芥川賞のすべて・のようなもの
第120回
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平成10年/1998年下半期
(平成11年/1999年1月14日決定発表/『文藝春秋』平成11年/1999年3月号選評掲載)
選考委員  河野多恵子
女72歳
古井由吉
男61歳
日野啓三
男69歳
石原慎太郎
男66歳
宮本輝
男51歳
田久保英夫
男70歳
三浦哲郎
男67歳
黒井千次
男66歳
池澤夏樹
男53歳
選評総行数  33 33 37 52 39 35 33 35 38
候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数
平野啓一郎 「日蝕」
254
男23歳
33 33 37 26 18 15 22 18 14
若合春侑 「カタカナ三十九字の遺書」
107
女40歳
0 0 0 4 7 3 11 6 0
安達千夏 「あなたがほしい」
233
女33歳
0 0 0 4 2 0 0 0 0
福島次郎 「蝶のかたみ」
169
男(69歳)
0 0 0 5 5 0 0 0 0
赤坂真理 「ヴァイブレータ」
181
女34歳
0 0 0 6 7 13 0 11 24
                 
年齢/枚数の説明   見方・注意点

このページの選評出典:『芥川賞全集 第十八巻』平成14年/2002年10月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成11年/1999年3月号)
1行当たりの文字数:24字


選考委員
河野多恵子女72歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
志に賭ける 総行数33 (1行=24字)
候補 評価 行数 評言
平野啓一郎
男23歳
33 「私はこの作品の新仮名遣に、作者が語っている理由ある選択以上の取得、つまり効果を感じる。」「「日蝕」の創作動機は、奇跡との遭遇願望である。とはいえ、主人公の学僧は、作者の分身ではない。」「学僧は、海苔を干す時に使われる小簾のようなもので、干し上がれば用のないものである。」「主人公の学僧を無性格な人物たらしめてあるのは、大きな取得になっている。」「私はこの作品に作者の志の高さを見たので、それに賭けるつもりで推した。」
若合春侑
女40歳
0  
安達千夏
女33歳
0  
福島次郎
男(69歳)
0  
赤坂真理
女34歳
0  
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他の選考委員
古井由吉
日野啓三
石原慎太郎
宮本輝
田久保英夫
三浦哲郎
黒井千次
池澤夏樹
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選考委員
古井由吉男61歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
冒険の旅立ち 総行数33 (1行=24字)
候補 評価 行数 評言
平野啓一郎
男23歳
33 「なぜこのような文章を、二十歳と少々の青年が書くに至ったか、また書き得たか、その訝りにたいする解答を、読者はしばらく留保したほうがよいと思われる。」「無論、擬体である。仮構である。小説である。ただ、西洋伝来の近代小説の、源のひとつの、その境まで振り戻して、新たに始めるという冒険である。」「私などは感嘆以前に、投げあげた試みがさほどの揺らぎもなく、伸びやかな抛物線を描くのを、唖然として眺めた。」
若合春侑
女40歳
0  
安達千夏
女33歳
0  
福島次郎
男(69歳)
0  
赤坂真理
女34歳
0  
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他の選考委員
河野多恵子
日野啓三
石原慎太郎
宮本輝
田久保英夫
三浦哲郎
黒井千次
池澤夏樹
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選考委員
日野啓三男69歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
《全的現実》への夢 総行数37 (1行=24字)
候補 評価 行数 評言
平野啓一郎
男23歳
37 「近代小説の正統(ルビ:オーソドックス)の道に自覚的に立とうとする作品として、(引用者中略)推す。気分的でしかない非現実感や自閉や破壊衝動や終末待望の単調な表白に、私は飽き始めている。」「意識的な書き言葉の格調を、最後まで担い通したのは見事である。」「矛盾した記述は矛盾のままに、「両性具有者(ルビ:アンドロギュノス)は私自身であったのかも知れない」という主人公の魂の統合体験を、私は共感することができた。」
若合春侑
女40歳
0  
安達千夏
女33歳
0  
福島次郎
男(69歳)
0  
赤坂真理
女34歳
0  
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他の選考委員
河野多恵子
古井由吉
石原慎太郎
宮本輝
田久保英夫
三浦哲郎
黒井千次
池澤夏樹
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選考委員
石原慎太郎男66歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
現代文学蘇生への過渡期? 総行数52 (1行=24字)
候補 評価 行数 評言
平野啓一郎
男23歳
26 「いろいろ基本的な疑義を感じぬ訳にはいかない。」「この衒学趣味といい、たいそうな擬古文といい、果たしてこうした手法を用いなければ現代文学は蘇生し得ないのだろうか。私は決してそうは思わない。」「浅薄なコマーシャリズムがこの作者を三島由紀夫の再来などと呼ばわるのは止めておいた方がいい。三島氏がこの作者と同じ年齢で書いた「仮面の告白」の冒頭の数行からしての、あの強烈な官能的予感はこの作品が決して備えぬものでしかない。」
若合春侑
女40歳
4 「なかなかの存在感があるが最後の種明かしなどむしろ不要で、いま一つの感がする。」
安達千夏
女33歳
4 「まだ作品としての水準に達しているとはいえない。こうした男と女の関係は自然不自然という前にただ思いつきの域を出ていない。」
福島次郎
男(69歳)
5 「この作者の作品の系譜を眺めなおして見て、妙な当てこみのいやらしさを感じさせられる。しょせん恥のウリセンという印象を禁じ得ない。」
赤坂真理
女34歳
6 「私は楽しみながら読んだが、かつてのケルーアックの「路上」のように幾つか際だったシークエンスが描かれてはいるが作品として最後の何かが欠けている。」
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他の選考委員
河野多恵子
古井由吉
日野啓三
宮本輝
田久保英夫
三浦哲郎
黒井千次
池澤夏樹
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選考委員
宮本輝男51歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
若く強い膂力 総行数39 (1行=24字)
候補 評価 行数 評言
平野啓一郎
男23歳
18 「小説の後半からの破綻、手の込みすぎた文章。全体に漂う妙な驕り。それらはみな鼻持ちならないのだが、ことごとくが既製品の範疇から出て手脚を延ばしている。」「この若い作者が内に秘めているものは、出たとこ勝負の腕力ではない。将来に大きな楽しみをかかえた強くて豊かな膂力であって、私にも幾つかの不満はありながらも芥川賞に推さざるを得なかった。」
若合春侑
女40歳
7 「今回は、なんだか意欲ばかりが空廻りして、あちこちに勇み足の跡を残すような作品となってしまったが、大きく伸びる素材であるという私の感想は変わらない。」
安達千夏
女33歳
2 「手練な作品だが、この作品だけでは届かない。」
福島次郎
男(69歳)
5 「小説になりそこねたといった印象を持った。ノンフィクションのドキュメンタリー、あるいは手記の域でとどまっている。」
赤坂真理
女34歳
7 「私は以前、別の文学賞において別の作品を読んでいて、「ヴァイブレータ」がそれよりもはるかに腕を上げたと感じた。赤坂氏の一種病的なセンシビリティが、独自の小説世界への結実するのは、いま少し時間がかかりそうだが、なにも焦ることはない。」
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他の選考委員
河野多恵子
古井由吉
日野啓三
石原慎太郎
田久保英夫
三浦哲郎
黒井千次
池澤夏樹
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選考委員
田久保英夫男70歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
小説の言葉 総行数35 (1行=24字)
候補 評価 行数 評言
平野啓一郎
男23歳
15 「文章の様式に、積極果敢な試みを感じた。」「この十五世紀のフランスの修道士を中心に、異端審問や錬金術を描いた作品には妙に適合した力を持っている。」「男女の肉のすべてを象徴的に結集した存在を火刑にする光景で、一瞬、至高の極を開示して見せる。まことに若々しい野心と膂力と言えよう。いくつか懸念もあるが、今回この作品がず抜けていた。」
若合春侑
女40歳
3 「独特の世界を開く能力が見えるが、後半で大きく破綻したのは残念だ。」
安達千夏
女33歳
0  
福島次郎
男(69歳)
0  
赤坂真理
女34歳
13 「自分の存在を固定的な枠ぐみでなく、柔軟に探る感覚が見えるが、(引用者中略)言葉の運動量のあまりの落差、猥雑さが、性の生理的描写をきわ立たせ、電波交信や車の疾走感から響く内側の共振世界を、後退させてしまう。私には誤算としか思えない。」
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他の選考委員
河野多恵子
古井由吉
日野啓三
石原慎太郎
宮本輝
三浦哲郎
黒井千次
池澤夏樹
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選考委員
三浦哲郎男67歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
感想 総行数33 (1行=24字)
候補 評価 行数 評言
平野啓一郎
男23歳
22 「この作者の該博ぶりと明晰な文章を駆使する力量は、確かに瞠目に値する。それを充分認めた上でいうのだが、作者は、ここにちりばめてあるペダントリーとも思われかねない用語の力を頼ることなしに、それらを強引に押しつけるのではなしに、自分の意図するところを読む者へそっくり正確に伝えられるような独自の表現方法を考慮するべきではなかったろうか。」
若合春侑
女40歳
11 「虐げられつつも至福のよろこびに包まれて生涯を終えようとしている老女の足どりを、やや古風ながら神経の行き届いた才筆でしっかりと書き留めた好編だが、どうしたことか終わり近く、かつて防空壕だったという床下の穴蔵へ降りるあたりから急にすべてがリアリティーを失い、話も作品もがたがたと崩れてしまった。」
安達千夏
女33歳
0  
福島次郎
男(69歳)
0  
赤坂真理
女34歳
0  
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他の選考委員
河野多恵子
古井由吉
日野啓三
石原慎太郎
宮本輝
田久保英夫
黒井千次
池澤夏樹
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選考委員
黒井千次男66歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
現代との呼応 総行数35 (1行=24字)
候補 評価 行数 評言
平野啓一郎
男23歳
18 「天井の高い建造物に踏み入ったかのような印象を受けた。作品の構えの大きさと思考の奥行きとが生んだ印象であったろう。」「精神と物質との関係が激しく揺らいでいる今日、それを専ら精神の側から描こうとする若い人の小説は多いのだが、その主題を正面に据えたロマンの形で書かれる作品は稀である。」「ここに現出した世界の問題が現代に深く関るものであることに共感を覚える。」
若合春侑
女40歳
6 「一女性の地を這うような生涯を描いて魅力ある小説なのに、最後に男と女の関係が明かされる場面で、折角それまで積み上げて来たものが一気に崩れてしまったのが惜しまれる。」
安達千夏
女33歳
0  
福島次郎
男(69歳)
0  
赤坂真理
女34歳
11 「言葉と意味、身体と意識の分裂に苦しむ三十歳の女性が、その危機を乗り越えようとして〈足+宛〉(ルビ:もが)く姿を描き出した野心作である。」「「日蝕」が天井の高い建造物を思わせるとすれば、こちらは長い真っ直ぐの廊下を連想させる。「日蝕」には及ばなかったものの力量を感じさせる作品であり、次作に期待したい。」
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他の選考委員
河野多恵子
古井由吉
日野啓三
石原慎太郎
宮本輝
田久保英夫
三浦哲郎
池澤夏樹
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選考委員
池澤夏樹男53歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
知的構築 総行数38 (1行=24字)
候補 評価 行数 評言
平野啓一郎
男23歳
14 「知的に構築された小説としておもしろかった。もっとスマートな書きかたがあっただろうというのは若くない者の愚痴で、あちらこちら荒削りなのは一種の腕力の証明として好ましい。」「こういう座興的な議論の土台となる小説は、もちろん拍手と授賞に値する。」
若合春侑
女40歳
0  
安達千夏
女33歳
0  
福島次郎
男(69歳)
0  
赤坂真理
女34歳
24 「おもしろかった。」「自分の中で多くの意識が勝手に喋っているというのは、筒井康隆が書けば一つの設定であったが、赤坂は現実である。その描写はリアルで、リズミックで、読む快感に満ちている。いい文章だ。」「ぼくは授賞に値すると思ったけれど、残念ながら充分な数の賛同を得られなかった。」
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他の選考委員
河野多恵子
古井由吉
日野啓三
石原慎太郎
宮本輝
田久保英夫
三浦哲郎
黒井千次
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受賞者・作品
平野啓一郎男23歳×各選考委員 
「日蝕」
中篇 254
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
河野多恵子
女72歳
33 「私はこの作品の新仮名遣に、作者が語っている理由ある選択以上の取得、つまり効果を感じる。」「「日蝕」の創作動機は、奇跡との遭遇願望である。とはいえ、主人公の学僧は、作者の分身ではない。」「学僧は、海苔を干す時に使われる小簾のようなもので、干し上がれば用のないものである。」「主人公の学僧を無性格な人物たらしめてあるのは、大きな取得になっている。」「私はこの作品に作者の志の高さを見たので、それに賭けるつもりで推した。」
古井由吉
男61歳
33 「なぜこのような文章を、二十歳と少々の青年が書くに至ったか、また書き得たか、その訝りにたいする解答を、読者はしばらく留保したほうがよいと思われる。」「無論、擬体である。仮構である。小説である。ただ、西洋伝来の近代小説の、源のひとつの、その境まで振り戻して、新たに始めるという冒険である。」「私などは感嘆以前に、投げあげた試みがさほどの揺らぎもなく、伸びやかな抛物線を描くのを、唖然として眺めた。」
日野啓三
男69歳
37 「近代小説の正統(ルビ:オーソドックス)の道に自覚的に立とうとする作品として、(引用者中略)推す。気分的でしかない非現実感や自閉や破壊衝動や終末待望の単調な表白に、私は飽き始めている。」「意識的な書き言葉の格調を、最後まで担い通したのは見事である。」「矛盾した記述は矛盾のままに、「両性具有者(ルビ:アンドロギュノス)は私自身であったのかも知れない」という主人公の魂の統合体験を、私は共感することができた。」
石原慎太郎
男66歳
26 「いろいろ基本的な疑義を感じぬ訳にはいかない。」「この衒学趣味といい、たいそうな擬古文といい、果たしてこうした手法を用いなければ現代文学は蘇生し得ないのだろうか。私は決してそうは思わない。」「浅薄なコマーシャリズムがこの作者を三島由紀夫の再来などと呼ばわるのは止めておいた方がいい。三島氏がこの作者と同じ年齢で書いた「仮面の告白」の冒頭の数行からしての、あの強烈な官能的予感はこの作品が決して備えぬものでしかない。」
宮本輝
男51歳
18 「小説の後半からの破綻、手の込みすぎた文章。全体に漂う妙な驕り。それらはみな鼻持ちならないのだが、ことごとくが既製品の範疇から出て手脚を延ばしている。」「この若い作者が内に秘めているものは、出たとこ勝負の腕力ではない。将来に大きな楽しみをかかえた強くて豊かな膂力であって、私にも幾つかの不満はありながらも芥川賞に推さざるを得なかった。」
田久保英夫
男70歳
15 「文章の様式に、積極果敢な試みを感じた。」「この十五世紀のフランスの修道士を中心に、異端審問や錬金術を描いた作品には妙に適合した力を持っている。」「男女の肉のすべてを象徴的に結集した存在を火刑にする光景で、一瞬、至高の極を開示して見せる。まことに若々しい野心と膂力と言えよう。いくつか懸念もあるが、今回この作品がず抜けていた。」
三浦哲郎
男67歳
22 「この作者の該博ぶりと明晰な文章を駆使する力量は、確かに瞠目に値する。それを充分認めた上でいうのだが、作者は、ここにちりばめてあるペダントリーとも思われかねない用語の力を頼ることなしに、それらを強引に押しつけるのではなしに、自分の意図するところを読む者へそっくり正確に伝えられるような独自の表現方法を考慮するべきではなかったろうか。」
黒井千次
男66歳
18 「天井の高い建造物に踏み入ったかのような印象を受けた。作品の構えの大きさと思考の奥行きとが生んだ印象であったろう。」「精神と物質との関係が激しく揺らいでいる今日、それを専ら精神の側から描こうとする若い人の小説は多いのだが、その主題を正面に据えたロマンの形で書かれる作品は稀である。」「ここに現出した世界の問題が現代に深く関るものであることに共感を覚える。」
池澤夏樹
男53歳
14 「知的に構築された小説としておもしろかった。もっとスマートな書きかたがあっただろうというのは若くない者の愚痴で、あちらこちら荒削りなのは一種の腕力の証明として好ましい。」「こういう座興的な議論の土台となる小説は、もちろん拍手と授賞に値する。」
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他の候補作
若合春侑
「カタカナ三十九字の遺書」
安達千夏
「あなたがほしい」
福島次郎
「蝶のかたみ」
赤坂真理
「ヴァイブレータ」
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候補者・作品
若合春侑女40歳×各選考委員 
「カタカナ三十九字の遺書」
短篇 107
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
河野多恵子
女72歳
0  
古井由吉
男61歳
0  
日野啓三
男69歳
0  
石原慎太郎
男66歳
4 「なかなかの存在感があるが最後の種明かしなどむしろ不要で、いま一つの感がする。」
宮本輝
男51歳
7 「今回は、なんだか意欲ばかりが空廻りして、あちこちに勇み足の跡を残すような作品となってしまったが、大きく伸びる素材であるという私の感想は変わらない。」
田久保英夫
男70歳
3 「独特の世界を開く能力が見えるが、後半で大きく破綻したのは残念だ。」
三浦哲郎
男67歳
11 「虐げられつつも至福のよろこびに包まれて生涯を終えようとしている老女の足どりを、やや古風ながら神経の行き届いた才筆でしっかりと書き留めた好編だが、どうしたことか終わり近く、かつて防空壕だったという床下の穴蔵へ降りるあたりから急にすべてがリアリティーを失い、話も作品もがたがたと崩れてしまった。」
黒井千次
男66歳
6 「一女性の地を這うような生涯を描いて魅力ある小説なのに、最後に男と女の関係が明かされる場面で、折角それまで積み上げて来たものが一気に崩れてしまったのが惜しまれる。」
池澤夏樹
男53歳
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他の候補作
平野啓一郎
「日蝕」
安達千夏
「あなたがほしい」
福島次郎
「蝶のかたみ」
赤坂真理
「ヴァイブレータ」
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候補者・作品
安達千夏女33歳×各選考委員 
「あなたがほしい」
中篇 233
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
河野多恵子
女72歳
0  
古井由吉
男61歳
0  
日野啓三
男69歳
0  
石原慎太郎
男66歳
4 「まだ作品としての水準に達しているとはいえない。こうした男と女の関係は自然不自然という前にただ思いつきの域を出ていない。」
宮本輝
男51歳
2 「手練な作品だが、この作品だけでは届かない。」
田久保英夫
男70歳
0  
三浦哲郎
男67歳
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黒井千次
男66歳
0  
池澤夏樹
男53歳
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他の候補作
平野啓一郎
「日蝕」
若合春侑
「カタカナ三十九字の遺書」
福島次郎
「蝶のかたみ」
赤坂真理
「ヴァイブレータ」
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候補者・作品
福島次郎男(69歳)×各選考委員 
「蝶のかたみ」
中篇 169
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
河野多恵子
女72歳
0  
古井由吉
男61歳
0  
日野啓三
男69歳
0  
石原慎太郎
男66歳
5 「この作者の作品の系譜を眺めなおして見て、妙な当てこみのいやらしさを感じさせられる。しょせん恥のウリセンという印象を禁じ得ない。」
宮本輝
男51歳
5 「小説になりそこねたといった印象を持った。ノンフィクションのドキュメンタリー、あるいは手記の域でとどまっている。」
田久保英夫
男70歳
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三浦哲郎
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黒井千次
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他の候補作
平野啓一郎
「日蝕」
若合春侑
「カタカナ三十九字の遺書」
安達千夏
「あなたがほしい」
赤坂真理
「ヴァイブレータ」
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候補者・作品
赤坂真理女34歳×各選考委員 
「ヴァイブレータ」
中篇 181
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
河野多恵子
女72歳
0  
古井由吉
男61歳
0  
日野啓三
男69歳
0  
石原慎太郎
男66歳
6 「私は楽しみながら読んだが、かつてのケルーアックの「路上」のように幾つか際だったシークエンスが描かれてはいるが作品として最後の何かが欠けている。」
宮本輝
男51歳
7 「私は以前、別の文学賞において別の作品を読んでいて、「ヴァイブレータ」がそれよりもはるかに腕を上げたと感じた。赤坂氏の一種病的なセンシビリティが、独自の小説世界への結実するのは、いま少し時間がかかりそうだが、なにも焦ることはない。」
田久保英夫
男70歳
13 「自分の存在を固定的な枠ぐみでなく、柔軟に探る感覚が見えるが、(引用者中略)言葉の運動量のあまりの落差、猥雑さが、性の生理的描写をきわ立たせ、電波交信や車の疾走感から響く内側の共振世界を、後退させてしまう。私には誤算としか思えない。」
三浦哲郎
男67歳
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黒井千次
男66歳
11 「言葉と意味、身体と意識の分裂に苦しむ三十歳の女性が、その危機を乗り越えようとして〈足+宛〉(ルビ:もが)く姿を描き出した野心作である。」「「日蝕」が天井の高い建造物を思わせるとすれば、こちらは長い真っ直ぐの廊下を連想させる。「日蝕」には及ばなかったものの力量を感じさせる作品であり、次作に期待したい。」
池澤夏樹
男53歳
24 「おもしろかった。」「自分の中で多くの意識が勝手に喋っているというのは、筒井康隆が書けば一つの設定であったが、赤坂は現実である。その描写はリアルで、リズミックで、読む快感に満ちている。いい文章だ。」「ぼくは授賞に値すると思ったけれど、残念ながら充分な数の賛同を得られなかった。」
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他の候補作
平野啓一郎
「日蝕」
若合春侑
「カタカナ三十九字の遺書」
安達千夏
「あなたがほしい」
福島次郎
「蝶のかたみ」
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