芥川賞のすべて・のようなもの
第122回
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平成11年/1999年下半期
(平成12年/2000年1月14日決定発表/『文藝春秋』平成12年/2000年3月号選評掲載)
選考委員  池澤夏樹
男54歳
黒井千次
男67歳
三浦哲郎
男68歳
田久保英夫
男71歳
石原慎太郎
男67歳
古井由吉
男62歳
河野多恵子
女73歳
宮本輝
男52歳
日野啓三
男70歳
選評総行数  33 36 34 38 45 36 36 35  
選評なし
候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数
玄月 「蔭の棲みか」
125
男34歳
11 12 7 10 11 0 7 7    
藤野千夜 「夏の約束」
128
男→女37歳
11 15 19 10 8 0 16 8    
吉田修一 「突風」
82
男31歳
0 0 0 0 2 0 0 0    
宮沢章夫 「サーチエンジン・システムクラッシュ」
195
男43歳
0 6 8 0 0 0 0 3    
濱田順子 「Tiny,tiny」
110
女25歳
0 0 0 0 5 0 0 0    
赤坂真理 「ミューズ」
158
女35歳
0 3 0 10 3 0 0 0    
楠見朋彦 「零歳の詩人」
201
男27歳
11 0 0 7 5 36 0 4    
                欠席
年齢/枚数の説明   見方・注意点

このページの選評出典:『芥川賞全集 第十八巻』平成14年/2002年10月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成12年/2000年3月号)
1行当たりの文字数:24字


選考委員
池澤夏樹男54歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
まったく違う傾向の三作 総行数33 (1行=24字)
候補 評価 行数 評言
玄月
男34歳
11 「秀作である。」「周囲の人物の配置もいいし、野球の使いかたもうまい。なによりも主人公ソバンの、臆しながらも時として意地を見せる、そしてすぐにまたそれを引っ込める、柔軟というかいい加減というか、その性格が好ましい。」「受賞に値する作であると考えて推した。」
藤野千夜
男→女37歳
11 「気持ちのよい作品である。」「しかしマルオとヒカルが同性愛者であることはこの軽さにどう関わるか。女の前で肩を張って男を演じる必要がないからマルオは飄々としているのか。それともさんざ迫害された果ての達観なのか。」「もう少し歯ごたえがほしいとも思ったが、受賞に反対はしない。」
吉田修一
男31歳
0  
宮沢章夫
男43歳
0  
濱田順子
女25歳
0  
赤坂真理
女35歳
0  
楠見朋彦
男27歳
11 「ぼくには最もおもしろかった。」「敢えてリアリティーのないそのレポートの積み重ねが、通奏低音のような効果を上げて、残酷もまた想像力の産物であることを教える。欠陥はいろいろあるが、ボディーはしっかりしている。このような創作の姿勢は注目に値する。」
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他の選考委員
黒井千次
三浦哲郎
田久保英夫
石原慎太郎
古井由吉
河野多恵子
宮本輝
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選考委員
黒井千次男67歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
静かな力と重い力 総行数36 (1行=24字)
候補 評価 行数 評言
玄月
男34歳
12 「読みながら、魯迅の「阿Q正伝」を思い出した。」「相対化された、時間と民族の絡み合いの中を生きる七十代半ばの主人公の姿がくっきりと描き出されているだけに、読む側は重い石を手渡された印象を受ける。」
藤野千夜
男→女37歳
15 「決して閉鎖的な同性愛者の世界が描かれるわけではない。むしろその周辺に、世間の約束事とは少しずつずれた場で生きる二十代の人間達が寄り集り、不思議に自由で伸びやかな生活空間を生み出している様が面白い。」「その開かれた雰囲気が作品の風通しをよくし、普遍へと通じる道筋を示している。」
吉田修一
男31歳
0  
宮沢章夫
男43歳
6 「モノと意味とのせめぎ合いを捉えようとする試みに注目したが、人物の出し入れなどに演劇的な手付きの見え過ぎる難があり、いささか冗長の感も否めず、支持は得られなかった。」
濱田順子
女25歳
0  
赤坂真理
女35歳
3 「作りに無理がある。歯列矯正という折角の面白い素材を活かし切れなかったのが残念だ。」
楠見朋彦
男27歳
0  
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他の選考委員
池澤夏樹
三浦哲郎
田久保英夫
石原慎太郎
古井由吉
河野多恵子
宮本輝
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選考委員
三浦哲郎男68歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
感想 総行数34 (1行=24字)
候補 評価 行数 評言
玄月
男34歳
7 「前作の「おっぱい」に比べれば内容も文章も格段に重厚さを増していることは認めるものの、正直いって私にはよくわからないところの多い作品であった。」「残念なことにソバンの哀しみや憤りに胸を打たれるまでには至らなかった。」
藤野千夜
男→女37歳
19 「出色のできばえだと思った。」「一見、無造作に楽々と書かれたような平明な文章が、よく読んでみると注意深く選んだ言葉でしっかり編まれていて味わい深いのは、前作「恋の休日」の場合と同様である。」「私は、この作品にごく普通に生きている人間の体温を感じて心が安らぐのをおぼえた。」
吉田修一
男31歳
0  
宮沢章夫
男43歳
8 「饒舌で長すぎたと思う。」「いつまでもおなじことの繰り返しだから、しまいには飽きて失速した。」「芝居でもそうだろうが、小説も途中で客を退屈させてはいけないのである。」
濱田順子
女25歳
0  
赤坂真理
女35歳
0  
楠見朋彦
男27歳
0  
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他の選考委員
池澤夏樹
黒井千次
田久保英夫
石原慎太郎
古井由吉
河野多恵子
宮本輝
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選考委員
田久保英夫男71歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
着実な作品 総行数38 (1行=24字)
候補 評価 行数 評言
玄月
男34歳
10 「正攻法の現実的な筆致で、大阪の在日朝鮮人の生き証人のような老人を、着実に描き出していた。」「戦争で手首を落し、集落に六十八年暮した老人には、無為の果ての悲哀が滲み、しだいに時代と国との重い奥行きを見せる。しかし、ボランティアにくる日本人女性の肉づけが弱い。」
藤野千夜
男→女37歳
10 「相当な力量だが、しかし、こんなに平明な世界で、口あたりがよくていいのか、とも思えてくる。あるいはホモの人たち同士の、あるいは私たち外側の人間への、一脈ぎくっとするような毒気も出ていいはずではないか。」
吉田修一
男31歳
0  
宮沢章夫
男43歳
0  
濱田順子
女25歳
0  
赤坂真理
女35歳
10 「体の部分の具体的な言葉を使い、そこから発するイメージを果敢に拡げて、男の体を含めた異物への身体感覚をつよく表現している。私はそれがこの女性だけの持つ豊かなイメージに、変換することに注目したが、しかし、その思いきりよさが、ときに奇異な文脈になり、風俗的な露骨な言葉も生んで、作を損なっている。」
楠見朋彦
男27歳
7 「三人の視点の転換や描法に、作為感は隠せない。」「無残なイメージの断章が、(引用者中略)作者の立つ表現の場の曖昧さを見せている。」
  「私には特に力を入れて推す作品がなかった。」
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他の選考委員
池澤夏樹
黒井千次
三浦哲郎
石原慎太郎
古井由吉
河野多恵子
宮本輝
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選考委員
石原慎太郎男67歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
輝き無し 総行数45 (1行=24字)
候補 評価 行数 評言
玄月
男34歳
11 「読み物として一番面白く読んだが、またかという感を否めない。」「作者が何を訴えようとしているのかがわからない。その限りでこれはただの風俗小説の域を出ていない。」「こうした社会の最底辺に近い世界を舞台とする作品としては、先に直木賞を受賞した車谷長吉氏の作品の方がはるかに優れて怖いものだった。」
藤野千夜
男→女37歳
8 「私にはあくまで一人の読者として何の感興も湧いてこない。平凡な出来事の中で描いてホモを定着させることが新しい文学の所産とも一向に思わない。私にはただただ退屈でしかなかった。」
吉田修一
男31歳
2 「スケッチの域を出ず話の芯が希薄である。」
宮沢章夫
男43歳
0  
濱田順子
女25歳
5 「出だしは期待させるが段々に冗漫となり退屈だ。」「会話の中に文字の代わりにハートの記号をしきりに使って読者に勝手に読ませようというのは、技巧というよりもつまらぬ試みでしかない。」
赤坂真理
女35歳
3 「一見手のこんだ小道具で、ある感覚の領域を描こうとしているようだが、出来は薄い。」
楠見朋彦
男27歳
5 「その背景にちゃちな観念が露呈していて所詮造りもの、嘘の印象を否めない。」「死者の首をボールにしたててするサッカーゲームの件なぞ何の象徴にもなり得ていない。」
  「現代の新しい文学を造り出そうという新しい作家たちに新鮮な輝きが乏しいというのは、いかなる理由によるものか折節に考えさせられる。」「物を書くというのはかなり厄介な仕事だが、それまでしての作業の中で、それぞれの人生の中での抜き差しならぬ主題を収斂して選ぶという作業そのものが、情報の氾濫の中で杜撰なものになってしまっているのではないかという気がする。」
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他の選考委員
池澤夏樹
黒井千次
三浦哲郎
田久保英夫
古井由吉
河野多恵子
宮本輝
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選考委員
古井由吉男62歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
あぶない試み 総行数36 (1行=24字)
候補 評価 行数 評言
玄月
男34歳
0  
藤野千夜
男→女37歳
0  
吉田修一
男31歳
0  
宮沢章夫
男43歳
0  
濱田順子
女25歳
0  
赤坂真理
女35歳
0  
楠見朋彦
男27歳
36 「私は授賞可能の作品として推した。しかし、あぶない作品だとも思った。」「それなりの手続きは踏まれているのだ。語り手を三人に分けたのも、そのひとつである。さらに第四の「語り手」もある。」「流血の地の与太話を思わせるものでも、それが「兵」たちのすだんだ心と口から出たものなら、それなりの現実である。迫害を恐れる者にとっては、ほとんど現実である。」
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他の選考委員
池澤夏樹
黒井千次
三浦哲郎
田久保英夫
石原慎太郎
河野多恵子
宮本輝
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選考委員
河野多恵子女73歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
二受賞者について 総行数36 (1行=24字)
候補 評価 行数 評言
玄月
男34歳
7 「前候補作「おっぱい」よりも確実に進歩を感じさせる。文章に筆力が備わってきた。」「ただ、標題にも自ら表われているように思えるのだが、描かれている世界に、雰囲気として、そこを越えて行く力の漲り方が足りない。が、そういう点も遠からず克服できそうな作者である。」
藤野千夜
男→女37歳
16 「前候補作「恋の休日」に感じた文章のよい粘着力やさりげなくて鋭い表現力が、今回の「夏の約束」では一層生きるようになった。男性同性愛者たちのカップルや性転換者の交友をこだわりなく描いて、雰囲気に広がりがある。彼等は世間の差別的な視線とうまく折合いをつけている。」「しかし、差別的視線の弛みは、世間の寛大化や理解度の深まりの結果などではない。何事も相対化してしまう、今日の風潮の結果に外ならない。」
吉田修一
男31歳
0  
宮沢章夫
男43歳
0  
濱田順子
女25歳
0  
赤坂真理
女35歳
0  
楠見朋彦
男27歳
0  
  「勿論、この賞でも、他の新人賞でも、英語だけの標題であろうと、選者は優れた作品は推す。私の見るところでは、近年殖えている英語だけの標題の作品にはとかく、創作衝動微弱、醗酵不足、熟考不足のままで書きだした(ワープロを打ちはじめた)気配のものが多いのである。」
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他の選考委員
池澤夏樹
黒井千次
三浦哲郎
田久保英夫
石原慎太郎
古井由吉
宮本輝
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選考委員
宮本輝男52歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
将来に期待して 総行数35 (1行=24字)
候補 評価 行数 評言
玄月
男34歳
7 「前作の「おっぱい」とは比べものにならないほどに腕を上げていた。」「(引用者注:在日朝鮮人の)同じ民族間におけるギャップを、丁寧なディテールによって描写した。演説でも説明でもなく「描写」した点を私は推した。」
藤野千夜
男→女37歳
8 「一読するとあまりにも軽すぎて、これではいささか……と首をかしげそうになるのだが、このように軽妙に書ける技量の背後には、したたかな文章技術というツボを刺す長い鍼が、本人が意識するしないにかかわらず隠されているものだ。」
吉田修一
男31歳
0  
宮沢章夫
男43歳
3 「ある時期一時代を風靡した前衛劇の手法を散文で試みているが、至るところで散漫だった。」
濱田順子
女25歳
0  
赤坂真理
女35歳
0  
楠見朋彦
男27歳
4 「ユーゴ紛争の陰惨な光景をこれでもかと書きつづけていくうちに、なぜか対岸の火事を見る者の揶揄の言葉と堕し始めて、鼻白んでしまった。」
  「芥川賞の選考にあたる者が軽々しく口にできる言葉ではないことを承知しながらも、私は今回、あらためて人間の運とか巡り合わせといったものについて考えざるを得なかった。」
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他の選考委員
池澤夏樹
黒井千次
三浦哲郎
田久保英夫
石原慎太郎
古井由吉
河野多恵子
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受賞者・作品
玄月男34歳×各選考委員 
「蔭の棲みか」
短篇 125
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
池澤夏樹
男54歳
11 「秀作である。」「周囲の人物の配置もいいし、野球の使いかたもうまい。なによりも主人公ソバンの、臆しながらも時として意地を見せる、そしてすぐにまたそれを引っ込める、柔軟というかいい加減というか、その性格が好ましい。」「受賞に値する作であると考えて推した。」
黒井千次
男67歳
12 「読みながら、魯迅の「阿Q正伝」を思い出した。」「相対化された、時間と民族の絡み合いの中を生きる七十代半ばの主人公の姿がくっきりと描き出されているだけに、読む側は重い石を手渡された印象を受ける。」
三浦哲郎
男68歳
7 「前作の「おっぱい」に比べれば内容も文章も格段に重厚さを増していることは認めるものの、正直いって私にはよくわからないところの多い作品であった。」「残念なことにソバンの哀しみや憤りに胸を打たれるまでには至らなかった。」
田久保英夫
男71歳
10 「正攻法の現実的な筆致で、大阪の在日朝鮮人の生き証人のような老人を、着実に描き出していた。」「戦争で手首を落し、集落に六十八年暮した老人には、無為の果ての悲哀が滲み、しだいに時代と国との重い奥行きを見せる。しかし、ボランティアにくる日本人女性の肉づけが弱い。」
石原慎太郎
男67歳
11 「読み物として一番面白く読んだが、またかという感を否めない。」「作者が何を訴えようとしているのかがわからない。その限りでこれはただの風俗小説の域を出ていない。」「こうした社会の最底辺に近い世界を舞台とする作品としては、先に直木賞を受賞した車谷長吉氏の作品の方がはるかに優れて怖いものだった。」
古井由吉
男62歳
0  
河野多恵子
女73歳
7 「前候補作「おっぱい」よりも確実に進歩を感じさせる。文章に筆力が備わってきた。」「ただ、標題にも自ら表われているように思えるのだが、描かれている世界に、雰囲気として、そこを越えて行く力の漲り方が足りない。が、そういう点も遠からず克服できそうな作者である。」
宮本輝
男52歳
7 「前作の「おっぱい」とは比べものにならないほどに腕を上げていた。」「(引用者注:在日朝鮮人の)同じ民族間におけるギャップを、丁寧なディテールによって描写した。演説でも説明でもなく「描写」した点を私は推した。」
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他の候補作
藤野千夜
「夏の約束」
吉田修一
「突風」
宮沢章夫
「サーチエンジン・システムクラッシュ」
濱田順子
「Tiny,tiny」
赤坂真理
「ミューズ」
楠見朋彦
「零歳の詩人」
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受賞者・作品
藤野千夜男→女37歳×各選考委員 
「夏の約束」
短篇 128
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
池澤夏樹
男54歳
11 「気持ちのよい作品である。」「しかしマルオとヒカルが同性愛者であることはこの軽さにどう関わるか。女の前で肩を張って男を演じる必要がないからマルオは飄々としているのか。それともさんざ迫害された果ての達観なのか。」「もう少し歯ごたえがほしいとも思ったが、受賞に反対はしない。」
黒井千次
男67歳
15 「決して閉鎖的な同性愛者の世界が描かれるわけではない。むしろその周辺に、世間の約束事とは少しずつずれた場で生きる二十代の人間達が寄り集り、不思議に自由で伸びやかな生活空間を生み出している様が面白い。」「その開かれた雰囲気が作品の風通しをよくし、普遍へと通じる道筋を示している。」
三浦哲郎
男68歳
19 「出色のできばえだと思った。」「一見、無造作に楽々と書かれたような平明な文章が、よく読んでみると注意深く選んだ言葉でしっかり編まれていて味わい深いのは、前作「恋の休日」の場合と同様である。」「私は、この作品にごく普通に生きている人間の体温を感じて心が安らぐのをおぼえた。」
田久保英夫
男71歳
10 「相当な力量だが、しかし、こんなに平明な世界で、口あたりがよくていいのか、とも思えてくる。あるいはホモの人たち同士の、あるいは私たち外側の人間への、一脈ぎくっとするような毒気も出ていいはずではないか。」
石原慎太郎
男67歳
8 「私にはあくまで一人の読者として何の感興も湧いてこない。平凡な出来事の中で描いてホモを定着させることが新しい文学の所産とも一向に思わない。私にはただただ退屈でしかなかった。」
古井由吉
男62歳
0  
河野多恵子
女73歳
16 「前候補作「恋の休日」に感じた文章のよい粘着力やさりげなくて鋭い表現力が、今回の「夏の約束」では一層生きるようになった。男性同性愛者たちのカップルや性転換者の交友をこだわりなく描いて、雰囲気に広がりがある。彼等は世間の差別的な視線とうまく折合いをつけている。」「しかし、差別的視線の弛みは、世間の寛大化や理解度の深まりの結果などではない。何事も相対化してしまう、今日の風潮の結果に外ならない。」
宮本輝
男52歳
8 「一読するとあまりにも軽すぎて、これではいささか……と首をかしげそうになるのだが、このように軽妙に書ける技量の背後には、したたかな文章技術というツボを刺す長い鍼が、本人が意識するしないにかかわらず隠されているものだ。」
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他の候補作
玄月
「蔭の棲みか」
吉田修一
「突風」
宮沢章夫
「サーチエンジン・システムクラッシュ」
濱田順子
「Tiny,tiny」
赤坂真理
「ミューズ」
楠見朋彦
「零歳の詩人」
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候補者・作品
吉田修一男31歳×各選考委員 
「突風」
短篇 82
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
池澤夏樹
男54歳
0  
黒井千次
男67歳
0  
三浦哲郎
男68歳
0  
田久保英夫
男71歳
0  
石原慎太郎
男67歳
2 「スケッチの域を出ず話の芯が希薄である。」
古井由吉
男62歳
0  
河野多恵子
女73歳
0  
宮本輝
男52歳
0  
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他の候補作
玄月
「蔭の棲みか」
藤野千夜
「夏の約束」
宮沢章夫
「サーチエンジン・システムクラッシュ」
濱田順子
「Tiny,tiny」
赤坂真理
「ミューズ」
楠見朋彦
「零歳の詩人」
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候補者・作品
宮沢章夫男43歳×各選考委員 
「サーチエンジン・システムクラッシュ」
中篇 195
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
池澤夏樹
男54歳
0  
黒井千次
男67歳
6 「モノと意味とのせめぎ合いを捉えようとする試みに注目したが、人物の出し入れなどに演劇的な手付きの見え過ぎる難があり、いささか冗長の感も否めず、支持は得られなかった。」
三浦哲郎
男68歳
8 「饒舌で長すぎたと思う。」「いつまでもおなじことの繰り返しだから、しまいには飽きて失速した。」「芝居でもそうだろうが、小説も途中で客を退屈させてはいけないのである。」
田久保英夫
男71歳
0  
石原慎太郎
男67歳
0  
古井由吉
男62歳
0  
河野多恵子
女73歳
0  
宮本輝
男52歳
3 「ある時期一時代を風靡した前衛劇の手法を散文で試みているが、至るところで散漫だった。」
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他の候補作
玄月
「蔭の棲みか」
藤野千夜
「夏の約束」
吉田修一
「突風」
濱田順子
「Tiny,tiny」
赤坂真理
「ミューズ」
楠見朋彦
「零歳の詩人」
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候補者・作品
濱田順子女25歳×各選考委員 
「Tiny,tiny」
短篇 110
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
池澤夏樹
男54歳
0  
黒井千次
男67歳
0  
三浦哲郎
男68歳
0  
田久保英夫
男71歳
0  
石原慎太郎
男67歳
5 「出だしは期待させるが段々に冗漫となり退屈だ。」「会話の中に文字の代わりにハートの記号をしきりに使って読者に勝手に読ませようというのは、技巧というよりもつまらぬ試みでしかない。」
古井由吉
男62歳
0  
河野多恵子
女73歳
0  
宮本輝
男52歳
0  
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他の候補作
玄月
「蔭の棲みか」
藤野千夜
「夏の約束」
吉田修一
「突風」
宮沢章夫
「サーチエンジン・システムクラッシュ」
赤坂真理
「ミューズ」
楠見朋彦
「零歳の詩人」
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候補者・作品
赤坂真理女35歳×各選考委員 
「ミューズ」
中篇 158
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
池澤夏樹
男54歳
0  
黒井千次
男67歳
3 「作りに無理がある。歯列矯正という折角の面白い素材を活かし切れなかったのが残念だ。」
三浦哲郎
男68歳
0  
田久保英夫
男71歳
10 「体の部分の具体的な言葉を使い、そこから発するイメージを果敢に拡げて、男の体を含めた異物への身体感覚をつよく表現している。私はそれがこの女性だけの持つ豊かなイメージに、変換することに注目したが、しかし、その思いきりよさが、ときに奇異な文脈になり、風俗的な露骨な言葉も生んで、作を損なっている。」
石原慎太郎
男67歳
3 「一見手のこんだ小道具で、ある感覚の領域を描こうとしているようだが、出来は薄い。」
古井由吉
男62歳
0  
河野多恵子
女73歳
0  
宮本輝
男52歳
0  
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他の候補作
玄月
「蔭の棲みか」
藤野千夜
「夏の約束」
吉田修一
「突風」
宮沢章夫
「サーチエンジン・システムクラッシュ」
濱田順子
「Tiny,tiny」
楠見朋彦
「零歳の詩人」
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候補者・作品
楠見朋彦男27歳×各選考委員 
「零歳の詩人」
中篇 201
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
池澤夏樹
男54歳
11 「ぼくには最もおもしろかった。」「敢えてリアリティーのないそのレポートの積み重ねが、通奏低音のような効果を上げて、残酷もまた想像力の産物であることを教える。欠陥はいろいろあるが、ボディーはしっかりしている。このような創作の姿勢は注目に値する。」
黒井千次
男67歳
0  
三浦哲郎
男68歳
0  
田久保英夫
男71歳
7 「三人の視点の転換や描法に、作為感は隠せない。」「無残なイメージの断章が、(引用者中略)作者の立つ表現の場の曖昧さを見せている。」
石原慎太郎
男67歳
5 「その背景にちゃちな観念が露呈していて所詮造りもの、嘘の印象を否めない。」「死者の首をボールにしたててするサッカーゲームの件なぞ何の象徴にもなり得ていない。」
古井由吉
男62歳
36 「私は授賞可能の作品として推した。しかし、あぶない作品だとも思った。」「それなりの手続きは踏まれているのだ。語り手を三人に分けたのも、そのひとつである。さらに第四の「語り手」もある。」「流血の地の与太話を思わせるものでも、それが「兵」たちのすだんだ心と口から出たものなら、それなりの現実である。迫害を恐れる者にとっては、ほとんど現実である。」
河野多恵子
女73歳
0  
宮本輝
男52歳
4 「ユーゴ紛争の陰惨な光景をこれでもかと書きつづけていくうちに、なぜか対岸の火事を見る者の揶揄の言葉と堕し始めて、鼻白んでしまった。」
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他の候補作
玄月
「蔭の棲みか」
藤野千夜
「夏の約束」
吉田修一
「突風」
宮沢章夫
「サーチエンジン・システムクラッシュ」
濱田順子
「Tiny,tiny」
赤坂真理
「ミューズ」
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