芥川賞のすべて・のようなもの
第129回
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平成15年/2003年上半期
(平成15年/2003年7月17日決定発表/『文藝春秋』平成15年/2003年9月号選評掲載)
選考委員  高樹のぶ子
女57歳
石原慎太郎
男70歳
宮本輝
男56歳
河野多恵子
女77歳
古井由吉
男65歳
山田詠美
女44歳
村上龍
男51歳
黒井千次
男71歳
三浦哲郎
男72歳
池澤夏樹
男58歳
選評総行数  54 55 50 53 52 51 54 50 53 52
候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数
吉村萬壱 「ハリガネムシ」
148
男42歳
26 18 20 28 0 11 9 28 5 8
絲山秋子 「イッツ・オンリー・トーク」
106
女36歳
5 7 0 0 0 10 16 11 0 9
栗田有起 「お縫い子テルミー」
95
女31歳
10 7 25 25 0 9 18 6 37 9
中村航 「夏休み」
287
男33歳
5 0 0 0 0 8 0 4 0 19
中村文則 「遮光」
180
男25歳
8 16 0 0 52 13 8 2 5 4
                   
年齢/枚数の説明   見方・注意点

このページの選評出典:『文藝春秋』平成15年/2003年9月号
1行当たりの文字数:14字


選考委員
高樹のぶ子女57歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
危険でモラリスティック 総行数54 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
吉村萬壱
男42歳
26 「昨今、強い者にではなく自分より弱い者に向かう暴力が溢れている。唾棄すべきこのような暴力衝動がなぜ生れるのかを、(引用者中略)丁寧にかつ非常に解き明かす。」「素手で持つと怪我をしそうな、重い刃物の一作である。」「見たくはないけれど見よう。宗教が断罪することのない日本において暴力を断つ方途があるとすれば、「よく見て」「知る」ことしかないのだから。」
絲山秋子
女36歳
5 「性根が座った不良性と小気味いい章立てで才能を感じさせるが、もっと大きいものを作り出せる人だと思った。」
栗田有起
女31歳
10 「この作品にリアリズムの物差しは不要なのかもしれないが、「流しのお縫い子」がブティックやデパートでは買えない何を(原文傍点)縫うのかだけは、きちんと押さえて欲しかった。」
中村航
男33歳
5 「タイトルが示すように何とも他愛なく、ゲーム機で大真面目に遊んでいる四人の子供(原文傍点)を眺めて、溜息をつくしかなかった。」
中村文則
男25歳
8 「前回の『銃』ほどには、瓶の中の小指が魅力的でなく、病的な狭い世界に頭をつっこんでしまった。病気というのは社会から認知された状態だから、本当に怖いものにはならないことを知っておくべきだ。」
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他の選考委員
石原慎太郎
宮本輝
河野多恵子
古井由吉
山田詠美
村上龍
黒井千次
三浦哲郎
池澤夏樹
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選考委員
石原慎太郎男70歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
自暴自棄の底にあるもの 総行数55 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
吉村萬壱
男42歳
18 「ほとんどの選者が当選に同意した」「一種のデスペレイションはどうにもやり切れないが、多くの国民がデフレとはいえなんとなく満ち足りた錯覚の内にある時代に、逆に妙なリアリティがあり、読む者を辟易させながら引きずっていく重い力がある。」
絲山秋子
女36歳
7 「つるつる読ませはするが印象がいかにも薄い。第一この題名がなんで英語なのか。どうして「ただの洒落よ」でいけないのか。」
栗田有起
女31歳
7 「新しい風俗ともいえそうだが、はたしてこうした生き方が売春なしで有り得るのか。」
中村航
男33歳
0  
中村文則
男25歳
16 「安易な同工異曲で、前作の拳銃が女の遺体から切り取った指に変わっただけでしかない。」「野心あるべき新人が二つ続けてほとんど同じものを書いてみせるというのは、所詮志の問題というべきか。」
  「今回の候補作はなべて従来に比べて水準が高い、というよりも、どれもスムースに読み終えることが出来た。」
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他の選考委員
高樹のぶ子
宮本輝
河野多恵子
古井由吉
山田詠美
村上龍
黒井千次
三浦哲郎
池澤夏樹
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選考委員
宮本輝男56歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
僅差 総行数50 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
吉村萬壱
男42歳
20 「受賞に私は反対した。」「また古臭いものをひきずり出してきたなという印象でしかなく、読んでいて汚ならしくて、不快感に包まれた。」「「文学」のテーマとしての「暴力性」とかそれに付随するセックスや獣性などといったものに、私はもう飽き飽きとしている。」
絲山秋子
女36歳
0  
栗田有起
女31歳
25 「受賞作として推した」「三浦委員は「まごころと、生活への自信を持って生きている」と主人公を評したが、私もまったく同じ意見であった。「ハリガネムシ」とはたったの一票差で(引用者中略)受賞を逸した。」「文学賞の選考ではありがちなこととはいえ、私には釈然としないものが残った。」
中村航
男33歳
0  
中村文則
男25歳
0  
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他の選考委員
高樹のぶ子
石原慎太郎
河野多恵子
古井由吉
山田詠美
村上龍
黒井千次
三浦哲郎
池澤夏樹
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選考委員
河野多恵子女77歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
二作について 総行数53 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
吉村萬壱
男42歳
28 「作者が小説の創り方を全身で知っているかのような感じを与える出来栄えである。」「この作品には、無駄や独りよがりや顕示的なところが全くない。客観視する意志と力をもっている作者のようだ。作品の風通しのよさも、それ故だろう。」「ほんの小さな端役といえども精彩があり、全篇を支える確実な一員に思えてくるのは大したものである。」
絲山秋子
女36歳
0  
栗田有起
女31歳
25 「よかった。」「流しの仕立て屋という設定は、あるいは作者の拵えたものかもしれないが、この設定は生きている。その生まれ育ちから既にいっぱしの大人の女であり、同時にまだ十六歳らしさもある〈私〉の日々の姿は印象に残る。文学的に今少し豊かさが増せば、と期待をもった。」
中村航
男33歳
0  
中村文則
男25歳
0  
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高樹のぶ子
石原慎太郎
宮本輝
古井由吉
山田詠美
村上龍
黒井千次
三浦哲郎
池澤夏樹
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選考委員
古井由吉男65歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
意識の文学 総行数52 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
吉村萬壱
男42歳
0  
絲山秋子
女36歳
0  
栗田有起
女31歳
0  
中村航
男33歳
0  
中村文則
男25歳
52 「意識を表現することは、無意識の境に踏みこむのに劣らず、厄介なことである。」「このような難儀な試みを敢えて構えて行なう若い意志を私は壮として、前回の「銃」にひきつづき、今回も銓衡会の評判の芳しくはなかった「遮光」を推した。」「前回と並行ではあるが、再挑戦と見た。」「前回より深みはまさっている。ただ何分にも、跳び越すべき、バーは高い。」「再々挑戦あり。」
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他の選考委員
高樹のぶ子
石原慎太郎
宮本輝
河野多恵子
山田詠美
村上龍
黒井千次
三浦哲郎
池澤夏樹
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選考委員
山田詠美女44歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
「ハリガネムシのお告げ」 総行数51 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
吉村萬壱
男42歳
11 「人の内なるさまざまな感情を翻弄しながら、言葉でひとつにまとめ上げることに成功した作品だと思う。」「ただただハリガネムシの生態系の中で、人々は泣いたり笑ったり。読み手もだ。」
絲山秋子
女36歳
10 「点在する人間関係が魅力的にやさぐれている。空気が乾いているのを感じて、自らの内側の湿り具合に気付くような作品。」
栗田有起
女31歳
9 「安易に片付け過ぎてしまった」「せっかく、こんなにもキュートでりりしい主人公を作り上げたのだから、もっと活躍させて、テルミーの手練手管を見せて欲しかったな。」
中村航
男33歳
8 「作品自体がパッケージングされたひとつのゲームのような「夏休み」。」「〈ママはすごい。本当にこの人はすごい。〉って……良かったですね。でも、あなた、おいくつ?」
中村文則
男25歳
13 「一ページに〈私〉という主語が平均十五個。それが三人称のように使われていて心惹かれる。ただし最後が残念だ。遮光カーテン開けて主人公を、どん底に突き落としてやれば良かったのに。」
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他の選考委員
高樹のぶ子
石原慎太郎
宮本輝
河野多恵子
古井由吉
村上龍
黒井千次
三浦哲郎
池澤夏樹
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選考委員
村上龍男51歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
選評 総行数54 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
吉村萬壱
男42歳
9 「テクニックも実力もある作品だと思ったし、登場人物のキャラクターも会話も巧みだった。だがまるでスラップスティックムービーを見ているようで、切実さがなかった。」
絲山秋子
女36歳
16 「好感を持った。だが受賞作として積極的に推す気にはなれなかった。主人公、あるいは主人公をデザインした作者が、「並列的」に描かれる作中の出来事の中で、何に対して執着しているのかが不明だったからだ。」
栗田有起
女31歳
18 「服を縫うという行為と布地への偏愛、また非常にマイナーな男性歌手への片思いという一種の「執着」が垣間見えるファンタジーだった。だが致命的な欠陥だと思われたのは、南の島から東京に出てきたばかりの十代の少女の語り口が、東京の「文脈」に染まっていたことである。」
中村航
男33歳
0  
中村文則
男25歳
8 「今回の候補作の中でこの作品だけが、ある種の切実さを持っていた。だが切実さはあったが、その他の大切な要素がほとんどなかった。」
  「今回は、「洗練」された作品が多かったが、新人作家にとって、洗練は敵である。」
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他の選考委員
高樹のぶ子
石原慎太郎
宮本輝
河野多恵子
古井由吉
山田詠美
黒井千次
三浦哲郎
池澤夏樹
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選考委員
黒井千次男71歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
選評 総行数50 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
吉村萬壱
男42歳
28 「手放しでこの作品を推す気持にはなれなかった。人間の内にひそむ暴力への欲求を、(引用者中略)ハリガネムシに擬して追求する意図は充分に認められる。」「ただこの教師がいささか無抵抗に暴力にのめりこんで行く経過に疑問が残る。」「彼を縛る壁があまりに薄手であるために、主人公の行動が恣意的なものに止まってはいないか。」
絲山秋子
女36歳
11 「一見投げ遣りに見える暮しの中に意外に芯の通った節度が保たれ、それが周囲のいずれもおかしな男達の像を確かな線描のように捉えている書き方に好感を抱いた。」
栗田有起
女31歳
6 「現代の都会に瞽女が出現したかの如き新鮮さを覚えた。メルヘン仕立ての作品を縫い上げる才の今後に注目したい。」
中村航
男33歳
4 「ゲーム抜きでこの関係が描かれれば面白かったのに、との感想を抱いた。」
中村文則
男25歳
2 「前作「銃」の暴発力が見られず、」
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他の選考委員
高樹のぶ子
石原慎太郎
宮本輝
河野多恵子
古井由吉
山田詠美
村上龍
三浦哲郎
池澤夏樹
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選考委員
三浦哲郎男72歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
感想 総行数53 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
吉村萬壱
男42歳
5 「この作品の核にもなっているサディスティックな暴力シーンは、今の私にはちと荷が重すぎた。」
絲山秋子
女36歳
0  
栗田有起
女31歳
37 「感心した。」「私は一読してこの作品が好きになった。テルミーの可憐さ、健気さ、矜持に裏打ちされた潔さに強く惹かれた。」「テルミーと布との関わりをもうすこし深く追求していたら賞に手が届いたろう。」
中村航
男33歳
0  
中村文則
男25歳
5 「前作と同工異曲で構成上の無理が目立ち粗雑であった。」
  「近頃の新人の文章には推敲の跡が全く見て取れない。いちどでも推敲していれば削除されているはずの文章がぬけぬけと消え残っている。」
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他の選考委員
高樹のぶ子
石原慎太郎
宮本輝
河野多恵子
古井由吉
山田詠美
村上龍
黒井千次
池澤夏樹
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選考委員
池澤夏樹男58歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
「夏休み」の問題 総行数52 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
吉村萬壱
男42歳
8 「ぼくの好みではないが、しかし暴力という大きな主題を正面から扱ってしっかり構築されていることは認めなければならない。」「授賞には反対しないことにした。」
絲山秋子
女36歳
9 「特に会話が見事で、それがとりあえず元気に生きようとしている主人公と周囲の関係をうまく表現している。ただこの軽みが読後感を希薄にしているとも言えるので、その先にもう一つ何か欲しいところだ。」
栗田有起
女31歳
9 「ファンタジーであって、愛すべき小品に仕上がっている。」「佳作なのだが、もう少し冒険をしてほしかった。」
中村航
男33歳
19 「もう少し論じられてもいい作品だった。つまり、これほど軽く、ゲーム的に生きる人々が今いるとしたら(いそうな気がするのだが)、それ自体がずいぶん深刻なことではないかと、そちらが気になった。」「人生は無意味でいいと作者は言っているわけで、つまりこれは小説が成立するか否かの境界線上で踊っているような話なのだ。ケータイによる相互マッサージの生活を小説に仕立てる必然性はないかもしれない。」
中村文則
男25歳
4 「前作と同じエゴセントリックな空回りで、他者の不在のために話に奥行きがでていない。」
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他の選考委員
高樹のぶ子
石原慎太郎
宮本輝
河野多恵子
古井由吉
山田詠美
村上龍
黒井千次
三浦哲郎
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受賞者・作品
吉村萬壱男42歳×各選考委員 
「ハリガネムシ」
中篇 148
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
高樹のぶ子
女57歳
26 「昨今、強い者にではなく自分より弱い者に向かう暴力が溢れている。唾棄すべきこのような暴力衝動がなぜ生れるのかを、(引用者中略)丁寧にかつ非常に解き明かす。」「素手で持つと怪我をしそうな、重い刃物の一作である。」「見たくはないけれど見よう。宗教が断罪することのない日本において暴力を断つ方途があるとすれば、「よく見て」「知る」ことしかないのだから。」
石原慎太郎
男70歳
18 「ほとんどの選者が当選に同意した」「一種のデスペレイションはどうにもやり切れないが、多くの国民がデフレとはいえなんとなく満ち足りた錯覚の内にある時代に、逆に妙なリアリティがあり、読む者を辟易させながら引きずっていく重い力がある。」
宮本輝
男56歳
20 「受賞に私は反対した。」「また古臭いものをひきずり出してきたなという印象でしかなく、読んでいて汚ならしくて、不快感に包まれた。」「「文学」のテーマとしての「暴力性」とかそれに付随するセックスや獣性などといったものに、私はもう飽き飽きとしている。」
河野多恵子
女77歳
28 「作者が小説の創り方を全身で知っているかのような感じを与える出来栄えである。」「この作品には、無駄や独りよがりや顕示的なところが全くない。客観視する意志と力をもっている作者のようだ。作品の風通しのよさも、それ故だろう。」「ほんの小さな端役といえども精彩があり、全篇を支える確実な一員に思えてくるのは大したものである。」
古井由吉
男65歳
0  
山田詠美
女44歳
11 「人の内なるさまざまな感情を翻弄しながら、言葉でひとつにまとめ上げることに成功した作品だと思う。」「ただただハリガネムシの生態系の中で、人々は泣いたり笑ったり。読み手もだ。」
村上龍
男51歳
9 「テクニックも実力もある作品だと思ったし、登場人物のキャラクターも会話も巧みだった。だがまるでスラップスティックムービーを見ているようで、切実さがなかった。」
黒井千次
男71歳
28 「手放しでこの作品を推す気持にはなれなかった。人間の内にひそむ暴力への欲求を、(引用者中略)ハリガネムシに擬して追求する意図は充分に認められる。」「ただこの教師がいささか無抵抗に暴力にのめりこんで行く経過に疑問が残る。」「彼を縛る壁があまりに薄手であるために、主人公の行動が恣意的なものに止まってはいないか。」
三浦哲郎
男72歳
5 「この作品の核にもなっているサディスティックな暴力シーンは、今の私にはちと荷が重すぎた。」
池澤夏樹
男58歳
8 「ぼくの好みではないが、しかし暴力という大きな主題を正面から扱ってしっかり構築されていることは認めなければならない。」「授賞には反対しないことにした。」
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他の候補作
絲山秋子
「イッツ・オンリー・トーク」
栗田有起
「お縫い子テルミー」
中村航
「夏休み」
中村文則
「遮光」
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候補者・作品
絲山秋子女36歳×各選考委員 
「イッツ・オンリー・トーク」
短篇 106
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
高樹のぶ子
女57歳
5 「性根が座った不良性と小気味いい章立てで才能を感じさせるが、もっと大きいものを作り出せる人だと思った。」
石原慎太郎
男70歳
7 「つるつる読ませはするが印象がいかにも薄い。第一この題名がなんで英語なのか。どうして「ただの洒落よ」でいけないのか。」
宮本輝
男56歳
0  
河野多恵子
女77歳
0  
古井由吉
男65歳
0  
山田詠美
女44歳
10 「点在する人間関係が魅力的にやさぐれている。空気が乾いているのを感じて、自らの内側の湿り具合に気付くような作品。」
村上龍
男51歳
16 「好感を持った。だが受賞作として積極的に推す気にはなれなかった。主人公、あるいは主人公をデザインした作者が、「並列的」に描かれる作中の出来事の中で、何に対して執着しているのかが不明だったからだ。」
黒井千次
男71歳
11 「一見投げ遣りに見える暮しの中に意外に芯の通った節度が保たれ、それが周囲のいずれもおかしな男達の像を確かな線描のように捉えている書き方に好感を抱いた。」
三浦哲郎
男72歳
0  
池澤夏樹
男58歳
9 「特に会話が見事で、それがとりあえず元気に生きようとしている主人公と周囲の関係をうまく表現している。ただこの軽みが読後感を希薄にしているとも言えるので、その先にもう一つ何か欲しいところだ。」
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他の候補作
吉村萬壱
「ハリガネムシ」
栗田有起
「お縫い子テルミー」
中村航
「夏休み」
中村文則
「遮光」
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候補者・作品
栗田有起女31歳×各選考委員 
「お縫い子テルミー」
短篇 95
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
高樹のぶ子
女57歳
10 「この作品にリアリズムの物差しは不要なのかもしれないが、「流しのお縫い子」がブティックやデパートでは買えない何を(原文傍点)縫うのかだけは、きちんと押さえて欲しかった。」
石原慎太郎
男70歳
7 「新しい風俗ともいえそうだが、はたしてこうした生き方が売春なしで有り得るのか。」
宮本輝
男56歳
25 「受賞作として推した」「三浦委員は「まごころと、生活への自信を持って生きている」と主人公を評したが、私もまったく同じ意見であった。「ハリガネムシ」とはたったの一票差で(引用者中略)受賞を逸した。」「文学賞の選考ではありがちなこととはいえ、私には釈然としないものが残った。」
河野多恵子
女77歳
25 「よかった。」「流しの仕立て屋という設定は、あるいは作者の拵えたものかもしれないが、この設定は生きている。その生まれ育ちから既にいっぱしの大人の女であり、同時にまだ十六歳らしさもある〈私〉の日々の姿は印象に残る。文学的に今少し豊かさが増せば、と期待をもった。」
古井由吉
男65歳
0  
山田詠美
女44歳
9 「安易に片付け過ぎてしまった」「せっかく、こんなにもキュートでりりしい主人公を作り上げたのだから、もっと活躍させて、テルミーの手練手管を見せて欲しかったな。」
村上龍
男51歳
18 「服を縫うという行為と布地への偏愛、また非常にマイナーな男性歌手への片思いという一種の「執着」が垣間見えるファンタジーだった。だが致命的な欠陥だと思われたのは、南の島から東京に出てきたばかりの十代の少女の語り口が、東京の「文脈」に染まっていたことである。」
黒井千次
男71歳
6 「現代の都会に瞽女が出現したかの如き新鮮さを覚えた。メルヘン仕立ての作品を縫い上げる才の今後に注目したい。」
三浦哲郎
男72歳
37 「感心した。」「私は一読してこの作品が好きになった。テルミーの可憐さ、健気さ、矜持に裏打ちされた潔さに強く惹かれた。」「テルミーと布との関わりをもうすこし深く追求していたら賞に手が届いたろう。」
池澤夏樹
男58歳
9 「ファンタジーであって、愛すべき小品に仕上がっている。」「佳作なのだが、もう少し冒険をしてほしかった。」
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他の候補作
吉村萬壱
「ハリガネムシ」
絲山秋子
「イッツ・オンリー・トーク」
中村航
「夏休み」
中村文則
「遮光」
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候補者・作品
中村航男33歳×各選考委員 
「夏休み」
中篇 287
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
高樹のぶ子
女57歳
5 「タイトルが示すように何とも他愛なく、ゲーム機で大真面目に遊んでいる四人の子供(原文傍点)を眺めて、溜息をつくしかなかった。」
石原慎太郎
男70歳
0  
宮本輝
男56歳
0  
河野多恵子
女77歳
0  
古井由吉
男65歳
0  
山田詠美
女44歳
8 「作品自体がパッケージングされたひとつのゲームのような「夏休み」。」「〈ママはすごい。本当にこの人はすごい。〉って……良かったですね。でも、あなた、おいくつ?」
村上龍
男51歳
0  
黒井千次
男71歳
4 「ゲーム抜きでこの関係が描かれれば面白かったのに、との感想を抱いた。」
三浦哲郎
男72歳
0  
池澤夏樹
男58歳
19 「もう少し論じられてもいい作品だった。つまり、これほど軽く、ゲーム的に生きる人々が今いるとしたら(いそうな気がするのだが)、それ自体がずいぶん深刻なことではないかと、そちらが気になった。」「人生は無意味でいいと作者は言っているわけで、つまりこれは小説が成立するか否かの境界線上で踊っているような話なのだ。ケータイによる相互マッサージの生活を小説に仕立てる必然性はないかもしれない。」
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他の候補作
吉村萬壱
「ハリガネムシ」
絲山秋子
「イッツ・オンリー・トーク」
栗田有起
「お縫い子テルミー」
中村文則
「遮光」
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候補者・作品
中村文則男25歳×各選考委員 
「遮光」
中篇 180
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
高樹のぶ子
女57歳
8 「前回の『銃』ほどには、瓶の中の小指が魅力的でなく、病的な狭い世界に頭をつっこんでしまった。病気というのは社会から認知された状態だから、本当に怖いものにはならないことを知っておくべきだ。」
石原慎太郎
男70歳
16 「安易な同工異曲で、前作の拳銃が女の遺体から切り取った指に変わっただけでしかない。」「野心あるべき新人が二つ続けてほとんど同じものを書いてみせるというのは、所詮志の問題というべきか。」
宮本輝
男56歳
0  
河野多恵子
女77歳
0  
古井由吉
男65歳
52 「意識を表現することは、無意識の境に踏みこむのに劣らず、厄介なことである。」「このような難儀な試みを敢えて構えて行なう若い意志を私は壮として、前回の「銃」にひきつづき、今回も銓衡会の評判の芳しくはなかった「遮光」を推した。」「前回と並行ではあるが、再挑戦と見た。」「前回より深みはまさっている。ただ何分にも、跳び越すべき、バーは高い。」「再々挑戦あり。」
山田詠美
女44歳
13 「一ページに〈私〉という主語が平均十五個。それが三人称のように使われていて心惹かれる。ただし最後が残念だ。遮光カーテン開けて主人公を、どん底に突き落としてやれば良かったのに。」
村上龍
男51歳
8 「今回の候補作の中でこの作品だけが、ある種の切実さを持っていた。だが切実さはあったが、その他の大切な要素がほとんどなかった。」
黒井千次
男71歳
2 「前作「銃」の暴発力が見られず、」
三浦哲郎
男72歳
5 「前作と同工異曲で構成上の無理が目立ち粗雑であった。」
池澤夏樹
男58歳
4 「前作と同じエゴセントリックな空回りで、他者の不在のために話に奥行きがでていない。」
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他の候補作
吉村萬壱
「ハリガネムシ」
絲山秋子
「イッツ・オンリー・トーク」
栗田有起
「お縫い子テルミー」
中村航
「夏休み」
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