芥川賞のすべて・のようなもの
第127回
  • =受賞者=
  • 吉田修一
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吉田修一
Yoshida Shuichi
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生没年月日【注】 昭和43年/1968年9月14日~
受賞年齢 33歳10ヵ月
経歴 長崎県長崎市生まれ。法政大学経営学部卒。
アルバイト生活を送り、20代前半から小説を書き始める。
受賞歴・候補歴
  • |候補| 第82回文學界新人賞(平成8年/1996年)「Water」
  • 第84回文學界新人賞(平成9年/1997年)「最後の息子」
  • |候補| 第117回芥川賞(平成9年/1997年上期)「最後の息子」
  • |候補| 第118回芥川賞(平成9年/1997年下期)「破片」
  • |候補| 第122回芥川賞(平成11年/1999年下期)「突風」
  • |候補| 第124回芥川賞(平成12年/2000年下期)「熱帯魚」
  • |候補| 第23回野間文芸新人賞(平成13年/2001年)『熱帯魚』
  • 第15回山本周五郎賞(平成13年/2001年度)『パレード』
  • 第127回芥川賞(平成14年/2002年上期)「パーク・ライフ」
  • 第61回毎日出版文化賞[文学・芸術部門](平成19年/2007年)『悪人』
  • 第34回大佛次郎賞(平成19年/2007年)『悪人』
  • |第4位| 第5回2008年本屋大賞(平成20年/2008年)『悪人』
  • |第3位| 第7回2010年本屋大賞(平成22年/2010年)『横道世之介』
  • 第23回柴田錬三郎賞(平成22年/2010年)『横道世之介』
  • |第6位| 第12回2015年本屋大賞(平成27年/2015年)『怒り』
備考
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芥川賞 第117回候補  一覧へ

さいご むすこ
最後の 息子」(『文學界』平成9年/1997年6月号)
媒体・作品情報
誌名 「文學界」
巻号 第51巻 第6号  別表記6月号
印刷/発行年月日 発行 平成9年/1997年6月1日
発行者等 編集人 庄野音比古 発行人 中井 勝 印刷人 北島義俊 印刷所 大日本印刷株式会社
発行所 株式会社文藝春秋(東京都)
総ページ数 392 表記上の枚数 基本の文字組
(1ページ当り)
27字
×25行
×2段
本文ページ 28~61
(計34頁)
測定枚数 110
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書誌
>>平成11年/1999年7月・文藝春秋刊『最後の息子』所収
>>平成14年/2002年8月・文藝春秋/文春文庫『最後の息子』所収
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候補者 吉田修一 男28歳
選考委員 評価 行数 評言
丸谷才一
男71歳
4 「心に残つたが、しかしこれについて何か言ふためには、もう一作読みたいやうな気がする。」
日野啓三
男68歳
4 「(引用者注:佐藤亜有子と共に)新しい回路を手探りし始めている。」「内地の現代小説が、二十代の新しい作家の方法的冒険から始まる予感もある。」
黒井千次
男65歳
5 「観察、演技、記録など様々な要素が絡まり合う中に、男と男の共棲が描かれて作者の才気が感じられる。」
田久保英夫
男69歳
0  
河野多恵子
女71歳
4 「よかった。ホモを扱いながら、からりとしており、微妙な屈折を明快な表現で存分に伝える技はなかなかのものである。」
宮本輝
男50歳
0  
池澤夏樹
男52歳
15 「細部はうまいのだが、主題にもう一つ強さがない。この場合、風俗のレベルを一歩だけでも超えて欲しいのだ。今の都会の生活は、男性の同性愛者同士のカップルという設定でさえ、こんなものなのだろうか。」
古井由吉
男59歳
0  
石原慎太郎
男64歳
0  
選評出典:『芥川賞全集 第十八巻』平成14年/2002年10月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成9年/1997年9月号)
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芥川賞 第118回候補  一覧へ

はへん
破片」(『文學界』平成9年/1997年9月号)
媒体・作品情報
誌名 「文學界」
巻号 第51巻 第9号  別表記9月号
印刷/発行年月日 発行 平成9年/1997年9月1日
発行者等 編集人 庄野音比古 発行人 阿部達児 印刷人 北島義俊 印刷所 大日本印刷株式会社
発行所 株式会社文藝春秋(東京都)
総ページ数 392 表記上の枚数 基本の文字組
(1ページ当り)
27字
×25行
×2段
本文ページ 134~171
(計38頁)
測定枚数 123
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書誌
>>平成11年/1999年7月・文藝春秋刊『最後の息子』所収
>>平成14年/2002年8月・文藝春秋/文春文庫『最後の息子』所収
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候補者 吉田修一 男29歳
選考委員 評価 行数 評言
丸谷才一
男72歳
0  
石原慎太郎
男65歳
5 「たいそう読みやすくある種の納得もあるのだが、それが、一つの文学に触れ得たというカタルシスにまでなり切れない。」
古井由吉
男60歳
5 「下の息子の哀しい性(ルビ:さが)も伝わり、佳篇となる要素も備わった。しかし作者の欲求は、好短篇をモノするというのと、別なところにあったのではないか。」
日野啓三
男68歳
6 「細部は良く描けているが、連関を失った破片から美しいものを創造しようとするメッセージの描き方に自信と力が欲しい。」
田久保英夫
男69歳
3 「母の不在感がよく出ているが、技巧的な手つきが逆に訴求力を削ぐ。」
河野多恵子
女71歳
5 「最も完成度が高かった。」「ただ、張りが足りない。しかし、前回の候補作「最後の息子」が示していた資質のよさは今度の作品にも表われている。」
三浦哲郎
男66歳
4 「地方都市を舞台にある男所帯の暮らしぶりを味わい深く描いていた「破片」の作者に、ひとこと次作を楽しみにしていると伝えたい。」
黒井千次
男65歳
4 「地方都市の男世帯の生活感覚と青年の鬱屈に実感がこもっている。しかしこのくすんだような絵には、画面から突き上げる輝きが不足している。」
宮本輝
男50歳
5 「内容がどうのこうのと言う前に、この題のあまりの工夫のなさにあきれる。」「読後、何の感動もなかった。」
池澤夏樹
男52歳
3 「「女なき男たち」というヘミングウェイ風の主題がもう一つくっきり見えない。」
選評出典:『芥川賞全集 第十八巻』平成14年/2002年10月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成10年/1998年3月号)
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芥川賞 第122回候補  一覧へ

とっぷう
突風」(『文學界』平成11年/1999年12月号)
媒体・作品情報
誌名 「文學界」
巻号 第53巻 第12号  別表記12月号
印刷/発行年月日 発行 平成11年/1999年12月1日
発行者等 編集人 細井秀雄 発行人 湯川 豊 印刷人 北島義俊 印刷所 大日本印刷株式会社
発行所 株式会社文藝春秋(東京都)
総ページ数 328 表記上の枚数 基本の文字組
(1ページ当り)
27字
×25行
×2段
本文ページ 90~115
(計26頁)
測定枚数 82
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書誌
>>平成13年/2001年1月・文藝春秋刊『熱帯魚』所収
>>平成15年/2003年6月・文藝春秋/文春文庫『熱帯魚』所収
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候補者 吉田修一 男31歳
選考委員 評価 行数 評言
池澤夏樹
男54歳
0  
黒井千次
男67歳
0  
三浦哲郎
男68歳
0  
田久保英夫
男71歳
0  
石原慎太郎
男67歳
2 「スケッチの域を出ず話の芯が希薄である。」
古井由吉
男62歳
0  
河野多恵子
女73歳
0  
宮本輝
男52歳
0  
選評出典:『芥川賞全集 第十八巻』平成14年/2002年10月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成12年/2000年3月号)
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芥川賞 第124回候補  一覧へ

ねったいぎょ
熱帯魚」(『文學界』平成12年/2000年11月号)
媒体・作品情報
誌名 「文學界」
巻号 第54巻 第11号  別表記11月特大号
印刷/発行年月日 発行 平成12年/2000年11月1日
発行者等 編集人 細井秀雄 発行人 和田 宏 印刷人 北島義俊 印刷所 大日本印刷株式会社
発行所 株式会社文藝春秋(東京都)
総ページ数 392 表記上の枚数 目次 160枚 基本の文字組
(1ページ当り)
27字
×24行
×2段
本文ページ 10~63
(計54頁)
測定枚数 168
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書誌
>>平成13年/2001年1月・文藝春秋刊『熱帯魚』所収
>>平成15年/2003年6月・文藝春秋/文春文庫『熱帯魚』所収
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候補者 吉田修一 男32歳
選考委員 評価 行数 評言
三浦哲郎
男69歳
0  
宮本輝
男53歳
6 「これまでの氏の作品よりも格段に腕をあげている。それだけに、熱帯魚が何を意味するのか、(引用者中略)そこのところの散漫さが、余計に欠点として浮きあがってしまった。」
日野啓三
男71歳
3 「素直な記述であったが、プロの小説家としては素直なだけでは足りない。」
石原慎太郎
男68歳
0  
池澤夏樹
男55歳
0  
黒井千次
男68歳
0  
古井由吉
男63歳
0  
田久保英夫
男72歳
0  
河野多恵子
女74歳
4 「いつも人物の描き方に妙味があるが、設定あるいは作中の出来事に弱点があるせいか、手応えが充分ではない。」
村上龍
男48歳
17 「面白く読んだ。」「自然発生的に起こるエピソードにも、周囲の人々との会話にもリアリティを感じた。だが、同棲している子持ちの女性が、主人公に向かって最後にほうで言う台詞が致命的だったように思う。」「しかし、好きなディテールがたくさんあり、受賞に値する作品だと思ったので、わたしは一番に推した」
選評出典:『芥川賞全集 第十九巻』平成14年/2002年12月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成13年/2001年3月号)
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『パレード』(平成14年/2002年2月・幻冬舎刊)
書誌
>>平成16年/2004年4月・幻冬舎/幻冬舎文庫『パレード』
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他文学賞 山本周五郎賞 15受賞 一覧へ
候補者 吉田修一 男33歳
選考委員 評価 行数 評言
長部日出雄
男67歳
20 3.5点「最初に読んだときは、才気が弾けていて、今の若い世代の生活実感というものがよく伝わってきて、一気に読んで、これは四点だなと思ったんです。」「この軽さはとてもいいんですけど、その底にもっと辛辣な目と批評精神がほしかったと思いました。」
北原亞以子
女64歳
17 4.5点「非常に巧みな構成だと思いました。」「いちばんしっかりしていた人が実は通り魔だったというのも恐ろしいんですけれども、それに気づいていながら一緒に暮らしていけるというところの恐ろしさ。そういうことも現代ではあるかな、と思いました。」
久世光彦
男67歳
26 4.5点「会話も含めての文章は、今回の候補作品の中で一等賞だと思います。センスも一等賞だと思います。」「最後のところがちょっと引っかかっていて、ちょっと大事件的に扱い過ぎというか、確かに大事件なんだけれども、この書きようから言ったら、もっと淡白なほうが素敵だったんじゃないかなと思うんです。」
花村萬月
男47歳
36 3.5点「読み進むうちに、これは文章の力であり、こういう小賢しいことをわざとやっているんだと気づきました。」「通り魔とか、要らなかったねえ。なぜこんなものを付け加えたのか。」「最後の女の顔をつぶす場面が非常に引っかかって、ここまで書ける人が、何でこんなつまらないことをしちゃったのかと気落ちしました。」
山田詠美
女43歳
56 5点「今、物語に頼りがちなエンターテインメントの小説が多い中、一つ一つものすごく文章にこだわった小説だと思うんです。」「恋愛を描いてとてもチャーミングな描写がたくさんあって、女性が主人公になっている章もあるんですけど、男の作家が書いているのに一つもブレがない。」「登場人物の一人一人が心の中で傷を持っているんだけど、純文学が陥りがちなトラウマに堕していない。」「虚無をセンティメントに反転させるのを臆面もなく書くのは恥ずかしいんですけれども、そういうことをちゃんと書くのは大切だと思うんですよ。」
選評出典:『小説新潮』平成14年/2002年7月号
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大衆選考会 127回推薦候補 一覧へ
大衆選考会での推薦
推薦者 推薦日 推薦文
kengo 平成14年/2002年6月22日 今回の中では「パレード」がとってもよかったと思います。立ち入らない関係を巧みに描いて、ホント面白かった。あとは山本周五郎賞をとったことがどう出るか…。
前に「血と骨」でしたっけ?選評に『山本賞を取ったことだし、W受賞させるほどの作品じゃない』みたいなこと言っている方いましたけど、それは絶対おかしいと思う。賞としての価値は断然上なんだし、そんな理由で取れないんだったら、山本賞なんか取らないほうがましってことになっちゃうんじゃないんですかねえ。
芥川賞候補作からずっと大好きな作家だし、ぜひ受賞して欲しいなあ。
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芥川賞 第127受賞  一覧へ
「パーク・ライフ」(『文學界』平成14年/2002年6月号)
媒体・作品情報
誌名 「文學界」
巻号 第56巻 第6号  別表記6月号
印刷/発行年月日 発行 平成14年/2002年6月1日
発行者等 編集人 細井秀雄 発行人 鈴木文彦 印刷人 北島義俊 印刷所 大日本印刷株式会社
発行所 株式会社文藝春秋(東京都)
総ページ数 392 表記上の枚数 目次 120枚 基本の文字組
(1ページ当り)
27字
×24行
×2段
本文ページ 20~59
(計40頁)
測定枚数 122
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書誌
>>平成14年/2002年8月・文藝春秋刊『パーク・ライフ』所収
>>『文藝春秋』平成14年/2002年9月号
>>平成15年/2003年4月・講談社刊『文学2003』所収
>>平成16年/2004年10月・文藝春秋/文春文庫『パーク・ライフ』所収
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候補者 吉田修一 男33歳
選考委員 評価 行数 評言
高樹のぶ子
女56歳
31 「無理がない。意図的に力を加えたり主張したり整えたりする作意が見えない。」「人間を見る目が随所で鋭く光り、たった一行で、さりげなく決定的なインパクトを読者に与える。」「それにしてもこの透明な気配はどこから来るのかと考え、若い主人公の周辺に性の煙霧が無いせいだと気付いた。性欲が無ければ、遠近のバランスや歪みや濃淡が消えて、文学はかくも見晴らしが良くなるのだ。」
黒井千次
男70歳
28 「他の候補作に擢んでる完成度が見られた。」「いわばライフのない場所でも現代のライフの光景が鮮やかに浮かび上っている。」「結末の女性の決断が具体的には何を示すかが不明であるにもかかわらず、公園を吹き抜けて去る爽やかな風の如くに読む者を打つ。」
河野多恵子
女76歳
32 「前回の候補作までは、途中で無意味な大迂回や出っ張りがあったり、要の位置がずれていたりして、折角の良さが充分に生きていなくて惜しまれた。」「「パーク・ライフ」の完成度はきわめて高い。」「人間が生きて在るとは、どういうことなのか。そのことがまことに伸びやかに、深く伝わってくる。」「秀作と呼ぶのに、何のためらいもない。」
宮本輝
男55歳
21 「最初の投票で、ああもうこの作品が受賞だなと選考委員すべてが思うほどに高得点だった。」「私には不満なところが多い。」「私は「ひとつのドラマ性」が欲しかった。吉田氏はあえて淡彩すぎる描き方をしたのであろうし、その意図は成功したようであるが、私はそこのところで、作者が力技から逃げたというふうに感じた。」
古井由吉
男64歳
53 「《主人公》としては、女性の名前を知らないのだから、《あなた》と言うよりほかにない。しかし普段なら、対者が誰であれ、《あなた》と呼ぶよりほかにない場面に立ち至ったなら、《主人公》はおそらく質問を銜んで口をつぐんだことだろう。始めに《あなた》なし、である。」「多くの若手の作家ができるだけかるく遊んで来た、問題(ルビ:プロブレム)である。しかしここでは眼がよほど綿密に、つれて重くなっている。」
石原慎太郎
男69歳
26 「なぜかどこか希薄な印象を否めない。」「しょせん擦れちがいの場でしかない大都会の公園における群像というのは洒落た設定なのに、その切り口が十全には生かされていない。だから強い驚きも共感も湧いてこない。」
三浦哲郎
男71歳
21 「いたく感心したので、躊躇なくこれを推した。ちかごろは、この『パーク・ライフ』のように隅々にまで小説の旨味が詰まっている作品に出会うことがむつかしくなった。元来小説というものがすべてそうであるべきなのに。」
村上龍
男50歳
20 「小細工や借り物のエピソードが一切なかった。」「作者は意識して偽物の緊張や恥ずかしい小細工を避けたのだ。その結果、吉田氏の作品は「何かが常に始まろうとしているが、まだ何も始まっていない」という、現代に特有の居心地の悪さと、不気味なユーモアと、ほんのわずかな、あるのかどうかさえはっきりしない希望のようなものを獲得することに成功している。」
池澤夏樹
男57歳
17 「ぼくはまったく評価できなかった。現代風俗のスケッチとしても、もう少し何か核になる話があってもよかったのではないか。」「この話の中のすべての会話を『イカロスの森』のターニャの挨拶一つと比べていただければぼくの真意は伝わるだろう。」
選評出典:『文藝春秋』平成14年/2002年9月号
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