とくに斬新さはない。」
安岡章太郎
男65歳
0  
古井由吉
男48歳
0  
中村光夫
男74歳
8 「作者が自己の感性を充分に生かしきった作品で、若い作者の優れた資質をうかがわせるものです。」「センセーショナルな材料を扱いながら、不潔でなく、読後感がさっぱりしているのは、これが男女のむしろ古風とも思われる純愛悲恋物語と読めたせいかもしれません。」
遠藤周作
男62歳
13 「既にジャーナリズムの評判になり、受賞作の有力候補といわれていた。実際、読んでみると、なみなみならぬ筆力であり、はじめて書いた作品とは思われないが、私には「マリア姉さん」が描かれておらず、またこのような性格の女性が恋人の肉体以外に関心を持たぬ筈はないという疑問が最後まで残ってしまった。」「私の気持としてはこれら四作(引用者注:「過越しの祭」「ベッドタイムアイズ」「エチオピアからの手紙」「果つる日」)はほんの僅かの差しかない。」
三浦哲郎
男54歳
8 「豊かな表現力に驚かされたが、新鮮さと古風さとの不思議な混交ぶりには首をかしげざるを得なかった。」「いずれにしても、これほどの才筆の持主ならもう一作見てからでも遅くはないと思った。」
開高健
男55歳
0  
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他の候補作
米谷ふみ子
「過越しの祭」
小林恭二
「小説伝」
佐佐木邦子
「卵」
辻原登
「犬かけて」
石和鷹
「果つる日」
南木佳士
「エチオピアからの手紙」
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候補者・作品
南木佳士男34歳×各選考委員 
「エチオピアからの手紙」
短篇 111
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
吉行淳之介
男61歳
10 「大きく脱皮しているので驚いた。」「主人公の爽やかな人柄はそのまま作者のものであろうが、それが作品全体に行きわたった。ただ、肝心の「エチオピアからの手紙」が、うるさい。この手紙を抜きにして、作品を成立させたほうがよかった。」
水上勉
男66歳
8 「好感をもった」「癌で死ぬ人を毎日のように見送らねばならぬ医師の日々もよくわかって心を打たれたが、授賞作となると、もう一つというものを感じた。」
田久保英夫
男57歳
8 「終始その作品に漂う静かさに惹かれた。これは今回のほかの作にないものだ。」「しかし要所要所、もっと絵具をつよく使ってほしい。」
安岡章太郎
男65歳
0  
古井由吉
男48歳
0  
中村光夫
男74歳
0  
遠藤周作
男62歳
9 「好感をもった」「これまでの南木さんの作品では一番いいものではないか。抑えられていて主人公の心情も私にはよく伝わり、ひょっとしてと思ったほどである。」「私の気持としてはこれら四作(引用者注:「過越しの祭」「ベッドタイムアイズ」「エチオピアからの手紙」「果つる日」)はほんの僅かの差しかない。」
三浦哲郎
男54歳
2 「今回は、予想通り米谷、石和、山田、南木の四氏に絞られた」
開高健
男55歳
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他の候補作
米谷ふみ子
「過越しの祭」
小林恭二
「小説伝」
佐佐木邦子
「卵」
辻原登
「犬かけて」
石和鷹
「果つる日」
山田詠美
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