芥川賞のすべて・のようなもの
第128回
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平成14年/2002年下半期
(平成15年/2003年1月16日決定発表/『文藝春秋』平成15年/2003年3月号選評掲載)
選考委員  黒井千次
男70歳
三浦哲郎
男71歳
宮本輝
男55歳
古井由吉
男65歳
高樹のぶ子
女56歳
石原慎太郎
男70歳
河野多恵子
女76歳
村上龍
男50歳
池澤夏樹
男57歳
選評総行数  57 60 56 52 59 61 66 54 65
候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数
大道珠貴 「しょっぱいドライブ」
91
女36歳
29 19 26 0 21 10 20 11 13
小野正嗣 「水死人の帰還」
174
男32歳
0 0 0 0 9 0 5 0 15
島本理生 「リトル・バイ・リトル」
178
女19歳
8 4 9 0 12 13 14 4 6
中村文則 「銃」
234
男25歳
15 37 21 52 22 27 13 0 6
松井雪子 「イエロー」
109
女36歳
5 0 0 0 0 0 3 42 9
和田ゆりえ 「鏡の森」
148
女(45歳)
0 0 0 0 0 0 13 0 15
                 
年齢/枚数の説明   見方・注意点

このページの選評出典:『文藝春秋』平成15年/2003年3月号
1行当たりの文字数:14字


選考委員
黒井千次男70歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
順当な受賞 総行数57 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
大道珠貴
女36歳
29 「六篇の候補作のうち、いかにも小説を読んだ、との印象を強く与えられた」「(引用者注:六十代の男と語り手の三十代女性の)二人の間に計算と無垢、太々しさと純心とのドラマが生れる。そこから漂い出す湿ったユーモアがこの作品の底を支えている。」「男の新しく借りた家で、すずめばちの駆除に役場から来た年寄と男とのやり取りを障子の隙間から主人公が覗く場面は秀逸である。」
小野正嗣
男32歳
0  
島本理生
女19歳
8 「好感を持って読んだ。」「人と人との距離感やバランス感覚に優れたものがあるが、そこを突き破っていくもう一つの力が欲しかった。」
中村文則
男25歳
15 「翻訳調の文章が粗雑ではあるものの、拳銃を拾った若者の心理の変化を追い続ける粘りに結末まで引きずられた。」「刑事の描き方など欠点はあるが、書きたいことが咽喉まで詰まっている切迫感は伝わって来る。受賞作としては推せなかったが今後への手応えを覚えた。」
松井雪子
女36歳
5 「パソコンの対話に魅力が欠け、結局ナルシスムの枠を出られずに終ってしまった、との不満が残った。」
和田ゆりえ
女(45歳)
0  
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他の選考委員
三浦哲郎
宮本輝
古井由吉
高樹のぶ子
石原慎太郎
河野多恵子
村上龍
池澤夏樹
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選考委員
三浦哲郎男71歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
感想 総行数60 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
大道珠貴
女36歳
19 「これまでで最も小説的な作品になっている。」「全体にたくまざるユーモアが染み渡っていて、それがあちこちの行間からちいさなにが笑いや哀しみとなってしたたっている。」
小野正嗣
男32歳
0  
島本理生
女19歳
4 「なんでもすらすら書けてしまうのはむしろ危険なことだと知ってもらいたい。」
中村文則
男25歳
37 「読みはじめてすぐカミユの「異邦人」という小説の冒頭を思い出した。」「途中で全く別種の作品だと気づいたが、それでも最後まで読み通したのは、作者の強引ともいえる筆力とまだ残っていた胸のときめきに引かれてのことである。」「彼(引用者注:主人公)は、その拳銃と共に破滅の道を辿ることになるのだが、何よりの不満は、その破滅の過程がすべて読者の予想の域を出なかったことである。」
松井雪子
女36歳
0  
和田ゆりえ
女(45歳)
0  
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他の選考委員
黒井千次
宮本輝
古井由吉
高樹のぶ子
石原慎太郎
河野多恵子
村上龍
池澤夏樹
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選考委員
宮本輝男55歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
小さな種 総行数56 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
大道珠貴
女36歳
26 「この作者の持ち味は、いまのところそれだけでしかない。「くすっ」と笑わせるアイロニー、そしてあまりにも工夫のない稚拙すぎる題。」「このような書き手は意外なほど頑固で狷介で柔軟性に欠けるきらいがあって、それが潜在する能力を自ら押さえつける結果となるものだ。」「私がこの作品を積極的に推せなかったのは、そうした危惧をぬぐいきれなかったからである。だが、このような小さな種から、大きな花が咲くのを見たいという思いもあった。」
小野正嗣
男32歳
0  
島本理生
女19歳
9 「十九歳とは思えない穏かさと行儀の良さを感じさせる。逆にそのことが作品を一味も二味も足りなくさせている。」
中村文則
男25歳
21 「最後まで読ませる力を持っている。」「一丁の拳銃がひとりの青年の思考や行動を魔物のように支配していくという筋立(引用者中略)を中村氏独自の文学世界へと深めるには、銃を手にした主人公と、そうでないときの主人公とのあいだに、歴然とした断層が形成されなくてはならない。この作品にはそれがなかった。」
松井雪子
女36歳
0  
和田ゆりえ
女(45歳)
0  
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他の選考委員
黒井千次
三浦哲郎
古井由吉
高樹のぶ子
石原慎太郎
河野多恵子
村上龍
池澤夏樹
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選考委員
古井由吉男65歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
意識と意志 総行数52 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
大道珠貴
女36歳
0  
小野正嗣
男32歳
0  
島本理生
女19歳
0  
中村文則
男25歳
52 「新人の力のこもった作であり、私は惹かれた」「意識の構築物と呼ぶべき作品である。主人公の意識と無意識との境まで分け入りはする。」「ある段階での意識が破れかかると、不可解な行動が表われて、次の段階へ移る。そうやって踏みあがっていく足取りは感じ取れる。」「しかし読み了えて、力作には感じるが、全体として同じ「騒動」の繰り返しであったような印象を否めないのはどうしたことか。」
松井雪子
女36歳
0  
和田ゆりえ
女(45歳)
0  
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他の選考委員
黒井千次
三浦哲郎
宮本輝
高樹のぶ子
石原慎太郎
河野多恵子
村上龍
池澤夏樹
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選考委員
高樹のぶ子女56歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
二作を評価 総行数59 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
大道珠貴
女36歳
21 「二作(引用者注:「しょっぱいドライブ」と「銃」)に○をつけたが、前者(引用者注:「しょっぱいドライブ」)の方が頭ひとつ出ている印象だった。」「受賞作として推すことにためらいは無かった。候補六作中、人間と人間関係を描ききったのはこの一作だけだと言ってもいい。」「決して大きい作品ではないが、厚味のある秀作になっている。」
小野正嗣
男32歳
9 「私の△の他には△が一つだけの寂しい状況だった。この文体から装飾を取り除いたら何が残るか、という問いかけに、試みとしての文学の限界を感じた。」
島本理生
女19歳
12 「その素直な感性に好感を持ったが、受賞作にするには幼い。去年の長嶋有さん(「猛スピードで母は」)が、もっと幼い子供の視線(幼さ装い)でやはり母子家庭を書いて、その実したたかな大人の女を掴んでいたのに較べて、やはり力不足は否めず、今後の成長に期待することにしよう。」
中村文則
男25歳
22 「二作(引用者注:「しょっぱいドライブ」と「銃」)に○をつけた」「賛成票が集まれば、受賞作として推したいと思ったが、叶わなかった。これは銃に対する男の意識がテーマになっている。」「深読みすれば、核を持った人間の心理も想起させる。文章のドライブ感に才能を感じたのだが。」
松井雪子
女36歳
0  
和田ゆりえ
女(45歳)
0  
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他の選考委員
黒井千次
三浦哲郎
宮本輝
古井由吉
石原慎太郎
河野多恵子
村上龍
池澤夏樹
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選考委員
石原慎太郎男70歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
凶器の非日常性 総行数61 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
大道珠貴
女36歳
10 「少なくとも私は何の感動も衝撃も感じなかった。」「はたしてこの作品にユーモアがあろうか。強いていえばアンニュイというところなのかも知れないが、私は何の共感も感じない。」
小野正嗣
男32歳
0  
島本理生
女19歳
13 「可憐な青春小説の域を出ない。」「青春なる不定形な年代の、それなるが故の気味悪さなどどこにもなく、PTAや教育委員会が喜びそうな話立てとしかいいようない。」
中村文則
男25歳
27 「候補作の中で唯一つ(引用者中略)最後まで面白く読んだ。」「非日常性の象徴ともいえる凶器によって主人公の生活に今まで存在しなかった、緊張と孤独さをともなった新しい生活のリズムのようなものが生まれてくる。」「ただ最後の、実際に電車の中で見知らぬ男を射殺してしまうエンディングはいかにも通俗、ありきたりでしかない。しかしこの作家の力量、というよりもそれ以前の、最後までドライブがかかり通すエネルギーは貴重」
松井雪子
女36歳
0  
和田ゆりえ
女(45歳)
0  
  「新しい作家の新しい作品に期待されるものは、形や内容が何であれ未曾有なデモニッシュなるものだと思うが、今回の候補作のどれもそうした要求を満たしてくれはしなかった。」
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他の選考委員
黒井千次
三浦哲郎
宮本輝
古井由吉
高樹のぶ子
河野多恵子
村上龍
池澤夏樹
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選考委員
河野多恵子女76歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
大道さんを推す 総行数66 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
大道珠貴
女36歳
20 「私はこの人の作品には、(引用者注:最初の候補のときより)珍しく小説としての表情のあることに関心をもっていた。受賞作ではそれに加えて厚みが増した。」「終りのほうで役場の職員がすずめばちの駆除に来てからあと、殊に最後の行替えから結末までの部分の出来栄えは、この全篇中でも最も見事である。」
小野正嗣
男32歳
5 「書きたいことがしっかり把握されていない。そして、低俗な文章には何かの企図がありそうだが、結局低俗以外の何ものでもない。」
島本理生
女19歳
14 「素直さが取り得という、消極的な取り得が見られるに留まっている。」「十九歳の作者だそうだが、まだ視方が弱い。平林たい子の二十一歳の作『嘲る』(引用者中略)や二十二歳の作『施療室にて』などの視線がいかに勁いか、識ってもらいたい。」
中村文則
男25歳
13 「後半、殊に警察から調べにくるところから先になると、私は全く失望した。ただし、拾った拳銃――あるいは盗んだことになるかもしれない拳銃を身近かにもつようになってからの主人公の意識・気分のあれこれは鮮やかに伝わってきて、そこには作者の資質が感じられた。」
松井雪子
女36歳
3 「小説というものを勘違いしたまま書かれた作品である。」
和田ゆりえ
女(45歳)
13 「スペインのインディオに対するキリスト教の布教兼侵略を資料に基づき扱ったものだが、硬直している。ただ、この作者が先でよい作品を見せてくれる時がくれば、(引用者注:前回の候補作と今回のと)こういう二作を書いたわけが分かりそうな気持にさせられるところがあった。」
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他の選考委員
黒井千次
三浦哲郎
宮本輝
古井由吉
高樹のぶ子
石原慎太郎
村上龍
池澤夏樹
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選考委員
村上龍男50歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
選評 総行数54 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
大道珠貴
女36歳
11 「わたしの元気を奪った。」「小説として単につまらないからだ。文章は洗練されているが、その洗練は、現実への安易な屈服・あきらめと、終焉した近代化への媚びと依存に支えられたもので、それがわたしの力を奪ったのである。」
小野正嗣
男32歳
0  
島本理生
女19歳
4 「好感を持った。だが受賞作に推すためには好感だけでは足りない。」
中村文則
男25歳
0  
松井雪子
女36歳
42 「もっとも面白く読んだ。」「だが受賞には至らないだろうと思った。ある意味で稚拙だったからだ。本当は単に稚拙というわけではなく、ポップなのだが、そのことを他の選考委員に理解してもらうのは無理だろうとあきらめた。他の選考委員にポップへの理解がないというわけではない。近代化がそう刷り込まれているか、その違いによって、ポップへの評価は分かれる。」
和田ゆりえ
女(45歳)
0  
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他の選考委員
黒井千次
三浦哲郎
宮本輝
古井由吉
高樹のぶ子
石原慎太郎
河野多恵子
池澤夏樹
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選考委員
池澤夏樹男57歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
かくも内向的な傾向 総行数65 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
大道珠貴
女36歳
13 「賞を惜しんではいけないと思って最後に推したけれども、不満は多々残った。うまいと言えばうまいし、最後の障子越しの場面は悪くないが、やはり輪郭の小さな話なのだ。」
小野正嗣
男32歳
15 「授賞に価する出来ではなかった。」「細い痩せた樅の木にたくさんの飾りを付けたクリスマス・ツリーのようで、文飾と文体を混同しているのではないかと思う。」
島本理生
女19歳
6 「あまりに淡泊。しかしそれは作者の歳を考えれば当然のことだから、育つ苦労を経た上でいつかまた書いてください。」
中村文則
男25歳
6 「銃というものを持つことによる偽の自信について普通に想像できる筋道をなぞっただけ。本当はこの先でもう一つ逸脱が欲しいのだ。」
松井雪子
女36歳
9 「文体という点では(引用者中略)最も優れていた。」「しかしこの化粧論の本質は常識的で、ハムレットのあの科白となんら変わらない。」
和田ゆりえ
女(45歳)
15 「授賞に価する出来ではなかった。」「細部まで精緻に書かれているが、ノーブル・サヴェジという語りつくされた思想から一歩も踏み出していない。」
  「選考委員の中に日野啓三さんの顔がないのは淋しいことだった。残り九名という人数のせいもあるが、議論がぐっと萎縮してしまった感じ。今回は積極的に推される作が少なかったということもあるのだが。」
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他の選考委員
黒井千次
三浦哲郎
宮本輝
古井由吉
高樹のぶ子
石原慎太郎
河野多恵子
村上龍
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受賞者・作品
大道珠貴女36歳×各選考委員 
「しょっぱいドライブ」
短篇 91
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
黒井千次
男70歳
29 「六篇の候補作のうち、いかにも小説を読んだ、との印象を強く与えられた」「(引用者注:六十代の男と語り手の三十代女性の)二人の間に計算と無垢、太々しさと純心とのドラマが生れる。そこから漂い出す湿ったユーモアがこの作品の底を支えている。」「男の新しく借りた家で、すずめばちの駆除に役場から来た年寄と男とのやり取りを障子の隙間から主人公が覗く場面は秀逸である。」
三浦哲郎
男71歳
19 「これまでで最も小説的な作品になっている。」「全体にたくまざるユーモアが染み渡っていて、それがあちこちの行間からちいさなにが笑いや哀しみとなってしたたっている。」
宮本輝
男55歳
26 「この作者の持ち味は、いまのところそれだけでしかない。「くすっ」と笑わせるアイロニー、そしてあまりにも工夫のない稚拙すぎる題。」「このような書き手は意外なほど頑固で狷介で柔軟性に欠けるきらいがあって、それが潜在する能力を自ら押さえつける結果となるものだ。」「私がこの作品を積極的に推せなかったのは、そうした危惧をぬぐいきれなかったからである。だが、このような小さな種から、大きな花が咲くのを見たいという思いもあった。」
古井由吉
男65歳
0  
高樹のぶ子
女56歳
21 「二作(引用者注:「しょっぱいドライブ」と「銃」)に○をつけたが、前者(引用者注:「しょっぱいドライブ」)の方が頭ひとつ出ている印象だった。」「受賞作として推すことにためらいは無かった。候補六作中、人間と人間関係を描ききったのはこの一作だけだと言ってもいい。」「決して大きい作品ではないが、厚味のある秀作になっている。」
石原慎太郎
男70歳
10 「少なくとも私は何の感動も衝撃も感じなかった。」「はたしてこの作品にユーモアがあろうか。強いていえばアンニュイというところなのかも知れないが、私は何の共感も感じない。」
河野多恵子
女76歳
20 「私はこの人の作品には、(引用者注:最初の候補のときより)珍しく小説としての表情のあることに関心をもっていた。受賞作ではそれに加えて厚みが増した。」「終りのほうで役場の職員がすずめばちの駆除に来てからあと、殊に最後の行替えから結末までの部分の出来栄えは、この全篇中でも最も見事である。」
村上龍
男50歳
11 「わたしの元気を奪った。」「小説として単につまらないからだ。文章は洗練されているが、その洗練は、現実への安易な屈服・あきらめと、終焉した近代化への媚びと依存に支えられたもので、それがわたしの力を奪ったのである。」
池澤夏樹
男57歳
13 「賞を惜しんではいけないと思って最後に推したけれども、不満は多々残った。うまいと言えばうまいし、最後の障子越しの場面は悪くないが、やはり輪郭の小さな話なのだ。」
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他の候補作
小野正嗣
「水死人の帰還」
島本理生
「リトル・バイ・リトル」
中村文則
「銃」
松井雪子
「イエロー」
和田ゆりえ
「鏡の森」
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候補者・作品
小野正嗣男32歳×各選考委員 
「水死人の帰還」
中篇 174
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
黒井千次
男70歳
0  
三浦哲郎
男71歳
0  
宮本輝
男55歳
0  
古井由吉
男65歳
0  
高樹のぶ子
女56歳
9 「私の△の他には△が一つだけの寂しい状況だった。この文体から装飾を取り除いたら何が残るか、という問いかけに、試みとしての文学の限界を感じた。」
石原慎太郎
男70歳
0  
河野多恵子
女76歳
5 「書きたいことがしっかり把握されていない。そして、低俗な文章には何かの企図がありそうだが、結局低俗以外の何ものでもない。」
村上龍
男50歳
0  
池澤夏樹
男57歳
15 「授賞に価する出来ではなかった。」「細い痩せた樅の木にたくさんの飾りを付けたクリスマス・ツリーのようで、文飾と文体を混同しているのではないかと思う。」
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他の候補作
大道珠貴
「しょっぱいドライブ」
島本理生
「リトル・バイ・リトル」
中村文則
「銃」
松井雪子
「イエロー」
和田ゆりえ
「鏡の森」
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候補者・作品
島本理生女19歳×各選考委員 
「リトル・バイ・リトル」
中篇 178
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
黒井千次
男70歳
8 「好感を持って読んだ。」「人と人との距離感やバランス感覚に優れたものがあるが、そこを突き破っていくもう一つの力が欲しかった。」
三浦哲郎
男71歳
4 「なんでもすらすら書けてしまうのはむしろ危険なことだと知ってもらいたい。」
宮本輝
男55歳
9 「十九歳とは思えない穏かさと行儀の良さを感じさせる。逆にそのことが作品を一味も二味も足りなくさせている。」
古井由吉
男65歳
0  
高樹のぶ子
女56歳
12 「その素直な感性に好感を持ったが、受賞作にするには幼い。去年の長嶋有さん(「猛スピードで母は」)が、もっと幼い子供の視線(幼さ装い)でやはり母子家庭を書いて、その実したたかな大人の女を掴んでいたのに較べて、やはり力不足は否めず、今後の成長に期待することにしよう。」
石原慎太郎
男70歳
13 「可憐な青春小説の域を出ない。」「青春なる不定形な年代の、それなるが故の気味悪さなどどこにもなく、PTAや教育委員会が喜びそうな話立てとしかいいようない。」
河野多恵子
女76歳
14 「素直さが取り得という、消極的な取り得が見られるに留まっている。」「十九歳の作者だそうだが、まだ視方が弱い。平林たい子の二十一歳の作『嘲る』(引用者中略)や二十二歳の作『施療室にて』などの視線がいかに勁いか、識ってもらいたい。」
村上龍
男50歳
4 「好感を持った。だが受賞作に推すためには好感だけでは足りない。」
池澤夏樹
男57歳
6 「あまりに淡泊。しかしそれは作者の歳を考えれば当然のことだから、育つ苦労を経た上でいつかまた書いてください。」
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他の候補作
大道珠貴
「しょっぱいドライブ」
小野正嗣
「水死人の帰還」
中村文則
「銃」
松井雪子
「イエロー」
和田ゆりえ
「鏡の森」
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候補者・作品
中村文則男25歳×各選考委員 
「銃」
中篇 234
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
黒井千次
男70歳
15 「翻訳調の文章が粗雑ではあるものの、拳銃を拾った若者の心理の変化を追い続ける粘りに結末まで引きずられた。」「刑事の描き方など欠点はあるが、書きたいことが咽喉まで詰まっている切迫感は伝わって来る。受賞作としては推せなかったが今後への手応えを覚えた。」
三浦哲郎
男71歳
37 「読みはじめてすぐカミユの「異邦人」という小説の冒頭を思い出した。」「途中で全く別種の作品だと気づいたが、それでも最後まで読み通したのは、作者の強引ともいえる筆力とまだ残っていた胸のときめきに引かれてのことである。」「彼(引用者注:主人公)は、その拳銃と共に破滅の道を辿ることになるのだが、何よりの不満は、その破滅の過程がすべて読者の予想の域を出なかったことである。」
宮本輝
男55歳
21 「最後まで読ませる力を持っている。」「一丁の拳銃がひとりの青年の思考や行動を魔物のように支配していくという筋立(引用者中略)を中村氏独自の文学世界へと深めるには、銃を手にした主人公と、そうでないときの主人公とのあいだに、歴然とした断層が形成されなくてはならない。この作品にはそれがなかった。」
古井由吉
男65歳
52 「新人の力のこもった作であり、私は惹かれた」「意識の構築物と呼ぶべき作品である。主人公の意識と無意識との境まで分け入りはする。」「ある段階での意識が破れかかると、不可解な行動が表われて、次の段階へ移る。そうやって踏みあがっていく足取りは感じ取れる。」「しかし読み了えて、力作には感じるが、全体として同じ「騒動」の繰り返しであったような印象を否めないのはどうしたことか。」
高樹のぶ子
女56歳
22 「二作(引用者注:「しょっぱいドライブ」と「銃」)に○をつけた」「賛成票が集まれば、受賞作として推したいと思ったが、叶わなかった。これは銃に対する男の意識がテーマになっている。」「深読みすれば、核を持った人間の心理も想起させる。文章のドライブ感に才能を感じたのだが。」
石原慎太郎
男70歳
27 「候補作の中で唯一つ(引用者中略)最後まで面白く読んだ。」「非日常性の象徴ともいえる凶器によって主人公の生活に今まで存在しなかった、緊張と孤独さをともなった新しい生活のリズムのようなものが生まれてくる。」「ただ最後の、実際に電車の中で見知らぬ男を射殺してしまうエンディングはいかにも通俗、ありきたりでしかない。しかしこの作家の力量、というよりもそれ以前の、最後までドライブがかかり通すエネルギーは貴重」
河野多恵子
女76歳
13 「後半、殊に警察から調べにくるところから先になると、私は全く失望した。ただし、拾った拳銃――あるいは盗んだことになるかもしれない拳銃を身近かにもつようになってからの主人公の意識・気分のあれこれは鮮やかに伝わってきて、そこには作者の資質が感じられた。」
村上龍
男50歳
0  
池澤夏樹
男57歳
6 「銃というものを持つことによる偽の自信について普通に想像できる筋道をなぞっただけ。本当はこの先でもう一つ逸脱が欲しいのだ。」
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他の候補作
大道珠貴
「しょっぱいドライブ」
小野正嗣
「水死人の帰還」
島本理生
「リトル・バイ・リトル」
松井雪子
「イエロー」
和田ゆりえ
「鏡の森」
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候補者・作品
松井雪子女36歳×各選考委員 
「イエロー」
短篇 109
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
黒井千次
男70歳
5 「パソコンの対話に魅力が欠け、結局ナルシスムの枠を出られずに終ってしまった、との不満が残った。」
三浦哲郎
男71歳
0  
宮本輝
男55歳
0  
古井由吉
男65歳
0  
高樹のぶ子
女56歳
0  
石原慎太郎
男70歳
0  
河野多恵子
女76歳
3 「小説というものを勘違いしたまま書かれた作品である。」
村上龍
男50歳
42 「もっとも面白く読んだ。」「だが受賞には至らないだろうと思った。ある意味で稚拙だったからだ。本当は単に稚拙というわけではなく、ポップなのだが、そのことを他の選考委員に理解してもらうのは無理だろうとあきらめた。他の選考委員にポップへの理解がないというわけではない。近代化がそう刷り込まれているか、その違いによって、ポップへの評価は分かれる。」
池澤夏樹
男57歳
9 「文体という点では(引用者中略)最も優れていた。」「しかしこの化粧論の本質は常識的で、ハムレットのあの科白となんら変わらない。」
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他の候補作
大道珠貴
「しょっぱいドライブ」
小野正嗣
「水死人の帰還」
島本理生
「リトル・バイ・リトル」
中村文則
「銃」
和田ゆりえ
「鏡の森」
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候補者・作品
和田ゆりえ女(45歳)×各選考委員 
「鏡の森」
短篇 148
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
黒井千次
男70歳
0  
三浦哲郎
男71歳
0  
宮本輝
男55歳
0  
古井由吉
男65歳
0  
高樹のぶ子
女56歳
0  
石原慎太郎
男70歳
0  
河野多恵子
女76歳
13 「スペインのインディオに対するキリスト教の布教兼侵略を資料に基づき扱ったものだが、硬直している。ただ、この作者が先でよい作品を見せてくれる時がくれば、(引用者注:前回の候補作と今回のと)こういう二作を書いたわけが分かりそうな気持にさせられるところがあった。」
村上龍
男50歳
0  
池澤夏樹
男57歳
15 「授賞に価する出来ではなかった。」「細部まで精緻に書かれているが、ノーブル・サヴェジという語りつくされた思想から一歩も踏み出していない。」
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他の候補作
大道珠貴
「しょっぱいドライブ」
小野正嗣
「水死人の帰還」
島本理生
「リトル・バイ・リトル」
中村文則
「銃」
松井雪子
「イエロー」
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