芥川賞のすべて・のようなもの
選評の概要
126127128129130.
131132133134135.
136137138139140.
141142143144145.
146147148149150.
151152153154155.
156.
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Last Update[H28]2016/12/20

高樹のぶ子
Takagi Nobuko
生没年月日【注】 昭和21年/1946年4月9日~
在任期間 第126回~(通算15.5年・31回)
在任年齢 55歳8ヶ月~
経歴 本名=鶴田信子、旧姓=高木。山口県防府市生まれ。東京女子大学短期大学部教育学科卒。出版社勤務、結婚、出産、離婚を経て、同人誌『らむぷ』に参加。昭和55年/1980年再婚、文學界新人賞に作品を応募したことがきっかけで同誌に作品が掲載されはじめる。
受賞歴・候補歴
  • |候補| 第49回文學界新人賞(昭和54年/1979年)「酸き葡萄酒」
  • |候補| 第50回文學界新人賞(昭和55年/1980年)「麦、さんざめく」
  • |候補| 第84回芥川賞(昭和55年/1980年下期)「その細き道」
  • |候補| 第86回芥川賞(昭和56年/1981年下期)「遠すぎる友」
  • |候補| 第89回芥川賞(昭和58年/1983年上期)「追い風」
  • 第90回芥川賞(昭和58年/1983年下期)「光抱く友よ」
  • |候補| 第6回野間文芸新人賞(昭和59年/1984年)
  • |候補| 第29回女流文学賞(平成2年/1990年)『時を青く染めて』
  • |候補| 第31回女流文学賞(平成4年/1992年)『これは懺悔ではなく』
  • 第1回島清恋愛文学賞(平成6年/1994年)『蔦燃』
  • 第34回女流文学賞(平成7年/1995年)『水脈』
  • 第35回谷崎潤一郎賞(平成11年/1999年)『透光の樹』
  • 第60回西日本文化賞[社会文化部門](平成13年/2001年)
  • 第10回福岡県文化賞[創造部門](平成14年/2002年)
  • 第56回芸術選奨文部科学大臣賞[文学部門](平成17年/2005年度)『HOKKAI』
  • 紫綬褒章(平成21年/2009年)
  • 第36回川端康成文学賞(平成22年/2010年)「トモスイ」
芥川賞候補歴 第84回候補 「その細き道」(『文學界』昭和55年/1980年12月号)
第86回候補 「遠すぎる友」(『文學界』昭和56年/1981年11月号)
第89回候補 「追い風」(『文學界』昭和58年/1983年3月号)
第90回受賞 「光抱く友よ」(『新潮』昭和58年/1983年12月号)
備考
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下記の選評の概要には、評価として◎か○をつけたもの(見方・注意点を参照)、または受賞作に対するもののみ抜粋しました。さらにくわしい情報は、各回の「この回の全概要」をクリックしてご覧ください。

芥川賞 126 平成13年/2001年下半期   一覧へ
選評の概要 読者との直取引き 総行数63 (1行=14字)
選考委員 高樹のぶ子 女55歳
候補 評価 行数 評言
男29歳
17 「視点を幼く据えた書き方(幼さ装い)の弱点である認識の小ささや小説全体としての情報量の少さを、母親の会話で見事にクリアしている。(引用者中略)いきおい小説空間が大人のものになった。」
法月ゆり
女(39歳)
23 「強引に物語を作り読ませる力があり、アメリカの小村での体験をワクワクドキドキしながら読んだ。私は○印。」「法月さんには今後も人間を動かし、面白くて怖くてかつ人間の深みに届く物語を作って本賞を取って欲しい。」
  「初めての選考にのぞみ、二つの事を考えた。文学賞は人が書き人が択ぶのだから常に相対評価。その半期で最良の一作を択ぶことに徹する。」「もう一つは、作品本位とはいうものの先に期待が持てるかどうかを一考したい。」
選評出典:『文藝春秋』平成14年/2002年3月号
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芥川賞 127 平成14年/2002年上半期   一覧へ
選評の概要 「そっと差し出された『今』」 総行数61 (1行=14字)
選考委員 高樹のぶ子 女56歳
候補 評価 行数 評言
男33歳
31 「無理がない。意図的に力を加えたり主張したり整えたりする作意が見えない。」「人間を見る目が随所で鋭く光り、たった一行で、さりげなく決定的なインパクトを読者に与える。」「それにしてもこの透明な気配はどこから来るのかと考え、若い主人公の周辺に性の煙霧が無いせいだと気付いた。性欲が無ければ、遠近のバランスや歪みや濃淡が消えて、文学はかくも見晴らしが良くなるのだ。」
選評出典:『文藝春秋』平成14年/2002年9月号
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芥川賞 128 平成14年/2002年下半期   一覧へ
選評の概要 二作を評価 総行数59 (1行=14字)
選考委員 高樹のぶ子 女56歳
候補 評価 行数 評言
女36歳
21 「二作(引用者注:「しょっぱいドライブ」と「銃」)に○をつけたが、前者(引用者注:「しょっぱいドライブ」)の方が頭ひとつ出ている印象だった。」「受賞作として推すことにためらいは無かった。候補六作中、人間と人間関係を描ききったのはこの一作だけだと言ってもいい。」「決して大きい作品ではないが、厚味のある秀作になっている。」
中村文則
男25歳
22 「二作(引用者注:「しょっぱいドライブ」と「銃」)に○をつけた」「賛成票が集まれば、受賞作として推したいと思ったが、叶わなかった。これは銃に対する男の意識がテーマになっている。」「深読みすれば、核を持った人間の心理も想起させる。文章のドライブ感に才能を感じたのだが。」
選評出典:『文藝春秋』平成15年/2003年3月号
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芥川賞 129 平成15年/2003年上半期   一覧へ
選評の概要 危険でモラリスティック 総行数54 (1行=14字)
選考委員 高樹のぶ子 女57歳
候補 評価 行数 評言
男42歳
26 「昨今、強い者にではなく自分より弱い者に向かう暴力が溢れている。唾棄すべきこのような暴力衝動がなぜ生れるのかを、(引用者中略)丁寧にかつ非常に解き明かす。」「素手で持つと怪我をしそうな、重い刃物の一作である。」「見たくはないけれど見よう。宗教が断罪することのない日本において暴力を断つ方途があるとすれば、「よく見て」「知る」ことしかないのだから。」
選評出典:『文藝春秋』平成15年/2003年9月号
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芥川賞 130 平成15年/2003年下半期   一覧へ
選評の概要 期待と感慨 総行数44 (1行=14字)
選考委員 高樹のぶ子 女57歳
候補 評価 行数 評言
女19歳
33 「『蹴りたい背中』が一番良く『蛇にピアス』が二番だった。」「醒めた認識が随所にあるのは、作者の目が高校生活という狭い範囲を捉えながらも決して幼くはないことを示していて信用が置ける。作者は作者の周辺に流行しているだろうコミック的観念遊びに足をとられず、小説のカタチで新しさを主張する愚にも陥らず、あくまで人間と人間関係を描こうとしている。」
女20歳
14 「『蹴りたい背中』が一番良く『蛇にピアス』が二番だった。」「おそらく作者の人生の元手がかかっているであろう特異な世界を実にリアルに描いている。」「社会との関わりは作者の手にあまり小さな破綻となったが、作品全体の求心力は失われなかった。今後の方向は見えないが才能のある人だ。」
選評出典:『文藝春秋』平成16年/2004年3月号
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芥川賞 131 平成16年/2004年上半期   一覧へ
選評の概要 「文体と素材の組合せ」 総行数57 (1行=14字)
選考委員 高樹のぶ子 女58歳
候補 評価 行数 評言
男33歳
21 「速射砲のように自意識過剰の言葉が連発されるが、介護という沈み込んでいく日常をヒップポップ調リズムで謳い上げ、(引用者中略)文体と素材の思い切った組合せは成功している。しかし、介護という皮膚感覚を伴った素材から離れた場所で、YO、朋輩(ルビ:ニガー)、この先どうする?」
選評出典:『文藝春秋』平成16年/2004年9月号
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芥川賞 132 平成16年/2004年下半期   一覧へ
選評の概要 異常者の内面 総行数41 (1行=14字)
選考委員 高樹のぶ子 女58歳
候補 評価 行数 評言
男36歳
21 「少女偏愛性癖者の内面にこもる熱が、ひんやりと伝わってくる、明るくて無邪気で無気味な小説である。」「人間の内側に寄り添って見る場合にしか経験できない、汗ばみ息苦しくなるような怖さがある。これは文学にしか果せないことだ。」「肩パットが入ったような勢い込んだ文章が、読み進むにつれて主人公の病的な匂いを支えていることに気がついた。」
選評出典:『文藝春秋』平成17年/2005年3月号
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芥川賞 133 平成17年/2005年上半期   一覧へ
選評の概要 ならばこの先にも 総行数45 (1行=14字)
選考委員 高樹のぶ子 女59歳
候補 評価 行数 評言
男27歳
18 「運命的で理不尽な暴力の被害者が、暴力で応報せず、自らの恐怖の感覚を克服することで生きのびようとする観念小説だ。」「地表があちこちで動いているとき、深い岩盤にまで人間探求の杭を打ち込もうとする試みは、その重さと不自由さゆえ反時代的に見える。しかしそのような小説はちょっと前にも、その昔にも、さらにその昔にもあった。ならばこの先にもあり得るはずだ。」
伊藤たかみ
男34歳
7 「いくつかの印象的な場面に短篇の才能を感じる。とりわけ最後の無言電話を放置した中で母親と和解する終り方は秀逸だ。」
選評出典:『文藝春秋』平成17年/2005年9月号
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芥川賞 134 平成17年/2005年下半期   一覧へ
選評の概要 「あざとさも力」 総行数42 (1行=14字)
選考委員 高樹のぶ子 女59歳
候補 評価 行数 評言
伊藤たかみ
男34歳
20 「積極的に推した」「自分たちの気取りや流出しかける情緒を、片っぱしから自嘲自爆でひっくり返していく運び方に、才能を感じる。」「風俗嬢とのプレイのあと、“からりと疲れた”の一文。あざといと思いつつも、あざとさも力ではないかと思った。」
女39歳
17 「(引用者注:“私”と“太っちゃん”の)二人の信頼関係はきちんと書かれているし心地良く読めるのだが、このような(引用者注:どちらかが先に死んだら相手のパソコンのハードディスクの記録を消す約束をしている)仕組みが置かれる以上、ハードディスクの中に何が入っているかが気になる。」「何かもうひとつ、短篇としてのコワさが欲しかった。」
選評出典:『文藝春秋』平成18年/2006年3月号
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芥川賞 135 平成18年/2006年上半期   一覧へ
選評の概要 「意識の伏流水」 総行数56 (1行=14字)
選考委員 高樹のぶ子 女60歳
候補 評価 行数 評言
男35歳
22 「最後の勝ちを夢見て、失う痛みに耐えている若者のシャビイな切実さが、恐らく勝ちなど無いであろうとの予感と共に、胸をうつ。言葉が、伏流水のように裏に流れる意識を感じさせるのは才能だろう。職場の年上女性との関係も、さりげないのに艶がある。本気でも浮気心でもなく、よそ心(原文傍点)という新表現には舌を巻いた。」
選評出典:『文藝春秋』平成18年/2006年9月号
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芥川賞 136 平成18年/2006年下半期   一覧へ
選評の概要 “作意を隠す力” 総行数40 (1行=14字)
選考委員 高樹のぶ子 女60歳
候補 評価 行数 評言
女23歳
31 「若い女性のもったりとした孤独感が描かれていて、切ない。観念から出てきた作品ではなく、作者は日常の中に良質な受感装置を広げ、採るべきものを採って自然体で物語をつむいだ、かに見えるのは、実はかなりの実力を証明している。」「要点が押さえられているのに作意は隠されている。」
選評出典:『文藝春秋』平成19年/2007年3月号
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芥川賞 137 平成19年/2007年上半期   一覧へ
選評の概要 「重量」 総行数38 (1行=14字)
選考委員 高樹のぶ子 女61歳
候補 評価 行数 評言
男37歳
34 「候補作中最も重量を感じさせた作品だった。この一作に込めたエネルギーの大きさにまず圧倒され、いろいろ欠点を指摘するのは簡単だが、ほかの選考委員が推すなら賛成するつもりだった。」「エッシャーの騙し絵のように、ブリューゲルの風刺画のように、巧妙な入れ子構造になっていて、ときどき入れ子の隙間から作者が顔を出す。その顔が「壊す人」とは思えないほどカワイイ。従来からの小説に恨みを持ってない無垢な顔だ。これぞクセモノ。」
選評出典:『文藝春秋』平成19年/2007年9月号
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芥川賞 138 平成19年/2007年下半期   一覧へ
選評の概要 「絶対文学と文芸ジャーナリズムの間で」 総行数44 (1行=14字)
選考委員 高樹のぶ子 女61歳
候補 評価 行数 評言
女31歳
0  
  「実作者が受賞作を選ぶということは、(引用者中略)ある種の妥協を、意識的にであれ無意識にであれ、行うことだ。(引用者中略)自らの許容を強いることなしに受賞作は生まれにくい。選考料はある意味、この苦痛に対して支払われるものだと私は考えている。」「一方で文芸ジャーナリズムは、この絶対文学の対極にある。(引用者中略)小説が持っている情報の社会的鮮度と質量を、文学の重要な要素とする感覚のことで、これが無くては芥川賞は生き延びて来なかったと思う。」
選評出典:『文藝春秋』平成20年/2008年3月号
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芥川賞 139 平成20年/2008年上半期   一覧へ
選評の概要 二十年 総行数46 (1行=14字)
選考委員 高樹のぶ子 女62歳
候補 評価 行数 評言
女44歳
46 「久しぶりに人生という言葉を文学の中に見出し、高揚した。」「前回の候補作と全く違う素材で、前作より締まった日本語で書ききった力は信頼できる。何より書きたいことを持っている。」「中国の経済はいまや否応なく日本に大波をもたらしているが、経済だけではなく、文学においても、閉ざされた行動範囲の中で内向し鬱屈する小説や、妄想に逃げた作品は、生活実感と問題意識を搭載した中国の重戦車の越境に、どう立ち向かえるのか。今回の受賞が日本文学に突きつけているものは大きい。」
選評出典:『文藝春秋』平成20年/2008年9月号
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芥川賞 140 平成20年/2008年下半期   一覧へ
選評の概要 「そこそこ小説の終焉」 総行数50 (1行=13字)
選考委員 高樹のぶ子 女62歳
候補 評価 行数 評言
女30歳
20 「俯瞰せずひたすら地を這って生きる関西の女たちの視線が、切ない生活実感を生み出している。」「しかし舞台を東京に置いたなら、忍耐、がんばり、苦労、不条理への抗議などなど、ゴツゴツした問題提起の様相を帯びてくるだろうし、この作品の不思議なぬくもりは失われるに違いない。視線を低く保つ関西人の気質と言葉使いが、うまく時代を掴まえたとも言える。」
選評出典:『文藝春秋』平成21年/2009年3月号
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芥川賞 141 平成21年/2009年上半期   一覧へ
選評の概要 「記憶」 総行数54 (1行=13字)
選考委員 高樹のぶ子 女63歳
候補 評価 行数 評言
男44歳
15 「主人公がどんな男かが読後の印象として薄い。何十年を語り尽くした主人公が見えない。空白なら其れもよし、空白を見せて欲しい。」
  「小説が書かれる目的は、「人間に触れる」ことだと思う。」「読み終えて人間に触れた実感が無いか希薄なときは、作品そのものが記憶に残らない。」「読者に記憶されるには「説明を越える、あるいは説明を必要としないシーン」が必要になる。」
選評出典:『文藝春秋』平成21年/2009年9月号
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芥川賞 142 平成21年/2009年下半期   一覧へ
選評の概要 「愛と覆面の共作」 総行数85 (1行=13字)
選考委員 高樹のぶ子 女63歳
候補 評価 行数 評言
  「今回、候補作の多くで、依存関係、共犯意識、加虐的な衝動、損得勘定で人と人の繋がりが描かれていた。こうした関係性はどんなに鋭く執拗に描かれていても、作品としては厚味に欠けて弱い。」
選評出典:『文藝春秋』平成22年/2010年3月号
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芥川賞 143 平成22年/2010年上半期   一覧へ
選評の概要 「重層小説二編」 総行数88 (1行=13字)
選考委員 高樹のぶ子 女64歳
候補 評価 行数 評言
鹿島田真希
女33歳
47 「意識的に選び取られた文体が中身に相応しく、今回の候補作の中では一番良かった。」「文体に新奇なものを求めたのではなく、この現実を表現するために、是非とも女房文学のテイストが必要だったのだと思う。」「私達が女房文学を雅と感じるのは、流れるような仮名和文の韻律があるからで、その仮装束をあえて纏わせたこの作品を私は強く推したが、あと一歩及ばなかった。」
女35歳
24 「知的でテクニカルな才能を感じさせるけれど、生死のかかったアンネの世界に比べて、女の園の出来事が趣味的遊戯的で、違和感がぬぐえなかった。頭で考えられ、嵌め込まれた二つの世界だが、差別が発生する本質は同じだ、という他の委員の意見が印象に残った。」
選評出典:『文藝春秋』平成22年/2010年9月号
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芥川賞 144 平成22年/2010年下半期   一覧へ
選評の概要 「五感の冴え」 総行数83 (1行=13字)
選考委員 高樹のぶ子 女64歳
候補 評価 行数 評言
女26歳
39 「触覚、味覚、聴覚、嗅覚、そして視覚を、間断なく刺激する作品、この受感の鋭さは天性の資質だ。」「身体の実感を言語化するとき、ともすれば自分流儀な表現に陥りがちだが、具体的な物や事象に置き換える、つまり客観性を与えて提示できる力がある。」「さらに言えば、文章に韻律というかリズムがあり、これも計算されたというより、作者の体内から出てくるもののように感じた。」
男43歳
18 「人間の卑しさ浅ましさをとことん自虐的に、私小説風に描き、読者を辟易させることに成功している。これほどまでに呪詛的な愚行のエネルギーを溜めた人間であれば、自傷か他傷か、神か悪魔の発見か、何か起きそうなものだと期待したけれど、卑しさと浅ましさがひたすら連続するだけで、物足りなかった。」
選評出典:『文藝春秋』平成23年/2011年3月号
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芥川賞 145 平成23年/2011年上半期   一覧へ
選評の概要 それぞれへの感想 総行数88 (1行=13字)
選考委員 高樹のぶ子 女65歳
候補 評価 行数 評言
選評出典:『文藝春秋』平成23年/2011年9月号
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芥川賞 146 平成23年/2011年下半期   一覧へ
選評の概要 荒れた末の二作受賞 総行数86 (1行=13字)
選考委員 高樹のぶ子 女65歳
候補 評価 行数 評言
男39歳
23 「一読し、中上健次の時代に戻ったかと思わせたが、都会の青春小説が輝きも確執も懊悩も失い、浮遊するプアヤングしか描かれなくなると、このように一地方に囲い込まれた土着熱が、新鮮かつ未来的に見え、説得力を持ってくる。」「都会で浮遊する若者に較べて、地方の若者は質量が大きい。今後この質量の差は、さらに拡大するのではないだろうか。」
男39歳
51 「一見いや一読したぐらいでは何も確定させないぞ、という意思を、文学的な志だと受け取るには、私の体質は違い過ぎる。それが「位相」の企みであると判ってはいるが、このような努力と工夫の上に何を伝えたいのかが、私には解らない。」「にも拘わらず最後に受賞に一票を投じたのは、この候補作を支持する委員を、とりあえず信じたからだ。決して断じて、この作品を理解したからではない。」
選評出典:『文藝春秋』平成24年/2012年3月号
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芥川賞 147 平成24年/2012年上半期   一覧へ
選評の概要 日本の縮図 総行数78 (1行=13字)
選考委員 高樹のぶ子 女66歳
候補 評価 行数 評言
女35歳
37 「宗教的な暗示が色濃い作品だ。同時に、経済的な豊かさを剥ぎ取られてもなお虚飾と虚栄の夢を捨てられない浅ましい人たちを描くことで、経済力以外のアイデンティティを持ち得ていない日本の縮図としても読める。」「作者のもっとも伝えたい「奇蹟」を、不器用なまでに真っ正面から書いている。」
選評出典:『文藝春秋』平成24年/2012年9月号
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芥川賞 148 平成24年/2012年下半期   一覧へ
選評の概要 言葉の解体と再構築 総行数90 (1行=13字)
選考委員 高樹のぶ子 女66歳
候補 評価 行数 評言
女75歳
62 「苦労して読み終えたとき、a=1、b=2という等価な意味交換ではなく、a=アバウト1、b=アバウト2、という、従来からの価値観では曖昧さと誤解を生むとして否定されてきた授受が、逆に日本語の豊穣さに繋がることを発見させてもくれる。」「これはテーマと冒険心と、長年にわたる大和言葉の研鑽が作り出した奇蹟の一作」
選評出典:『文藝春秋』平成25年/2013年3月号
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芥川賞 149 平成25年/2013年上半期   一覧へ
選評の概要 蛮勇には蛮勇を 総行数81 (1行=13字)
選考委員 高樹のぶ子 女67歳
候補 評価 行数 評言
いとうせいこう
男52歳
67 「小説を書く目的として最も相応しくないのがヒューマニズムだということも、作者は知っている。この作品をヒューマニズムの枠組で読まれることなど望まず、作者としては樹上の死者のDJを愉しんで貰いたかったのではないか。」「小説に出来ることはその程度だ。その程度しか出来ないという哀しみから、書く蛮勇はうまれる。」「今回の候補作中、もっとも大きな小説だったと、選考委員として私も、蛮勇をふるって言いたい。」
女33歳
8 「まず私は女性の内向きでネガティブな攻撃性が苦手である。冒頭の一文からつまずき、文学的評価は他の委員に譲るしかなかった。」
選評出典:『文藝春秋』平成25年/2013年9月号
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芥川賞 150 平成25年/2013年下半期   一覧へ
選評の概要 「さようなら、オレンジ」 総行数150 (1行=13字)
選考委員 高樹のぶ子 女67歳
候補 評価 行数 評言
岩城けい
女42歳
31 「母語とは何かという問題、異国で表現することの困難さに真正面から挑み、切実で美しい世界を見せてくれた。」「この小説は、母語での表現を決意するまでの苦闘の「説明」であり、同時に「結果」ともなっている。すぐれた作品を芥川賞に選ぶ事が出来なくて残念だ。作者にとってだけでなく、日本語の文学賞である芥川賞がこの作品を取り込むことで、内側から相対化をはかるチャンスでもあったのに。」
女30歳
22 「作者は才能がある。」「しかしそれでも、じくじくと不可解な出来事が続き、思わせぶりに終わってしまった感じが残った。もうすこし突き詰めるか妖しく爆発して欲しかった。」「夫は日常と非日常のどちらの住人なのか。夫の存在が都合良く後退しているのが気になった。」
  「大事なことはそれが、人について考えさせ、人を励まし、人に滋養を与えるプロダクツかどうかということ。ひと言で言えば「感動」の有る無し、文字通り、感じて動かされるもののこと。」「どのような種類の感動か、何に対しての感動かは様々だ。書かれている中身への共感もあるが、特別な手法しかとることが出来ない作者、その切実さに心を奪われ揺さぶられることで、作品が異様に輝くこともある。」
選評出典:『文藝春秋』平成26年/2014年3月号
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芥川賞 151 平成26年/2014年上半期   一覧へ
選評の概要 「揺らめく住まい」 総行数86 (1行=13字)
選考委員 高樹のぶ子 女68歳
候補 評価 行数 評言
女40歳
33 「描写も視点を人称で固定せず、伝聞の中に視点が流れ込んで行き、まるで生きものとなったカメラが一冊の写真集に閉じこめられた過去にまで入り込み語ってくれる。読者を混乱させかねないこの手法が、箱庭のようなささやかな世界を時間の厚味で包み、過去と未来を境界なく繋ぐ効果を生むのは希有なことで、ノスタルジックな磁場なくしては許されないだろう。」
戌井昭人
男42歳
13 「土着ファンタジーとして面白かった。」「最後にカタルシスも用意されて、これまでの候補作中もっとも完成度が高かった。受賞作にしたかったが不遇な土砂崩れに巻き込まれ、一命を取り止めたものの受賞ならず。」
選評出典:『文藝春秋』平成26年/2014年9月号
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芥川賞 152 平成26年/2014年下半期   一覧へ
選評の概要 フィクションの力を 総行数79 (1行=13字)
選考委員 高樹のぶ子 女68歳
候補 評価 行数 評言
上田岳弘
男35歳
29 「万物万象、時間も含めて相対的だとするテーマを、映像ではなく文学にするとこうなるだろう。人間についてではなく人類について考えている。」「作品中で言及されている映画「惑星ソラリス」の影響は否定出来ないが、随所に鋭く射し込まれた批評精神が、荒唐無稽なSFと割り切ることの出来ない光り方をしていた。」
男44歳
11 「前作までの「浦」に立ちこめていた陰湿な臭いが消えた分、明るく軽く立ち入りやすくなったが、物足りなさも感じた。こだわりの勝利か。」
選評出典:『文藝春秋』平成27年/2015年3月号
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芥川賞 153 平成27年/2015年上半期   一覧へ
選評の概要 男が文学に戻ってきた 総行数88 (1行=13字)
選考委員 高樹のぶ子 女69歳
候補 評価 行数 評言
男29歳
20 「死にたい、と口癖のように言う祖父のために、孫息子は死を叶えてやろうとするが、本当は生にしがみついているのを知る。祖父のずるさがユーモラスでかなしく、ここにある生と死の息苦しさは、日本中に蔓延している社会問題でもある。」
滝口悠生
男32歳
14 「青春のみずみずしい記憶がノスタルジックで新鮮な感動を与えてくれる。」「曖昧な時制や夢妄想に頼るのではなく「わかりやすい構造」で「深い感興」を生み出すことこそ、もっとも困難な文学的試みである。実人生の実感が無ければそれは不可能なことなのだから。」
男35歳
11 「優れたところは他の選者に譲る。私が最後まで×を付けたのは、破天荒で世界をひっくり返す言葉で支えられた神谷の魅力が、後半、言葉とは無縁の豊胸手術に堕し、それと共に本作の魅力も萎んだせいだ。」
  「今回はレベルの高い候補作が揃った。」「六編のうち五編が男性作家と思われ、いずれも時代や社会的な状況、時間の流れを意識して書かれている。個の内面が外部世界と繋がっている。」「これは文学にとっても芥川賞にとっても光明だが、それだけ外部世界は逼迫しているということでもある。」
選評出典:『文藝春秋』平成27年/2015年9月号
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芥川賞 154 平成27年/2015年下半期   一覧へ
選評の概要 美と不気味さ 総行数81 (1行=13字)
選考委員 高樹のぶ子 女69歳
候補 評価 行数 評言
女36歳
32 「捨てられたも同然の男は、心地良さそうにひっそりと花を咲かせている。寄り添う別の花も在り、この風情がなかなか美しい。「美と不気味さ」これは「譚」の成立要素であり、日本説話の伝統から流れ来る地下水脈でもある。作者は意識しないまま汲み上げてしまった。登場人物をすべてカタカナにしたところで、この支配から自由にはなれない。」
男33歳
9 「心の琴線に触れたのはプレハブに籠もる兄と妹だけで、他はひたすら煩雑だったが、今後に期待して受賞に賛成した。」
選評出典:『文藝春秋』平成28年/2016年3月号
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芥川賞 155 平成28年/2016年上半期   一覧へ
選評の概要 胸を打つ、という一点 総行数78 (1行=13字)
選考委員 高樹のぶ子 女70歳
候補 評価 行数 評言
崔実
女30歳
78 「弾ける怒りと哀しみと焦慮を抱えて彷徨する一個の魂を描いた傑作だ。」「胸を打つ、という一点ですべての欠点に目をつむらせる作品こそ、真に優れた作品ではないのか。かつて輝かしい才能が、マイノリティパワーとして飛び出して来たことを思い出す。今回奇跡的に芥川賞までやって来たのに、掴むことが出来なかった。」
女36歳
0  
選評出典:『文藝春秋』平成28年/2016年9月号
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芥川賞 156 平成28年/2016年下半期   一覧へ
選評の概要 総行数未 (1行=字)
選考委員 高樹のぶ子 女70歳
候補 評価 行数 評言
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