芥川賞のすべて・のようなもの
第127回
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平成14年/2002年上半期
(平成14年/2002年7月17日決定発表/『文藝春秋』平成14年/2002年9月号選評掲載)
選考委員  高樹のぶ子
女56歳
黒井千次
男70歳
河野多恵子
女76歳
宮本輝
男55歳
古井由吉
男64歳
石原慎太郎
男69歳
三浦哲郎
男71歳
村上龍
男50歳
池澤夏樹
男57歳
日野啓三
男73歳
選評総行数  61 60 60 59 53 73 48 65 67  
選評なし
候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数
吉田修一 「パーク・ライフ」
122
男33歳
31 28 32 21 53 26 21 20 17    
黒川創 「イカロスの森」
248
男41歳
17 8 10 16 0 5 10 23 26    
佐川光晴 「縮んだ愛」
244
男37歳
0 4 7 0 0 0 9 0 0    
法月ゆり 「彼女のピクニック宣言」
106
女(39歳)
14 3 8 0 0 11 7 22 0    
星野智幸 「砂の惑星」
113
男37歳
0 5 5 0 0 0 0 23 12    
湯本香樹実 「西日の町」
139
女42歳
6 12 6 12 0 11 0 0 9    
            欠席
書面回答
  欠席
書面回答
欠席
年齢/枚数の説明   見方・注意点

このページの選評出典:『文藝春秋』平成14年/2002年9月号
1行当たりの文字数:14字


選考委員
高樹のぶ子女56歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
「そっと差し出された『今』」 総行数61 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
吉田修一
男33歳
31 「無理がない。意図的に力を加えたり主張したり整えたりする作意が見えない。」「人間を見る目が随所で鋭く光り、たった一行で、さりげなく決定的なインパクトを読者に与える。」「それにしてもこの透明な気配はどこから来るのかと考え、若い主人公の周辺に性の煙霧が無いせいだと気付いた。性欲が無ければ、遠近のバランスや歪みや濃淡が消えて、文学はかくも見晴らしが良くなるのだ。」
黒川創
男41歳
17 「別世界から日本や日本人や日本の現代史を眺めるまなざしに骨太なものを感じたが、擬音擬態語や体言止めの安易な文章で、損をした。テレビのドキュメンタリーに似た運びも、文学としての粘りに欠けて見えた。」
佐川光晴
男37歳
0  
法月ゆり
女(39歳)
14 「残念ながら前作に及ばなかった。最後に訪れる古城で何と出会うかが、このような「謎めいた」小説には決定的に重大で、読者に「なあんだ」と思わせては失敗である。」
星野智幸
男37歳
0  
湯本香樹実
女42歳
6 「人物造形が上手く、情景も迫ってくるが、主人公にとってこの過去がどんな意味を持つのかが見えてこない。」
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他の選考委員
黒井千次
河野多恵子
宮本輝
古井由吉
石原慎太郎
三浦哲郎
村上龍
池澤夏樹
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選考委員
黒井千次男70歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
ライフの様相 総行数60 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
吉田修一
男33歳
28 「他の候補作に擢んでる完成度が見られた。」「いわばライフのない場所でも現代のライフの光景が鮮やかに浮かび上っている。」「結末の女性の決断が具体的には何を示すかが不明であるにもかかわらず、公園を吹き抜けて去る爽やかな風の如くに読む者を打つ。」
黒川創
男41歳
8 「サハリンでのロシア人との交流は面白いのに、何故その土地を苦労して訪れねばならぬかの動機がはっきり掴めぬままに作品が終ってしまう。」
佐川光晴
男37歳
4 「末尾で主人公の教師が殺人容疑に問われるところで作品が一気に崩れてしまった。」
法月ゆり
女(39歳)
3 「ストーリーの辻褄合せが小説を壊している。」
星野智幸
男37歳
5 「自殺願望を抱く子供達に焦点を合わせてそこを突込んで欲しいと思った。道具立てが空転した。」
湯本香樹実
女42歳
12 「語り手である孫の目を通して祖父と母親との親子関係を見つめる、という視点に新鮮なものを感じた。」「ただ、大人になった語り手が登場すると違和感があり、なにか白けた気分を覚えるのが残念だった。」
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他の選考委員
高樹のぶ子
河野多恵子
宮本輝
古井由吉
石原慎太郎
三浦哲郎
村上龍
池澤夏樹
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選考委員
河野多恵子女76歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
秀作 総行数60 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
吉田修一
男33歳
32 「前回の候補作までは、途中で無意味な大迂回や出っ張りがあったり、要の位置がずれていたりして、折角の良さが充分に生きていなくて惜しまれた。」「「パーク・ライフ」の完成度はきわめて高い。」「人間が生きて在るとは、どういうことなのか。そのことがまことに伸びやかに、深く伝わってくる。」「秀作と呼ぶのに、何のためらいもない。」
黒川創
男41歳
10 「進歩はしているものの、あまりにも長すぎる。」「(引用者注:「縮んだ愛」と共に文量を)せめて半分以下にとどめておれば、本当に書くべきことも書き方も、もっと見出せていたと思われる。」
佐川光晴
男37歳
7 「(引用者注:「イカロスの森」と共に文量を)せめて半分以下にとどめておれば、本当に書くべきことも書き方も、もっと見出せていたと思われる。」
法月ゆり
女(39歳)
8 「冒頭には感心した」「描かれている主人公の一人旅に、それを超えた何かの手応えがほしかった。」
星野智幸
男37歳
5 「あれこれの思いつき程度のものが過度に頼りにされすぎている。」
湯本香樹実
女42歳
6 「細部に表現力に富んだ好もしい部分がいくつかあったが、全篇に向けられる視野が平面的に偏していて、主題が生きていない。」
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他の選考委員
高樹のぶ子
黒井千次
宮本輝
古井由吉
石原慎太郎
三浦哲郎
村上龍
池澤夏樹
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選考委員
宮本輝男55歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
「心」への衝動 総行数59 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
吉田修一
男33歳
21 「最初の投票で、ああもうこの作品が受賞だなと選考委員すべてが思うほどに高得点だった。」「私には不満なところが多い。」「私は「ひとつのドラマ性」が欲しかった。吉田氏はあえて淡彩すぎる描き方をしたのであろうし、その意図は成功したようであるが、私はそこのところで、作者が力技から逃げたというふうに感じた。」
黒川創
男41歳
16 「最後のターニャの言葉だけが尾を曳く。それ以外はただ冗長なだけである。」「擬音語を疑いもなく無神経に多用する人を、私は作家とは認めない。」
佐川光晴
男37歳
0  
法月ゆり
女(39歳)
0  
星野智幸
男37歳
0  
湯本香樹実
女42歳
12 「いちおう支持はしても、なにがなんでも受賞作にとまでは推しきれないものがこの作品にはある。少年の「僕」が祖父を透かして「母」を見ているのか、それともその逆なのか。その視点が定まっていないので、「僕」に血肉がかよってこない。」
  「近年、芥川賞の候補作品に幾分かの変化が見られるような気がする。無機的かつ機械的なものから有機的かつ心の奥へといった変化と言えば言えそうだ。」
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他の選考委員
高樹のぶ子
黒井千次
河野多恵子
古井由吉
石原慎太郎
三浦哲郎
村上龍
池澤夏樹
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選考委員
古井由吉男64歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
対者を求めて 総行数53 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
吉田修一
男33歳
53 「《主人公》としては、女性の名前を知らないのだから、《あなた》と言うよりほかにない。しかし普段なら、対者が誰であれ、《あなた》と呼ぶよりほかにない場面に立ち至ったなら、《主人公》はおそらく質問を銜んで口をつぐんだことだろう。始めに《あなた》なし、である。」「多くの若手の作家ができるだけかるく遊んで来た、問題(ルビ:プロブレム)である。しかしここでは眼がよほど綿密に、つれて重くなっている。」
黒川創
男41歳
0  
佐川光晴
男37歳
0  
法月ゆり
女(39歳)
0  
星野智幸
男37歳
0  
湯本香樹実
女42歳
0  
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他の選考委員
高樹のぶ子
黒井千次
河野多恵子
宮本輝
石原慎太郎
三浦哲郎
村上龍
池澤夏樹
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選考委員
石原慎太郎男69歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
底が浅い 総行数73 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
吉田修一
男33歳
26 「なぜかどこか希薄な印象を否めない。」「しょせん擦れちがいの場でしかない大都会の公園における群像というのは洒落た設定なのに、その切り口が十全には生かされていない。だから強い驚きも共感も湧いてこない。」
黒川創
男41歳
5 「(引用者注:「彼女のピクニック宣言」と共に)旅を主題にしてはいるがエクゾティズムを感じさせず、」
佐川光晴
男37歳
0  
法月ゆり
女(39歳)
11 「(引用者注:「イカロスの森」と共に)旅を主題にしてはいるがエクゾティズムを感じさせず、(引用者中略)異常な性愛によるトラウマなんぞも主題の一つとして組み込んではいても、ただ道具立ての域を出ずに作品の印象がいかにも浅い。」
星野智幸
男37歳
0  
湯本香樹実
女42歳
11 「家族の持て余し者の老人の姿を生き生き描き出してはいるが、それを語る孫の視点が虚弱で、例えば母親と祖父との微妙な関わりとの対照に同じ男同士としての、母親のそれとは異質の関わりが有り得ように、それは全く作者の考慮の外のものでしかなさそうだ。」
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他の選考委員
高樹のぶ子
黒井千次
河野多恵子
宮本輝
古井由吉
三浦哲郎
村上龍
池澤夏樹
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選考委員
三浦哲郎男71歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
感想 総行数48 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
吉田修一
男33歳
21 「いたく感心したので、躊躇なくこれを推した。ちかごろは、この『パーク・ライフ』のように隅々にまで小説の旨味が詰まっている作品に出会うことがむつかしくなった。元来小説というものがすべてそうであるべきなのに。」
黒川創
男41歳
10 「「もどろき」の柔軟さが影をひそめて、なにやら物々しげな思惑と文章の生硬さが目についた。」「肩の力を抜くことが肝心。」
佐川光晴
男37歳
9 「力作だが、(引用者中略)長い作品を書く者は、途中でいちどは立ち止まり、決しておもねるではなく、いま読者がどのような気持で自分の言葉に耳を傾けてくれているのかに思いを致す必要があろう。」
法月ゆり
女(39歳)
7 「ユニークな雰囲気を持つ作品ながら前作のような新鮮な驚きは得られなかった。」
星野智幸
男37歳
0  
湯本香樹実
女42歳
0  
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他の選考委員
高樹のぶ子
黒井千次
河野多恵子
宮本輝
古井由吉
石原慎太郎
村上龍
池澤夏樹
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選考委員
村上龍男50歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
選評 総行数65 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
吉田修一
男33歳
20 「小細工や借り物のエピソードが一切なかった。」「作者は意識して偽物の緊張や恥ずかしい小細工を避けたのだ。その結果、吉田氏の作品は「何かが常に始まろうとしているが、まだ何も始まっていない」という、現代に特有の居心地の悪さと、不気味なユーモアと、ほんのわずかな、あるのかどうかさえはっきりしない希望のようなものを獲得することに成功している。」
黒川創
男41歳
23 「シベリヤやサハリンが主要な舞台となっている」「海外を舞台にしてはいけないなどと思っているわけではない。」「そういった借り物のエピソードは、現代の日本との差異を際立たせ、偽物の緊張を作品に持ち込むことができる。現代に生きて、現代を書こうとする作家は、そういう恥ずかしい小細工を避けなければならない。」
佐川光晴
男37歳
0  
法月ゆり
女(39歳)
22 「アメリカ東海岸の歴史のある古そうな街が舞台だった。海外を舞台にしてはいけないなどと思っているわけではない。」「そういった借り物のエピソードは、現代の日本との差異を際立たせ、偽物の緊張を作品に持ち込むことができる。現代に生きて、現代を書こうとする作家は、そういう恥ずかしい小細工を避けなければならない。」
星野智幸
男37歳
23 「重要なエピソードの中にドミニカが登場する。」「海外を舞台にしてはいけないなどと思っているわけではない。」「そういった借り物のエピソードは、現代の日本との差異を際立たせ、偽物の緊張を作品に持ち込むことができる。現代に生きて、現代を書こうとする作家は、そういう恥ずかしい小細工を避けなければならない。」
湯本香樹実
女42歳
0  
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他の選考委員
高樹のぶ子
黒井千次
河野多恵子
宮本輝
古井由吉
石原慎太郎
三浦哲郎
池澤夏樹
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選考委員
池澤夏樹男57歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
ターニャの挨拶 総行数67 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
吉田修一
男33歳
17 「ぼくはまったく評価できなかった。現代風俗のスケッチとしても、もう少し何か核になる話があってもよかったのではないか。」「この話の中のすべての会話を『イカロスの森』のターニャの挨拶一つと比べていただければぼくの真意は伝わるだろう。」
黒川創
男41歳
26 「今回の候補作の中では(引用者中略)最も意に叶った。」「人物の造形がきちんとしていて、その造形に意味がある。」「最もめざましい場面は最後のターニャの挨拶。こういう姿勢で生きる人間を失ったのが今の日本だということをしみじみと教える見事なスピーチである。」
佐川光晴
男37歳
0  
法月ゆり
女(39歳)
0  
星野智幸
男37歳
12 「おもしろかった。あまりに作り物めいているという批判があることは充分に予想できるが、世の中には作り物でなければ伝えられない真実もある。」
湯本香樹実
女42歳
9 「細部まで丁寧でうまい。安心して読めるという点では今回の候補作の中で最も優れているが、しかし今ひとつ迫るものに欠ける。」
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他の選考委員
高樹のぶ子
黒井千次
河野多恵子
宮本輝
古井由吉
石原慎太郎
三浦哲郎
村上龍
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受賞者・作品
吉田修一男33歳×各選考委員 
「パーク・ライフ」
短篇 122
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
高樹のぶ子
女56歳
31 「無理がない。意図的に力を加えたり主張したり整えたりする作意が見えない。」「人間を見る目が随所で鋭く光り、たった一行で、さりげなく決定的なインパクトを読者に与える。」「それにしてもこの透明な気配はどこから来るのかと考え、若い主人公の周辺に性の煙霧が無いせいだと気付いた。性欲が無ければ、遠近のバランスや歪みや濃淡が消えて、文学はかくも見晴らしが良くなるのだ。」
黒井千次
男70歳
28 「他の候補作に擢んでる完成度が見られた。」「いわばライフのない場所でも現代のライフの光景が鮮やかに浮かび上っている。」「結末の女性の決断が具体的には何を示すかが不明であるにもかかわらず、公園を吹き抜けて去る爽やかな風の如くに読む者を打つ。」
河野多恵子
女76歳
32 「前回の候補作までは、途中で無意味な大迂回や出っ張りがあったり、要の位置がずれていたりして、折角の良さが充分に生きていなくて惜しまれた。」「「パーク・ライフ」の完成度はきわめて高い。」「人間が生きて在るとは、どういうことなのか。そのことがまことに伸びやかに、深く伝わってくる。」「秀作と呼ぶのに、何のためらいもない。」
宮本輝
男55歳
21 「最初の投票で、ああもうこの作品が受賞だなと選考委員すべてが思うほどに高得点だった。」「私には不満なところが多い。」「私は「ひとつのドラマ性」が欲しかった。吉田氏はあえて淡彩すぎる描き方をしたのであろうし、その意図は成功したようであるが、私はそこのところで、作者が力技から逃げたというふうに感じた。」
古井由吉
男64歳
53 「《主人公》としては、女性の名前を知らないのだから、《あなた》と言うよりほかにない。しかし普段なら、対者が誰であれ、《あなた》と呼ぶよりほかにない場面に立ち至ったなら、《主人公》はおそらく質問を銜んで口をつぐんだことだろう。始めに《あなた》なし、である。」「多くの若手の作家ができるだけかるく遊んで来た、問題(ルビ:プロブレム)である。しかしここでは眼がよほど綿密に、つれて重くなっている。」
石原慎太郎
男69歳
26 「なぜかどこか希薄な印象を否めない。」「しょせん擦れちがいの場でしかない大都会の公園における群像というのは洒落た設定なのに、その切り口が十全には生かされていない。だから強い驚きも共感も湧いてこない。」
三浦哲郎
男71歳
21 「いたく感心したので、躊躇なくこれを推した。ちかごろは、この『パーク・ライフ』のように隅々にまで小説の旨味が詰まっている作品に出会うことがむつかしくなった。元来小説というものがすべてそうであるべきなのに。」
村上龍
男50歳
20 「小細工や借り物のエピソードが一切なかった。」「作者は意識して偽物の緊張や恥ずかしい小細工を避けたのだ。その結果、吉田氏の作品は「何かが常に始まろうとしているが、まだ何も始まっていない」という、現代に特有の居心地の悪さと、不気味なユーモアと、ほんのわずかな、あるのかどうかさえはっきりしない希望のようなものを獲得することに成功している。」
池澤夏樹
男57歳
17 「ぼくはまったく評価できなかった。現代風俗のスケッチとしても、もう少し何か核になる話があってもよかったのではないか。」「この話の中のすべての会話を『イカロスの森』のターニャの挨拶一つと比べていただければぼくの真意は伝わるだろう。」
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他の候補作
黒川創
「イカロスの森」
佐川光晴
「縮んだ愛」
法月ゆり
「彼女のピクニック宣言」
星野智幸
「砂の惑星」
湯本香樹実
「西日の町」
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候補者・作品
黒川創男41歳×各選考委員 
「イカロスの森」
中篇 248
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
高樹のぶ子
女56歳
17 「別世界から日本や日本人や日本の現代史を眺めるまなざしに骨太なものを感じたが、擬音擬態語や体言止めの安易な文章で、損をした。テレビのドキュメンタリーに似た運びも、文学としての粘りに欠けて見えた。」
黒井千次
男70歳
8 「サハリンでのロシア人との交流は面白いのに、何故その土地を苦労して訪れねばならぬかの動機がはっきり掴めぬままに作品が終ってしまう。」
河野多恵子
女76歳
10 「進歩はしているものの、あまりにも長すぎる。」「(引用者注:「縮んだ愛」と共に文量を)せめて半分以下にとどめておれば、本当に書くべきことも書き方も、もっと見出せていたと思われる。」
宮本輝
男55歳
16 「最後のターニャの言葉だけが尾を曳く。それ以外はただ冗長なだけである。」「擬音語を疑いもなく無神経に多用する人を、私は作家とは認めない。」
古井由吉
男64歳
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石原慎太郎
男69歳
5 「(引用者注:「彼女のピクニック宣言」と共に)旅を主題にしてはいるがエクゾティズムを感じさせず、」
三浦哲郎
男71歳
10 「「もどろき」の柔軟さが影をひそめて、なにやら物々しげな思惑と文章の生硬さが目についた。」「肩の力を抜くことが肝心。」
村上龍
男50歳
23 「シベリヤやサハリンが主要な舞台となっている」「海外を舞台にしてはいけないなどと思っているわけではない。」「そういった借り物のエピソードは、現代の日本との差異を際立たせ、偽物の緊張を作品に持ち込むことができる。現代に生きて、現代を書こうとする作家は、そういう恥ずかしい小細工を避けなければならない。」
池澤夏樹
男57歳
26 「今回の候補作の中では(引用者中略)最も意に叶った。」「人物の造形がきちんとしていて、その造形に意味がある。」「最もめざましい場面は最後のターニャの挨拶。こういう姿勢で生きる人間を失ったのが今の日本だということをしみじみと教える見事なスピーチである。」
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他の候補作
吉田修一
「パーク・ライフ」
佐川光晴
「縮んだ愛」
法月ゆり
「彼女のピクニック宣言」
星野智幸
「砂の惑星」
湯本香樹実
「西日の町」
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候補者・作品
佐川光晴男37歳×各選考委員 
「縮んだ愛」
中篇 244
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
高樹のぶ子
女56歳
0  
黒井千次
男70歳
4 「末尾で主人公の教師が殺人容疑に問われるところで作品が一気に崩れてしまった。」
河野多恵子
女76歳
7 「(引用者注:「イカロスの森」と共に文量を)せめて半分以下にとどめておれば、本当に書くべきことも書き方も、もっと見出せていたと思われる。」
宮本輝
男55歳
0  
古井由吉
男64歳
0  
石原慎太郎
男69歳
0  
三浦哲郎
男71歳
9 「力作だが、(引用者中略)長い作品を書く者は、途中でいちどは立ち止まり、決しておもねるではなく、いま読者がどのような気持で自分の言葉に耳を傾けてくれているのかに思いを致す必要があろう。」
村上龍
男50歳
0  
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男57歳
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他の候補作
吉田修一
「パーク・ライフ」
黒川創
「イカロスの森」
法月ゆり
「彼女のピクニック宣言」
星野智幸
「砂の惑星」
湯本香樹実
「西日の町」
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候補者・作品
法月ゆり女(39歳)×各選考委員 
「彼女のピクニック宣言」
短篇 106
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
高樹のぶ子
女56歳
14 「残念ながら前作に及ばなかった。最後に訪れる古城で何と出会うかが、このような「謎めいた」小説には決定的に重大で、読者に「なあんだ」と思わせては失敗である。」
黒井千次
男70歳
3 「ストーリーの辻褄合せが小説を壊している。」
河野多恵子
女76歳
8 「冒頭には感心した」「描かれている主人公の一人旅に、それを超えた何かの手応えがほしかった。」
宮本輝
男55歳
0  
古井由吉
男64歳
0  
石原慎太郎
男69歳
11 「(引用者注:「イカロスの森」と共に)旅を主題にしてはいるがエクゾティズムを感じさせず、(引用者中略)異常な性愛によるトラウマなんぞも主題の一つとして組み込んではいても、ただ道具立ての域を出ずに作品の印象がいかにも浅い。」
三浦哲郎
男71歳
7 「ユニークな雰囲気を持つ作品ながら前作のような新鮮な驚きは得られなかった。」
村上龍
男50歳
22 「アメリカ東海岸の歴史のある古そうな街が舞台だった。海外を舞台にしてはいけないなどと思っているわけではない。」「そういった借り物のエピソードは、現代の日本との差異を際立たせ、偽物の緊張を作品に持ち込むことができる。現代に生きて、現代を書こうとする作家は、そういう恥ずかしい小細工を避けなければならない。」
池澤夏樹
男57歳
0  
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他の候補作
吉田修一
「パーク・ライフ」
黒川創
「イカロスの森」
佐川光晴
「縮んだ愛」
星野智幸
「砂の惑星」
湯本香樹実
「西日の町」
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候補者・作品
星野智幸男37歳×各選考委員 
「砂の惑星」
短篇 113
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
高樹のぶ子
女56歳
0  
黒井千次
男70歳
5 「自殺願望を抱く子供達に焦点を合わせてそこを突込んで欲しいと思った。道具立てが空転した。」
河野多恵子
女76歳
5 「あれこれの思いつき程度のものが過度に頼りにされすぎている。」
宮本輝
男55歳
0  
古井由吉
男64歳
0  
石原慎太郎
男69歳
0  
三浦哲郎
男71歳
0  
村上龍
男50歳
23 「重要なエピソードの中にドミニカが登場する。」「海外を舞台にしてはいけないなどと思っているわけではない。」「そういった借り物のエピソードは、現代の日本との差異を際立たせ、偽物の緊張を作品に持ち込むことができる。現代に生きて、現代を書こうとする作家は、そういう恥ずかしい小細工を避けなければならない。」
池澤夏樹
男57歳
12 「おもしろかった。あまりに作り物めいているという批判があることは充分に予想できるが、世の中には作り物でなければ伝えられない真実もある。」
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他の候補作
吉田修一
「パーク・ライフ」
黒川創
「イカロスの森」
佐川光晴
「縮んだ愛」
法月ゆり
「彼女のピクニック宣言」
湯本香樹実
「西日の町」
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候補者・作品
湯本香樹実女42歳×各選考委員 
「西日の町」
中篇 139
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
高樹のぶ子
女56歳
6 「人物造形が上手く、情景も迫ってくるが、主人公にとってこの過去がどんな意味を持つのかが見えてこない。」
黒井千次
男70歳
12 「語り手である孫の目を通して祖父と母親との親子関係を見つめる、という視点に新鮮なものを感じた。」「ただ、大人になった語り手が登場すると違和感があり、なにか白けた気分を覚えるのが残念だった。」
河野多恵子
女76歳
6 「細部に表現力に富んだ好もしい部分がいくつかあったが、全篇に向けられる視野が平面的に偏していて、主題が生きていない。」
宮本輝
男55歳
12 「いちおう支持はしても、なにがなんでも受賞作にとまでは推しきれないものがこの作品にはある。少年の「僕」が祖父を透かして「母」を見ているのか、それともその逆なのか。その視点が定まっていないので、「僕」に血肉がかよってこない。」
古井由吉
男64歳
0  
石原慎太郎
男69歳
11 「家族の持て余し者の老人の姿を生き生き描き出してはいるが、それを語る孫の視点が虚弱で、例えば母親と祖父との微妙な関わりとの対照に同じ男同士としての、母親のそれとは異質の関わりが有り得ように、それは全く作者の考慮の外のものでしかなさそうだ。」
三浦哲郎
男71歳
0  
村上龍
男50歳
0  
池澤夏樹
男57歳
9 「細部まで丁寧でうまい。安心して読めるという点では今回の候補作の中で最も優れているが、しかし今ひとつ迫るものに欠ける。」
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他の候補作
吉田修一
「パーク・ライフ」
黒川創
「イカロスの森」
佐川光晴
「縮んだ愛」
法月ゆり
「彼女のピクニック宣言」
星野智幸
「砂の惑星」
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