芥川賞のすべて・のようなもの
選評の概要
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Last Update[H26]2014/8/20

古井由吉
Furui Yoshikichi
生没年月日【注】 昭和12年/1937年11月19日~
在任期間 第94回~第132回(通算19.5年・39回)
在任年齢 48歳1ヶ月~67歳1ヶ月
経歴 東京府荏原区生まれ。東京大学文学部独文科卒、同大学大学院文学研究科独文学専攻修士課程修了。大学で研究、翻訳などを手がけるかたわら創作を始める。
受賞歴・候補歴
個人全集 『古井由吉作品』全7巻(昭和57年/1982年9月~昭和58年/1983年3月・河出書房新社刊)
芥川賞候補歴 第62回候補 「円陣を組む女たち」(『海』昭和44年/1969年8月号)
第63回候補 「男たちの円居」(『新潮』昭和45年/1970年5月号)
第64回受賞 「杳子」(『文芸』昭和45年/1970年8月号)
第64回候補 「妻隠」(『群像』昭和45年/1970年11月号)
備考
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下記の選評の概要には、評価として◎か○をつけたもの(見方・注意点を参照)、または受賞作に対するもののみ抜粋しました。さらにくわしい情報は、各回の「この回の全概要」をクリックしてご覧ください。

芥川賞 94 昭和60年/1985年下半期   一覧へ
選評の概要 自縄自縛の手答え 総行数33 (1行=26字)
選考委員 古井由吉 男48歳
候補 評価 行数 評言
女55歳
33 「ほかの作品よりはやや抜けた支持を集めた。何事かにしかと触れたという、手答えが買われたのだと思う。」「うしろの幽霊がいつのまにか前にまわりこんで、いっそうなまなましい姿となって立ち現われたような、そんなやりきれなさにひきこまれる。その辺の筆力には確かなものがある。」「読み手の私も、主人公のかりそめの脱走には息をこらし、外に出て吸いこんだ空気は、主人公とともに、理窟抜きに甘かった。それからが問題なのだろう。」
選評出典:『芥川賞全集 第十四巻』平成1年/1989年5月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和61年/1986年3月号)
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芥川賞 95 昭和61年/1986年上半期   一覧へ
選評の概要 「欠損」をめぐる文学 総行数35 (1行=26字)
選考委員 古井由吉 男48歳
候補 評価 行数 評言
  「(引用者注:「ジェシーの背骨」と「比叡を仰ぐ」に絞られた後)受賞かどうかの詰めに来て審査は難航した。入江を見出しかねて困惑したというほうが妥当だろう。」
選評出典:『芥川賞全集 第十四巻』平成1年/1989年5月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和61年/1986年9月号)
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芥川賞 96 昭和61年/1986年下半期   一覧へ
選評の概要 アンセクシュアルな現実 総行数30 (1行=26字)
選考委員 古井由吉 男49歳
候補 評価 行数 評言
多田尋子
女54歳
27 「私はもっとも興味をひかれた。」「作品の文章の、やはり歳月をはらんだ、淡泊ながらの独特な粘着性が私には捨てがたくて、これは欠如としか受け取られないものをかけ値なしの現実として基に据えた作品ではないか、(引用者中略)と選考会の席上、われながら苦しい弁じ方をしたところが、先輩諸委員からかすかながら同意を得たのは、むしろ意外だった。」「結局は、この一作では作者の抱えた現実性の深浅を見定められないとして見送られた。私も強く推す自信はなかった。」
選評出典:『芥川賞全集 第十四巻』平成1年/1989年5月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和62年/1987年3月号)
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芥川賞 97 昭和62年/1987年上半期   一覧へ
選評の概要 融合と分離と沈黙と 総行数32 (1行=26字)
選考委員 古井由吉 男49歳
候補 評価 行数 評言
女42歳
22 「老人の記憶の内部に起る著しい差異が、逆にたどれば、本人あるいはその生家の、どの辺の事情に由来するものなのか、また作品を通しての少女の口調のどこに、現在の作者の声が節目となって凝縮しているのか、読む側としてはもどかしいところだが、(引用者中略)料理役をひきうけた少女が日々、(引用者中略)ゴッタ煮めいたものをこしらえた古い大鍋の、その太さに相通じるものを、選者たちは作中から感じ受けて、それぞれ控え目ながらに推した。」
選評出典:『芥川賞全集 第十四巻』平成1年/1989年5月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和62年/1987年9月号)
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芥川賞 98 昭和62年/1987年下半期   一覧へ
選評の概要 「ぼく」小説ふたつ 総行数32 (1行=26字)
選考委員 古井由吉 男50歳
候補 評価 行数 評言
男42歳
11 「ひとつの透明な歌として私は読んでその純度に満足させられたが、しかし宇宙からの無限の目は、救いとなる前にまず、往来を歩くことすら困難にさせるものなのではないか。また、被害者が存在するかぎり、人は見られている、つまり透明人間のごとくにはなり得ないのではないか。」
男57歳
25 「年頃の子を持つ親としても、今の世における「入信」に関心を寄せる者としても、その経緯をつぶさに聞きたくなるところだ。しかし書きあらわされたかぎり、経緯がほんとうに経緯になっているか、なりゆきに主人公の葛藤がほんとうに伴っているか、微妙である。」「事に後れて始まる主人公の葛藤は既成事実の中で、当事者にしては客観にすぎる想念へ空転する。」「興味深い作品ではある。」
選評出典:『芥川賞全集 第十四巻』平成1年/1989年5月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和63年/1988年3月号)
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芥川賞 99 昭和63年/1988年上半期   一覧へ
選評の概要 失われたことへの自足 総行数33 (1行=26字)
選考委員 古井由吉 男50歳
候補 評価 行数 評言
男42歳
20 「作家として、失われたことへの自足をその荒涼をもろに表現しきったとしたら、人がその消極性をどう非難しようと、これはこれであざやかな功績と言える。しかし、失われたことの、その説明に自足をもとめる作品は、文章の清新さへの苦心によって、かろうじて通俗性の傾斜を、揺りもどしつつ支える、あやうい試みとなるはずだ。その支えあげの緊張について、私はこの受賞作にもうひとつ得心が行かなかった。」
選評出典:『芥川賞全集 第十四巻』平成1年/1989年5月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和63年/1988年9月号)
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芥川賞 100 昭和63年/1988年下半期   一覧へ
選評の概要 百回目は―― 総行数34 (1行=26字)
選考委員 古井由吉 男51歳
候補 評価 行数 評言
司修
男53歳
7 「手のこんだ達者の作品と誤解されたようだ。じつは羞恥と憤怒、そのあまりにシャイ、そのまたあまりに腰の重くならざるを得ないこころが、「花屋さん」という呼びかけを合図に、人を救うという喜劇の舞いを、重い腰のまま舞い出したのだ。」「私はこれを推した。」
男37歳
13 「佳い作品である。この作家の美質の、寒冷に冴えた感性が作中にゆるやかに行き渡り、神経の軋みがようやくおさまったという境地か。」「最後の、ある朝、水車が停まりまた人が死んだ、という感動の仕舞いは、どんなものか。この二つの死の、時差のほうに、せっかく表現に苦しむ者なら、力をかけるべきなのだ。」
女33歳
14 「言語に病む人間の描出に一面からまともに立ち向かって、読み甲斐のある作品であった。」「しかし最後の部分で、在日韓国人の言語分裂の根もとへ、一人の生粋の韓国人を、仮構とは言いながら、人物さながら取りこんでしまった。これがあるために私はこの価値ある作品を、韓国語のために日本語のために、授賞作としては採らなかった。」
選評出典:『芥川賞全集 第十四巻』平成1年/1989年5月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成1年/1989年3月号)
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芥川賞 101 平成1年/1989年上半期   一覧へ
選評の概要 行き詰まればこそ 総行数32 (1行=24字)
選考委員 古井由吉 男51歳
候補 評価 行数 評言
  「今回は予選通過作の中から候補作として推すべき作品を私は見つけられなかった。」「大事なところで稚さがあらわれる、と私は見た。」「想念なり情念なりの鋲がしっかり利いていなくてはならない継ぎ目が、稚拙な通俗性の、糊づけとなっている。」
選評出典:『芥川賞全集 第十五巻』平成14年/2002年4月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成1年/1989年9月号)
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芥川賞 102 平成1年/1989年下半期   一覧へ
選評の概要 雑感 総行数33 (1行=24字)
選考委員 古井由吉 男52歳
候補 評価 行数 評言
女50歳
6 「小説として勘所がおのずと良く押さえられたことが、(引用者中略)まず選者たちに平均的な支持を受けた理由だと思われる。私にとっても苦楽のアヤは歯切れよく読めた。この手柄が一度ぎりのものか、作者の言葉の年輪によるものか、後者だと私は確信するが、よくは分からない。」
男31歳
12 「(引用者注:「ネコババのいる町で」の他の)もう一席を(引用者中略・注「ドアを閉めるな」と)争うかたちになった。」「シミュレーションによりかくも単刀に現実突入を計る「専門家」というのは、人物の設定としてそもそも無理なのではないか。仕舞いにマザー・コンプレクスの臭いだけが濃く残った。」
選評出典:『芥川賞全集 第十五巻』平成14年/2002年4月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成2年/1990年3月号)
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芥川賞 103 平成2年/1990年上半期   一覧へ
選評の概要 感想 総行数35 (1行=24字)
選考委員 古井由吉 男52歳
候補 評価 行数 評言
男44歳
19 「アプローチのかぎりにおいては、訝りの戦慄に導かれる。人の姿が不可解なままに、よく際立つ。」「ところが、作品の終盤あたりで、主人公は村の内部、「古層」の只中にいるではないか。見えないはずのものが見え、聞えないはずのものが聞え、湖南の奥地が奥美濃の故地につながり、感想がややありきたりになる。この仕舞いを私は取らない。」
選評出典:『芥川賞全集 第十五巻』平成14年/2002年4月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成2年/1990年9月号)
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芥川賞 104 平成2年/1990年下半期   一覧へ
選評の概要 LOVEの小説 総行数34 (1行=24字)
選考委員 古井由吉 男53歳
候補 評価 行数 評言
有爲エンジェル
女42歳
30 「当選にまで至るとの確信は持ち得なかったが、とにかく予選通過作品中の筆頭に置いた。人好きのする作品ではないと思われる。」「荒けずりの形(ルビ:なり)をしている。しかし荒く立っている。」「作中、たとえば、母親と少女が朝帰りの道でかわす会話を読んでいただきたい。(引用者中略)このやや荒涼の感を帯びた緊張は貴重なものだ、と私は思う。」
女28歳
0  
選評出典:『芥川賞全集 第十五巻』平成14年/2002年4月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成3年/1991年3月号)
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芥川賞 105 平成3年/1991年上半期   一覧へ
選評の概要 選評 総行数33 (1行=24字)
選考委員 古井由吉 男53歳
候補 評価 行数 評言
男46歳
12 「青年の口調を擬している。語り手を青年にしたのは、テーマの重さからして、適切であったか、と疑問を投げかけた選者がいた。私も同感である。」「眠りと目覚めについてこれほどの思いを、認識と感受性をめぐらす青年たちが、そうそう締まりのゆるい精神の持主とも思われない。語り手の人物にまず骨を通すことも、虚構の大事である。」
女34歳
11 「口の達者な作品である。作品がつらいところへさしかかると、機智がはじける。むしろ頓知頓才というべきか。」「しかし、読んでいるとつらくなる、とそんな感想をもらした選者がいた。いたましいようで、というふくみである。泣きの変形だと私も感じた。」「人を疲れさせ、しまいには同情をひいてしまうというのは、やはり作者の考慮すべきところだろう。」
  「私にはこのたびの予選通過作六篇の、口調がお互いに似通っているように聞こえた。どの作品も若づくりの、締まりのゆるい饒舌を共通してふくんでいるように思われる。」
選評出典:『芥川賞全集 第十五巻』平成14年/2002年4月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成3年/1991年9月号)
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芥川賞 106 平成3年/1991年下半期   一覧へ
選評の概要 「暴力の舟」を推す 総行数34 (1行=24字)
選考委員 古井由吉 男54歳
候補 評価 行数 評言
奥泉光
男35歳
34 「アナクロニズムの域にまで古び形骸化したとき、ようやく典型として現にあらわれる時代の人間像というものは、やはりあるのだろうな、と考えさせた」「しかも愉快な人物像ではない。」「このような人物を非共感的に、(引用者中略)この人物こそ、その度しがたき《言葉》もふくめて、それなりに純正であったという、かならずしも救いでなく、憂鬱なる是認に至る。」「ここまで漕ぎつけたのは、この作品の手柄だと思われる。」
女30歳
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選評出典:『芥川賞全集 第十六巻』平成14年/2002年6月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成4年/1992年3月号)
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芥川賞 107 平成4年/1992年上半期   一覧へ
選評の概要 無機的なものをくぐって 総行数33 (1行=24字)
選考委員 古井由吉 男54歳
候補 評価 行数 評言
男36歳
29 「(引用者注:「量子のベルカント」「樹木内侵入臨床士」と共に)従来の小説観からすれば無機的、あるいは非人格的にならざるを得ないと危惧されるような題材、環境、態度をあえてくぐろうとしている。」「無機的な整合の世界と、それで内面を支える人物へ綿密に付いて、それによって作品の情念のボルテージをじわじわと高めた、「運転士」のほうが(引用者注:「量子のベルカント」より)やはり一枚上か。」
選評出典:『芥川賞全集 第十六巻』平成14年/2002年6月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成4年/1992年9月号)
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芥川賞 108 平成4年/1992年下半期   一覧へ
選評の概要 試みるうちに超える 総行数33 (1行=24字)
選考委員 古井由吉 男55歳
候補 評価 行数 評言
奥泉光
男36歳
33 「奥泉氏のこれまで二回の候補作を選考委員諸氏の不評の中で推した私が、このたびは諸氏の比較的好評の中で、評価をやや控えるかたちになった。作品が深みへ踏み入ろうとするところで、テーマが微妙に破れたのではないか、と私は考えるのだ。」「高目の要求が動いて、選考途中では評価を留保ぎみになったが、最終的には受賞にふさわしい作品と、私は判断した。」
女32歳
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選評出典:『芥川賞全集 第十六巻』平成14年/2002年6月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成5年/1993年3月号)
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芥川賞 109 平成5年/1993年上半期   一覧へ
選評の概要 寂寥への到達 総行数31 (1行=24字)
選考委員 古井由吉 男55歳
候補 評価 行数 評言
男36歳
31 「今回はまっすぐに、(引用者中略)推すことができた。落着いた筆致である。」「主人公夫妻の、意志の人生が描かれている。このことは私にとって妙に新鮮だった。」「夫婦として、そして社会にたいしてもなかば、言語の疎通まで奪われかけている。しかしこの危機に瀕して、夫婦の意志の人生がいま一度、ぎりぎり追いつめられ、切りつめられ、ほとんど意味を失いつつある境で、くっきりと表われる。そこがこの小説の魅力であろうと思われる。」
選評出典:『芥川賞全集 第十六巻』平成14年/2002年6月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成5年/1993年9月号)
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芥川賞 110 平成5年/1993年下半期   一覧へ
選評の概要 虚構への再接近 総行数24 (1行=24字)
選考委員 古井由吉 男56歳
候補 評価 行数 評言
男37歳
17 「われもまた死の専制の下にありき、というようなエピグラムを、私なら振りたくなるところだ。」「石が人の生死を超越した救済の光を真に放つためには、いま一度、死の専制が出現しなくてはならぬ、とそんな運命のけはいである。」「ある情熱(ルビ:パトス)が作家に呼びかける。世の至るところから叫び立てているようにさえ感じられるが、さてその情熱にふさわしい運命の形を周囲に見つけ出すことはむずかしい。」「途上の作だが、受賞はよろこぶべきだ。」
選評出典:『芥川賞全集 第十六巻』平成14年/2002年6月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成6年/1994年3月号)
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芥川賞 111 平成6年/1994年上半期   一覧へ
選評の概要 難所にかかる 総行数33 (1行=24字)
選考委員 古井由吉 男56歳
候補 評価 行数 評言
女38歳
33 「このたびの受賞の両作を見ると、むやみに強調することは控えたいが、若い世代の文学がある段階に差しかかってきたことは否定しがたい。新しいとは敢えて言わず、むしろ難儀な段階と呼んだほうがふさわしいだろう。」「どちらの作品も小説になる以前の境を、いきなり小説の瀬戸際としてひきうけているように見られる。」「もうひとつ、両作品に共通のものとして、成熟不全の問題がある。(引用者中略)これは時代の自己認識に入りつつあると言ってもよいのだろう。」
男39歳
33 「このたびの受賞の両作を見ると、むやみに強調することは控えたいが、若い世代の文学がある段階に差しかかってきたことは否定しがたい。新しいとは敢えて言わず、むしろ難儀な段階と呼んだほうがふさわしいだろう。」「どちらの作品も小説になる以前の境を、いきなり小説の瀬戸際としてひきうけているように見られる。」「もうひとつ、両作品に共通のものとして、成熟不全の問題がある。(引用者中略)これは時代の自己認識に入りつつあると言ってもよいのだろう。」
選評出典:『芥川賞全集 第十七巻』平成14年/2002年8月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成6年/1994年9月号)
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芥川賞 112 平成6年/1994年下半期   一覧へ
選評の概要 選評 総行数27 (1行=24字)
選考委員 古井由吉 男57歳
候補 評価 行数 評言
引間徹
男30歳
10 「私は(引用者中略)推した。作者が悪戦苦闘しているその相手が、どうやら《空白》そのものであるらしいということに、私なりに感ずるところがあった。」「構成の手ごたえよりも、どこまで行っても確かなものに触れぬその徒労絶望を、文章のはしゃぎに変えて押しまくった。作品の仕舞いでようやく叫びが立った。その声が私には聞こえた。幽霊とは騒がしいものである。」
三浦俊彦
男35歳
6 「(引用者注:「地下鉄の軍曹」の次に)推した。」「《無・意・味》をつぎつぎに投げこんでいるところに、私は気迫を感じた。」「《意味》に捕まるまいと、大わらわである。喰い物を投げ散らしながら悪鬼から逃げる話が思い出された。しかし追いかける鬼の相貌がやや稚く見えた。」
選評出典:『芥川賞全集 第十七巻』平成14年/2002年8月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成7年/1995年3月号)
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芥川賞 113 平成7年/1995年上半期   一覧へ
選評の概要 終息なのか先触れなのか 総行数19 (1行=24字)
選考委員 古井由吉 男57歳
候補 評価 行数 評言
青来有一
男36歳
12 「私は推した。虚構の立て方に間違いがあった。ルール違反に近いものを犯したとも言える。」「「僕が声を失ったこと」を冒頭から打ち出したほうが、むしろ虚構の筋は守られたのかもしれない。しかし、卑劣と尊厳がひとつの病いであるような、人格は描かれた。これも惨憺たる宗教的人格と言わなくてはならない。それだけの説得力は作品にある。貴重なことだ。」
男38歳
7 「今の世の神経の屈曲が行き着いたひとつの末のような、妙にやわらいだ表現の巧みさを見せた。」「三年後に、これを読んだら、どうだろうか。前提からして受け容れられなくなっている、おそれもある。」
選評出典:『芥川賞全集 第十七巻』平成14年/2002年8月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成7年/1995年9月号)
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芥川賞 114 平成7年/1995年下半期   一覧へ
選評の概要 屈伸の間 総行数33 (1行=24字)
選考委員 古井由吉 男58歳
候補 評価 行数 評言
男48歳
2 「時間がよく伸びて、節目節目で、笑いの果実をつけた、と言えるのではないか。」
  「候補作の六篇ともにそれぞれ、方法を探っていると思われる。表われは言葉の乱射となる時でも、根は息をひそめるような、方法の模索なのだろう。」「労は多く功は少ないという憂き目を、作家は数嘗めさせられる。」「それでも書き手は――これも見かけによらず――かなりしんねりと、自分なりの方法を考えないわけにいかない。」「屈伸という言葉を借りれば、これは屈である。退屈の屈にも通じる。しかし伸びるためのものである。」
選評出典:『芥川賞全集 第十七巻』平成14年/2002年8月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成8年/1996年3月号)
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芥川賞 115 平成8年/1996年上半期   一覧へ
選評の概要 漂流の小説 総行数33 (1行=24字)
選考委員 古井由吉 男58歳
候補 評価 行数 評言
女38歳
9 「蛇にたいする常人の感覚を踏んだだけの作品ではない。」「そこまで「踏んで」おきながら、作品の隅々まで蛇で満たしておきながら、文章に蛇の執念が足りないばかりに、最後で流された。」
選評出典:『芥川賞全集 第十七巻』平成14年/2002年8月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成8年/1996年9月号)
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芥川賞 116 平成8年/1996年下半期   一覧へ
選評の概要 転機にかかる 総行数35 (1行=24字)
選考委員 古井由吉 男59歳
候補 評価 行数 評言
女28歳
11 「同じテーマをめぐる再三の悪戦苦闘が、ここでひとまずの落着を見たように思われる。表現はよほど透明になった。」「もはや言葉を乱投入することによっては揺さぶりのきかぬところまでは、テーマは結晶した。」「かわりに詠歎の声がようやく作中に、静かに溢れた。これも転機のしるしである。ここを去れ、という促しかもしれない。」
男37歳
14 「ようやく自分の文学を立ち上がらせた力動が文章そのものから感じ取れる」「イジメ・イジメラレの関係から、人間の「悪」をめぐる関係へ至るまでの、表現の距離は長い。」「しかし独房中の男の描出は、言葉が徒労になりかけるが、空白に近い表現の緊張に支えられて、立っているではないか。とにかく立ち上がらせた。出発点である。」
  「(引用者注:受賞作以外の四作も)先へ踏み出した感触が伝わってくる。いずれも佳作だと、私は思う。」
選評出典:『芥川賞全集 第十七巻』平成14年/2002年8月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成9年/1997年3月号)
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芥川賞 117 平成9年/1997年上半期   一覧へ
選評の概要 騒がしき背理 総行数37 (1行=24字)
選考委員 古井由吉 男59歳
候補 評価 行数 評言
男36歳
0  
選評出典:『芥川賞全集 第十八巻』平成14年/2002年10月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成9年/1997年9月号)
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芥川賞 118 平成9年/1997年下半期   一覧へ
選評の概要 見取り図の試み 総行数31 (1行=24字)
選考委員 古井由吉 男60歳
候補 評価 行数 評言
  「候補作五篇のうち四篇までが家および家族をめぐる作品だった。いずれも用意は周到である。見取り図を引くような慎重さが筆致に感じられる。」「その分だけ集中力も凝縮力も減じたかと思われる。」
選評出典:『芥川賞全集 第十八巻』平成14年/2002年10月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成10年/1998年3月号)
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芥川賞 119 平成10年/1998年上半期   一覧へ
選評の概要 現在と遠方と 総行数33 (1行=24字)
選考委員 古井由吉 男60歳
候補 評価 行数 評言
男39歳
11 「若い諧謔をふくんで、筆の運びは辛抱強い。タンゴのポーズを取って、男の肋のあたりに老女の、乳房とも、ただのドレスの膨らみともつかぬものが、かすかに触れる。現在と遠方との、「交接」である。男と女が交互に、現在になり遠方になる。」
男43歳
15 「この作品を読みすすむうちに、いや、待てよ、童貞者たちは辱められ、みずから辱めさせたが、(引用者中略)その「犯されきり」はそのまま、神の存在の証しにならぬとは、かぎらないのではないか、と無信者に「危惧」させるところに、この作品の本性はあるのではないか。ほんものの冒涜者はしょせん無力であり、無力であるかぎり、心ならずも、「敬虔」たらざるを得ないのではないか、と。」
  「現在を遠方へつなぐ、あるいは、遠方を現在につなぐ。遠方にもさまざまある。空間の、時間の、そして現実の、さらに「心」の、と。」「その遠方へ現在をもうひとつ強く、しかもかなり細心に、振ってみるという試みが、今回の予選通過の七作に、濃淡の差はあっても、共通するところではないか。」
選評出典:『芥川賞全集 第十八巻』平成14年/2002年10月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成10年/1998年9月号)
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芥川賞 120 平成10年/1998年下半期   一覧へ
選評の概要 冒険の旅立ち 総行数33 (1行=24字)
選考委員 古井由吉 男61歳
候補 評価 行数 評言
男23歳
33 「なぜこのような文章を、二十歳と少々の青年が書くに至ったか、また書き得たか、その訝りにたいする解答を、読者はしばらく留保したほうがよいと思われる。」「無論、擬体である。仮構である。小説である。ただ、西洋伝来の近代小説の、源のひとつの、その境まで振り戻して、新たに始めるという冒険である。」「私などは感嘆以前に、投げあげた試みがさほどの揺らぎもなく、伸びやかな抛物線を描くのを、唖然として眺めた。」
選評出典:『芥川賞全集 第十八巻』平成14年/2002年10月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成11年/1999年3月号)
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芥川賞 121 平成11年/1999年上半期   一覧へ
選評の概要 実際の幽明 総行数32 (1行=24字)
選考委員 古井由吉 男61歳
候補 評価 行数 評言
選評出典:『芥川賞全集 第十八巻』平成14年/2002年10月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成11年/1999年9月号)
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芥川賞 122 平成11年/1999年下半期   一覧へ
選評の概要 あぶない試み 総行数36 (1行=24字)
選考委員 古井由吉 男62歳
候補 評価 行数 評言
楠見朋彦
男27歳
36 「私は授賞可能の作品として推した。しかし、あぶない作品だとも思った。」「それなりの手続きは踏まれているのだ。語り手を三人に分けたのも、そのひとつである。さらに第四の「語り手」もある。」「流血の地の与太話を思わせるものでも、それが「兵」たちのすだんだ心と口から出たものなら、それなりの現実である。迫害を恐れる者にとっては、ほとんど現実である。」
男→女37歳
0  
男34歳
0  
選評出典:『芥川賞全集 第十八巻』平成14年/2002年10月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成12年/2000年3月号)
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芥川賞 123 平成12年/2000年上半期   一覧へ
選評の概要 停滞のもとで 総行数32 (1行=24字)
選考委員 古井由吉 男62歳
候補 評価 行数 評言
男38歳
16 「(引用者注:《きれぎれ》現象とは)想念や情念の、のべつの断絶や奔逸の謂と思われる」「反私小説の行き方を極端まで取ろうとしながら、いつのまにか私小説の矛盾域、のようなところへ踏みこんだ。」
男46歳
19 「「幽(ルビ:かすか)」で甘い腐臭に覆われているが、(引用者中略)すでに猛烈な腐臭の切迫に内外から脅かされている。内も外もない。時代の腐臭である。旺盛のようでも、すでに死んでいるものとも見られるのだ。」
選評出典:『芥川賞全集 第十九巻』平成14年/2002年12月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成12年/2000年9月号)
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芥川賞 124 平成12年/2000年下半期   一覧へ
選評の概要 水の誘い 総行数35 (1行=24字)
選考委員 古井由吉 男63歳
候補 評価 行数 評言
男42歳
28 「(引用者注:「水の舳先」と共に)生苦病苦からの快癒を願うばかりでなく、人を生から死へやすらかに渡す霊験のひそむものと、これを現に頼む人間の在るところの、「水」の話である。」「とにかく救いを求める切羽詰まった人の姿がそこにある。凄まじいほどにストイックなところまで行くが、かならずしもファナティックではない。絶望と楽天がひとつに融ける。それを見て取るだけの、広い目が両作品に備っていると思われる。」
男37歳
4 「人がどこそこに在る、住まう、あるいは滞在する心において、二人(ルビ:ににん)の間でも交差のしようもないズレがある。いや、むしろ驚くべきはそれでも時折話の通るということだ、と感じさせる作品である。」
選評出典:『芥川賞全集 第十九巻』平成14年/2002年12月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成13年/2001年3月号)
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芥川賞 125 平成13年/2001年上半期   一覧へ
選評の概要 穏やかな霊異 総行数40 (1行=24字)
選考委員 古井由吉 男63歳
候補 評価 行数 評言
男45歳
40 「霊障を病む心は、霊異を求める心でもある。そして霊異はどうしても時代の表象に染まる。和尚はおのずと霊異をめぐる穏和な困惑のコンサルタントの役を担う。そのような場に置いてこそ、この「中陰の花」は、おかしく開く。」「依存の極致が、かえって依存から自由である、かのような「たたずまい」を見せる。「たたずまい」という言葉がこの際適切であるかどうかわからないが、私は目を惹かれた。」
選評出典:『芥川賞全集 第十九巻』平成14年/2002年12月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成13年/2001年9月号)
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芥川賞 126 平成13年/2001年下半期   一覧へ
選評の概要 「悪文」の架ける虹 総行数49 (1行=14字)
選考委員 古井由吉 男64歳
候補 評価 行数 評言
鈴木弘樹
男(38歳)
49 「苦労して読むうちに、苦労はすこしも減らなかったが、やがて関心を惹かれた。」「推敲を見事に拒んでいる。」「「色街」を描いているが、永井荷風のそれとも吉行淳之介のそれともまるで違う。」「この世界も雑多な必要と装飾を詰めに詰めた、それ自体、真空であるらしい。文章はそれに成ろうとする。一文ごとに危機である。進むごとに、無惨なような形が後に残る。しかし寒空に、冷いような虹を瞬時架けた箇所はある。」
男29歳
0  
選評出典:『文藝春秋』平成14年/2002年3月号
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芥川賞 127 平成14年/2002年上半期   一覧へ
選評の概要 対者を求めて 総行数53 (1行=14字)
選考委員 古井由吉 男64歳
候補 評価 行数 評言
男33歳
53 「《主人公》としては、女性の名前を知らないのだから、《あなた》と言うよりほかにない。しかし普段なら、対者が誰であれ、《あなた》と呼ぶよりほかにない場面に立ち至ったなら、《主人公》はおそらく質問を銜んで口をつぐんだことだろう。始めに《あなた》なし、である。」「多くの若手の作家ができるだけかるく遊んで来た、問題(ルビ:プロブレム)である。しかしここでは眼がよほど綿密に、つれて重くなっている。」
選評出典:『文藝春秋』平成14年/2002年9月号
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芥川賞 128 平成14年/2002年下半期   一覧へ
選評の概要 意識と意志 総行数52 (1行=14字)
選考委員 古井由吉 男65歳
候補 評価 行数 評言
中村文則
男25歳
52 「新人の力のこもった作であり、私は惹かれた」「意識の構築物と呼ぶべき作品である。主人公の意識と無意識との境まで分け入りはする。」「ある段階での意識が破れかかると、不可解な行動が表われて、次の段階へ移る。そうやって踏みあがっていく足取りは感じ取れる。」「しかし読み了えて、力作には感じるが、全体として同じ「騒動」の繰り返しであったような印象を否めないのはどうしたことか。」
女36歳
0  
選評出典:『文藝春秋』平成15年/2003年3月号
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芥川賞 129 平成15年/2003年上半期   一覧へ
選評の概要 意識の文学 総行数52 (1行=14字)
選考委員 古井由吉 男65歳
候補 評価 行数 評言
中村文則
男25歳
52 「意識を表現することは、無意識の境に踏みこむのに劣らず、厄介なことである。」「このような難儀な試みを敢えて構えて行なう若い意志を私は壮として、前回の「銃」にひきつづき、今回も銓衡会の評判の芳しくはなかった「遮光」を推した。」「前回と並行ではあるが、再挑戦と見た。」「前回より深みはまさっている。ただ何分にも、跳び越すべき、バーは高い。」「再々挑戦あり。」
男42歳
0  
選評出典:『文藝春秋』平成15年/2003年9月号
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芥川賞 130 平成15年/2003年下半期   一覧へ
選評の概要 がらんどうの背中 総行数42 (1行=14字)
選考委員 古井由吉 男66歳
候補 評価 行数 評言
女19歳
36 「「蹴りたい背中」とは乱暴な表題である。ところが読み終えてみれば、快哉をとなえたくなるほど、的中している。」「最後に人を避けてベランダに横になり背を向けた男が振り返って、蹴りたい「私」の、足の指の、小さな爪を、少し見ている。何かがきわまりかけて、きわまらない。そんな戦慄を読後に伝える。」
女20歳
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  「共通のテーマによる課題作を読んでいるような気がしたものだ。「非現実の中で」あるいは「無意味と気怠さと」。テーマはそんなところか。答案はいずれも行き届いたものだった。」
選評出典:『文藝春秋』平成16年/2004年3月号
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芥川賞 131 平成16年/2004年上半期   一覧へ
選評の概要 例話の始まり 総行数55 (1行=14字)
選考委員 古井由吉 男66歳
候補 評価 行数 評言
男33歳
55 「《家と家族とを呪い続けた俺》から《世で最も恵まれた環境を授かった俺》への転生にして新生を遂げた場所、YO、教科書を丸暗記させられたように、無理矢理そう思い込んだんじゃねえぜ、朋輩(ルビ:ニガー)、そう感じる以外に辻褄の合わぬ現実を思い知らされたのだよ。」「言葉の過不足を量っていられるような境ではない。」
選評出典:『文藝春秋』平成16年/2004年9月号
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芥川賞 132 平成16年/2004年下半期   一覧へ
選評の概要 尚早の老い 総行数45 (1行=14字)
選考委員 古井由吉 男67歳
候補 評価 行数 評言
男36歳
0  
選評出典:『文藝春秋』平成17年/2005年3月号
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