芥川賞のすべて・のようなもの
第110回
  • =受賞者=
  • 奥泉 光
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Last Update[H29]2017/1/26

奥泉光
Okuizumi Hikaru
生没年月日【注】 昭和31年/1956年2月6日~
受賞年齢 37歳11ヵ月
経歴 本名=奥泉康弘。山形県東田川郡三川町生まれ、埼玉県所沢市育ち。国際基督教大学人文科学科卒、同大学院比較文化研究科博士前期課程修了。
受賞歴・候補歴
  • |候補| 第9回すばる文学賞(昭和60年/1985年)「地の鳥 天の魚群」奥泉康弘名義
  • |候補| 第3回三島由紀夫賞(平成1年/1989年度)「滝」
  • |候補| 第103回芥川賞(平成2年/1990年上期)「滝」
  • |候補| 第4回三島由紀夫賞(平成2年/1990年度)「葦と百合」
  • |候補| 第106回芥川賞(平成3年/1991年下期)「暴力の舟」
  • |候補| 第14回野間文芸新人賞(平成4年/1992年)『蛇を殺す夜』
  • |候補| 第108回芥川賞(平成4年/1992年下期)「三つ目の鯰」
  • 瞠目反・文学賞(平成5年/1993年)「ノヴァーリスの引用」
  • |候補| 第6回三島由紀夫賞(平成4年/1992年度)『ノヴァーリスの引用』
  • 第15回野間文芸新人賞(平成5年/1993年)『ノヴァーリスの引用』
  • 第110回芥川賞(平成5年/1993年下期)「石の来歴」
  • |候補| 第22回平林たい子文学賞[小説部門](平成6年/1994年)『バナールな現象』
  • |候補| 第24回平林たい子文学賞[小説部門](平成8年/1996年)『『吾輩は猫である』殺人事件』
  • |候補| 第52回日本推理作家協会賞[長編部門](平成11年/1999年)『グランド・ミステリー』
  • |候補| 第22回日本SF大賞(平成13年/2001年)『鳥類学者のファンタジア』
  • |候補| 第55回日本推理作家協会賞[長編部門](平成14年/2002年)『鳥類学者のファンタジア』
  • |候補| 第25回日本SF大賞(平成16年/2004年)『新・地底旅行』
  • 第62回野間文芸賞(平成21年/2009年)『神器 軍艦「橿原」殺人事件』
  • |第5位| 第8回2011年本屋大賞(平成23年/2011年)『シューマンの指』
  • |候補| 第37回川端康成文学賞(平成23年/2011年)「変身の書架」
  • |候補| 第38回川端康成文学賞(平成24年/2012年)「Metamorphosis」
  • 第50回谷崎潤一郎賞(平成26年/2014年)『東京自叙伝』
芥川賞
選考委員歴
第147回~(通算5年・10回)
備考
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芥川賞 第103回候補  一覧へ

たき
滝」(『すばる』平成2年/1990年4月号)
媒体・作品情報
誌名 「すばる」  別表記奥付 「昴」併記
巻号 第12巻 第4号  別表記4月号
印刷/発行年月日 発行 平成2年/1990年4月1日
発行者等 編集者 加藤康男 発行者 岡田朴 印刷所 大日本印刷株式会社
発行所 株式会社集英社(東京都)
総ページ数 336 表記上の枚数 基本の文字組
(1ページ当り)
26字
×24行
×2段
本文ページ 36~100
(計65頁)
測定枚数 196
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書誌
>>平成2年/1990年10月・集英社刊『滝』所収
>>平成5年/1993年8月・集英社/集英社文庫『その言葉を』所収
>>平成17年/2005年10月・新潮社/新潮文庫『北村薫のミステリー館』所収
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候補者 奥泉光 男34歳
選考委員 評価 行数 評言
大江健三郎
男55歳
5 「プロットの進め方、日本的な神秘思想の説明の仕方が着実で、独自の個性を納得させる。」
三浦哲郎
男59歳
0  
日野啓三
男61歳
0  
丸谷才一
男64歳
0  
古井由吉
男52歳
5 「宗教の、初期教団についての社会学の筋から読むと、はなはだ興味深い、そして酷い内容の小説であった。」
河野多恵子
女64歳
5 「少年たちの信仰心の実態も少しは知りたく、また綿密な計算を頼りすぎ、恐らく作者の気づいていない通俗性が生じている。」
田久保英夫
男62歳
0  
大庭みな子
女59歳
0  
黒井千次
男58歳
0  
吉行淳之介
男66歳
0  
選評出典:『芥川賞全集 第十五巻』平成14年/2002年4月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成2年/1990年9月号)
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芥川賞 第106回候補  一覧へ

ぼうりょく ふね
暴力の 舟」(『すばる』平成3年/1991年11月号)
媒体・作品情報
誌名 「すばる」  別表記奥付 「昴」併記
巻号 第13巻 第11号  別表記11月号
印刷/発行年月日 発行 平成3年/1991年11月1日
発行者等 編集者 狩野伸洋 発行者 岡田朴 印刷所 大日本印刷株式会社
発行所 株式会社集英社(東京都)
総ページ数 368 表記上の枚数 基本の文字組
(1ページ当り)
26字
×25行
×2段
本文ページ 92~161
(計70頁)
測定枚数 216
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書誌
>>平成4年/1992年9月・集英社刊『蛇を殺す夜』所収
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候補者 奥泉光 男35歳
選考委員 評価 行数 評言
大江健三郎
男56歳
12 「主題性の強い筋が通っている。風変りな人物にリアリティーをあたえるための学生仲間の談論も、一時期の大学に確かに見られた種類だろう。」「そこで問題となるのが、こうした談論もまた作品の一部分であり小説の言葉になっていなければ読み手を索然たらしめてしまう、ということである。」
大庭みな子
女61歳
0  
吉行淳之介
男67歳
0  
田久保英夫
男63歳
9 「おのずから相手の暴力を誘発する男を、「理想社会」やマルクスの「宗教は阿片」という観念を背負わせて描き、今日あまり類のない世界を展開している。」「こういう人間たちの造型には、作者の側にたしかな形而上学が必要ではなかろうか。」
黒井千次
男59歳
7 「力作であり、主題と腕力に惹かれたが、土俗的なものの扱いが中途半端に終った。過去の出来事を振り返る形で書かれている以上、語り手の現在がどのようなものであるのかも気にかかる。」「しかし、時代に向き合おうとする作者の姿勢は支持したい。」
古井由吉
男54歳
34 「アナクロニズムの域にまで古び形骸化したとき、ようやく典型として現にあらわれる時代の人間像というものは、やはりあるのだろうな、と考えさせた」「しかも愉快な人物像ではない。」「このような人物を非共感的に、(引用者中略)この人物こそ、その度しがたき《言葉》もふくめて、それなりに純正であったという、かならずしも救いでなく、憂鬱なる是認に至る。」「ここまで漕ぎつけたのは、この作品の手柄だと思われる。」
河野多恵子
女65歳
5 「作者の問題意識の表現に鮮やかさが欠ける。思考のエネルギーに較べて、文学的エネルギーは不足しており、文章にしても真の活力に欠ける、鈍いものだと思った。」
三浦哲郎
男60歳
0  
日野啓三
男62歳
33 「今回は大方の賛同を得られないことを覚悟の上で、敢えて(引用者中略)推した。」「今回の候補作中、最も枚数が長かったのに、退屈することなく読み続けさせる妙な力があった。」「粗い文章と雑な構成にもかかわらず、主人公の魅力が強く心に残った。男というのは観念的な孤独なイキモノなのだ。」
丸谷才一
男66歳
7 「前半は、期待するに足る新人だと思つた。現代日本人を俎上にのせようとして努力してゐる。」「しかし後半はいけない。話がでたらめになつてゐる。こんな手抜きをするやうでは、登場人物たちのいい加減さをからかふ資格はないのである。」
選評出典:『芥川賞全集 第十六巻』平成14年/2002年6月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成4年/1992年3月号)
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芥川賞 第108回候補  一覧へ

なまず
三つ 目の 鯰」(『文學界』平成4年/1992年12月号)
媒体・作品情報
誌名 「文學界」
巻号 第46巻 第12号  別表記12月号
印刷/発行年月日 発行 平成4年/1992年12月1日
発行者等 編集人 重松 卓 発行人 内藤 厚 印刷人 北島義俊 印刷所 大日本印刷株式会社
発行所 株式会社文藝春秋(東京都)
総ページ数 424 表記上の枚数 基本の文字組
(1ページ当り)
26字
×25行
×2段
本文ページ 116~168
(計53頁)
測定枚数 167
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書誌
>>平成6年/1994年3月・文藝春秋刊『石の来歴』所収
>>平成9年/1997年2月・文藝春秋/文春文庫『石の来歴』所収
>>平成18年/2006年5月・埼玉福祉会/大活字本シリーズ『石の来歴』所収
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候補者 奥泉光 男36歳
選考委員 評価 行数 評言
河野多恵子
女66歳
11 「二作(引用者注:「三つ目の鯰」と「犬婿入り」)が最後に残った時、私は消極的ながら前者(引用者注:「三つ目の鯰」)に票を入れた。以前の二度の候補作に較べて、知識や思考を生で出すまいと努力していることがよく分ったからである。しかし、この人の作品は常にあまりにも長すぎる。そして、小説の創造は表現によるもので、説明によるものではないことを、この人には一度よく考えてもらいたい。」
丸谷才一
男67歳
10 「風俗と社会を結びつけようとしてゐるのがいい。」「たとえば『ヨブ記』の結末についての会話など、微笑を誘ふに足りた。しかし観念のほうとなると、ずいぶん曖昧で取りとめがない。それに、彼らがなぜ信仰を必要としてゐるのかを書き落してゐるため、小説の骨組が弱くなつてゐる。」
大江健三郎
男57歳
10 「これまでの候補作において、それぞれに異なるスタイルを使いこなし、なりたちは観念的な主題を、小説らしい構想におきかえる能力はきわだっている。それでいて魅力ある小説とはまた別だ。」
大庭みな子
女62歳
13 「わたしはごく自然に読み、前回まで何度か候補作に残っていた作品の、女には想像しにくい、多分、生理的に男性的な世界の絵解きをされたような気分があった。だが、他の選考委員の方々の明快な解説を聞いているうちに、不可解な魅力が遠のいていく感じがあった。」
吉行淳之介
男68歳
7 「粘り強い思考の連続、(引用者中略)良いところがあった。ただ、残念なことに、(引用者注:他の候補作と共に)いろいろの意味で意味不明のところがあり、それも肝腎のところがそうなのだ。」
黒井千次
男60歳
10 「夫婦や親子の枠を破る親戚小説として注目した。奥泉氏のこれまでの候補作に見られた強い観念性が、一族の血の繋りという環の中で別の姿を見せ始める気配に好感を抱いた。」「ただ、目の三つある鯰にイメージを喚起する力の弱い点は気にかかったが。」
古井由吉
男55歳
33 「奥泉氏のこれまで二回の候補作を選考委員諸氏の不評の中で推した私が、このたびは諸氏の比較的好評の中で、評価をやや控えるかたちになった。作品が深みへ踏み入ろうとするところで、テーマが微妙に破れたのではないか、と私は考えるのだ。」「高目の要求が動いて、選考途中では評価を留保ぎみになったが、最終的には受賞にふさわしい作品と、私は判断した。」
田久保英夫
男64歳
20 「最も眼をひかれたのは、奥泉光氏の「三つ目の鯰」だが、それでも、もう一つ積極的に推しきれないものがあった。」「「三つ目」の鯰を見た者は父親だけ、という不確定の幅や、キリスト教など、合理とそれを超える世界を使って、主題を補強しているし、何か所かおもしろい情景もある。」「ただこの作品は、若い主人公が主体的な行為者より、叙述者の方へ傾きすぎて、その叙述がつぎつぎと細かく枝分れし、肝心の焦点が鈍ってしまっている。」
日野啓三
男63歳
12 「最初読んだとき、素直によくわかった。傷のないのが傷だと思うくらい。だが再読して、一回目以上の発見がないのだ。」「これまでのこの人の作品には、不可解な情念の噴出のようなものがあったのに。ただ荒地の宗教キリスト教をめぐる、この作家のよい意味の観念性には私は興味をもっている。」
三浦哲郎
男61歳
12 「筆力の旺盛さは認める。また、風景描写にも見るべきものがあった。けれども、この作者には言葉を惜しむことをおぼえさせたい。あまりにも多く書きすぎて、作品の焦点がぼやけ、印象が散漫になっているのだ。」
選評出典:『芥川賞全集 第十六巻』平成14年/2002年6月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成5年/1993年3月号)
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芥川賞 第110受賞  一覧へ

いし らいれき
石の 来歴」(『文學界』平成5年/1993年12月号)
媒体・作品情報
誌名 「文學界」
巻号 第47巻 第12号  別表記12月号
印刷/発行年月日 発行 平成5年/1993年12月1日
発行者等 編集人 重松 卓 発行人 田所省治 印刷人 北島義俊 印刷所 大日本印刷株式会社
発行所 株式会社文藝春秋(東京都)
総ページ数 456 表記上の枚数 基本の文字組
(1ページ当り)
26字
×24行
×2段
本文ページ 144~197
(計54頁)
測定枚数 162
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書誌
>>『文藝春秋』平成6年/1994年3月号
>>平成6年/1994年3月・文藝春秋刊『石の来歴』所収
>>平成9年/1997年2月・文藝春秋/文春文庫『石の来歴』所収
>>平成14年/2002年6月・文藝春秋刊『芥川賞全集 第16巻』所収
>>平成18年/2006年5月・埼玉福祉会/大活字本シリーズ『石の来歴』所収
>>平成21年/2009年12月・講談社/講談社文芸文庫『石の来歴/浪漫的な行軍の記録』所収
>>平成23年/2011年11月・集英社刊『コレクション戦争と文学13 死者たちの語り:冥』所収
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候補者 奥泉光 男37歳
選考委員 評価 行数 評言
大江健三郎
男58歳
15 「これまでの氏の力作と並び、創作意図は強くつらぬかれている。こうしてみれば、講談調にうわずる文体も粗雑な細部も、つまりは氏の個性なのだ。それを見きわめての、氏の剛腕への評価は、選考会でよく納得できた。したがって授賞に積極的な反対はしない。」
大庭みな子
女63歳
12 「「石」というものを中心に据えて、石の叫びを聞こうとするところに、今までよりぐっと突き進んだ深さを感じた。しかし、私としてはわからない部分もかなりあり、判断に苦しんだが、(引用者中略)闇と光の間を、今後もがきながら進むことでむしろ作品としての力が加わるのではないか。」
丸谷才一
男68歳
7 「この前の『三つ目の鯰』のほうがよかつた。登場人物が生き生きしてゐたし、ゆつたりした感じで呼吸してゐて、親愛感をいだくことができた。」「受賞はまことにめでたいことだが、これを機会にあの『三つ目の鯰』の調子に戻つてもらひたいと思ふ。」
吉行淳之介
男69歳
6 「(引用者注:奥泉光の作品には)いつもその腕力と言葉の氾濫に負けそうになっていたが、今回は素直に降参することにした。」
日野啓三
男64歳
13 「受賞は、私としては少し意外でもあり、また当然であるようにも思えた。この作品にはこれまでの氏の作品と同じように、あるいはそれ以上の力がある。」「書物から集めた戦場の情景や地質学的知識などを承知の上で使い、それらを講談調の物語形式で強引につなぎ合わせてゆく観念の腕力。それはこの数年間の受賞作に目だった内向きの繊細な感性の求心力とは、違うヴェクトルである。」
田久保英夫
男65歳
5 「候補四回目の実績や能力が、認められたといえよう。」「今度の作品は、言葉の過剰な使い方、何人も殺し殺される話のつくりすぎ、反面で中心の殺人事件の曖昧さなど、私にはうけ入れかねた。」
黒井千次
男61歳
17 「才能とか資質という言葉よりも、力量という表現のまず頭に浮かぶ」「石への執念、誰が誰を殺したかという疑惑などがストーリーを強引に押し進めて行く展開には、読者を引きずり込む力が認められる。それでいて、どこかにふと寂しい風の吹き抜ける気配もある。」「この作品を受賞作として推すことに躊躇いはなかった。」
三浦哲郎
男62歳
12 「読後の疲労感はこれまでよりも快かったといっていい。これはおそらく、この作者の持ち味である淀みのない語りくち、読ませる力、読者を引きずっていく力技に、いよいよ磨きがかかってきた証拠かと思われる。」「多少強引にすぎるところ、どぎつさが目立つところがなきにしもあらずだが、この光彩に満ちた文章力は顕彰されてしかるべきだろう。」
河野多恵子
女67歳
7 「人を殺した者のその後の様相を捉えている。」「結末で、(引用者中略)石に全編が重層的抽象性をもって結ばれており、標題の中心の意味もその石にある。読み終えてみて、見事な題であることがよく判った。」
古井由吉
男56歳
17 「われもまた死の専制の下にありき、というようなエピグラムを、私なら振りたくなるところだ。」「石が人の生死を超越した救済の光を真に放つためには、いま一度、死の専制が出現しなくてはならぬ、とそんな運命のけはいである。」「ある情熱(ルビ:パトス)が作家に呼びかける。世の至るところから叫び立てているようにさえ感じられるが、さてその情熱にふさわしい運命の形を周囲に見つけ出すことはむずかしい。」「途上の作だが、受賞はよろこぶべきだ。」
選評出典:『芥川賞全集 第十六巻』平成14年/2002年6月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成6年/1994年3月号)
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