芥川賞のすべて・のようなもの
第112回
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平成6年/1994年下半期
(平成7年/1995年1月12日決定発表/『文藝春秋』平成7年/1995年3月号選評掲載)
選考委員  田久保英夫
男66歳
丸谷才一
男69歳
黒井千次
男62歳
日野啓三
男65歳
大江健三郎
男59歳
古井由吉
男57歳
大庭みな子
女64歳
三浦哲郎
男63歳
河野多恵子
女68歳
選評総行数  41 27 27 27 25 27 19 27 26
候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数
内田春菊 「キオミ」
61
女35歳
0 0 3 0 0 0 0 0 0
伊達一行 「光の形象」
189
男44歳
12 0 6 11 7 0 0 18 0
引間徹 「地下鉄の軍曹」
275
男30歳
0 12 7 4 6 10 0 0 4
三浦俊彦 「蜜林レース」
147
男35歳
0 0 3 7 4 6 0 0 3
中村邦生 「ドッグ・ウォーカー」
142
男48歳
27 15 3 7 0 0 0 7 0
                 
年齢/枚数の説明   見方・注意点

このページの選評出典:『芥川賞全集 第十七巻』平成14年/2002年8月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成7年/1995年3月号)
1行当たりの文字数:24字


選考委員
田久保英夫男66歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
ある試み 総行数41 (1行=24字)
候補 評価 行数 評言
内田春菊
女35歳
0  
伊達一行
男44歳
12 「かつての作家なら、「私小説」にも書きうる素材だが、これはストーリー・テリングで進めて、その面では巧い。しかし、巧みに物語を進めるほど、訴求力を失うのは小説のふしぎだ。」「今日の日本人と、東南アジア人との関わり方を考えさせるのが、大きな手柄だと思う。」
引間徹
男30歳
0  
三浦俊彦
男35歳
0  
中村邦生
男48歳
27 「私は(引用者中略)眼をひかれた。」「都会で、さまざまな他人と関わりつつ暮す人間として、こういう生の逆説的な対処法(引用者注:「決断」より、誠実に「その場しのぎ」をする)を認めるか認めないかは、興味深い主題だ。」「全体にインテリ臭い意識の屈折の出すぎるのが欠点だ。それが作品の狙いを見えにくくしてしまう。けれども私は、現代小説にこうした独特な静かな音律のような語り口があっていい、と思い、あえて一票を投じたが、残念ながら多くの支持を得られなかった。」
  「今回はひさびさに「なし」の結果が出たが、最後まで二作(引用者注:「ドッグ・ウォーカー」「光の形象」)が問題となった。」
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他の選考委員
丸谷才一
黒井千次
日野啓三
大江健三郎
古井由吉
大庭みな子
三浦哲郎
河野多恵子
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選考委員
丸谷才一男69歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
激励と嘆息 総行数27 (1行=24字)
候補 評価 行数 評言
内田春菊
女35歳
0  
伊達一行
男44歳
0  
引間徹
男30歳
12 「期待に反した失敗作です。書く必要のない小説だつた。」「『19分25秒』のスポーツと違つて、この作品であつかつてゐる戦争は、作者にとつて切実なものでないらしい。ただ冗漫で退屈なだけでした。書く必要がないと評するゆゑんです。属望する新人に向つてかういふことを言はなければならない不運を嘆く。」
三浦俊彦
男35歳
0  
中村邦生
男48歳
15 「小説の本道をゆかうとしてゐます。つまり人間の出会ひと別れによる物語を書いて、その形づくる意匠のおもしろさを示し、あはよくば人間について探求しようとしてゐる。かういふ正統的な態度は推奨されて然るべきでせう。」「欠点はいろいろあるし、受賞に至らなかつたのは当然だと思ふが、しかしここでは長所だけを言つて置きます。」
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他の選考委員
田久保英夫
黒井千次
日野啓三
大江健三郎
古井由吉
大庭みな子
三浦哲郎
河野多恵子
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選考委員
黒井千次男62歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
意図と結果 総行数27 (1行=24字)
候補 評価 行数 評言
内田春菊
女35歳
3 「必要なことだけを書く作品の短さに好感を持ちつつも、その軽快さが何かを取り落しているのではないか、と危ぶまれた。」
伊達一行
男44歳
6 「マレーシア現地の人々の動きは興味深く伝わって来るのに、文章が不自然に大仰な言葉に傾き、結末もそれまでの展開を受け止め切れずに尻すぼまりである。」
引間徹
男30歳
7 「野心的な力作ではある。しかしどう考えても作品は不要に長く、また現在の側から過去に迫る営為が弱いために意図倒れに終っている。」
三浦俊彦
男35歳
3 「各場面の光景はどぎつく力感に溢れても、そのイメージの質にばらつきがあり、遊びが浮き上り過ぎている。」
中村邦生
男48歳
3 「捉え難いものを捉えようとする模索は面白いが、全体があまりに淡い印象しか残さない。」
  「今回は、これを強く推したいと思う候補作を見出すことが出来なかった。」「作品のモチーフや作者の意図には共感を寄せられるのに、結果として作品が作者の狙いを実現し得ていないもどかしさを強く覚えたせいだろう。」
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他の選考委員
田久保英夫
丸谷才一
日野啓三
大江健三郎
古井由吉
大庭みな子
三浦哲郎
河野多恵子
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選考委員
日野啓三男65歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
新しい芽はあるのだが…… 総行数27 (1行=24字)
候補 評価 行数 評言
内田春菊
女35歳
0  
伊達一行
男44歳
11 「われわれのイメージが比較的薄いマレーシアの人間、風土、対日感情などの実感を与えてくれる。」「だが血迷ったような感傷的美文調の文章が随所にあって、鼻白む。何か勘違いをしている。」
引間徹
男30歳
4 「若い世代らしい思いきった虚構の小説作りには目を見張った。」「だが(引用者中略)長過ぎて散漫」
三浦俊彦
男35歳
7 「若い世代らしい思いきった虚構の小説作りには目を見張った。」「文章には力がある。」「だが(引用者中略)結末は意外に凡庸だった。」
中村邦生
男48歳
7 「個人の輪郭と人間関係のあいまいさを、あいまいなままにリアルに描こうとした野心作に見えたが、短篇として仕組みがわざとらしく複雑である。文章の魅力がいまひとつ。」
  「候補作五篇、それぞれに個性的な試み、独自な効果をもちながら、受賞作として積極的に推すには、一個の作品としてのまとまりが足らなかった、と残念だった。」
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他の選考委員
田久保英夫
丸谷才一
黒井千次
大江健三郎
古井由吉
大庭みな子
三浦哲郎
河野多恵子
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選考委員
大江健三郎男59歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
中途半端でなく 総行数25 (1行=24字)
候補 評価 行数 評言
内田春菊
女35歳
0  
伊達一行
男44歳
7 「東南アジアでの日本人と現地人との関係について、情報は豊かだし、人物もよく選ばれている。ところが、物語をのべてゆく文章が、タイトルにもあらわだけれど、こなれの悪い美文調なのだ。」
引間徹
男30歳
6 「人物の設定も物語の場所も魅力があるのに、そこで展開されるアジア論はとおりいっぺんだし、後半、罠にとらえられた人物らの動きは、罠ともども、いかにもこしらえものである。」
三浦俊彦
男35歳
4 「筒井康隆が伐り開いた、言葉の自律性のみが原理の奇想の世界が継承されている。しかしそこに鈍い非文学の文章が随所にまじっている。」
中村邦生
男48歳
0  
  「この回の候補作の多くに、同一の不思議さを感じた。作品が力作(原文傍点)であるほど、これは文藝誌の編集者の協同によって、あと一、二度書きなおせば完成した小説になるのに、と。」
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他の選考委員
田久保英夫
丸谷才一
黒井千次
日野啓三
古井由吉
大庭みな子
三浦哲郎
河野多恵子
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選考委員
古井由吉男57歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
選評 総行数27 (1行=24字)
候補 評価 行数 評言
内田春菊
女35歳
0  
伊達一行
男44歳
0  
引間徹
男30歳
10 「私は(引用者中略)推した。作者が悪戦苦闘しているその相手が、どうやら《空白》そのものであるらしいということに、私なりに感ずるところがあった。」「構成の手ごたえよりも、どこまで行っても確かなものに触れぬその徒労絶望を、文章のはしゃぎに変えて押しまくった。作品の仕舞いでようやく叫びが立った。その声が私には聞こえた。幽霊とは騒がしいものである。」
三浦俊彦
男35歳
6 「(引用者注:「地下鉄の軍曹」の次に)推した。」「《無・意・味》をつぎつぎに投げこんでいるところに、私は気迫を感じた。」「《意味》に捕まるまいと、大わらわである。喰い物を投げ散らしながら悪鬼から逃げる話が思い出された。しかし追いかける鬼の相貌がやや稚く見えた。」
中村邦生
男48歳
0  
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他の選考委員
田久保英夫
丸谷才一
黒井千次
日野啓三
大江健三郎
大庭みな子
三浦哲郎
河野多恵子
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選考委員
大庭みな子女64歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
執念の期待 総行数19 (1行=24字)
候補 評価 行数 評言
内田春菊
女35歳
0  
伊達一行
男44歳
0  
引間徹
男30歳
0  
三浦俊彦
男35歳
0  
中村邦生
男48歳
0  
  「三十歳から五十歳くらいまでの人たちの作品を五本読んで、この年代の人たちがじっとみつめている目の前をわたる風の中の景色と、現代テクノロジーの生み出す感性に頷きながらも、わびしい想いをつのらせた。」「この一作を推そうというものを選べなかった。」「とは言え、どの作品からも習作の段階でもがいている感じは確かに伝わってくるから、現代に生きる者の唯一の希望ともいえる文学に、執念深く期待するしかない。」
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他の選考委員
田久保英夫
丸谷才一
黒井千次
日野啓三
大江健三郎
古井由吉
三浦哲郎
河野多恵子
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選考委員
三浦哲郎男63歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
感想 総行数27 (1行=24字)
候補 評価 行数 評言
内田春菊
女35歳
0  
伊達一行
男44歳
18 「大きな期待をもって読んだ。」「いかにもこの作者らしいスケールの大きさだが、そのせっかくの構想をしばしば冗漫にも退屈にも疎ましくも感じさせているのは、以前にはなかった変に凝った美文調の文章である。」「力まず、気取らずに、自分の言葉で普通に書けばよかったのに。」
引間徹
男30歳
0  
三浦俊彦
男35歳
0  
中村邦生
男48歳
7 「冷静で機知に富んだ作風に好感を抱いた。」「読後すこしとりとめのない感じがする。それよりもなによりも、この主人公は一体どういう性格の人間なのかが最後までわからなくて、困った。」
  「芥川賞が望ましくない方向へそれてきたような気がする。」
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他の選考委員
田久保英夫
丸谷才一
黒井千次
日野啓三
大江健三郎
古井由吉
大庭みな子
河野多恵子
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選考委員
河野多恵子女68歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
感想 総行数26 (1行=24字)
候補 評価 行数 評言
内田春菊
女35歳
0  
伊達一行
男44歳
0  
引間徹
男30歳
4 「(引用者注:三浦俊彦と共に)今度の候補作では共に前作以上に頑張り、だがその分だけ作品の質が下がるという痛ましいことになっていた。」
三浦俊彦
男35歳
3 「(引用者注:引間徹と共に)今度の候補作では共に前作以上に頑張り、だがその分だけ作品の質が下がるという痛ましいことになっていた。」
中村邦生
男48歳
0  
  「いずれの作品も、作者の精いっぱいの頑張りを感じさせる。それなのに、受賞作が得られない。要するに、暢気すぎるのである。創作ということについて、深く考えていないとみえる。ただ頑張れば、何かが生まれてくると思っているかのようである。」「よい小説を書こうと思えば、最初の一行、少くとも数行で、作者とその作品の特質が早くも屹立していなければならない。」
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他の選考委員
田久保英夫
丸谷才一
黒井千次
日野啓三
大江健三郎
古井由吉
大庭みな子
三浦哲郎
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候補者・作品
内田春菊女35歳×各選考委員 
「キオミ」
短篇 61
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
田久保英夫
男66歳
0  
丸谷才一
男69歳
0  
黒井千次
男62歳
3 「必要なことだけを書く作品の短さに好感を持ちつつも、その軽快さが何かを取り落しているのではないか、と危ぶまれた。」
日野啓三
男65歳
0  
大江健三郎
男59歳
0  
古井由吉
男57歳
0  
大庭みな子
女64歳
0  
三浦哲郎
男63歳
0  
河野多恵子
女68歳
0  
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他の候補作
伊達一行
「光の形象」
引間徹
「地下鉄の軍曹」
三浦俊彦
「蜜林レース」
中村邦生
「ドッグ・ウォーカー」
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候補者・作品
伊達一行男44歳×各選考委員 
「光の形象」
中篇 189
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
田久保英夫
男66歳
12 「かつての作家なら、「私小説」にも書きうる素材だが、これはストーリー・テリングで進めて、その面では巧い。しかし、巧みに物語を進めるほど、訴求力を失うのは小説のふしぎだ。」「今日の日本人と、東南アジア人との関わり方を考えさせるのが、大きな手柄だと思う。」
丸谷才一
男69歳
0  
黒井千次
男62歳
6 「マレーシア現地の人々の動きは興味深く伝わって来るのに、文章が不自然に大仰な言葉に傾き、結末もそれまでの展開を受け止め切れずに尻すぼまりである。」
日野啓三
男65歳
11 「われわれのイメージが比較的薄いマレーシアの人間、風土、対日感情などの実感を与えてくれる。」「だが血迷ったような感傷的美文調の文章が随所にあって、鼻白む。何か勘違いをしている。」
大江健三郎
男59歳
7 「東南アジアでの日本人と現地人との関係について、情報は豊かだし、人物もよく選ばれている。ところが、物語をのべてゆく文章が、タイトルにもあらわだけれど、こなれの悪い美文調なのだ。」
古井由吉
男57歳
0  
大庭みな子
女64歳
0  
三浦哲郎
男63歳
18 「大きな期待をもって読んだ。」「いかにもこの作者らしいスケールの大きさだが、そのせっかくの構想をしばしば冗漫にも退屈にも疎ましくも感じさせているのは、以前にはなかった変に凝った美文調の文章である。」「力まず、気取らずに、自分の言葉で普通に書けばよかったのに。」
河野多恵子
女68歳
0  
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他の候補作
内田春菊
「キオミ」
引間徹
「地下鉄の軍曹」
三浦俊彦
「蜜林レース」
中村邦生
「ドッグ・ウォーカー」
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候補者・作品
引間徹男30歳×各選考委員 
「地下鉄の軍曹」
中篇 275
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
田久保英夫
男66歳
0  
丸谷才一
男69歳
12 「期待に反した失敗作です。書く必要のない小説だつた。」「『19分25秒』のスポーツと違つて、この作品であつかつてゐる戦争は、作者にとつて切実なものでないらしい。ただ冗漫で退屈なだけでした。書く必要がないと評するゆゑんです。属望する新人に向つてかういふことを言はなければならない不運を嘆く。」
黒井千次
男62歳
7 「野心的な力作ではある。しかしどう考えても作品は不要に長く、また現在の側から過去に迫る営為が弱いために意図倒れに終っている。」
日野啓三
男65歳
4 「若い世代らしい思いきった虚構の小説作りには目を見張った。」「だが(引用者中略)長過ぎて散漫」
大江健三郎
男59歳
6 「人物の設定も物語の場所も魅力があるのに、そこで展開されるアジア論はとおりいっぺんだし、後半、罠にとらえられた人物らの動きは、罠ともども、いかにもこしらえものである。」
古井由吉
男57歳
10 「私は(引用者中略)推した。作者が悪戦苦闘しているその相手が、どうやら《空白》そのものであるらしいということに、私なりに感ずるところがあった。」「構成の手ごたえよりも、どこまで行っても確かなものに触れぬその徒労絶望を、文章のはしゃぎに変えて押しまくった。作品の仕舞いでようやく叫びが立った。その声が私には聞こえた。幽霊とは騒がしいものである。」
大庭みな子
女64歳
0  
三浦哲郎
男63歳
0  
河野多恵子
女68歳
4 「(引用者注:三浦俊彦と共に)今度の候補作では共に前作以上に頑張り、だがその分だけ作品の質が下がるという痛ましいことになっていた。」
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他の候補作
内田春菊
「キオミ」
伊達一行
「光の形象」
三浦俊彦
「蜜林レース」
中村邦生
「ドッグ・ウォーカー」
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候補者・作品
三浦俊彦男35歳×各選考委員 
「蜜林レース」
短篇 147
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
田久保英夫
男66歳
0  
丸谷才一
男69歳
0  
黒井千次
男62歳
3 「各場面の光景はどぎつく力感に溢れても、そのイメージの質にばらつきがあり、遊びが浮き上り過ぎている。」
日野啓三
男65歳
7 「若い世代らしい思いきった虚構の小説作りには目を見張った。」「文章には力がある。」「だが(引用者中略)結末は意外に凡庸だった。」
大江健三郎
男59歳
4 「筒井康隆が伐り開いた、言葉の自律性のみが原理の奇想の世界が継承されている。しかしそこに鈍い非文学の文章が随所にまじっている。」
古井由吉
男57歳
6 「(引用者注:「地下鉄の軍曹」の次に)推した。」「《無・意・味》をつぎつぎに投げこんでいるところに、私は気迫を感じた。」「《意味》に捕まるまいと、大わらわである。喰い物を投げ散らしながら悪鬼から逃げる話が思い出された。しかし追いかける鬼の相貌がやや稚く見えた。」
大庭みな子
女64歳
0  
三浦哲郎
男63歳
0  
河野多恵子
女68歳
3 「(引用者注:引間徹と共に)今度の候補作では共に前作以上に頑張り、だがその分だけ作品の質が下がるという痛ましいことになっていた。」
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他の候補作
内田春菊
「キオミ」
伊達一行
「光の形象」
引間徹
「地下鉄の軍曹」
中村邦生
「ドッグ・ウォーカー」
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候補者・作品
中村邦生男48歳×各選考委員 
「ドッグ・ウォーカー」
短篇 142
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
田久保英夫
男66歳
27 「私は(引用者中略)眼をひかれた。」「都会で、さまざまな他人と関わりつつ暮す人間として、こういう生の逆説的な対処法(引用者注:「決断」より、誠実に「その場しのぎ」をする)を認めるか認めないかは、興味深い主題だ。」「全体にインテリ臭い意識の屈折の出すぎるのが欠点だ。それが作品の狙いを見えにくくしてしまう。けれども私は、現代小説にこうした独特な静かな音律のような語り口があっていい、と思い、あえて一票を投じたが、残念ながら多くの支持を得られなかった。」
丸谷才一
男69歳
15 「小説の本道をゆかうとしてゐます。つまり人間の出会ひと別れによる物語を書いて、その形づくる意匠のおもしろさを示し、あはよくば人間について探求しようとしてゐる。かういふ正統的な態度は推奨されて然るべきでせう。」「欠点はいろいろあるし、受賞に至らなかつたのは当然だと思ふが、しかしここでは長所だけを言つて置きます。」
黒井千次
男62歳
3 「捉え難いものを捉えようとする模索は面白いが、全体があまりに淡い印象しか残さない。」
日野啓三
男65歳
7 「個人の輪郭と人間関係のあいまいさを、あいまいなままにリアルに描こうとした野心作に見えたが、短篇として仕組みがわざとらしく複雑である。文章の魅力がいまひとつ。」
大江健三郎
男59歳
0  
古井由吉
男57歳
0  
大庭みな子
女64歳
0  
三浦哲郎
男63歳
7 「冷静で機知に富んだ作風に好感を抱いた。」「読後すこしとりとめのない感じがする。それよりもなによりも、この主人公は一体どういう性格の人間なのかが最後までわからなくて、困った。」
河野多恵子
女68歳
0  
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他の候補作
内田春菊
「キオミ」
伊達一行
「光の形象」
引間徹
「地下鉄の軍曹」
三浦俊彦
「蜜林レース」
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