芥川賞のすべて・のようなもの
選評の概要
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Last Update[H26]2014/11/28

日野啓三
Hino Keizo
生没年月日【注】 昭和4年/1929年6月14日~平成14年/2002年10月14日
在任期間 第97回~第127回(通算15.5年・31回)
在任年齢 58歳0ヶ月~73歳0ヶ月
経歴 東京生まれ、朝鮮育ち。東京大学文学部社会学科卒。在学中より大岡信、佐野洋らと同人誌『二十代』を出す。卒業後、読売新聞社入社、外報部記者としてベトナム戦争やソウルを取材。そのかたわら小説執筆を続ける。
受賞歴・候補歴
芥川賞候補歴 第64回候補 「めぐらざる夏」(『文學界』昭和45年/1970年10月号)
第70回候補 「此岸の家」(『文芸』昭和48年/1973年8月号)
第71回候補 「浮ぶ部屋」(『文藝』昭和49年/1974年6月号)
第72回受賞 「あの夕陽」(『新潮』昭和49年/1974年9月号)
備考
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下記の選評の概要には、評価として◎か○をつけたもの(見方・注意点を参照)、または受賞作に対するもののみ抜粋しました。さらにくわしい情報は、各回の「この回の全概要」をクリックしてご覧ください。

芥川賞 97 昭和62年/1987年上半期   一覧へ
選評の概要 「宙ぶらりん」を出発点に 総行数30 (1行=26字)
選考委員 日野啓三 男58歳
候補 評価 行数 評言
女42歳
19 「われわれの意識の表面では、解体、空洞化、断片化、不安、退行といった事態が進行しているけれど、意識の奥では常に統合の営みが働いているはずだ、と私は信じている。」「そういう統合の営みがみられると感じたので、私はこの作品を支持した。」「よき抽象的認識が、話の運びの計算されたしなやかさ、文章のとぼけたようなユーモアと共にあることに感心した。」
選評出典:『芥川賞全集 第十四巻』平成1年/1989年5月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和62年/1987年9月号)
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芥川賞 98 昭和62年/1987年下半期   一覧へ
選評の概要 大きな意味で 総行数33 (1行=26字)
選考委員 日野啓三 男58歳
候補 評価 行数 評言
男42歳
24 「これまでの文学と新しい世代の文学をつなぐ貴重な作品、と思える」「旧世代から端正な文章を高く評価されると同時に、二十代の人たちからも、この感受性は親しく読まれる要素をもっている。」「このことをたいへん貴重におもう。」「また日ましに理科っぽくなってゆくわれわれの現実を、旧来の文学はとりこめなくなっている。この断絶にも、池澤氏の作品は橋を架けるものである。」
男57歳
9 「随所に声を上げて笑う上質のユーモアがある。この乾いた感覚が快い。だが笑いながら読み終わったあと、じわじわと身にこたえてくるすごいこわさがある。」「(引用者注:親子・家庭小説として、断絶と崩壊からの)前向きの方向(非情な方向だ)が見すえられている。その姿勢に共感した。」
選評出典:『芥川賞全集 第十四巻』平成1年/1989年5月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和63年/1988年3月号)
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芥川賞 99 昭和63年/1988年上半期   一覧へ
選評の概要 〈物語〉の廃墟で 総行数40 (1行=26字)
選考委員 日野啓三 男59歳
候補 評価 行数 評言
男42歳
14 「最終選考まで残った」「主人公の家族=世界が壊れているだけでなく、作品世界も意識的に断片化されている。断片化の危険を敢えて冒したために、(引用者中略)とても深く良いイメージが、多分偶然に現われたにちがいない。」「だがそれらの深いイメージと有機的に結びつける〈物語〉が希薄なために、ファッション・モデルと主人公の不交情の部分は、つくりものめいて浮き上がることにもなる。」
  「候補作六篇を通じて、いわゆるまともな家庭の形がないことに、時代の深い変わり目、というような感慨を改めて覚えた」「家族解体は世界の解体であり、世界の解体とは世界を結びつける大きな意味の衰弱であり、つまり〈大いなる物語〉の死だ。」
選評出典:『芥川賞全集 第十四巻』平成1年/1989年5月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和63年/1988年9月号)
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芥川賞 100 昭和63年/1988年下半期   一覧へ
選評の概要 晒されて 総行数36 (1行=26字)
選考委員 日野啓三 男59歳
候補 評価 行数 評言
女33歳
17 「(引用者注:「ダイヤモンドダスト」と共に)推した。この二作には外界の風の感触がある。」「この作品の独自さは、韓国人女性の目を通して在日韓国人の姿を相対化しながら、既成の共同体感性を越えて生きるという普遍的な戦慄と魅惑を、呼び出したことにある。」「陰影と鋭さのあるいい文章だ、と私は感じた。」
男37歳
13 「(引用者注:「由煕」と共に)推した。この二作には外界の風の感触がある。」「“母なるもの”が急速に希薄化してゆく日本の現実に立ち向かっている。」「ただ文章そのものの魅力に幾分欠ける。」
選評出典:『芥川賞全集 第十四巻』平成1年/1989年5月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成1年/1989年3月号)
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芥川賞 101 平成1年/1989年上半期   一覧へ
選評の概要 相対化しながらの自信 総行数37 (1行=24字)
選考委員 日野啓三 男60歳
候補 評価 行数 評言
  「今回の候補作は全くつまらなかったのか、といえば必ずしもそうではない。」
選評出典:『芥川賞全集 第十五巻』平成14年/2002年4月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成1年/1989年9月号)
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芥川賞 102 平成1年/1989年下半期   一覧へ
選評の概要 異能と正統 総行数39 (1行=24字)
選考委員 日野啓三 男60歳
候補 評価 行数 評言
女50歳
26 「妙な味のあるふしぎな作品だ。」「私の勘によれば、この小説は作者の過去の体験そのものではない。」「多分この作品はすぐれた細部も含めて、あるときふっとその全体が宙に浮かび出して見えたにちがいない。無意識そのもの、洞察力と構成力を自然に生かすことのできるふしぎな才能のひとのように思われて、今後が楽しみである。」
男31歳
13 「候補三度目で、本当に何が書きたいのか、私にはやっと見えてきた気がする。」「日常的現実のぎりぎりの果てに絶対的なものの感触を書こうとしているのだろう。」「「絶対の現実」を“聖なるもの”と言い替えても大きく誤りではあるまい。その意味でこの作者は一見新しい装いを凝らしているようで、本質はたいへん正統的な作家だと思う。」
選評出典:『芥川賞全集 第十五巻』平成14年/2002年4月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成2年/1990年3月号)
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芥川賞 103 平成2年/1990年上半期   一覧へ
選評の概要 粘り強さ 総行数30 (1行=24字)
選考委員 日野啓三 男61歳
候補 評価 行数 評言
男44歳
18 「眩暈的仕掛けが次々と書きこまれて、現代中国の一農村が古代の伝説に、超現実の異界に、主人公の意識の深層にと、変容してゆく。」「その手腕はなかなかのものである。」「このようなシュールな小説の最大の難しさである最後の着地も、ほぼうまくいっていると思う。」
選評出典:『芥川賞全集 第十五巻』平成14年/2002年4月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成2年/1990年9月号)
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芥川賞 104 平成2年/1990年下半期   一覧へ
選評の概要 静かな物憂い恐怖 総行数34 (1行=24字)
選考委員 日野啓三 男61歳
候補 評価 行数 評言
女28歳
21 「今回の候補作は、作品全体の密度が均質化して気持ちよく読めた。」「ごく普通のことの奥に、ぞっとする不安ないし恐怖を透視すること。それが作品の中だけの恐怖であっても、文学という営みの貴重な意味と考える。出産を含めてこれまで自然だったはずのことが自然ではなくなってきた時代の感触が、声高にではなく書かれていることに感心した。」
  「村田喜代子とともに小川洋子も地方都市在住であることがおもしろいと思った。東京は急速にダメになっているのかもしれない。」
選評出典:『芥川賞全集 第十五巻』平成14年/2002年4月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成3年/1991年3月号)
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芥川賞 105 平成3年/1991年上半期   一覧へ
選評の概要 不毛でないもの 総行数32 (1行=24字)
選考委員 日野啓三 男62歳
候補 評価 行数 評言
男46歳
27 「小説の作り方の上で幾つかの欠点がある。多分小説らしい形をつけるにはこういう変化が必要なのだろう、と加えたにちがいない余分な箇所だ。」「にもかかわらず、作品全体にふしぎな魅力がある。何か飄々としてユーモアのある悲しみのようなものだ。」「まさに植物的生存の古く暗い根をひきずり続けている人間たちへの身近な感情。それは必ずしもいわゆる新しいものではないが、とてもオーソドックスなものだ、人間にとっても文学にとっても。」
女34歳
5 「これまでの候補作のなかで最もまとまっているように思えた。」
選評出典:『芥川賞全集 第十五巻』平成14年/2002年4月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成3年/1991年9月号)
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芥川賞 106 平成3年/1991年下半期   一覧へ
選評の概要 奥泉氏の妙な力 総行数45 (1行=24字)
選考委員 日野啓三 男62歳
候補 評価 行数 評言
奥泉光
男35歳
33 「今回は大方の賛同を得られないことを覚悟の上で、敢えて(引用者中略)推した。」「今回の候補作中、最も枚数が長かったのに、退屈することなく読み続けさせる妙な力があった。」「粗い文章と雑な構成にもかかわらず、主人公の魅力が強く心に残った。男というのは観念的な孤独なイキモノなのだ。」
女30歳
12 「「ピュアで乾いた物質性」を愛する女子学生の感性を、私は理解し共感さえできるが、それだけに終りの方になって、(引用者中略)自分自身を愛する夢をみようと願う主人公の心事は、不徹底に思われる。」「主人公は「友人よりも青い石の方を」選ぶ感性と生き方を貫いてほしかった。」
選評出典:『芥川賞全集 第十六巻』平成14年/2002年6月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成4年/1992年3月号)
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芥川賞 107 平成4年/1992年上半期   一覧へ
選評の概要 「ペルソナ」の文体 総行数32 (1行=24字)
選考委員 日野啓三 男63歳
候補 評価 行数 評言
多和田葉子
女32歳
14 「最初はとくに印象強くなかったのに再読しながら、細かな陰影の豊かさに驚いた(最初はいったい何を読んでいたんだ)。」「この作者は独得の文体をもっていると思った。」「外国で異質のものにさらされての違和感ないし怯えが、自分という存在への違和感とうまく重なっている。この文章はこれから小説を書けると感じた。」
男36歳
6 「最初から異例に高得点を得たことは、私には率直にいって意外だった。」「機械と人間の関係の感覚が私には古風に感じられる。機械と人間との身体的、神経的関係は、もっと妖しく微妙なものに変質しつつある気がする。」
選評出典:『芥川賞全集 第十六巻』平成14年/2002年6月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成4年/1992年9月号)
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芥川賞 108 平成4年/1992年下半期   一覧へ
選評の概要 再読しての印象 総行数31 (1行=24字)
選考委員 日野啓三 男63歳
候補 評価 行数 評言
女32歳
8 「最初に読んだときは、前回の選考でこの人の「ペルソナ」を推しながら、今度は計算違いをしているな、という印象だった。終りの方がよくわからない。」「文体によって作品を自己増殖させる、という文学的小説の基本が自然に身についている。文学の匂いがある。」
選評出典:『芥川賞全集 第十六巻』平成14年/2002年6月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成5年/1993年3月号)
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芥川賞 109 平成5年/1993年上半期   一覧へ
選評の概要 陰影のある的確さ 総行数32 (1行=24字)
選考委員 日野啓三 男64歳
候補 評価 行数 評言
男36歳
30 「帰国子女と呼ばれる人たちの感性、性格のことを改めて考えた。」「外国で対等に、あるいは差別されながら育った。つらいことも少なくなかったであろう。そうして鍛えられたにちがいない性格の陰影のようなものが、彼の文章の隅々から感じられる。しかもこれまでそうした個人的な苦しみを直接に、彼は私小説的には語っていない。自国内だけの心情共同体のようなものから切れている。」
選評出典:『芥川賞全集 第十六巻』平成14年/2002年6月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成5年/1993年9月号)
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芥川賞 110 平成5年/1993年下半期   一覧へ
選評の概要 気流が変るのか 総行数28 (1行=24字)
選考委員 日野啓三 男64歳
候補 評価 行数 評言
石黒達昌
男32歳
9 「私は底深い悲しみと恐れをもって読んだ。」「最後の二匹が仄かに光りながら死んでゆく箇所に、私は涙を流しかけた。人類という種の最期を思った。多分全くの虚構の物語を、緊迫して支え続ける科学論文調の特異な文体の“静かな力”はほとんど美しい。」
男37歳
13 「受賞は、私としては少し意外でもあり、また当然であるようにも思えた。この作品にはこれまでの氏の作品と同じように、あるいはそれ以上の力がある。」「書物から集めた戦場の情景や地質学的知識などを承知の上で使い、それらを講談調の物語形式で強引につなぎ合わせてゆく観念の腕力。それはこの数年間の受賞作に目だった内向きの繊細な感性の求心力とは、違うヴェクトルである。」
選評出典:『芥川賞全集 第十六巻』平成14年/2002年6月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成6年/1994年3月号)
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芥川賞 111 平成6年/1994年上半期   一覧へ
選評の概要 感想 総行数33 (1行=24字)
選考委員 日野啓三 男65歳
候補 評価 行数 評言
小浜清志
男43歳
9 「私は最も興味深く読んだのだが、小説の構造と文章が余りに古風なことは否めない。このような、現在のわれわれからは遠い採集狩猟時代的な女シャーマンの超現実的なような話が、実はかえっていまとても新鮮」
女38歳
10 「前回の「二百回忌」よりすぐれているか劣るか、という点で評価が分かれた。」「私は「二百回忌」の方が印象強かったが、地方都市で十何歳かまで育ってから、いきなり東京に住むと、東京はこんな風に見えるものだ、という河野多惠子さんの意見にはそうかもしれない、と思った。」
男39歳
7 「どうしてもごてごてして読みにくかった。旧来の保証ずみでない新しい小説の作り方、書き方に、私は無理解ではないつもりだが、もう一段、小説的抽象性への想像力の集中が必要なように思われる。」
選評出典:『芥川賞全集 第十七巻』平成14年/2002年8月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成6年/1994年9月号)
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芥川賞 112 平成6年/1994年下半期   一覧へ
選評の概要 新しい芽はあるのだが…… 総行数27 (1行=24字)
選考委員 日野啓三 男65歳
候補 評価 行数 評言
  「候補作五篇、それぞれに個性的な試み、独自な効果をもちながら、受賞作として積極的に推すには、一個の作品としてのまとまりが足らなかった、と残念だった。」
選評出典:『芥川賞全集 第十七巻』平成14年/2002年8月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成7年/1995年3月号)
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芥川賞 113 平成7年/1995年上半期   一覧へ
選評の概要 日常の光 総行数33 (1行=24字)
選考委員 日野啓三 男66歳
候補 評価 行数 評言
男38歳
33 「他の都合もあって合計四回読んだが、読む度に快かった。(引用者中略)いまこの頃、私が呼吸しているまわりの空気(あるいは気配)と、自然に馴染む。こういう作品は珍しい。」「バブルの崩壊、阪神大震災とオウム・サリン事件のあとに、われわれが気がついたのはとくに意味もないこの一日の静かな光ではないだろうか。」「その意味で、この小説は新しい文学のひとつの(唯一のではない)可能性をそっと差し出したものと思う。」
選評出典:『芥川賞全集 第十七巻』平成14年/2002年8月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成7年/1995年9月号)
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芥川賞 114 平成7年/1995年下半期   一覧へ
選評の概要 新しい魂のドラマ 総行数36 (1行=24字)
選考委員 日野啓三 男66歳
候補 評価 行数 評言
男48歳
36 「作中の女性たちの描き方の陰影ある力強さ、おおらかに自然なユーモア、豚という沖縄では特別重要な動物を軸にした骨太の構成などはもちろんのことだが、私が目を見張ったのは伝統的な祭祀に対する若い男性主人公の態度である。」「この作品を書いた作者のモチーフの核は、若い主人公のその反伝統的な精神のドラマだと思う。」「新しい沖縄の小説である。単に土着的ではない。自己革新の魂のヴェクトルを秘めた小説である。」
選評出典:『芥川賞全集 第十七巻』平成14年/2002年8月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成8年/1996年3月号)
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芥川賞 115 平成8年/1996年上半期   一覧へ
選評の概要 戦いの物語 総行数37 (1行=24字)
選考委員 日野啓三 男67歳
候補 評価 行数 評言
女38歳
29 「「蛇を踏んでしまった」というさり気ない書き出しの切れ味がいい。そうしてごく普通の若い女性が、日常生活の中で心ならずも神話的領域に触れてしまう。」「前作に比べて格段に強くしなやかになった作者の文章の力が、現代日本の若い女性たちの深層意識の見えない戦い――というひとつの劇的世界を文章表現の次元に作り上げた。」
リービ英雄
男45歳
8 「時代的体験の切実さ、(引用者中略)想像力のスケール、それを記述する作者の交ぜ織り(ルビ:インターテクスチャー)的な文章表現と構成の豊かな新鮮さで、私を魅了したが多くの賛成を得られなかった。」
選評出典:『芥川賞全集 第十七巻』平成14年/2002年8月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成8年/1996年9月号)
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芥川賞 116 平成8年/1996年下半期   一覧へ
選評の概要 才能について 総行数39 (1行=24字)
選考委員 日野啓三 男67歳
候補 評価 行数 評言
女28歳
26 「文学賞の選考の場で、「才能」という言葉は本当は使うべきではないと思っている。」「ところが今回の選考で、私は柳美里氏の候補作を推すさいこの禁句を使った。作品全体とくに家族和解シネマの撮影現場の部分の会話と描写に、才能としか言いようのない巧まざる巧みさを、なまなましく感得したからである。」「明らかな構造的欠陥にもかかわらず撮影現場のふしぎな魅力は捨て難い。」
男37歳
13 「いささか生硬な漢文的スタイルの文章が、奥行のある硬質の小宇宙(独房がその核だろう)を構築している。」「主要登場人物の心理と行動の変化の点で構成上の欠陥がないわけではない。自然に納得し難い飛躍があるのだが、にもかかわらず小器用にまとまった佳作以上の迫力と魅力があることを納得せざるをえない。」
選評出典:『芥川賞全集 第十七巻』平成14年/2002年8月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成9年/1997年3月号)
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芥川賞 117 平成9年/1997年上半期   一覧へ
選評の概要 大肯定 総行数37 (1行=24字)
選考委員 日野啓三 男68歳
候補 評価 行数 評言
男36歳
31 「問題は一九四五年だけでなく戦後五十余年に及ぶこと、被害者としてだけ戦争と自分を装ってきたこと(沖縄だけであるまい)――戦後の自己欺瞞を作者は問い直している。」「その無意識の長い罪を意識化し悔い改め救われるメデタイ話ではない」「そんな主人公のすべてを、そのエゴイズム、弱さ愚かさを、作者は“大肯定”している。倫理的、宗教的にではなく、沖縄という不思議な場の力で。」「すぐれて沖縄的で現代的な小説である。」
選評出典:『芥川賞全集 第十八巻』平成14年/2002年10月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成9年/1997年9月号)
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芥川賞 118 平成9年/1997年下半期   一覧へ
選評の概要 ある一線 総行数32 (1行=24字)
選考委員 日野啓三 男68歳
候補 評価 行数 評言
  「文学観も小説の書き方も異る委員たちが、「ここまでいってないと入選作とは思えない」というその“一線”の了解において、ほぼ暗黙の一致をみた」「言葉では簡単に言い難い基本的な文学的リアリティーというものが(作品の表層が古いとか新しいとかいうことを超えて)、いまも生きている、と私はむしろ心強く思いもしたのだった。」
選評出典:『芥川賞全集 第十八巻』平成14年/2002年10月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成10年/1998年3月号)
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芥川賞 119 平成10年/1998年上半期   一覧へ
選評の概要 社会的通念の一歩先を 総行数35 (1行=24字)
選考委員 日野啓三 男69歳
候補 評価 行数 評言
男43歳
3 「自然発生的に雑な感じで、私としてはもう少し精緻な表現の焼きを加えてほしいと思うが、想念にある種の腕力はあるだろう。」
男39歳
5 「私はよい印象を持たない。適当な記号的イメージを適当に並べて感傷的に味つけした中間風俗小説と、二度読んで感じたが、多数の委員がそう感じなかったことに異を立てる気はない。」
  「手術して退院間もないため欠席せざるをえなかった。」「今回の選評は、討議での修正を経ていないナマの第一印象の如きものであることを、ご了承願いたい。」「全体としてどの作品もよく似ているという印象をもった。鬱屈して、主観的には反社会的で、暴力的で、未来の展望をもたず、くすんだような感じの登場人物ばかり。」
選評出典:『芥川賞全集 第十八巻』平成14年/2002年10月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成10年/1998年9月号)
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芥川賞 120 平成10年/1998年下半期   一覧へ
選評の概要 《全的現実》への夢 総行数37 (1行=24字)
選考委員 日野啓三 男69歳
候補 評価 行数 評言
男23歳
37 「近代小説の正統(ルビ:オーソドックス)の道に自覚的に立とうとする作品として、(引用者中略)推す。気分的でしかない非現実感や自閉や破壊衝動や終末待望の単調な表白に、私は飽き始めている。」「意識的な書き言葉の格調を、最後まで担い通したのは見事である。」「矛盾した記述は矛盾のままに、「両性具有者(ルビ:アンドロギュノス)は私自身であったのかも知れない」という主人公の魂の統合体験を、私は共感することができた。」
選評出典:『芥川賞全集 第十八巻』平成14年/2002年10月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成11年/1999年3月号)
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芥川賞 121 平成11年/1999年上半期   一覧へ
選評の概要 もう一作見たい 総行数34 (1行=24字)
選考委員 日野啓三 男70歳
候補 評価 行数 評言
  「実を言うと、今回は受賞作はないだろう、という予感(予断ではない)をもって、選考会に出た。一週間ほど前に一応全候補作を読んでいたのだが、数日後まで感動ないし驚きが生き続ける作品がなかったからだ。」
選評出典:『芥川賞全集 第十八巻』平成14年/2002年10月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成11年/1999年9月号)
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芥川賞 123 平成12年/2000年上半期   一覧へ
選評の概要 「知覚」のきらめきを 総行数44 (1行=24字)
選考委員 日野啓三 男71歳
候補 評価 行数 評言
男38歳
0  
男46歳
0  
  「いかにも当世風のダメな人間たちのパッとしない日常を描く文章は、少年たちの殺傷事件を驚き伝える新聞の文章と似ている。感覚を意識化する感度が低い。意識の精度はいわゆる頭の良さとはレベルが違うことだ。いま人類の新しい世代の内奥でひそかに進行しているのが、その精度のレベルアップだろう。若い作家たちは自分たちの内部で起こっている意識の進化にもっと自信を持っていい。」
選評出典:『芥川賞全集 第十九巻』平成14年/2002年12月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成12年/2000年9月号)
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芥川賞 124 平成12年/2000年下半期   一覧へ
選評の概要 静かな知恵の言葉 総行数44 (1行=24字)
選考委員 日野啓三 男71歳
候補 評価 行数 評言
男37歳
22 「「熊の敷石」のような派手でもどぎつくもない静かな短篇が、第一回投票から最高点を集めて逃げ切った」「よく見ると、(引用者中略)人間の心のゆがみや人間同士の関係のずれで偏光する精神の微妙な光も挿しこんでいて、緻密に感じとるとなかなか複雑で不気味でさえある非凡な作風なのであった。」
男42歳
4 「この作者としてはこれまでの候補作品と比べると出色ではあったが、あったこと、起こったことを正面から受け取る素朴リアリズム風の知覚様式と直線的な物語り構造は退屈であった。」
  「今回の候補作品は総じて水準に達したものばかりであった。」
選評出典:『芥川賞全集 第十九巻』平成14年/2002年12月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成13年/2001年3月号)
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芥川賞 125 平成13年/2001年上半期   一覧へ
選評の概要 “物”の光 総行数78 (1行=24字)
選考委員 日野啓三 男72歳
候補 評価 行数 評言
長嶋有
男28歳
37 「三度読み直しながら考えに考えてマル印をつけた」「透き徹るように新鮮なこの短篇に出会ったことで、今回の選考を私は長く記憶するだろう。」「とくに新しい思想や哲学があるわけでもなさそうなのに、この作品は新しい、と本能的に感ずる。」「何よりも、自分が犬になって、「凛として」サイドカーに行儀よく坐っているイメージの、言い難い象徴的魅力。」
男45歳
41 「宗教と呪術の次元が重層する日本人の無意識の現実に、玄侑氏はほの暗くやさしく触れようとする。」「妻君の最後の呟きは、まさに普通の日本人の「無我」の境位を自然に言い当てているようで良い気持ちになることができた。」「ただ私としては、題材が題材なだけに文章全体がくすんできらめきが乏しいこと(引用者中略・注:などの)疑念から、積極的な評価(マル印)は控えた。」
選評出典:『芥川賞全集 第十九巻』平成14年/2002年12月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成13年/2001年9月号)
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芥川賞 126 平成13年/2001年下半期   一覧へ
選評の概要 新しい未来の世代 総行数81 (1行=14字)
選考委員 日野啓三 男72歳
候補 評価 行数 評言
男29歳
40 「(引用者注:「ゆううつな苺」と共に)小学生の息子と中学生の娘から見られた親たちの姿が、くっきりとしっかりと書かれている。」「驚くのは、彼ら幼いはずの視点人物が無意識のうちにとっている“距離感”の見事さだ。」「子供たち自身も、一個の他者として実存している。」「北海道の冬の海の上に垂れこめる冬空の冷気と陰鬱さとが最も記憶に残った。」
大道珠貴
女35歳
36 「(引用者注:「猛スピードで母は」と共に)小学生の息子と中学生の娘から見られた親たちの姿が、くっきりとしっかりと書かれている。」「驚くのは、彼ら幼いはずの視点人物が無意識のうちにとっている“距離感”の見事さだ。」「子供たち自身も、一個の他者として実存している。」「女子中学生は若干不良っぽいが、その分生きる味気なさも知っている。」
  「しばらくぶりで気持ちいい新年を迎えている。誰が受賞したかということ(多分に偶然の結果だ)ではなくて、今回の候補者たちの何人かは、ともに日本文学の新しい未来を予感させるものを秘めていたからだ。池澤夏樹の『スティル・ライフ』の時以来、こういうことはしばらくぶりだが、時にはそういうこともあるのだ。」
選評出典:『文藝春秋』平成14年/2002年3月号
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